説明

創傷治癒促進材

本発明の目的は、創傷治癒に効果のある細胞を短時間で効率よく濃縮し、創傷治癒の促進材として活用するための手段を提供することである。本発明によれば、少なくとも白血球および/または血小板が表面に存在するシート状多孔質体からなる創傷治癒促進材、その製造方法、その製造システム、およびそれを用いた創傷部位の治療方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、創傷治癒を促進するための創傷治癒促進材、その調製方法、調製デバイス、およびそれを用いた創傷部位の再生促進方法に関する。
【背景技術】
近年、創傷の治癒に関するメカニズムが次第に明らかになっており、その一つとして、白血球、血小板といった血液中の細胞が産生するさまざまな成長因子が組織の再生に重要な働きをすることが知られている。
ここでいう成長因子とは、血液凝固や炎症細胞の遊走を始めとして、線維芽細胞の増殖や細胞外マトリックスの合成、血管新生およびそれらの再構築に至るまでの創傷治癒の諸現象を複雑な細胞間ネットワーク関係のもとで直接的または間接的に制御するものである。例えば、血小板由来の成長因子のひとつとして発見されたPDGF(血小板由来成長因子、platelet−derived growth factor)は線維芽細胞や平滑筋細胞の遊走、増殖促進、単球・好中球の強力な走化性作用、さらには線維芽細胞のコラーゲン、コラゲナーゼ合成促進因子としての作用が明らかになっている。これについてPierceらのグループは、ウサギの耳に軟骨まで達する傷をつくりPDGF−BBを投与したところ、PDGF−BBを投与しない傷よりも速やかに損傷の修復が行われることを示している(J.Cell Biochem.1991 45:319−326)。PDGFはその名前が示すとおり血小板に大量に含まれるが、それ以外にマクロファージや血管内皮細胞、平滑筋細胞などの細胞でも産生されている。創傷治癒に関連する成長因子としては、PDGF−BBの他にもFGF(線維芽細胞成長因子;fibroblast growth factor)、VEGF(血管内皮増殖因子;vascular endothelial growth factor)、TGF−β(形質転換性成長因子;transforming growth factor)、EGF(上皮成長因子;epidermal growth factor)などの成長因子が明らかにされており、その一部は臨床応用されるようになってきている。
また、創傷治癒の別のメカニズムとして、血液細胞自身の創傷治癒への関与といった側面からも幾つかの知見が得られている。例えばKalkaらは、ヒト末梢血中の単核球細胞をin vitroで培養した後、血管狭窄処置を行ったヌードラットの虚血部位にその培養細胞を移植すると細胞が生着して新たに血管を生成し虚血部位を治癒することを示しており、末梢血由来の白血球は上述の成長因子産生以外にも血管新生に直接関与するという面からも創傷治癒効果が期待されている(PNAS.2000 97:3422−3427)。さらに、ヒト末梢血中の単球分画をin vitroでさまざまな成長因子を用いて培養することにより上皮細胞、血管内皮細胞、肝細胞、そして神経細胞といった細胞に分化する方法もZhaoらによって示されており、細胞と成長因子の組合せがさらなる創傷治癒効果を示すことも期待される(PNAS.2003 100:2426−2431)。
創傷の治癒に際しては、特定の成長因子や細胞を患者に投与するが、その手法は主に全身投与または局所投与に二分される。しかしながら全身投与は、特に成長因子においては、投与量が多すぎる場合には例えばVEGFでは低血圧を、bFGFでは腎毒性を引き起こす危険性がそれぞれ示唆されており、投与量の決定には極めて慎重な判断が必要であった。一方、局所投与は成長因子や細胞の何れにも適していると思われるが、局所での成長因子濃度を一定期間保持するのは困難である。また、創傷治癒における細胞同士の情報伝達は上に挙げたような多種の因子の作用する複雑な系であるから、単独の成長因子の投与では治癒効果は不十分な場合が多く、創傷治癒に関連する多種の成長因子の投与が必要であると考えられている。なお、局所投与を実現する別法としては遺伝子治療が考えられるが、遺伝子治療は現在まだ安全性が十分に確立されていない。
その点、成長因子に比べて特定細胞の局所投与は有効性が高いと考えられ、様々な技術検討がなされている。例えば、遠心分離により成長因子を産生する血小板を血液から濃縮し、これにフィブリノーゲンとトロンビンを加えて血小板糊を調製し、創傷部位に塗布する方法がある(Int.J.Artif.Organs.2002 25(4):334−8)。しかし、この方法では調製に時間と手間がかかり、また、糊の機械的強度が低いという問題があった。特開2001−204807号公報には、細胞を含むゲルの機械的強度を強くするために、高分子材料成型物からなる骨格の内部に線維芽細胞等の細胞を含むゲルを形成させた医用材料が開示されている。ところが、この材料は人工皮膚を主な用途とするものであり、白血球、血小板等をこのゲルの中に含んでいないことから創傷治癒促進の効果は期待できなかった。またゲル中の細胞は、ゲル内に固定されているため細胞が何らかの因子を産生したとしても、その因子が創傷部位に到達するのに時間を要するという問題もあった。また、米国特許第6049026号明細書には、移植片として骨髄中の結合組織前駆細胞を基体(substrate)表面に付着させる為のキットが提案されており、移植片の成長を促す為に血小板を更に付着させることが記載されている。しかしながらこれは主に骨の移植片に関する発明であり、創傷の治癒促進、すなわち生体側創傷部位の細胞の成長を促進することを目的としたものではなかった。従って、白血球を移植片に付着させるという開示は一切されていない。
以上述べたとおり、創傷治癒分野おいては、創傷治癒効果のある血液細胞をより効率的に利用した創傷治癒(促進)材については知られておらず、そのような技術革新が望まれていた。
【発明の開示】
本発明は上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とする。即ち、本発明は、創傷治癒に効果のある細胞を短時間で効率よく濃縮し、創傷治癒の促進材として活用するための手段を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、表面に白血球および/または血小板を存在させたシート状多孔質材料が線維芽細胞の増殖を向上させ、創傷治癒関連の成長因子を産生することにより創傷治癒を促進することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下に関する。
(1)少なくとも白血球および/または血小板が表面に存在するシート状多孔質体からなる創傷治癒促進材。
(2)シート状多孔質体を含む創傷治癒促進材であって、細胞増殖能を有する創傷治癒促進材。
(3)線維芽細胞の増殖能を有する(2)に記載の創傷治癒促進材。
(4)細胞増殖能がシート状多孔質体表面に存在する白血球および/または血小板に由来する(3)に記載の創傷治癒促進材。
(5)シート状多孔質体を含む創傷治癒促進材であって、成長因子産生能を有する創傷治癒促進材。
(6)対照血漿に対する成長因子の産生能が、血管内皮増殖因子(VEGF)の場合は5倍以上、血小板由来増殖因子−AB(PDGF−AB)の場合は2倍以上、形質転換性成長因子(TGF−β1)の場合は2倍以上の何れかを満たす(5)に記載の創傷治癒促進材。
(7)成長因子の産生能が、シート状多孔質体表面に存在する白血球およびまたは血小板に由来する(6)に記載の創傷治癒促進材。
(8)シート状多孔質体の厚さが0.01〜3mmである(1)〜(7)の何れかに記載の創傷治癒促進材。
(9)シート状多孔質体が創傷部位の形状に合わせて変形可能である(1)〜(8)の何れかに記載の創傷治癒促進材。
(10)シート状多孔質体が不織布である(9)に記載の創傷治癒促進材。
(11)不織布の繊維径が0.3〜50μm、嵩密度が0.05〜0.5g/cmである(10)に記載の創傷治癒促進材。
(12)シート状多孔質体がスポンジ状構造体である(9)に記載の創傷治癒促進材。
(13)スポンジ状構造体の平均孔径が1.0〜40μmである(12)に記載の創傷治癒促進材。
(14)シート状多孔質体の材質が天然高分子または合成高分子である(1)〜(13)の何れかに記載の創傷治癒促進材。
(15)シート状多孔質体の材質が疎水性高分子を主要成分とする合成高分子である(14)に記載の創傷治癒促進材。
(16)シート状多孔質体の材質が生分解性素材である(13)または(14)に記載の創傷治癒促進材。
(17)白血球および/または血小板が末梢血、骨髄液または臍帯血由来である(1)〜(16)の何れかに記載の創傷治癒促進材。
