説明

創傷治療用外用剤

【課題】褥瘡、皮膚潰瘍等の難治性疾患に対し、十分な治癒促進効果を有しつつ、特に患部における刺激性を低減することができる新たな創傷治療用外用剤を提供することを目的とする。
【解決手段】白糖、ヨウ素及び油性基剤を含有する創傷治療用外用剤であって、前記油性基剤の含有量が15.5〜45重量%であることを特徴とする創傷治療用外用剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糜爛、褥瘡、皮膚潰瘍及び火傷などの皮膚損傷を伴う疾患を治療するための創傷治療用外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚組織や粘膜は種々の原因によりしばしば損傷を受ける。これらの皮膚組織等の損傷である傷や潰瘍は一般に「創傷」と呼ばれ、その具体例として、糜爛、切り傷、擦過傷、火傷、褥瘡、皮膚の潰瘍などが挙げられる。これら創傷は痛みを伴い、また、感染症を引き起こす可能性、さらには治癒過程に問題が生じてケロイド状となったり瘢痕等が残る場合もあるため、早期のうちに完全に治癒させることが望ましい。特に褥瘡や皮膚潰瘍は、寝たきりの老齢者のみならず、障害者、栄養状態の悪い人、或いは回復力の弱い状態の人などに生じ易く、多くは長期化する為、大きな社会問題となっている。
褥瘡は、皮膚が圧迫されることにより局所の血流が阻害され、その結果、皮膚組織が循環不全により損傷する病態をいい、軽症のものでは皮膚表面が爛れるだけに止まるが、重症のものでは皮下組織から骨、靱帯に至る皮膚潰瘍を形成する。とりわけ、重傷の場合は極めて難治性で、場合によっては細菌感染から死に至ることもある。
【0003】
近年、創傷治癒促進を目的とした種々の創傷治療薬、特に外用剤の開発が進んでいる。
これらの例としては、フィブリノリジン、デオキシリボヌクレアーゼ、ストレプトキナーゼ、ストレプトドルナーゼなどの繊維素溶解酵素や、塩化リゾチーム等を含有する壊死組織除去剤、硫酸ゲンタマイシン、スルファジアジン銀、バシトラシン、硫酸フラジオマイシン等を含有する抗菌剤、トラフェルミン、ブクラデシンナトリウム、トレチノイントコフェリル(トコレチナート)、アルプロスタジルアルファテクス、ソルコセリル(幼牛血液抽出物)、アルクロキサ等を含有する肉芽形成促進剤、白糖、ポビドンヨード、ヨウ素等を含有するヨウ素製剤、ペンダザック、ジメチルイソプロピルアズレン(グアイアズレン)、エピネフリンなどを有効成分として含有する製剤等が挙げられる。
【0004】
特に、白糖は創傷治癒作用を有すること、ポビドンヨードは(ヨウ素による)殺菌作用を有することが知られており、白糖とポビドンヨードとを混合した創傷治療用外用剤は、創傷治癒作用と殺菌作用とを併せもつ製剤として、以前から褥瘡や皮膚潰瘍等の創傷治療に使用されてきた(例えば、特許文献1、2)。
現在では、特許文献1、2に開示されている創傷治療用外用剤の欠点でもあった、製剤的な安定性と均一性とを改良した白糖・ポビドンヨード配合剤が市販され、褥瘡を含む創傷治療において広く臨床の場で使用されるに至っている(特許文献3)。
しかしながら、特許文献1〜3に例示される従来の白糖・ポビドンヨード配合剤を含む種々の創傷治療用外用剤は、何れも刺激性が強いという欠点を有している。
さらに従来の創傷治療用外用剤では、例えば臨床の場において、創傷治癒作用を有する白糖分子自体によるざらつきが、患部に塗布する際に痛みを伴う等の指摘もされており、患者への負担が多大なものとなっていた。
【0005】
即ち、特許文献1、2に開示されている創傷治療用外用剤は、刺激性が強い欠点を有する他、製剤安定性に問題があった。
特許文献3に開示されている創傷治療用外用剤は、経時的な稠度の上昇を抑制し、更に製剤が軟らかく、深い傷口、肉芽面等への適用性に優れるものなので、製剤安定性には優れるが、依然として、刺激性が強いという欠点を有しており、又、該欠点については一切考慮されていなかった。
以上より、高齢化社会の到来と共に未だ難治性の疾患である褥瘡、皮膚潰瘍等の難治性疾患に対し、十分な治癒促進効果を有しつつ、刺激性(特に患部における刺激性)が抑えられた創傷治療用外用剤の開発が強く望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特公平01−32210号公報
【特許文献2】特公平06−17299号公報
【特許文献3】特開2005−306810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、褥瘡、皮膚潰瘍等の難治性疾患に対し、十分な治癒促進効果を有しつつ、特に患部における刺激性を低減することができる新たな創傷治療用外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、請求項1に係る発明は、白糖、ヨウ素及び油性基剤を含有する創傷治療用外用剤であって、前記油性基剤の含有量が15.5〜45重量%であることを特徴とする創傷治療用外用剤に関する。
請求項2に係る発明は、前記油性基剤が、ワセリン、ゲル化炭化水素から選択されるいずれか1以上であることを特徴とする請求項1記載の創傷治療用外用剤に関する。
