説明

創薬スクリーニング装置

【課題】試験作業の効率を向上させることができるスクリーニング装置を提供することを目的とする。
【解決手段】画像計測部と該画像計測部に一体として接続されたインキュベータ部と、該インキュベータ部に配置された固定ステージと、該固定ステージ上に前記インキュベータ部のカローセルに格納されたプレートの一つを取り出す第1搬送手段と、前記固定ステージ上に取り出されたプレートを前記画像計測部に配置されたXYステージ上に搬送する第2搬送手段と、前記画像計測部およびインキュベータの動作を制御する制御部を備え、前記第2搬送手段は搬送ユニット支持部に水平に支持された第1搬送アームと第2搬送アームからなり、前記第1,第2搬送アームは固定ステージ上のプレートと前記XYステージ上のプレートを互いに交差して搬送するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学分野における創薬スクリーニングに用いられるスクリーニング装置に関し、詳しくはインキュベータ部に格納されたプレートを画像計測部に搬送するための搬送手段の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生化学物質から特定の対象物に対して特異な効能を有する物質を探索する創薬スクリーニングにおいては、多数の試験対象の検体に対して種々の条件を変化させた系統的な試験が行われる。このため、膨大な数の試料について精度よくかつ効率的に培養や分析などの作業を行うことが求められるため、従来様々な形態の専用のスクリーニング装置が用いられている。
【0003】
これらのスクリーニング装置として、複数の専用装置、たとえば検体や試薬等の液状の試料を収納するプレートを格納するストッカーや、このプレートに検体や試薬を分注する分注装置、分注後のプレートを所定環境下で保管・培養を行うインキュベータなどを組み合わせたものが一般に知られている。
【0004】
図7は特開2002−202315号公報に記載された従来のインキュベータ付き分注装置の概要を示す斜視図(a)、平断面図(b)、側断面図(c)である。
図7(a)において、インキュベータ1は前面に扉3が設けられ、側面にはプレート出し入れ口4が設けられている。プレート出し入れ口4はシャッタ5を備えている。
【0005】
インキュベータ1に隣接して分注装置6が配設されている。分注装置6の基台7上面は分注ステージ8となっており、分注ステージ8には複数のプレート9が載置されている。プレート9は、生化学物質などを含む試料を収容するウェルを多数備えた容器である。分注ステージ8上にはX軸テーブル10が配設されており、X軸テーブル10には多数の分注チップ12が装着された分注ヘッド11が結合されている。
【0006】
X軸テーブル10を駆動することにより分注ヘッド11は分注ステージ8内を移動し、載置されたプレート9のうちの1つから試料を吸引し、他のプレート9へ吐出する分注作業を行う。
【0007】
分注ステージ8上には、プレート搬送機構13が設けられている。プレート搬送機構13はX軸テーブル14、Y軸テーブル15、Zθ軸テーブル16およびZθ軸テーブル16に結合された移載ヘッド17より構成される。プレート搬送機構13を駆動することにより、分注ステージ8上のプレート9を移載ヘッド17によってクランプし、インキュベータ1の内部に搬入しまたインキュベータ1から取り出す出し入れ作業を、プレート出し入れ口4を介して行うことができる。
【0008】
図7(b)において、筐体2は断熱壁を有しており、環境コントロール部である環境コントローラ(図外)によって筐体2の内部の温度や湿度、二酸化炭素濃度などの環境条件を所定の条件に維持するようになっている。
【0009】
筐体2の前面には第1開口部2aが設けられ、第1開口部2aは扉3によって開閉自在となっている。筐体2の側面には第2開口部2bが設けられている。第2開口部2bはプレート9が通過できる大きさとなっており、プレート出し入れ口4として用いられる。
第2開口部2bには上下方向に開閉自在の第2の扉であるシャッタ5が設けられており、上下方向に自動的に開閉する。
【0010】
筐体2内には円形の試料テーブル21が配設されている。試料テーブル21には複数個のプレート9が載置される。試料テーブル21の各載置部21bには位置を特定する番号が時計回りに付されている。
【0011】
図7(c)に示すように、筐体2の内部には複数の試料テーブル21が連結部材26によって上下に連結されて回転棚20となっている。各試料テーブル21には、A、B、C・・の符号が付されており、この符号によって試料テーブル21が特定される。
【0012】
この符号A、B、C・・と各試料テーブル21の載置部21bの番号を組み合わせることにより回転棚20の各載置部21bを特定する番号が設定される。回転棚20はスプライン軸25の廻りに回転運動を行う。昇降プレート28は昇降動作を行う。この昇降動作は、2本のスライドガイド22によってガイドされる。
