説明

創傷治療システムおよび方法

創傷治療の体系および方法を記述する。当該体系は銀含有エレメントおよび電磁波エレメントを含む。当該電磁気エレメントは銀含有エレメント中の活性イオン数を抑制するため、銀含有エレメントへの近接パルス強磁場の発生の制御が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷治療のシステムおよび方法に関し、詳細には下腿潰瘍治療に適用可能なシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州では250万人の人々が治療に最低80億ユーロを必要とする慢性下腿潰瘍に苦しんでいる。さらに、平均寿命が延び、欧州の年齢層がシフトするにつれ、全症例の3%もが65歳以上の年齢層で起きており、加齢性の症例数が増加すると予想されている。下腿潰瘍は治癒が遅く、再発が一般的である。症例のうち高い確率で起こる敗血症は、四肢の壊死さらにはその損失に繋がる、人的および経済的コストを伴う不運な予後である。
【0003】
しかしながら、看護の人的資源、仕事上の時間的損失および他の社会的損失は年間1000億ユーロと推定される。慢性的な痛みという点では、欧州の患者にとって、四肢の切断および生活の質的低下は、この何倍もの犠牲を払う。
【0004】
下腿潰瘍治療には様々な技術が提案されてきており、それらを以下に述べる。
1.外傷用圧迫医薬材料
現在容認されている治療法は、直接病変に接する外傷用医薬材料を頻繁に交換することで、手足内の血流改良をめざした外傷用圧迫医薬材料を使用する方法を含む。さらに、手足を長い間上げるように指示されるので、通常の作業や余暇の養生が妨害されることになる。圧迫によって表面的な静脈における高静脈圧は下がり、毛細血管と組織間の圧力差の減少により浮腫が減少する。これが組織からの代謝物の運搬を促し、潰瘍を治癒させる。
多様な圧迫製品が市販されているが、潰瘍治癒促進にはどれも同じような効能があるようだ。膝下の段階的圧迫は、静脈環流量を改善し、単純な静脈下腿潰瘍における静脈鬱血および高血圧を減少させる一般的な治療形態である。
段階的圧迫すると足首で圧力は最大になり、圧力はそれほど外圧を必要としない膝および腿に向かって徐々に減少する。通常、3ないし4層からなる高圧迫多層外傷用医薬材法を推奨する。2層に比べると4層のほうが潰瘍治癒率は高くなっている。
圧迫外傷用医薬材法の欠点:適切な訓練を受けた人であれば、骨点上での圧迫性潰瘍の危険を避けるように圧迫多層外傷用医薬材法を適用するべきである。活性静脈炎、深部静脈血栓症、局部伝染病および蜂巣炎はすべて圧迫に対する禁忌症である。
【0005】
2.間欠的空気圧迫法(IPC)
IPCはさらに治癒率を向上させる可能性があるが、良質の試験には制限がある。空気ポンプが患肢まわりの装置を周期的に膨張させたり、収縮させたりする。系統的調査により、6ヶ月間の標準的な圧迫が失敗した、もしくは、圧迫外傷用医薬材法に耐えることを望まない、またはできない患者で、難治性浮腫および有意ある潰瘍を持つ患者には空気圧迫器を推奨する。コクランの調査はIPCの小試験のみを知見しており、直接比較はできなかった。IPCによって潰瘍治癒が改善したという2試験の報告がある。圧迫のみと比較した場合、もしくは標準的な圧迫法を加えた場合に、IPCが治癒を改善させるという明確な証拠はなかった。
【0006】
3.薬物療法
8つの無作為対象化試験の系統的調査では、血液循環を改良すると推定されるペントキシフィリンがプラセボよりも完治に掛る時間を減らすのに効果があり、圧迫にさらなるベネフィットをもたらすことを示唆した。今のところ、ペントキシフィリンは治癒が遅い患者のみに推奨し、現在、日常的な使用には推奨しない。アスピリンおよびプロスタグランジンはあまりメリットを示さないようだ。かつては筋肉増強剤が推奨されていたが、もはや言及されない。筋肉増強剤使用を支持する証拠はほとんどないようだ。
【0007】
