説明

創傷保護材

【目的】 比較的広い範囲の皮膚上にできた創傷を、水濡れ等から保護するために簡便に使用しうる創傷保護材を提供することを目的とする。
【構成】 一面を粘着面とするとともに、伸縮性をもった防水薄状フィルムで形成された粘着テープの非粘着面に、一定の保形性を有する担持シートを密着積層し、上記粘着テープの粘着面中央に創傷保護パッドを付着させるとともに、上記粘着テープの粘着面に、上記創傷パッドを覆うようにして1またはそれ以上の離型シートを積層付着したことを特徴とする。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本願考案は、創傷保護材に関し、比較的広い範囲の皮膚上にできた創傷を水濡れ等から保護するために簡便に使用しうるように構成したものに関する。
【0002】
【従来の技術および考案が解決しようとする課題】
怪我によって皮膚にできた創傷の完治を促すためには、消毒を施すとともに、できるだけ創傷部を乾燥させることが好ましい。したがって、創傷部を露出させたまま水濡れさせることは好ましくない。
【0003】
そのため、創傷部を水濡れから保護しつつ、入浴や洗いものをすることは、きわめて厄介な作業となる。従来、簡単な創傷保護材として、いわゆる救急絆創膏がある。この救急絆創膏の一般的な構成は、一面に粘着材を塗布した比較的小さな細長状の粘着テープの粘着面中央に、滅菌ガーゼあるいはこれに創傷へのこびりつきを防止するために積層させた樹脂フィルムあるいは樹脂ネットからなる保護パッドを添着し、さらに上記粘着面全面に、上記保護パッドを覆うようにして通常2枚の離型シートを積層付着したものである。そして、この救急絆創膏は、離型シートを少し剥がして露出させた保護パッドを創傷部に当てながら、さらに離型シートを剥がして粘着テープの粘着面を露出させつつ、これを皮膚に貼りつけるようにして使用する。
【0004】
しかしながら、従前救急絆創膏は、比較的小型のものしかなく、小さな創傷を緊急的に保護するにはよいにしても、比較的大きな傷を保護するには十分とはいえない。
さらには、上記の救急絆創膏は、創傷を救急的に保護するにすぎず、水濡れから保護することまでを目的としたものは少なく、むしろ、創傷部への通気性をよくするために、粘着テープに通気孔を開けたものすらある。
したがって、上記の従来の救急絆創膏では、これを使用して創傷部を水濡れから保護しつつ洗いものや入浴をすることができないし、また、比較的大きな創傷の場合には対応することができない。
【0005】
この考案は、上述の事情のもとで考えだされたものであって、比較的大きな創傷であっても、これを水濡れから保護することができ、しかも簡便に使用しうる創傷保護材を提供することをその課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本願考案は次の技術的手段を講じている。
すなわち、本願考案の創傷保護材は、皮膚表面に密着しうる伸縮性をもった防水薄状フィルムで形成され、一面を粘着面とした粘着テープと、 上記粘着テープの非粘着面が密着させられるとともに所定の保形性を有する担持シートと、 上記粘着テープの粘着面中央に付着させられた創傷保護パッドと、 上記粘着テープの粘着面に対し、上記創傷保護パッドを覆うようにして添着された1またはそれ以上の離型シートと、を備えることを特徴としている。
【0007】
【考案の作用および効果】
離型シートを少し剥がして創傷保護パッドを露出させつつ、これを創傷面を覆うようにして皮膚にあて、そして、離型シートをさらに剥がして担持シートに担持されたままの粘着テープを皮膚に貼りつける。次いで、担持シートを粘着テープの表面から剥がす。そうすると、創傷面との間に保護パッドを挟み込むようにして、保護パッドより十分広い範囲の皮膚表面に上記粘着テープが貼りつけられた状態となる。
【0008】
本願考案では、粘着テープのさらに表面側に、担持シートを密着させてある。
この担持シートに使い勝手がよいようにある程度の保形性を持たせてあるので、粘着テープには保形性を持たせる必要がなく、したがって極めて薄状の伸縮性のあるフィルムを用いることができる。
【0009】
従来の救急絆創膏が比較的小型のものしか提供されていないのは、皮膚に貼りつける際の使い勝手の悪化を防止するために、粘着テープそれ自体にある程度の保形性をもたせざるをえなかったからであると考えられる。こうした保形性を保つべく、伸縮性能の劣るシートを用いて粘着テープを構成する場合、この粘着テープの面積を大きくすると、貼着状態において皮膚の伸縮に十分に対応することができず、結局、手指の傷や小さい創傷しか保護することのできない比較的小型のものしか作れないのである。
