創薬用マイクロチューブピッキング装置
【課題】爪部材が摩耗することなく、マイクロチューブのラックへの挿入位置がずれることがなく、確実にマイクロチューブのピッキングが行える創薬用マイクロチューブピッキング装置を提供する。
【解決手段】ピッキング部材１００が、開口面が多角形であるマイクロチューブ収容穴１５０を有すると共に、マイクロチューブをマイクロチューブ収容穴１５０の隣り合う２面に押し付け固定する弾性力を有する爪部材１３０、１４０を有する創薬用マイクロチューブピッキング装置によって上記の課題を解決する。
【解決手段】ピッキング部材１００が、開口面が多角形であるマイクロチューブ収容穴１５０を有すると共に、マイクロチューブをマイクロチューブ収容穴１５０の隣り合う２面に押し付け固定する弾性力を有する爪部材１３０、１４０を有する創薬用マイクロチューブピッキング装置によって上記の課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、創薬研究等の分野において、高集積密度で保管ラックに収容されたマイクロチューブを出し入れするのに適した創薬用マイクロチューブピッキング装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、創薬研究等の分野においては、試料を溶解した溶液をマイクロチューブと呼ばれる円筒状容器に封入し、このマイクロチューブを格子状に区画された保管ラックに複数本、例えば、８行１２列で９６個に区画された保管ラック（以下、「９６チューブラック」という）に垂直に並び立てて収容し、保管や搬送を行っていた。また、９６チューブラックと同じ大きさの保管ラックで、より小さいマイクロチューブを収容するために、１６行２４列で３８４個の総区画数を有する保管ラック（以下、「３８４チューブラック」という）も知られている。
【０００３】
このような９６チューブラックや３８４チューブラックに対してマイクロチューブの出し入れを行う創薬用マイクロチューブピッキング装置として、図８に示したような創薬用マイクロチューブピッキング装置５００が知られている。この創薬用マイクロチューブピッキング装置５００は、保管ラック５３０に、マイクロチューブ５１０の下部形状に嵌合し、マイクロチューブ５１０を支持する挿通孔５３２が形成されており、保管ラック５３０の挿通孔５３２から目的のマイクロチューブ５１０の底面に当接しながらマイクロチューブ５１０を真上に突き上げる突き上げ部材５４０が保管ラック５３０よりも下方に存在し、突き上げ部材５４０によって突き上げられたマイクロチューブ５１０が周りのマイクロチューブを一緒に持ち上げないように周りのマイクロチューブ５１０の頭部上面に当接させる共上げ防止部材５６０がマイクロチューブ５１０よりも上方に存在し、突き上げられたマイクロチューブ５１０の上部寸法よりも若干小さな空間径を有し、マイクロチューブ５１０に対する突き上げ部材５４０による突き上げ動作に呼応して進入してきたマイクロチューブ５１０を可撓性の爪部材５２２が拡幅することにより挟持するピッキング部材５２０を有しており、ピッキング部材５２０によって挟持されたマイクロチューブ５１０を突き落とすための突き落とし部材５５０とを有する構成をしている。そして、可撓性の爪部材５２２の材質としては、マイクロチューブ５１０と同様に非常に低温でも十分な弾力性を有するポリプロピレンのようなプラスチックが用いられていた。
【特許文献１】特開２００６−２１４９１９号公報（図１）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
ところが、３８４チューブラックと共に使用されるマイクロチューブ５１０では、マイクロチューブ上部の開口部にアルミ箔を融着して蓋をすることが一般的になり、そのアルミ箔がマイクロチューブの開口壁より少しはみ出るようになった。そのため、プラスチックからなる爪部材５２２では、摩耗が発生するという課題が指摘されていた。
【０００５】
また、一対の爪部材５２２が、マイクロチューブ５１０の両側方にあって撓むため、それぞれの爪部材５２２の撓み量にアンバランスが生じ、マイクロチューブ５１０の傾き及び中心位置が一定せず、マイクロチューブ５１０の挿入位置がずれるため、マイクロチューブ５１０を保管ラック５３０に挿入できないことが発生する。
【０００６】
さらに、爪部材５２２の挟持方向は、対向する２面であるので、それと直交する方向にマイクロチューブ５１０が傾くことがあり、その結果、マイクロチューブ５１０を保管ラ
ック５３０に挿入できないことが発生する。
【０００７】
そこで、本発明の目的は、爪部材が摩耗することなく、マイクロチューブの保管ラックへの挿入位置がずれることがなく、確実にマイクロチューブのピッキングが行える創薬用マイクロチューブピッキング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
