説明

力センサー、力検出装置、ロボットハンド、ロボット、および力センサーの製造方法

【課題】圧電部材の水平方向の位置決め精度を確保しながら製造効率も向上させる。
【解決手段】圧電素子保持板110に複数の挿通孔110hを形成し、この挿通孔に中空形状のガイド部材112を挿通させて圧電素子保持板110を積層する。その後、ガイド部材112の中空部分に与圧ボルト114を通して上部部材102と下部部材104とを締結することによって、圧電素子保持板110(圧電素子)を与圧する。ここで、ガイド部材112の中空部分を与圧ボルト114の外径よりも小さくしておき、与圧ボルト114を通すとガイド部材112が押し広げられて挿通孔に当接するようにしておく。こうすれば、圧電素子保持板110の積層時には、挿通孔とガイド部材との間に隙間があるので迅速に積層することができ、積層後は与圧ボルト114を通してガイド部材112を押し広げることで、圧電素子保持板110を精度良く位置決めすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力センサー、力検出装置、ロボットハンド、ロボット、および力センサーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶などの特定の結晶や特定のセラミックなどが呈する圧電効果を利用して、力を検出する力センサーが広く知られている。この力センサーでは、出力感度を高めるために、複数の圧電部材を積層することがある。
【0003】
また、水晶などの結晶を圧電部材として用いる場合は、結晶方位による圧電効果の異方性によって、加えられた力成分を分解して検出することも可能である。このような力センサーでは、多方向の力成分を測定可能とするために、複数の圧電部材を積層することがある。
【0004】
これら力センサーに加わる荷重は、圧電部材によって主に支えられる。このため、複数の圧電部材を積層する場合、圧電部材の水平方向(積層方向に対して直角な方向)への位置がずれると圧電部材の荷重を受ける面積が減少してしまい、出力感度の低下や、応力集中による圧電部材の破壊などが生じる。そこで、例えば特許文献1では、円環形状の薄い圧電部材をケースの内周側面で位置決めしながら積層することによって、複数の圧電部材が水平方向に位置ずれすることを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−17579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記提案の技術では、圧電部材の水平方向の位置決め精度を損なうことなく、力センサーの製造効率を向上させることが困難であるという問題があった。すなわち、圧電部材の水平方向の位置決め精度を確保しようとして、圧電部材とケースの内周側面との間の隙間(あそび)を小さくすると、ケース内に複数の圧電部材を挿入して積層することが困難となるので力センサーの製造効率が低下する。そこで、ケース内で複数の圧電部材を容易に積層可能とするために圧電部材とケースの内周側面との間の隙間を広げると、今度は、圧電部材の水平方向の位置決め精度が低下する。このような理由から、圧電部材の水平方向の位置決め精度を向上させる要請と、力センサーの製造効率を向上させる要請とを同時に満足させることが難しいという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、圧電部材の水平方向の位置決め精度を十分に確保しながら、力センサーの製造効率を向上させることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の力センサーは次の構成を採用した。すなわち、
積層された複数の圧電素子が下部部材と上部部材との間で挟持されて、与圧ボルトによって与圧されて成る力センサーであって、
弾性材料によって中空形状に形成され、前記下部部材に立設された複数のガイド部材と、
前記ガイド部材が挿通する複数の挿通孔が形成されて、該複数の挿通孔の間に前記圧電素子が設けられた圧電素子保持板と
を備え、
前記下部部材および前記上部部材は、複数の前記挿通孔に前記ガイド部材が挿通されて積層された複数の前記圧電素子保持板を挟持した状態で、該ガイド部材の中空部分に通した前記与圧ボルトを用いて互いに締結される
ことを特徴とする。
【0009】
