説明

創傷治癒促進剤

【課題】プロテオグリカン、特にヘパラン硫酸タイプのプロテオグリカンの生合成を選択的に促進する化合物、および該化合物を有効成分とする創傷治癒促進剤を提供する。
【解決手段】式(I)


(式中、R1は水素原子、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールまたは天然若しくは非天然のアミノ酸からなるペプチド残基を表し、R2はハロゲン原子またはアルコキシを表す)で表される化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンの選択的生合成に有用なフッ素含有糖鎖および糖ペプチドの新規誘導体に関する。さらに、本発明は、該誘導体を有効成分とする医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテオグリカン(PG)は、コアタンパク質と呼ばれるタンパク質に1本以上のグリコサミノグリカン(GAG)鎖が結合している構造を有する分子であり、そのGAG鎖を構成する糖の違いによりコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)とヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)とに大きく分類される。
【0003】
これまでに、天然から単離されたPGの構造をもとに、PGのGAG鎖生合成の仕分けに関するメカニズムについて、研究がなされ、以下の二つの仮説が提唱されている。J.D.Eskoらは、HSPGには、GAGに直結するコアペプチド領域は疎水性アミノ酸が多く、またその両側もしくは片側に酸性クラスターペプチド領域が存在することを報告し(非特許文献1)、HSPGタイプへの糖鎖伸長を決定付ける5番目のα−GlcNAc転移酵素がコアペプチドを認識する部位を有していることを示唆している。菅原らは、CSPGの共通結合4糖領域のGalが硫酸化されているものは存在するが、その領域が硫酸化されたHSPGは見つかっていないことを報告し(非特許文献2〜6)、このことから、共通結合4糖上の硫酸基の有無がこの仕分け制御機構に深く関与していると推定している。しかしながら、これらの仮説はいずれも、証明されるまでに至っておらず、HSPG/CSPG生合成の仕分け制御機構のメカニズムはいまだに不明である。
【0004】
一方で、PGの生成促進剤が新しい治療剤として着目されている。西村等は、PGの構造を模倣したGAG鎖伸張の開始剤(イニシエーター)となりうるポリ糖ペプチドを提案し、リウマチ性関節炎や変形性関節炎治療剤としての有用性を示唆している(特許文献1)。しかしながら、このポリ糖ペプチドよりなるイニシエーターはHSPG/CSPG生合成についてその選択性が確認されるまでに至っていない。
【0005】
HSPGは、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮細胞成長因子、ヘパリン結合性上皮細胞成長因子、肝細胞成長因子(HGF)などの様々な成長因子のシグナル伝達に関与し、創傷治癒などに関わる各種細胞の増殖・分化に関与していることが知られている。創傷治癒の促進のためには、HSPGの生成促進が重要であるところ、上述のように、HSPG/CSPG生合成の仕分け制御機構に関するメカニズムはいまだ不明であり、HSPG/CSPG生合成の仕分け制御に使用可能な化合物に関する報告もない。
【特許文献1】WO2004/076476号公報
【非特許文献1】J. D. EskoおよびL. Zhang, Curr. Opin. Struct. Biol., 6, 663-670 (1996)
【非特許文献2】K. Sugahara, Y. Ohkita, Y. Shibata, K. Yoshida, およびK. Ikegami, J. Biol. Chem., 271, 7204-7212 (1995)
【非特許文献3】H. Kitagawa, M. Oyama, K. Masayama, Y. Yamaguchi, およびK. Sugahara, Glycobiology., 7, 1175-1180 (1997)
【非特許文献4】S. Yamada, M. Oyama, H. Kinugasa. T. Nakagawa, T. Kawasaki, S. Nagasawa, H. R. Morris, A. Dell, およびK. Sugahara, Glycobiology., 5, 335-341 (1995)
【非特許文献5】S. Yamada, M. Oyama, Y. Yuki, K. Kato, およびK. Sugahara, Eur. J. Biochem., 233, 687-693 (1995)
【非特許文献6】K. Sugahara, R. Tohno-oka, S. Yamada, K.H. Khoo, H. R. Morris, およびA. Dell, Glycobiology., 4, 535-544 (1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、プロテオグリカンの生成促進機能を有し、特に、HSPGの生合成を選択的に促進させる化合物を提供することである。
【0007】
プロテオグリカンのGAG鎖はウロン酸とアミノ糖の2糖を繰り返し単位とする特徴的な構造を持ち、GlcA-Gal-Gal-Xylという共通四糖を介して、コアタンパク質中のセリン残基に結合している。
【化1】

【0008】
GAG鎖を構成する糖の違いによりCSPGおよびHSPGという二つのタイプに分類されることは上述の通りであるが、これら両タイプのPGの生合成分岐点にあたる共通四糖へのヘキソサミン転移メカニズムは未だ不明であった。
【0009】
本発明者等は、共通四糖上の硫酸基の有無がCSPG/HSPGの仕分け制御に深く関与しているとの洞察から、当該硫酸エステル化が観測される水酸基をフッ素原子で置換した類縁体を合成した。そして、式(I)で表される化合物群が、HSPG伸張のイニシエーターとなることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下のものを提供する。
(1)式(I)
【化2】

(式中、R1は水素原子、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールまたは天然若しくは非天然のアミノ酸からなるペプチド残基を表し、R2はハロゲン原子またはアルコキシを表す。)
で表される、化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
(2)R1が天然若しくは非天然のアミノ酸からなるペプチド残基を表す、式(I)の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
(3)−OR1がセリンおよび/またはトレオニン含有オリゴペプチドであって、−OR1の酸素原子とセリンおよび/またはトレオニンが結合し、さらに該アミノ酸に二糖ユニットが結合した、式(I)の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
(4)−OR1が下式
【化3】

(式中、FITCはアミノ基がフルオレッセインイソチオシアネートで蛍光標識化されていることを表す。)
で表されるグリシルセリン誘導体である、式(I)の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載された式(I)の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬。
(6)上記(1)から(4)のいずれかに記載された式(I)の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物を有効成分とする、ヘパラン硫酸プロテオグリカン生成促進剤。
(7)上記(1)から(4)のいずれかに記載された式(I)の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物を有効成分とする、創傷治癒促進剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化合物は、プロテオグリカンの生成促進機能を有し、特にHSPGの生合成を選択的に促進するので、創傷治癒の促進に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の化合物は、式(I)
【化4】

(式中、R1は水素原子、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールまたは天然若しくは非天然のアミノ酸からなるペプチド残基を表し、R2はハロゲン原子またはアルコキシを表す。)
で表される、糖鎖誘導体、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物である。
式(I)で表される化合物のすべての水酸基は、通常用いられる水酸基の保護基により保護されていても良い。好ましくは保護されていない水酸基である。
【0013】
ここで、「アルキル」とは、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜3までの直鎖状または分岐状のアルキルを包含し、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、n−へプチル、イソヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、n−ノニルおよびn−デシル等が例示される。
【0014】
「置換されていてもよいアルキル」の置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アシル等が挙げられる。
【0015】
「ハロゲン」とはF、Cl、Br、およびIを包含する。
【0016】
「アルコキシ」および「アルコキシカルボニル」のアルキル部分は前記「アルキル」と同意であって、いずれも、炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜3までの直鎖状または分岐状のアルキルを包含し、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル等が例示される。特に好ましくはメチルまたはエチルである。
【0017】
「アシル」とは、炭素数1〜7の脂肪族アシルおよびアロイルを包含する。具体的には、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、アクリロイル、プロピオロイル、メタクリロイル、クロトノイルおよびベンゾイル等が例示される。
【0018】
「ヘテロアリール」とは、O、SおよびNから任意に選択されるヘテロ原子を環内に1個以上有する芳香族複素環式基を包含し、具体的にはピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアゾリル、トリアジニル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、フリルおよびチエニル等の5〜6員環のヘテロアリール;インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、インドリニル、イソインドリニル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、プリニル、プテリジニル、ベンゾピラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジル、ピラゾロピリジン、トリアゾロピリジル、イミダゾチアゾリル、ピラジノピリダジニル、キナゾリニル、キノリル、イソキノリル、ナフチリジニル、ジヒドロベンゾフリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ジヒドロベンズオキサジン、テトラヒドロベンゾチエニル等の2環の縮合複素環式基;カルバゾリル、アクリジニル、キサンテニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、ジベンゾフリル、イミダゾキノリル等の3環の縮合複素環式基を包含する。好ましくは5〜6員環のヘテロアリールである。
【0019】
「アリール」とは、炭素数6から16の単環性、二環性若しくは三環性の芳香族炭素環を示し、例えばフェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル等を包含し、特にフェニルが好ましい。
【0020】
「置換されていてもよいアリール」および「置換されていてもよいヘテロアリール」の置換基は「置換されていてもよいアルキル」の場合と同様である。
【0021】
「天然アミノ酸」は生物が普遍的に利用する20種類のL−α−アミノ酸を意味し、また「非天然アミノ酸」は天然アミノ酸の光学異性体(D-体)の他、天然アミノ酸に存在しない側鎖を有するL−体若しくはD−体のアミノ酸誘導体を包含する。天然アミノ酸の光学異性体(D-体)が好ましい。
【0022】
「ペプチド残基」はこれら天然および/または非天然アミノ酸が1個から10個ペプチド結合でつながったオリゴペプチドを包含し、1個の天然または非天然アミノ酸を包含する。1個から6個のペプチドが好ましく、さらに1個から3個のペプチドが好ましい。また、このペプチド残基は、ペプチド合成のための保護基および/または当業者に一般的に使用される標識で適宜、修飾されていてもよい。
【0023】
製薬上許容される塩としては、酸付加塩の場合、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;例えばシュウ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩;例えばメタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の酸性アミノ酸等を挙げることができる。また、塩基付加塩の場合、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アルギニン、リシン等の塩基性アミノ酸塩等を挙げることができる。
【0024】
化合物(I)は、水、アセトニトリル、酢酸エチル、メタノール、エタノール等の溶媒和物であってもよい。又本発明化合物の溶媒和物の溶媒和数は通常、合成方法、精製方法または結晶化条件等によって変化し得るが、例えば、化合物1分子当り1〜5分子の範囲である。
【0025】
本発明化合物は以下のようにして製造できる。
(1)三糖ユニットの合成スキーム
フッ素置換されたグリコシルドナーは、その電子求引性のため反応性が悪く、アノマー位活性化基としてイミデートを用いた時のみ反応が進行した。また、グリコシルアクセプターとして4,6−ベンジリデン化Galを用いた時には3位の水酸基の反応性が悪く反応が進行しなかったため、この水酸基の反応性を高める4,6−シリレン化Galをグリコシルアクセプターとして用いた時のみ反応が進行した。これらのことより、グリコシルドナーのアノマー位活性化基としてはイミデート、鍵フラグメントとなる真ん中のGalは4,6−シリレン化Galを用いる合成ルートを計画した。
【0026】
フッ素化三糖ユニット(39)は以下のスキームに従って合成される。
【化5】