請求項１に係る発明は、創薬用試料を封入するマイクロチューブを行列状に複数本縦立収容する保管ラック内から目的のマイクロチューブを１本取り出したり、保管ラック内の目的の収容位置にマイクロチューブを収納する際に前記マイクロチューブを把持するピッキング部材を有する創薬用マイクロチューブピッキング装置において、前記ピッキング部材が、開口面が多角形であるマイクロチューブ収容穴を有すると共に、前記マイクロチューブをマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に押し付け固定する弾性力を有する爪部材を有することによって、前記の課題を解決するものである。
【０００９】
請求項２に係る発明は、請求項１に係る発明の構成に加えて、マイクロチューブ収容穴の開口面が四角形であるとともに、爪部材がマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に取り付けられていることによって、前記の課題をさらに解決するものである。
【００１０】
請求項３に係る発明は、請求項１又は請求項２に係る発明の構成に加えて、爪部材が金属で形成されていることによって、前記の課題をさらに解決するものである。
【００１１】
なお、爪部材に用いられる金属としては、十分な弾性力を有するものであれば、特に限定されることはないが、安価で加工が容易な鋼鉄が好適に使用される。
【発明の効果】
【００１２】
請求項１に係る発明によれば、創薬用試料を封入するマイクロチューブを行列状に複数本縦立収容する保管ラック内から目的のマイクロチューブを１本取り出したり、保管ラック内の目的の収容位置にマイクロチューブを収納する際に前記マイクロチューブを把持するピッキング部材を有する創薬用マイクロチューブピッキング装置において、前記ピッキング部材が、開口面が多角形であるマイクロチューブ収容穴を有すると共に、前記マイクロチューブをマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に押し付け固定する弾性力を有する少なくとも１つの爪部材を有することによって、マイクロチューブ収容穴の基準面となる隣り合う２面にマイクロチューブを押し当てて位置決めしているので、マイクロチューブが傾くことなく、マイクロチューブ収容穴に対して同じ位置に把持される。さらに、マイクロチューブの把持位置及び把持姿勢が一定であるため、安定して保管ラックに挿入することができる。
【００１３】
請求項２に係る発明によれば、請求項１に係る発明が奏する効果に加えて、マイクロチューブ収容穴の開口面が四角形であるとともに、爪部材がマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に取り付けられていることによって、２つの爪部材がそれぞれマイクロチューブ収容穴の基準面となる隣り合う２面と対向し、作用反作用の関係により爪部材によって付勢された力と同じ大きさの力が基準面からマイクロチューブに加わり、把持されるマイクロチューブに対して、四方から均等な力が付勢されるので、マイクロチューブをより安定して保管ラックに挿入することができる。
【００１４】
請求項３に係る発明によれば、請求項１又は請求項２に係る発明が奏する効果に加えて、爪部材が金属で形成されていることによって、マイクロチューブの開口部を覆ったアルミ箔の端と摺動した場合であっても摩耗することがないので、耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
本発明は、創薬用試料を封入するマイクロチューブを行列状に複数本縦立収容する保管ラック内から目的のマイクロチューブを１本取り出したり、保管ラック内の目的の収容位置にマイクロチューブを収納する際にマイクロチューブを把持するピッキング部材を有する創薬用マイクロチューブピッキング装置において、ピッキング部材が、開口面が多角形であるマイクロチューブ収容穴を有すると共に、マイクロチューブをマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に押し付け固定する弾性力を有する少なくとも１つの爪部材を有するものであって、爪部材が摩耗することなく、マイクロチューブのラックへの挿入位置がずれることがなく、確実にマイクロチューブのピッキングが行える創薬用マイクロチューブピッキング装置であれば、ピッキング装置やその他の構成などの具体的形態は、如何なるものであっても構わない。
【００１６】
以下、本発明の実施の形態の一例である実施例１について、図１乃至図６に基づいて説明する。
【実施例１】
【００１７】
