説明

創傷治療組成物

本発明は、組織再生のための、具体的には皮膚損傷、例えば創傷を治療するための組成物及び方法に関する。1つの観点において、本発明は、支持マトリックス、例えばフィブリン内部に生きた細胞、例えば線維芽細胞を含む創傷治療組成物であって、該創傷治療組成物内で、該細胞は創傷治療表現型を有し、そして該組成物は単層状であり、該創傷治療表現型の発生を可能にするために最大約8日間にわたってインキュベートされている、創傷治療組成物を提供する。本発明の組成物及び方法は、特に創傷治癒、具体的には、治癒が遅い又は治癒に対して耐性がある慢性開放性損傷の治癒のプロセスを助けるのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織再生のための、具体的には皮膚損傷、例えば創傷を治療するための組成物及び方法に関する。これらの組成物及び方法は、特に創傷治癒、具体的には、治癒が遅い又は治癒に対して耐性がある慢性開放性損傷の治癒のプロセスを助けるのに有用である。
【背景技術】
【0002】
他の点では健常な組織内の胚上皮を通して広がる開放創傷の治癒は、「二次癒合」として古典的に記述されるプロセスによって行われる。このプロセスは、最初の止血に続いて、正しい順序で、炎症、細胞浸潤、血管形成、肉芽形成、及び上皮再形成を伴う。正常な治癒応答の一環として、存在する線維芽細胞が、一連の表現型変化を被ることを必要とされ、線維芽細胞は創傷部位に移動し、次いで増殖し、そして細胞外マトリックス分子を合成して分泌する。in vivoでは、少なくとも所定の割合の線維芽細胞は次いで、創傷収縮を容易にするために、筋線維芽細胞に転換する。
【0003】
in vitroでは、表現型において区別可能な一連の分裂線維芽細胞及び分裂終了線維芽細胞の個体群が記述されている(Bayreuther他、1988、Proc Natl Acad Sci USA 85: 5112-5116)。分化の経路は、創傷部位に存在する線維芽細胞及び細胞外マトリックス(ECM)タンパク質との相互作用によって、少なくとも部分的に制御されるように見える。成長因子及びサイトカインも重要な影響を疑いなく及ぼすものの、これらの効果もまた、特定のECMタンパク質に対する線維芽細胞の曝露によって調節されるように見える。線維芽細胞分化において重要な役割を有するように見えるECMタンパク質の中には、フィブリノゲン及びフィブリンがある。線維芽細胞はαvβ3インテグリン受容体を通して、フィブリン及びフィブリノゲンの「RGD」モチーフと特異的に相互作用するが、その細胞応答は複雑であり、そして他の因子によって調節される。ヒト歯周膜線維芽細胞に対するフィブリン接着剤の効果に関するin vitro研究が示唆したところによれば、フィブリンは線維芽細胞増殖をわずかに阻害するように見える。フィブリン・マトリックスの存在はまた、取り込まれた線維芽細胞によってコラーゲンの合成を増大させると報告されている(Neidert他、2001年、Proceedings of the ASME Bioengineerng Conference, Kamm他編、第50巻:215-216)。
【0004】
線維芽細胞はまた、フィブリン塊の再モデリングにおいて役割を有することが知られている。新しい細胞外マトリックス・タンパク質、例えばI及びIII型コラーゲン、フィブロネクチン及びビトロネクチンが設けられるのに伴って、フィブリン・マトリックスは、主として血漿由来酵素プラスミンの活性化によって分解される。このことは、種々のプラスミノゲン・アクチベーター及びインヒビターによる、そのプロ酵素、プラスミノゲンの活性化(又は阻害)によって調節される。in vivoでは、多数の浸潤細胞、例えば好中球及びマクロファージが、ウロキナーゼ型プラスミノゲン・アクチベーター(uPA)を分泌するのに対して、内皮細胞が、組織プラスミノゲン・アクチベーター(tPA)の生成に大きく関与する。線維芽細胞はまた、uPAインヒビター及びプラスミノゲン・アクチベーター・インヒビターの両方、例えばプラスミノゲン・アクチベーター・インヒビター-1(PA-1)を分泌する。これらの拮抗メディエーター間のバランスは、フィブリン再モデリング及び瘢痕形成の制御において重大である。拮抗メディエーターの発現は、発生の上で調節され、また、細胞外マトリックス成分及び局所成長因子によって制御される。
【0005】
架橋型フィブリン塊及び細胞外マトリックスの密な網状構造を通る運動を容易にするために、種々様々な線維芽細胞由来酵素及び血清由来酵素が、移動のための通路を切り開く。これらの酵素は、間質コラゲナーゼ(マトリックス・メタロプロテイナーゼ-1、MMP-1)、ゼラチナーゼ(マトリックス・メタロプロテイナーゼ-2、MMP-2)、ストロメリシン(マトリックス・メタロプロテイナーゼ-3、MMP-3)、及びプラスミノゲン・アクチベーターを含む。化学走化性因子、例えばTGF-β及びPDGFが、これらの酵素の生成及び分泌をアップレギュレートすることができる。
【0006】
移動する線維芽細胞が創傷に到達すると、これらは徐々に分泌性になり、タンパク質合成が増大させられる。以前には後退させられていた小胞体及びゴルジ体が、細胞質全体にわたって分散されるようになり、ルーズなマトリックスが生成される。このマトリックスは主に、フィブロネクチン及びIII型コラーゲンから成る。最終的には、多数の粗面小胞体及びゴルジ体によって特徴付けられるこの線維形成促進表現型が、高発現されたTGF-βに応答して、新たに合成されたコラーゲンを分泌することを担う。それにもかかわらず、TGF-βは、マトリックスが堆積されると、更なるコラーゲン堆積をアップレギュレートすることができない。肥満細胞によって放出されたIL-4が、フィブロネクチンと一緒にI及びIII型コラーゲンの小幅な上昇を誘発することも考えられる。肥満細胞はさらに、トリプターゼ(セリンエステラーゼ)を大量に生成する。トリプターゼは、線維芽細胞増殖をアップレギュレートすることが判っている。
【0007】
線維芽細胞増殖及びマトリックス合成に関与するTGF-α、TGF-β及びPDGFのような刺激が、in vitro(Derynck, 1988, Cell 54: 593-595; Ross & Raines, 1990, 「Growth Factors: From genes to clinical applications、Sara他編、193-199、Raven Press, New York; Sporn & Roberts, 1992, J Cell Biol 119: 1017-1021)で、そして創傷のin vivo操作(Sprugel他、1987、Am J Pathol 129: 601-613: Pierce他、1991、J Cell Biochem 45: 319-326)によって幅広く研究されている。他方において、γ-インターフェロンは、in vitro及びin vivoにおいて線維芽細胞の分裂可能性及び合成可能性に対して不都合な影響を及ぼすことが実証された(Duncan & Berman、1985、J Exp Med 162: 516-527; Granstein他、1987、J Clin Invest 79: 1254-1258)。加えて、コラーゲン・マトリックスはそれ自体がこれらの活性を抑制することができる(Grinnell、1994、J Cell Biol 124: 401-404; Clark他、1995、J Cell Sci 108: 1251-1261)一方、フィブリン又はフィブロネクチン・マトリックスは抑制効果をほとんど又は全く有さない(Clark他、1995、上述)。多くの線維芽細胞は治癒中10日目の創傷においてアポトーシスを被り(プログラムされた細胞死)、これにより線維芽細胞が豊富な肉芽組織から、細胞密度が低減された瘢痕組織への推移が明らかになる。
【0008】
創傷が上皮基底層を破壊した場合には、浸潤性線維芽細胞によるコラーゲン堆積及び上皮再形成の結果、ある程度の瘢痕が生じ、この場合、元の真皮の可撓性及び弾性に関する機能の修復は不完全であり、また、毛嚢及び汗腺のような補助構造を再生することはできない。
【0009】
このような創傷治癒の速度及び範囲に対して不都合な影響を及ぼし得る因子は多数あり、具体的には血液供給量の不足である。静脈還流不全及び静脈瘤、末梢血管障害又は糖尿病と関連する、潅流が十分に行われない組織はしばしば十分に治癒することができず、その結果慢性潰瘍になるが、病原の詳細はまだ明らかではない。具体的には慢性下腿潰瘍が、顕著で、ますます深刻になりつつある世界的な問題である。