鍵化合物であるシリレン化ガラクトースアクセプター(17)に対し、6位フッ素化ドナー(5)をグリコシル化して二糖ユニットとした後、シリレン基をHFで脱保護し、そのままベンジル化して(22)とした。次いで、二糖ユニット(22)のMP(p−メトキシフェニル)基を、後述の通りイミデート体に変換し、これを、既知化合物であるキシロシルアクセプター(36)とグリコシル化して、三糖ユニット(39)とした。この際、アノマー位の選択比は約α:β(1:5)(NMR比)となるが、β体のみフラッシュカラムクロマトグラフィーにより分離精製することができる。
【0027】
(2)単糖誘導体の合成
6−Fフラグメント(5)の合成
【化6】

反応条件:
a)アリルアルコール、Dowex50W×8[H+]
b)(1)PhCH(OMe)2、CSA、DMF、(2)BzCl、Pyr、DMAP、CH2Cl2、(3)CSA、MeOH
c)(1)DAST、CH2Cl2、(2)BzCl、ピリジン、DMAP、CH2Cl2
d)(1)Ir cat、H2、THF、次いでTsOH水溶液、(2)CCl3CN、DBU
D−ガラクトース(1)をフィッシャー法によりアノマー位をアリル化して(2)とした。4,6位にベンジリデンアセタールをかけ、そのまま2位をベンゾイル化した後、未精製のままベンジリデンアセタールを脱保護して既知化合物(3)とした。これを、DASTで6位を選択的にフッ素化した後、簡易精製の後そのまま4位をベンゾイル化して(4)とした。アノマー位のアリル基を脱保護した後、イミデート化して6Fフラグメント(5)とした。
【0028】
4,6−シリレン化ガラクトース(17)の合成
【化7】

反応条件:
a)(1)NaOMe、MeOH、(2)n−Bu2SnO、トルエン、還流、その後臭化アリル、臭化テトラブチルアンモニウム
b)(1)DTBP、2,6−ルチジン、(2)BzCl、ピリジン、DMAP
c)[Ir(COD)(PMePh22PF6]、H2、その後TsOHH2
市販の(14)から既知化合物(15)へと導いた後、4,6−位を選択的にシリレン化した。これをそのまま2位をベンゾイル化して(16)とした。(16)のアリル基を脱保護して、シリレン化ガラクトースアクセプター(17)とした。
【0029】
(3)化合物(I)の合成
こうして得られた三糖ユニットをそのまま脱保護すれば、Rがp-メトキシフェニルである本発明化合物(I)となる。
また、常法に従ってイミデート体に変換した後、HORとカップリングさせ、ベンゾイル基を脱保護すれば種々の化合物(I)に誘導することができる。
【0030】
Rとしては、天然アミノ酸2個から4個のオリゴペプチドが好ましく、特にセリン若しくはスレオニンの側鎖OH基とカップリングさせたものが好ましい。また、そのHSPG生成促進作用を損なわない範囲で、標識化した誘導体が好適に利用される。
【0031】
本発明の化合物は、例えば創傷治癒の促進に有効である。好ましくは創傷治癒剤として経口または非経口投与用に処方され得る。
【0032】
経口投与による場合、本剤は通常の製剤、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形剤;水剤;油性懸濁剤;またはシロップ剤もしくはエリキシル剤等の液剤のいずれかの剤形としても用いることができる。非経口投与による場合、水性または油性懸濁注射剤、点鼻液として用いることができる。その調製に際しては、慣用の賦形剤、結合剤、滑沢剤、水性溶剤、油性溶剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、安定剤等を任意に用いることができる。
【0033】
本発明の製剤は、治療有効量の化合物を製薬上許容される担体または希釈剤とともに組み合わせる(例えば混合する)ことによって製造され、その場合、周知の、容易に入手できる成分を用いて既知の方法により製造される。
【0034】
本発明の医薬組成物を製造する際、活性成分は担体と混合されるかまたは担体で希釈されるか、カプセル、サッシェー、紙、あるいは他の容器の形態をしている担体中に入れられる。担体が希釈剤として働く時、担体は媒体として働く固体、半固体、または液体の材料であり、それらは錠剤、丸剤、粉末剤、口中剤、エリキシル剤、懸濁剤、エマルジョン剤、溶液剤、シロップ剤、エアロゾル剤(液体媒質中の固体)、軟膏にすることができ、例えば、10%までの活性化合物を含む。
【0035】
当業者には公知の適当な担体はいずれもこの製剤のために使用できる。このような製剤では担体は、固体、液体、または固体と液体の混合物である。例えば、静脈注射のために有効成分の化合物を4%デキストロース/0.5%クエン酸ナトリウム水溶液中に溶解する。固形の製剤は粉末、錠剤およびカプセルを包含する。固形担体は、香料、滑沢剤、溶解剤、懸濁剤、結合剤、錠剤崩壊剤、カプセル剤にする材料としても役立つ1またはそれ以上の物質である。経口投与のための錠剤は、トウモロコシデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、および/またはゼラチン、アカシアなどの結合剤、およびステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、滑石などの滑沢剤とともに炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムなどの適当な賦形剤を含む。
【0036】
粉末剤では担体は細かく粉砕された活性成分と混合された、細かく粉砕された固体である。錠剤では活性成分は、適当な比率で、必要な結合性を持った担体と混合されており、所望の形と大きさに固められている。粉末剤および錠剤は約1〜約99重量%の本発明の新規化合物である活性成分を含んでいる。適当な固形担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、ココアバターである。
【0037】
液体製剤は懸濁剤、エマルジョン剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含む。活性成分は、滅菌水、滅菌有機溶媒、または両者の混合物などの製薬上許容し得る担体中に溶解または懸濁することができる。活性成分はしばしば適切な有機溶媒、例えばプロピレングリコール水溶液中に溶解することができる。水性デンプン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液、または適切な油中に細かく砕いた活性成分を散布することによってその他の組成物を製造することもできる。
【0038】
本発明における化合物の投与量は、投与方法、患者の年齢、体重、状態および疾患の種類によっても異なるが、通常、経口投与の場合、成人1日あたり約0.1mg〜7000mg、好ましくは、約0.5mg〜2000mgを、要すれば分割して投与すればよい。また、非経口投与の場合、成人1日あたり約0.1mg〜1000mg、好ましくは、約0.5mg〜500mgを投与する。
【実施例】
【0039】
製造例1
6-Fフラグメント(5)の合成
(a)化合物(3)の合成
【化8】

市販のD−ガラクトース(1)を既知化合物(2)へと導いた後、これをDMFに溶かしベンズアルデヒドジメチルアセタール、CSAを加えて80℃で3時間攪拌した。これをトルエン共沸してDMFを除いた後、CH2Cl2に溶かした。ピリジン、BzCl、DMAPを加えて一晩攪拌した。水を加えて反応を止め、有機層を飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4乾燥した。ろ過、濃縮後フラッシュクロマトグラフィーで精製し、(3)を得た。
化合物(3): 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 5.85 (1H, m, H8), 5.74 (1H, dd, J = 10.8, 3.0 Hz, H2), 5.71 (1H, dd, J = 10.8, 1.2 Hz, H3), 5.36 (1H, d, J = 3.0 Hz, H1), 5.30 (1H, dd, J = 16.8, 1.2 Hz, H9), 5.15 (1H, dd, J = 10.8, 1.2 Hz, H9), 4.24 (1H, dd, J = 13.2, 4.8 Hz, H7), 4.12 (1H, dd, J = 5.4, 4.2 Hz, H5), 4.07 (1H, dd, J = 13.2, 7.2 Hz, H7), 4.02 (1H, dd, J = 12.0, 5.4 Hz, H6), 3.94 (1H, dd, J = 12.0, 4.2 Hz, H6)
【0040】
(b)化合物(4)の合成
【化9】