図１は、本発明の創薬用マイクロチューブピッキング装置に使用されるピッキング部材１００の構成を示す斜視図であり、図２は、図１に示したピッキング部材１００を矢視II方向から見たときの斜視図である。図３は、図１に示したピッキング部材１００を矢視III方向から見たときの正面図である。図４は、図３に示したピッキング部材１００を矢視IV方向から見たときの側面図であり、図５は、図３に示したピッキング部材１００を矢視V方向から見たときの上面図であり、図６は、図３に示したピッキング部材１００を矢視VI方向から見たときの下面図である。
【００１８】
ピッキング部材１００は、図１及び図２に示したように、断面Ｌ字形状の基準爪部材１１０と鋼鉄により板バネとして形成された２つの爪部材１３０、１４０を支持する断面Ｌ字形状の爪支持部材１２０が、組み合わされてなる開口面が正方形の直方体空間であるマイクロチューブ収容穴１５０を有している。
【００１９】
爪部材１４０は、図３に隠れ線で示したように先端が円形に屈曲された先端円形部位１４０ａを有している。爪部材１３０も図４に隠れ線で示したように爪部材１４０と同じ形状を有している。そして、これらの爪部材１３０、１４０の先端円形部位１３０ａ、１４０ａが、図１に示したように、爪支持部材１２０の爪部材１３０、１４０を固着した部分の下方に設けた挿通穴１２０ａ、１２０ｂからマイクロチューブ収容穴１５０内に突出している。このような構成にしたことによって、マイクロチューブがマイクロチューブ収容穴１５０に挿入されるときと、マイクロチューブがマイクロチューブ収容穴１５０から押し出されるときにマイクロチューブを、スムーズに摺動させることができる。
【００２０】
本実施例では、マイクロチューブの水平断面形状が、４．３ｍｍ角の正方形であるので、マイクロチューブ収容穴１５０の開口面の大きさを図６に示したようにＬ１＝Ｌ２＝４．４ｍｍ角の正方形としている。そして、図５に示したように、爪部材１３０、１４０の先端円形部位１３０ａ、１４０ａをマイクロチューブ収納穴１５０の内側にＤ＝０．５ｍｍ突出させている。すなわち、マイクロチューブをピッキング部材１００の下端の開口部から創薬用マイクロチューブピッキング装置の突き上げ部材による突き上げ動作に呼応してマイクロチューブ収納穴１５０に進入させた場合、先端円形部位１３０ａ、１４０ａが、それぞれ後方に０．４ｍｍ後退し、マイクロチューブを基準爪部材１１０のマイクロチューブ収納穴１５０を構成する直角に交わる２面の基準面１１０ａ、１１０ｂに押し付けることによって、マイクロチューブが傾いたり落下したりすることなく、正確な位置に保持することができる。
【００２１】
さらに、マイクロチューブ収納穴１５０のマイクロチューブが出入りする部分には、図６に示したようにテーパ部位１２０Ｃ、１３０ｂが形成されており、マイクロチューブの出入りをより円滑にしている。
【００２２】
なお、本発明の創薬用マイクロチューブピッキング装置において、ピッキング部材以外の構造は、前述した創薬用マイクロチューブピッキング装置の構成と同じなので説明は省略する。また、本実施例においては、金属製の板バネを利用しているが、スペースに余裕があれば、コイルバネを用いて、平板を介して、押し付けることも可能である。
【００２３】
本発明の実施の別の形態である実施例２について、図７に基づいて説明する。
【実施例２】
【００２４】
図７は、実施例２におけるピッキング部材２００の上面図である。このピッキング部材２００は、円筒状のマイクロチューブ２５０を対象としており、６０度で隣り合う２面を基準面２１０、２２０としている。そして、１方向からバネ部材２３０でマイクロチューブ２５０を基準面２１０、２２０に押し付けることによってマイクロチューブ２５０を把持している。この場合も、実施例１と同様にマイクロチューブが傾くことなく、正確な位置に保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【００２５】
本発明による創薬用マイクロチューブピッキング装置によれば、これまで困難とされてきた３８４チューブラックに収納されたマイクロチューブの確実な取り出し及び収納動作を実現するのみならず、その技術的思想は、マイクロチューブ以外のチューブ形状の容器に対しても適用できるものであって、その産業上の利用可能性は、きわめて高い。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】実施例１による創薬用マイクロチューブピッキング装置のピッキング部材の斜視図。
【図２】図１のピッキング部材を矢視II方向から見たときの斜視図。
【図３】図１のピッキング部材を矢視III方向から見たときの側面図。
【図４】図３のピッキング部材を矢視IV方向から見たときの側面図。
【図５】図３のピッキング部材を矢視V方向から見たときの上面図。