【0010】
創傷の治療のために、種々のアプローチが試みられている。開放創傷を閉じ、日和見感染のリスクを最小限に抑え、治癒を加速し、そして瘢痕化を最小限に抑えるために、自己皮膚移植が用いられている。皮膚移植には顕著な制限があり、とりわけ、移植片を採取できる好適なドナー部位の要件が、創傷が広範囲(例えば火傷を伴う)である場合に、具体的な問題となる。加えて、移植の成功率は低く、創傷治癒は危ういものになる。
【0011】
具体的には慢性下腿潰瘍に関して、湿潤創傷被覆材と組み合わせて圧迫療法を導入することが、標準的な療法管理であった。
【0012】
最近では、組織エンジニアリング解決手段が利用可能になってきている。再生医療の研究は、特に、治療される自然の生理学的状態を綿密に模倣する環境によってプライミングされると、ヒトの細胞は損傷組織を治して再生させる相当の潜在能力を有することを示している。この研究のほとんどは、いわゆる「組織等価物」の生成に焦点を当てている。組織等価物の目的は、欠落組織の一時的な機能代替物を提供し、そして治癒を加速することである。組織等価物は、創傷の効果的な被覆をできる限り速く可能にすることを目的とした、真皮等価物又は全皮膚等価物であってよい。組織等価物の開発及び製造は通常、代替皮膚細胞の分離を伴う。代替皮膚細胞は増殖させられ、そして支持構造、例えば三次元生体再吸収性マトリックス上又はマトリックス内に、又はゲル系骨格内部に播種される。
【0013】
創傷治療用途のための無細胞タンパク質として、種々の材料が使用されている。これらは、合成ポリエステル(ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグラクチド(Dermagraft (登録商標), Smith & Nephew、下記)、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシアルコノエート及びヒアルロン酸誘導体)、親水性ポリウレタン(ポリエーテルポリエステル、ポリエチレンオキシド及びカルボキシメチルセルロースエチレン)、及びコラーゲン系骨格(架橋型エラスチン・コラーゲン材料(Matriderm (登録商標))、酸可溶性I型ウシ・コラーゲン材料から製造された架橋型コラーゲン(例えばVitaphore (登録商標))を含む。別のアプローチは、同種ヒト真皮の無細胞誘導体、細胞が除去されている天然真皮マトリックス(例えばAlloderm (登録商標)、LifeCell Corporation)を使用することである。いくつかの調製物は、組織化された層状構造を使用することにより、真皮の構造及び機能をより綿密に模倣する。例えば、ウシ・コラーゲン及びサメ・グリコサミノグリカンから成る下層と、シリコーンから成る上層とを含む調製物が知られている(Integra (登録商標)、Integra LifeSciences Corporation)。
【0014】
創傷治療の他のアプローチは、フィブリン・シーラント、例えばTisseel(登録商標)(Baxter)、Beriplast(登録商標)(Aventis)、Quixil(登録商標)(Omrix Biopharmaceuticals)、Haemaseel(登録商標)(Haemacure)、及びCrosseal(登録商標)(Omrix)の使用に関与している。商業的に利用可能なこれらのフィブリン・シーラントは、ウィルスに関してスクリーニングされた同種ドナーに由来するプール血漿の寒冷沈降物から誘導される。
【0015】
フィブリン生成物は、生理学的な血液凝固カスケード中に発生する天然重合プロセスに依存する。このプロセス中、モノマー・フィブリン前駆体であるフィブリノゲンが、活性化トロンビンによる作用を受け、その結果高分子フィブリンが生成される。フィブリンは、血餅のタンパク質骨格成分を形成し、この成分に血小板が付着する。
【0016】
フィブリンは、組織エンジニアリング用途に使用するのに好都合であり、しかも臨床的に受け入れられる細胞キャリアとして認識されている。細胞送達のためにフィブリン・シーラントを利用する、商業的に入手可能な製品は、Bioseed(登録商標)(Biotissue Technologies)を含む。火傷の治療のための細胞送達を目的としたフィブリン・シーラントの使用は、いくつかのグループによって示唆されている(Brown他、1993年、Am J Pathol 142: 273-283; Neidert他、2001、上記; Tuan他、1996、Exp Cell Res 223: 127-134; 及び米国特許出願公開第2003/01654482号明細書参照)。
【0017】
体外から投与された真皮細胞は、創傷治療に対して有益な効果をもたらすことが示されている。これらの効果は、完全な治癒までの時間の短縮(Falanga & Sabolinski、1999、Wound Repair Regen 7: 210-207)、創傷への活性成長因子の送達 (Naughton他、1997、Artif Organs 21: 1203-1210)、損傷再発のおそれの低減(Gentzkow他、1996、Diabetes Care 19: 350-354)、及び疼痛の軽減(Muhart他、1999、Arch Dermatol 135: 913-918)を含む。
【0018】
創傷治療用途のためのタンパク質マトリックスと真皮細胞との周知の組み合わせは、生体吸収性グリコール-乳酸ポリエステル(ポリグラクチド)骨格(Naughton他、1997、上記;米国特許第4,963,489号明細書)上に播種された極低温保存された一次ヒト包皮線維芽細胞を含む、Dermagraft(登録商標)(Smith & Nephew)と呼ばれる調製物を含む。線維芽細胞は、スカフホールド内で増殖することが可能になり、細胞外マトリックス・タンパク質及び成長因子及びサイトカインを分泌する。成熟調製物は、凍結保護剤として10%ジメチルスルホキシド及びウシ血清中にパッケージングすることにより、使用前に冷凍することによる製品の貯蔵を可能にする。このアプローチの欠点は、創傷(例えば潰瘍)への塗布中の製品の操作が難しいこと、及び製品の貯蔵及び輸送を極めて低温(-70℃)で行い、そして細胞の生存可能性を保証するために注意深い解凍手順を用いる必要があること(例えば国際公開第87/06120号パンフレット参照)を含む。
【0019】
コラーゲンをベースとするマトリックスと、生きた細胞との種々の組み合わせが知られている。Abligraf(登録商標)(Organogenesis, Inc.)は、生きたヒト線維芽細胞を支持するウシ・コラーゲン骨格から成る下側の層(「真皮」)層と、コラーゲン骨格上のヒト・ケラチノサイトを含む上側(「上皮」)層とを含む二層状構造である(Falanga & Sabolinski、1999、上記;国際公開第99/63051号パンフレット)。この調製物は、直径約75 mm及び厚さ約0.75 mmの円形ディスクとして、不活性ポリカーボネート膜上に供給される。Abligraf(登録商標)は、使用のために個別にパッケージングされ、5日間の貯蔵寿命を有する。これは、10% CO2/空気雰囲気とともに、アガロースが豊富な栄養素中に維持され、そして室温(20℃〜31℃;68°F〜88°F)で出荷され貯蔵される。貯蔵皿及びポリカーボネート膜から製品を取り出す作業は、滅菌ピンセットを使用してAbligraf(登録商標)のエッジを裂き取ることを伴う。この方法の問題は、過剰な折り目を含む。このような折り目は、調製物の創傷への正確な密接した塗布を困難で時間のかかるものにするおそれがある。
【0020】
同様の製品(Orcel(登録商標);Ortec International Inc)が米国特許第6,039,760号明細書に記載されている。Orcel(登録商標)は、線維芽細胞及びケラチノサイトを有するウシ・コラーゲンの二層状構造である。調製物は、2つの非付着性メッシュ片の間にパッケージングされている。これらのメッシュ片は、サイド間を区別するために異なる色を付けられている。次いでこの器具を、培地を含有するプラスチック・トレイ内にパッケージングすることにより、貯蔵・出荷中の細胞生存可能性を維持する。このプラスチック・トレイをさらにチル・パックを有するパウチ内にパッケージングすることにより、11℃〜19℃の温度を72時間にわたって維持する。
【0021】