4.高圧酸素療法(HOT)
HOTの間、患者は密室に入る。室内の気圧を高める。治療用に規定されたレベルに気圧が到達すると、患者に一定時間呼吸するための100%酸素を与える。患者はフードを通して酸素を吸い、いつ休憩を取り室内の通常の空気を吸うのか助言を受ける。高圧室の中には一人しか入れないものもあるが、二人以上入れるものもある。時には、患者と共に介護者が部屋にはいることがある。各治療の持続時間、治療回数および使用圧力はすべて、患者の状態次第で変わる。高圧酸素療法治療は通常病院または私立診療所で行う。高圧酸素療法治療は1患者当たり1時間1000ユーロを超すコストの掛る非常に高価な治療である。
【0008】
HOTの欠点:
・室内の気圧が中耳および内耳に損傷を与える可能性がある。
・室内で閉所恐怖症を経験する人がいる。
・その治療は例えば、近視あるいは白内障成長を促進するといった目への影響をもたらす可能性がある。
・高濃度酸素は先天性心疾患を患う小児に深刻な合併症を引き起こす可能性がある。
・高圧酸素療法は血糖値に影響するので、糖尿病患者は治療前後に血糖レベルを調べるべきである。
・過剰な酸素は、稀ではあるが、時には、発作および肺疾患をもたらす過負荷に繋がる。
・高気圧の高濃度酸素には発火の危険性がある。
【0009】
5.他の治療法
・他の治療法が効かない難治の慢性静脈腫瘍化および表在性弁膜性機能不全がある場合は表在静脈手術を考慮してもよい。これには静脈の除去、硬化療法あるいは穿孔を含んでよい。
・下位筋膜内視鏡下静脈穿孔手術はいまだ実験過程にある。
・他の治療が失敗した場合には、皮膚移植が治癒を早める可能性がある。
・時に低レベルのレーザー治療が使用されるが、任意のベネフィット示す証拠に乏しい。
レーザーと赤外線の併用組み合わせが治療を促進する可能性があるが、さらなる研究が必要である。
【0010】
6.静磁気療法
2006年、英国国民健康保険(NHS)の医療用医薬品価格管理局は、静磁気療法をNHS規定の慢性下腿潰瘍治療のリストに含めた。
現在(2007年)入手できる携帯型磁気療法器はバンドに組み込まれた永久磁石あるいは磁石は静磁場を発生させ、その磁場を膝とふくらはぎ間の脚周りに固定するものである。バンドの位置は明らかに潰瘍部位から独立し、主に肢の形および表面の形状によって管理される。そしてそれが、装置が重力によって下に落ちないように唯一の手段を提供している。
【0011】
7.パルス電子磁気療法(PEMT)
磁気拡張治療分野において公表されてきた論文審査のある臨床結果のうち、不十分ではあるが最有望なものは、損傷部位上に直接当てるパルス磁気療法に存在する。しかしながら、全ての研究は、患者が一人ではあまりにも扱いにくい装置を使用することによって実施されており、患者が頻繁に通院することが必要とされた。
静パルス磁気療法および独立パルス磁気療法のどちらにおいても、磁場がどうやって有利な効果を生みだすか、その詳細なメカニズムは不明瞭なままである。
人体の電気化学的過程は非常に複雑で完全には理解されていない。磁場の生物学的効果については多くの論文が公表されており、その多くが高周波およびマイクロ波場、あるいは近年では、送電線周波数での磁場に集中してきた(毎秒50周期ないし60周期)。安定磁場の生物学的効果の研究は主にMRI磁石において遭遇するレベルの高磁場、典型的には10,000ガウス(1テスラ)等級に集中していた。残念なことに、研究は磁気治療製品の典型的磁場レベルに非常に限定されていた。
【0012】
人体は、その主成分(水)のように、反磁性、すなわち磁場には弱く反発する。印加磁場に応じて、水分子中の電子はその動きを少し調節する。そして印加磁場の約100,000分の1未満の大きさで反対方向に純磁場を生む。
印加磁場を除去すると電子は元の軌道に戻り、水分子は再び非磁性となる。