請求項3に係る発明は、前記ワセリンが、白色ワセリン、親水ワセリンから選択されるいずれか1以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の創傷治療用外用剤に関する。
請求項4に係る発明は、前記白糖の配合量が、50〜80重量%であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の創傷治療用外用剤に関する。
請求項5に係る発明は、前記ヨウ素の配合量が、0.01〜5重量%であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の創傷治療用外用剤に関する。
請求項6に係る発明は、外用剤の剤型が、パスタ剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤、貼付剤、パップ剤、パッチ剤のいずれか1つである請求項1乃至5いずれか記載の創傷治療用外用剤に関する。
請求項7に係る発明は、前記創傷が、糜爛、切り傷、擦過傷、火傷、褥瘡、皮膚潰瘍から選択されるいずれか1つであることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の創傷治療用外用剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる創傷治療用外用剤は、褥瘡、皮膚潰瘍等の難治性疾患に対し、殺菌作用に基づく創傷面からの感染症を予防しつつ、創傷面に過度の乾燥をきたすことなく、適度な湿潤環境に維持することを可能とするので、創傷治療効果の促進、瘢痕化の防止、ヨウ素の創傷面への蓄積を低減することができる。
同時に、本発明にかかる創傷治療用外用剤は、刺激性、特に患部における刺激性を低減することができるので、治療過程において、患者に過度のストレスを与えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは鋭意研究の結果、白糖とヨウ素とを混合した創傷治療用外用剤に、油性基剤を15.5〜45重量%含有することを特徴とする創傷治療用外用剤が、創傷治癒作用と殺菌作用とを併せもつと同時に、特に患部における刺激性を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明にかかる創傷治療用外用剤は、白糖の創傷治癒作用と、ヨウ素の十分な殺菌作用により、創傷面からの感染症を予防できると同時に、特筆すべき事項として、従来(例えば、特許文献3)、充分な稠度安定化効果を得る為に含有されていた油性基剤を特定の含有量(15.5〜45重量%)加えることにより、特に患部における刺激性を低減させ、患者に過度のストレスを与えることがない。
更に、前記油性基剤の保湿作用により、適度な創傷面の湿潤度維持を可能とし、それによる治癒促進作用、瘢痕化の防止、創傷面へのヨウ素の残存量を低減することができる。
以下にこれらの効果を発揮することができる本発明の実施形態について(本発明にかかる創傷治療用外用剤を構成する成分ごとに)詳説する。
【0012】
本発明における「油性基剤」は通常、軟膏として使用されている油脂性基剤であれば限定されるものではないが、特にワセリン、ゲル化炭化水素を使用することが望ましい。
またワセリン、ゲル化炭化水素を混合させた油性基剤を用いても良い。
【0013】
本発明における「ワセリン」は、白色ワセリン、黄色ワセリン若しくは親水ワセリンのいずれでもよいが、「白色ワセリン」又は「親水ワセリン」を用いるのが好ましい。
「白色ワセリン」とは、石油から得た炭化水素類の混合物を脱色して精製したものであり、日本薬局方に記載されたものを用いればよい。
一般市場で入手できる「白色ワセリン」として、丸石製薬株式会社の「軟膏基剤 日本薬局方 白色ワセリン 500g」を例示することができる。
「親水ワセリン」とは、白色ワセリン、サラシミツロウ、ステアリルアルコール、コレステロール等の混合物であり、日本薬局方に記載されたものを用いればよい。
一般に入手できる「親水ワセリン」として、丸石製薬株式会社の「軟膏基剤 日本薬局方 親水ワセリン 500g」を例示することができる。
【0014】
本発明における「ゲル化炭化水素」としては、例えば流動パラフィンとポリエチレン樹脂の混合物があげられ、一般市場で入手できる「ゲル化炭化水素」として大正製薬株式会社の「プラスチベース」(登録商標)を例示することができる。
【0015】
本発明の創傷治療用外用剤におけるワセリン、ゲル化炭化水素などの油性基剤の含有率は、15.5〜45重量%、好ましくは20〜30重量%、より好ましくは20重量%〜25重量%である。
この理由は、15.5重量%未満であると、刺激性が強いものであると同時に、保湿効果を十分に発揮できない為、45重量%を超えると、製剤化が困難であり、いずれの場合も好ましくないからである。
【0016】
本発明にかかる創傷治療用外用剤は、ワセリン、ゲル化炭化水素等の油性基剤の含有率を15.5〜45重量%とする点に技術的特徴を有し、該構成によって特に患部における刺激性を低減させるという重要解決課題の一つを達成することができる。
【0017】
