説明

創傷治癒のための酸化剤および光活性化剤の組み合わせ

細菌を駆除するだけでなく、病的病変部、外傷もしくは傷害の確立後に、治癒プロセスを改善および促進するために、皮膚損傷および創傷の治癒のための新規組成物を提供することは、非常に望ましい。少なくとも1種の酸化剤、上記酸化剤を活性化し得る少なくとも1種の光活性化剤、およびヒアルロン酸、グルコサミンおよびアラントインから選択される少なくとも1種の治癒因子を、薬学的に受容可能なキャリアと会合した状態で含む創傷治癒組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(a)分野
開示される主題は、一般に、創傷治癒組成物およびその処置方法に関する。
【0002】
(b)関連先行技術
創傷治癒のプロセスは、組織完全性および手術後もしくは外傷的傷害後の機能の回復に必須である。遅延した創傷治癒および手術創傷の披裂は、重大な臨床的問題を表す。
【0003】
光活性色素色素(例えば、エリスロシンB、サフラニンO)を使用する皮膚の光力学的療法は、特許文献1および特許文献2(ともに、Albrechtら)に記載されるように、細菌を駆除するために使用されてきた。上記光活性色素色素は、細菌を直接駆除するために使用される。これら特許出願に記載される組成物は、酸化剤および治癒因子を欠いており、それらは、創傷治癒を直接促進するために使用されてはいない。
【0004】
特許文献3(Neubergerら)は、口腔中の細菌を駆除するための方法を記載し、光活性色素を使用して、口腔衛生を促進する。この特許はまた、漂白剤、過酸化水素を使用して、細菌を駆除するために使用される上記光活性色素を光漂白および破壊することを記載している。しかし、使用される組成物は、治癒因子に言及しておらず、それらは、創傷治癒を直接促進するために使用されていない。
【0005】
特許文献4(Grafeら)は、インビボでコラーゲンを架橋して、コラーゲン足場の微細構造を強化し安定化するための、コラーゲンおよび光活性化可能な分子であるテモポルフィン(mTHPC)を含む組成物の使用を記載している。この特許はまた、組成物が抗菌効果を示し、上記処置部位を消毒し、微生物増殖を抑制することを記載している。しかし、これら組成物は、酸化剤も、治癒因子も含まないので、形成されるコラーゲン足場を強化することおよび細菌駆除によって創傷治癒を促進する。
【0006】
創傷部位に存在する細菌を駆除することは、創傷治癒の助けとなるが、創傷修復を直接は刺激しない。従って、細菌を駆除するだけでなく、病的病変部、外傷もしくは傷害の確立後に、治癒プロセスを改善および促進するために、皮膚損傷および創傷の治癒のための新規組成物を提供することは、非常に望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公報第2005/032459号
【特許文献2】国際公開第2005/021094号
【特許文献3】米国特許第6,056,548号
【特許文献4】国際公開第2008/013962号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(要旨)
一実施形態によれば、少なくとも1種の酸化剤、上記酸化剤を活性化し得る少なくとも1種の光活性化剤、ならびにヒアルロン酸、グルコサミンおよびアラントインから選択される少なくとも1種の治癒因子を、薬学的に受容可能なキャリアと会合した状態で含む、創傷治癒組成物が開示される。
【0009】
上記酸化剤は、過酸化水素、過酸化カルバミドおよび過酸化ベンゾイルから選択され得る。
【0010】
上記創傷治癒組成物は、少なくとも1種の親水性ゲル化剤をさらに含み得る。
【0011】
上記親水性ゲル化剤は、グルコース、改変デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボポル(登録商標) ポリマー、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、寒天、カラギーナン、ローカストビーンガム、ペクチン、ゼラチンから選択され得る。
【0012】
上記光活性化剤は、キサンテン誘導体色素、アゾ色素、生物学的着色剤、およびカロチノイドから選択され得る。
【0013】
上記キサンテン誘導体色素は、フルオレン色素、フルオロン色素、およびロドール色素から選択され得る。
【0014】
上記フルオレン色素は、ピロニン色素およびローダミン色素から選択され得る。
【0015】
上記ピロニン色素は、ピロニンYおよびピロニンBから選択され得る。
【0016】
上記ローダミン色素は、ローダミンB、ローダミンGおよびローダミンWTから選択され得る。
【0017】
上記フルオロン色素は、フルオレセインおよびフルオレセイン誘導体から選択され得る。
【0018】
上記フルオレセイン誘導体は、フロキシンB、ローズベンガル、およびメルブロミンから選択され得る。
【0019】
上記フルオレセイン誘導体は、エオシンおよびエリスロシンから選択され得る。
【0020】
上記アゾ色素は、メチルバイオレット、ニュートラルレッド、パラレッド、アマランス、カルモイシン、アルラレッドAC、タルトラジン、オレンジG、ポンソー4R、メチルレッド、およびムレキシド−プルプリン酸アンモニウムから選択され得る。
【0021】
上記生物学的着色剤は、サフラニンO、塩基性フクシン、酸性フクシン、3,3’ ジヘキシルカルボシアニンヨウ化物(dihexylocarbocyanine iodide)、カルミン酸、およびインドシアニン・グリーンから選択され得る。
【0022】
上記カロチノイドは、クロセチン、α−クロチン(8,8−ジアポ−8,8−カロテン酸)、ゼアキサンチン、リコピン,α−カロチン、β−カロチン、ビキシン、およびフコキサンチンから選択され得る。
【0023】
上記カロチノイドは、サフランレッド粉末、アナットー抽出物および褐藻類抽出物から選択される混合物として、上記組成物中に存在し得る。
【0024】
上記創傷治癒組成物は、少なくとも1種のキレート化剤をさらに含み得る。
【0025】
上記キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびエチレングリコール四酢酸(EGTA)から選択され得る。
【0026】
上記創傷治癒組成物は、少なくとも1種の脂肪分解刺激因子をさらに含み得る。
【0027】
上記脂肪分解刺激因子は、カフェインおよびパラキサンチンから選択され得る。
【0028】