ケラチノサイトから成る上層を支持するタンパク質マトリックス内に線維芽細胞の真皮様配列を再生させようとする組織等価物の別の例が、Meana他(1998、Burns 24: 621-630)に記載されている。Rama他(2001、Transplantation 72: 1478-1485)には、対側性角膜に移植するために、フィブリン・ゲル支持体上に自己辺縁幹細胞を培養する方法が記載されている。
【0022】
米国特許出願第2003/0165482号明細書に開示された創傷治療調製物(Allox(登録商標)、Modex Therapeutiques SA)は、トロンビンが添加されているフィブリノゲンの粘性ペースト(Tisseel(登録商標))中に、成長停止された同種のヒト線維芽細胞及びケラチノサイトを含むので、フィブリノゲン切断及びフィブリン重合がin situで発生する。或いは、別個の液体成分を創傷上に噴霧して、混合時にin situで固まるようにする。
【発明の開示】
【0023】
本発明は、代わりの創傷治療調製物、及び従来技術の製品及び方法に伴う問題に対処する関連製品及び方法を提供する。
【0024】
本発明の第1の観点によれば、支持マトリックス内部に生きた細胞を含む創傷治療組成物であって、該創傷治療組成物内で、該細胞は創傷治療表現型を有し、そして該組成物は単層状であり、該創傷治療表現型の発生を可能にするために最大約8日間にわたってインキュベートされている、創傷治療組成物が提供される。
【0025】
本発明は、即時に機能する組織等価物を提供することに基づくのではなく、治癒プロセスを促進して加速する潜在能力を有する細胞を、支持マトリックス(成熟マトリックス又は発育マトリックスとも呼ぶことができ;例えば生体適合性マトリックスである)内で送達することに基づいて、慢性創傷を治療するためのアプローチを提供する。生存可能な皮膚等価物(例えば、機能的であり且つ解剖学的に該当する構造に組織化された、線維芽細胞、細胞外マトリックス及び上側のケラチノサイトを含む培養された真皮組織等価物)の開発が価値のある目標であることに変わりはないが、これまでのところ、これは得難いことが判っている。しかし多くの状況に対して、本発明は、このようなアプローチが不必要に複雑であること、そしてよりシンプルな解決手段、つまり、適切な発生段階の細胞から成る単層を提供し、また、迅速に、都合よく、そして正確に創傷に塗布するための創傷治療組成物中で特定の表現型を示す解決手段が極めて効果的であることを明らかにする。本発明において使用される細胞は驚くほど速く発育して「創傷治療表現型」を有するようになることにより、即時の創傷治癒を促進する。創傷治療表現型は、創傷治癒を加速又は支援するための最適な表現型であると考えられる。本発明は、このような細胞を(組成物中で)創傷に、好ましくは創傷治療表現型の維持と一致するように送達するのを可能にする。
【0026】
組成物中の細胞が創傷治療表現型を有しているか否かは、組成物を創傷(本明細書中で定義する)に塗布し、そして創傷の治癒が加速又は支援されるか否かを観察することにより試験することができる。
【0027】
創傷治療組成物を塗布することができる創傷は、潰瘍、例えば静脈性潰瘍又は糖尿病性潰瘍、床擦れ、火傷、又は医原性擦過傷のような創傷を含む。組成物は、扱いにくい創傷、すなわち、標準的な治療で3ヶ月以内に治癒しなかった創傷を治療するのに特に有用である。
【0028】
「単層状」という用語は、組成物が、支持マトリックス内部に細胞を含有する層を1つだけ有することを意味する。すなわちこれは、(異なる)細胞から成る多層を有する多層状「皮膚等価物」ではない。しかし本発明は、付加的な非細胞層を有する組成物、並びに実質的に一様の単層を含む積重ね層を有する組成物をも含む。
【0029】
組成物は最大約96時間、例えば最大72時間、48時間、25時間又は24時間、好ましくは16時間〜24時間にわたってインキュベートすることができる。インキュベーションは好ましくはin vitroで行われるが、しかしin situで行うこともできる(例えば創傷に塗布される組成物と一緒に)。
【0030】
1実施態様の場合、継代培養されたヒト真皮線維芽細胞のような細胞を採取し、マトリックス、例えばタンパク質をベースとするマトリックス中に細胞を投入(又は播種)し、そして次いでこの混合物を例えば最大96時間にわたってインキュベートすると、結果として、創傷治療用途における使用に特に有益な創傷治療表現型が生じることが、本発明により見いだされた。このような細胞は、培養中には大部分が増殖期にある(低密度播種、接触阻止の回避によって促進される)ことが観察された。
【0031】
本発明は、通常の培養条件下、例えば37℃の標準培地内でインキュベートされるヒト真皮線維芽細胞の液体培養条件下では、創傷治療表現型の発生は典型的には2〜3日かかることがあることを見いだした。しかし好適な環境、例えば支持マトリックス及び/又は創傷におけるこのような線維芽細胞のインキュベーションは、発生プロセスを短縮するので、24時間前には、細胞は創傷治療表現型に入っている、又は達していることがある。このように、好適な支持マトリックス及び/又は創傷における細胞のインキュベーションは、結果として、創傷治療表現型に達する発生時間を標準的な(例えば液体)培養条件よりも短くする。
【0032】
組成物は好ましくは、約37℃の温度でインキュベートされる。インキュベーションがより低い温度で行われると、生きた細胞は、より遅い速度で発生することになり、インキュベーション時間を延長することが必要となる場合がある。
【0033】
好ましくは、組成物は、分裂不活化細胞(例えば米国特許出願公開第2003/0165482号明細書に記載されているように、例えばマイトマイシンC又は他の化学系分裂インヒビターの投与、γ線照射、X線照射、又はUV線照射によって分裂を不活化された細胞)を除外する。
【0034】
組成物は、インキュベーション後に、最大約40日間、好ましくは最大28日間又は21日間又は19日間、そしてより好ましくは約7〜14日間、又は約7〜11日間にわたって、2℃〜8℃、例えば3℃〜5℃、好ましくは約4℃の温度で、創傷治療能力を保持しながら貯蔵されてよい(すなわち貯蔵寿命を有してよい)。組成物は従って、或る従来技術の創傷治療組成物のような冷凍の必要がない。この組成物は好ましくは、低温保存剤又は凍結保護剤(例えばグリセロール及び/又はヒト血清アルブミン)として添加された物質を含有しない。
【0035】
創傷治療表現型期に達する又は接近するように組成物の細胞をインキュベートしたら、組成物を好ましくは、使用前に最大約40日間、そして確実には7〜14日間にわたって約4℃で好都合に貯蔵することができ、この場合生存可能性の著しい損失又は表現型の変化はない。このことは、本発明は創傷治療表現型を有する細胞を含む効果的な製品(例えば不適切なフィブリン溶解を最小限にしか含まない細胞外マトリックスの分泌に最適である細胞)を提供するだけでなく、一般に利用可能な標準冷蔵条件下で比較的長い貯蔵寿命をも提供する点で、有意な実際的な利点を有する。このような製品を約4℃で出荷できることはまた、輸送をかなり単純化する。2〜8℃のコールド・チェーンを維持することは、生きた細胞に一般に必要となるような-70℃での出荷よりもかなりシンプルであり低廉である。
細胞は好ましくは、哺乳動物、例えばヒトのものである。
【0036】
本発明の細胞は、線維芽細胞、ケラチノサイト、基底層細胞、及びこのような細胞の組み合わせ又は混和物を含んでよい。しかし、好ましい実施態様の場合、組成物の細胞は、ケラチノサイトを実質的に除外することができる。細胞は、任意の好適な哺乳動物源、好ましくはヒトから分離することができる。細胞は好ましくは同種異系であるが、自己細胞及び/又は異種細胞を使用することもできる。細胞は実質的に1つのタイプだけから、例えば90〜100%、好ましくは95〜99.5%、より好ましくは97.5%〜99%の1タイプから成っていてよい。好ましい実施態様の場合、細胞は実質的に線維芽細胞であり、例えば90〜100%、好ましくは95〜99.5%、より好ましくは97.5%〜99%の線維芽細胞である。線維芽細胞は、真皮線維芽細胞、好ましくはヒトの真皮線維芽細胞である。好ましい実施態様は同種ヒト包皮由来線維芽細胞を含む。
【0037】
製造の際に必要となるように、細胞は解凍し、回収し、培養中(例えば約1週間)に又はこれらが密集状態に達するまで増殖させ、そして適切な容積及び所望の密度で再懸濁することができる。初期継代培養細胞が好ましいが、より後期の継代培養細胞を使用することもできる。好ましくは細胞は20回未満、より好ましくは15回未満、最も好ましくは10回未満、例えば7回の継代培養を受けたものである。本発明における使用のために解凍されると、細胞は上記のようにさらにインキュベートすることができる。