本発明における創傷治療用外用剤には、創傷治癒作用を有する「白糖」が含まれる。
ここでいう白糖は、精製砂糖等の吸湿性を持つ糖類が含まれ、例えば日本薬局方に記載された白糖、精製白糖があげられる。
白糖の配合量は特に限定されるものではないが、50〜80重量%であるのが好ましく、60〜70重量%であれば、より好ましい。
この理由は、50重量%未満であると、十分な創傷治癒効果が得られない為、80重量%を超えると、それ以上の創傷治癒効果が望めないばかりか、瘢痕化を惹起することにもなり、いずれの場合も好ましくないからである。
【0018】
本発明における創傷治療用外用剤には、殺菌作用を有する「ヨウ素」が含まれる。
本発明における「ヨウ素」は、特に限定されるものではなく、1−ビニル−2−ピロリドンの重合体との複合体(ポビドンヨード)や界面活性剤との複合体といったヨードホールとして存在してもよい。
創傷治療用外用剤における「ヨウ素」の含有率は、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは0.1〜0.9重量%である。
この理由は、0.01重量%未満であると、殺菌作用を十分に発揮できない為、5重量%を超えると、創傷面及びその周辺の皮膚にヨウ素製剤の蓄積をきたし、ヨウ素の残存により皮膚の着色(所謂ヨウ素焼け)やヨウ素製剤そのものによる刺激などの副作用が懸念される為、いずれの場合も好ましくないからである。
【0019】
本発明の創傷治療用外用剤は上記の有効成分と共に薬学的に許容される製剤担体を用いて、外用剤として従来から公知の剤型とすることができる。
特に、パスタ剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤、貼付剤、パップ剤、パッチ剤などの剤型とすることが好ましい。
また、本発明の創傷治療用外用剤の調製・製造は、上記の剤型に応じ、前記ヨウ素剤成分と、製剤学的に慣用されている製剤技術を常法により混合、均一化することにより行うことができる。
例えば、ポビドンヨード及び白色ワセリンに各種の基剤成分や任意成分を徐々に加えながら練合し、均一の状態になるようにして本発明の創傷治療用外用剤が調製される。
【0020】
上記有効成分に加え、本発明の創傷治療用外用剤の調製・製造において用いられる成分のうち、基剤成分の具体例としては、例えば以下の成分が挙げられる。
【0021】
まず、脂肪類としては、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ハードファット等の合成油、オリーブ油、ダイズ油、ナタネ油、ラッカセイ油、ベニバナ油、ヌカ油、ゴマ油、ツバキ油、トウモロコシ油、メンジツ油、ヤシ油等の植物油、豚脂、牛脂等の動物油及びこれらの硬化油等を挙げることができる。
ロウ類としては、例えばラノリン、ミツロウ、カルナウバロウ、鯨ロウ等の天然ロウや、モンタンロウ等の鉱物ロウ、合成ロウ等を使用することができる。
また、炭化水素としては、例えば、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、ポリエチレン末、ゲル化炭化水素等を挙げることができる。
【0022】
高級脂肪酸としては、例えばステアリン酸、ベヘニン酸、パルミチン酸、オレイン酸等を使用することができる。
また、高級アルコールとしては、例えばセタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール等を使用することができ、さらに、多価アルコールとしては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール等を挙げることができる。
【0023】
合成及び天然高分子としては、例えばカラギーナン、デンプン、デキストリン、デキストリンポリマー(カデキソマー)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポロクサマー)トラガント、アラビアゴム、ローカストビーンガム、ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、プルラン、アルギン酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等を使用することができる。
また、界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル等を使用することができる。
【0024】
低級アルコールとしては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等を使用することができる。
ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等を使用することができる。
粉体としては、例えばカオリン、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、無水ケイ酸、デンプン等を使用することができる。
セルロース誘導体としては、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース等を使用することができる。