【0010】
一方、本願考案では、粘着テープを皮膚に貼りつける際に必要な全体の保形性を、皮膚貼着後に除去される担持シートに持たせているので、粘着テープを伸縮性の富む比較的大きな面積のものとしてもなんら差し支えなく、そして、この粘着テープは、皮膚貼着状態において、皮膚の伸縮に十分対応して伸縮することができる。そして、粘着テープは、防水性をももっているので、貼着状態においてその下層に位置する保護パッド、およびこれに保護されている創傷部の水濡れを確実に保護することができる。
【0011】
以上の結果、本願考案の創傷保護材によれば、比較的大きな創傷であっても、これを確実に水濡れから保護することができ、また、その使用方法は、従前の救急絆創膏の使用方法と類似したものであり、使い勝手も非常によい。本願考案の創傷保護材を用いると、従来では不可能と考えられていた、大きな創傷を受けながらの入浴あるいは水泳すら可能となる。もちろん、創傷を受けた刹那に救急的にこれを保護する救急絆創膏として本願考案の創傷保護材を使用することができるのはいうまでもない。
【0012】
【実施例の説明】
以下、本願考案の好ましい実施例を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1は本願考案の創傷保護材1の全体斜視図、図2は図1のII−II線に沿う断面図である。ただし、これらの図においては、創傷保護材1を構成する部材の積層構造をわかりやすく示すために、厚み方向の寸法を強調して示してある。
【0013】
図1および図2に示されているように、本願考案の創傷保護材1は、一定の保形性をもった担持シート2に、非接着面を密着状に担持された伸縮性をもつ薄状フィルムからなる粘着テープ3を備えるとともに、この粘着テープ3の粘着面中央部に、創傷保護パッド4を付着保持させ、かつ、上記粘着テープ3の粘着面全面を、2枚に分割された離型シート5a,5bで覆って大略構成されている。
上記担持シート2および上記粘着テープ3は、外部から保護パッド4の位置を視認できるように、いずれも透明な樹脂シートで形成されている。
【0014】
上記担持シート2は、薄状フィルムからなる粘着テープ3を担持して全体としての保形性を与えるための部材であって、たとえば、ポリプロピレン等で形成された透明シートが用いられる。一方、上記粘着テープ3は、皮膚に貼着したとき、皮膚の伸縮に応じて自由に伸縮できることが好ましく、たとえば、厚みを25ミクロン程度の薄状としたポリウレタンフィルム等を用いると好適である。そして、この粘着テープ3は、上記担持シート2によって密着担持される非粘着面と反対側の面を、粘着材を薄状に塗布するなどすることにより、皮膚に対してなじみをもって接着しうる粘着面3aとしてある。上記担持シート2に対して上記粘着テープ3を担持させるには、これらを積層して圧縮力をかけることにより、分子間引力によって相互密着させることもできるし、あるいは、これに加えて、静電気を利用しながら相互に密着することもできる。なお、担持シート2と粘着テープ3は、本願考案の創傷保護材として皮膚に貼りつけられた状態において、担持シートが剥がされるという関係となっているため、上記のような分子間引力あるいは静電気による相互密着力で十分である。
【0015】
上記担持シート2に密着担持された上記粘着テープ3の粘着面3aには、上記の保護パッド4が粘着面3aのもつ粘着力によって保持されている。この保護パッド4としては、たとえば、所定厚みの滅菌ガーゼに、創傷部に対する剥離性をよくするために積層された穴あき薄状フィルムから構成されたものが用いられる。
【0016】
さらに、上記粘着テープ3の粘着面3aには、その全面にわたって、かつ、上記保護パッド4をも覆うようにして、2枚に分割された離型シート5a,5bが積層される。各離型シート5a,5bは、担持シート2および粘着テープ3の積層物と同等の幅をもちながら、長手方向寸法は上記積層物の半分よりもやや長いめに設定されたものが用いられ、図2によく表れているように、担持シート2と粘着テープ3の積層体の長手方向略中央部において重合部が形成されるようにして添設されている。この離型シート5a,5bとしては、クラフト紙の一面にシリコン樹脂コートを施したものが用いられる。シリコン樹脂コートは、粘着テープ3の粘着面3aに対する離型性を与えるためのものである。
【0017】
本実施例においては、上記担持シート2の一端部に、粘着テープ3に対して密着しない把手部に2aが設けられており、使用にあたって、この担持シート2を粘着テープ3から引き剥がす作業の便宜を図っている。