水と大部分の生物との反磁性は非常に弱いものの、血液が含む鉄について言及し、磁場が血液を引きつけると示唆する論文もある。しかしながら、血中の鉄分は金属鉄とは非常に異なる。金属鉄は個々の原子磁石が強磁性の現象によってお互いに強く結合しているため、磁気が強いのである。強磁性物質の特徴は一致して活動する多くの磁気原子の共同作動の結果である。血中鉄は、鉄原子単独ではなく大きなヘモグロビン分子内に、赤血球の中に位置している。各鉄原子は磁気を帯びているが、他の鉄原子の近くになく、磁気的に独立したままである。ヘモグロビン内の遊離鉄原子の弱い常磁性の純効果といっても単に血液全体の反磁性を少し減らすだけである。水同様に血液は、磁場によって引きつけられるのではなく、わずかに跳ね返される。どんな効果、治療法などにも起こり得る機序は、動いている荷電粒子に働く磁力に基づくものであり、血流中の鉄あるいは荷電分子を含んでおり、細胞膜その他を横断して動く。
【0013】
これまでに提案された磁場と組織間で可能な相互メカニズムは、多くの見出しのもとに分類される可能性がある。
(1)磁鉄鉱説
(2)遊離基説
(3)細胞膜説
(4)細胞核説
(5)熱ショックタンパク質
(6)共鳴
(7)空間的加重
(8)磁場誘導
(9)エネルギー
上述の技術の多くはそれ自身、下腿潰瘍治療に成功しているものの、治療効率および費用の改善の要望が残る。
【0014】
傷(潰瘍のような際立って慢性の傷)内バクテリアは、プランクトン様、固着生物様の両方で存在する。後者は慢性の傷の特徴と想定される表面(例、バイオフィルム形成)に付着する。バクテリアはこの2つのどちらの形態とも異なって作用する。傷内に2つの形態が同時に存在する場合、この作用はバイオバーデン制御法に関連するようになる。プランクトン形状のバクテリアは局所抗菌剤に自由に接近できるが、バイオフィルム形状バクテリアはそれほど影響されない。
銀の抗菌活性は何年にもわたって知られており、多数の出版物が、多種多様な有機体に対する生体外での銀の作用を報告している。銀はAg+ として活性化し、この種は低濃度(10億分の1[ppb]あるいはpg/Lから百万分の1[ppm]あるいはmg/L)の水溶液で活性化すると一般的に認められている。
【0015】
SARS(重症急性呼吸器症候群)に向けた調査で、RentzはAg+ が9.2×10-9から5.5×10-6M(つまり9.2ppbから5.5ppm)の濃度で活性殺生物剤になると知見したフォン・ネーゲリの研究に言及した。RentzはAg+ は250ppbで2時間活性していると報告したCliverによる研究を引用した。銀イオン殺菌の有効性は以下の計算で例証することが可能である。
104細胞/mLおよび50ppb(4.7×10-7mol/L)金属イオンの濃度では1細胞当たりおよそ2.8×1010の金属イオンがある。
【0016】
この計算は、傷浸出物中の典型的バクテリア濃度および銀を含有する外傷用医薬材からでる溶解銀のレベルが「低い」ことを表す。しかしながら、浸出液はその陰イオン含有によりAg+ イオンと結びつき、銀イオンの作用に影響を及ぼすことがある。
【0017】
現在、一般の陰イオンおよびタンパク質がある状態(つまり浸出液と同じ環境)での傷臨床分離株における銀の効果に関する情報はほとんど入手不可能である。しかしながら、Bowlerらは非特許文献1の中で、臨床分離株と銀含有包外傷用医薬材料の模擬傷流体における試験について述べた。Bowlerらの知見は銀含有外傷用医薬材が感染に障害を提供しそうだと示唆している。銀には50ppbの投与量で生物膜基質を分解する能力があることが知られている。
効果的な創傷床準備および抗菌薬の使用による創感染の管理の関係が治療において重要であると認識されている。どのような製品を選択しても、微生物感度、アレルゲン性の低さおよび細胞毒性の低さを明らかにすべきであり、全身性薬品であってはならない。
【0018】
どのような医療機器においても使用される抗菌性銀のタイプに関係なく、傷に塗布される銀の形態は一貫したまま(つまりg+ )であるべきであり、担体外傷用医薬材に関係なく変化してはならない。しかしながら、銀の効能は銀の量およびその有効性に影響されることが一般的に認識されており、それは選択した製品に依存しているのである。