【0013】
R軸モータ30、Z軸モータ35はそれぞれエンコーダ31,36を備えており、エンコーダ31,36はそれぞれR軸モータ30,Z軸モータ35の回転量を示すパルス信号を発生する。したがってこれらのパルス信号をカウントすることにより、各棚番号が付された載置部21bの現在位置を特定することができ、任意の棚番号の載置部21bに載置されたプレート9を、プレート出し入れ口4に位置させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−202315号公報
【特許文献2】特開平11−287809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来のスクリーニング装置は、上述のストッカーや分注装置などの専用装置をロボットなどの搬送手段を用いて連結し、各装置間でプレートの受け渡しを行わせるようにしたものであった。このためスクリーニング装置全体として広いスペースを要し設備コストが高いという問題点とともに、離隔した個別装置間で何度もプレートの受け渡しを行わねばならないため試験作業の効率が低いという問題点があった。
【0016】
そこで本発明は、省スペースを図ることができて設備コストが低く、しかも試験作業の効率を向上させることができるスクリーニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
画像計測部と該画像計測部に一体として接続されたインキュベータ部と、該インキュベータ部に配置された固定ステージと、該固定ステージ上に前記インキュベータ部のカローセルに格納されたプレートの一つを取り出す第1搬送手段と、前記固定ステージ上に取り出されたプレートを前記画像計測部に配置されたXYステージ上に搬送する第2搬送手段と、前記画像計測部およびインキュベータの動作を制御する制御部を備え、前記第2搬送手段は搬送ユニット支持部に水平に支持された第1搬送アームと第2搬送アームからなり、前記第1,第2搬送アームは固定ステージ上のプレートと前記XYステージ上のプレートを互いに交差して搬送するように構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記第1,第2搬送アームは前記搬送ユニット支持部に沿って上下に移動可能とされ、互いの搬送アーム側に向かって前記プレートを把持するための所定の長さを有するハンドが設けられ、該ハンドは前記搬送アームに沿って水平方向に移動可能に構成したことを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記インキュベータ部内に複数のプレートを層状に載置した移載ユニットと、該移載ユニットに載置されたプレートを前記制御部からの指令により前記カローセルに取込むための第3搬送手段を設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記画像計測部側には前記プレートに配置された複数のサンプルの少なくとも一つに刺激剤を注入するための注入ステージを有する刺激剤注入手段が配置され、前記注入ステージに前記固定ステージに取出されたプレートを搬送するとともに、刺激剤を注入されたプレートを前記XYステージに搬送するための第4搬送手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1及び3記載の発明において、
前記固定ステージ,注入ステージ及びXYステージに移動配置されるプレートの停止位置を記憶するティーチング機能を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば以下のような効果がある。請求項1及び請求項2によれば、画像計測部とインキュベータ部を一体に接続し、インキュベータ部に配置された搬送ユニット支持部に水平に支持された第1搬送アームと第2搬送アームを備え、第1,第2搬送アームを搬送ユニット支持部に沿って上下に移動可能とし、互いの搬送アーム側に向かってプレートを把持するための所定の長さを有するハンドを設け、そのハンドを搬送アームに沿って水平方向に移動可能とし、固定ステージ上のプレートとXYステージ上のプレートを互いに交差して搬送するようにしたので、計測されたサンプルと次回に計測すべきサンプルを搬送するための時間を少なくすることができ、省スペースを図り設備コストが低く、試験作業の効率を向上させることができる。
【0023】
請求項3によれば、制御部からの指令により層状に載置した移載ユニットからカローセルプレートを取込むための第3手段を設けたので遅滞なく試験作業を実行することができる。
【0024】