また、上述した力センサーに対応する本発明の力センサーの製造方法は、
積層された複数の圧電素子が下部部材と上部部材との間で挟持されて、与圧ボルトによって与圧されて成る力センサーの製造方法であって、
弾性材料によって中空形状に形成された複数のガイド部材を、前記下部部材の所定位置に立設する第1の工程と、
複数の挿通孔が形成されて該複数の挿通孔の間に前記圧電素子が設けられた複数の圧電素子保持板を、該複数の挿通孔に前記ガイド部材を挿通させて積層する第2の工程と、
積層された複数の前記圧電素子保持板の上に前記上部部材を載置する第3の工程と、
前記ガイド部材の中空部分よりも軸径が大きな前記与圧ボルトを、前記上部部材に設けられたボルト孔から前記ガイド部材の前記中空部分に挿入する第4の工程と、
前記与圧ボルトを用いて前記上部部材と前記下部部材とを締結する第5の工程と
を備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成を有する本発明の力センサー、あるいは本発明の製造方法によって製造された力センサーにおいては、圧電素子が設けられた複数の圧電素子保持板が積層されて、上部部材と下部部材との間で挟持された状態で、与圧ボルトによって与圧されている。圧電素子保持板には複数の挿通孔が形成されており、複数の圧電素子保持板は、挿通孔にガイド部材を挿通して積層された後、ガイド部材の中空部分に与圧ボルトを通して上部部材と下部部材とが締結される。
【0011】
こうすれば、複数の圧電素子保持板を積層する段階では、圧電素子保持板の挿通孔をガイド部材に通すことによって、複数の圧電素子保持板を位置決めしながら迅速に積層することができる。そして、圧電素子保持板の積層後は、ガイド部材の中空部分に与圧ボルトを通すことによって、そのままの状態で、複数の圧電素子保持板(および圧電素子)を与圧ボルトによって与圧することができる。このため、本発明の力センサー、あるいは本発明の製造方法によって製造される力センサーは、複数の圧電素子保持板(および圧電素子)を精度良く位置決めしながら、効率よく製造することが可能となる。
【0012】
また、上述した本発明の力センサーにおいては、ガイド部材の中空部分を、与圧ボルトの外径よりも小さく形成しておいてもよい。そして、ガイド部材を圧電素子保持板の挿通孔に挿通させた状態で中空部分に与圧ボルトを通すと、ガイド部材が与圧ボルトによって押し広げられて、ガイド部材の外側が挿通孔に当接するようにしてもよい。
【0013】
こうすれば、複数の圧電素子保持板を積層する段階では、ガイド部材が与圧ボルトで押し広げられていないので、圧電素子保持板の挿通孔とガイド部材との間に隙間ができている。このため、複数の圧電素子保持板を迅速に積層することができる。そして、圧電素子保持板の積層後は、ガイド部材の中空部分に与圧ボルトを通すとガイド部材が押し広げられて、圧電素子保持板の挿通孔に当接する。この結果、積層された複数の圧電素子保持板をより一層精度良く位置決めすることが可能となる。
【0014】
また、上述した本発明の力センサーにおいては、圧電素子保持板と同様に複数の挿通孔が形成された複数の電極板を、圧電素子保持板と交互に積層することとして、ガイド部材を絶縁材料によって形成するようにしてもよい。
こうすれば、与圧ボルトを通して押し広げられたガイド部材が電極板に接触しても、電極板同士が電気的に短絡することを回避することができる。
【0015】
また、上述した本発明の力センサーにおいては、互いに直交するx方向,y方向,z方向の三軸に対し、圧電素子が、x方向の力に感度を有するx方向用圧電素子が設けられた圧電素子保持板と、y方向の力に感度を有するy方向用圧電素子が設けられた圧電素子保持板と、z方向の力に感度を有するz方向用圧電素子が設けられた圧電素子保持板と、を積層することにより、三軸方向の力を検出することができるようにしてもよい。
このようにすれば、1つの力センサーで、三軸方向の力を検出することが可能となる。
【0016】
また、本発明の力検出装置は、上述した力センサーを2つ以上備え、所望の軸回りのモーメントを検出することができるようにしてもよい。
こうすれば、軸方向の力成分だけでなく、軸回りのモーメントも容易に検出することが可能となる。
【0017】
また、本発明の力センサーをロボットハンドあるいはロボットに搭載しても良い。