(18)白血球および/または血小板が成熟細胞である(1)〜(16)の何れかに記載の創傷治癒促進材。
(19)白血球および/または血小板が自己由来である(17)または(18)に記載の創傷治癒促進材。
(20)シート状多孔質体における白血球密度が6.0×10個/cm以上および/または血小板密度が2.5×10個/cm以上である(1)〜(19)の何れかに記載の創傷治癒促進材。
(21)シート状多孔質体に線維芽細胞を組み込んだ(1)〜(20)の何れかに記載の創傷治癒促進材。
(22)線維芽細胞が創傷組織と同じ組織由来の線維芽細胞である(21)に記載の創傷治癒促進材。
(23)シート状多孔質体がフィブリンを含む(1)〜(22)の何れかに記載の創傷治癒促進材。
(24)シート状多孔質体に少なくとも白血球および/または血小板を捕捉する工程を含む創傷治癒促進材の調製方法。
(25)シート状多孔質体の厚さが0.01〜3mmである(24)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(26)シート状多孔質体が不織布である(24)または(25)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(27)不織布の繊維径が0.3〜50μm、嵩密度が0.05〜0.5g/cmである(26)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(28)シート状多孔質体がスポンジ状構造体である(24)または(25)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(29)スポンジ状構造体の平均孔径が1.0〜40μmである(28)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(30)シート状多孔質体が血液細胞の選択分離性を有する(24)〜(29)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(31)シート状多孔質体の表面が血液細胞の選択分離性を有する(30)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(32)シート状多孔質体が赤血球に比し白血球および/または血小板を選択的に捕捉するものである(31)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(33)シート状多孔質体の白血球捕捉率が50%以上および/または血小板捕捉率が50%以上である(32)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(34)少なくとも白血球および/または血小板を含む細胞浮遊液を濾過によりシート状多孔質体に捕捉する(24)〜(33)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(35)濾過がワンスルーにより行なわれる(34)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(36)細胞浮遊液の濾過液量が400ml未満である(35)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(37)シート状多孔質体の有効濾過面積に対する濾過液量の比が10ml/cm未満である(35)〜(37)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(38)シート状多孔質体の容積に対する濾過液量の比が100未満である(35)〜(37)の何れかにに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(39)シート状多孔質体に対して細胞浮遊液を一回濾過させる(35)〜(38)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(40)シート状多孔質体に対する細胞浮遊液の濾過方向が一方向である(35)〜(40)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(41)濾過時間が20分以内である(35)〜(40)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(42)濾過が体外循環により行なわれる(34)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(43)濾過流速が20〜200ml/minである(42)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(44)濾過時間が10〜300分である(42)または(43)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(45)細胞浮遊液が新鮮血である(24)〜(44)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(46)細胞浮遊液が採血後48時間以内の新鮮血である(45)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(47)細胞浮遊液が成熟細胞を主に含む(24)〜(46)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(48)細胞浮遊液が自己血由来である(24)〜(47)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(49)細胞浮遊液がクエン酸塩、ヘパリン類または水解酵素阻害剤の何れかを抗凝固剤として含む(24)〜(48)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(50)少なくとも白血球および/または血小板を捕捉したシート状多孔質体を培養する工程をさらに含む(24)〜(49)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(51)培養時に細胞活性化材を添加する(50)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(52)シート状多孔質体に線維芽細胞を組み込む工程をさらに含む(24)〜(51)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(53)線維芽細胞をシート状多孔質体に接触させる、または線維芽細胞を細胞浮遊液に混合して濾過することにより組み込む(52)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(54)線維芽細胞が創傷組織と同じ組織由来の線維芽細胞である(53)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(55)シート状多孔質体にフィブリンを含ませる工程をさらに含む(24)〜(54)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(56)フィブリンが製剤由来である(55)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(57)フィブリンが細胞浮遊液をシート状多孔質体に濾過した際のドレインを回収し濃縮して得たものである(56)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(58)少なくとも白血球および/または血小板を捕捉後にシート状多孔質体を洗浄する工程をさらに含む(24)〜(57)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(59)少なくとも白血球および/または血小板をシート状多孔質体に捕捉する工程および/または該シート状多孔質体を洗浄する工程が、液体の入口と出口が付いた開放可能な液密容器内で行われる(24)〜(58)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(60)開放可能な液密容器からシート状多孔質体を取り出し、保存する工程をさらに含む(59)に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
(61)(24)〜(60)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法により得られる創傷治癒促進材。
(62)液体の注入と排出のための入口と出口が付いた開放可能な液密容器の内部に、容器内部を二室に隔絶し、一方を入口側に他方を出口側に通じるようにシート状多孔質体を配置した創傷治癒促進材の調製デバイス。
