劈開方法および劈開装置
【課題】原子オーダで平坦な広い領域を持つ清浄な劈開面を高い再現性で作製することができる劈開方法および劈開装置を提供すること。
【解決手段】ノッチ112を形成した試料110をホルダ120に固定し、超高真空中で試料110の劈開を行う際に、試料110と劈開棒130との相対速度を劈開時に発生するクラックの伝播速度以下に制御する。ノッチ112は、好ましくは、線状で、かつ、断面がV字形であって、劈開予定場所の一部に形成する。劈開棒130は、先端が球状であって、ノッチ112に近い、試料110の端部に配置する。
【解決手段】ノッチ112を形成した試料110をホルダ120に固定し、超高真空中で試料110の劈開を行う際に、試料110と劈開棒130との相対速度を劈開時に発生するクラックの伝播速度以下に制御する。ノッチ112は、好ましくは、線状で、かつ、断面がV字形であって、劈開予定場所の一部に形成する。劈開棒130は、先端が球状であって、ノッチ112に近い、試料110の端部に配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劈開方法および劈開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の表面分析装置や走査プローブ顕微鏡を用いて試料表面の測定を行う場合には、計測装置自体の性能向上(高精度化・高安定化の実現)とともに、清浄な試料表面の作製が重要である。
【0003】
この点、例えば、試料が半導体や金属などの場合は、加熱(またはスパッタリングと加熱)により比較的容易に清浄な表面を作製できるが、酸化ニッケルをはじめとする遷移金属酸化物の場合は、上記方法では表面酸素の欠損などによる特性変化が予想されるため、劈開によって清浄な表面を作製することが望ましい。
【0004】
しかも、走査プローブ顕微鏡、特に非接触原子間力顕微鏡(NC−AFM:Non-Contact Atomic Force Microscope)を用いて表面原子分解能を観察する際には、単に清浄な表面を作製すれば足りるわけではなく、探針と試料の間に働くファンデルワールス力や静電気力といった長距離相互作用力の影響を小さくするために原子オーダで平坦な広い領域を持つ表面が必須であり、清浄で、かつ平坦な広い領域を持つ劈開面を作製する技術が要求される。
【0005】
従来の劈開方法としては、試料を押し棒またはナイフエッジにより劈開する方法がいろいろ知られている(非特許文献1)。このうち、古くから知られていた大気中で行われた方法としては、例えば、ホルダに固定した単結晶に楔を叩きつける方法や、あらかじめノッチを入れておいた単結晶に力を加える方法などがある。また、超高真空下で試料を劈開する場合にも、これらの方法を超高真空中で行うことにより、清浄な表面の作製が可能である。
【非特許文献1】中村輝太郎・中田一郎責任編集、「試料の作成と加工 実験物理学講座 13」、共立出版株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の劈開方法においては、ただ単に試料を押し棒またはナイフエッジにより劈開するというだけであって、操作についての具体的検討がなされておらず、NC−AFMを用いた表面原子分解能観察が可能な良好な劈開面、つまり、清浄で、かつ原子オーダで平坦な広い領域を持つ劈開面を高い再現性で作製することは極めて困難であった。
【0007】
なお、上記のように、NC−AFMによる表面原子分解能観察には、原子オーダで平坦な広い領域を持つ清浄な表面が必要不可欠であるため、今日、NC−AFM測定の普及に伴い、これを実現する劈開方法が強く求められている。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、原子オーダで平坦な広い領域を持つ清浄な劈開面を高い再現性で作製することができる劈開方法および劈開装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の劈開方法は、ホルダに固定された試料と劈開に使用する押し棒との相対速度を劈開時に発生するクラックの伝播速度以下に制御することにより試料の劈開を行うようにした。
【0010】
本発明の劈開装置は、試料を固定するホルダと、前記ホルダに固定された試料を押す押し棒と、前記ホルダと前記押し棒とを相対的に移動させる駆動手段と、前記ホルダに固定された試料と前記押し棒との相対速度が劈開時に発生するクラックの伝播速度以下になるよう、前記駆動手段を制御する制御手段と、を有する構成を採る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原子オーダで平坦な広い領域を持つ清浄な劈開面を高い再現性で作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