ロボットハンドやロボットには多数の力センサーが搭載されることが通常であるが、上述したように本発明の力センサーは、圧電素子が精度良く位置決めされて積層されており、しかも効率よく製造することができるので、ロボットハンドあるいはロボットに搭載する力センサーとして特に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施例の力センサーの構造を示した分解斜視図である。
【図2】力センサーを構成する複数の水晶圧電素子や電極板の電気的な接続関係を模式的に示した説明図である。
【図3】本実施例の力センサーで複数の水晶圧電素子を位置決めしながら積層する方法を示した説明図である。
【図4】変形例のスリーブの外観形状を示す斜視図である。
【図5】4つの力センサーを備えた力検出装置の外観形状を示す斜視図である。
【図6】本実施例の力検出装置を搭載したロボットハンドおよびロボットを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.力センサーの構成:
B.力センサーの動作:
C.水晶圧電素子の位置決め方法:
D.力検出装置:
【0020】
A.力センサーの構成:
図1は、本実施例の力センサー100の構造を示した分解斜視図である。図1に示されるように力センサー100は、上部プレート102と下部プレート104との間に、電極板106と、水晶圧電素子108が設けられたフッ素樹脂スペーサー110とを、交互に複数積層して構成されている。電極板106は、導電性を備える金属、例えば、チタニウム、アルミニウム、銅、鉄などの単体もしくは合金を用いることができる。例えば、鉄合金としてステンレススチールを用いることも可能であり、耐久性,耐食性が優れることから好適に用いられる。フッ素樹脂スペーサー110の中央部には、正方形状の貫通穴が開いており、その貫通穴内に、外周形状が正方形の水晶圧電素子108が配置されることによって、水晶圧電素子108はxy平面において位置決めされる。尚、本実施例では上部プレート102が本発明における「上部部材」に対応し、下部プレート104が本発明における「下部部材」に対応する。また、フッ素樹脂スペーサー110が本発明における「圧電素子保持板」に対応する。
【0021】
上部プレート102には、2つのボルト孔116が開いている。各フッ素樹脂スペーサー110には、2つずつ円形状の挿通孔110hが開いている。同様に各電極板106にも、2つずつ円形状の挿通孔106hが開いている。一方、上部プレート102と下部プレート104との間には、円筒のパイプ形状を成すフッ素ゴム製のスリーブ112が2つ配置されている。上部プレート102と下部プレート104との間に、各電極板106および各フッ素樹脂スペーサー110をそれぞれ積層する際、電極板106およびフッ素樹脂スペーサー110にそれぞれ設けられた2つの円形の挿通孔106h、110hに、2つのスリーブ112がそれぞれ挿通するように積層する。複数のフッ素樹脂スペーサー110は、2つの挿通孔110hでスリーブ112にガイドされるので、大まかに位置決めされながら積層される。その上で、上部プレート102の上方より2本の与圧ボルト114をボルト孔116に挿入し、スリーブ112内を貫挿し、下部プレート104に螺合する。詳細には後述するが、与圧ボルト114をスリーブ112に貫挿することによって、複数のフッ素樹脂スペーサー110がより精度良く位置決めされ(従って、フッ素樹脂スペーサー110の水晶圧電素子108も精度良く位置決めされ)、ボルト孔116を用いて上部プレート102と下部プレート104とを螺合することによって、位置決めされた水晶圧電素子108が、z方向に一定の力で与圧される。尚、本実施例ではスリーブ112が、本発明における「ガイド部材」に対応する。
【0022】
図2は、力センサー100を構成する複数の水晶圧電素子108および電極板106の電気的な接続関係を模式的に示した説明図である。図2に示されるように、上部プレート102と下部プレート104との間には、正確には、7枚の電極板106a〜106gと、6つの水晶圧電素子108a〜108fが積層されている。7枚の電極板106a〜106gのうち、電極板106b,106d,106fは、それぞれ、出力信号線に接続されている。また、電極板106a,106c,106e,106gは、それぞれ、接地されている。
【0023】