一実施形態によれば、皮膚再生のための方法が開示され、上記方法は、a)患者の皮膚に、少なくとも1種の酸化剤、上記酸化剤を活性化し得る少なくとも1種の光活性化剤を含む組成物を局所的に適用する工程;およびb)上記工程a)の皮膚を、上記光活性化剤が上記酸化剤の活性化を引き起こすに十分な時間にわたって化学線に供する工程を包含する。
【0029】
上記皮膚再生の方法は、約60秒〜約5分の期間にわたって、上記皮膚を化学線に曝す工程を包含し得る。
【0030】
上記皮膚再生のための方法は、上記皮膚を、処置されるべき領域の1cmあたり約60秒〜約5分の期間にわたって化学線に曝す工程を包含し得る。
【0031】
上記皮膚再生のための方法は、上記皮膚を、上記処置している領域にわたって、連続作動の状態である化学線源に曝す工程を包含し得る。
【0032】
上記皮膚再生のための方法は、上記皮膚を、400nm〜600nmの間の波長を有する可視光線であり得る化学線に曝す工程を包含し得る。
【0033】
以下の用語は、以下で定義される。
【0034】
用語「親水性ゲル化剤」とは、液体の溶液、エマルジョン、および懸濁物に濃化しかつ安定化する物質を意味することが意図される。親水性ゲル化剤は、液体に溶解し、大部分が液体から構成されつつ、得られたゲルに、固体物質の外見を与える構造を提供する。親水性ゲル化剤は、濃化剤と非常に似ている。
【0035】
用語「化学線」とは、特定の光源(ランプ、LED、もしくはレーザー)から発せられ、物質(例えば、以下で定義される光活性化剤)によって吸収され得かつ相互作用している間に同定可能なもしくは測定可能な変化を生じる光エネルギーを意味することが意図される;臨床的に同定可能な変化として、本発明者らは、使用される上記光活性化剤の色の変化(例えば、赤色から透明へ)を想定し得る。
【0036】
用語「光活性化剤」とは、化学線を吸収し得る化合物を意味することが意図される。上記光活性化剤は、光励起を容易に受け、次いで、そのエネルギーを他の分子へと移動し、よって、光の散乱を増強もしくは促進し、上記反応混合物に存在する上記酸化剤を増強もしくは活性化する。
【0037】
用語「酸化剤」とは、酸素原子を容易に移動させ、他の化合物を酸化する化合物、または酸化還元化学反応において電子を得る物質のいずれかを意味することが意図される。
【0038】
用語「キレート化剤」は、金属イオン(例えば、鉄)を除去し、溶液中にこれを保持する化合物を意味することが意図される。
【0039】
用語「治癒因子」とは、組織の治癒プロセスもしくは再生プロセスを促進もしくは増強する化合物を意味することが意図される。
【0040】
用語「脂肪分解」とは、脂質がそれらの構成要素脂肪酸へと分解されるプロセスを意味することが意図される。
【0041】
用語「化学線への曝露時間」とは、化学線の適用にあたって、組織、皮膚もしくは創傷が化学線に曝露される時間を意味することが意図される。
【0042】
用語「化学線への総曝露時間」とは、化学線の数回の適用後に、組織、皮膚もしくは創傷が化学線に曝露される蓄積時間を意味することが意図される。
【0043】
用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、保存溶液、生理食塩水溶液、等張性(約0.9%)生理食塩水溶液、もしくは約5%アルブミン様液、懸濁物、滅菌水、リン酸緩衝化生理食塩水などを意味することが意図される。他の緩衝化剤、分散化剤、および患者への送達に適した不活性非毒性物質は、本発明の組成物において含められ得る。上記組成物は、溶液、懸濁物もしくは投与に適した任意の適切な処方物であり得、代表的には、無菌であり、望ましくない粒状物質がない。上記組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌され得る。
【0044】
その主題の特徴および利点は、添付の図面に図示されるように、選択された実施形態の以下の詳細な説明に鑑みれば、より明らかになる。理解されるように、開示されかつ特許請求される事項は、種々の観点において改変され得るが、全ては、特許請求の範囲から逸脱しない。よって、図面および関連する説明は、本質的に例示としてみなされるべきであり、限定であるとみなされるべきではなく、上記事項の全範囲は、特許請求の範囲に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、エオシンYが、細胞生存性に影響を及ぼさないことを示す。Hep G2細胞を、漸増濃度(0.001〜100μM)のエオシンYで24時間にわたって処理したか、もしくは未処理のままにした(CTL)。スタウロスポリン(Staurosporine)(STS)を、細胞死を誘導する陽性コントロールとして使用した。より高い濃度(0.5mMおよび1mM)のエオシンYは、上記アッセイを妨害するので、試験できなかった。
【図2】図2は、エリスロシンBが細胞生存性に影響を及ぼさないことを図示する。Hep G2細胞を、漸増濃度(0.001〜100μM)のエリスロシンBで24時間にわたって処理したか、もしくは未処理のままにした(CTL)。スタウロスポリン(STS)を、細胞死を誘導する陽性コントロールとして使用した。より高い濃度(0.5mMおよび1mM)のエリスロシンBは、上記アッセイを妨害するので、試験できなかった。
【図3】図3は、最初の創傷閉鎖が創傷治癒組成物の適用後に改善されることを図示する。切除創傷を有するラット(n=2/群)を、酸化剤(過酸化カルバミド)および光活性化剤混合物(エオシンY、エリスロシンBおよびサフランレッド粉末)を含む創傷治癒組成物で処置したかもしくは処置しなかった。菱形:処置動物;丸:未処置動物(コントロール)。
【図4】図4は、創傷閉鎖が創傷治癒組成物の適用後に改善されることを図示する。切除創傷を有するラット(n=2/群)を、酸化剤(過酸化カルバミド)および光活性化剤混合物(エオシンY、エリスロシンB)を含む創傷治癒組成物(A)、酸化剤(過酸化カルバミド)および光活性化剤混合物(エオシンY、エリスロシンBおよびサフランレッド粉末)を含む創傷治癒組成物(B)、もしくは酸化剤(過酸化カルバミド)および光活性化剤混合物(エオシンY、エリスロシンB、サフランレッド粉末およびインドシアニン・グリーン)を含む創傷治癒組成物(C)で処置したかまたは処置しなかった。
【図5】図5は、創傷閉鎖が創傷治癒組成物の適用後に改善されることを図示する。切除創傷を有するラット(n=2/群)を、酸化剤(過酸化カルバミド)および光活性化剤混合物(エオシンY、エリスロシンB)を含む創傷治癒組成物で処置したかもしくは処置しなかった。菱形:処置動物;三角:未処置動物(コントロール)。
【図6】図6は、創傷閉鎖が創傷治癒組成物の適用後に改善されることを図示する。