請求項4によれば、注入ステージを有する刺激剤注入手段と、注入ステージに固定ステージに取出されたプレートを搬送し、刺激剤を注入されたプレートをXYステージに搬送するための第4搬送手段を備えたので、大量のサンプルを自動的に計測可能となり刺激剤を注入した直後の変化を観察することができる。
【0025】
請求項5によれば、固定ステージ,注入ステージ及びXYステージに移動配置されるプレートの停止位置を記憶するティーチング機能を設けたので、装置内の各機器間の位置の微調整を不要とし、装置の組立、メンテナンスを簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例を示した構成図である。
【図2】第2搬送手段の平面図及び側面図である。
【図3】他の実施例を示す構成図である。
【図4】本発明に用いるインキュベータ部を構成するチャンバの要部構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示すチャンバの筐体を除去した状態の要部構成を示す斜視図である。
【図6】プレート出し入れ口の詳細を示す図である。
【図7】従来例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1および図2は本発明の一実施例を示した構成図である。
図1において、インキュベータ部51と画像計測部52は一体として形成され、これらの装置は制御部53により制御される。インキュベータ部は図4に示すインキュベータと同等の機能を有して形成されている。
【0028】
インキュベータ部を構成するチャンバ110は、図では8角形の筒状に形成され、上部、下部及び外周に配置された加熱部材(例えばラバーヒータ)111により加熱される。そして、チャンバ内に配置された温度センサ105、湿度センサ106、CO2センサ107により監視されて生細胞にとって理想的な所定の雰囲気に維持されている。
【0029】
なお、湿度についてはチャンバ内に水槽を設置し、水槽の水の蒸発によって100%に近い湿度を保つ。CO2ガスについては、電磁弁を介して外部より高純度のCO2を導入して、CO2ガスセンサで濃度を測定し、それに従って電磁弁を開閉する。
インキュベータ部には、タッチパネルPC108が備えてあり、このタッチパネルPCにより、温度、湿度、CO2ガス濃度の設定が行われる。
【0030】
101はチャンバの前面に配置された開閉扉であり、この扉を開いてチャンバ内に配置されたカローセル102に複数のサンプルチップ55が配置されたプレート54が載置される。
カローセル102は複数個あり、各カローセルにはプレート54を格納する段が複数設けてある。
【0031】
画像計測部2にはプレートに配置されたサンプルを移動させるXYステージ201、サンプルを拡大表示するオートフォーカス付き顕微鏡202、マイクロレンズ付きピンホールアレイディスク204、リレーレンズ205等からなる多色共焦点スキャナ203および複数台のカメラが格納されている。
【0032】
図2は第2搬送手段104の平面図(a)及び側面図(b)を示す図である。なお、インキュベータ部51と画像計測部52は要部のみを示している。
図2(a,b)において300は搬送ユニット支持部であり、矩形状に形成されてインキュベータ部51側に固定されている。301aは第1搬送アーム,301bは第2搬送アームであり、図2(a)に示すようにそれぞれのアームの中央付近が搬送ユニット支持部300の両端付近に所定の間隔(e)を隔てて配置されている。
【0033】
302a,302bは一端が第1,第2搬送アームに取付けられたハンドである。これらのハンドは第1,第2搬送アーム301a,301bに沿って水平方向に直角に、かつ、向かい合って取付けられている。また、これらの第1,第2ハンドの他端にはプレート54a,54bをそれぞれ把持するための把持手段(図示省略)が形成されている。
【0034】
そして、第1,第2搬送アーム301a,301bは搬送ユニット支持部300に支持された状態で垂直方向に移動可能に取付けられ、第1,第2ハンドは第1,第2搬送アームに沿って移動可能に取付けられている。
なお、図2(b)に示すように第1,第2ハンドを移動させるに際しては第1,第2搬送アームはハンド同士が衝突しないように所定の空間Bを有して行うものとする。
【0035】
303はインキュベータ部51側のプレート出し入れ口の近傍に配置され取出されたプレートを載置する固定ステージ、201は画像計測部側に配置されプレートに収納されたサンプルを所定の場所に移動させるためのたXYステージである。
【0036】
図1において、プレート54はカローセル102の回転により、チャンバ110の側面に形成されたプレート出し入れ口103まで運ばれ、矢印A方向に駆動される第1搬送手段(点線で示す)401により固定ステージ303上に載置される。
【0037】