一方、6つの水晶圧電素子108a〜108fのうち、真ん中の2つの水晶圧電素子108c,108dは、圧縮方向、すなわち、z方向の力に感度を有する水晶圧電素子(z方向用水晶圧電素子)である。水晶のX方位は矢印で示すようにz方向に沿っており、上に位置する水晶圧電素子108cと下に位置する水晶圧電素子108dとで、互いに逆向きになっている。下側の2つの水晶圧電素子108e,108fは、水平方向のうち、x方向の力に感度を有する水晶圧電素子(x方向用水晶圧電素子)である。水晶のX方位は矢印で示すようにx方向に沿っており、上に位置する水晶圧電素子108eと下に位置する水晶圧電素子108fとで、互いに逆向きになっている。上側の2つの水晶圧電素子108a,108bは、水平方向のうち、y方向の力に感度を有する水晶圧電素子(y方向用水晶圧電素子)である。水晶のX方位は記号で示すようにy方向に沿っており、上に位置する水晶圧電素子108aと下に位置する水晶圧電素子108bとで、互いに逆向きになっている。
【0024】
B.力センサーの動作:
力センサー100に力が加わった場合、上部プレート102および下部プレート104は、その力を受けて、各水晶圧電素子108a〜108fに伝達する。各水晶圧電素子108a〜108fは、それぞれ、圧電効果によって、水晶の結晶方位に応じた力成分を検出する。すなわち、図2に示すように、y方向用水晶圧電素子108a,108bでは、前述したとおり、水晶のX方位がy方向に沿っているため、y方向の力成分を検出し、その検出値に基づいた電気信号をFy信号として電極板106bより出力信号線へと出力する。同様に、z方向用水晶圧電素子108c,108dでは、水晶のX方位がz方向に沿っているため、z方向の力成分を検出し、その検出値に基づいた電気信号をFz信号として電極板106dより出力信号線へと出力する。x方向用水晶圧電素子108e,108fでは、水晶のX方位がx方向に沿っているため、x方向の力成分を検出し、その検出値に基づいた電気信号をFx信号として電極板106fより出力信号線へと出力する。
【0025】
このような力センサー100の動作原理から明らかなように、x方向用水晶圧電素子108e,108fの結晶方位が正確にx方向を向いており、且つ、y方向用水晶圧電素子108a,108bの結晶方位が正確にy方向を向いていなければ、x方向およびy方向の力成分を精度良く検出することができない。また、水晶圧電素子108には大きな力が加わるため、水晶圧電素子108a〜fの位置が水平方向(xy方向)にずれていると水晶圧電素子108に応力集中が発生し易くなり、力センサー100に力が加わった際、水晶圧電素子108が破壊するおそれが生じる。従って、水晶圧電素子108a〜fの結晶方位が正確な方向を向くように、且つ、水晶圧電素子108a〜fの位置がずれないように、水晶圧電素子108を精度良く位置決めしながら積層する必要がある。そこで、本実施例の力センサー100は、次のような方法で水晶圧電素子108を位置決めしている。
【0026】
C.水晶圧電素子の位置決め方法:
図3は、本実施例の力センサー100で複数の水晶圧電素子108を位置決めしながら積層する方法を示した説明図である。前述したように、水晶圧電素子108はフッ素樹脂スペーサー110のほぼ中央に嵌め込まれ、フッ素樹脂スペーサー110には、水晶圧電素子108の両側に挿通孔110hが形成されている(図1参照)。力センサー100を組み立てる際には、下部プレート104の上に立設させたスリーブ112を挿通孔110hに挿通させながら、複数枚のフッ素樹脂スペーサー110および電極板106を交互に積層した後、その上から上部プレート102を載せて、上部プレート102と下部プレート104を与圧ボルト114で締結する。図3(a)には、下部プレート104の上に複数枚のフッ素樹脂スペーサー110および電極板106を交互に積層している様子を表している。
【0027】
図3(a)に示されるように、フッ素樹脂スペーサー110および電極板106は、スリーブ112によってガイドされながら積層される。ここで、フッ素樹脂スペーサー110の挿通孔110hの内径は、スリーブ112の外径よりも直径にして0.2mm〜1mm程度大きく形成されている。このため、挿通孔110hにスリーブ112を容易に挿通させることができるので、複数のフッ素樹脂スペーサー110を迅速に積層することが可能である。また、電極板106の挿通孔106hの内径は、挿通孔110hの内径よりも更に大きく形成されている。このため、複数の電極板106についても迅速に積層することができる。