化合物(3)をCH2Cl2に溶かし、−15℃に冷却した。これにDASTを加えた後、徐々に室温まで昇温しながら12時間攪拌した。MeOHを1滴加えて反応を止めた後、有機層を飽和重曹水、ブラインで洗浄してMgSO4乾燥した。ろ過、濃縮後、フラッシュカラムクロマトグラフィーで簡易精製を行った。副生成物との分離が困難であるため、さらなる精製は行わず次の反応に進んだ。粗生成物をCH2Cl2に溶かした後、ピリジン、BzCl、DMAPを加え50℃に加熱し、6時間攪拌した。室温まで冷却後、水を加えて反応を止め、有機層を飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4乾燥した。ろ過、濃縮後フラッシュクロマトグラフィーで精製し、化合物(4)を得た。
化合物(4): 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.07-7.22 (15H, Ph), 6.00 (1H, dd, J = 10.6, 3.0 Hz, H3), 5.97 (1H, d, J = 3.0 Hz, H4), 5.87 (1H, m, H9), 5.71 (1H, dd, J = 10.6, 3.3 Hz, H2), 5.47 (1H, d, J = 3.3 Hz, H1), 5.33 (1H, dd, J = 17.2, 1.3 Hz, H9), 5.19 (1H, dd, J = 10.3, 1.3, H9), 4.60-4.52 (3H, m, H5, H6, H6), 4.31 (1H, dd, J = 13.1, 5.1 Hz, H7), 4.11 (1H, dd, J = 13.1, 7.0 Hz, H7)
【0041】
(c)6-Fフラグメント(5)の合成
【化10】

Ir触媒をTHFに溶かし、水素雰囲気下で2時間攪拌した。フラスコ内を窒素置換した後、THFに溶かした化合物(4)を加え室温で2時間攪拌した。TLCでアリル基の異性化を確かめた後、飽和重曹水、I2を加えて1時間攪拌した。有機層を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和重曹水、ブラインで洗浄後、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、フラッシュクロマトグラフィーで簡易精製し、そのまま次の反応に進んだ。この粗生成物をCH2Cl2に溶かした後、0℃に冷却し、CCl3CN、DBUを加え1時間攪拌した。これをそのまま濃縮しフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(5)を得た。
化合物(5):1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.68 (1H, s, NH), 8.08-7.23 (15H, Ph), 6.92 (1H, d, J = 3.5 Hz, H1), 6.09 (1H, d, J = 3.0 Hz, H4), 6.05 (1H, dd, J = 10.6 Hz, 3.0 Hz, H3), 5.96 (1H, dd, J = 10.6, 3.5 Hz, H2), 4.77 (1H, qi, J = 5.8 Hz, H5), 4.66-4.52 (2H, m, H6, H6)
【0042】
参考例1
4Fフラグメント(13)の合成
【化11】

(a)8の合成
市販の6を既知化合物7へと導いた後、MeOHに懸濁させた。これにNaOMeを入れ1時間攪拌した後、DOWEX50W×8[H+]を加えて反応を止めた。ろ過、濃縮後、これをDMFに溶かした。この溶液にベンズアルデヒドジメチルアセタール、CSAを加え80℃で3時間攪拌した。トルエン共沸して溶媒を飛ばし、そのままピリジンに溶かした。0℃に冷却して無水酢酸をゆっくりと加え、室温で12時間攪拌した。溶液を濃縮後EtOAcに溶かして、有機層を水、飽和重曹水、ブラインで洗浄後、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、8を得た。
8: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 7.47-7.10 (5H, Ph), 6.97 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 6.85 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 5.55 (1H, s, PhCH), 5.41 (1H, t, J = 7.8 Hz, H3), 5.27 (1H, t, J = 7.8 Hz, H2), 5.08 (1H, d, J = 7.8 Hz, H1), 4.42 (1H, dd, J = 10.3, 5.0 Hz, H6), 3.87 (1H, t, J = 10.3 Hz, H6), 3.83 (1H, dd, J = 9.6, 7.8 Hz, H4), 3.82 (3H, s, OMe), 3.64 (1H, ddd, J = 10.3, 9.6, 5.0 Hz, H5), 2.10 (6H, Ac)
【0043】
(b)9の合成
8をTHFに溶かした後、この溶液を0℃に冷却し、MS4A、NaBH3CNを加えて10分間攪拌した。この溶液にpHチェックしながら酸性になるまで2HCl/Et2O溶液を加え、室温に昇温し3時間攪拌した。セライトでMS4Aをろ過した後、有機層を飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し9を得た。
9: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 7.35-7.26 (5H, Ph), 6.95 (2H, d, J = 3.8 Hz, MP), 6.78 (2H, d, J = 3.8 Hz, MP), 5.16 (1H, dd, J = 9.6, 7.8, Hz, H2), 5.11 (1H, t, J = 9.6 Hz, H3), 4.93 (1H, d, J = 7.8 Hz, H1), 4.60 (1H, d, J = 11.9 Hz, ベンジル), 4.56 (1H, d, J = 11.9 Hz, ベンジル), 3.83-3.77 (3H, m, H4, H6, H6), 3.63 (1H, m, H5), 2.10 (3H, s, Ac), 2.06 (3H, s, Ac)
【0044】
(c)10の合成
9をCH2Cl2にとかした後、−15℃に冷却しピリジン、Tf2Oを加えた。1時間攪拌した後TBAFを加え室温に昇温後、さらに12時間攪拌した。有機層を水、飽和重曹水、ブラインで洗浄後、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、10を得た。
10: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 7.38-7.28 (5H, ベンジル), 6.99 (2H, d, J = 9.6 Hz, MP), 6.82 (2H, d, J = 9.6 Hz, MP), 5.53 (1H, dd, J = 10.1, 8.3 Hz, H2), 5.06 (1H, ddd, J = 26.4, 10.1, 2.2 Hz, H3), 4.97 (1H, dd, J = 49.9, 2.2 Hz, H4), 4.96 (1H, d, J = 8.3 Hz, H1), 4.59 (2H, s, ベンジル), 3.88 (1H, td, J = 26.4, 6.6 Hz, H5), 3.81-3.74 (5H, m, H6, H6, OMe), 2.07 (6H, Ac)
【0045】
(d)11の合成
10をMeOHに溶かし、NaOMeを加え1時間攪拌した。DOWEX50W×8[H+]を加えて反応をとめた後、ろ過、濃縮した。これをトルエンに懸濁させ、n−Bu2Oを加え1時間リフラックスした。0℃に冷却後、ピリジン、モノクロロアセチルクロライドを加え、室温まで昇温しながら6時間攪拌した。有機層を飽和重曹水、ブラインで洗浄後、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、フラッシュカラムクロマトグラフィーで簡易精製し粗生成物を得た。この際、Bzが二つかかったものが副生成物として得られ分離が困難であったためそのまま次の反応へ進んだ。この混合物をMeOH、Et3Nに溶かし、60℃で3時間攪拌した。これにクロロホルムを加えた後、1NHCl、飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、11を得た。
11: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.09-7.28 (10H, Ph), 6.98 (2H, d, J = 8.9 Hz, MP), 6.79 (2H, d, J = 8.9 Hz, MP), 5.50 (1H, dd, J = 8.6, 7.9 Hz, H2), 5.07 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1), 4.95 (1H, d, J = 49.4 Hz, H4), 4.63 (1H, s, ベンジル), 3.95-3.81 (4H, m, H3, H5, H6, H6), 3.77 (3H, s, OMe)
【0046】
(e)12の合成
10をMeOHに溶かし、Pdカーボンを加え水素雰囲気下で3時間攪拌した。セライトろ過、濃縮後MeOHに溶かしNaOMeを加え1時間攪拌した。DOWEX50W×8[H+]を加えて反応をとめた後、ろ過、濃縮した。これをCH2Cl2に溶かし、ピリジン、BzCl、DMAPを加えて12時間攪拌した。水を加えて反応をとめた後、1NHCl、飽和重曹水、ブラインで洗浄しMgSO4乾燥した。ろ過、濃縮後フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、12を得た。
12: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.15-7.39 (15H, Ph), 6.98 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 6.71 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 6.05 (1H, dd, J = 9.4, 8.0 Hz, H2), 5.49 (1H, dd, J = 26.9, 9.4 Hz, H3), 5.21 (1H, d, J = 52.0 Hz, H4), 5.21 (1H, d, J = 8.0 Hz, H1), 4.75 (1H, dd, J = 11.4, 7.4 Hz, H6), 4.69 (1H, dd, J = 11.4, 5.8, Hz, H6), 4.27, (1H, ddd, J = 25.8, 7.4, 5.8 Hz, H5), 3.73 (3H, s, OMe)
【0047】
(f)13の合成
12をトルエン:CH3CN:水=1.5:1:1に溶かし、CANを加え1時間攪拌した。有機層を水、飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後フラッシュカラムクロマトグラフィーで簡易精製した。不純物が混ざるため、この粗生成物をそのまま次の反応に用いた。粗生成物をCH2Cl2に溶かした後、0℃に冷却しCCl3CN、DBUを加え1時間攪拌した。これをそのまま濃縮しフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、13を得た。
13: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.65 (1H, s, NH), 8.06-7.17 (15H, Ph), 6.84 (1H, d, J = 3.5 Hz, H1), 5.96 (1H, dd, J = 10.4, 3.8 Hz, H2), 5.88 (1H, ddd, J = 28.6, 10.4, 2.3 Hz, H3), 5.31 (1H, dd, J = 52.4, 2.3 Hz, H4), 4.69-4.60 (3H, m, H5, H6, H6)
【0048】
製造例2
シリレン化Gal(17)の合成
【化12】