(63)可撓性樹脂シートにシート状多孔質体を挟み込んで溶着または接着した軟質デバイスであり、可撓性樹脂シート部を剥がすことにより内部のシート状多孔質体を露出または取り出し可能とした(62)に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(64)平板状である(63)に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(65)締結手段を備えた硬質デバイスであり、該締結手段を解除することにより内部のシート状多孔質体を露出または取り出し可能とした(62)に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(66)円筒状である(65)に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(67)シート状多孔質体が反物状に巻かれて収容されている(66)に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(68)シート状多孔質体の厚さが0.01〜3mmである(62)〜(67)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(69)シート状多孔質体が不織布である(62)〜(68)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(70)不織布の繊維径が0.3〜50μm、嵩密度が0.05〜0.5g/cmである(69)に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(71)シート状多孔質体がスポンジ状構造体である(62)〜(68)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(72)スポンジ状構造体の平均孔径が1.0〜40μmである(71)に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(73)シート状多孔質体が血液細胞の選択分離性を有する(62)〜(72)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(74)シート状多孔質体の表面が血液細胞の選択分離性を有する(73)に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(75)シート状多孔質体が赤血球に比し白血球および/または血小板を選択的に捕捉するものである(74)に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(76)シート状多孔質体の白血球捕捉率が50%以上および/または血小板捕捉率が50%以上である(75)に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(77)容器の入口側および/または出口側にバッグを接続可能な接続部品を備えた(62)〜(76)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(78)容器の入口側に採血バッグおよび/または出口側に遠心バッグを備えた(77)に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(79)容器の入口側および出口側に体外循環回路を備えた(62)〜(76)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(80)滅菌袋に包装されて滅菌された(62)〜(79)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(81)容器の入口出口が外部に連通して包装、装置全体が滅菌袋に包装されて滅菌された(77)に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
(82)(62)〜(81)の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイスを用いて得られる創傷治癒促進材。
(83)(1)〜(23)、(61)および(82)の何れかに記載の創傷治癒促進材を創傷部位に貼り付ける創傷部位の治療方法。
(84)容器を開放し、シート状多孔質体の一面を容器から露出させた状態で貼り付ける(83)に記載の創傷部位の治療方法。
(85)容器からシート状多孔質体を取り出して貼り付ける(84)に記載の創傷部位の治療方法。
(86)創傷治癒促進材を調製後30分以内に創傷部位に貼り付ける(83)〜(85)の何れかに記載の創傷部位の治療方法。
(87)創傷が体表面である(83)〜(86)の何れかに記載の創傷部位の治療方法。
(88)貼り付けた創傷治癒促進材を保護材により被覆固定する(83)〜(87)の何れかに記載の創傷部位の治療方法。
(89)保護材が透水性を有さない素材からなるシートである(88)に記載の創傷部位の治療方法。
(90)保護材がガス透過性を有しかつ透水性を有さない素材からなるシートである(89)に記載の創傷部位の治療方法。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の創傷治癒促進材による創傷部位の治療方法を示す。図1Aは、シート状多孔質体の一面を容器から露出させた状態で貼り付ける方法を示し、図1Bは、容器からシート状多孔質体を取り出して貼り付ける方法を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明で用いるシート状多孔質体とは、角形あるいはディスク状のシート材料であり、細孔あるいは繊維間隙などの多孔部を有することにより、多孔部の表面において吸着や濾過によって細胞を捕捉しうる多孔質材料である。一般に、創傷部位表面は平面と限らず凹凸をともなう場合が多いため、より高い創傷治癒効果を発現するためには、創傷部位の形状に合わせてシート状多孔質体が密着していることが効果的である。従って、本シート状多孔質体は創傷部位の形状に合わせて変形可能な柔軟性を有することが好ましく、それにより、例えば数cm四方に及ぶ大きな創傷部位であっても、一枚のシートで隙間なく被覆することができる。
また、本発明で用いるシート状多孔質体は、血液等の細胞浮遊液から少なくとも白血球および/または血小板等の血球細胞を捕捉しうる材料であるが、フィルター層としての機能を有することが好ましい。すなわち、細胞浮遊液を接触あるいは通過させた際に、少なくとも白血球および/または血小板といった血球細胞や成長因子等を捕捉し、液体部分を捕捉しないという分離機能を有していればよく、それには、サイズ分離だけではなく材料表面に対する細胞親和性(吸着性等)に基づく分離も含まれる。
シート状多孔質体は、特定の血球細胞を多く捕捉しうるという選択分離性を有するものが好ましい。この選択分離性は、多孔質材料の素材や形状を適宜選択することにより達成可能であるが、後述するように、多孔質材料の表面処理によってより高選択的に制御することもできる。本発明の創傷治癒促進材においては、例えば成長因子の産生や分泌作用に優れることから、赤血球に比して白血球および/または血小板を選択的に捕捉しうるシート状多孔質体が特に好ましい。その際、捕捉率が高いほどより少量の細胞浮遊液から目的物を得ることができるので、白血球および/または血小板の捕捉率は何れも50%以上あれば好ましい。
シート状多孔質材料の形態としては、不織布、織布、スポンジ状構造体、粒子をシート状の袋に詰めたものなどが例示できる。この中でも、捕捉対象物として白血球や血小板を意図する場合には、除去効率という観点から、不織布やスポンジ状構造体がより好ましい。
本明細書で言う不織布とは、一層以上の繊維の塊を製編織しないで布状構造としたものを言う。繊維の素材としては、合成繊維、天然繊維、無機繊維等が用いられる。中でも疎水性高分子を主要成分とする合成繊維、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル等の繊維は、細胞の接着性が高いので好ましく用いられる。
シート状多孔質材料が不織布である場合の繊維の平均直径は、好ましくは0.3μm以上50.0μm未満であり、より好ましくは0.5μm以上40.0μm以下であり、さらに好ましくは0.7μm以上35.0μm以下であり、さらに好ましくは1.0μm以上20.0μm以下であり、特に好ましくは1.0μm以上9.0μm以下である。平均直径が0.3μmより小さくなると血液細胞浮遊液や血液を不織布に流すときに流動性が悪くなって装置内の圧力損失が高くなる。また、平均直径が50.0μmより大きいと白血球および/または血小板の捕捉率が悪くなってしまう。また、白血球および/または血小板の捕捉率が悪くなると、結果としてシート状多孔質材料内に捕捉された細胞間の距離が大きくなってしまうため、前述のとおり産生された成長因子がより効果的に機能するためにも繊維の平均直径は上記の範囲が好ましい。