【0038】
本発明の目的において、0日目は、細胞がインキュベートされ発育を開始し、そして細胞が上記時間フレーム内(0日目後、例えば最大4日間又は96時間)で表現型に達することになる日である。
【0039】
細胞は活性合成型であるか、又は(例えば貯蔵に続いて)急速に活性合成型になることが可能であってよい。
【0040】
細胞は好ましくは、増殖性ではなく、かつ/又は老化期にはない。最適には、細胞は、増殖期又は老化期ではなく、発育(又は成熟)の合成期になくてはならない。増殖は、細胞数の増大に有用であり得るが、しかし、細胞外マトリックス・タンパク質、例えばコラーゲンI及びIII型、フィブロネクチン及びビトロネクチンの重要な合成を遅らせる。老化するようになった細胞は、創傷治癒に関与せず、ひいては、このような治療薬としての目的をほとんど果たさない。
【0041】
細胞は、マトリックス内部に、好ましくはマトリックス内部にほぼ均一に懸濁することができる。
【0042】
マトリックスは、タンパク質をベースとしていてよく、例えば約3〜12 mg/mlのタンパク質濃度を有している。例えば、マトリックスは好ましくは凝固可能な又はゲル化性の物質、例えばフィブリン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、アルギン酸塩、寒天、コラーゲン、PVA、ヒアルロン酸、変性澱粉、カラゲナン、イナゴ豆、ゼラチン、ペクチン又はゲル化剤である。
【0043】
マトリックスは好ましくは非発熱性及び/又は無菌性である。
【0044】
好ましい実施態様の場合、マトリックスはフィブリン・マトリックスである。フィブリンの組成物中濃度は、3〜12 mg/ml、例えば7〜12 mg/ml又は3〜5 mg/mlであってよい。フィブリン・マトリックスは好ましくは、フィブリノゲンのトロンビン媒介型重合によって形成される。
【0045】
マトリックスは好ましくは固形又は半固形である。組成物のマトリックスは、これが固形又は半固形(例えばゲル)の形態として提供されるという意味で、「プレキャスト型」である。マトリックスは不溶性であってよい。最も好ましくは、細胞は、創傷治療表現型の発生前にマトリックス内に投入される。
【0046】
組成物内部に発生するフィブリン溶解の速度は、フィブリン・マトリックスをベースとする組成物とともに考慮に入れられる因子であってよい。上述のようにフィブリン溶解は、創傷治癒プロセスの通常の一部であり、これにより、フィブリン・マトリックスは、他の細胞外マトリックス・タンパク質によって徐々に置き換えられる。しかしフィブリン溶解があまりにも早く又はあまりにも速く発生すると、創傷治療ゲルは、有用なコラーゲン堆積が発生する前に崩壊してしまう。フィブリン溶解促進因子、例えばウロキナーゼ型プラスミノゲン・アクチベーターの線維芽細胞発現が発生に関して調節され、従って尚早のフィブリン溶解を回避しなければならない場合には、組成物中に含まれる線維芽細胞の表現型が該当する。
【0047】
創傷治療組成物はさらに、マトリックスの崩壊を防止するのに適したプロテアーゼ・インヒビターを含んでよい。インヒビターは、セリン・プロテアーゼ・インヒビターであってよく、最も好ましくはアプロチニン、e-アミノカプロン酸、及びトラネキサム酸から成るリストから選択された1種又は2種以上であってよい。好ましくは、特にタンパク質の濃度が7〜12 mg/mlである場合には、プロテアーゼ・インヒビターはアプロチニンである。或いは、特にタンパク質の濃度が3〜5 mg/mlである場合には、プロテアーゼ・インヒビターはトラネキサム酸であってよい。
【0048】
組成物は高タンパク質環境内でインキュベートすることができる。
【0049】
組成物が十分に固形である場合には、組成物が使用されるように構成された創傷に適合するように、任意の好適な形状及びサイズで組成物を提供することができる。好ましくは、組成物はほぼディスク形状である。組成物の厚さは約8 mm以下、好ましくは約5 mm以下である。マトリックスの厚さは通常、組成物の厚さを決定する。
【0050】
創傷治療組成物は、単位面積当たりで測定して、1 mm2当たり約450〜2500個の細胞、約500〜1500個の細胞、1 mm2当たり約750〜2000個の細胞、又は1 mm2当たり約900〜1700個の細胞、例えば1 mm2当たり約1450〜1550個の細胞、及び好ましくは1 mm2当たり約1500個の細胞、又は例えば1 mm2当たり約450〜550個の細胞、及び好ましくは1 mm2当たり約500個の細胞を含むことができる。上記のものよりも細胞密度が低いと、細胞生存可能性が悪化することがある。上記のものよりも細胞密度が高いと、細胞外マトリックス・タンパク質合成の阻害、及び老化細胞表現型への進行が生じるおそれがある。上記細胞密度の範囲内で、本発明の具体的な実施態様は、1 mm2当たり約500個の細胞、及び1 mm2当たり約1500個の細胞を使用して開発されている。
【0051】
好ましい実施態様の場合、創傷治療組成物は、フィブリノゲンのトロンビン媒介型重合によって形成された無菌の非発熱性フィブリン支持マトリックス内部のヒト真皮線維芽細胞である細胞を含み、そして組成物は約37℃で16〜24時間にわたってインキュベートされている。
【0052】
組成物は、組成物を輸送し(例えば該組成物の貯蔵中)、及び/又は皮膚表面に組成物を局所的に塗布するのに適した容器内にパッケージングすることができる。容器は、組成物のための格納手段を提供するために周囲をシールされた2枚の不透性フレキシブル材料シートから成るフレキシブルなパウチを含み、パウチは第1の内面を含み、第1の内面には、組成物が、組成物とパウチの第2の内面との付着力よりも高いレベルの付着力で、しかし、組成物と皮膚表面との付着力よりは低いレベルの付着力で付着し、これにより使用中、パウチは、シートを互いに引き離すことにより開くことができ、そして、組成物に塗布前に他の手段によって直接に触れる更なる必要なしに、組成物を好都合に操作して皮膚表面に直接に塗布することができる。例えば容器は、Oliver (登録商標) Products Company “Solvent Resistant Peelable Pouching Material(耐溶剤性の剥離可能なパウチ材料)”(製品番号Q15/48BF1)であってよい。
【0053】
本発明の更なる観点において、薬品として使用するための、本明細書中に記載された創傷治療組成物が提供される。例えば、組成物は、皮膚損傷の治療における薬品として使用するためにあってよい。薬品としての組成物は、本明細書中に記載された皮膚損傷又は創傷への局所塗布のために使用することができる。
【0054】
本発明の別の観点において、本明細書中に記載された創傷治療組成物を製造する方法であって:
重合剤及び/又は該重合剤による重合によってマトリックスになることが可能なモノマーを含む溶液中に生きた細胞を懸濁し;
重合剤でモノマーを重合することにより、細胞を含む単層状支持マトリックスを形成し;そして、
細胞内の創傷治療表現型の発生を可能にする条件(例えば温度条件及び時間条件のような、本明細書中に記載された条件)下でマトリックスをインキュベートし、これにより、創傷治療組成物を形成する
工程を含む、創傷治療組成物を製造する方法が提供される。
【0055】
例えば、組成物が重合剤なしのモノマー又はモノマーなしの重合剤を含む場合、モノマー及び重合剤の両方が重合を生じさせるのに十分な濃度で存在するように、必要とされるモノマー又は重合剤を溶液に添加することにより、マトリックスを形成することができる。
【0056】
本発明の別の観点において、本明細書中に記載された創傷治療組成物を製造する方法であって、重合剤で重合可能なモノマーを重合することにより単層状支持マトリックスを形成し、生きた細胞を支持マトリックス中に投入し、そして、細胞内の創傷治療表現型の発生を可能にする条件(例えば温度条件及び時間条件のような、本明細書中に記載された条件)下でマトリックスをインキュベートし、これにより創傷治療表現型を形成する工程を含む、創傷治療組成物を製造する方法が提供される。
【0057】