市販の(14)から既知化合物(15)へ文献に従い導いた。(15)をCH2Cl2に溶かし、t−Bu2Si(OTf)2、ピリジンを加え3時間攪拌した。有機層を飽和重曹水、ブラインで洗浄後、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、この粗生成物をCH2Cl2に溶かし、ピリジン、BzCl、DMAPを入れ、60℃で5時間攪拌した。水を加えて反応をとめた後、有機層を飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4乾燥した。ろ過、濃縮後、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、(16)を得た。
化合物(16) : 1H-NMR(600MHz, CDCl3, δ) 8.19-7.46(5H, Ph), 6.94(2H, d, J=8.4Hz, MP), 6.76(2H, d, J=8.4Hz, MP), 5.85(1H, m, H8), 5.83(1H, dd, J=10.1, 8.0Hz, H2), 5.26(1H, dd, J=17.3, 1.5Hz, H9), 5.12(1H, dd, J=10.3, 1.5Hz, H9), 5.01(1H, d, J=8.0Hz, H1), 4.64(1H, d, J=2.7Hz, H4), 4.33(1H, m, H6, H6), 4.22(1H, dd, J=13.3, 5.2Hz, H7), 4.12(1H, dd, J=13.3, 5.9Hz, H7), 3.74(3H, s, OMe), 3.66(1H, dd, J=10.1, 2.7Hz, H3), 3.53(1H, m, H5), 1.11(9H, s, t-Bu), 1.03(9H, s, t-Bu).
次いで、Ir触媒をTHFに溶かし、水素雰囲気下で2時間攪拌した。フラスコ内を窒素置換した後、THFに溶かした(16)を加え室温で2時間攪拌した。TLCでアリル基の異性化を確かめた後、TsOH・H2Oを加えて1時間攪拌した。有機層を飽和重曹水、ブラインで洗浄後、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、フラッシュクロマトグラフィーで精製し、(17)を得た。
化合物(17) : 1H-NMR(600MHz, CDCl3, δ) 8.03-7.43(5H, Ph), 6.93(2H, d, J=9.0Hz, MP), 6.76(2H, d, J=9.0Hz, MP), 5.59(1H, dd, J=9.6, 8.4Hz, H2), 4.97(1H, d, J=8.4Hz, H1), 4.49(1H, d, J=3.0Hz, H4), 4.34(1H, dd, J=12.4, 2.0Hz, H6), 4.30(1H, dd, J=12.4, 1.2Hz, H6), 3.78(1H, td, J=9.6, 3.0Hz, H3), 3.74(3H, s, OMe), 3.58(1H, m, H5), 2.78(1H, d, J=9.6 Hz, OH), 1.14(9H, s, t-Bu), 1.08(9H, s, t-Bu).
【0049】
製造例3
二糖ユニットの合成
【化13】

2Gal−6F2糖の合成
製造例1で得たグリコシルドナー(5)、製造例2で得たグリコシルアクセプター(17)、およびMSAW300をCH2Cl2/CH3CN(1:1)に溶かし、窒素雰囲気下、室温で30分攪拌した。0℃に冷却した後、CH2Cl2に溶かしたTMSOTfをゆっくりと加え1時間攪拌した。この溶液に飽和重曹水を加えて反応をとめた後、セライトろ過し、有機層をブラインで洗浄した。MgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮してフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(19)を得た。
化合物(19): 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.03-7.01 (20H, Ph), 6.83 (2H, d, J = 9.1 Hz, MP), 6.69 (2H, d, J = 9.1 Hz, MP), 5.84-5.78 (3H, m, H2, H2’, H4’), 5.43 (1H, dd, J = 10.4, 3.4 Hz, H3’), 5.12 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1’), 4.91 (1H, d, J = 8.0 Hz, H1), 4.86 (1H, d, J = 2.7 Hz, H4), 4.54 (2H, ddd, J = 46.4, 7.4, 3.0 Hz, H6', H6'), 4.31 (1H, d, J = 12.0 Hz, H6), 4.28 (1H, d, J = 12.0 Hz, H6), 4.21 (1H, m, H5'), 3.99 (1H, dd, J = 10.0, 2.8 Hz, H3), 3.71 (3H, s, OMe), 3.56 (1H, s, H5), 1.14 (9H, s, t-Bu), 1.10 (9H, s, t-Bu)
次いで、化合物(19)をTHFに溶かし0℃に冷却した後、(HF)x・ピリジン(7.0ml,9.0mmol)を加え6時間攪拌した。飽和重曹水を加えて反応をとめた後、EtOAcで2回抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮した。これをそのままCH2Cl2に溶かし、ピリジン(5ml,2.95mmol)、BzCl(8.7ml,1.0mmol)、DMAP(触媒量)を入れ、60℃で5時間攪拌した。水を加えて反応をとめた後、有機層を飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4乾燥した。ろ過、濃縮後、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(22)を得た。
化合物(22):1H−NMR(600MHz,CDCl3,δ)8.27-7.06 (30H, m, Ph), 6.83 (2H, d, J = 9.1 Hz, MP), 6.55 (2H, d, J = 9.1 Hz, MP), 6.02 (1H, d, J = 3.1 Hz, H4), 5.86 (1H, dd, J = 9.8, 7.9 Hz, H2), 5.79 (1H, d, J = 2.7 Hz, H4’), 5.59 (1H, dd, J = 10.3, 7.8 Hz, H2’), 5.37 (1H, dd, J = 10.3, 2.7 Hz, H3'), 5.05 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1), 5.03 (1H, d, J = 7.8 Hz, H1'), 4.66 (1H, dd, J = 12.0, 4.5 Hz, H6), 4.61 (1H, ddd, J = 46.9, 9.7, 6.8 Hz, H6'), 4.51 (1H, dd, J = 12.0, 8.3 Hz, H6), 4.46 (1H, ddd, J = 46.9, 9.7, 5.0 Hz, H6'), 4.39 (1H, dd, J = 9.8, 3.1 Hz, H3), 4.30 (1H, m, H5), 4.18 (1H, m, H5')
【0050】
参考例2
2Gal−4F2糖(23)の合成
【化14】

グリコシルドナー13、グリコシルアクセプター17、MSAW300をCH2Cl2/CH3CN(1:1)に溶かし、窒素雰囲気下、室温で30分攪拌した。0℃に冷却した後、CH2Cl2に溶かしたTMSOTfをゆっくりと加え1時間攪拌した。この溶液に飽和重曹水を加えて反応をとめた後、セライトろ過し、有機層をブラインで洗浄した。MgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮してフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、20を得た。
20: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.06-7.07 (20H, Ph), 6.83 (2H, d, J = 8.8 Hz, MP), 6.71 (2H, d, J = 8.8 Hz, MP), 5.81 (1H, dd, J = 10.5, 7.9 Hz, H2’), 5.77 (1H, dd, J = 8.3, 7.9 Hz, H2), 5.26 (1H, dd, J = 27.0, 10.5 Hz, H3’), 5.09 (1H, d, J = 38.5 Hz, H4’), 5.08 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1'), 4.87 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1), 4.78 (1H, s, H4), 4.69 (1H, dd, J = 11.2, 7.1 Hz, H6'), 4.51 (1H, dd, J = 11.2, 6.3 Hz, H6'), 4.22 (1H, d, J = 12.1 Hz, H6), 4.16 (1H, d, J = 12.1 Hz, H6), 4.09 (1H, ddd, J = 25.8, 7.1, 6.3 Hz, H5’), 3.98 (1H, d, J = 8.3 Hz, H3), 3.73 (3H, s, OMe), 3.42 (1H, s, H5)
次いで、20をTHFに溶かし0℃に冷却した後、(HF)x・ピリジン(7.0ml,9.0mmol)を加え6時間攪拌した。飽和重曹水を加えて反応をとめた後、EtOAcで2回抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮した。これをそのままCH2Cl2に溶かし、ピリジン(5ml,2.95mmol)、BzCl(8.7ml,1.0mmol)、DMAP(触媒量)を入れ、60℃で5時間攪拌した。水を加えて反応をとめた後、有機層を飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4乾燥した。ろ過、濃縮後、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、23を得た。
23: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 5.25-7.16 (30H, m, Ph), 6.88 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 6.56 (2H, d, 9.0 Hz, MP), 5.95 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4), 5.85 (1H, dd, J = 9.5, 8.0 Hz, H2), 5.62 (1H, dd, J = 10.3, 8.0, H2’), 5.20 (1H, ddd, J = 27.0, 10.5, 2.4 Hz, H3’), 5.04 (1H, dd, J = 50.3, 2.4 Hz, H4'), 5.00 (1H, d, J = 8.0 Hz, H1), 4.98 (1H, d, J = 8.0 Hz, H1'), 4.71 (1H, ddd, J = 11.3, 6.4, H6'), 4.64 (1H, dd, J = 11.8, 4.2 Hz, H6), 4.50 (1H, dd, J = 11.8, 8.3 Hz, H6), 4.47 (1H, dd, J = 11.3, 7.0 Hz, H6'), 4.38 (1H, dd, J = 9.5, 3.2 Hz, H3), 4.21 (1H, m, H5), 4.08 (1H, m, H5’)
【0051】
参考例3
フッ素無置換コントロール2糖(24)の合成
【化15】