【0019】
(外傷用医薬材内の銀分布の重要性)
10の銀を含む外傷用医薬材の銀含有量および抗菌性を実験研究で比較したとき(非特許文献2において公開)、非常に有意ある差異が関連製品の活動で示された。研究者は微生物を殺す外傷用医薬材の能力に影響を及ぼすいくつかの要因があると結論づける。これらの要因の一つは(それが表面を覆っているのかそれとも構造の中を通って分散しているのかという)外傷用医薬材内の銀の分布に関係している。構造体中に銀を混ぜてあるものよりも、銀の含有を外傷用医薬材の表面に集中させている製品がこれらの試験で最もよく機能した。
【0020】
現在市販の銀外傷用医薬材のいくつかを寸評すると、抗菌作用に関して、その全体構造、銀化合物の濃度および配合において、双方には明らかにかなりの違いがある。市販製品には以下のものが含まれる:
1)孔空き不織レーヨンおよびポリエステル織物の単一相を包んだ2層の銀コーティングされた高密度ポリエチレンメッシュ。使用中に外傷用医薬材の完全性を維持できるよう、これら3つの構成エレメントは超音波で結合されている。金属銀の微視的結晶の構成に帰着する蒸着過程によってポリエチレンメッシュに銀が塗布されている。水による活性化時に、3ないし7日間、銀イオンの迅速な徐放が行われる。しかしながら、特に、臨床医がより濃い色素を持つ患者を評価する場合には、一時的に皮膚の着色が創傷床評価の妨げになる可能性がある。
2)レーヨンとポリエステルでできた開口部を有する不織布の2層からなる中核を含む2層の純銀コートのメッシュ。不織布の2層間に銀コートポリエチレンメッシュの層が1枚追加されている。外傷用医薬材の完全性を維持するために5つの層は全て超音波で結合されている。水による活性化時に、3ないし7日間、銀イオンの迅速な徐放が行われる。しかしながら、特に、臨床医がより濃い色素を持つ患者を評価する場合には、一時的に皮膚の着色が創傷床評価の妨げになる可能性がある。
3)銀を含浸させた活性炭布−これはナイロンに敏感な患者の問題として知られていた。
4)アルギン酸塩粉とイオン化銀を含む無機ポリマーの混合物。水分が存在するとアルギン酸はゲル形成のために液体を吸収し、銀錯体は制御された方法で崩壊し、傷の内部に銀イオンを放出する。当該製品はポリウレタンフィルム外傷用医薬材あるいは術後の外傷用医薬材を通して供給される。
5)1.2%の銀イオンを含むナトリウムカルボキシメチルセルロースのフリース。滲出液が存在すると、外傷用医薬材はゲル形成のために液体を吸収し、ナトリウムイオンと結合し、銀イオンを放出する。
6)吸収力のある泡シートからなる銀アルギン酸塩傷外傷用医薬材。その片側の表面がクレンザー、保湿剤および高吸収性澱粉コポリマーと共に銀イオンを含むアルギン酸塩基質で覆われている。
7)銀含有ポリウレタン泡外傷用医薬材。これは泡が滲出液を吸収するときに放出される。
8)親水コロイド外傷用医薬材。これは確立した標準親水コロイド技術に基づくが、同時に外傷用医薬材に吸収された傷流体によって放出される銀混合物を含む。このメカニズムで、外傷用医薬材が流体を吸収し続ける限り、銀のイオンの徐放を確実にする。
9)独自に開発された自触媒非電着性金属析出化学(酸化還元)表面被覆技術により銀メッキされたニット繊維外傷用医薬材。この技術で外傷用医薬材を作るそれぞれの繊維の全表面を覆うので、銀の含有量が非常に多くなる。
10)合成繊維。この中のポリアクリレート親水性基質が銀含有粒子を分散あるいは浮遊させる。湿気に触れると制御された方法で銀が傷の内部に放出される。
11)カルボキシメチルセルロース、白く柔らかなパラフィンおよび銀サルファダイアジン(SSD)を含浸したポリエステルメッシュ。
【0021】
以下の表1は上記の製品における銀濃度確認研究の実験結果を示す。
【0022】
【表1】

【0023】
