説明

創薬用RFIDタグ一括読み書き装置

【課題】容器に貼付されたRFIDタグの記憶内容を、一括読み取り書き込みが可能であると共に各マイクロチューブを保管ラック上の収容場所と関連づけて管理することが可能な創薬用RFID一括読み書き装置を提供する。
【解決手段】創薬用試料を封入する複数の容器10と、容器を行列状に縦立収容する保管ラック20と、保管ラックを載置するラック載置台32を有し、容器の底面に貼り付けたRFIDタグ12を前記保管ラック毎に一括して読み書きする創薬用RFIDタグ一括読み書き装置において、保管ラックの側面には、バーコード22が貼り付けられており、保管ラックをラック載置台に正しく載置した際に、バーコードを読み取り可能な位置にバーコードリーダ40を設け、保管ラックのバーコードデータと、保管ラックに縦立収容された複数の容器のRFIDデータをひも付けして取り込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創薬研究や化学物質の分析等において、試料を多数の容器に封入し、必要なときに必要な容器を取り出して識別・管理するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、創薬研究や化学物質の分析等においては、試料を溶解した溶液を封入したマイクロチューブと呼ばれる長尺状容器を保管ラックに複数本、並び立てて収容し、保管や搬送を行っている。そして、それぞれのマイクロチューブにどのような試料を封入したのか、且つ、それぞれの保管ラックに、どのようなマイクロチューブを収容しているのかを識別するために、マイクロチューブ及び保管用ラックの側面にバーコードを貼付し、それを一次元ラインセンサを備えたハンディタイプのコードリーダーを使って読み取り、その結果をコンピュータに取り込み、管理することが行われていた。
【0003】
また、より多くのマイクロチューブを識別するために、バーコードに比べてより多くの情報をより小さな面積で表現できるデータマトリックスやQRコードと呼ばれる二次元コードをマイクロチューブの底面に貼付して、二次元エリアセンサを備えたコードリーダーで読み取ることも行われていた。
【0004】
さらに、近年、記録内容の読み取りだけでなく書き込みもできる媒体としてRFIDタグが注目されており、これをマイクロチューブ等の側面に貼付して内容物の履歴までも管理するシステムも提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特表2003−535348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述したRFIDタグを用いたシステムにおいては、保管ラックに収容されたマイクロチューブを複数のアンテナを使って、ラック内の位置と関連付けをしながら各チューブに情報を読み書きするリーダライタと呼ばれる装置を用いると共に、保管ラックを識別するために、保管ラックにバーコード、2Dコードなどが付けられており、それを各チューブ情報の読み取り前後に、ハンディ・バーコードリーダを用いて手作業で読み込んでいた。
【0007】
そのため、リーダライタ上に保管ラックを載置する際に、保管ラックの向きを間違えてしまい、チューブのアドレスを間違って認識してしまうという作業ミスが発生していた。また、情報を読み取った保管ラックと別の保管ラックを取り違えてしまうという作業ミスが発生していた。さらに、保管ラックがリーダライタの載置面上に正しく載置されずに、載置面の縁に乗り上げた状態で読み書き動作を行ってしまい、RFIDタグとの通信ができず、チューブなしと誤認識してしまうことがあった。また、保管ラックに貼付したコードはリーダライタとは別のハンディ・バーコードリーダを用いて手作業で読み込んでいるため、作業に手間が掛かるだけでなく、読み取り時に保管ラックを取り違えるという作業ミスを防止できなかった。
【0008】
さらに、近年、創薬研究の分野において、化合物を自在に組み合わせて、多種類の化合物群(ライブラリー)を効率的に合成するコンビナトリアル・ケミストリーと呼ばれる新しい技術が注目されており、その技術の実用化にあたっては、試料の履歴をも含めた精緻な管理を高速且つ正確に行うことが要求されており、読み書きが可能なRFIDタグを用いた識別・管理するためのシステムの開発が欠かせなくなっている。
【0009】
そこで、本発明の目的は、容器を保管ラックに収納した状態のまま、各容器に貼付されたRFIDタグの記憶内容を読み取り書き込みエラーを起こすことなく、一括して読み取り書き込むことを可能とするとともに、各マイクロチューブを保管ラック上の収容場所と関連づけて管理することが可能な創薬用RFID一括読み書き装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するため、請求項1に係る創薬用RFIDタグ一括読み書き装置は、創薬用試料を封入する複数の容器と、該容器を行列状に縦立収容する保管ラックと、前記保管ラックを載置するラック載置台を有し、前記容器の底面に貼り付けたRFIDタグを前記保管ラック毎に一括して読み書きする創薬用RFIDタグ一括読み書き装置において、前記保管ラックの側面には、バーコードが貼り付けられており、前記保管ラックを前記ラック載置台に正しく載置した際に、前記バーコードを読み取り可能な位置にバーコードリーダを設け、前記保管ラックのバーコードデータと、前記保管ラックに縦立収容された複数の容器のRFIDデータをひも付けして取り込む手段とにより構成されている。
【0011】