本発明で用いる不織布を構成する繊維の平均直径は、例えば不織布を構成している繊維の走査型電子顕微鏡写真を撮り、無作為に選択した100本以上の繊維の直径を測定し、それらを数平均する方法で求められる。
本発明で用いる不織布の嵩密度は、好ましくは0.05g/cmから0.5g/cm、更に好ましくは0.07g/cmから0.4g/cm、より好ましくは0.1g/cmから0.3g/cmが良い。嵩密度が0.5g/cmより大きくなると細胞浮遊液や血液を不織布に流すときに流動性が悪くなって圧力損失が高くなる。また、嵩密度が0.05g/cmより小さいと細胞捕捉率が悪くなってしまうとともに、前述のとおり捕捉された細胞間の距離が大きくなってしまうため、前述のとおり産生された成長因子がより効果的に機能するためにも繊維の嵩密度は上記の範囲が好ましい。
また本発明でいうスポンジ状構造体とは、連続開放気孔を有する三次元網目状連続組織を有する構造体をいう。スポンジ状構造体の材質は特に限定されず、セルロースやその誘導体などの天然高分子、あるいは疎水性高分子を主要成分とするポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリサルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルサルホン、ポリ(メタ)アクリレート、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタールもしくはそれらの混合物などの高分子材料は細胞の接着性が高いので好ましく用いられる。
スポンジ状構造体の平均孔径は好ましくは1.0μm以上40μm以下であり、より好ましくは2.0μm以上35μm以下であり、さらに好ましくは3.0μm以上30μm以下である。平均直径が1.0μmより小さくなると細胞浮遊液や血液をスポンジ状構造体に流すときに血液の流動性が悪くなり、装置内の圧力損失が高くなる。また、平均直径が40μmより大きいと白血球捕捉率が悪くなってしまう。また、スポンジ状構造体の平均孔径が大きくなると、結果としてフィルター層内に捕捉された細胞間の距離が大きくなってしまうため、前述のとおり産生された成長因子がより効果的に機能するためにもスポンジ状構造体の平均孔径は上記の範囲が好ましい。
本発明に言うスポンジ状構造体の平均孔径とは、水銀圧入法で測定して得られた値である。水銀圧入法(例えば島津製作所、ポアサイザ9320)による測定により、縦軸に細孔の容量の微分値をとり、横軸に孔径をとってグラフを描き、そのピークに当たる点(最頻値)を平均孔径とする。なお、水銀圧入法による測定値としては1〜2650psiaの圧力範囲で測定した値を用いる。
本発明で用いるシート状多孔質材料の厚みは、創傷治癒効果を高めるために0.01mmから3.0mmであり、好ましくは0.05mmから2.5mm、より好ましくは0.1mmから2.0mmである。シート状多孔質材料の厚みが3.0mmより大きくなると、創傷部位への固定が困難になるとともに、白血球や血小板からの成長因子が創傷部位に届きにくくなってしまう。また、シート状多孔質材料の厚みが0.01mmより小さいと機械的強度が弱くなってしまう。細胞から産生される成長因子はその細胞自らに作用(自己分泌、autocrine)し、さらに強く作用する場合と、周辺の細胞から産生され拡散した成長因子が作用(傍分泌、paracrine)しあうことにより、細胞間で効果が増強される場合がある。従って、成長因子をより効果的に機能させるためには細胞同士の距離がなるべく近いことが望ましいため、フィルター層の厚みは上記の範囲内であることが望ましい。また、シート状多孔質材料は一枚で上記の厚みを持つものを使用してもよいし、厚みの小さいものを2枚以上重ねて使用することもできる。
さらに、シート状多孔質材料の表面には、捕捉対象物質のみを選択的に吸着捕捉できるようにするために特定の高分子をコーティングまたはグラフト処理などをすることもできる。例えば、血球は吸着しやすいが血小板は吸着し難い公知のポリマーをコーティングまたは固定化したシート状多孔質材料と、血小板を吸着しやすいシート状多孔質材料とにこの順で血液や細胞浮遊液を処理することにより、血小板をより選択的に接着したシート状多孔質材料を調製することもできる。このようなポリマーの例としては、例えば、WO87/05812号パンフレット、WO03/011924号パンフレットあるいはWO03/047655号パンフレット等を参照することができる。また、血球もしくは血漿タンパク質などの特定成分をより選択的に吸着しうるリガンドをコーティングまたは固定化してもよい。
シート状多孔質材料には、生分解性である素材を用いることもできる。生体吸収性の素材としては、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリリンゴ酸、ポリ−ε−カプロラクトンなどのポリエステル或いはセルロース、ポリアルギン酸、キチン、キトサンなどの多糖類等を挙げることができる。これらの素材を用いることで、より生体適合性の高い創傷治癒促進材とすることができる。
本発明の創傷治癒促進材は、前記のシート状多孔質体の表面に少なくとも白血球および/または血小板が存在することが必要である。血球細胞の存在量(密度)については特に限定しないが、創傷治癒促進材としての効果をより高めるためには、一定容積の多孔質体中の血球密度が少なくとも血液中の濃度レベル以上に濃縮されていることが好ましい。また、前述の細胞間相互作用(パラクリン)の点からも、細胞密度が低すぎると成長因子産生が低下するおそれがあるので、細胞密度を高めて細胞間距離を短くすることが効果的である。これらの理由から、シート状多孔質体の表面に存在する白血球密度が6.0×10個/cm以上および/または血小板密度が2.5×10個/cm以上であることが好ましい。一方、血球密度が高いほど創傷治癒効果は高くなる傾向にあるが、例えば濾過操作のみによって調整する際には、目詰まりにより処理時間が増大する、あるいは多孔質体が閉塞するおそれがあるので、白血球密度の上限を6.0X10個/cm以下、血小板密度の上限を1.0X1010個/cm以下にすることが好ましい。
前記表面に存在する血球細胞は、末梢血、骨髄および臍帯血に由来するヒトの血球細胞であり、免疫的な拒絶や感染防除等の理由から創傷の治癒を受ける患者自身の血液に由来するもの(自己血)やヒト白血球抗原(HLA)の型が近いもの(同種血)の血液に由来するものが好ましい。
シート状多孔質体の表面にこれらの血球細胞を捕捉させ、創傷治癒促進材を調製するための細胞浮遊液は、少なくとも白血球および/または血小板を含む浮遊液であり、末梢血、骨髄、臍帯血そのままであってもよいし、全血製剤や分離された成分製剤、あるいは予め特定の細胞分画を除去した細胞浮遊液であってもよい。これらの細胞浮遊液は、抗凝固剤として一般的なクエン酸塩、ヘパリン、低分子ヘパリン、ヘパリノイド等のヘパリン類、あるいは、フサン(FUT)、FOY、アルガトロバン等の水解酵素阻害剤を含んでいてもよい。また、細胞浮遊液は新鮮な状態であることが好ましく、生体から取り出したのち細胞浮遊液をシート状多孔質体によりろ過するまでの時間が48時間以内のものがより好ましい。
シート状多孔質体の表面に存在させる血液細胞としては、幹細胞もしくは前駆細胞といった未熟な細胞ばかりでなく、成熟白血球や成熟血小板といった成熟細胞を多く含むことが望ましい。血液中や創傷組織中に少量含まれる幹細胞もしくは前駆細胞が増殖・分化して創傷組織の再生を行うさいには、単独で組織再生をするのではなく成熟細胞とのネットワークの中で創傷治癒に最適な増殖・分化を繰り返して組織再生を実現するからである。
本発明の創傷治癒促進材には線維芽細胞を組み込むこともできる。線維芽細胞は血液細胞浮遊液とは別に、シート状多孔質材料と接触させることで組み込むこともできるが、予め血液細胞を含む細胞浮遊液に混合させてから、シート状多孔質材料と接触させてもよい。また、線維芽細胞のみをさらに別の材料(フィルター層)に付着させた後、血液細胞を付着させたシート状多孔質材料と組み合わせることもできる。線維芽細胞はとくに創傷部位に含まれるものと同じ線維芽細胞を組み込むことが好ましく、これにより創傷部位の治癒を促進できる。
本発明の創傷治癒促進材は、その調製過程で培養することもできる。培養液は特に限定されず、通常細胞培養で用いられるものであればよい。さらに血液細胞を活性化する因子を加えて培養することもできる。例えば、トロンビン等の血小板活性化剤を入れてから培養することで局所的な成長因子の濃度を高めることができる。