銀外傷用医薬材において発明者が知っているどんな銀含有方法を採っても、創床において一定時間に利用可能な銀の量は同様の制限を持っており、Ag+のタンパク質との相互関係によって制限されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】「多様な火傷傷病原体に対する銀含有ハイドロファイバー外傷用医薬材の殺菌特性JBurn Care Rehabil.」(2004年25号(2)、192〜196頁)
【非特許文献2】「10の銀を含む外傷用医薬材の抗菌特性の生体外分析」Thomas S,McCubbin P, J Wound Care 2003; 12(8):305-08
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、(1)低コスト、使い捨て電磁銀イオン取り込み強化装置の創製、(2)承認された滅菌技術を保持しつつ、装置の電磁波エレメントを銀浸潤創傷外傷用医薬材に取り込むこと、(3)ポケットサイズの電子制御装置及び電力供給の製造、である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の一様態に従って、銀含有エレメントおよび電磁波エレメントを含む創傷治療のシステムを提供する。銀含有エレメントにおける活性イオンの数制御のため、電磁波エレメントは銀含有エレメントに隣接したパルス磁界生成を制御可能である。
本発明の実施態様においては、創床における銀イオン濃度の電磁気増強が円滑化される一方で、外傷用医薬材に必要とされる銀の総含有量を最小限にできる。これは、創傷床曝露を、効果はあるけれども、バクテリア細胞およびその後のバクテリアの死における銀イオンの選択的集積を引き起こす長期に渡る一定補充されるイオン銀が過剰にならないレベルまで増加させる。
【0027】
銀含有エレメントはポリマーナノファイバー不織構造からなる可能性があり、銀イオン負荷リン酸ジルコニウムナノ粒子を構造の中に実質的に一様に分散する。
【0028】
電磁波エレメントは実質的に平面螺旋金属コイルを含む。
【0029】
電磁波エレメントは銅コイルを含むのが好ましい。
【0030】
電磁波エレメントはさらにセラミック/ポリマー合成物の形でポリマー基質および高透磁率磁層を含んでもよい。
【0031】
当該システムはさらに銀含有エレメントおよび電磁波エレメントを含む外傷用医薬材を含んでもよい。
【0032】
当該外傷用医薬材はさらに滲出物吸収層、封入層および封入/滲みとおし障壁を含んでもよい。
滲出液吸収層は泡状構成を有するのが好ましい。
【0033】
滲出液吸収層は超吸収粒子を含んでもよい。
【0034】
当該システムはさらに、要求に応じて、電磁波エレメント内にパルス磁界を生みだすために配置された電磁波エレメントに結合した制御回路を含んでもよい。
【0035】
制御回路は電磁波エレメントに電力を供給するために電源と統合されてもよい。
【0036】
上記で検討された従来のイオン銀治療の種々相を考慮し、進歩した創傷治療システムを以下4通りで観念的に示す。
1.創傷床におけるAg+イオンの最適濃度を一定に保つ能力。
2.死角形成を除くための高度な創傷同調性。
3.適切な体液貯留能力。
4.滲みとおし抵抗
【0037】
本発明は、パルス、使い捨て創傷外傷用医薬材に組み入れるのが好ましい電磁波治療促進系において、先に特定された問題に取り組むことを目指す。これは創傷床の傍でイオン銀の濃度増大を促進し、潰瘍治癒を早めるだろう。
同様にこれは敗血症の危険およびコストを最小限にし、潰瘍治癒の効率を高めるであろう。
【0038】
本発明の好ましい実施形態は使い捨て、無菌、銀含浸創傷外傷用医薬材に埋め込まれた柔軟な電磁気エレメントを活用する。別々のポケットサイズの制御装置及び電源によってパルス電磁場が供給され、制御される。
【0039】
本発明の実施形態には実質的に潰瘍および他の難治性創傷治療を改良し、同時に治療のコストを減らす可能性がある。これだけではないが、実施形態はとりわけ以下の治療に適している:
・静脈および糖尿病による下腿潰瘍
・化学薬品および酸による火傷
・失敗し、再度行った皮膚移植
・放射線のイオン化により引き起こされた壊死同様にこれは以下のようにあるべきである
・難治性創傷によって引き起こされた欧州の切断術数を減らす手助けになる。
・年間500万人いる難治性創傷患者の生活の質の向上。
・保健医療費の直接的社会的負担の軽減。
【0040】
本発明の別の側面によると:
電磁波エレメントが、銀含有エレメント内の活性イオン数を制御するために銀含有エレメント近隣にパルス磁場を形成するよう制御可能な、銀含有エレメントおよび電磁波エレメントを含む創傷治療システムを提供し、さらに、銀含有エレメント内の活性イオン数を制御するために、電磁波エレメントが銀含有エレメント近隣にパルス磁場を形成するよう制御する、創傷治療方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に従った創傷治療システムの分解図である。
【図2】図1のシステムにおける使用に適した電磁波エレメントの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は本発明の実施形態に従った創傷治療システムの分解図である。
当該システムは銀含有層(A)、滲出液吸収層(B)、封入層(C)、封入/滲みとおり障壁(0)および電磁波エレメントを含む。
【0043】
図2に示したように電磁波エレメント(E)はセラミック/ポリマー混合物の形態でポリマー基質および高透磁率磁気層の上に平面螺旋銅コイル(従来の電磁石核に相当する)を含むのが好ましい。
【0044】
銅螺旋は柔軟なポリアミド基板上に集束フィールド蒸着物(FFD)によって加工してもよい。しかしながら、他にも可能な製造方法の候補がある。セラミック/ポリマー混合物はステンシルおよびスクリーン印刷で基板の両側、銅螺旋コイルの上下に蒸着される。
【0045】
FFD技術(非浸水添加電気メッキ加工)は主に硫酸銅溶液から抽出された電子蒸着された銅を使用する柔軟な回路を生産するように設計されている。
銅は必要な場合のみ、また必要量のみ基板の上に蒸着されるので、当該加工は著しく生産コストを下げるであろう。
【0046】
銅螺旋コイルにFFDを使用することの利点は:
・非浸水加工である。
・複数の基板選択を容認する。
・接続ないしゴム棒のない独立した回路パターンを使用するので無駄がない。
・厚さという概念を超える完全に制御された厚さの機能を携えている。
・環境にやさしい−閉回路系−廃棄物を直接流せるように作ることが可能である。
・複数のインライン金属蒸着様に作ることができる。
磁場拡大のために必要なレベルの十分な透過性および量の磁化を得るために、セラミック/ポリマー混合物におけるセラミックの質量分率は通常ポリマー基板厚膜に組み込まれた充填剤の質量分率よりも大きくなくてはならない。概して、充填剤の質量分率がこの様に高いと、接着に悪影響を及ぼし、フィルムが力学的障害や曲げている間に層間剥離の影響を受けやすくなる可能性がある。
【0047】
これらの悪影響は以下によって克服できる:
1.フィルム形成に適切なポリマー樹脂およびセラミック磁気粉充填剤の選択。
これに併せて
2.密封塗膜技術の使用ポリエステル樹脂には最高の負荷および接着特性がある。マンガン−亜鉛フェライト粒子を含む磁気粉を使用する。真空重合パリレンで塗膜することで接着力の向上を追求できる。
【0048】
銀含有層(A)は銀イオン負荷リン酸ジルコニウムナノ粒子がポリマー内に一様に分散したポリマーナノファイバーの不織構造からなるのが好ましい。
ナノファイバーには織り込まれた多孔性の構造、高い蒸気伝達率および高面積比(面積の体積に対する比)がある。高面積比というのは外傷用医薬材/創傷整合性を高度に円滑化するために外傷用医薬材の全厚さを最小にすることである。材料である不織布の性質は、創傷部位から取り外した際の外傷用医薬材材料の潜在的解放を最小限にすることを意味している。こうして薬が使用される状況での二次汚染の危険性を減少させる。