また、請求項2に係る創薬用RFIDタグ一括読み書き装置は、請求項1に係る創薬用RFIDタグ一括読み書き装置の構成に加えて、前記保管ラックの側面に貼り付けられたバーコードの高さを短くし、前記RFIDタグを一括読み書きする前に、前記保管ラックの側面に貼り付けられたバーコードを検出し、前記バーコードを検出した結果、検出エラーであれば保管ラックを載置し直すように警告を発する構成をしている。
【0012】
さらに、請求項3に係る創薬用RFIDタグ一括読み書き装置は、請求項2に係る創薬用RFIDタグ一括読み書き装置の構成に加えて、前記保管ラックの隣り合う2つの側面に、バーコードが貼り付けられており、前記保管ラックを前記ラック載置台に正しく載置した際に、前記2つの側面に貼り付けられたバーコードを読み取り可能な2箇所にバーコードリーダを設け、前記バーコードリーダによって、前記バーコードを検出した結果、検出エラーであれば保管ラックを載置し直すように警告を発する構成をしている。
【0013】
なお、本発明における「容器」は、化合物等の試料を溶媒液に溶解したものを保管するマイクロチューブと呼ばれる小型円筒状容器や、粉末状の試料を収納するバイアル瓶と呼ばれる容器や試験管等、用途に応じて適宜選択することができる。ここで、「RFIDタグ」とは、一般に数バイト〜数キロバイトのデータを記録できるICメモリと通信回路からなるCMOSチップと超小型アンテナを内蔵しており、アンテナコイルを介して読み書きされる際に無線を通じてRFIDタグ内に電流を誘起させて通信を行っている。そのため接点がなく、表面の結露や汚れ等の影響を受けることなく情報の読み書きが可能であるという性質を有している。また、本発明において「一括読み書き」とは、必ずしも同時に全ての情報を読み書きすることだけを言うのではなく、1回の操作で複数のデータを順次読み書き可能なことを意味している。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る創薬用RFIDタグ一括読み書き装置によれば、創薬用試料を封入する複数の容器と、該容器を行列状に縦立収容する保管ラックと、前記保管ラックを載置するラック載置台を有し、前記容器の底面に貼り付けたRFIDタグを前記保管ラック毎に一括して読み書きする創薬用RFIDタグ一括読み書き装置において、前記保管ラックの側面には、バーコードが貼り付けられており、前記保管ラックを前記ラック載置台に正しく載置した際に、前記バーコードを読み取り可能な位置にバーコードリーダを設け、前記保管ラックのバーコードデータと、前記保管ラックに縦立収容された複数の容器のRFIDデータをひも付けして取り込む構成であるので、作業ミスの防止、作業時間の短縮化、安全性の向上、試料の高品質化等が図られる。また、各マイクロチューブのRFIDデータと保管ラックのバーコードの情報を関連づけて管理を行うため、データ管理の容易化、大量の容器の適切な管理を行うことが可能になる。さらに、容器を冷凍保管するような場合であっても、容器表面の結露に影響されることなく、データの読み取り書き込みを行うことが可能である。
【0015】
請求項2に係る創薬用RFIDタグ一括読み書き装置によれば、前記保管ラックの側面に貼り付けられたバーコードの高さを短くし、前記RFIDタグを一括読み書きする前に、前記保管ラックの側面に貼り付けられたバーコードを前記バーコードリーダによって検出し、前記バーコードを検出した結果、検出エラーであれば保管ラックを載置し直すように警告を発する構成にしたため、保管ラックの載置状態が悪いまま読み書き操作をするような作業ミスを防止することができる。ここで、バーコードの高さを短くした意図は、バーコードの高さが長い場合、多少の傾きが生じていても、バーコードリーダによりデータを正しく読み取ってしまい、保管ラックの載置状態が悪いまま読み書き操作をしてしまうからである。
【0016】
請求項3に係る創薬用RFIDタグ一括読み書き装置によれば、前記保管ラックの隣り合う2つの側面に、バーコードが貼り付けられており、前記保管ラックを前記ラック載置台に載置した際に、前記2つの側面に貼り付けられたバーコードを読み取り可能な2箇所にバーコードリーダを設け、前記バーコードリーダによって、前記バーコードを検出した結果、検出エラーであれば保管ラックを載置し直すように警告を発する構成にしたため、縦横ともに位置決めをすることが可能になり、保管ラックの載置状態が悪いまま読み書き操作をするような作業ミスをさらに防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態の一例について図1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の一実施例である創薬用RFIDタグ一括読み書き装置の構成を示した概念図である。
【0019】
本実施例は、創薬用試料を封入する複数のマイクロチューブ等の容器10と、それらの容器10を行列状に縦立収容する保管ラック20と、この保管ラック20を載置するリーダライタ30のラック載置台32を有し、容器10の底面に貼り付けたRFIDタグ12を保管ラック20ごとに一括して読み書きする創薬用RFIDタグ一括読み書き装置である。そして、保管ラック20の側面には、バーコード22が貼り付けられており、保管ラック20をリーダライタ30のラック載置台32に正しく載置した際に、バーコード22を読み取り可能な位置にバーコードリーダ40を設け、保管ラック20のバーコード22のデータ22と、保管ラック20に縦立収容された複数の容器10のRFIDタグ12のデータをひも付けして、パソコン50に取り込む構成となっている。そのため、データベースの異なる外部機関などから新規に保管ラックごと入手した創薬用試料であっても自動的に読み込み、データ管理ができる。また、外部機関へ保管ラックを出す場合であっても、内部の膨大なデータベースのデータから必要なデータを抽出して、別途添付する必要がない。