本発明者は、鋭意研究の結果、NC−AFMにより表面を原子分解能観察するためには、原子オーダで平坦な広い領域を持つ清浄な劈開面を高い再現性で作製することが必要であり、そのためには、その領域の位置および範囲を制御することが必要であることを見出した。また、表面原子分解能観察が可能な領域(原子オーダで平坦な広い清浄表面)の位置および範囲を制御するためには、形成されるクラックパターン(つまり、クラックの伝播パターン)を制御する必要があることを見出した。さらに、そのためには、試料に加える力(速度)を制御することが必要であることを見出した。また、クラックパターンを制御するためには、クラックの発生源となるノッチの位置と形状、ならびに押し棒の位置と形状も最適化することが必要であることを見出した。すなわち、本発明者は、試料の劈開表面の状態が、試料に加える力(速度)、ノッチの位置・形状、および押し棒の位置・形状に大きく依存することを見出したのである。
【0014】
本発明は、ホルダに固定された試料と劈開に使用する押し棒との相対速度を劈開時に発生するクラックの伝播速度以下に制御することを基本とするものである。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る劈開装置の要部の構成を示す図である。
【0016】
図1の劈開装置100は、試料110を固定するホルダ120と、ホルダ120に固定された試料110を押す押し棒130と、ホルダ120を移動させる駆動部140と、駆動部140を制御する制御部150とを有する。なお、以下では、押し棒130を、劈開に用いられる棒という意味で、「劈開棒」と呼ぶことにする。
【0017】
試料110は、劈開前に適当な形状に成形される。例えば、試料110が単結晶の場合は、結晶の成長方向が長軸となるように直方体状に成形される。試料110の劈開予定場所には、劈開時にクラックの発生源となるノッチ112を形成しておく。
【0018】
ノッチ112の形状は、長い線状ではなく、できるだけ短い線状であることが好ましい。クラックの発生ポイントをできるだけ一箇所にするためである。また、ノッチ112の断面形状は、V字形であることが好ましく、しかも、そのV字形ノッチの深さは、できるだけ深い(つまり、アスペクト比が大きい)のが好ましい。やはり、クラックの発生ポイントをできるだけ一箇所にするためである。
【0019】
また、ノッチ112の位置は、劈開予定場所の全部(つまり、試料110の幅方向の端から端まで)ではなく、一部であることが好ましい。上記のように、クラックの発生ポイントをできるだけ一箇所にするためである。しかも、試料110の中央部ではなく、試料110の端部であることが好ましい。後述するように、ノッチ112の直下領域には良好な劈開面ができにくい傾向があるので、良好な劈開面をできるだけ広くするためには試料110の端部にノッチ112を形成するのが有利であるからである。
【0020】
ホルダ120は、適当な形状に成形されかつノッチ112が形成された試料110を固定する。その際、試料110を固定する位置は、劈開の開始位置を決定するために形成したノッチ112が、ホルダ120の端面と平行になるように調整される。
【0021】
なお、ホルダ120の構造は、試料110をしっかりと固定できる構造であればどのようなものでもよく、特に限定されない。例えば、図示しないが、ホルダ120は、試料110と隙間なく固定されるように、前後2個ずつ(つまり、合計4個の)ねじで締め付ける構造を有する。
【0022】
劈開棒130は、ホルダ120に固定された試料110を押す機能を有する。劈開棒130の形状は、実験の結果、ストレートな棒状であることが好ましく、しかも、その先端が球状であることが好ましい。また、劈開棒130は、図1に示すように、試料110の端部、つまり、ノッチ112から離れている部分に配置することが好ましい。なお、劈開棒130は、金属、例えば、ステンレスで作られている。
【0023】
さらに、劈開棒130の位置(特に幅方向の位置)と劈開面の平坦性について実験を行ったところ、先端が球状の劈開棒130を用いて劈開を行った場合、試料110に当てる劈開棒130の位置によって劈開面の平坦性が異なる傾向があることがわかった。すなわち、ノッチ112から遠い方の端部に劈開棒130を当てた場合(図2参照)と、ノッチ112に近い方の端部に劈開棒130を当てた場合(図1参照)とを比べると、他の劈開条件を同一にした場合であっても、後者の方が、より平坦な領域が広い場合が多かった。例えば、図3は、前者の場合(試料は酸化マグネシウム(MgO))における光学顕微鏡写真である。図3から、前者の場合には、応力がノッチ112部分に集中しにくいため、複数の箇所からクラックが発生して伝播する傾向が強いことがわかる。
【0024】
駆動部140は、ホルダ120を移動させる機能を有し、例えば、モータとギア機構で構成されている。モータは、特に限定されないが、例えば、ステップモータである。劈開棒130を固定した状態で、駆動部140により、試料110を固定したホルダ120を移動させることによって、試料110に力が加えられる。
【0025】
図4は、図1の劈開装置100の具体的構成の一例を示す図である。
【0026】
図4に示す劈開装置100aは、試料110を固定したホルダ120を収容する真空容器160と、駆動部140の駆動力によってホルダ120を移動させる移動機構170とを有する。
【0027】
真空容器160は、図示しない真空装置により内部が超高真空状態(例えば、2×10−8Pa程度)に保持される。試料110を固定したホルダ120を真空容器160内に収容して超高真空中で劈開を行うことによって、清浄な劈開面を得ることができる。