【図7】図7は、創傷閉鎖が創傷治癒組成物の適用後に改善されることを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
一実施形態によれば、創傷治癒組成物および患者の皮膚もしくは創傷で上記組成物を使用するための方法を提供する。この生成物は、創傷の治癒および回復を促進する。
【0047】
別の実施形態によれば、光力学的技術であり、これによって、上記組成物が光によって活性化される、上記組成物の使用方法が提供され、皮膚もしくは創傷に対して有益な効果を提供し、治癒を促進する。
【0048】
上記組成物および方法は、上記皮膚の種々の層に対する傷害(切開、裂傷、剥離、刺創、穿通創、銃創、挫傷、血腫および圧挫傷が挙げられる)を処置するために使用されうる。粘膜に対する病変はまた、本発明の組成物で処置され得、これは、例えば、口腔粘膜(例えば、歯周炎、潰瘍、および口唇ヘルペス(もしくは顔面のヘルペス(orofacial herpes))の病的病変部を処置するために使用されうる。
【0049】
上記組成物は、考えられる成分の群から選択される多くの活性な物質(principle)を含む。これら種々の活性な物質(principle)は各々、それらの作用機構を有する。
【0050】
(酸化剤)
上記組成物は、酸素ラジカル源として、酸化剤を含む。ペルオキシド化合物は、ペルオキシ基(R−O−O−R)を含み、2個の酸素原子(その各々は、他方にかつラジカルもしくはいくつかの元素に結合される)を含む鎖用構造である酸化剤である。活性な媒体の調製に適した酸化剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
過酸化水素(H)は、有機ペルオキシドを調製するための出発物質である。Hは、強力な酸化剤であり、過酸化水素の独特の特性は、これが水および酸素へと分解し、いかなる持続性の毒性の残存化合物をも形成しないことである。この組成物において使用するための過酸化水素は、ゲル中で(例えば、6% 過酸化水素で)使用され得る。過酸化水素が本発明の組成物において使用され得る適した濃度範囲は、約3.5%〜約6%である。
【0051】
尿素過酸化水素(過酸化尿素、過酸化カルバミドもしくはペルカルバミドとしても公知)は、水溶性であり、約35%過酸化水素を含む。この組成物において使用するための過酸化カルバミドは、ゲルとして(例えば、16%過酸化カルバミド(5,6%過酸化水素を表す)使用され得る。過酸化尿素が本発明の組成物において使用され得る適した濃度範囲は、約10%〜約16%である。過酸化尿素は、ゆっくりとした放出様式(熱反応もしくは光化学反応で促進され得る)で尿素および過酸化水素へと分解する。上記放出された尿素[カルバミド、(NH)CO)]は、非常に水溶性であり、強力なタンパク質変性剤である。これは、いくつかのタンパク質の溶解度を増大させ、上記皮膚および/もしくは粘膜の再水和を増強する。
【0052】
過酸化ベンゾイルは、ペルオキシド基によって連結された2個のベンゾイル基(カルボン酸のHが除去された安息香酸)からなる。これは、2.5%〜10%の間を変動する濃度で、ざ瘡の処置において見いだされる。放出されるベルオキシド基は、細菌を死滅させることに有効である。過酸化ベンゾイルはまた、皮膚のターンオーバーおよび毛穴の洗浄を促進し、これはさらに、細菌数を減少させるのに寄与し、ざ瘡を減らす。過酸化ベンゾイルは、皮膚と接触すると、安息香酸および酸素に分解し、そのうちのいずれも毒性ではない。過酸化ベンゾイルが本発明の組成物において使用され得る適切な濃度範囲は、約2.5%〜約5%である。
【0053】
ペルオキシドの他の形態(例えば、有機ペルオキシドもしくは無機ペルオキシド)の包含は、それらの増大した毒性およびそれらの光力学的エネルギー移動との推定不能な反応に起因して回避されるべきである。
【0054】
(光活性化剤)
上記光活性化剤は、光エネルギーを上記酸化剤へと移動させる。適切な光活性化剤は、蛍光色素(もしくは着色剤)であり得るが、他の色素群もしくは色素(生物学的色素および組織学的色素、食品着色料、カロチノイド)がまた、使用され得る。光活性化剤の組み合わせは、上記組み合わされた色素分子による光吸収を増大させ得、吸収および光−生体調節選択性(photo−biomodulation selectivity)を増強し得る。これは、新たな光選択的および/もしくは選択的光活性化剤混合物を生成する可能性を複数作り出す。
【0055】
光活性化剤の有利な特徴は、増大した蛍光である。本発明において、緑色から黄色のスペクトルでの再発光は、有利である。なぜなら、それは、深く浸透する波長範囲であり、血液による深い吸収を有するからである。このことは、血流での強い増大、血管拡張、および血管運動現象を付与する。適切な光活性化剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
(キサンテン誘導体)
上記キサンテン誘導体色素は、長期間にわたって、世界中で使用され、試験されてきた。それらは、低毒性および増大した蛍光を示す。上記キサンテン基は、3つのサブグループからなる:a)フルオレン;b)フルオロン;およびc)ローダミン。
【0056】
上記フルオレングループは、ピロニン(例えば、ピロニンYおよびピロニンB)を含み、上記ローダミン(例えば、ローダミンB、ローダミンGおよびローダミンWT)を含む。使用される濃度に依存して、ピロニンおよびローダミンは、両方とも毒性であり得、それらの、光との相互作用は、増大した毒性をもたらし得る。類似の効果が、上記ロドール色素グループに対して起こることが公知である。
【0057】
上記フルオロングループは、上記フルオレセイン色素およびフルオレセイン誘導体を含む。
【0058】
フルオレセインは、吸収最大494nmおよび発光最大521nmを有する顕微鏡で一般に使用される蛍光団である。フルオレセインの二ナトリウム塩は、D&C Yellow 8として公知である。これは、非常に高い蛍光を有するが、迅速に光によって分解する。本発明の組成物において、フルオレセインと他の光活性化剤(例えば、インドシアニン・グリーンおよび/もしくはサフランレッド粉末)との混合物は、これら他の化合物に対して増大した光吸収を付与する。
【0059】