参考例2と同様、既知化合物であるグリコシルドナー18、グリコシルアクセプター17、MSAW300をCH2Cl2/CH3CN(1:1)に溶かし、窒素雰囲気下、室温で30分攪拌した。0℃に冷却した後、CH2Cl2に溶かしたTMSOTfをゆっくりと加え1時間攪拌した。この溶液に飽和重曹水を加えて反応をとめた後、セライトろ過し、有機層をブラインで洗浄した。MgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮してフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、21を得た。
21: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.09-7.01 (25H, Ph), 6.83 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 6.71 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 5.95 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4’), 5.85 (1H, dd, J = 10.3, 7.9 Hz, H2’), 5.78 (1H, dd, J = 9.7, 7.9 Hz, H2), 5.51 (1H, dd, J = 10.3, 3.2 Hz, H3’), 5.14 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1'), 4.88 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1), 4.88 (1H, s, H4), 4.68 (1H, dd, J = 11.1, 7.1 Hz, H6'), 4.37 (1H, dd, J = 11.1, 5.9 Hz, H6'), 4.33 (1H, dd, J = 7.1, 5.9 Hz, H5'), 4.21 (1H, d, J = 12.1 Hz, H6), 4.10 (1H, d, J = 12.1, H6), 3.95 (1H, d, J = 9.7 Hz, H3), 3.40 (1H, s, H5), 1.11 (9H, t-Bu×2)
次いで、21をTHFに溶かし0℃に冷却した後、(HF)x・ピリジン(7.0ml,9.0mmol)を加え6時間攪拌した。飽和重曹水を加えて反応をとめた後、EtOAcで2回抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮した。これをそのままCH2Cl2に溶かし、ピリジン(5ml,2.95mmol)、BzCl(8.7ml,1.0mmol)、DMAP(触媒量)を入れ、60℃で5時間攪拌した。水を加えて反応をとめた後、有機層を飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4乾燥した。ろ過、濃縮後、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、24を得た。
24: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.24-7.07 (35H, Ph), 6.82 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 6.55 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 6.02 (1H, d, J = 3.6 Hz, H4), 5.87 (1H, d, J = 3.4 Hz, H4’), 5.84 (1H, dd, J = 9.6 Hz, 7.9 Hz, H2), 5.60 (1H, dd, J = 10.4, 7.8 Hz, H2’), 5.40 (1H, dd, J = 10.4, 3.4 Hz, H3'), 5.02 (1H, d, J = 7.8 Hz, H1'), 4.98 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1), 4.71 (1H, dd, J = 11.2, 6.2 Hz, H6'), 4.61 (1H, dd, J = 11.8, 4.1 Hz, H6), 4.50 (1H, dd, J = 11.8, 8.3 Hz, H6), 4.34-4.30 (2H, m, H6', H3), 4.27 (1H, t, J = 6.2 Hz, H5'), 4.18 (1H, dd, J = 8.3, 4.1 Hz, H5), 3.66 (1H, s, OMe)
【0052】
参考例4
1Gal−6F2糖(26)の合成
【化16】

上記参考例3の中間体21をTHFに溶かし0℃に冷却した後、(HF)x・ピリジン(7.0ml,9.0mmol)を加え6時間攪拌した。飽和重曹水を加えて反応をとめた後、EtOAcで2回抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮した。これをフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、25を得た。
25: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.10-7.06 (25H, Ph), 6.80 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 6.68 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 5.94 (1H, d, J = 3.5 Hz, H4), 5.79 (1H, dd, J = 10.4, 8.0 Hz, H2’), 5.71 (1H, dd, J = 9.8, 8.0 Hz, H2), 5.51 (1H, dd, J = 10.4, 3.5 Hz, H3’), 5.00 (1H, d, J = 8.0 Hz, H1'), 4.91 (1H, d, J = 8.0 Hz, H1), 4.62 (1H, dd, J = 11.7, 7.5 Hz, H6'), 4.54 (1H, dd, J = 11.7, 5.0 Hz, H5'), 4.23 (1H, d, J = 3.0, H4), 4.00 (1H, dd, J = 9.8, 3.0 Hz, H3), 3.93 (1H, m, H6), 3.70 (3H, s, OMe), 3.63-3.61 (2H, m, H5, H6), 3.11 (1H, s, OH)
次いで、25をCH2Cl2に溶かし、−15℃に冷却した。これにDAST(20ul,67mmol)を加えた後、徐々に室温まで昇温しながら12時間攪拌した。MeOHを1滴加えて反応を止めた後、有機層を飽和重曹水、ブラインで洗浄してMgSO4乾燥した。ろ過、濃縮後、フラッシュカラムクロマトグラフィーで簡易精製を行った。副生成物との分離が困難であるため、さらなる精製は行わず次の反応に進んだ。粗生成物をCH2Cl2に溶かした後、ピリジン、BzCl、DMAPを加え50℃に加熱し、6時間攪拌した。室温まで冷却後、水を加えて反応を止め、有機層を飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4乾燥した。ろ過、濃縮後フラッシュクロマトグラフィーで精製し、26を得た。
26: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.20-7.15 (30H, Ph), 6.85 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 6.71 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 5.90 (1H, d, J = 3.4 Hz, H4), 5.86 (1H, d, J = 3.3 Hz, H4’), 5.81 (1H, dd, J = 9.7, 7.9 Hz, H2), 5.59 (1H, dd, J = 10.9, 7.7 Hz, H2’), 5.40 (1H, dd, J = 10.4, 3.3 Hz, H3'), 5.01 (1H, d, J = 7.7 Hz, H1'), 5.00 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1), 4.69 (1H, dd, J = 10.9, 6.1 Hz, H6), 4.63 (1H, ddd, J = 39.4, 10.1, 3.5 Hz, H6), 4.53 (1H, ddd, J = 47.7, 10.1, 7.6 Hz, H6), 4.32-4.25 (3H, m, H3, H5', H6'), 4.05 (1H, m, H5), 3.71 (3H, s, OMe)
【0053】
参考例5
1Gal−4F2糖(27)の合成
【化17】

既知化合物であるグリコシルドナー18、グリコシルアクセプター11、MSAW300をCH2Cl2/CH3CN(1:1)に溶かし、窒素雰囲気下、室温で30分攪拌した。0℃に冷却した後、CH2Cl2に溶かしたTMSOTfをゆっくりと加え1時間攪拌した。この溶液に飽和重曹水を加えて反応をとめた後、セライトろ過し、有機層をブラインで洗浄した。MgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮してフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、27を得た。
27: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.09-7.08 (30H, Ph), 6.80 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 6.68 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 5.94 (1H, d, J = 3.4 Hz, H4’), 5.82 (1H, dd, J = 10.3, 7.9 Hz, H2’), 5.69 (1H, dd, J = 9.7, 7.9 Hz, H2), 5.45 (1H, dd, J = 10.3, 3.4 Hz, H3’), 5.10 (1H, dd, J = 49.0, 2.3 Hz, H4), 5.03 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1'), 4.90 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1), 4.66 (1H, dd, J = 11.3, 6.3 Hz, H6'), 4.56 (2H, s, Bn), 4.43 (1H, dd, J = 11.3, 6.3 Hz, H6'), 4.30 (1H, t, J = 6.3 Hz, H5'), 4.08 (1H, ddd, J = 27.0, 10.3, 2.3 Hz, H3), 3.79-3.70 (3H, m, H5, H6×2), 3.69 (3H, s, OMe)
【0054】
製造例4
ジペプチドの合成
【化18】

市販のZ−グリシン(28)とセリンベンジルエステル(29)をCH2Cl2に溶かし、DPPA、Et3N、およびDMAPを加え、3時間攪拌した。有機層を5%クエン酸水溶液、飽和重曹水、ブラインで洗浄後、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、EtOAcから結晶化しZ−Gly−Ser(OH)−OBn(30)を得た。
【0055】
実施例1
p-メトキシフェノール体(39)の合成
【化19】

化合物(22)をトルエン:CH3CN:水=1.5:1:1に溶かし、CANを加え1時間攪拌した。有機層を水、飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後フラッシュカラムクロマトグラフィーで簡易精製した。不純物が混ざるため、この粗生成物をそのまま次の反応に用いた。粗生成物をCH2Cl2に溶かした後、0℃に冷却しCCl3CN、DBUを加え1時間攪拌した。これをそのまま濃縮しフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(33)を得た。
化合物(33): 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.52 (1H, s, NH), 8.17-7.00 (30H, Ph), 6.77 (1H, d, J = 3.7 Hz, H1), 6.17 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4), 5.86 (1H, d, J = 3.0 Hz, H4’), 5.80 (1H, dd, J = 10.2, 3.7 Hz, H2), 5.61 (1H, dd, J = 10.3, 7.7 Hz, H2’), 5.44 (1H, dd, J = 10.3, 3.0 Hz, H3'), 5.16 (1H, d, J = 7.7 Hz, H1'), 4.75-4.71 (2H, m, H3, H5'), 4.69 (1H, m, H6'), 4.56 (1H, dd, J = 11.7, 4.8 Hz, H6), 4.55 (1H, m, H6'), 4.47 (1H, dd, J = 11.7, 7.3 Hz, H6), 4.29 (1H, m, H5)
次に、グリコシルドナー(33)、既知化合物であるグリコシルアクセプター(36)、MSAW300をCH2Cl2/CH3CN(1:1)に溶かし、窒素雰囲気下、室温で30分攪拌した。0℃に冷却した後、CH2Cl2に溶かしたTMSOTfをゆっくりと加え1時間攪拌した。この溶液に飽和重曹水を加えて反応をとめた後、セライトろ過し、有機層をブラインで洗浄した。MgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮してフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(39)を得た。
化合物39: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.07-7.10 (40H, Ph), 6.88 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 6.76 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 5.87 (1H, d, J = 3.1 Hz, H4’), 5.79 (1H, d, J = 3.0 Hz, H4’’), 5.68 (1H, dd, J = 6.4, 5.5 Hz, H3), 5.58 (1H, dd, J = 10.0, 8.0 Hz, H2’), 5.56 (1H, dd, J = 10.1, 7.7 Hz, H2''), 5.41 (1H, t, J = 5.5 Hz, H2), 5.36 (1H, dd, J = 10.1, 3.0 Hz, H3''), 5.20 (1H, d, J = 5.5 Hz, H1), 4.97 (1H, d, J = 7.7 Hz, H1''), 4.87 (1H, d. J = 8.0 Hz, H1'), 4.67 (1H, ddd, J = 46.0, 9.5, 7.1 Hz, H6''), 4.44 (1H, ddd, J = 46.0, 9.5, 5.0 Hz, H6''), 4.31 (1H, dd, J = 10.0, 3.1 Hz, H3'), 4.21 (1H, dd, J = 11.5, 5.0 Hz, H6'), 4.17-4.11 (2H, m, H5'', H6'), 4.02 (1H, dd, J = 12.4, 3.8 Hz, H5), 3.97 (1H, dd, J = 6.4, 3.8 Hz, H4), 3.81 (1H, dd, J = 11.5, 7.5 Hz, H5'), 3.74 (3H, s, OMe), 3.41 (1H, dd, J = 12.4, 6.4 Hz, H5)
【0056】
実施例2
糖ペプチドの合成(1)
【化20】