【0028】
移動機構170は、ホルダ120に固定されるロッド172を有し、ロッド172を駆動部140の駆動力によって図中の矢印方向に移動させることで、ホルダ120を移動させる。移動機構170は、フランジ174、176を有し、フランジ174には劈開棒130が固定されている。また、真空容器160にはフランジ174が取り付けられ、このフランジ174ともう一方のフランジ176をしっかり締結することによって、移動機構170と真空容器160とが結合される。
【0029】
なお、本実施の形態では、駆動部140によってホルダ120を移動させるようにしているが、これに限定されるわけではなく、ホルダを固定した状態で、劈開棒を移動させるようにしてもよい。すなわち、ホルダと劈開棒とを相対的に移動させることによって、試料110に力を加えることができる。
【0030】
上記のように、本発明者は、劈開条件を鋭意検討した結果、試料110に加える力(速度)が重要であることを見出した。ここで、劈開速度とは、ホルダ120に固定された試料110と、劈開に使用する劈開棒130との間の相対的な速度を意味する。
【0031】
【表1】
【0032】
また、高速・中速・低速の各速度で劈開したMgO(001)の表面を、それぞれ、光学顕微鏡で観察した。図5は、高速で劈開した場合の光学顕微鏡写真であり、図6は、中速で劈開した場合の光学顕微鏡写真であり、図7は、低速で劈開した場合の光学顕微鏡写真である。
【0033】
図5に示すように、高速で劈開した場合は、試料表面全体が荒れた状態になっており、良好な劈開面で見られるクラックの伝播パターンを見ることができない。もちろん、このような劈開面は、NC−AFMを用いた表面原子分解能観察が可能な程度の平坦な表面ということはできない。また、図6および図7に示すように、中速および低速でそれぞれ劈開した場合は、NC−AFMで表面原子分解能観察可能な原子オーダで平坦な領域を得ることができるが、中速で劈開した場合は、低速で劈開した場合に比べて、平坦な領域が狭く、その領域の凹凸が大きい傾向が強いことがわかる。
【0034】
劈開は、試料に応力を加えることにより蓄積されたエネルギーが、結晶の破断によって解放されるプロセスであり、クラックの長さと伝播スピードに強く依存する現象である。一般的に、固体中を音波が伝わる速度に関係するレイリー波速度の0.35倍以下の程度の速度でクラックが伝播した場合に、安定な劈開が起こるとされている。したがって、同一サイズの同じ材料の試料110を劈開する場合には、劈開速度が遅い方がより平坦な劈開面が得られることになる(表1参照)。
【0035】
例えば、酸化マグネシウム(MgO)とヒ化ガリウム(GaAs)を例にとると、MgO(001)表面とGaAs(110)表面におけるレイリー波速度は、それぞれ、4700m/s、2510m/sである。また、見方を変えると、劈開は、応力により蓄えられたエネルギーを運動エネルギーに変換するプロセスである。運動エネルギーは、クラックの伝播速度の2乗とクラックの長さの2乗に比例する。上記の例では、MgO試料の劈開面の大きさが5mm×1mm、GaAs試料の劈開面の大きさが5mm×0.3mmであるため、GaAs試料の方が、より速い劈開速度でも平坦な表面を作製できる傾向が強いことを説明することができる。
【0036】
制御部150は、ユーザの操作により、駆動部140の動作、つまり、劈開速度を制御する機能を有する。劈開速度は、ユーザの指示に従って、または、実験により材料ごとにあらかじめ設定された最適速度に従って制御される。なお、制御部150は、例えば、コンピュータで構成されている。
【0037】
次いで、上記構成を有する劈開装置100を用いた劈開方法の手順について、図8を用いて説明する。なお、ここでは、一例として、例えば、酸化ニッケル(NiO)の単結晶を劈開する場合を例にとって説明する。また、劈開装置として、図4に示す劈開装置100aを用いる。
【0038】
まず、図8(A)に示すように、NiOの単結晶(NiOブール)180を、結晶の成長方向が長軸方向となるように直方体状(例えば、幅:長さ:高さ=13mm:3mm:1.5mm)に切り出す。図8(A)中の一点鎖線は、切断面の位置を示している。そして、切り出した直方体状の試料110の劈開予定場所114の一部(試料110の端部)に、短い線状のV字形のノッチ112を形成する。
【0039】
そして、図8(B)に示すように、切り出した後にノッチ112を形成した試料110を、例えば、Auでコーティングする。これは、劈開時に生じる電荷を逃がし、劈開表面の帯電を防止するためである。なお、コーティングする金属は、Auに限定されるわけではなく、熱処理で変化せずに試料110とホルダ120を電気的に接続できる金属であれば、どのような金属であってもよい。
【0040】
そして、図8(C)に示すように、コーティング後の試料110をホルダ120にしっかりと固定する。試料110の固定位置は、上記のように、劈開の開始位置を決定するためのノッチ120が、ホルダ120の端面に平行になるように調整する。
【0041】