また、創傷治療組成物、好ましくは本明細書中に記載された創傷治療組成物を製造する方法であって、重合により不溶性マトリックスにすることができるタンパク質モノマーを含む溶液中に生きた哺乳動物細胞を懸濁し、このような重合を促進することができる物質(すなわち重合剤)を添加し、そして重合が型内で発生するのを可能にすることにより、固形の重合された組成物を型から取り出し、そして患者への局所投与ができる状態にパッケージングすることができるようにする工程を含む、創傷治療組成物を製造する方法が提供される。細胞は好ましくは、本明細書中に記載された通りである。
【0058】
モノマーはフィブリノゲンであってよく、そして重合剤はトロンビンであってよい。或いは、重合剤はビタミンK依存性凝固因子、毒血清プロテアーゼ(例えばCrotalax, Batroxobin, Gabonase, Okinaxobin, Reptilase, Calobin及びFibrozyne)、又はトロンビン様フィブリノゲン切断活性を有する他の物質であってよい。
【0059】
細胞は、モノマー内に懸濁される前に、本明細書中に記載された創傷治療表現型を有することができ、或いは、本明細書中に記載された時間フレーム(例えば懸濁後0時間〜96時間)内のインキュベーション中に、このような表現型をとるか、又はこのような表現型になることもできる。
【0060】
重合は型内で生じることができる。
【0061】
方法は、本明細書中に記載された付加的な成分を組成物に添加する更なる工程を含むことができる。
【0062】
本発明の方法は、組成物を貯蔵し、且つ/又は組成物を輸送し、且つ/又は患者の皮膚表面に組成物を局所的に塗布するための容器内に創傷治療組成物をパッケージングする更なる工程を含むことができる。
【0063】
本発明の更なる観点において、皮膚損傷の治療のために、本明細書中に記載された創傷治療組成物の製造時に、本明細書中に記載された生きた細胞を使用することが提供される。
【0064】
本発明はまた、皮膚損傷の患者を治療する方法であって、本明細書中に記載された創傷治療組成物を、皮膚損傷に局所的に塗布することを含む、皮膚損傷患者を治療する方法を提供する。
【0065】
別の観点において、本発明は、固形又は半固形の、無菌の局所用組成物(好ましくは本明細書中に記載された創傷治療組成物)のための容器(又はパッケージ)であって、組成物のための格納手段を提供するために周囲をシールされた2枚の不透性フレキシブル材料シートから成るフレキシブルなパウチを含み、パウチは第1の内面を含み、第1の内面には、組成物が、組成物とパウチの第2の内面との付着力よりも高いレベルの付着力で、しかし、組成物と身体表面との付着力よりは低いレベルの付着力で付着し、これにより使用中、パウチは、シートを互いに引き離すことにより開くことができ、そして、薬品に塗布前に他の手段によって直接に触れる更なる必要なしに、組成物を好都合に操作して身体表面に直接に塗布することができる、容器を提供する。本発明の容器自体の観点は、Oliver (登録商標) Products Company “Solvent Resistant Peelable Pouching Material(耐溶剤性の剥離可能なパウチ材料)”(製品番号Q15/48BF1)を除外することができる。
【0066】
別の観点において、固形又は半固形の、無菌の局所用組成物(好ましくは本明細書中に記載された創傷治療組成物)を貯蔵、輸送及び/又は塗布するための、本明細書中に記載された容器の使用が提供される。
【0067】
容器は、固形、又は特に半固形の材料、特に身体表面への局所塗布のために意図された材料の任意の形態を貯蔵し、配送し、そして塗布する好都合な手段を提供する。好ましくは、このような材料は、半固形物又はゲルの性質を有するので、物理的操作は容器なしでは難しくなる。材料が容器の所定の要素に対して優先的に付着するとともに、その後、皮膚又はその他の身体表面へ移り易いことは、かなりの利点を提供する。具体的には、このような材料は、意図された部位への塗布の前に、所要サイズにカットすることができる。本明細書中に記載された創傷治療組成物の場合、このことは具体的な利点である。
【0068】
好ましい実施態様の場合、容器は金属フォイル、ラミネート又は金属化されたプラスチックを含む。1つの好ましい実施態様の場合、容器は、その内容物の視覚検査を可能にする透明領域を含む。
【0069】
好ましくは、容器の内面及びその内容物は無菌である。
【0070】
好ましい実施態様の場合、パウチの第1の内面は、第1の内面に対する組成物の付着力を高めるために改質される。1実施態様の場合、これは第1の内面へのコーティングの塗布を含む。好ましくはコーティングは、ポリマー、熱可塑性物質、熱硬化性プラスチック、タンパク質、アミノ酸、及び炭水化物から成るリストから選択される。
【0071】
或いは、第1の内面は、第1の内面に対する組成物の付着力を高めるために粗面化を施すことによって改質される。ここに使用される「粗面化」という用語は、付着力を改善しようと意図された表面の任意の物理的改質、例えばエンボス加工、スクラッチング加工、研磨又はスカッフィング加工、又は、エッチング、腐食、酸又はアルカリ処理による化学粗面化を含む。固形又は半固形生成物の付着度を改善又は調節するために、表面の表面エネルギー特性を改質する他の手段が開示されている。このような手段は、パウチの第1の内面をコーティングすることを含む。好ましくはこのようなコーティングは、ポリマー、熱可塑性物質、熱硬化性プラスチック、タンパク質、アミノ酸、及び炭水化物から成るリストから選択される。
【0072】
特に好ましい1実施態様の場合、第1の内面は、粗面化表面を提供するという効果を有する、隆起領域又はドットの形態の不連続コーティングによって改質される。
【0073】
また本発明に従って、本明細書中に記載された固形又は半固形の、無菌の局所用組成物のパッケージング法であって、本明細書中に記載された容器パウチ内に組成物を入れる工程を含む、パッケージング法が提供される。
【0074】
本発明の具体例を、添付の図面を参照しながら以下に説明する。
【0075】
本発明の好ましい組成物の製造プロセスを図1に要約する。ここで説明するものの代わりに、上記別の成分又は方法を用いることもできる。
【0076】
基本的には、組成物は2種の成分を含み、これらの成分は一緒に注型される。第1の成分は、プロテアーゼ汚染物質による不所望のタンパク質分解、及び貯蔵中の細胞による尚早のマトリックス崩壊を防止するための1種又は2種以上のプロテアーゼ・インヒビターと一緒に、フィブリノゲンの溶液を含む。具体的には、汚染物質は、自然の状態でフィブリン溶解性の酵素プラスミン、又はその前駆体プラスミノゲンを含むことができる。プラスミンを阻害するか又はその活性を防止するために、セリン・プロテアーゼ・インヒビター、例えばアプロチニン、e-アミノカプロン酸、又はその類似体トラネキサム酸がしばしば使用される。このフィブリノゲン溶液には、好適な培地又は緩衝液中の生きた細胞の懸濁液(「作業細胞懸濁液」)が添加される。
【0077】
第2の成分は、トロンビン(フィブリノゲンに対して自然の状態で作用する酵素)の溶液、カルシウム・イオン(所要の補因子)、及び生きた細胞の培養に適した培地を含む。更なる凝固因子である因子XIIIも、カルシウム・イオンの存在においてトロンビンによって活性化される。活性化された因子XIIIは、(トロンビンによってフィブリノゲンから切断された)単量体フィブリンを重合により三次元タンパク質不溶性骨格にすることを促進する。
【0078】
ゲル(すなわちゲルの形態のマトリックス)を注型するために、これら2種の成分を合体し、そしてまだ液状のままで、前コートされた好適な型内に注入する。ゲルは一般には円形であるが、任意の所望の形状に注型することができる。いくつかの用途の場合、他の形状がより好適なことがある。具体的には、事実上又は実質的に方形又は楕円形のゲルが、より大きい創傷にとってはより便利である場合がある。
【0079】
フィブリノゲンを酵素的切断してフィブリン・モノマーにし、そしてこれらのモノマーを重合する結果、液体は硬化されて、生きた細胞が懸濁された半固形ゲルになる。多くの用途の場合、このゲルを次いで、細胞の成長、分裂、細胞外マトリックス・タンパク質、及び成長因子のような他のタンパク質の分泌に適した条件下で、約24時間にわたって維持する。発育(又は成熟)に続いて、注型されたゲルを注型用型から取り出し、無菌パッケージ(この用語は「容器」と同じ意味を有するものとする)内に直接に入れる。貯蔵中及び出荷中に製品を維持するために、少量の培地、例えば緩衝剤培地を各パッケージに添加し、そしてパッケージをシールする。貯蔵中及び出荷中には、パッケージを2℃〜8℃の温度に維持する。
【0080】