【0018】
以上の構成を有する本実施例の創傷保護部材1は、次のようにして使用することができる。
まず、図2に示すように、各離型シート5a,5bの上記保護パッド4と対応する部分を仮想線で示すように少し剥がして保護パッド4を露出させ、この保護パッド4を創傷部A(図3)にあてつけるようにしながら、さらに図2において矢印pおよび矢印qに示すようにこの離型シート5a,5bを引き剥がし、これによって表れる粘着テープ3の粘着面3aを図3に示すように皮膚に密着させる。このとき、本実施例においては、担持シート2および粘着テープ3がいずれも透明な樹脂シートによって形成されているため、外部から保護パッド4の位置および創傷部Aの位置が確認でき、都合よく保護パッド4を創傷部Aの上にあてつけることができる。そして、粘着テープ3それ自体は、保形性のない薄状のフィルムではあるが、図3のようにして皮膚に対して貼りつけられる段階においては、いまだ一定の保形性を有する担持シート2に担持された状態であるので、皺等が発生することなく、皮膚表面に沿ってぴったりと延びた状態で貼着される。
【0019】
最後に、図3において、仮想線で示すように、端部2aをつまみながら矢印r方向に担持シート2を引き剥がすと、図4に示すように、皮膚に対して、創傷部Aを十分に覆う保護パッド4を挟み込みながら、伸縮性をもつ薄状の粘着テープ3が、皮膚に対してぴったりと沿う恰好で貼りつけられた状態となる。
【0020】
上記粘着テープ3は、繰り返し説明するように、伸縮性をもった薄状フィルムであるため、皮膚の伸縮に応じて、あるいは皮膚の表面の曲がりの変化に応じて伸縮変形し、常に皮膚に対して都合よく密着した状態が保持される。また、この粘着テープ3は、防水性をも備えているので、外部から水が創傷部Aにいたることを完全に防止することができる。
【0021】
もちろん、この考案の範囲は上述の実施例に限定されることはない。担持シート2、粘着テープ3、および保護パッド4の材質、形状、大きさは、種々適当なものを選択可能である。本願考案は、一面を粘着面とした伸縮性をもつ薄状の粘着テープ3を、保形性をもつ担持シート2によって積層担持させることにより、全体としての保形性を与えながら、皮膚に対する貼りつけ作業を容易化する点、および、粘着テープ3には予め創傷保護パッド4が添設されているために、別途のガーゼ等を準備する必要がない点、に最大の特徴を有するものであり、かかる担持シート2、粘着テープ3、および保護パッド4の機能を達成しうることができれば、その材質等は問われないのである。また、本実施例では、離型シートを2分割としているが、もちろん一枚の離型シートを粘着テープの粘着面に積層付着させておく場合も本願考案に含まれる。さらには、担持シート2の一端に把手部を設けることは、単なる選択事項であり、この把手部を省略しても、もちろん本願考案の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願考案の創傷保護パッドの全体斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】
【図4】図1および図2に示す実施例の使用方法説明図である。
【符号の説明】
1 創傷保護材
2 担持シート
3 粘着テープ
4 創傷保護パッド
5a,5b 離型シート
A 創傷部

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 皮膚表面に密着しうる伸縮性をもった防水薄状フィルムで形成され、一面を粘着面とした粘着テープと、上記粘着テープの非粘着面が密着させられるとともに所定の保形性を有する担持シートと、上記粘着テープの粘着面中央に付着させられた創傷保護パッドと、上記粘着テープの粘着面に対し、上記創傷保護パッドを覆うようにして添着された1またはそれ以上の離型シートと、を備えることを特徴とする、創傷保護材。
【請求項2】 上記担持シートは、一端に上記粘着テープに密着しない把手部を有している、請求項1の創傷保護材。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】実開平5−24021
【公開日】平成5年(1993)3月30日
【考案の名称】創傷保護材
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−75281
【出願日】平成3年(1991)9月19日
【出願人】(000191755)森下仁丹株式会社 (30)