そして、図8(D)に示すように、ホルダ120に固定した試料110を超高真空中に導入し、具体的には、試料110を固定したホルダ120を真空容器160内に収容して真空容器160内を超高真空状態にし、約200℃で20時間以上ベイキングした後、ステンレスの劈開棒130を試料110の所定位置に接触させ、試料110に力を加えることによって劈開を行う。試料110に加えられる力は、劈開棒130を固定した状態で、駆動部140および移動機構170を介してホルダ120を移動させることによって与えられる。
【0042】
なお、劈開が終了すると、図8(E)に示すように、NC−AFM190により劈開面116の観察を行う。
【0043】
図9〜図13は、上記の方法で劈開したNiO(001)劈開面の光学顕微鏡写真を示す図である。具体的には、図9は、劈開面全体を示す光学顕微鏡写真であり、図10は、図9に示す円の部分の拡大図であり、図11は、図9に示す領域Aで見られる典型的なNC−AFM像(250nm×250nm)であり、図12は、図9に示す領域Bで見られる典型的なNC−AFM像(250nm×250nm)であり、図13は、図9に示す領域Bの広いテラス上で観察されるNiO(001)表面の原子像を示す図である。
【0044】
まず、図9から、右上部のノッチから発生したクラックが[110]方向に伝播し(領域A)、下部へ向かうにつれて[010]方向と平行になっている(領域B)ことがわかる。
【0045】
また、一般的に、領域Aでは、原子ステップが直線でないことが多く、時には、高指数面で構成された表面(図11)やV字型のパターンが見られることもある。図11に示すような表面は、その凹凸は数nmと小さいが、結晶内部の欠陥やディスロケーションにより生じた表面の弾性変形に起因する凹凸であり、表面原子分解能観察は極めて困難である。
【0046】
一方、領域Bでは、図12に示すように、[010]方向に沿った原子ステップが観察されることが多く、原子オーダで平坦なテラスの幅も20〜100nmと大きい。また、原子ステップの高さは、単原子ステップの高さ(0.21nm)の倍数となっており、原子オーダで平坦な表面となっていることがわかる。このような表面でのみ、図13に示すような原子像を観察することが可能となる。
【0047】
なお、図13は、NiOの劈開面に関するものであるが、GaAs(110)の劈開面についても同様の結果となっている。
【0048】
このように、本実施の形態によれば、劈開速度、ノッチ112の位置・形状、および劈開棒130の位置・形状を最適化するため、原子オーダで平坦な広い領域を持つ清浄な劈開面を高い再現性で作製することができる。
【0049】
なお、ノッチ112の形成方法としては、従来のように手作業によりノッチ112を形成する方法に限定されるわけではなく、レーザを用いてノッチ112を形成することも可能である。レーザを用いる場合には、ノッチ112の位置と形状を高精度に制御できるため、クラック発生領域の大きさおよび位置を高精度に制御することが可能となり、本発明の効果をさらに向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る劈開方法および劈開装置は、原子オーダで平坦な広い領域を持つ清浄な劈開面を高い再現性で作製することができる劈開方法および劈開装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態に係る劈開装置の構成を示す図
【図2】劈開棒の位置の他の例を示す図
【図3】劈開棒をノッチから遠い端部に置いた場合における劈開面の一例を示す光学顕微鏡写真
【図4】図1に示す劈開装置の具体的構成の一例を示す図
【図5】高速で劈開したMgO(001)表面の一例を示す光学顕微鏡写真
【図6】中速で劈開したMgO(001)表面の一例を示す光学顕微鏡写真
【図7】低速で劈開したMgO(001)表面の一例を示す光学顕微鏡写真
【図8】図1の劈開装置を用いた劈開方法の手順の一例を示す図
【図9】NiO(001)劈開面全体の一例を示す光学顕微鏡写真
【図10】図9に示す円の部分の拡大図
【図11】図9に示す領域Aで見られる典型的なNC−AFM像を示す図
【図12】図9に示す領域Bで見られる典型的なNC−AFM像を示す図
【図13】図9に示す領域Bの広いテラス上で観察されるNiO(001)表面の原子像を示す図
【符号の説明】
【0052】
100 劈開装置
110 試料
112 ノッチ
114 劈開予定場所
116 劈開面
120 ホルダ
130 劈開棒
140 駆動部
150 制御部
160 真空容器
170 移動機構
180 ブール
190 NC−AFM
【技術分野】
【0001】
本発明は、劈開方法および劈開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の表面分析装置や走査プローブ顕微鏡を用いて試料表面の測定を行う場合には、計測装置自体の性能向上(高精度化・高安定化の実現)とともに、清浄な試料表面の作製が重要である。
【0003】
この点、例えば、試料が半導体や金属などの場合は、加熱(またはスパッタリングと加熱)により比較的容易に清浄な表面を作製できるが、酸化ニッケルをはじめとする遷移金属酸化物の場合は、上記方法では表面酸素の欠損などによる特性変化が予想されるため、劈開によって清浄な表面を作製することが望ましい。
【0004】