Protoderm 500及び2つのProtoderm 1500と呼ばれる好ましい実施態様の場合、組成物はそれぞれ、1 mm2当たり約500個の細胞、及び1 mm2当たり約1500個の細胞の密度で細胞を含む。
【0081】
目下利用可能な代わりの製品を上回る、このような製品の利点は、下記のものを含む。骨格又は支持マトリックスとしてタンパク質シーラントを使用することにより、細胞の創傷への好都合な局所送達が可能になる。プレキャストされたゲルは、塗布される細胞の分布及び密度を制御するとともに、創傷表面に再生細胞を好都合且つ正確に塗布するのを可能にする。他の組織等価物の製造及び出荷は、マトリックス単独に対して約3週間かかるのに対して、本発明の製品は、10日間以内で、又は十分な成長細胞が入手可能であるならば2日間という短い時間でも製造することができる。これらのファクターは組み合わさって、コスト上の利点を提供し、従って製造及び生産は、多くの他の商業的に入手可能な製品よりもコスト効率がよい。
【0082】
下記のように、本発明の製品はパッケージングされると、出荷中の製品の維持、及び最終製品の「使いやすさ」を保証する独自のフラット・パック・システム(付着性の裏材)をさらに特徴とする。プレキャストされたゲルは、2〜8℃で最大28日間にわたって出荷・貯蔵することができるのに対して、その他の入手可能な製品は冷凍するか、又は室温で出荷しなければならない。
【実施例】
【0083】
実施例1:高タンパク質濃度製品(「Protoderm 500」及び「Protoderm 1500」)
創傷治療製品の迅速な製造、並びに、細胞及びタンパク質成分を比較的高い濃度で含有することによる迅速な創傷治療の両方を最適化するように、本発明の第1実施態様を構成する。
【0084】
マトリックス
第1実施態様において、マトリックス・タンパク質は、商業的フィブリノゲン製品Tisseel(登録商標)(Baxter)に由来するフィブリンである。Tisseelは戻すと、好都合な2種の成分系を提供する。これらの成分系に細胞を添加することができる。マトリックスの成分を表1に要約する。なお、Tisseel(登録商標)はまた因子XIII、並びに血漿フィブロネクチン及びプラスミノゲンを含有する。
【0085】
【表1】

【0086】
当業者には明らかなように、これらの成分の濃度は必要に応じて変化させることができる。例えば、この用途のためには、約7〜20 mg/mlの濃度でフィブリノゲンを使用することができ、5〜50 IU/mlのトロンビン(実際には、わずかなレベルの汚染性トロンビンが最終的に、付加的なトロンビンなしにフィブリン形成及びゲル硬化を招くことがあるが、しかしこれは不都合であり、また予測不能である)、及び2〜20 mMの塩化カルシウムを使用することができる。アプロチニンは、不所望のフィブリン溶解を防止するために使用されるが、しかしここでもやはり、正確な濃度を変化させることができる。
【0087】
細胞
新生児包皮組織に由来する細胞の培養により、ヒト真皮線維芽細胞を得た。GMP{優良製造規則(Good Manufacturing Practice)}下で、コラゲナーゼ消化によって線維芽細胞を分離し、日常的な試験室の仕事に従って培養及び連続継代を行うことにより、これらの細胞を増殖させて、マスター細胞バンク(MCB)を確立した。ヒト及び動物に由来するウィルス、細菌、マイコプラズマ及び菌類のパネルに対して、そして発癌性に関して、GLP(Good Manufacturing Practice)によって認可された設備により、MCBをスクリーニングし、そして汚染がないことを見極めた。次いでいくつかの作業細胞バンク(WCB)を、製品の製造に関して立証し、再スクリーニングし、そして標準的な手順に従って細胞のストックを冷凍した。
【0088】
患者に対して特異的な種々の用途のために、生検から得られた自己線維芽細胞又はその他の細胞を、使用に際して培養して増殖させることも考えられる。
【0089】
細胞を、Liebowitz L-15細胞培地内に下記の量で懸濁させた(P-500はProtoderm-500を意味し、P-1500はProtoderm-1500を意味する)。Liebowitz L-15細胞培地は、フィブリノゲン成分への添加前に緩衝し、表2に示すように補足した。当業者には明らかなように、CO2富化された雰囲気(組織培養インキュベーター又はシールされたフラスコ内で一般に使用される)中で使用するようには意図されていない培地は、何らかの他の系によって適切に緩衝されなければならない。例えばHEPESを補足されたこのような培地が当業者によく知られている。Liebowitz L-15培地は、リン酸緩衝系に依存する。培地には表に示すように重炭酸ナトリウム及びデキストロースを補足した。
【0090】
便宜上、そして一貫性を保つために、1.5 x 106個の細胞/mlの標準「作業細胞懸濁液」を一般に調製した。
【0091】
フィブリン・シーラントの調製
図1に概略を示し、下記に要約するように、製造者の指示に従って、Tisseel(登録商標)トロンビン粉末を塩化カルシウム溶液中に戻した。
【0092】
トロンビン/CaCl2溶液が溶解されたら、これを補足済L-15培地でさらに希釈することにより、「作業トロンビン溶液」を得、そしてさらに使用するときまで最小15分間にわたって冷やしておいた(「作業トロンビン溶液」と一緒に室温でゲルを製造することもできる)。凍結乾燥したフィブリノゲンを、補足済L-15培地中の作業細胞懸濁液に添加する前にアプロチニン溶液で戻した。フィブリノゲンは戻ったら、4時間以内、理想的には1〜2時間以内に使用するべきである。
【0093】
作業トロンビン溶液(6.75 ml)は、補足済L-15中:
トロンビン:50 IU/ml (又は全部で337.5 IU)
塩化カルシウム:8 μモル/ml(又は全部で54 μモル)
を含有する(「全部で」は6.75 ml中の量を意味する)。
作業フィブリノゲン・細胞懸濁液混合物(総容積6.75 ml)は、補足済L-15中:
Tisseel:19 mg/ml(又は全部で128.25 mg)
Aprotinin:600 KIU/ml(又は全部で4050 KIU)
細胞:1.2 x 106個の細胞/ml(P-1500の場合、全部で8.1 x 106個の細胞);又は
0.4 x 106個の細胞/ml(P-500の場合、全部で2.7 x 106個の細胞)
を含有する(「全部で」は6.75 ml中の量を意味する)。
【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
ゲルの注型
作業トロンビン溶液(6.75 ml)及びTisseel(登録商標)フィブリノゲン/細胞懸濁液混合物(6.75 ml)を、Duplojet ミキサー・ユニットによって合体し、そして好適な前コートされた注型用容器(好都合には無菌ペトリ皿など)内に、16Gニードル又は同等物によってローディングした。注型用皿には血清含有培地又はアルブミンを前コートすることにより、ゲルの付着を防止することが有用である。ゲルは数分以内に硬化した。次いでゲルを20 mlの培地(表2)内で浴処理し、そして注型用皿に蓋を被せた。硬化されたゲルを16〜24時間にわたって37℃でインキュベートすることにより、細胞の発育(又は成熟)を可能にした。
【0097】
パッキング及び貯蔵
発育(又は成熟)後、硬化されたゲルをこれらの注型用容器から取り出し、そして前照射された無菌フォイル・パウチ内に入れ、無菌回転シール・バッグ内部に貯蔵した。10 mlの無血清培地(表2の通り、ウシ胎仔血清を含まない)を、シール前に各パウチに添加した。シールされたユニットの貯蔵寿命は4℃で最大28日間である。
【0098】
実施例2:低タンパク質濃度製品
或る特定の用途の場合、より低いタンパク質濃度を用いることが可能である。その主な利点は、製造コストの軽減である。それというのも血清由来のタンパク質及び多くのプロテアーゼ・インヒビター、例えばアプロチニンが高価であるからである。好ましい実施態様の場合、硬化された生成物中のフィブリンの濃度は、7 mg/ml未満に低減される。実際には、3.〜4.0 mg/mlが効果的であることが見いだされる。
【0099】
重要な1考慮事項は、このような「低タンパク質」製品におけるプロテアーゼ・インヒビターとしてアプロチニンを使用することの効果(並びにコスト)である。具体的には、商業的製品の比例的な希釈の結果、アプロチニン濃度は効果的であるにはあまりにも低くなる。好ましい解決手段は別のインヒビター、例えばトレネキサム酸を使用することである。これは高い効果のあるフィブリン溶解インヒビターであるだけでなく、有意なコスト上の利点を有する。