図2において、固定ステージ303上に載置されたプレート54bは例えば第1ハンド302aに把持されて所定の高さに持ち上げられる。その間に第2ハンド302bは測定が終了してXYステージ201上に載置されたプレート54aを把持して第1ハンド302aの高さと異なる所定(ハンド同士が交差した際に衝突しない)の高さに持ち上げられる。
【0038】
ハンド同士がそれぞれの搬送アームに沿って水平方向に移動して固定ステージ303上に測定が終了したプレート54aが載置され、XYステージ201上に測定すべきプレート54bが載置される。
そしてXYステージ上の測定すべきプレート54bが測定されている間に固定ステージ303上のプレート54aは矢印A方向に駆動される第1搬送手段(点線で示す)401によりチャンバ110内の所定のカローセルに搬送され、その後、新たなプレートが固定ステージ303上に載置される。
【0039】
上述のように2本のアームとハンドを持つメリットは、搬送のスループットを上げられることにある。すなわち、複数のサンプルプレートを順次測定する際、例えば、第1のアームとハンドで次に測定するプレートを、第2のアームとハンドで現在測定終了したプレートを把持し、プレートを引き上げた後に、水平方向に交差(クロス)移動して、プレートを交換する。このような動作により、アームが1本しかない機器に比べて、装置のスループットを格段に上げることができる。
【0040】
ところでこのような創薬スクリーニング装置においては、プレートにあるサンプル(細胞)を長時間に渡ってトラッキング(追跡)解析などをするため、プレートをインキュベータ部51から取出して画像計測部52に送り、画像計測部で測定してからインキュベータ部に戻す動作が繰返し行われる。
【0041】
従って細胞のトラッキングを確実にするため、サンプルを搬送する際の繰り返し位置精度を確保する必要がある。この位置精度の確保は、画像計測部にあるXYステージ201、インキュベータ部にある固定ステージ303、および2つのハンドがプレートをXYステージ201、固定ステージ303にセットする時の停止位置の調整で達成する。
【0042】
本発明では、第1,第2ハンドの停止位置に合わせて、XYステージ201の位置をティーチングする方式を用いる。具体的には、可動機構を持たない固定ステージ303を基準に、可動機構を持つハンドの停止位置を調整し、固定ステージ303に合わせる。
次に、第1,第2アームがプレートを搬送して、XYステージ201の上でプレートを放した際の位置にあわせて、XYステージ201の受け取る停止位置を記憶し、その停止位置を決定する。
【0043】
このようなティーチング機能を持たせることによって機構的にステージやハンドの位置を微調することなく、組立時間を大幅に短縮できる。なお、機械の経時的な変化があった場合やメンテナンスの際にはXYステージのティーチングを再度行えばよい(インキュベータ部にとっては、プレート54をXY方向に移動する必要はないため、固定ステージ303は通常、XY方向の可動機構はない)。
【0044】
図3は図1に示す装置にプレート移載ユニットとこの移載ユニットに載置された複数のプレートをインキュベータとの間で出し入れする第3搬送手段402および第4搬送手段403を含む薬剤注入手段を追加した他の実施例を示す構成説明図である。
この実施例においては、プレート移載ユニット120はインキュベータ51の背面側(開閉扉101の反対側)に設けられる。
【0045】
そして、第3搬送手段(点線で示す)402によりプレート取出し口(図示省略)を介して矢印C方向にプレートを出し入れする。どのタイミングでどのカローセルに出し入れするかは制御手段53の指令によって行われる。
【0046】
薬剤注入手段214は画像計測部52に設けられる。薬剤注入手段を構成するディスペンサ210はディスポーザブル型で、チップ213はチップストッカ211から補充される。具体的には、装置背面からオペレータが段積みになっているチップ213をチップストッカにセットする。
【0047】
ディスペンサ210にはXYZ方向に移動する機構(図示省略)が設けられており、XYZ機構により、ディスペンサ先端にチップ213を装着する。次に、注入ステージ212から、化合物などの刺激剤を吸引し、第4搬送手段403によりXYステージ201上にあるプレート54まで運び、化合物を滴下する。その後、プレート54にある細胞の変化を画像に取り込む。前記動作を繰返し行い、プレートの全てのサンプルについて画像取込み実行する。
【0048】
なお、インキュベータ部51にプレート移載ユニット120を設置するに際しては。オペレータは装置背面から段積みになっている複数枚のプレートをプレート移載ユニットにセットする。その後制御部からの指令によりプレート移載ユニット120は下から順に一枚ずつプレートを取り出し、チャンバ内のカローセル102に移送される。
【0049】
プレート移載ユニット120にセットするのは細胞サンプルプレートでも、化合物プレートでも良い。例えば、細胞プレートをXYステージ201に、化合物プレートを注入ステージ212に搬送して、ディスペンサ210を用いて、化合物プレートから細胞プレートに化合物を滴下して、個々のサンプルの細胞の変化の画像を計測する。