しかも、走査プローブ顕微鏡、特に非接触原子間力顕微鏡(NC−AFM:Non-Contact Atomic Force Microscope)を用いて表面原子分解能を観察する際には、単に清浄な表面を作製すれば足りるわけではなく、探針と試料の間に働くファンデルワールス力や静電気力といった長距離相互作用力の影響を小さくするために原子オーダで平坦な広い領域を持つ表面が必須であり、清浄で、かつ平坦な広い領域を持つ劈開面を作製する技術が要求される。
【0005】
従来の劈開方法としては、試料を押し棒またはナイフエッジにより劈開する方法がいろいろ知られている(非特許文献1)。このうち、古くから知られていた大気中で行われた方法としては、例えば、ホルダに固定した単結晶に楔を叩きつける方法や、あらかじめノッチを入れておいた単結晶に力を加える方法などがある。また、超高真空下で試料を劈開する場合にも、これらの方法を超高真空中で行うことにより、清浄な表面の作製が可能である。
【非特許文献1】中村輝太郎・中田一郎責任編集、「試料の作成と加工 実験物理学講座 13」、共立出版株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の劈開方法においては、ただ単に試料を押し棒またはナイフエッジにより劈開するというだけであって、操作についての具体的検討がなされておらず、NC−AFMを用いた表面原子分解能観察が可能な良好な劈開面、つまり、清浄で、かつ原子オーダで平坦な広い領域を持つ劈開面を高い再現性で作製することは極めて困難であった。
【0007】
なお、上記のように、NC−AFMによる表面原子分解能観察には、原子オーダで平坦な広い領域を持つ清浄な表面が必要不可欠であるため、今日、NC−AFM測定の普及に伴い、これを実現する劈開方法が強く求められている。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、原子オーダで平坦な広い領域を持つ清浄な劈開面を高い再現性で作製することができる劈開方法および劈開装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の劈開方法は、ホルダに固定された試料と劈開に使用する押し棒との相対速度を劈開時に発生するクラックの伝播速度以下に制御することにより試料の劈開を行うようにした。
【0010】
本発明の劈開装置は、試料を固定するホルダと、前記ホルダに固定された試料を押す押し棒と、前記ホルダと前記押し棒とを相対的に移動させる駆動手段と、前記ホルダに固定された試料と前記押し棒との相対速度が劈開時に発生するクラックの伝播速度以下になるよう、前記駆動手段を制御する制御手段と、を有する構成を採る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原子オーダで平坦な広い領域を持つ清浄な劈開面を高い再現性で作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
本発明者は、鋭意研究の結果、NC−AFMにより表面を原子分解能観察するためには、原子オーダで平坦な広い領域を持つ清浄な劈開面を高い再現性で作製することが必要であり、そのためには、その領域の位置および範囲を制御することが必要であることを見出した。また、表面原子分解能観察が可能な領域(原子オーダで平坦な広い清浄表面)の位置および範囲を制御するためには、形成されるクラックパターン(つまり、クラックの伝播パターン)を制御する必要があることを見出した。さらに、そのためには、試料に加える力(速度)を制御することが必要であることを見出した。また、クラックパターンを制御するためには、クラックの発生源となるノッチの位置と形状、ならびに押し棒の位置と形状も最適化することが必要であることを見出した。すなわち、本発明者は、試料の劈開表面の状態が、試料に加える力(速度)、ノッチの位置・形状、および押し棒の位置・形状に大きく依存することを見出したのである。
【0014】
本発明は、ホルダに固定された試料と劈開に使用する押し棒との相対速度を劈開時に発生するクラックの伝播速度以下に制御することを基本とするものである。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る劈開装置の要部の構成を示す図である。
【0016】
図1の劈開装置100は、試料110を固定するホルダ120と、ホルダ120に固定された試料110を押す押し棒130と、ホルダ120を移動させる駆動部140と、駆動部140を制御する制御部150とを有する。なお、以下では、押し棒130を、劈開に用いられる棒という意味で、「劈開棒」と呼ぶことにする。
【0017】
試料110は、劈開前に適当な形状に成形される。例えば、試料110が単結晶の場合は、結晶の成長方向が長軸となるように直方体状に成形される。試料110の劈開予定場所には、劈開時にクラックの発生源となるノッチ112を形成しておく。
【0018】
ノッチ112の形状は、長い線状ではなく、できるだけ短い線状であることが好ましい。クラックの発生ポイントをできるだけ一箇所にするためである。また、ノッチ112の断面形状は、V字形であることが好ましく、しかも、そのV字形ノッチの深さは、できるだけ深い(つまり、アスペクト比が大きい)のが好ましい。やはり、クラックの発生ポイントをできるだけ一箇所にするためである。