本発明の創傷治癒促進材には、さらにフィブリンを含んでいてもよい。フィブリンを調製するためのフィブリノーゲン溶液としては特に特定されないが、製剤として市販されているものを使用することができる。また血液細胞浮遊液として血液を用いた際にシート状多孔質材料からドレインとして回収される液を遠心し、これを濃縮して用いることもできる。また、線維芽細胞を含む場合には、細胞は予めフィブリンに包埋する形態でもよいし、フィブリンに後から細胞のみを播種してもよい。フィブリンを含むことで、創傷部位への創傷治癒促進材の固定化が容易となるうえに、フィブリンゲル内に含まれる他の成長因子によりさらに創傷の治癒促進効果を上げることができる。
本発明の創傷治癒促進材を調製するには、細胞浮遊液に含まれる少なくとも白血球および/または血小板を前記シート状多孔質体の表面に捕捉させることが必要である。この捕捉工程においては、例えば、シート状多孔質体を広げて細胞浮遊液を直接滴下し濾過する、ラボ装置で用いられる適当な濾過ホルダーに把持して細胞浮遊液を濾過する(例えば図1Bを参照できる)、あるいはシステムの説明で後述する開放可能な液密容器にセットして濾過すればよい(例えば図1Aおよび図1Bを参照できる)。後者二つの場合は、自由落下でもよく、ポンプやシリンジ等を用いて強制的に濾過してもよい。また、単に濾過するだけではなく、細胞浮遊液が接触した状態で一定時間保持する等の操作を併用すれば、血球細胞の表面捕捉率を高めることもできる。
濾過操作においては、特に断続的な濾過操作を何度も行うと濾過のシェアストレスで細胞が活性化してしまい、ドレインの血漿中に成長因子を放出してしまうことが懸念される。従って、細胞浮遊液をワンスルーで濾過することが好ましく、準備や操作が簡便でしかも処理時間が短いという利点も得られる。また、細胞浮遊液を濾過する方向は一方向であることが好ましい。例えば、何らかの原因により、シート状多孔質体中に十分な密度の白血球および/または血小板を捕捉できない場合には、シート状多孔質体の両面で細胞密度が異なり、濾過入口側の細胞密度が高くなることがある。そのような場合には、濾過入口側の面を創傷部位に密着することで捕捉細胞の創傷治癒促進効果をより効率的に発現させることができるからである。あるいは、意図的に密度を偏在させてこのような作用を狙うこともできる。
このようなワンスルー濾過を行う場合は、輸血における白血球除去操作のように大量の細胞浮遊液(一単位である400ml以上)を処理することも可能ではあるが、少量で濾過を行うほど処理時間が短縮されるので、例えば創傷の処置に平行して準備が必要な場合には極めて有用となる。従って、細胞浮遊液の濾過液量を400ml未満とすることが好ましく、また、シート状多孔質体の有効濾過面積に対する濾過液量の比を10ml/cm未満とする、あるいはシート状多孔質体の容積に対する濾過液量の比を100未満としても濾過時間が短くなるので好ましい。
一方、開放可能な液密容器を用いれば、体外循環により濾過することも容易である。この場合は、処理時間は比較的長くなるものの、大量の血液を連続的に循環し濾過し続けることにより、シート状多孔質体における血球密度が高くなるという利点がある。また、システムの説明で後述するように、シート状多孔質体を反物上に巻いて円筒状の容器に組み込むと、1〜2mの濾過面積を容易に確保できるため、大量の血液からきわめて大面積の創傷治癒促進材を得ることができる。その際、体外循環における濾過流速は20〜200ml/min、濾過時間は10〜300分であれば好ましい。体外循環により濾過を行う場合には濾過流速は20〜200mL/分が好ましい。より好ましくは25〜150mL/分、さらに好ましくは30〜120mL/分である。濾過流速がこれより低いと抗凝固剤の種類によっては体外循環施行中に血液が凝固しやすくなるし、体外循環時間が長くなって患者に負担がかかってしまう。また、濾過流速がこれより高いと、患者の血管状態によっては血液採取が困難になることがあり、さらにシート状多孔質体にかかる負荷が高くなって血液凝固を促進してしまうことが起こりうる。また、体外循環の濾過時間としては10分〜300分が好ましい。より好ましくは20分〜250分、さらに好ましくは30分〜200分である。体外循環の濾過時間がこれより短くなると十分な細胞が捕捉できないおそれがあり、反対にこれより体外循環の濾過時間が長くなると患者に与える負担が大きくなる。
以上の工程により、シート状多孔質体の表面に少なくとも白血球および/または血小板が存在する本発明の創傷治癒促進材が得られるが、この調製調整方法においては、さらに洗浄工程を含んでもよい。洗浄は、例えばリン酸緩衝液や生理食塩水等の生理的水溶液を、細胞浮遊液の濾過操作と同様に実施すればよい。洗浄することにより、創傷治癒に不要な細胞や残留血液等を除去することができる。洗浄後の創傷治癒促進材については、ホルダーや容器に取り付けた状態または取り出した状態で、乾燥しないように且つ無菌的に保存すればよく、その方法は何ら限定しない。
本発明はさらに、本発明の創傷治癒促進材を調製するためのデバイスであって、液体の注入と排出のための入口と出口が付いた開放可能な液密容器の内部に、容器内部を二室に隔絶し、一方を入口側に他方を出口側に通じるようにシート状多孔質体を配置した創傷治癒促進材の調製デバイスにも関する。
本発明において、液体の注入と排出のための入口と出口が付いた液密容器とは、細胞浮遊液の注入と排出(濾過)または体外循環が可能な入口と出口が付いた容器である。例えば、公知の平板状の白血球除去フィルターデバイス(例えばWO01/091880号パンフレットを参照できる)や公知の円筒状の白血球除去モジュール(例えばWO99/058172号パンフレットを参照できる)のような外部形状を有しており、内部構造についてもこれらと同様に、濾材(本発明でいうシート状多孔質体)が容器内部を濾過前後の液体が混合しないように二室に隔絶し、一方が入口側に、他方が出口側に通じるように配置されている。
本発明の装置に使用される容器の形状は特に限定されず、シート状多孔質材料を収納しやすく、液密になっており、細胞浮遊液がシート状多孔質材料を流れやすい形状であればよい。但し、シート状の多孔質材料をそのまま収容するのであれば平板型が好ましく、反物状にして収容するのであれば円筒型が収納しやすい。さらに、平板型容器に可撓性材料を使用し、平板型容器全体を反物状に巻くことによりコンパクトな状態とすることもできる。
ここでいう開放可能とは、血球が捕捉されたシート状多孔質材料を前記容器から簡便に取り出し可能、あるいは血球捕捉面の一部を容易に露出可能な容器構造を意味し、本デバイスにおいて必要な構造である。例えば、容器本体がネジ式、パッキング式、すり合わせ式等の締結手段を有するもの、あるいは引き剥がし可能な貼り合せ式になっている構造を例示できる。より具体的には、平板状容器の場合は、液体入口が付いた可撓性樹脂シート容器と液体出口が付いた可撓性樹脂シート容器とを、シート状多孔質体を挟み込むようにそれらの周縁部で溶着または接着した軟質デバイスが好ましく、円筒状容器の場合は、液体入口と前記の締結手段が付いたヘッダー部と、液体出口と締結手段がついたヘッダー部とを、反物状にしたシート状多孔質体を収容した筒状胴部の両端に締結した硬質デバイスが好ましい。前者においては、例えば図1Aに示すように、溶着または接着したシート血球が捕捉されたシート状多孔質体の一部を露出して創傷部位に貼り付ける際に非常に便利であり、後者においては、全体としては小型でも大きな濾過面積を確保できるので体外循環により調製するのに適しており、その結果、大面積あるいは大量の創傷治癒促進材を得るのに適している。
なお、血球が捕捉されたシート状多孔質材料を前記容器から簡便に取り出す、あるいは血球捕捉面の一部を容易に露出可能であれば、前記のような開放可能な手段がなくてもよく、容器の全体もしくは一部が外側から容易に破壊可能な材料や構造からなっていてもよい。さらには、市販されている平板状または円筒状の白血球除去フィルターを適宜選択して利用することもできる。
本発明の創傷治癒促進材調製デバイスには、細胞浮遊液を無菌的に流すために容器入口側に採血バッグと接続するためのスパイク針付きのチューブを接続することもできる。単にチューブだけを取り付けておき、無菌接続器で接続してもよい。また、ドレイン液を用いて血漿又は血清を調製することを容易にするために容器の出口側に遠心用のバッグを接続することもできる。さらに、血液ポンプや導血部および返血部等を備えた一般的な体外循環回路を接続することもできる。
本発明の創傷治癒促進材調製デバイスを滅菌袋に包装する場合、シート状多孔性材料を収容する容器を滅菌袋に包装し、さらに装置全体を別の滅菌袋で包装してもよい。こうすることにより、細胞浮遊液を流した後に多孔質材料を実際に創傷部位に貼り付けるまでの間容器および多孔質材料を無菌的に保持可能となり、取扱い性が著しく向上する。
本発明はさらに、本発明の創傷治癒促進材を創傷部位に貼り付ける創傷部位の治療方法にも関する。