【0050】
上述のプレート移載ユニット120および薬剤注入手段を付加することにより、大量なサンプルを自動で測定可能となり、化合物を滴下してからの直後の変化を観察できるメリットが得られる。
【0051】
図4、図5、図6はインキュベータ部を構成するチャンバの概要とプレート出し入れ口の構成を示す斜視図である。なお、図1、図3ではチャンバを8角形で示したが、図4、図5では矩形として表示し、チャンバ110a内に4個の試料テーブル21aを収納した状態を示している。
【0052】
チャンバ110aはラバーヒータ111と断熱材412で構成され、チャンバの上部には回転棚20aを制御部53(図3参照)からの指令に基づいて矢印D方向(図5参照)に回転させるための回転ユニット413が設けられている。なお、チャンバ110a内は温度、湿度、CO2ガス濃度などの環境管理が行われているものとする。
【0053】
図4、図5において、回転棚20aは所定の間隔を隔てて縦方向に配置された複数層の試料テーブル21aで構成され、試料テーブ21a上にはそれぞれプレート54が載置されている。
回転棚20aは回転ユニット413により回転され、4個の回転棚のうちのいずれか一つがプレート出し入れ口103(図1参照)に位置したとき、回転棚20aは多段扉ブロック414と向き合った状態となる。
ガイドレール405はチャンバ110aの側面に形成された長方形状の孔(図示せず)の両端に沿って配置されている。
【0054】
図6は扉411とガイドレールの一部詳細を示す拡大図である。
図6において、ガイドレール405は断面が凹状に形成され、凹部405aを形成する外側の凸部405bは内側の凸部405cより低く形成されている。複数の扉411には両端付近にガイドレール側に向かって凸部411aが形成されている。扉411は図4、図5に示すように例えば16個(A〜R)が配置されている。
【0055】
扉411の凸部411aはガイドレールの凹部405aに挿入され、挿入された状態で隙間410が生じた状態となっている。この隙間410にはチャンバ内の気体が侵入するが、扉の左右に形成された庇411bとガイドレールの外側の凸部405bとの間にシール部材406を配置することによりチャンバ内の環境管理された気体が外部に漏れない構成とされている。
【0056】
蓋411cには上辺に上部切欠き411e、下辺に下部切欠き411fが形成されており、扉411のそれぞれにねじ411dにより取り付けられている。上部切欠き411eと下部切欠き411fはそれぞれが入り組んだ状態で取り付けられ、チャンバ内の気体が外部に漏れない構成とされている。扉411の下辺の両端付近には爪溝408が形成されている。
【0057】
図4、図5に示すように、多段扉ブロック414の下方には平行に直立した2本の支持軸407aを有するエアシリンダ407が配置されている。扉411の両端付近(プレートの横幅Sより外側)にはこの支持軸407aが貫通する貫通孔(図示せず)が形成されており、通常は複数の扉411(A〜R)はエアシリンダ407をオンにすることにより上方に持ち上げられてチャンバ110aの側面に形成された長方形状の孔の全面を覆った状態となって試料テーブルに載置されたプレート54の出入りを阻止している。
【0058】
上述の構成において、制御部53(図1参照)の指令に基づいて、例えば扉411のMに対応するプレートの出し入れをしようとした場合、第1搬送手段(図1参照)401を構成するロボットの爪(図示せず)が扉Mより一つ上段に位置する扉Lの爪溝に挿入される。
【0059】
その状態でエアシリンダ407をオフにするとA〜Lの扉は現状を維持するが、M〜Rまでの扉が一段分下方に下落する。その結果、扉Mが位置していた部分が開となって対応するプレートの出し入れが可能となる。第1搬送手段を構成するロボット(図示せず)はプレートを取出し、図2に示す固定ステージ303に搬送する。プレートを取出した後はエアシリンダをオンにして扉M〜Rを一段分押し上げて初期の状態に戻す。
【0060】
上述の構成によれば、所望の試料テーブルに載置されたプレートに対応する扉のみを開いてプレートの出し入れができるのでチャンバ内の温度や湿度などの変化を最小限に留めることができる。なお、一定周期ごとに回転棚20aを回転させることによりチャンバ内の気体を攪拌しプレート54の環境を一定に保つことも可能である。
【0061】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。実施例ではチャンバの形状を8角形および矩形として示したが円形であっても良い。また、チャンバを加熱する過熱手段はラバーヒータに限ることなく、他の加熱手段であってもよい。
【0062】