【0019】
また、ノッチ112の位置は、劈開予定場所の全部(つまり、試料110の幅方向の端から端まで)ではなく、一部であることが好ましい。上記のように、クラックの発生ポイントをできるだけ一箇所にするためである。しかも、試料110の中央部ではなく、試料110の端部であることが好ましい。後述するように、ノッチ112の直下領域には良好な劈開面ができにくい傾向があるので、良好な劈開面をできるだけ広くするためには試料110の端部にノッチ112を形成するのが有利であるからである。
【0020】
ホルダ120は、適当な形状に成形されかつノッチ112が形成された試料110を固定する。その際、試料110を固定する位置は、劈開の開始位置を決定するために形成したノッチ112が、ホルダ120の端面と平行になるように調整される。
【0021】
なお、ホルダ120の構造は、試料110をしっかりと固定できる構造であればどのようなものでもよく、特に限定されない。例えば、図示しないが、ホルダ120は、試料110と隙間なく固定されるように、前後2個ずつ(つまり、合計4個の)ねじで締め付ける構造を有する。
【0022】
劈開棒130は、ホルダ120に固定された試料110を押す機能を有する。劈開棒130の形状は、実験の結果、ストレートな棒状であることが好ましく、しかも、その先端が球状であることが好ましい。また、劈開棒130は、図1に示すように、試料110の端部、つまり、ノッチ112から離れている部分に配置することが好ましい。なお、劈開棒130は、金属、例えば、ステンレスで作られている。
【0023】
さらに、劈開棒130の位置(特に幅方向の位置)と劈開面の平坦性について実験を行ったところ、先端が球状の劈開棒130を用いて劈開を行った場合、試料110に当てる劈開棒130の位置によって劈開面の平坦性が異なる傾向があることがわかった。すなわち、ノッチ112から遠い方の端部に劈開棒130を当てた場合(図2参照)と、ノッチ112に近い方の端部に劈開棒130を当てた場合(図1参照)とを比べると、他の劈開条件を同一にした場合であっても、後者の方が、より平坦な領域が広い場合が多かった。例えば、図3は、前者の場合(試料は酸化マグネシウム(MgO))における光学顕微鏡写真である。図3から、前者の場合には、応力がノッチ112部分に集中しにくいため、複数の箇所からクラックが発生して伝播する傾向が強いことがわかる。
【0024】
駆動部140は、ホルダ120を移動させる機能を有し、例えば、モータとギア機構で構成されている。モータは、特に限定されないが、例えば、ステップモータである。劈開棒130を固定した状態で、駆動部140により、試料110を固定したホルダ120を移動させることによって、試料110に力が加えられる。
【0025】
図4は、図1の劈開装置100の具体的構成の一例を示す図である。
【0026】
図4に示す劈開装置100aは、試料110を固定したホルダ120を収容する真空容器160と、駆動部140の駆動力によってホルダ120を移動させる移動機構170とを有する。
【0027】
真空容器160は、図示しない真空装置により内部が超高真空状態(例えば、2×10−8Pa程度)に保持される。試料110を固定したホルダ120を真空容器160内に収容して超高真空中で劈開を行うことによって、清浄な劈開面を得ることができる。
【0028】
移動機構170は、ホルダ120に固定されるロッド172を有し、ロッド172を駆動部140の駆動力によって図中の矢印方向に移動させることで、ホルダ120を移動させる。移動機構170は、フランジ174、176を有し、フランジ174には劈開棒130が固定されている。また、真空容器160にはフランジ174が取り付けられ、このフランジ174ともう一方のフランジ176をしっかり締結することによって、移動機構170と真空容器160とが結合される。
【0029】
なお、本実施の形態では、駆動部140によってホルダ120を移動させるようにしているが、これに限定されるわけではなく、ホルダを固定した状態で、劈開棒を移動させるようにしてもよい。すなわち、ホルダと劈開棒とを相対的に移動させることによって、試料110に力を加えることができる。
【0030】
上記のように、本発明者は、劈開条件を鋭意検討した結果、試料110に加える力(速度)が重要であることを見出した。ここで、劈開速度とは、ホルダ120に固定された試料110と、劈開に使用する劈開棒130との間の相対的な速度を意味する。
【0031】
【表1】
【0032】
また、高速・中速・低速の各速度で劈開したMgO(001)の表面を、それぞれ、光学顕微鏡で観察した。図5は、高速で劈開した場合の光学顕微鏡写真であり、図6は、中速で劈開した場合の光学顕微鏡写真であり、図7は、低速で劈開した場合の光学顕微鏡写真である。
【0033】
図5に示すように、高速で劈開した場合は、試料表面全体が荒れた状態になっており、良好な劈開面で見られるクラックの伝播パターンを見ることができない。もちろん、このような劈開面は、NC−AFMを用いた表面原子分解能観察が可能な程度の平坦な表面ということはできない。また、図6および図7に示すように、中速および低速でそれぞれ劈開した場合は、NC−AFMで表面原子分解能観察可能な原子オーダで平坦な領域を得ることができるが、中速で劈開した場合は、低速で劈開した場合に比べて、平坦な領域が狭く、その領域の凹凸が大きい傾向が強いことがわかる。