無機塩類としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、ポリリン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸鉄、リン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸ナトリウム、セスキ炭酸ナリウム、硫化ナトリウム、ホウ砂、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、塩化カリウム等を使用することができる。
【0025】
より具体的に、各剤型と添加成分の関係を示せば次の通りである。
即ち、パスタ剤は、油性パスタ剤あるいは水性パスタ剤の剤型で使用でき、油性パスタ剤の場合には、基剤成分として、例えば脂肪類、ロウ類、炭化水素等が使用され、水性パスタ剤には、基剤成分として、例えば合成及び天然高分子、多価アルコール、界面活性剤等を使用することができる。
また、軟膏剤の場合には、基剤成分として、例えば脂肪類、多価アルコール、炭化水素等を使用することができる。
クリーム剤の場合には、基剤成分として、例えば界面活性剤、高級アルコール、高級脂肪酸、炭化水素、多価アルコール、水(精製水)等を使用することができる。
液剤及びゲル剤の場合には、基剤成分として、例えば水(精製水)、低級アルコール、ケトン類、脂肪類、多価アルコール、界面活性剤、炭化水素、合成及び天然高分子等を使用することができる。
【0026】
さらに、本発明の創傷治療用外用剤には、必要に応じてpH調整剤として水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物等を使用してもよく、また、防腐・保存剤として、例えば安息香酸ナトリウム等の安息香酸アルカリ金属塩、パラオキシ安息香酸エステル、ソルビン酸等を配合してもよい。
さらに、これも必要により、抗酸化剤として、例えばトコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等を用いてもよい。
【0027】
上記により得られた本発明の創傷治療用外用剤は、エマルジョン型の製剤とすることもできるが、その場合のエマルジョンの形態はW/O型、O/W型どちらの形態であっても構わない。
また、本発明の創傷治療用外用剤は、皮膚外用剤自体をそのまま患部に塗布してもよいが、例えば、当該外用剤をさらに伸縮性を有する布や不織布あるいはプラスチックシート等に塗布したパップ剤やプラスター剤等の貼付剤として患部に適用してもよい。
【0028】
上記により得られた本発明の創傷治療用外用剤は、皮膚に対して安全であり、使用感も良好で、臨床的に優れ、かつ創傷に対して極めて有効な治癒促進作用を発揮することができるものである。
従って、本発明の創傷治療用外用剤は、糜爛、切り傷、擦り傷、火傷、褥瘡、皮膚潰瘍等の創傷の治癒に十分な効果を発揮することができるものである。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づき更に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
尚、特記しない限り、配合量を重量%で表す。
【0030】
〔1.創傷治療用外用剤の製造〕
本発明にかかる創傷治療用外用剤について、以下の処方及び製法を用いて、本発明品1乃至4を得た。
処方例に用いた薬剤は以下の1)乃至 5)である。
1)白色ワセリン(ナカライテスク株式会社製)
2)日本薬局方に記載された白糖(丸石製薬株式会社製)
3)ポビドンヨード(シグマ製)
4)ポリエチレングリコール400(和光純薬工業株式会社製)
5)ポリエチレングリコール4000(和光純薬工業株式会社製)
【0031】
(本発明品1(100g中)): 油性基剤(白色ワセリン)の含有量が45重量%
白色ワセリン 45g
白糖 50g
ポビドンヨード 1.5g
ポリエチレングリコール400 2g
ポリエチレングリコール4000 1g
精製水 0.5g
(本発明品2(100g中)): 油性基剤(白色ワセリン)の含有量が30重量%
白色ワセリン 30g
白糖 65g
ポビドンヨード 3g
ポリエチレングリコール400 1g
ポリエチレングリコール4000 0.5g
精製水 0.5g
(本発明品3(100g中)): 油性基剤(白色ワセリン)の含有量が20重量%
白色ワセリン 20g
白糖 70g
ポビドンヨード 3g
ポリエチレングリコール400 4g
ポリエチレングリコール4000 2.5g
精製水 0.5g
(本発明品4(100g中)): 油性基剤(白色ワセリン)の含有量が15.5重量%
白色ワセリン 15.5g
白糖 70g
ポビドンヨード 3g
ポリエチレングリコール400 8g
ポリエチレングリコール4000 3g
精製水 0.5g
(製法)
上記処方に記載する割合で混合練合し、半固形状に調製した。
【0032】
本発明の比較対照にあたる創傷治療用外用剤について、以下の処方及び製法を用いて、比較対照品1乃至3を得た。
処方例に用いた薬剤は以下の1)乃至 5)である。
1)白色ワセリン(ナカライテスク株式会社製)