また、多段扉ブロック414を構成する扉(A〜R)のそれぞれの側面にエアシリンダを埋め込み制御部53(図1参照)の指令に基づいた位置のエアシリンダを動作させて扉を開閉する構成にしてもよい(実施例で示した自重落下方式よりも開閉の信頼性が向上する)。
また、多段扉ブロック414の下側に扉(A〜R)の重量を支えるばね又はエアーばねを設け、制御部の指令に基づいた位置の扉を上下に開くようにしてもよい。
また、扉(A〜R)にヒータを埋め込むことにより温度分布改善と結露の防止を図ることも可能である。
【0063】
またプレート移載ユニットを開閉扉の背面に配置したが側面であってもよい。また、カメラは3台として表示したが1台以上であれば何台でも良い。従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0064】
20 回転棚
21 試料テーブル
51 インキュベータ部
52 画像計測部
53 制御部(計測ワークステーション)
54 プレート
55 サンプル
101 開閉扉
102 カローセル
103 プレート出し入れ口
104 第2搬送手段
105 温度センサ
106 湿度センサ
107 CO2センサ
108 タッチパネルPC
110 チャンバ
111 ラバーヒータ
120 プレート移載ユニット
201 XYステージ
202 オートフォーカス付き顕微鏡
203 多色共焦点スキャナ
204 マイクロレンズ付きピンホールアレイディスク
205 リレーレンズ
210 ディスペンサ
211 チップストッカ
212 注入ステージ
300 搬送ユニット支持部
301a 第1搬送アーム
301b 第2搬送アーム
302a 第1ハンド
302b 第2ハンド
303 固定ステージ
401 第1搬送手段
402 第3搬送手段
403 第4搬送手段
405 ガイドレール
405a 凹部
405b 外側の凸部
405c 内側の凸部
406 シール部材
407 エアシリンダ
407a 支持軸
408 爪溝
409 シール部材
410 隙間
411 扉
411a 凸部
411b 庇
411c 蓋
411d ねじ
411e 上部切欠き
411f 下部切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像計測部と該画像計測部に一体として接続されたインキュベータ部と、該インキュベータ部に配置された固定ステージと、該固定ステージ上に前記インキュベータ部のカローセルに格納されたプレートの一つを取り出す第1搬送手段と、前記固定ステージ上に取り出されたプレートを前記画像計測部に配置されたXYステージ上に搬送する第2搬送手段と、前記画像計測部およびインキュベータの動作を制御する制御部を備え、前記第2搬送手段は搬送ユニット支持部に水平に支持された第1搬送アームと第2搬送アームからなり、前記第1,第2搬送アームは固定ステージ上のプレートと前記XYステージ上のプレートを互いに交差して搬送するように構成したことを特徴とする創薬スクリーニング装置。
【請求項2】
前記第1,第2搬送アームは前記搬送ユニット支持部に沿って上下に移動可能とされ、互いの搬送アーム側に向かって前記プレートを把持するための所定の長さを有するハンドが設けられ、該ハンドは前記搬送アームに沿って水平方向に移動可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の創薬スクリーニング装置。
【請求項3】
前記インキュベータ部内に複数のプレートを層状に載置した移載ユニットと、該移載ユニットに載置されたプレートを前記制御部からの指令により前記カローセルに取込むための第3搬送手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の創薬スクリーニング装置。
【請求項4】
前記画像計測部側には前記プレートに配置された複数のサンプルの少なくとも一つに刺激剤を注入するための注入ステージを有する刺激剤注入手段が配置され、前記注入ステージに前記固定ステージに取出されたプレートを搬送するとともに、刺激剤を注入されたプレートを前記XYステージに搬送するための第4搬送手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の創薬スクリーニング装置。
【請求項5】
前記固定ステージ,注入ステージ及びXYステージに移動配置されるプレートの停止位置を記憶するティーチング機能を設けたことを特徴とする請求項1又は4記載の創薬スクリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−210237(P2010−210237A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50065(P2009−50065)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】