【0034】
劈開は、試料に応力を加えることにより蓄積されたエネルギーが、結晶の破断によって解放されるプロセスであり、クラックの長さと伝播スピードに強く依存する現象である。一般的に、固体中を音波が伝わる速度に関係するレイリー波速度の0.35倍以下の程度の速度でクラックが伝播した場合に、安定な劈開が起こるとされている。したがって、同一サイズの同じ材料の試料110を劈開する場合には、劈開速度が遅い方がより平坦な劈開面が得られることになる(表1参照)。
【0035】
例えば、酸化マグネシウム(MgO)とヒ化ガリウム(GaAs)を例にとると、MgO(001)表面とGaAs(110)表面におけるレイリー波速度は、それぞれ、4700m/s、2510m/sである。また、見方を変えると、劈開は、応力により蓄えられたエネルギーを運動エネルギーに変換するプロセスである。運動エネルギーは、クラックの伝播速度の2乗とクラックの長さの2乗に比例する。上記の例では、MgO試料の劈開面の大きさが5mm×1mm、GaAs試料の劈開面の大きさが5mm×0.3mmであるため、GaAs試料の方が、より速い劈開速度でも平坦な表面を作製できる傾向が強いことを説明することができる。
【0036】
制御部150は、ユーザの操作により、駆動部140の動作、つまり、劈開速度を制御する機能を有する。劈開速度は、ユーザの指示に従って、または、実験により材料ごとにあらかじめ設定された最適速度に従って制御される。なお、制御部150は、例えば、コンピュータで構成されている。
【0037】
次いで、上記構成を有する劈開装置100を用いた劈開方法の手順について、図8を用いて説明する。なお、ここでは、一例として、例えば、酸化ニッケル(NiO)の単結晶を劈開する場合を例にとって説明する。また、劈開装置として、図4に示す劈開装置100aを用いる。
【0038】
まず、図8(A)に示すように、NiOの単結晶(NiOブール)180を、結晶の成長方向が長軸方向となるように直方体状(例えば、幅:長さ:高さ=13mm:3mm:1.5mm)に切り出す。図8(A)中の一点鎖線は、切断面の位置を示している。そして、切り出した直方体状の試料110の劈開予定場所114の一部(試料110の端部)に、短い線状のV字形のノッチ112を形成する。
【0039】
そして、図8(B)に示すように、切り出した後にノッチ112を形成した試料110を、例えば、Auでコーティングする。これは、劈開時に生じる電荷を逃がし、劈開表面の帯電を防止するためである。なお、コーティングする金属は、Auに限定されるわけではなく、熱処理で変化せずに試料110とホルダ120を電気的に接続できる金属であれば、どのような金属であってもよい。
【0040】
そして、図8(C)に示すように、コーティング後の試料110をホルダ120にしっかりと固定する。試料110の固定位置は、上記のように、劈開の開始位置を決定するためのノッチ120が、ホルダ120の端面に平行になるように調整する。
【0041】
そして、図8(D)に示すように、ホルダ120に固定した試料110を超高真空中に導入し、具体的には、試料110を固定したホルダ120を真空容器160内に収容して真空容器160内を超高真空状態にし、約200℃で20時間以上ベイキングした後、ステンレスの劈開棒130を試料110の所定位置に接触させ、試料110に力を加えることによって劈開を行う。試料110に加えられる力は、劈開棒130を固定した状態で、駆動部140および移動機構170を介してホルダ120を移動させることによって与えられる。
【0042】
なお、劈開が終了すると、図8(E)に示すように、NC−AFM190により劈開面116の観察を行う。
【0043】
図9〜図13は、上記の方法で劈開したNiO(001)劈開面の光学顕微鏡写真を示す図である。具体的には、図9は、劈開面全体を示す光学顕微鏡写真であり、図10は、図9に示す円の部分の拡大図であり、図11は、図9に示す領域Aで見られる典型的なNC−AFM像(250nm×250nm)であり、図12は、図9に示す領域Bで見られる典型的なNC−AFM像(250nm×250nm)であり、図13は、図9に示す領域Bの広いテラス上で観察されるNiO(001)表面の原子像を示す図である。
【0044】
まず、図9から、右上部のノッチから発生したクラックが[110]方向に伝播し(領域A)、下部へ向かうにつれて[010]方向と平行になっている(領域B)ことがわかる。
【0045】
また、一般的に、領域Aでは、原子ステップが直線でないことが多く、時には、高指数面で構成された表面(図11)やV字型のパターンが見られることもある。図11に示すような表面は、その凹凸は数nmと小さいが、結晶内部の欠陥やディスロケーションにより生じた表面の弾性変形に起因する凹凸であり、表面原子分解能観察は極めて困難である。
【0046】
一方、領域Bでは、図12に示すように、[010]方向に沿った原子ステップが観察されることが多く、原子オーダで平坦なテラスの幅も20〜100nmと大きい。また、原子ステップの高さは、単原子ステップの高さ(0.21nm)の倍数となっており、原子オーダで平坦な表面となっていることがわかる。このような表面でのみ、図13に示すような原子像を観察することが可能となる。