エオシングループは、吸収最大514〜518nmを有するエオシンY(テトラブロモフルオレセイン、アシッドレッド87,D&C Red 22)を含み、細胞の細胞質、コラーゲン、筋繊維および赤血球を強く赤色に染色し;エオシンB(アシッドレッド91、エオシンスカーレット、ジブロモ−ジニトロフルオレセイン)は、エオシンYと同じ染色特徴を有する。エオシンY、エオシンB、もしくは両方の混合物は、使用される光スペクトル:広いスペクトルの青色光、青色から緑色の光、および緑色光、に対するそれらの感受性が原因で、使用され得る。それら組織およびバイオフィルム染色特性、ならびにそれらの低毒性はまた、有利である。エオシンYおよびエオシンBの両方は、赤血球を染色するので、本発明の組成物に止血性(血流の流れもしくは停止を制御する)特性を付与し、同様に、上記組成物の適用の間に病変もしくは創傷の軟組織に光を選択的に標的化することを増大させる。
【0060】
フロキシンB(2,4,5,7 テトラブロモ 4,5,6,7,テトラクロロフルオレセイン、D&C Red 28、アシッドレッド92)は、光酸化を介して汚水の消毒および無毒化のために使用される、フルオレセインの赤色色素誘導体である。これは、吸収最大535〜548nmを有する。これはまた、感光性色素および薬物を作製するための中間体として使用される。
【0061】
エリスロシンB(アシッドレッド51、テトラヨードフルオレセイン)は、生物学的着色剤、およびバイオフィルムおよび歯垢染色剤として使用され、水溶液中で吸収最大524〜530nmを有する、チェリーピンクの石炭(coal)ベースの食品色素である。これは、光分解に供される。エリスロシンはまた、使用される光スペクトルへのその感光性およびバイオフィルムを染色するその能力に起因して、いくつかの実施形態において使用される。エリスロシンの包含は、感染組織もしくは汚染組織の深いポケット(例えば、歯周病治療における歯周ポケット)において上記組成物を使用する場合に、都合がよいはずである。
【0062】
ローズベンガル(4,5,6,7 テトラクロロ 2,4,5,7 テトラヨードフルオレセイン、アシッドレッド94)は、吸収最大544〜549nmを有し、色素、生物学的着色剤および診断補助として使用されてきた、明るい青みがかったピンク色の生物学的色素である。一重項酸素を三重項酸素から生成するために合成化学においても使用される。
【0063】
メルブロミン(マーキュロクロム)は、吸収最大508nmを有する、フルオレセインの有機水銀二ナトリウム塩である。これは、防腐剤として使用される。
【0064】
(アゾ色素)
上記アゾ(もしくはジアゾ)色素は、N−N基(アゾ基といわれる)を共有する。それらは、主に分析化学において、もしくは食品着色剤として使用され、蛍光性ではない。適切なアゾ色素としては、以下が挙げられる:メチルバイオレット、ニュートラルレッド、パラレッド(顔料赤色1)、アマランス(アゾルビンS)、カルモイシン(アゾルビン、食用赤色3、アシッドレッド14)、アルラレッドAC(FD&C 40)、タルトラジン(FD&C Yellow 5)、オレンジG(酸オレンジ10)、ポンソー4R(食用赤色7)、メチルレッド(アシッドレッド2)、ムレキシド−プルプリン酸アンモニウム。
【0065】
(生物学的着色剤)
生物学的物質についての染色プロトコルにおいて一般に使用される色素分子はまた、光活性化剤として使用され得る。適切な生物学的着色剤としては、以下が挙げられる:
サフラニン(サフラニンO、塩基レッド2)はまた、アゾ色素であり、組織学および細胞学において使用される。これは、グラム染色プロトコルにおける伝統的な対比染色である。
【0066】
フクシン(塩基性もしくは酸性)(ロザニリンハイドロクロリド)は、細菌を染色し得、かつ防腐剤として使用されてきた赤紫色の生物学的色素である。これは、吸収最大540〜555nmを有する。
【0067】
3,3’ ジヘキシルカルボシアニンヨウ化物(dihexylocarbocyanine iodide)(DiOC6)は、細胞の小胞体、小胞膜およびミトコンドリアを染色するために使用される蛍光色素である。これは、光力学的毒性を示し;青色光に曝される場合、緑色の蛍光を有する。
【0068】
カルミン酸(アシッドレッド4、ニュートラルレッド4)は、コチニールカイガラムシから天然に得られる赤色のグルコシド性ヒドロキシアントラプリン(glucosidal hydroxyanthrapurin)である。
【0069】
インドシアニン・グリーン(ICG)は、血液容積決定、心拍出量、もしくは肝機能についての診断剤として使用される。ICGは、赤血球に強く結合し、フルオレセインと混合して使用される場合、これは、青色から緑色の光の吸収を増大する。
【0070】
(カロチノイド)
カロチノイド色素はまた、光活性化剤として作用し得る。
【0071】
サフランレッド粉末は、天然のカロチノイド含有化合物である。サフランは、サフラン(crocus sativus)から得られるスパイスである。これは、苦味およびヨードホルムもしくは干し草様の芳香によって特徴付けられる;これらは、化合物ピクロクロシンおよびサフラナール(saffranal)によって引き起こされる。これはまた、その特徴的な黄赤色を与えるカロチノイド色素であるクロチンを含む。
【0072】
サフランは、150を超える異なる化合物を含み、そのうちの多くは、良好な光吸収および有益な生物学的活性を示すカロチノイド(マンギクロチン(mangicrocin)、ゼアキサンチン(reaxanthine)、リコピン、および種々のα−カロチンおよびβ−カロチン)である。また、サフランは、光子移動剤(photon−transfer agent)および治癒因子の両方として作用し得る。サフラン色は、主に、α−クロチン(8,8 ジアポ−8,8−カロチノイド酸)の結果である。乾燥サフランレッド粉末は、pHレベルの変動に非常に敏感であり、光および酸化剤の存在下で、急速に科学的に分解する。これは、熱に対してはより抵抗性である。データは、サフランが抗発癌性特性、免疫調節特性および抗酸化特性を有することを示す。吸光度については、440nm(青色光)のクロチン特異的光子波長に対して決定される。これは、深い赤色を有し、186℃の融解点を有する結晶を形成する。水中に溶解される場合、これは橙色の溶液を形成する。
【0073】
クロセチンは、抗高脂血症作用(antilipidemic action)を発現し、種々の組織において酸素透過性を促進させることが見いだされたサフランの別の化合物である。より具体的には、これは、毛細管の内皮細胞の増大した酸素化を観察した。筋および大脳皮質の酸素化の増大が観察され、出血性ショックもしくは肺気腫を誘導した実験動物において生存率の増大をもたらした。
【0074】
アナットー(スパイス)は、主な構成成分(70〜80%)として、関連性のある抗酸化特性を示すカロチノイドビキシンを含む。
【0075】
β−カロチンはまた、適切な特性を示した。
【0076】
フコキサンチンは、酸化還元反応の光増感に関して顕著な能力を有する褐藻類の構成成分である。
【0077】
(治癒因子)