実施例1で得た化合物(39)をトルエン:CH3CN:水=1.5:1:1に溶かし、CANを加え1時間攪拌した。有機層を水、飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後フラッシュカラムクロマトグラフィーで簡易精製した。不純物が混ざるため、この粗生成物をそのまま次の反応に用いた。粗生成物をCH2Cl2に溶かした後、0℃に冷却しCCl3CN、DBUを加え1時間攪拌した。これをそのまま濃縮しフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、グリコシルドナー(44)を得た。
44: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.45 (1H, s, NH), 8.05-7.05 (40H, Ph), 6.53 (1H, s, H1), 5.91 (1H, t, J = 9.9 Hz, H3), 5.89 (1H, s, H4’), 5.76 (1H, s, H4’’), 5.52 (1H, t, J = 8.0 Hz, H2’’), 5.46 (1H, t, J = H2’), 5.36-5.31 (2H, m, H2, H3’’), 4.93 (1H, d, J = 8.0 Hz, H1''), 4.76 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1'), 4.55 (1H, dt, 47.0, 9.7 Hz, H6''), 4.43 (1H, ddd, J = 47.0, 9.7, 4.8 Hz, H6''), 4.26 (1H, d, J = 10.0, H3'), 4.18-4.15 (2H, m, H4, H5''), 4.00 (1H, dd, J = 10.6, 6.2 Hz, H6'), 3.96 (1H, t, J = 6.2 Hz, H5'), 3.85 (1H, dd, J = 10.6, 6.2 Hz, H6'), 3.73 (1H, m, H5), 3.65 (1H, t, J = 11.5 Hz, H5)
グリコシルドナー(44)、ペプチドアクセプター(30)、MSAW300をCH2Cl2/CH3CN(1:1)に溶かし、窒素雰囲気下、室温で30分攪拌した。0℃に冷却した後、CH2Cl2に溶かしたTMSOTfをゆっくりと加え1時間攪拌した。この溶液に飽和重曹水を加えて反応をとめた後、セライトろ過し、有機層をブラインで洗浄した。MgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮してフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(49)を得た。
化合物(49): 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.16-7.05 (50H, Ph), 6.69 (1H, brs, NH), 5.84 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4’), 5.76 (1H, d, J = 2.3 Hz, H4’’), 5.55-5.52 (3H, m, H3, H2’, H2’’), 5.35 (1H, dd, J = 10.4, 2.3 Hz, H3’’), 5.10-4.98 (5H, m, H2, Bn×4), 4.96 (1H, d, J = 7.4 Hz, H1’’), 4.79 (1H, d, J = 8.0 Hz, H1’’), 4.70 (1H, brs, Ser−α−H), 4.55 (1H, ddd, J = 45.9, 9.8, 6.8 Hz, H6’’), 4.53 (1H, m, H1), 4.43 (1H, ddd, J = 45.9, 9.8, 5.0 Hz, H6’’), 4.29 (1H, dd, J = 10.0, 3.2 Hz, H3’), 4.17-4.09 (3H, m, H5’’, H6’ ×2), 3.77 (1H, dd, J = 6.8, 5.0 Hz, H5’), 3.73-3.67 (5H, m, H4, Gly−α−H×2, Ser-β-H×2), 3.57 (1H, dd, J = 8.9, 3.4 Hz, H5), 3.09 (1H, m, H5)
【0057】
実施例3
糖ペプチドの合成(2)
【化21】

実施例2で得た化合物(49)をMeOHに溶かし、Pdカーボンを加え水素雰囲気下で3時間攪拌した。セライトろ過、濃縮後MeOHに溶かしNaOMeを加え1時間攪拌した。DOWEX50W×8[H+]を加えて反応をとめた後、ろ過してファルコンチューブにうつした。これにMeOHの10倍量のEt2Oを加えて生成物を析出させ、遠心分離(3500rpm,10分間)し上澄みを取り除いた。沈殿物をゲルろ過クロマトグラフィー(SephadexG−10)により精製し、化合物(54)を得た。
化合物(54): 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 5.24-5.01 (2H, m, H6’’×2), 4.51 (1H, d, J = 7.3 Hz, H1’’), 4.42 (1H, d, J = 7.4 Hz, H1’), 4.30 (1H, brs, Ser−α−H), 4.27 (1H, d, J = 3.1 Hz, H4’), 4.01-3.43 (17H, m), 3.30-3.10 (2H, m, H2, H5)
次いで、化合物(54)をDMFに縣濁させ、FITC、飽和重曹水を加え室温で3時間攪拌した。この溶液をファルコンチューブに移してEtOH/Et2O(1:10)を加え、沈殿を析出させた。遠心分離(3500rpm,10分間)し、上澄みを取り除いた後、沈殿物をゲルろ過クロマトグラフィー(SephadexG−10)により精製し、化合物(59)を得た。生成物はMALDI−TOFMASSにより分子量を確認した。質量分析の結果を図6に示す。
【0058】
参考例6
3糖2ペプチドユニットの合成
p-メトキシフェノール体の合成
【化22】