【0047】
なお、図13は、NiOの劈開面に関するものであるが、GaAs(110)の劈開面についても同様の結果となっている。
【0048】
このように、本実施の形態によれば、劈開速度、ノッチ112の位置・形状、および劈開棒130の位置・形状を最適化するため、原子オーダで平坦な広い領域を持つ清浄な劈開面を高い再現性で作製することができる。
【0049】
なお、ノッチ112の形成方法としては、従来のように手作業によりノッチ112を形成する方法に限定されるわけではなく、レーザを用いてノッチ112を形成することも可能である。レーザを用いる場合には、ノッチ112の位置と形状を高精度に制御できるため、クラック発生領域の大きさおよび位置を高精度に制御することが可能となり、本発明の効果をさらに向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る劈開方法および劈開装置は、原子オーダで平坦な広い領域を持つ清浄な劈開面を高い再現性で作製することができる劈開方法および劈開装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態に係る劈開装置の構成を示す図
【図2】劈開棒の位置の他の例を示す図
【図3】劈開棒をノッチから遠い端部に置いた場合における劈開面の一例を示す光学顕微鏡写真
【図4】図1に示す劈開装置の具体的構成の一例を示す図
【図5】高速で劈開したMgO(001)表面の一例を示す光学顕微鏡写真
【図6】中速で劈開したMgO(001)表面の一例を示す光学顕微鏡写真
【図7】低速で劈開したMgO(001)表面の一例を示す光学顕微鏡写真
【図8】図1の劈開装置を用いた劈開方法の手順の一例を示す図
【図9】NiO(001)劈開面全体の一例を示す光学顕微鏡写真
【図10】図9に示す円の部分の拡大図
【図11】図9に示す領域Aで見られる典型的なNC−AFM像を示す図
【図12】図9に示す領域Bで見られる典型的なNC−AFM像を示す図
【図13】図9に示す領域Bの広いテラス上で観察されるNiO(001)表面の原子像を示す図
【符号の説明】
【0052】
100 劈開装置
110 試料
112 ノッチ
114 劈開予定場所
116 劈開面
120 ホルダ
130 劈開棒
140 駆動部
150 制御部
160 真空容器
170 移動機構
180 ブール
190 NC−AFM
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダに固定された試料と劈開に使用する押し棒との相対速度を劈開時に発生するクラックの伝播速度以下に制御することにより試料の劈開を行う、劈開方法。
【請求項2】
前記試料には、劈開予定場所の一部にクラックの発生源となるノッチが形成されている、請求項1記載の劈開方法。
【請求項3】
前記ノッチは、線状で、かつ、断面がV字形である、請求項2記載の劈開方法。
【請求項4】
前記押し棒は、前記ノッチに近い、前記試料の端部に配置される、請求項1記載の劈開方法。
【請求項5】
前記押し棒は、先端が球状である、請求項4記載の劈開方法。
【請求項6】
試料を固定するホルダと、
前記ホルダに固定された試料を押す押し棒と、
前記ホルダと前記押し棒とを相対的に移動させる駆動手段と、
前記ホルダに固定された試料と前記押し棒との相対速度が劈開時に発生するクラックの伝播速度以下になるよう、前記駆動手段を制御する制御手段と、
を有する劈開装置。
【請求項1】
ホルダに固定された試料と劈開に使用する押し棒との相対速度を劈開時に発生するクラックの伝播速度以下に制御することにより試料の劈開を行う、劈開方法。
【請求項2】
前記試料には、劈開予定場所の一部にクラックの発生源となるノッチが形成されている、請求項1記載の劈開方法。
【請求項3】
前記ノッチは、線状で、かつ、断面がV字形である、請求項2記載の劈開方法。
【請求項4】
前記押し棒は、前記ノッチに近い、前記試料の端部に配置される、請求項1記載の劈開方法。
【請求項5】
前記押し棒は、先端が球状である、請求項4記載の劈開方法。
【請求項6】
試料を固定するホルダと、
前記ホルダに固定された試料を押す押し棒と、
前記ホルダと前記押し棒とを相対的に移動させる駆動手段と、
前記ホルダに固定された試料と前記押し棒との相対速度が劈開時に発生するクラックの伝播速度以下になるよう、前記駆動手段を制御する制御手段と、
を有する劈開装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図4】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−160537(P2007−160537A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356296(P2005−356296)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
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