【0049】
滲出物接種において限定量変化することが望ましい。これは創傷面に外傷用医薬材をよりよく一致させるからである。このことは泡状であることが好ましい滲出液吸収層(B)によって記述されている。
【0050】
大きな量変化は、創傷部位への過度の圧力と同様に泡を褶曲し座屈させる可能性がある。そしてそれは使用者を不快にさせる可能性がある。低く広がっている泡が量効率が良い可能性がある。つまり、滲出液の吸収および保持の際に外傷用医薬材内の未使用空間が低度である。
【0051】
泡には超吸収粒子(SAPs)が組み込まれていてもよい。SAPは、例えば、泡の調合時にそれを一つ以上の構成エレメントの中に混ぜる、あるいは浸透させ、もしくはその泡を被膜したりして異なる方法で泡に組み込まれる可能性がある。SAPが泡の調合時に組み込まれるのが好ましい。その後SAPは泡のなかに固定し創傷内でのSAPの移動が避けられるからだ。さらにSAPは泡のなかに均等に配分されるだろう。それは遮断を防ぐメリットがある可能性がある。
【0052】
外側の滲みとおり障壁(D)は不浸透性、または、半浸透性材質である可能性がある。この外側の材質はまた、いわゆるシリコン撥水性および難燃性の添加物と同様処理されるのが好ましい。この材料は防水であろうが、必ずしも防水である必要はない。
【0053】
当該システムはまた制御回路、パルス発生器および電池パックを含む(図示せず)。理想的には、当該システムの電池持続時間は少なくとも8時間、好ましくは10時間であること。そうすれば継続性の強化された銀イオン治療が日常生活で可能になるだろう。次に使用者は消耗した電池を一晩充電し、完全に充電した電池と消耗した電池を交換する。
【0054】
電磁波エレメントにパルス波形を提供する電子制御回路は電池パックと一体で、これはベルトに装着したり、ポケットに入れたり、また何か別の方法で使用者に装着する。
永久磁石からの適度な静電気場に基づく磁気治療を、電磁石からのパルス磁場に基づく磁気治療と区別することが重要である。パルス磁場は静電気磁場とは非常に異なる。なぜなら、マクスウェルの方式によると、時間的に変化する磁場が電界を誘導するからだ。
【0055】
パルス磁場と関連した一時的電界が、常に活性銀イオン濃度を高めるイオン濃度の移動圧縮および希薄化を生みだす。例えば、パルス磁場によって生成された一時的電界が対象者の皮膚の内または外にある角度であるとき、創傷床における銀イオンは、その場にある一時的電界を最小にするような方法で、一瞬双極子電荷層へと分離する。それらのイオンが創傷床に向かって引かれるとき、イオンは隣接する同種のイオンで満たされた集積内の空間から離れ、次にこれらのイオンはさらに隣接するのイオンによって満たされた空間から離れる。電磁波エレメントを使用することで、イオン圧縮(通常より高濃度)を達成し、維持することができる。そしてこの圧縮波が創傷床に伝播する。
【0056】
磁気強化イオン銀治療の歩行可能な使用を可能にするために、全ての制御および電力回路を含む本発明の実施形態は自己充足的かつ日常的条件で患者が長時間(10時間までが理想)身につけられるように十分小さく作られる。
【0057】
本発明の好ましい実施形態において、二次元電磁化エレメントが使い捨て銀含浸外科用外傷用医薬材に組み込まれること。それはまた静脈下腿潰瘍の症例において肢の標準圧縮外傷用医薬材法の使用を可能にするだろう。
【0058】
当該埋め込み電磁波エレメントはガンマ線照射を含む全ての標準殺菌技術に抵抗力がある。
本システムは、創傷床における銀イオン集合の電磁気強化、外傷用医薬材内に必要な銀含有量を最小限にすることを円滑化する。これは創傷床曝露を、効果的だが、バクテリア細胞およびその後のバクテリアの死における銀イオンの選択的集積を引き起こす長期に渡りイオン銀が絶えず過剰に補充されることはないレベルにまで増加する。