【図６】図３のピッキング部材を矢視VI方向から見たときの下面図。
【図７】実施例２による創薬用マイクロチューブピッキング装置のピッキング部材の上面図
【図８】従来の創薬用マイクロチューブピッキング装置を説明する概念図。
【符号の説明】
【００２７】
１００、２００ ・・・ ピッキング部材
１１０ ・・・ 基準爪部材
１１０ａ、１１０ｂ ・・・ 基準面
１２０ ・・・ 爪支持部材
１２０ａ、１２０ｂ ・・・ 挿通穴
１２０ｃ、１３０ｂ ・・・ テーパ部位
１３０、１４０ ・・・ 爪部材
１３０ａ、１４０ａ ・・・ 先端円形部位
１５０ ・・・ マイクロチューブ収容穴
２１０、２２０ ・・・ 基準面
２３０ ・・・ バネ部材
２５０ ・・・ マイクロチューブ
５００ ・・・ 創薬用マイクロチューブピッキング装置
５１０ ・・・ マイクロチューブ
５２０ ・・・ ピッキング部材
５２２ ・・・ 爪部材
５３０ ・・・ 保管ラック
５３２ ・・・ 挿通孔
５４０ ・・・ 突き上げ部材
５５０ ・・・ 突き落とし部材
５６０ ・・・ 共上げ防止部材
【技術分野】
【０００１】
本発明は、創薬研究等の分野において、高集積密度で保管ラックに収容されたマイクロチューブを出し入れするのに適した創薬用マイクロチューブピッキング装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、創薬研究等の分野においては、試料を溶解した溶液をマイクロチューブと呼ばれる円筒状容器に封入し、このマイクロチューブを格子状に区画された保管ラックに複数本、例えば、８行１２列で９６個に区画された保管ラック（以下、「９６チューブラック」という）に垂直に並び立てて収容し、保管や搬送を行っていた。また、９６チューブラックと同じ大きさの保管ラックで、より小さいマイクロチューブを収容するために、１６行２４列で３８４個の総区画数を有する保管ラック（以下、「３８４チューブラック」という）も知られている。
【０００３】
このような９６チューブラックや３８４チューブラックに対してマイクロチューブの出し入れを行う創薬用マイクロチューブピッキング装置として、図８に示したような創薬用マイクロチューブピッキング装置５００が知られている。この創薬用マイクロチューブピッキング装置５００は、保管ラック５３０に、マイクロチューブ５１０の下部形状に嵌合し、マイクロチューブ５１０を支持する挿通孔５３２が形成されており、保管ラック５３０の挿通孔５３２から目的のマイクロチューブ５１０の底面に当接しながらマイクロチューブ５１０を真上に突き上げる突き上げ部材５４０が保管ラック５３０よりも下方に存在し、突き上げ部材５４０によって突き上げられたマイクロチューブ５１０が周りのマイクロチューブを一緒に持ち上げないように周りのマイクロチューブ５１０の頭部上面に当接させる共上げ防止部材５６０がマイクロチューブ５１０よりも上方に存在し、突き上げられたマイクロチューブ５１０の上部寸法よりも若干小さな空間径を有し、マイクロチューブ５１０に対する突き上げ部材５４０による突き上げ動作に呼応して進入してきたマイクロチューブ５１０を可撓性の爪部材５２２が拡幅することにより挟持するピッキング部材５２０を有しており、ピッキング部材５２０によって挟持されたマイクロチューブ５１０を突き落とすための突き落とし部材５５０とを有する構成をしている。そして、可撓性の爪部材５２２の材質としては、マイクロチューブ５１０と同様に非常に低温でも十分な弾力性を有するポリプロピレンのようなプラスチックが用いられていた。
【特許文献１】特開２００６−２１４９１９号公報（図１）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
ところが、３８４チューブラックと共に使用されるマイクロチューブ５１０では、マイクロチューブ上部の開口部にアルミ箔を融着して蓋をすることが一般的になり、そのアルミ箔がマイクロチューブの開口壁より少しはみ出るようになった。そのため、プラスチックからなる爪部材５２２では、摩耗が発生するという課題が指摘されていた。
【０００５】
また、一対の爪部材５２２が、マイクロチューブ５１０の両側方にあって撓むため、それぞれの爪部材５２２の撓み量にアンバランスが生じ、マイクロチューブ５１０の傾き及び中心位置が一定せず、マイクロチューブ５１０の挿入位置がずれるため、マイクロチューブ５１０を保管ラック５３０に挿入できないことが発生する。
【０００６】
さらに、爪部材５２２の挟持方向は、対向する２面であるので、それと直交する方向にマイクロチューブ５１０が傾くことがあり、その結果、マイクロチューブ５１０を保管ラ
ック５３０に挿入できないことが発生する。
【０００７】