【0020】
また、保管ラック20の側面に貼り付けられたバーコード22の高さを短くし、RFIDタグ12を一括読み書きする前に、保管ラック20の側面に貼り付けられたバーコード22を検出し、バーコード22を検出した結果、検出エラーであれば保管ラック20を載置し直すように警告を発する機能を有している。
【0021】
そのため、RFIDタグ12の一括読み書きの前にバーコードリーダ40によって、保管ラック20の斜め載置等のエラーの有無を検出できるため、間違った容器10のRFIDタグ12の読み書きを防止できる。
【実施例2】
【0022】
図2は、本発明の別の実施例である創薬用RFIDタグ一括読み書き装置の構成を示した概念図である。
【0023】
保管ラック20の隣り合う2つの側面に、バーコード22a,22bが貼り付けられており、保管ラック20をリーダライタ30上のラック載置台32に正しく載置した際に、2つの側面に貼り付けられたバーコード22a,22bを読み取り可能な2箇所にバーコードリーダ40a,40bを設け、これらのバーコードリーダ40a,40bによって、バーコード22a、22bを検出した結果、検出エラーであれば保管ラック20を載置し直すように警告を発する構成にしている。そのため、縦横ともに位置決めをすることが可能になり、保管ラックの載置状態が悪いまま読み書き操作をするような作業ミスをさらに防止することができる。その他の構成については、上述した実施例1と同じなので、説明は割愛する。
【0024】
なお、上記実施例1及び実施例2においては、バーコードリーダ40をバーコード22に対向する位置、すなわちラック載置台32より上方に設置しているが、図3(a)に示したように、バーコードリーダ40をラック載置台32より下方に配置し、すなわちリーダライタの装置内に収納し、斜め上方に向けてバーコード検出光を照射し、バーコード22の検出を行うことも可能である。この場合、ラック載置台32上に突起物がなくなり、どの方向からも保管ラック20の上げ下ろしをすることが可能になる。
【0025】
また、さらに別の方法としては、図3(b)に示したようにバーコードリーダ40をラック載置台32より下方に配置し、ラック載置台32に載置した保管ラック20との間に別途反射ミラーなどの光路変更部材60を設けることも可能である。その場合、バーコードリーダ40をリーダライタ内に収納可能であるため、装置のコンパクト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例の創薬用RFIDタグ一括読み書き装置の概念図である。
【図2】本発明の別の実施例の創薬用RFIDタグ一括読み書き装置の概念図である。
【図3】バーコードリーダをリーダライタ内に設置した別の実施例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0027】
10 ・・・ 容器(マイクロチューブ)
12 ・・・ RFIDタグ
20 ・・・ 保管ラック
22 ・・・ バーコード
30 ・・・ リーダライタ
32 ・・・ ラック載置台
40 ・・・ バーコードリーダ
50 ・・・ パソコン
60 ・・・ 光路変更部材(反射ミラー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創薬用試料を封入する複数の容器と、該容器を行列状に縦立収容する保管ラックと、前記保管ラックを載置するラック載置台を有し、前記容器の底面に貼り付けたRFIDタグを前記保管ラック毎に一括して読み書きする創薬用RFIDタグ一括読み書き装置において、
前記保管ラックの側面には、バーコードが貼り付けられており、
前記保管ラックを前記ラック載置台に正しく載置した際に、前記バーコードを読み取り可能な位置にバーコードリーダを設け、
前記保管ラックのバーコードデータと、前記保管ラックに縦立収容された複数の容器のRFIDデータをひも付けして取り込むこと
を特徴とする創薬用RFIDタグ一括読み書き装置。
【請求項2】
前記保管ラックの側面に貼り付けられたバーコードの高さを短くし、
前記RFIDタグを一括読み書きする前に、前記保管ラックの側面に貼り付けられたバーコードを検出し、
前記バーコードリーダによって、前記バーコードを検出した結果、検出エラーであれば保管ラックを載置し直すように警告を発すること
を特徴とする請求項1に記載の創薬用RFIDタグ一括読み書き装置。
【請求項3】
前記保管ラックの隣り合う2つの側面に、バーコードが貼り付けられており、
前記保管ラックを前記ラック載置台に正しく載置した際に、前記2つの側面に貼り付けられたバーコードを読み取り可能な2箇所にバーコードリーダを設け、
前記バーコードリーダによって、前記バーコードを検出した結果、検出エラーであれば保管ラックを載置し直すように警告を発すること
を特徴とする請求項2に記載の創薬用RFIDタグ一括読み書き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−162351(P2006−162351A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351776(P2004−351776)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】