【0100】
マトリックス
この実施態様において、マトリックス・タンパク質は、アプロチニンの代わりにトラネキサム酸を使用する、商業的なフィブリン・シーラントTisseel(登録商標)を起源とするフィブリンである。マトリックスの主成分を表3に要約する。なお、別の商業的に利用可能なフィブリン・シーラントQuixilを使用して、同じマトリックス組成物を得ることもできる。しかし、Quixilはすでに外生的トラネキサム酸を含有しているので、その添加量は低減されるべきである。
【0101】
【表4】

【0102】
凍結乾燥させられたTisseel(登録商標)フィブリノゲンを、補足済L-15培地中の作業細胞懸濁液に添加するまえに、補足済L-15培地で戻す。Tisseel(登録商標)フィブリノゲンは戻ったら、4時間以内、理想的には1〜2時間以内に使用するべきである。
【0103】
製造者の指示に従って、Tisseel(登録商標)トロンビン粉末を塩化カルシウム溶液中に戻す。トロンビン/CaCl2溶液が溶解されたら、トラネキサム酸を含有する補足済L-15培地でさらにこれを希釈することにより、作業トロンビン溶液を得る。
【0104】
使用される細胞密度は、やはり450〜2500個の細胞/mm2である。コストを最小限にするために、約450〜550個の細胞/mm2の細胞密度を用いることが望ましい場合がある。しかし留意されるべきなのは、タンパク質濃度と細胞濃度とは独立した変数であることである。細胞密度ではなく、タンパク質濃度がより低いことが、主要なコスト決定因子である。しかし、使用可能な細胞がより少ないことが、製造速度に対して影響を及ぼすことがある。いかなる場合でも、高い細胞密度/低いタンパク質濃度、及び低い細胞密度/高いタンパク質濃度の実施態様が考えられ、これらが特定の環境において好ましい場合がある。
【0105】
実施例3:パッケージング、貯蔵及び配送
局所創傷治療組成物の成功に関与する主要なファクターは、無菌作業条件下で気泡又は皺なしに密な接触が確立されるような、創傷表面への組成物の正確な塗布が容易に行われることである。創傷治療組成物は脆弱である場合があり、取り扱いは最小限に保たれるべきである。本発明の組成物は好ましくは、塗布を有意に支援して容易にするようにパッケージングされる。加えて、組成物は冷凍されるのではなく、冷蔵状態で出荷・貯蔵されるので、使用前の綿密な解凍処置は必要とはならない。
【0106】
硬化後、そして16〜24時間の培養及び展開(又は熟成)時間後、フレキシブルなフォイル又は金属化プラスチック・パウチ内に挿入することにより、個々のゲル・ディスクをパッケージングする。パウチは、2枚の方形シートを含み、これらのシートは、3辺の大部分に沿ってシールされることにより、開いたポケットを形成する。これらのシートのうちの一方の内面は、ゲル生成物に対する付着力を高めるように改質される。図2に示す好ましい実施態様の場合、使用されるパッケージングは、Oliver (登録商標) Products Company(Grand Papids, 米国Michigan)の剥離可能なフォイル・パウチである。フォイル・パウチは1枚のフォイル・シートと、Q15付着性ドット・パターン・コーティングを有するラミネート・ポリエステル/フォイル・シートから成る1枚のシートとを含む。Q15/48BF1は、医療機器のためのラミネートされた蓋・パウチ材料である。このドット・パターン付着性コーティングの目的は、シートのエッジを一緒にシールするために用いられるヒートシール法の効率を改善することである。しかし、付着性であり且つ隆起したドット・パターンは、対向するシートのコートされていない平滑な内面と比較して、組成物が優先的に付着する表面を提供する点で極めて効果的であることが判る。パウチの内面のうちの一方の表面をコーティングし且つ/又は粗面化する他の形態を用いることにより、同じ効果を達成することができた。同様に、好適に耐久性の、フレキシブルな、水及びガスを通さない任意のシート材料を使用することにより、このようなパウチを製造することもできる。パッケージングの全て又は一部を透明にすることにより、例えば組成物の完全性を視覚検査するか、又は、パウチがその残りの開いたエッジに沿ってシールされる前に、組成物とともにパウチ内に僅かな容積が挿入された、細胞培地中のpH指示色素の色を視覚検査するのを可能にすることもできる。
【0107】
こうしてシールされた組成物の貯蔵寿命は、2℃〜8℃で7〜11日以上、好ましくは最大28日、より好ましくは21日である。
【0108】
塗布に際して、図2に示すように、無菌条件下でパウチを剥離し、パウチを構成するシートのうちの一方の処理済内面に組成物を付着させたままにしておく。このシートを裏材又は支持手段として使用して、次いで組成物を創傷表面に塗布する。この表面には、過剰の滲出が存在しない場合には、組成物が優先的に付着するようになり、組成物がそのシートから剥離されることが可能になる。この塗布手段は、組成物が皺形成又は気泡の取込みなしに、そして最小限の操作で塗布されるのを可能にする。組成物のエッジは、創傷の境界にフィットするように容易にトリミングすることができる。上記のように、パッケージングに可逆的に付着する形式で組成物を送達することの別の利点は、製品の配向の容易な識別を可能にし、そして、必要とされる場合には、所定の配向における塗布を容易にすることである。均質な創傷治療製品の場合、創傷上の製品の配向は重要でない。しかし、多層状組成物、例えば創傷表面と接触した状態で塗布されるように意図される線維芽細胞層と、創傷表面とは反対側に配向されるように意図されたケラチノサイト層とを有する組成物が関与する場合、その配向を視覚的に確認するのは難しいか又は不可能なことがある。このような場合には、パッケージングから組成物を先ず取り出すことなしに、誤った塗布を不可能にするような方法で製品を送達できると、このことは有意な利点をもたらす。
【0109】
上記例は、本発明を説明するためのものであって、本発明を限定するものでは決してない。当業者ならば、特許請求の範囲に示された本発明の思想及び範囲内に含まれる改変形に気付くことになる。
【0110】
本明細書中に引用した全ての参考文献を、参考のため本明細書中に引用する。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様による、創傷治療組成物の製造プロセスを要約したフローチャートである。
【図2】図2は、図1に示したプロセスに従って製造された好ましい創傷治療組成物のパッケージング、操作及び塗布を示す。Aは、容器パウチの2枚の金属化プラスチック・シートのうちの一方の改質内面に優先的に付着するマトリックス(硬化ゲル)を示す。Bは、容器のシートのうちの一方を使用して、皮膚に創傷治療組成物のゲルを塗布することを示す。なお、このシートを使用してゲルを支持する一方、両者を適切な形状及びサイズにカットすることができる。Cは、所定の位置における創傷治療組成物を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持マトリックス内部に生きた細胞を含む創傷治療組成物であって、該創傷治療組成物内で、該細胞は創傷治療表現型を有し、そして該組成物は単層状であり、該創傷治療表現型の発生を可能にするために最大約8日間にわたってインキュベートされる、前記組成物。
【請求項2】
最大約96時間、例えば最大72時間、48時間、25時間又は24時間、好ましくは16時間〜24時間にわたってインキュベートされる、請求項1に記載の創傷治療組成物。
【請求項3】
約37℃の温度でインキュベートされる、請求項1又は2に記載の創傷治療組成物。
【請求項4】
インキュベーション後に、最大約40日間、好ましくは最大19日間、より好ましくは約7〜14日間、又は約7〜11日間にわたって、2℃〜8℃、例えば3℃〜5℃、好ましくは約4℃の温度で、該創傷治療表現型を保持しながら貯蔵される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項5】
前記細胞が哺乳動物、例えばヒトのものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項6】
前記細胞は、実質的に線維芽細胞であり、例えば90〜100%、好ましくは95〜99.5%、より好ましくは97.5%〜99%が線維芽細胞である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項7】