そこで、本発明の目的は、爪部材が摩耗することなく、マイクロチューブの保管ラックへの挿入位置がずれることがなく、確実にマイクロチューブのピッキングが行える創薬用マイクロチューブピッキング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
請求項１に係る発明は、創薬用試料を封入するマイクロチューブを行列状に複数本縦立収容する保管ラック内から目的のマイクロチューブを１本取り出したり、保管ラック内の目的の収容位置にマイクロチューブを収納する際に前記マイクロチューブを把持するピッキング部材を有する創薬用マイクロチューブピッキング装置において、前記ピッキング部材が、開口面が多角形であるマイクロチューブ収容穴を有すると共に、前記マイクロチューブをマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に押し付け固定する弾性力を有する爪部材を有することによって、前記の課題を解決するものである。
【０００９】
請求項２に係る発明は、請求項１に係る発明の構成に加えて、マイクロチューブ収容穴の開口面が四角形であるとともに、爪部材がマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に取り付けられていることによって、前記の課題をさらに解決するものである。
【００１０】
請求項３に係る発明は、請求項１又は請求項２に係る発明の構成に加えて、爪部材が金属で形成されていることによって、前記の課題をさらに解決するものである。
【００１１】
なお、爪部材に用いられる金属としては、十分な弾性力を有するものであれば、特に限定されることはないが、安価で加工が容易な鋼鉄が好適に使用される。
【発明の効果】
【００１２】
請求項１に係る発明によれば、創薬用試料を封入するマイクロチューブを行列状に複数本縦立収容する保管ラック内から目的のマイクロチューブを１本取り出したり、保管ラック内の目的の収容位置にマイクロチューブを収納する際に前記マイクロチューブを把持するピッキング部材を有する創薬用マイクロチューブピッキング装置において、前記ピッキング部材が、開口面が多角形であるマイクロチューブ収容穴を有すると共に、前記マイクロチューブをマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に押し付け固定する弾性力を有する少なくとも１つの爪部材を有することによって、マイクロチューブ収容穴の基準面となる隣り合う２面にマイクロチューブを押し当てて位置決めしているので、マイクロチューブが傾くことなく、マイクロチューブ収容穴に対して同じ位置に把持される。さらに、マイクロチューブの把持位置及び把持姿勢が一定であるため、安定して保管ラックに挿入することができる。
【００１３】
請求項２に係る発明によれば、請求項１に係る発明が奏する効果に加えて、マイクロチューブ収容穴の開口面が四角形であるとともに、爪部材がマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に取り付けられていることによって、２つの爪部材がそれぞれマイクロチューブ収容穴の基準面となる隣り合う２面と対向し、作用反作用の関係により爪部材によって付勢された力と同じ大きさの力が基準面からマイクロチューブに加わり、把持されるマイクロチューブに対して、四方から均等な力が付勢されるので、マイクロチューブをより安定して保管ラックに挿入することができる。
【００１４】
請求項３に係る発明によれば、請求項１又は請求項２に係る発明が奏する効果に加えて、爪部材が金属で形成されていることによって、マイクロチューブの開口部を覆ったアルミ箔の端と摺動した場合であっても摩耗することがないので、耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
本発明は、創薬用試料を封入するマイクロチューブを行列状に複数本縦立収容する保管ラック内から目的のマイクロチューブを１本取り出したり、保管ラック内の目的の収容位置にマイクロチューブを収納する際にマイクロチューブを把持するピッキング部材を有する創薬用マイクロチューブピッキング装置において、ピッキング部材が、開口面が多角形であるマイクロチューブ収容穴を有すると共に、マイクロチューブをマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に押し付け固定する弾性力を有する少なくとも１つの爪部材を有するものであって、爪部材が摩耗することなく、マイクロチューブのラックへの挿入位置がずれることがなく、確実にマイクロチューブのピッキングが行える創薬用マイクロチューブピッキング装置であれば、ピッキング装置やその他の構成などの具体的形態は、如何なるものであっても構わない。
【００１６】
以下、本発明の実施の形態の一例である実施例１について、図１乃至図６に基づいて説明する。