治癒因子は、上記組成物の適用部位上での組織の治癒プロセスもしくは再生プロセスを促進もしくは増強する化合物を含む。上記組成物の光活性化の間に、上記皮膚もしくは上記粘膜による、上記処置部位での分子の吸収の増大が存在する。上記処置部位での血流の増大は、長期にわたって観察される。フリーラジカルカスケードの動的な相互作用に起因する、リンパドレナージの増大および浸透圧平衡における考えられる変化は、増強され得るか、または治癒因子の包含でさらに強化される。適切な治癒因子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
ヒアルロン酸(ヒアルロナン、ヒアルロネート)は、結合組織、上皮組織および神経組織全体に広く分布している硫酸化されていないグリコサミノグリカンである。これは、細胞外マトリクスの主な成分のうちの1つであり、細胞増殖および移動に顕著に寄与する。ヒアルロナンは、皮膚の主要な成分であり、ここで、これは、組織修復に関与している。これは、細胞外マトリクス中に豊富にあるが、組織流体力学、細胞の動きおよび増殖に寄与し、非常に多くの細胞表面レセプター相互作用(顕著なのは、主要なレセプターCD44を含むもの)に関与する。ヒアルロニダーゼ酵素は、ヒアルロナンを分解する。少なくとも7つのタイプのヒアルロニダーゼ様酵素が、ヒトに存在し、そのうちのいくつかは、腫瘍抑制因子である。ヒアルロン酸の分解生成物、オリゴサッカリドおよび非常に低分子量のヒアルロン酸は、血管新生促進特性を示す。さらに、近年の研究から、ヒアルロナンフラグメント(しかし、ヒアルロナンの元来の高分子量はない)は、組織傷害において、マクロファージおよび樹状細胞における炎症応答を誘導し得ることが示される。ヒアルロン酸は、上記皮膚を標的とする生物学的適用に十分適している。その高い生体適合性に起因して、これは、組織再生を刺激するために使用される。近年の研究から、ヒアルロン酸は、免疫応答を媒介する白血球のための空間を物理的に作り出すために、治癒の初期段階に出現することが実証された。これは、創傷治癒適用のための生物学的足場の合成およびしわ処置において使用される。
【0078】
グルコサミンは、ヒト組織中で最も豊富な単糖類、ならびにグリコシル化タンパク質およびグリコシル化脂質の生物合成における前駆体のうちの1つである。これは、変形性関節症の処置において一般的に使用される。使用されるグルコサミンの一般的形態は、その硫酸塩である。グルコサミンは、抗炎症活性、プロテオグリカンの合成の刺激、およびタンパク質分解酵素の合成を含む多くの効果を示す。グルコサミンが本発明の組成物において使用され得る適切な濃度範囲は、約1%〜約3%である。
【0079】
アラントインは、グリコシル酸(glyosilic acid)のジウレイドである。これは、表皮剥脱効果を有し、細胞外マトリクスの水分含有量を増大させ、死んだ(アポトーシスの)皮膚細胞の上層の落屑を高め、皮膚増殖および創傷治癒を促進する。
【0080】
また、サフランは、光子移動因子および治癒因子の両方として作用し得る。
【0081】
(キレート化剤)
キレート化剤は、閉じた感染ポケットおよび到達困難な病変におけるスメア層除去を促進し;金属イオンクエンチャーおよび緩衝化剤として作用するように、含まれ得る。適切なキレート化剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
エチレンジアミノ四酢酸(EDTA):これは、二価金属イオンおよび三価金属イオンを封鎖するために使用されるアミノ酸である。EDTAは、4個のカルボキシレート基および2個のアミン基を介して金属に結合する。EDTAは、Mn(III)、Fe(III)、Cu(III)、Co(III)と特に強い錯体を形成する。血小板の集まりおよび血餅形成を防止する。これは、器具使用の間に、スメア層除去剤として歯内治療において使用される。これは、溶液を緩衝化するために使用される。
【0082】
エチレングリコール四酢酸(EGTA)は、EDTAに関連するが、マグネシウムイオンよりカルシウムに対する親和性が遙かに高い。これは、生細胞内の環境に似せて、しばしば、歯科学において、より具体的には、歯内治療学において、スメア層除去において使用される緩衝溶液作製のために有用である。
【0083】
(脂肪分解刺激因子)
脂肪分解刺激因子は、化粧品適用(例えば、しわの処置)において上記組成物の使用のために含められ得る。
【0084】
カフェイン、およびカフェインパラキサンチンの代謝誘導体は、脂肪分解プロセスにおいて血流にグリセロールおよび脂肪酸を放出するように増大させ得る。
【0085】
(親水性ゲル化剤)
上記創傷治癒組成物はまた、1種以上の親水性ゲル化剤を含み得る。上記親水性ゲル化剤は、上記組成物の粘性を高め、皮膚もしくは創傷領域への上記組成物の適用を促進するのに寄与する。また、過酸化水素(H)とともに使用される場合、これは、Hのゆっくりとした放出に寄与し得、より即座の反応を提供し得る。なぜなら、純粋なHは、直接使用され得るからである。適切な親水性ゲル化剤としては、グルコース、改変デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボポル(登録商標)ポリマー、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、寒天、カラギーナン、ローカストビーンガム、ペクチン、およびゼラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
(上記組成物の使用)
適切な感光性化合物の包含および適切な波長の光源での活性化は、ペルオキシド源(上記酸化剤)の分解プロセスにおける促進および光力学的現象を介して起こる他の反応をもたらす。上記含められる色素は、特定の波長の光子によって照らされ、より高いエネルギー状態へと励起される。上記光活性化剤の励起された電子が低エネルギー状態に戻るとき、それらは、より低いエネルギーレベルを有する光子を発するので、より長い波長の光の放射(ストークスシフト)を引き起こす。適切な環境では、このエネルギー移動の大部分は、酸素もしくは反応性過酸化水素へ移動し、酸素ラジカル(例えば、一重項酸素)の形成を引き起こす。
【0087】
上記組成物の活性化によって生成される上記一重項酸素および他の反応性酸素種は、ホーメティック(hormetic)様式において機能すると考えられる。すなわち、健康に有益な効果は、通常は毒性の刺激(例えば、反応性酸素)への低暴露によって、標的とされた組織の細胞におけるストレス応答経路を刺激および調節することによって、もたらされる。外因的に生成されたフリーラジカル(反応性酸素種)への内因性の応答は、上記外因性のフリーラジカルに対する増大した防御能力において調節され、治癒プロセスおよび再生プロセスの促進を誘導する。さらに、上記組成物の活性化はまた、抗菌効果を生じる。フリーラジカルへの曝露に対する細菌の極端な感受性は、本発明の組成物を事実上の殺菌組成物にする。