【0028】
全てのフッ素樹脂スペーサー110および電極板106を積層したら、その上から上部プレート102を載せた後、上部プレート102に設けられたボルト孔116から与圧ボルト114を挿入する。そして、スリーブ112の中空部分112hを貫通して下部プレート104のネジ穴104hに達するまで、与圧ボルト114を貫挿する。図3(b)には、スリーブ112の中空部分112hに与圧ボルト114を貫挿した状態が示されている。
【0029】
ここで、スリーブ112の中空部分112hの内径は、与圧ボルト114の外径よりも少しだけ小さく形成されている。このため、スリーブ112の中空部分112hに与圧ボルト114を挿通させると、スリーブ112の外径が少しだけ大きくなる。そして、与圧ボルト114が挿通されていない状態でのスリーブ112の外径および内径は、与圧ボルト114が挿通されることによってスリーブ112の外径が、挿通孔110hの内径と等しくなるように設定されている。このため与圧ボルト114が貫挿されると、スリーブ112は、大まかに位置決めされた複数のフッ素樹脂スペーサー110を、より精度良く位置決めされるように修正する方向に挿通孔110hの内側を押圧する。加えて、与圧ボルト114をスリーブ112の中空部分112hに貫挿しただけでは、フッ素樹脂スペーサー110はまだ与圧された状態とはなっていない。このため、フッ素樹脂スペーサー110はスリーブ112から押圧される力で移動して、精度良く位置決めされることになる(図3(b)参照)。そして複数のフッ素樹脂スペーサー110が精度良く位置決めされた状態で、与圧ボルト114を締め付けることにより、複数のフッ素樹脂スペーサー110が上部プレート102と下部プレート104との間で与圧された状態となる。
【0030】
このように本実施例の力センサー100は、フッ素樹脂スペーサー110を積層する段階では、スリーブ112をガイドにして大まかに位置決めしながら積層する。積層時の位置決めは大まかな位置決めでよいので、複数のフッ素樹脂スペーサー110を迅速に積層することができる。そして積層した複数のフッ素樹脂スペーサー110を与圧するために、スリーブ112の中空部分112hに与圧ボルト114を挿通させると、大まかに位置決めされていたフッ素樹脂スペーサー110の位置がスリーブ112によって修正されて、より精度良く位置決めされた状態となる。そして、その状態で与圧ボルト114によってフッ素樹脂スペーサー110(および水晶圧電素子108)が与圧される。このため、フッ素樹脂スペーサー110(および水晶圧電素子108)を精度良く位置決めして積層された力センサー100を、迅速に製造することが可能となる。
【0031】
尚、上述した実施例では、スリーブ112がフッ素ゴムで形成されているものとして説明したが、弾性があり且つ絶縁性がある材料であれば、フッ素ゴム以外の材料を用いてスリーブ112を形成しても良い。但し、スリーブ112の中空部分112hには与圧ボルト114が貫挿されるので、フッ素ゴムのように与圧ボルト114の滑りの良い材料(摩擦係数が小さい材料)を用いることが望ましい。
【0032】
また、上述した実施例では、与圧ボルト114が貫挿されることによってスリーブ112の外径が挿通孔110hの内径と等しくなるものとして説明した。しかし、スリーブ112は弾性材料で形成されているので、挿通孔110hの内径よりも少しだけ(例えば直径にして10μm〜50μm程度)大きくなるようにしても良い。こうすれば、フッ素樹脂スペーサー110の挿通孔110hや、スリーブ112や、与圧ボルト114の製造ばらつきの影響で、与圧ボルト114を貫挿してもスリーブ112が挿通孔110hに当接せずにフッ素樹脂スペーサー110を位置決めできない事態の発生を回避することができる。
【0033】
また、上述した実施例では、スリーブ112は、断面が円環形のチューブ形状に形成されているものとして説明した。しかし、スリーブ112は、外周面あるいは内周面に突起が設けられた形状としてもよい。もちろん、外周面および内周面のそれぞれに複数の突起を設けても良い。例えば、図4(a)に示した変形例のスリーブ112のように、外周面に複数本の突条112aを設けておけば、中空部分112hに与圧ボルト114を挿通した時に、突条112aが当接して挿通孔110hを押圧する。こうすれば、挿通孔110hが強く押圧されると、フッ素樹脂スペーサー110が変形する前に突条112aが変形するので、フッ素樹脂スペーサー110が損傷を受けることがない。