【実施例１】
【００１７】
図１は、本発明の創薬用マイクロチューブピッキング装置に使用されるピッキング部材１００の構成を示す斜視図であり、図２は、図１に示したピッキング部材１００を矢視II方向から見たときの斜視図である。図３は、図１に示したピッキング部材１００を矢視III方向から見たときの正面図である。図４は、図３に示したピッキング部材１００を矢視IV方向から見たときの側面図であり、図５は、図３に示したピッキング部材１００を矢視V方向から見たときの上面図であり、図６は、図３に示したピッキング部材１００を矢視VI方向から見たときの下面図である。
【００１８】
ピッキング部材１００は、図１及び図２に示したように、断面Ｌ字形状の基準爪部材１１０と鋼鉄により板バネとして形成された２つの爪部材１３０、１４０を支持する断面Ｌ字形状の爪支持部材１２０が、組み合わされてなる開口面が正方形の直方体空間であるマイクロチューブ収容穴１５０を有している。
【００１９】
爪部材１４０は、図３に隠れ線で示したように先端が円形に屈曲された先端円形部位１４０ａを有している。爪部材１３０も図４に隠れ線で示したように爪部材１４０と同じ形状を有している。そして、これらの爪部材１３０、１４０の先端円形部位１３０ａ、１４０ａが、図１に示したように、爪支持部材１２０の爪部材１３０、１４０を固着した部分の下方に設けた挿通穴１２０ａ、１２０ｂからマイクロチューブ収容穴１５０内に突出している。このような構成にしたことによって、マイクロチューブがマイクロチューブ収容穴１５０に挿入されるときと、マイクロチューブがマイクロチューブ収容穴１５０から押し出されるときにマイクロチューブを、スムーズに摺動させることができる。
【００２０】
本実施例では、マイクロチューブの水平断面形状が、４．３ｍｍ角の正方形であるので、マイクロチューブ収容穴１５０の開口面の大きさを図６に示したようにＬ１＝Ｌ２＝４．４ｍｍ角の正方形としている。そして、図５に示したように、爪部材１３０、１４０の先端円形部位１３０ａ、１４０ａをマイクロチューブ収納穴１５０の内側にＤ＝０．５ｍｍ突出させている。すなわち、マイクロチューブをピッキング部材１００の下端の開口部から創薬用マイクロチューブピッキング装置の突き上げ部材による突き上げ動作に呼応してマイクロチューブ収納穴１５０に進入させた場合、先端円形部位１３０ａ、１４０ａが、それぞれ後方に０．４ｍｍ後退し、マイクロチューブを基準爪部材１１０のマイクロチューブ収納穴１５０を構成する直角に交わる２面の基準面１１０ａ、１１０ｂに押し付けることによって、マイクロチューブが傾いたり落下したりすることなく、正確な位置に保持することができる。
【００２１】
さらに、マイクロチューブ収納穴１５０のマイクロチューブが出入りする部分には、図６に示したようにテーパ部位１２０Ｃ、１３０ｂが形成されており、マイクロチューブの出入りをより円滑にしている。
【００２２】
なお、本発明の創薬用マイクロチューブピッキング装置において、ピッキング部材以外の構造は、前述した創薬用マイクロチューブピッキング装置の構成と同じなので説明は省略する。また、本実施例においては、金属製の板バネを利用しているが、スペースに余裕があれば、コイルバネを用いて、平板を介して、押し付けることも可能である。
【００２３】
本発明の実施の別の形態である実施例２について、図７に基づいて説明する。
【実施例２】
【００２４】
図７は、実施例２におけるピッキング部材２００の上面図である。このピッキング部材２００は、円筒状のマイクロチューブ２５０を対象としており、６０度で隣り合う２面を基準面２１０、２２０としている。そして、１方向からバネ部材２３０でマイクロチューブ２５０を基準面２１０、２２０に押し付けることによってマイクロチューブ２５０を把持している。この場合も、実施例１と同様にマイクロチューブが傾くことなく、正確な位置に保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【００２５】
本発明による創薬用マイクロチューブピッキング装置によれば、これまで困難とされてきた３８４チューブラックに収納されたマイクロチューブの確実な取り出し及び収納動作を実現するのみならず、その技術的思想は、マイクロチューブ以外のチューブ形状の容器に対しても適用できるものであって、その産業上の利用可能性は、きわめて高い。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】実施例１による創薬用マイクロチューブピッキング装置のピッキング部材の斜視図。
【図２】図１のピッキング部材を矢視II方向から見たときの斜視図。
【図３】図１のピッキング部材を矢視III方向から見たときの側面図。