【0088】
考えられる作用機構は、細胞がある種のシグナルを別のシグナルに変換する目立ったシグナル伝達プロセスを生じる強化された酸化還元シグナル伝達現象であるはずである;活性された「第2のメッセンジャー」が、比較的小さな刺激で始まる「シグナルカスケード」を誘導する(これは、このようなシグナルの生物学的にモニターされる増幅を介して、大きな応答を誘発する)。これら複雑な機構は、増殖因子活性化を介して、血管新生現象におそらく関与する。
【0089】
この方法は、光力学的療法の形態として記載され得る。しかし、他の光力学的技術とは異なり、光活性化剤(photoactoactivator)が組織構造に組み込まれる場合、本発明の方法において、上記光活性化物質は、上記組織と単純に接触した状態にあり、上記組織と化学的に相互作用する「光力学的デバイス」として、光によって活性化される場合に作用する。さらに、上記化学線は、上記組織に浸透し、上記光活性化剤によって発せられる光(より長い波長の光)はまた、上記組織によって吸収される。
【0090】
化学線の任意の供給源が使用され得る。ハロゲン、LEDもしくはプラズマアークランプ、またはレーザーの任意のタイプが適している可能性がある。適切な化学線源の主な特徴は、それらが上記組成物に存在する上記1種以上の光活性化剤を活性化するのに適した波長の光を発することである。一実施形態において、アルゴンレーザーが使用される。別の実施形態において、チタン酸リン酸カリウム(pottasiumu−titanyl phosphate)(KTP)レーザー(例えば、GreenLightTMレーザー)が使用される。さらに別の実施形態において、LED光硬化デバイスは、上記化学線源である。さらに別の実施形態において、上記化学線源は、400〜600nmの間の波長を有する可視光線源である。さらに、上記化学線源は、適切な出力密度を有するはずである。非平行光源(LED、ハロゲンもしくはプラズマランプ)の適切な出力密度は、約900mW/cm〜約2000mW/cmの範囲にある。レーザー光源の適切な出力密度は、約0.5mW/cm〜約0.8mW/cmの範囲にある。
【0091】
化学線への曝露の持続は、処置される表面積、および処置される病変、外傷もしくは傷害のタイプに依存する。上記組成物の光活性化は、数秒内もしくはさらに短い時間(even fragment of seconds)内に起こり得るが、長い曝露器官は、本発明の組成物に対する、吸収され、反射されかつ再放出された光の相乗効果および処置される組織とのその相互作用を活用するために有益である。一実施形態において、上記創傷治癒組成物が適用された組織、皮膚もしくは創傷の化学線への曝露時間は、60秒〜5分間の間の期間である。別の実施形態において、上記創傷治癒組成物が適用された上記組織、皮膚もしくは創傷の、化学線への曝露時間は、処置されるべき領域1cmあたり60秒〜5分間の間の期間である。その結果、10cmの総曝露時間は、10分〜50分の間である。さらに別の実施形態において、上記化学線源は、適切な曝露時間にわたって処置される領域に対して連続作動の状態にある。さらに別の実施形態において、上記創傷治癒組成物および化学線の複数回の適用が行われる。いくつかの実施形態において、上記組織、皮膚もしくは創傷は、化学線に、少なくとも2回、3回、4回、5回、もしくは6回曝される。いくつかの実施形態において、上記創傷治癒組成物の新たな適用は、化学線への曝露前に適用される。
【実施例】
【0092】
(代替の実施形態)
(実施例I)
例示的な創傷治癒組成物を、以下の成分を混合することによって調製した:
【0093】
【表1】

上記酸化剤(4mL)および治癒因子(1.5mL)を混合し、上記光活性化剤(1mL)と合わせた。得られた組成物を、患者の皮膚に適用し、LED光硬化デバイス(青色光)によって提供される化学線で活性化した。上記組成物を、処置後に除去した。
【0094】
(実施例II)
第2の例示的な創傷治癒組成物を、以下の成分を混合することによって調製した:
【0095】
【表2】

上記酸化剤(4mL)および治癒因子(1.5mL)を混合し、上記光活性化剤(1mL)と合わせた。得られた組成物を、患者の皮膚に適用し、LED光硬化デバイス(青色光)によって提供される化学線で活性化した。上記組成物を、処置後に除去した。
【0096】
この第2の例示的な組成物は、上記組成物中に存在する他の色素(インドシアニン・グリーンおよびサフランレッド粉末)に対する光活性化剤として、フルオレセイン色素を使用することである。少量のフルオレセインを、上記インドシアニン・グリーンおよびサフランレッド粉末溶液への添加は、上記他の色素化合物を活性化し、確立された臨床的吸収/再放出基準を増大することによって、上記処置を改善する波長の光の再発光を引き起こした。
【0097】
インドシアニン・グリーンは、ヘモグロビンによく結合し、組織による選択的エネルギー吸収を助け、生成されたフリーラジカルカスケードでこれら組織を標的化するのも助ける。また、この光活性化剤混合物は、サフランレッドを蛍光性にすることができ、このことは、繰り返すと、光力学的現象および生体刺激現象の両方を改善する。
【0098】
(実施例III)
上記光活性化剤、エオシンYおよびエリスロシンBの毒性を、ヒト細胞に対するこれら化合物の細胞毒性を測定することによって評価した。上皮形態を有するHep G2ヒト肝細胞癌細胞を、漸増濃度(0.001〜100μM)のエオシンYもしくはエリスロシンBで24時間にわたって処理し、上記細胞の生存を評価した。エオシンY(図1)もしくはエリスロシンB(図2)のいずれかの漸増濃度も、未処理細胞と比較した場合、細胞生存性に影響を及ぼさなかった。スタウロスポリン(STS)を、細胞死を誘導するための陽性コントロールとして使用し、用量依存性効果を引き起こした(図1および図2)。類似の結果を、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出により細胞死を測定することによって得た。従って、エオシンYもエリスロシンBも、細胞死を増大させなかった。
【0099】
(実施例IV)
(ラットにおける切除創傷モデル)