本発明の創傷治癒促進材による創傷部位の治療方法には、容器からシート状多孔質体を取り出して貼り付ける方法(図1B)や、シート状多孔質体の一面を容器から露出させた状態で貼り付ける方法(図1A)が例示できる。前者においては、露出面の反対側が容器で覆われているのでシート状多孔質体の無菌性により優れており、また多孔質体の乾燥を防止することもできる。このように理由から、前者においては特に体表面への適用性に優れている。
また、本発明の治療方法においては、創傷部位に貼り付けた創傷治癒促進材の表面を保護材により被覆固定してもよい。その際、治療部位、特に創傷治癒促進材表面の乾燥を防ぐために、透水性を有さない素材からなる保護材を用いることが好ましい。また、ガス透過性を有しかつ透湿性を有さない素材であれば、血球細胞への酸素供給が容易になり、細胞活性がより長期間維持されるので特に好ましい。これらの保護材は、創傷治療治癒において通常用いられるものを利用すればよい。
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
〔実施例1〕:創傷治癒促進材の調製(ヒト血液)
血液細胞を表面に有するシート状多孔質体を以下の方法で調製した。 健常人のボランティアより、抗凝固剤としてCPD(citrate−phosphate−dextrose)を用いて末梢血を採取した(血液:CPD=400:56、白血球数:5,100個/μL、血小板数:14.4x10個/μL)。ポリエチレンテレフタレート製の不織布(旭化成株式会社、平均繊維径2.6μm、厚み0.38mm、嵩密度0.27g/cm)を25mm径に打ちぬき、これを2枚重ねてカラム(アドバンテック社、型番PP−25)にて保持し、カラムに末梢血5mLを流した。血液を流した後に連続して、カラムにリン酸緩衝液10mLを流して洗浄し、血液細胞を表面に付着させたシート状多孔質体を含む創傷治癒促進材を得た。
上記操作を別々に2回施行したが、処理に要する時間はいずれも10分以内であった。
処理前後の血液中に含まれる白血球、血小板数を血球計算盤により測定した。
不織布フィルター層による白血球および血小板の捕捉率は以下の表1の通りであった。

〔実施例2〕:創傷治癒促進材の調製(ヒト血液)
血液細胞を表面に有するシート状多孔質体を以下の方法で調製した。健常人のボランティアより、抗凝固剤としてヘパリンを用いて末梢血を採取した(血液:ヘパリン=100:1、白血球数:3,800個/μL、血小板数:22.5x10個/μL)。ポリエチレンテレフタレート製の不織布(旭化成株式会社、平均繊維径1.1μm、厚み0.24mm、嵩密度0.17g/cm)を25mm径に打ちぬき、これを2枚重ねてカラム(アドバンテック社、型番PP−25)にて保持し、カラムに末梢血5mLを流した。 血液を流した後に連続して、カラムにリン酸緩衝液10mLを流して洗浄し、血液細胞を表面に付着させたシート状多孔質体から成る創傷治癒促進材を得た。
上記操作を別々に2回施行したが、処理に要する時間はいずれも10分以内であった。
処理前後の血液中に含まれる白血球、血小板数を血球計算盤により測定した。
不織布フィルター層による白血球および血小板の捕捉率は以下の表2の通りであった。

〔実施例3〕:創傷治癒促進材の調製(マウス血液)
血液細胞を表面に有するシート状多孔質体を以下の方法で調製した。
2型糖尿病モデルマウス(C57BL/KsJ−db/db Jct,日本クレア(株))より、抗凝固剤としてヘパリンを用いて末梢血を採取した(白血球数:5,200個/μL、血液:ヘパリン=100:1)。ポリ乳酸製の不織布(旭化成株式会社、平均繊維径1.14μm、厚み0.20mm、嵩密度0.20g/cm)を13mm径に打ちぬき、これを3枚重ねて5mLシリンジ(テルモ社)にて保持し、これにマウス末梢血200μLを流した。 血液を流した後に連続して、リン酸緩衝液200μLを流して洗浄し、血液細胞を表面に付着させたシート状多孔質体から成る創傷治癒促進材を得た。
上記操作を別々に2回施行したが、処理に要する時間はいずれも2分以内であった。
処理前後の血液中に含まれる白血球を血球計算盤により測定した。
不織布フィルター層による白血球の捕捉率は以下の表3の通りであった。

〔試験例1〕:線維芽細胞の増殖率の測定
実施例1にて調製した血液細胞を表面に付着した不織布創傷治癒促進材と、線維芽細胞とを共培養して、線維芽細胞の増殖率を検討した。
培養容器としては、3μmのポアサイズの膜で隔てられたインサートを有するマルチプルウェル培養用プレート(コーニング社、トランスウェル3452)を用いた。
インサートの膜で隔てられた上側に実施例1にて血液処理を行った不織布(即ち、血液細胞を表面に付着した本発明の創傷治癒促進材)2枚を入れ、下側にヒト胎児肺由来の正常二倍体線維芽細胞株(HEL、human embryonic lung fibroblast)を播種した。細胞の播種密度は、各1x10個/ウエルとした。
Basal Medium Eagle(Sigma社、B1522)にメーカー指定の通り、ピルビン酸ナトリウム(ICN社)を1mM、100倍濃縮非必須アミノ酸(ICN社、Cat.#1681049)を100倍希釈となるように、そしてグルタミンを2mMとなるように添加した。これにさらに、最終濃度が10%となるように牛胎児血清(FCS、StemCell Technologies社)と、抗生物質としてペニシリン及びストレプトマイシンを添加して、培養液を作製した。培養液の容量は4mL/ウエルとした。
また、コントロールとしては、血液で処理していない不織布とHELとの共培養を行った。
上記の培養物を、5% CO、37℃のインキュベーターで4日間培養後、線維芽細胞の数を測定した。結果を表4に示す。線維芽細胞の回収には0.25% Trypsin/EDTA液(ギブコ社)を用いた。

表4に示す通り、実施例1で作製した血液処理を行った不織布からなる本発明の創傷治癒促進材を用いて培養することにより、血液処理を行わない不織布を用いた場合と比較して、線維芽細胞の増殖能が高くなることが実証された。
〔試験例2〕:創傷治癒促進材からの成長因子産生
実施例2にて調製した血液細胞を表面にした不織布創傷治癒促進材を培養液にて培養し付着した細胞から産生される各種増殖因子の濃度を検討した。
培養容器としては、直径35mmの培養ディッシュ(旭テクノグラス社)を用いた。
実施例2にて血液処理を行った不織布(即ち、血液細胞を表面に付着した本発明の創傷治癒促進材)2枚を入れた。
市販の培養液Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM、ギブコ社)に最終濃度が2%となるように牛胎児血清(FBS、ギブコ社)と、抗生物質としてゲンタマイシンを添加して、培養液を作製した。培養液の容量は2mLとした。
上記の培養物を、5%CO、37℃のインキュベーターで48時間培養後、培養上清を回収し創傷治癒関連の成長因子としてVEGF、PDGF−AB、そしてTGF−β1の濃度測定を行った。濃度測定は市販のELISAキット(R&D Systems社)を用いた。
比較対照としては、培養前の培養液および不織布ろ過後に回収された血液を遠心して調製した血漿を用いた。結果を表5に示す。

表5に示す通り、培養前の培養液中および血漿中に比べて、血液細胞を表面に有する不織布を72時間培養した後の培養上清中には成長因子が多く産生されていることが分った。
〔試験例3〕:動物モデルを用いて創傷治癒効果の確認を以下のように行った。
2型糖尿病モデルマウス(C57BL/KsJ−db/db Jct,日本クレア(株))の背部を全身麻酔下に剃毛した後,バイオプシー用の6mmφパンチ(カイインダストリーズ社、BP−60F)を用いて皮膚全層欠損処置を行った。マウスあたり3個の全層欠損処置を行った。
次に3個の全層欠損部位に各々実施例3にて血液処理を行ったポリ乳酸製不織布(即ち、血液細胞を表面に有する本発明の創傷治癒促進材)、血液処理を行っていないポリ乳酸製不織布、そして比較対照として何も貼付しない処置を行い、さらにこれらをポリウレタン製の創傷被覆材(『テガダーム』、3M社)で固定した。比較対照部位にはウレタン製創傷被覆材のみを貼付した。
2週間後にウレタンシートおよび創傷治癒促進材を剥がして傷の大きさを測定した。
創傷部位および定規をデジタルカメラで同時に測定し、得られた画像から画像解析ソフトImageJ(the National Institutes of Health)で解析することにより傷の面積を算出した。表6に全層欠損処置直後の創傷部位面積を100としたときの2週間後の面積を算出しその治癒程度を比較した。