【図４】図３のピッキング部材を矢視IV方向から見たときの側面図。
【図５】図３のピッキング部材を矢視V方向から見たときの上面図。
【図６】図３のピッキング部材を矢視VI方向から見たときの下面図。
【図７】実施例２による創薬用マイクロチューブピッキング装置のピッキング部材の上面図
【図８】従来の創薬用マイクロチューブピッキング装置を説明する概念図。
【符号の説明】
【００２７】
１００、２００ ・・・ ピッキング部材
１１０ ・・・ 基準爪部材
１１０ａ、１１０ｂ ・・・ 基準面
１２０ ・・・ 爪支持部材
１２０ａ、１２０ｂ ・・・ 挿通穴
１２０ｃ、１３０ｂ ・・・ テーパ部位
１３０、１４０ ・・・ 爪部材
１３０ａ、１４０ａ ・・・ 先端円形部位
１５０ ・・・ マイクロチューブ収容穴
２１０、２２０ ・・・ 基準面
２３０ ・・・ バネ部材
２５０ ・・・ マイクロチューブ
５００ ・・・ 創薬用マイクロチューブピッキング装置
５１０ ・・・ マイクロチューブ
５２０ ・・・ ピッキング部材
５２２ ・・・ 爪部材
５３０ ・・・ 保管ラック
５３２ ・・・ 挿通孔
５４０ ・・・ 突き上げ部材
５５０ ・・・ 突き落とし部材
５６０ ・・・ 共上げ防止部材
【特許請求の範囲】
【請求項１】
創薬用試料を封入するマイクロチューブを行列状に複数本縦立収容する保管ラック内から目的のマイクロチューブを１本取り出したり、保管ラック内の目的の収容位置にマイクロチューブを収納する際に前記マイクロチューブを把持するピッキング部材を有する創薬用マイクロチューブピッキング装置において、
前記ピッキング部材が、開口面が多角形であるマイクロチューブ収容穴を有すると共に、前記マイクロチューブをマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に押し付け固定する弾性力を有する少なくとも１つの爪部材を有することを特徴とする創薬用マイクロチューブピッキング装置。
【請求項２】
前記マイクロチューブ収容穴の開口面が四角形であるとともに、前記爪部材がマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に取り付けられていることを特徴とする請求項１に記載の創薬用マイクロチューブピッキング装置。
【請求項３】
前記爪部材が、金属で形成されていることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の創薬用マイクロチューブピッキング装置。
【請求項１】
創薬用試料を封入するマイクロチューブを行列状に複数本縦立収容する保管ラック内から目的のマイクロチューブを１本取り出したり、保管ラック内の目的の収容位置にマイクロチューブを収納する際に前記マイクロチューブを把持するピッキング部材を有する創薬用マイクロチューブピッキング装置において、
前記ピッキング部材が、開口面が多角形であるマイクロチューブ収容穴を有すると共に、前記マイクロチューブをマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に押し付け固定する弾性力を有する少なくとも１つの爪部材を有することを特徴とする創薬用マイクロチューブピッキング装置。
【請求項２】
前記マイクロチューブ収容穴の開口面が四角形であるとともに、前記爪部材がマイクロチューブ収容穴の隣り合う２面に取り付けられていることを特徴とする請求項１に記載の創薬用マイクロチューブピッキング装置。
【請求項３】
前記爪部材が、金属で形成されていることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の創薬用マイクロチューブピッキング装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【公開番号】特開２００８−２６８１１４（Ｐ２００８−２６８１１４Ａ）
【公開日】平成２０年１１月６日（２００８．１１．６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−１１４１５６（Ｐ２００７−１１４１５６）
【出願日】平成１９年４月２４日（２００７．４．２４）
【出願人】（０００００３３５５）株式会社椿本チエイン (861)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年１１月６日（２００８．１１．６）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年４月２４日（２００７．４．２４）
【出願人】（０００００３３５５）株式会社椿本チエイン (861)
【Ｆターム（参考）】
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