26をトルエン:CH3CN:水=1.5:1:1に溶かし、CANを加え1時間攪拌した。有機層を水、飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後フラッシュカラムクロマトグラフィーで簡易精製した。不純物が混ざるため、この粗生成物をそのまま次の反応に用いた。粗生成物をCH2Cl2に溶かした後、0℃に冷却しCCl3CN、DBUを加え1時間攪拌した。これをそのまま濃縮しフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、グリコシルドナー31を得た。また、27、23、24も同様の条件で反応を行い、32、34、35を得た。
31: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.55 (1H, s, NH), 8.17-6.72 (30H, Ph), 6.73 (1H, d, J = 3.7 Hz, H1), 6.08 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4), 5.91 (1H, d, J = 3.1 Hz, H4), 5.73 (1H, dd, J = 10.3, 3.7 Hz, H2), 5.59 (1H, dd, J = 10.3, 7.9 Hz, H2’), 5.47 (1H, dd, J = 10.3, 3.1 Hz, H3'), 5.13 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1'), 4.76 (1H, d, J = 9.2 Hz, H6'), 4.74 (1H, d, J = 9.2 Hz, H6'), 4.58 (1H, dd, J = 10.3, 3.1 Hz, H3), 4.62-4.44 (3H, m, H5, H6×2), 4.40 (1H, m, H5')
32: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.49 (1H, s, NH), 8.13-6.96 (30H, Ph), 6.62 (1H, d, J = 3.5 Hz, H1), 5.99 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4’), 5.85 (1H, dd, J = 10.3, 8.0 Hz, H2’), 5.59 (1H, dd, J = 10.5, 3.5 Hz, H2), 5.54 (1H, dd, J = 10.3, 3.5 Hz, H3’), 5.27 (1H, d, J = 49.0 Hz, H4), 5.16 (1H, d, J = 8.0 Hz, H1'), 4.69 (1H, dd, J = 11.4, 7.1 Hz, H6'), 4.59 (2H, m, Bn), 4.49 (1H, dd, J = 11.4, 6.0 Hz, H6'), 4.44 (1H, m, H5'), 4.41 (1H, dd, J = 27.7, 10.5 Hz, H3), 4.24 (1H, dt, J = 28.4, 6.4 Hz, H5), 3.79-3.71 (2H, m, H6×2)
34: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.50 (1H, s, H1), 8.14-7.02 (30H, Ph), 6.74 (1H, d, J = 3.6 Hz, H1), 6.10 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4), 5.74 (1H, dd, J = 10.3, 3.6 Hz, H2), 5.62 (1H, dd, J = 10.3, 7.8 Hz, H2’), 5.26 (1H, ddd, J = 26.9, 10.3, 2.5 Hz, H3’), 5.09 (1H, d, J = 7.8 Hz, H1'), 5.06 (1H, dd, J = 50.0, 2.5 Hz, H4'), 4.77 (1H, dd, J = 11.3, 6.6 Hz, H6'), 4.65-4.62 (2H, m, H3, H5'), 4.56 (1H, dd, J = 11.3, 6.6 Hz, H6'), 4.48 (1H, ddd, J = 44.6, 11.8, 7.6 Hz, H6), 4.48 (1H, ddd, J = 44.6, 11.8, 4.4 Hz, H6), 4.20 (1H, ddd, J = 26.0, 7.6, 4.4 Hz, H5)
35: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.51 (1H, s, H1), 8.16-7.07 (35H, Ph), 6.75 (1H, d, J = 3.6 Hz, H1), 6.10 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4), 5.90 (1H, d, J = 3.4 Hz, H4’), 5.74 (1H, dd, J = 10.3, 3.6 Hz, H2), 5.62 (1H, dd, J = 10.3, 7.9 Hz, H2’), 5.09 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1'), 5.55 (1H, dd, J = 10.3, 3.4 Hz, H3'), 5.02 (1H, d, J = 7.8 Hz, H1'), 4.71 (1H, dd, J = 11.2, 6.2 Hz, H6'), 4.61 (1H, dd, J = 12.0, 4.0 Hz, H6), 4.44 (1H, dd, J = 12.0, 8.3 Hz, H6), 4.34-4.30 (2H, m, H6', H3), 4.35 (1H, t, J = 6.2 Hz, H5'), 4.20 (1H, dd, J = 8.3, 4.0 Hz, H5)
次いで、グリコシルドナー31、既知化合物であるグリコシルアクセプター36、MSAW300をCH2Cl2/CH3CN(1:1)に溶かし、窒素雰囲気下、室温で30分攪拌した。0℃に冷却した後、CH2Cl2に溶かしたTMSOTfをゆっくりと加え1時間攪拌した。この溶液に飽和重曹水を加えて反応をとめた後、セライトろ過し、有機層をブラインで洗浄した。MgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮してフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、37を得た。また、32、34、35も同様の条件で反応を行い、38、40、41を得た。
37: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ)
38: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ)
40: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.05-7.16 (40H, Ph), 6.86 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 6.73 (2H, d, J = 9.0 Hz, MP), 5.75 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4), 5.64 (1H, t, J = 6.2 Hz, H3), 5.55 (2H, m, H2’, H2’’), 5.37 (1H, dd, J = 6.2, 4.7 Hz, H1), 5.13 (1H, ddd, J = 27.0, 10.5, 2.2 Hz, H4''), 4.87 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1''), 4.77 (1H, d, 8.0 Hz, H1'), 4.63 (1H, dd, J = 11.3, 6.2 Hz, H6''), 4.43 (1H, dd, J = 11.3, 7.0 Hz, H6''), 4.25 (1H, dd, J = 10.5, 3.2 Hz, H3'), 4.17 (1H, dd, J = 11.6, 4.7 Hz, H6'), 4.12-3.97 (3H, m, H5, H5'', H6'), 3.91 (1H, dd, J = 10.4, 6.4 Hz, H4), 3.73 (1H, dd, J = 11.6, 7.8 Hz, H5'), 3.71 (3H, s, OMe), 3.36 (1H, dd, J = 12.5, 6.4 Hz, H5)
41: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.10-7.09 (45H, Ph), 6.89 (2H, d, J = 9.1 Hz, MP), 6.76 (2H, d, J = 9.1 Hz, MP) 5.88 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4’), 5.87 (1H, d, J = 3.0 Hz, H4), 5.68-5.56 (2H, m, H2’’, H2’), 5.41-5.38 (2H, m, H3’’, H2), 5.20 (1H, d, J = 4.9 Hz, H1), 4.97 (1H, d, J = 7.7 Hz, H1''), 4.81 (1H, d, J = 8.0 Hz, H1'), 4.68 (1H, dd, J = 11.2, 6.3 Hz, H6'), 4.32-4.24 (3H, m, H3, H5', H6'), 4.20 (1H, dd, J = 11.6, 4.6 Hz, H6''), 4.05 (1H, m, H6''), 4.01 (1H, dd, J = 12.4, 3.9 Hz, H5), 3.97 (1H, m, H4), 3.77 (1H, m, H5''), 3.76 (3H, s, OMe), 3.40 (1H, dd, J = 12.4, 6.4 Hz, H5)
【0059】
参考例7
糖ペプチドの合成(1)
【化23】

37をトルエン:CH3CN:水=1.5:1:1に溶かし、CANを加え1時間攪拌した。有機層を水、飽和重曹水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後フラッシュカラムクロマトグラフィーで簡易精製した。不純物が混ざるため、この粗生成物をそのまま次の反応に用いた。粗生成物をCH2Cl2に溶かした後、0℃に冷却しCCl3CN、DBUを加え1時間攪拌した。これをそのまま濃縮しフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、グリコシルドナー42を得た。また、38、40、41も同様の条件で反応を行い、43、45、46を得た。
45: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.47 (1H, s, NH), 8.05-7.09 (40H, Ph), 6.52 (1H, d, J = 3.6 Hz, H1), 5.88 (1H, t, J = 9.7 Hz, H3), 5.78 (1H, d, J = 3.1 Hz, H4’), 5.53 (1H, dd, J = 10.4, 7.9 Hz, H2’’), 5.44 (1H, dd, J = 9.9, 8.0 Hz, H2’), 5.31 (1H, dd, J = 9.7, 3.6 Hz, H2), 5.12 (1H, ddd, J = 27.1, 10.4, 2.6 Hz, H3''), 4.97 (1H, dd, J = 50.1, 2.6 Hz, H4''), 4.84 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1''), 4.68 (1H, d, J = 8.0 Hz, H1'), 4.64 (1H, dd, J = 11.3, 6.2 Hz, H6''), 4.45 (1H, dd, J = 11.3, 7.2 Hz, H6''), 4.25 (1H, dd, J = 9.9, 3.1 Hz, H3'), 4.13 (1H, m, H4), 4.10-3.93 (2H, m, H5'', H6'), 3.88 (1H, t, J = 6.2 Hz, H5'), 3.82 (1H, dd, J = 11.2, 6.2 Hz, H6'), 3.71 (1H, dd, J = 11.3, 5.8 Hz, H5), 3.62 (1H, t, J = 11.3 Hz, H5)
次いで、グリコシルドナー42、ペプチドアクセプター30、MSAW300をCH2Cl2/CH3CN(1:1)に溶かし、窒素雰囲気下、室温で30分攪拌した。0℃に冷却した後、CH2Cl2に溶かしたTMSOTfをゆっくりと加え1時間攪拌した。この溶液に飽和重曹水を加えて反応をとめた後、セライトろ過し、有機層をブラインで洗浄した。MgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮してフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、47を得た。また、43、45、46も同様の条件で反応を行い、48、50、51を得た。
47: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.10-7.05 (50H, Ph), 6.67 (1H, d, J = 7.6 Hz, NH), 5.87 (1H, d, J = 2.9 Hz, H4’’), 5.77 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4’), 5.57 (1H, dd, J = 10.1, 8.0 Hz, H2’’), 5.53-5.50 (2H, m, H2’, H3), 5.41 (1H, dd, J = 10.4, 2.9 Hz, H3’’), 5.35 (1H, m, Ser−α−H), 5.15 (1H, m, H2), 5.12-5.02 (4H, Bn), 4.97 (1H, d, J = 8.0 Hz, H1’’), 4.73 (1H, d, J = 7.9 Hz, H1’), 4.72 (1H, m, H1), 4.69 (1H, dd, J = 11.3, 6.5 Hz, H6’’), 4.32-4.25 (2H, m, H5’’, H6’’), 4.22-4.18 (2H, m, H3’, H6’), 3.85-3.79 (3H, m, H5’, H6’, H4), 3.76-3.70 (4H, m, Gly−α−H×2, Ser-β-H×2), 3.67 (1H, m, H5), 3.13 (1H, m, H5)
48: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.06-7.09 (50H, Ph), 6.60 (1H, m, NH), 5.92 (1H, 1H, d, J = 3.3 Hz, H4’’), 5.77 (1H, dd, J = 10.4, 7.9 Hz, H2’’), 5.56-5.49 (3H, m, H3, H2, H2’), 5.41 (1H, dd, J = 10.3, 3.3 Hz, H3’’), 5.24 (1H, m, NH), 5.19 (1H, ddd, J = 27.0, 10.4, 2.2 Hz, H3’), 5.17-4.85 (6H, m, H1’’, H4’, Bn×4), 4.72 (1H, d, J = 7.8 Hz, H1’), 4.69 (1H, brs, Ser−α−H), 4.65-4.50 (2H, m, H1, H6’), 4.39 (1H, m, H6’), 4.20 (1H, dd, J = 10.2, 2.2 Hz, H3’), 4.25-3.89 (4H, m, H5’, H5’’, H6’’×2), 3.82-3.70 (5H, m, H4, Gly−α−H×2, Ser-β-H×2), 3.35 (1H, dd, J = 8.9, 3.4 Hz, H5), 3.08 (1H, m, H5)
50: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.05-7.16 (50H, Ph), 6.56 (1H, d, J = 7.4 Hz, NH), 5.74 (1H, d, J = 3.6 Hz, H4’), 5.53 (1H, dd, J = 10.2, 7.8 Hz, H2’), 5.53-5.49 (2H, m, H3, H2’’), 5.24 (1H, m, NH), 5.15 (1H, ddd, J = 26.9, 10.4, 2.7 Hz, H3’’), 5.09 (2H, d, J = 12.6 Hz, Bn×2), 5.04 (1H, dd, J = 6.0, 4.9 Hz, H2), 4.98 (2H, d, J = 12.6 Hz, Bn×2), 4.97 (1H, dd, J = 50.4, 2.7 Hz, H4’’), 4.86 (1H, d, J = 7.8 Hz, H1’’), 4.73 (1H, d, J = 7.8 Hz, H1’), 4.71 (1H, m, Ser−α−H), 4.63 (1H, dd, J = 11.4, 6.6 Hz, H6’’), 4.51 (1H, m, H1), 4.43 (1H, dd, J = 11.4, 7.2 Hz, H6’’), 4.25 (1H, dd, J = 10.2, 3.6 Hz, H3’), 4.13 (1H, m, H6’), 4.01-3.96 (2H, m, H6’, H5’’), 3.75-3.70 (5H, m, H5’, Gly−α−H×2, Ser-β-H×2), 3.65 (1H, m, H4), 3.55 (1H, dd, J = 12.2, 3.4 Hz, H5), 3.08 (1H, m, H5)
51: 1H-NMR (600MHz, CDCl3, δ) 8.16-7.05 (50H, Ph), 6.72 (1H, m, NH), 5.88 (2H, s, H4’, H4’’), 5.60-5.55 (3H, m, H2’, H2’’, H3), 5.41 (1H, dd, J = 10.5, 3.2 Hz, H3’’), 5.20-4.78 (4H, Bn×4), 5.08 (1H, m, H2), 4.79 (1H, d, J = 8.0 Hz, H1’), 4.73 (1H, m, Ser−α−H), 4.68 (1H, dd, J = 11.0, 6.1 Hz, H6’’), 4.57 (1H, brs, H1), 4.32-4.25 (4H, m, H3’, H6’, H5’’, H6’’), 4.15 (1H, m, H6’), 4.06 (1H, m, H5’), 3.77-3.74 (4H, m, Gly−α−H×2, Ser-β-H×2), 3.69 (1H, m, H4), 3.55 (1H, m, H5), 3.09 (1H, m, H5)
【0060】
参考例8
糖ペプチドの合成(2)
【化24】