表6に示す通り、血液を処理した不織布を貼付した部位の治癒率は有意に他よりも治癒程度が高かった。ポリ乳酸製不織布を貼付した部位には炎症が見られ、処置直後よりもかえって傷が拡大する傾向があった。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、簡便な操作で短時間のうちに血液細胞を濃縮した創傷治癒促進材を調製できる。本発明の創傷治癒促進材は細胞の増殖を促進する効果を有することから、本発明の創傷治癒促進材を用いることによって創傷の治癒を促進することができる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも白血球および/または血小板が表面に存在するシート状多孔質体からなる創傷治癒促進材。
【請求項2】
シート状多孔質体を含む創傷治癒促進材であって、細胞増殖能を有する創傷治癒促進材。
【請求項3】
線維芽細胞の増殖能を有する請求項2に記載の創傷治癒促進材。
【請求項4】
細胞増殖能がシート状多孔質体表面に存在する白血球および/または血小板に由来する請求項3に記載の創傷治癒促進材。
【請求項5】
シート状多孔質体を含む創傷治癒促進材であって、成長因子産生能を有する創傷治癒促進材。
【請求項6】
対照血漿に対する成長因子の産生能が、血管内皮増殖因子(VEGF)の場合は5倍以上、血小板由来増殖因子−AB(PDGF−AB)の場合は2倍以上、形質転換性成長因子(TGF−β1)の場合は2倍以上の何れかを満たす請求項5に記載の創傷治癒促進材。
【請求項7】
成長因子の産生能が、シート状多孔質体表面に存在する白血球およびまたは血小板に由来する請求項6に記載の創傷治癒促進材。
【請求項8】
シート状多孔質体の厚さが0.01〜3mmである請求項1〜7の何れかに記載の創傷治癒促進材。
【請求項9】
シート状多孔質体が創傷部位の形状に合わせて変形可能である請求項1〜8の何れかに記載の創傷治癒促進材。
【請求項10】
シート状多孔質体が不織布である請求項9に記載の創傷治癒促進材。
【請求項11】
不織布の繊維径が0.3〜50μm、嵩密度が0.05〜0.5g/cmである請求項10に記載の創傷治癒促進材。
【請求項12】
シート状多孔質体がスポンジ状構造体である請求項9に記載の創傷治癒促進材。
【請求項13】
スポンジ状構造体の平均孔径が1.0〜40μmである請求項12に記載の創傷治癒促進材。
【請求項14】
シート状多孔質体の材質が天然高分子または合成高分子である請求項1〜13の何れかに記載の創傷治癒促進材。
【請求項15】
シート状多孔質体の材質が疎水性高分子を主要成分とする合成高分子である請求項14に記載の創傷治癒促進材。
【請求項16】
シート状多孔質体の材質が生分解性素材である請求項13または14に記載の創傷治癒促進材。
【請求項17】
白血球および/または血小板が末梢血、骨髄液または臍帯血由来である請求項1〜16の何れかに記載の創傷治癒促進材。
【請求項18】
白血球および/または血小板が成熟細胞である請求項1〜16の何れかに記載の創傷治癒促進材。
【請求項19】
白血球および/または血小板が自己由来である請求項17または18に記載の創傷治癒促進材。
【請求項20】
シート状多孔質体における白血球密度が6.0×10個/cm以上および/または血小板密度が2.5×10個/cm以上である請求項1〜19の何れかに記載の創傷治癒促進材。
【請求項21】
シート状多孔質体に線維芽細胞を組み込んだ請求項1〜20の何れかに記載の創傷治癒促進材。
【請求項22】
線維芽細胞が創傷組織と同じ組織由来の線維芽細胞である請求項21に記載の創傷治癒促進材。
【請求項23】
シート状多孔質体がフィブリンを含む請求項1〜22の何れかに記載の創傷治癒促進材。
【請求項24】
シート状多孔質体に少なくとも白血球および/または血小板を捕捉する工程を含む創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項25】
シート状多孔質体の厚さが0.01〜3mmである請求項24に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項26】
シート状多孔質体が不織布である請求項24または25の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項27】
不織布の繊維径が0.3〜50μm、嵩密度が0.05〜0.5g/cmである請求項26に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項28】
シート状多孔質体がスポンジ状構造体である請求項24または25に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項29】
スポンジ状構造体の平均孔径が1.0〜40μmである請求項28に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項30】
シート状多孔質体が血液細胞の選択分離性を有する請求項24〜29の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項31】
シート状多孔質体の表面が血液細胞の選択分離性を有する請求項30に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項32】
シート状多孔質体が赤血球に比し白血球および/または血小板を選択的に捕捉するものである請求項31に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項33】
シート状多孔質体の白血球捕捉率が50%以上および/または血小板捕捉率が50%以上である請求項32に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項34】
少なくとも白血球および/または血小板を含む細胞浮遊液を濾過によりシート状多孔質体に捕捉する請求項24〜33の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項35】
濾過がワンスルーにより行なわれる請求項34に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項36】
細胞浮遊液の濾過液量が400ml未満である請求項35に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項37】
シート状多孔質体の有効濾過面積に対する濾過液量の比が10ml/cm未満である請求項35〜37の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項38】
シート状多孔質体の容積に対する濾過液量の比が100未満である請求項35〜37の何れかにに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項39】
シート状多孔質体に対して細胞浮遊液を一回濾過させる請求項35〜38の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項40】
シート状多孔質体に対する細胞浮遊液の濾過方向が一方向である請求項35〜40の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項41】
濾過時間が20分以内である請求項35〜40の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項42】
濾過が体外循環により行なわれる請求項34に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項43】
濾過流速が20〜200ml/minである請求項42に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項44】
濾過時間が10〜300分である請求項42または43に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項45】
細胞浮遊液が新鮮血である請求項24〜44の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項46】
細胞浮遊液が採血後48時間以内の新鮮血である請求項45に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項47】
細胞浮遊液が成熟細胞を主に含む請求項24〜46の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項48】
細胞浮遊液が自己血由来である請求項24〜47の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項49】
細胞浮遊液がクエン酸塩、ヘパリン類または水解酵素阻害剤の何れかを抗凝固剤として含む請求項24〜48の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項50】