2)日本薬局方に記載された白糖(丸石製薬株式会社製)
3)ポビドンヨード(シグマ製)
4)ポリエチレングリコール400(和光純薬工業株式会社製)
5)ポリエチレングリコール4000(和光純薬工業株式会社製)
【0033】
(比較対照品1(100g中)): 油性基剤(白色ワセリン)の含有量が15重量%
白色ワセリン 15g
白糖 70g
ポビドンヨード 3g
ポリエチレングリコール400 8g
ポリエチレングリコール4000 3.5g
精製水 0.5g
(比較対照品2(100g中)): 油性基剤(白色ワセリン)の含有量が5重量%
白色ワセリン 5g
白糖 70g
ポビドンヨード 3g
ポリエチレングリコール400 15g
ポリエチレングリコール4000 6.5g
精製水 0.5g
(比較対照品3(100g中)): 油性基剤(白色ワセリン)の含有量が0重量%
白糖 70g
ポビドンヨード 3g
ポリエチレングリコール400 18g
ポリエチレングリコール4000 8.5g
精製水 0.5g
(製法)
上記処方に記載する割合で混合練合し、半固形状に調製した。
【0034】
〔2.患部における刺激性低減効果の確認〕
皮膚潰瘍患者3名に、上述した本発明品2及び3、並びに比較対照品1について患部に直接塗布することにより、刺激性の有無を、5点:特に刺激性なし、4点:あまり刺激性なし、3点:普通、2点:刺激性あり、1点:特に刺激性あり、とスコア化して評価した。
各人のスコアを平均して、以下の評価基準により各試料の刺激性を評価した。
結果を表1に記載する。
<評価基準>
◎ :平均スコア 4.5以上
○ :平均スコア 3.5以上4.5未満
△ :平均スコア 2.5以上3.5未満
× :平均スコア 1.5以上2.5未満
××:平均スコア 1.5未満
【0035】
【表1】

【0036】
上記結果より、本発明の創傷治療用外用剤は、刺激性が低減されていることが証明された。
即ち、白糖、ヨウ素及び油性基剤を含有する創傷治療用外用剤において、油性基剤の含有量を20重量%以上とすることにより、刺激性が低減されるということが示された。
【0037】
〔3.健常人における使用感の確認〕
健常人3名に、上述した本発明品2及び3、並びに比較対照品1について患部に直接塗布することにより、使用感について、5点:滑らかで伸びが良く使用感が良い、4点:ややざらつくが使用感が良い、3点:普通、2点:ざらつきが多くやや不快、1点:ざらつきが多く不快である、とスコア化して評価した。
各人のスコアを平均して、以下の評価基準により各試料の使用感を評価した。
結果を表2に記載する。
<評価基準>
◎ :平均スコア 4.5以上
○ :平均スコア 3.5以上4.5未満
△ :平均スコア 2.5以上3.5未満
× :平均スコア 1.5以上2.5未満
××:平均スコア 1.5未満
【0038】
【表2】

【0039】
上記結果より、本発明の創傷治療用外用剤は、使用感が向上することが証明された。
即ち、白糖、ヨウ素及び油性基剤を含有する創傷治療用外用剤において、油性基剤の含有量を20重量%以上とすることにより、使用感が向上するということが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白糖、ヨウ素及び油性基剤を含有する創傷治療用外用剤であって、前記油性基剤の含有量が15.5〜45重量%であることを特徴とする創傷治療用外用剤。
【請求項2】
前記油性基剤が、ワセリン、ゲル化炭化水素から選択されるいずれか1以上であることを特徴とする請求項1記載の創傷治療用外用剤。
【請求項3】
前記ワセリンが、白色ワセリン、親水ワセリンから選択されるいずれか1以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の創傷治療用外用剤。
【請求項4】
前記白糖の配合量が、50〜80重量%であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の創傷治療用外用剤。
【請求項5】
前記ヨウ素の配合量が、0.01〜5重量%であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の創傷治療用外用剤。
【請求項6】
外用剤の剤型が、パスタ剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤、貼付剤、パップ剤、パッチ剤のいずれか1つである請求項1乃至5いずれか記載の創傷治療用外用剤。
【請求項7】
前記創傷が、糜爛、切り傷、擦過傷、火傷、褥瘡、皮膚潰瘍から選択されるいずれか1つであることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の創傷治療用外用剤。

【公開番号】特開2007−277135(P2007−277135A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104103(P2006−104103)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【出願人】(393028036)丸石製薬株式会社 (20)
【Fターム(参考)】