【0059】
本装置は潜在的に毎日24時間使える可能性がある。
本装置が機能している限り、銀イオンが一定濃度に保たれることは事実である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀含有エレメントおよび電磁波エレメントを含み、前記電磁波エレメントは、銀含有エレメント内の活性イオン数を制御するため銀含有エレメントに隣接するパルス磁場を形成する制御が可能であることを特徴とする創傷治療システム。
【請求項2】
前記銀含有エレメントがポリマーナノファイバーの不織構造を含み、実質的に構造内に均一に分散する銀イオン負荷ホスホン酸ジルコニウム・ナノ粒子を有することを特徴とする、請求項1に記載の創傷治療システム。
【請求項3】
電磁波エレメントが実質的平面螺旋金属コイルを含むことを特徴とする、請求項1あるいは請求項2に記載の創傷治療システム。
【請求項4】
電磁波エレメントが銅コイルを含むことを特徴とする、請求項3に記載の創傷治療システム。
【請求項5】
電磁波エレメントがさらにセラミック/ポリマー混合物の形態でポリマー基質および高透磁率磁気層を含むことを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の創傷治療システム。
【請求項6】
銀含有エレメントおよび電磁波エレメントを含む外傷用医薬材をさらに含むことを特徴とする、前記任意の請求項に記載の創傷治療システム。
【請求項7】
前記外傷用医薬材は、滲出液吸収層、封入層、および封入/滲みとおし障壁をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の創傷治療システム。
【請求項8】
滲出液吸収層が泡状構造を持つことを特徴とする、請求項7に記載の創傷治療システム。
【請求項9】
滲出液吸収層が超吸収粒子を含むことを特徴とする、請求項8に記載の創傷治療システム。
【請求項10】
さらに要求に応じて電磁波エレメント内にパルス磁界を生みだすために配置された電磁波エレメントに連結した制御回路をさらに含むことを特徴とする、前記任意の請求項に記載の創傷治療システム。
【請求項11】
制御回路が電磁波エレメントに電力を供給するために電源と統合されることを特徴とする、請求項10に記載の創傷治療システム。
【請求項12】
銀含有エレメントおよび電磁波エレメントを含む創傷治療システムを提供し、前記電磁波エレメントは、銀含有エレメント内の活性イオン数を制御するために、銀含有エレメント近隣にパルス磁場を形成する制御が可能であり、かつ、銀含有エレメント内の活性イオン数を制御するために電磁波エレメントが銀含有エレメント近隣にパルス磁場を形成することを制御することを含むことを特徴とする創傷治療方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−523622(P2011−523622A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546394(P2010−546394)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000396
【国際公開番号】WO2009/101411
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(510217862)パルス メディカル テクノロジーズ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】PULSE MEDICAL TECHNOLOGIES LTD
【住所又は居所原語表記】19b Woolpit Business Park,Woolpit,Bury St Edmunds,Suffolk IP30 9UP,Great Britain
【Fターム(参考)】