少なくとも白血球および/または血小板を捕捉したシート状多孔質体を培養する工程をさらに含む請求項24〜49の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項51】
培養時に細胞活性化材を添加する請求項50に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項52】
シート状多孔質体に線維芽細胞を組み込む工程をさらに含む請求項24〜51の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項53】
線維芽細胞をシート状多孔質体に接触させる、または線維芽細胞を細胞浮遊液に混合して濾過することにより組み込む請求項52に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項54】
線維芽細胞が創傷組織と同じ組織由来の線維芽細胞である請求項53に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項55】
シート状多孔質体にフィブリンを含ませる工程をさらに含む請求項24〜54の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項56】
フィブリンが製剤由来である請求項55に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項57】
フィブリンが細胞浮遊液をシート状多孔質体に濾過した際のドレインを回収し濃縮して得たものである請求項56に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項58】
少なくとも白血球および/または血小板を捕捉後にシート状多孔質体を洗浄する工程をさらに含む請求項24〜57の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項59】
少なくとも白血球および/または血小板をシート状多孔質体に捕捉する工程および/または該シート状多孔質体を洗浄する工程が、液体の入口と出口が付いた開放可能な液密容器内で行われる請求項24〜58の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項60】
開放可能な液密容器からシート状多孔質体を取り出し、保存する工程をさらに含む請求項59に記載の創傷治癒促進材の調製方法。
【請求項61】
請求項24〜60の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製方法により得られる創傷治癒促進材。
【請求項62】
液体の注入と排出のための入口と出口が付いた開放可能な液密容器の内部に、容器内部を二室に隔絶し、一方を入口側に他方を出口側に通じるようにシート状多孔質体を配置した創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項63】
可撓性樹脂シートにシート状多孔質体を挟み込んで溶着または接着した軟質デバイスであり、可撓性樹脂シート部を剥がすことにより内部のシート状多孔質体を露出または取り出し可能とした請求項62に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項64】
平板状である請求項63に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項65】
締結手段を備えた硬質デバイスであり、該締結手段を解除することにより内部のシート状多孔質体を露出または取り出し可能とした請求項62に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項66】
円筒状である請求項65に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項67】
シート状多孔質体が反物状に巻かれて収容されている請求項66に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項68】
シート状多孔質体の厚さが0.01〜3mmである請求項62〜67の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項69】
シート状多孔質体が不織布である請求項62〜68の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項70】
不織布の繊維径が0.3〜50μm、嵩密度が0.05〜0.5g/cmである請求項69に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項71】
シート状多孔質体がスポンジ状構造体である請求項62〜68の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項72】
スポンジ状構造体の平均孔径が1.0〜40μmである請求項71に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項73】
シート状多孔質体が血液細胞の選択分離性を有する請求項62〜72の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項74】
シート状多孔質体の表面が血液細胞の選択分離性を有する請求項73に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項75】
シート状多孔質体が赤血球に比し白血球および/または血小板を選択的に捕捉するものである請求項74に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項76】
シート状多孔質体の白血球捕捉率が50%以上および/または血小板捕捉率が50%以上である請求項75に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項77】
容器の入口側および/または出口側にバッグを接続可能な接続部品を備えた請求項62〜76の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項78】
容器の入口側に採血バッグおよび/または出口側に遠心バッグを備えた請求項77に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項79】
容器の入口側および出口側に体外循環回路を備えた請求項62〜76の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項80】
滅菌袋に包装されて滅菌された請求項62〜79の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項81】
容器の入口出口が外部に連通して包装、装置全体が滅菌袋に包装されて滅菌された請求項77に記載の創傷治癒促進材の調製デバイス。
【請求項82】
請求項62〜81の何れかに記載の創傷治癒促進材の調製デバイスを用いて得られる創傷治癒促進材。
【請求項83】
請求項1〜23、61および82の何れかに記載の創傷治癒促進材を創傷部位に貼り付ける創傷部位の治療方法。
【請求項84】
容器を開放し、シート状多孔質体の一面を容器から露出させた状態で貼り付ける請求項83に記載の創傷部位の治療方法。
【請求項85】
容器からシート状多孔質体を取り出して貼り付ける請求項84に記載の創傷部位の治療方法。
【請求項86】
創傷治癒促進材を調製後30分以内に創傷部位に貼り付ける請求項83〜85の何れかに記載の創傷部位の治療方法。
【請求項87】
創傷が体表面である請求項83〜86の何れかに記載の創傷部位の治療方法。
【請求項88】
貼り付けた創傷治癒促進材を保護材により被覆固定する請求項83〜87の何れかに記載の創傷部位の治療方法。
【請求項89】
保護材が透水性を有さない素材からなるシートである請求項88に記載の創傷部位の治療方法。
【請求項90】
保護材がガス透過性を有しかつ透水性を有さない素材からなるシートである請求項89に記載の創傷部位の治療方法。

【国際公開番号】WO2004/108146
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506851(P2005−506851)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008254
【国際出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【出願人】(000116806)旭化成メディカル株式会社 (133)
【Fターム(参考)】