ラットにおける無作為皮弁を、皮弁生存に関する虚血および薬理学的な条件調整方法(preconditioning method)の利益を評価し、皮弁に対する血流評価技術を適用し、血管シャントの影響を実証するため、および皮弁生存性に関する研究のために、創傷治癒手順を研究するために使用した。上記無作為皮弁モデルを、皮弁生存および治癒プロセスに寄与する、関連する調節に対する本発明の組成物の効果を研究するために使用した。
【0100】
幅1cm×長さ2cmの切除創傷を、肩甲骨下角の下2cmの背部の後正中線で切った。上記皮膚を、メスで切り、皮筋層およびその皮筋層に対して皮下0.5cmの層を、創傷縁部から切除した。次に、上記創傷を、8mm×8mmサイズのマーカーをつけて写真撮影した。1gの上記創傷治癒組成物を、上記創傷に適用し(0.5g/cm2)、3分間、青色LED光を照射した。
【0101】
(実施例V)
実施例IVにおいて上記で記載されるように、ラット(n=2/群)に対して切除を行い、上記切除を、上記酸化剤(過酸化カルバミド)および光活性化剤混合物(エオシンY、エリスロシンBおよびサフランレッド粉末を含む)を含む創傷治癒組成物1gの1回の適用で処置したか、もしくは処置しなかった。上記切除を、LED光(青色光)で3分間にわたって照射した。創傷閉鎖のパーセンテージを、処置後10日の期間にわたって評価した(図3)。上記組成物で処置した動物は、処置後最初の3日間の期間で、より迅速な創傷閉鎖を示した。
【0102】
(実施例VI)
実施例IVにおいて上記で記載されるように、ラット(n=2/群)に対して切除を行い、その切除を、(A)上記酸化剤(過酸化カルバミド)および光活性化剤混合物(エオシンY、およびエリスロシンBを含む)を含む創傷治癒組成物1g;(B)上記酸化剤(過酸化カルバミド)および光活性化剤混合物(エオシンY、エリスロシンBおよびサフランレッド粉末を含む)を含む創傷治癒組成物1g;または(C)上記酸化剤(過酸化カルバミド)および光活性化剤混合物(エオシンY、エリスロシンB、サフランレッド粉末およびインドシアニン・グリーンを含む)を含む創傷治癒組成物1gを1回適用することで処置したか、または処置しなかった。上記切除を、LED光(青色光)で3分間にわたって照射した。創傷閉鎖のパーセンテージを、4日間にわたって毎日評価した(図4)。組成物(A)および組成物(B)で処置した動物は、処置後4日間の期間にわたって改善された創傷閉鎖を示した。組成物(C)におけるインドシアニン・グリーンの添加は、組成物(A)および組成物(B)に対して観察された創傷治癒効果を抑制した。
【0103】
(実施例VII)
実施例IVにおいて上記で記載されるように、ラット(n=2/群)に対して切除を行い、上記切除を、酸化剤(過酸化カルバミド)および光活性化剤混合物(エオシンYおよびエリスロシンBを含む)を含む創傷治癒組成物1gを1回適用することで処置したか、または処置しなかった。上記切除を、LED光(青色光)で3分間にわたって照射した。創傷閉鎖のパーセンテージを、12日間の期間にわたって評価した(図5)。上記組成物で処置した動物は、処置後最初の7日間でより迅速な創傷閉鎖を示した。
【0104】
(実施例VIII)
プレキシグラスにおいて、3cm×9cm(3×9)のテンプレートを使用して、外科的マーカーを用いて、背面皮膚上で皮弁を突き止め、肩甲骨下角および骨盤の上方の骨を限界として採取した。頭蓋底を伴う純粋な無作為パターンの皮弁を、無菌技術を使用して切断し、浅筋膜、筋肉層、皮下組織および皮膚を含め、深筋膜を介して挙上させた。創傷収縮を最小にし、ヒトの状態をシミュレートするために、創傷縁部に由来する筋肉層の0.5cmの皮下層を除去した。1時間の間に、不透過性バリア(例えば、シリコーンシート)を、上記皮弁とそのドナー部位との間に配置して、創傷床支持の可能性を排除した。次いで、上記シートを除去し、上記皮弁を、その元の位置に戻し、上記皮弁の縁部を、断続的様式において4/0ナイロン縫合糸を使用して外科的に閉じた。皮弁を閉じた直後、上記皮弁柄部を、13.5gのゲル処方物(0.5g/cm)で被覆し、照射した。コントロールは、いかなる処置をも受けなかった。上記皮弁全体に均一に軟膏が分配されるように注意を払った。ゲル処方物を、実験の同じ日に調製した。ゲル+光群については、動物を、ゲル処方物で処置し、上記皮弁を、LEDランプで3分間にわたって照射した。
【0105】
(実施例IX)
上記で記載されるように、ラット(n=2/群)に対して切除を行い、上記切除を上記ゲル処方物で処置したかまたは処置せず、LED光(青色光)で実施例VIIIに記載されるように照射した。
【0106】
その結果は、フルオレセイン注射および直接可視化から壊死の直接相関を示す。組織の変化について生検を評価した。上記処置群のデータは、壊死で臨床的に顕著な1.5倍の低下(それぞれ、上記コントロール群および処置群において45.7(±17.36) 対 30.42(±20.18)の%壊死、平均、SD)を示す。ここで図7Aを参照すると、上記コントロール群および処置群における皮弁手術後の壊死の上記臨床的評価は、上記処置群に対して、上記コントロール群でより高い壊死が観察されることを示す。
【0107】
上記コントロール群および処置群の生検のヘマトキシリンおよびエオシン染色(図7B)から、より大きな血管増加が上記処置群で起こっていることが明らかにされている(黒い矢印を参照のこと)。40×倍率でのコラーゲン線維沈着の評価のためのマッソン・トリクローム染色(図7C)は、新たなコラーゲン沈着が、上記コントロール群に対して、上記処置群において生じていることを示す。光活性化剤および波長特異的光を使用する光力学的処置が、皮弁での新たなコラーゲンの形成を含む、新たな創傷の局所領域状態を改善するために皮弁における側副枝の血管増加を刺激することによって、皮弁の生存性を増大させるのを補助した。
【0108】
本明細書で示される実施形態および実施例は、特許請求される事項の一般的な性質を示し、限定しない。これら実施形態が、開示され、特許請求される事項の趣旨および範囲を逸脱することなく、種々の適用のためにおよび種々の方法で、いかにして容易に改変され、および/もしくは適合され得るかは、当業者によって理解される。その特許請求の範囲は、全ての代替の実施形態およびその事項の等価物を限定することなく含まれることが理解されるべきである。本明細書で使用される語句、言葉、および用語は、例示であって限定ではない。法によって許容される場合、本明細書で引用される全ての参考文献は、それらの全体が本明細書に参考として援用される。本明細書で開示される種々の実施形態の任意の局面は、考えられる代替の実施形態の範囲において組み合わされ得ること、および特徴の代替の組み合わせ(その全てが、特徴の組み合わせが異なる)は、特許請求される事項の一部を形成することが理解されるべきであることが、認識される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷治癒組成物であって、