47をMeOHに溶かし、Pdカーボンを加え水素雰囲気下で3時間攪拌した。セライトろ過、濃縮後MeOHに溶かしNaOMeを加え1時間攪拌した。DOWEX50W×8[H+]を加えて反応をとめた後、ろ過してファルコンチューブにうつした。これにMeOHの10倍量のEt2Oを加えて生成物を析出させ、遠心分離(3500rpm,10分間)し上澄みを取り除いた。沈殿物をゲルろ過クロマトグラフィー(SephadexG−10)により精製し、52を得た。また、48、50、51も同様の条件で反応を行い、53、55、56を得た。
52: 1H-NMR (600MHz, D2O, δ) 5.10-4.98 (2H, m, H6’ ×2), 4.48 (1H, d, J = 7.2 Hz, H1’’), 4.41 (1H, d, J = 7.4 Hz, H1’), 4.27 (1H, brs, Ser−α−H), 4.34 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4’’), 4.12-3.45 (17H, m), 3.29-3.15 (2H, m, H2, H5)
53: 1H-NMR (600MHz, D2O, δ) 5.04 (1H, d, J = 50.0 Hz, H4’), 4.81 (1H, d, J = 7.2 Hz, H1’ ’), 4.72 (1H, d, J = 7.3 Hz, H1’), 4.70 (1H, d, J = 7.2 Hz, H1), 4.40 (1H, m, H5), 4.29 (1H, brs, Ser−α−H), 4.02 (1H, s, H4’’), 4.30-3.80 (17H, m), 3.72 (1H, m, H2)

55: 1H-NMR (600MHz, D2O, δ) 4.68 (1H, d, J = 50.0 Hz, H4’’), 4.57 (1H, d, J = 7.4 Hz, H1’’), 4.35 (1H, d, J = 7.4 Hz, H1’), 4.29 (1H, brs, Ser−α−H), 4.25 (1H, d, J = 7.3 Hz, H1), 4.08 (1H, m, Ser-β-H), 4.02 (1H, s, H4’), 3.95 (1H, m, H5), 3.78-3.41 (15H, m), 3.28-3.15 (2H, m, H2, H5)
56: 1H-NMR (600MHz, D2O, δ) 4.47 (1H, d, J = 7.4 Hz, H1’’), 4.38 (1H, d, J = 7.3 Hz, H1’), 4.32 (1H, brs, Ser−α−H), 4.29 (1H, d, J = 7.2 Hz, H1), 4.05 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4’), 4.04 (1H, m, Ser-β-H), 3.94 (1H, dd, J = 11.8, 5.3 Hz, H5), 3.76 (1H, d, J = 3.2 Hz, H4''), 3.71-3.42 (15H, m), 3.28-3.15 (2H, m, H2, H5)
次いで、52をDMFに縣濁させ、FITC、飽和重曹水を加え室温で3時間攪拌した。この溶液をファルコンチューブに移してEtOH/Et2O(1:10)を加え、沈殿を析出させた。遠心分離(3500rpm、10分間)し、上澄みを取り除いた後、沈殿物をゲルろ過クロマトグラフィー(SephadexG−10)により精製し、57を得た。また、53、55、56も同様の条件で反応を行い、58、60、61を得た。生成物はMALDI−TOFMASSにより分子量を確認した。質量分析の比較結果を図6に示す。
【0061】
本発明化合物の効果を下記の方法により試験した。
試験例1
CS/HS生成比の検証試験
アッセイはCHO−K1細胞で行った。まず、CHO−K1細胞を24ウェルプレート上にまき、これに実施例にて合成したフッ素置換体(化合物59)(30mMに調整)を10μL加えた。これを37℃で48時間培養後、培養上清をフィルターろ過し、さらに上清をゲルろ過(Sephadex G-10)して脱塩等の簡易精製を行った。これを、ゲルろ過クロマトグッラフィー(TSK-GEL SuperSW3000)により分析した。GAG鎖が伸長したかどうかは、イニシエーターがゲルろ過カラムの排除体積領域から溶離するかどうかを調べることにより判断した。比較のため、上記参考例で合成した1Gal−6F置換体(57)、1Gal−4F置換体(58)、2Gal−4F置換体(60)およびフッ素無置換コントロール(61)を用いて同様に試験した。
【0062】
続いて、この排除体積領域から溶出した分画をコンドロイチナーゼABCで酵素分解し、得られる生成物をHPLCで分析した。酵素分解の条件は次の通りである。
コンドロイチナーゼABC酵素 10mU
0.4Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)
0.4M酢酸ナトリウム
0.1%BSA
37℃,12時間
コンドロイチナーゼABCにより消化されなかったピーク(HS)およびCSの酵素消化生成物のピークの比からHS/CSを推定した。
【0063】
本発明の化合物(59)は、GAG鎖が伸長し、コンドロイチナーゼABCで全く消化されないことから、HSPGを選択的に生成することが示された(図1)。一方、1Gal−6F置換体(57)、1Gal−4F置換体(58)、2Gal−4F置換体(60)およびフッ素無置換コントロール(61)はいずれも、CS鎖の伸張を示した(図2〜5)。これらの結果をふまえると、明らかに3糖目のGalの6位水酸基(2Gal−6F)の硫酸化がCSPG/HSPG生合成の仕分け制御に深く関与していることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の化合物は、HSPGの生合成を選択的に促進することができるので、医薬、特に創傷治癒促進剤または再生医療用材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明化合物(2Gal−6F置換体(59))を添加してCHO-K1細胞の培養を行い、その上澄をゲル濾過クロマトグラフィーに付した結果を示す(A)。溶出した分画をコンドロイチナーゼABCで消化した後のクロマトグラフィーの結果を示す(B)。
【図2】上記参考例で合成した1Gal−6F置換体(57)を添加してCHO-K1細胞の培養を行い、その上澄をゲル濾過クロマトグラフィーに付した結果を示す(A)。溶出した分画をコンドロイチナーゼABCで消化した後のクロマトグラフィーの結果を示す(B)。
【図3】1Gal−4F置換体(58)を添加してCHO-K1細胞の培養を行い、その上澄をゲル濾過クロマトグラフィーに付した結果を示す(A)。溶出した分画をコンドロイチナーゼABCで消化した後のクロマトグラフィーの結果を示す(B)。
【図4】2Gal−4F置換体(60)を添加してCHO-K1細胞の培養を行い、その上澄をゲル濾過クロマトグラフィーに付した結果を示す(A)。溶出した分画をコンドロイチナーゼABCで消化した後のクロマトグラフィーの結果を示す(B)。
【図5】フッ素無置換コントロール(61)を添加してCHO-K1細胞の培養を行い、その上澄をゲル濾過クロマトグラフィーに付した結果を示す(A)。溶出した分画をコンドロイチナーゼABCで消化した後のクロマトグラフィーの結果を示す(B)。
【図6】本発明化合物(2Gal−6F置換体(59))、および上記参考例で合成した1Gal−6F置換体(57)、1Gal−4F置換体(58)、2Gal−4F置換体(60)、およびフッ素無置換コントロール(61)の質量分析スペクトルの結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、R1は水素原子、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールまたは天然若しくは非天然のアミノ酸からなるペプチド残基を表し、R2はハロゲン原子またはアルコキシを表す。)
で表される化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項2】
式(I)において、R1が天然若しくは非天然のアミノ酸からなるペプチド残基を表す、請求項1記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項3】
式(I)において、−OR1がセリンおよび/またはトレオニン含有オリゴペプチドであって、−OR1の酸素原子とセリンおよび/またはトレオニンが結合し、さらに該アミノ酸に二糖ユニットが結合した、式(I)の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項4】
式(I)において、−OR1が次式
【化2】

(式中、FITCはアミノ基がフルオレッセインイソチオシアネートで蛍光標識化されていることを表す。)
で表されるグリシルセリン誘導体である、式(I)の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそららの溶媒和物を有効成分とする、医薬。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物を有効成分とする、ヘパラン硫酸プロテオグリカン生成促進剤。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物を有効成分とする、創傷治癒促進剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−274954(P2009−274954A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227818(P2006−227818)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】