前記線維芽細胞が真皮線維芽細胞、好ましくはヒトの真皮線維芽細胞である、請求項6に記載の創傷治療組成物。
【請求項8】
前記細胞がケラチノサイトを実質的に除外する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項9】
前記細胞が活性合成型であるか又は急速に活性合成型になることができる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項10】
前記細胞が増殖性ではなく、且つ/又は老化期にはない、請求項1〜9のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項11】
前記細胞がマトリックス内部に、好ましくは該マトリックス内部にほぼ均一に懸濁されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項12】
前記マトリックスがタンパク質型であり、例えば約3〜12 mg/mlのタンパク質濃度を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項13】
前記マトリックスがフィブリン・マトリックスである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項14】
前記フィブリンの濃度が、3〜12 mg/ml、例えば7〜12 mg/ml又は3〜5 mg/mlである、請求項12に記載の創傷治療組成物。
【請求項15】
前記フィブリン・マトリックスが、フィブリノゲンのトロンビン媒介型重合によって形成される、請求項13又は14に記載の創傷治療組成物。
【請求項16】
前記マトリックスが非発熱性及び/又は無菌性である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項17】
プロテアーゼ・インヒビター、例えばアプロチニン及び/又はトラネキサム酸を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項18】
高タンパク質環境内でインキュベートされる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項19】
厚さが約8 mm以下、好ましくは約5 mm以下である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項20】
1 mm2当たり約450〜2500個の細胞、例えば1 mm2当たり約750〜2000個の細胞、好ましくは1 mm2当たり約900〜1700個の細胞、例えば1 mm2当たり約1500個の細胞、又は例えば1 mm2当たり約450〜550個の細胞、及び好ましくは1 mm2当たり約500個の細胞を含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項21】
前記細胞が、フィブリノゲンのトロンビン媒介型重合によって形成される無菌の非発熱性支持マトリックス内部のヒト真皮線維芽細胞であり、創傷治療組成物が約37℃で16〜24時間にわたってインキュベートされる、請求項1に記載の創傷治療組成物。
【請求項22】
前記マトリックスが固形又は半固形である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項23】
創傷治療組成物が、該組成物を輸送し(例えば該組成物の貯蔵中)、及び/又は皮膚表面に該組成物を局所的に塗布するのに適した容器内にパッケージングされている、請求項1〜22のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項24】
前記容器は、創傷治療組成物のための格納手段を提供するために周囲をシールされた2枚の不透性フレキシブル材料シートから成るフレキシブルなパウチを含み、該パウチは第1の内面を含み、該第1の内面には、該組成物が、該組成物と該パウチの第2の内面との付着力よりも高いレベルの付着力で、しかし、該組成物と該皮膚表面との付着力よりは低いレベルの付着力で付着し、これにより使用中、該パウチは、該シートを互いに引き離すことにより開くことができ、そして、該組成物に塗布前に他の手段によって直接に触れる更なる必要なしに、該組成物を好都合に操作して該皮膚表面に直接に塗布することができる、請求項23に記載の創傷治療組成物。
【請求項25】
前記容器が、Oliver (登録商標) Products Company “Solvent Resistant Peelable Pouching Material(耐溶剤性の剥離可能なパウチ材料)”(製品番号Q15/48BF1)である、請求項23又は24に記載の創傷治療組成物。
【請求項26】
医薬として使用するための、請求項1〜25のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項27】
皮膚損傷の治療における医薬として使用するための、請求項1〜25のいずれか1項に記載の創傷治療組成物。
【請求項28】
皮膚損傷、例えば静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、床擦れ、火傷、又は医原性擦過傷への局所塗布のための、請求項26又は27に記載の創傷治療組成物。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の創傷治療組成物を製造する方法であって、以下:
重合剤及び/又は該重合剤による重合によってマトリックスになることが可能なモノマーを含む溶液中に生きた細胞を懸濁するステップ;
該重合剤で該モノマーを重合することにより、該細胞を含む単層状支持マトリックスを形成するステップ;及び
細胞内の創傷治療表現型の発生を可能にする条件下で該マトリックスをインキュベートし、これにより、該創傷治療組成物を形成するステップ
を含む、前記方法。
【請求項30】
モノマー及び重合剤の両方が重合を生じさせるのに十分な濃度で存在するように、該マトリックスは、モノマー又は重合剤を該溶液に添加することにより形成される、請求項29に記載の創傷治療組成物。
【請求項31】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の創傷治療組成物を製造する方法であって、重合剤で重合可能なモノマーを重合することにより単層状支持マトリックスを形成し、生きた細胞を該支持マトリックス中に投入し、そして、細胞内の創傷治療表現型の発生を可能にする条件下で該マトリックスをインキュベートし、これにより該創傷治療表現型を形成するステップを含む、前記方法。
【請求項32】
前記モノマーがフィブリノゲンであり、かつ前記重合剤がトロンビンである、請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記重合が型内で生じる、請求項29〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
創傷治療組成物を貯蔵するため、及び/又は該組成物を輸送するため、及び/又は患者の皮膚表面に該組成物を局所的に塗布するための容器内に該成物をパッケージングするステップを更に含む、請求項29〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
皮膚損傷の治療のための、請求項1〜28のいずれか1項に記載の創傷治療組成物の製造における、請求項1〜28のいずれか1項に記載の生きた細胞の使用。
【請求項36】
皮膚損傷の患者を治療する方法であって、請求項1〜28のいずれか1項に記載の創傷治療組成物を、該皮膚損傷に局所的に塗布することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−522195(P2007−522195A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552692(P2006−552692)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000523
【国際公開番号】WO2005/079822
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(505170473)インターサイテックス リミティド (4)
【Fターム(参考)】