少なくとも1種の酸化剤;
該酸化剤を活性化し得る少なくとも1種の光活性化剤;および
ヒアルロン酸、グルコサミンおよびアラントインから選択される少なくとも1種の治癒因子;
を、薬学的に受容可能なキャリアとともに含む、創傷治癒組成物。
【請求項2】
前記酸化剤は、過酸化水素、過酸化カルバミドおよび過酸化ベンゾイルから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種の親水性ゲル化剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記親水性ゲル化剤は、グルコース、改変デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボポル(登録商標)ポリマー、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、寒天、カラギーナン、ローカストビーンガム、ペクチン、およびゼラチンから選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記光活性化剤は、キサンテン誘導体色素、アゾ色素、生物学的着色剤、およびカロチノイドから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記キサンテン誘導体色素は、フルオレン色素、フルオロン色素、およびロドール色素から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記フルオレン色素は、ピロニン色素およびローダミン色素から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ピロニン色素は、ピロニンYおよびピロニンBから選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ローダミン色素は、ローダミンB、ローダミンGおよびローダミンWTから選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記フルオロン色素は、フルオレセインおよびフルオレセイン誘導体から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記フルオレセイン誘導体は、フロキシンB、ローズベンガル、およびメルブロミンから選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記フルオレセイン誘導体は、エオシンおよびエリスロシンから選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記アゾ色素は、メチルバイオレット、ニュートラルレッド、パラレッド、アマランス、カルモイシン、アルラレッドAC、タルトラジン、オレンジG、ポンソー4R、メチルレッド、およびムレキシド−プルプリン酸アンモニウムから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項14】
前記生物学的着色剤は、サフラニンO、塩基性フクシン、酸性フクシン、3,3’ ジヘキシルカルボシアニンヨウ化物、カルミン酸、およびインドシアニン・グリーンから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項15】
前記カロチノイドは、クロセチン、α−クロシン(8,8−ジアポ−8,8−カロテン酸)、ゼアキサンチン、リコピン、α−カロチン、β−カロチン、ビキシン、およびフコキサンチンから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項16】
前記カロチノイドは、サフランレッド粉末、アナットー抽出物、および褐藻類抽出物から選択される混合物として前記組成物中に存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項17】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびエチレングリコール四酢酸(EGTA)から選択される少なくとも1種のキレート化剤をさらに含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
カフェインおよびパラキサンチンから選択される少なくとも1種の脂肪分解刺激因子をさらに含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
創傷治癒のための方法であって、該方法は、
a)患者の皮膚に、少なくとも1種の酸化剤、該酸化剤を活性化し得る少なくとも1種の光活性化剤を含む組成物を局所的に適用する工程;ならびに
b)該工程a)の皮膚を、該光活性化剤が該酸化剤の活性化を引き起こすに十分な時間にわたって、化学線に供する工程
を包含する、方法。
【請求項20】
前記皮膚は、約60秒〜約5分の期間にわたって化学線に曝される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記皮膚は、処置されるべき領域1cmあたり約60秒〜約5分の期間にわたって化学線に曝される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
化学線源は、処置されるべき領域に対して連続作動の状態である、請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記化学線は、約400nm〜約600nmの間の波長を有する可視光線である、請求項19〜22のいずれか1項に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−508189(P2012−508189A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534980(P2011−534980)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001608
【国際公開番号】WO2010/051636
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511110418)クロクス テクノロジーズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】