【0034】
あるいは図4(b)に示した変形例のスリーブ112のように、内周面に複数本の突条112bを設けた場合には、与圧ボルト114との接触面が小さくなるので、与圧ボルト114を中空部分112hに容易に貫挿させることができる。また、与圧ボルト114を貫挿させると、内周面に突条112bが設けられた部分が外側に膨らんで挿通孔110hを押圧する。このため、たとえ挿通孔110hが強く押圧される部分が生じても、その部分のスリーブ112の外周面、あるいは突条112bが変形することとなって、フッ素樹脂スペーサー110が損傷を受けることがない。
【0035】
D.力検出装置:
図5は、図1に示す力センサー100を4つ備えた力検出装置200の外観を示す斜視図である。図5に示されるように、力検出装置200では、上部プレート102および下部プレート104は、それぞれ円板形状を成しており、各力センサー100a〜100dで共有されている。各力センサー100a〜100dは、それぞれ、円周に沿って、90度ずつ隔てて配置されており、3つ以上の力センサー100が同一直線上に並ばないように配置されている。
【0036】
前述したとおり、力センサー100は、力センサー100に加わる力をxyz方向の力成分に分解した状態で検出することができる。そのため、力検出装置200では、任意の2つの力センサー100を組み合わせることによって、一方向のモーメントを検出することができる。しかも、力検出装置200では、3つ以上の力センサー100を用い、それら力センサー100が同一の直線上に並ばないように配置しているので、三軸方向の力、および三軸回りのモーメントを同時に検出することができる。
【0037】
以上、本実施例の力センサー100および力検出装置200について説明したが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0038】
例えば、上述した実施例では、圧電素子を構成する圧電材料として、水晶を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。圧電材料としては、水晶の他に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BaTiO)などのチタン酸系セラミックス、およびニオブ酸リチウム(LiNbO)、酸化亜鉛(ZnO)などが好適に用いられる。
【0039】
また、図6に例示したように、本実施例の力検出装置200を用いてロボットハンド300、あるいはロボット400を構成しても良い。本実施例の力検出装置200は、軸方向の力だけでなく、軸回りのモーメントも計測できることから、小型で高性能のロボットハンドあるいはロボットを実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
100…力センサー、 100a〜d…力センサー、 102…上部プレート、
104…下部プレート、 104h…ネジ穴、 106…電極板、
106a〜g…電極板、 106h…挿通孔、 108…水晶圧電素子、
108a〜f…水晶圧電素子、 110…フッ素樹脂スペーサー、
110h…挿通孔、 112…スリーブ、 112a,b…突条、
112h…中空部分、 114…与圧ボルト、 116…ボルト孔、
200…力検出装置、 300…ロボットハンド、 400…ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の圧電素子が下部部材と上部部材との間で挟持されて、与圧ボルトによって与圧されて成る力センサーであって、
弾性材料によって中空形状に形成され、前記下部部材に立設された複数のガイド部材と、
前記ガイド部材が挿通する複数の挿通孔が形成されて、該複数の挿通孔の間に前記圧電素子が設けられた圧電素子保持板と
を備え、
前記下部部材および前記上部部材は、複数の前記挿通孔に前記ガイド部材が挿通されて積層された複数の前記圧電素子保持板を挟持した状態で、該ガイド部材の中空部分に通した前記与圧ボルトを用いて互いに締結される部材である
ことを特徴とする力センサー。
【請求項2】
請求項1に記載の力センサーであって、
前記ガイド部材は、前記中空部分が前記与圧ボルトの外径よりも小さく形成されており、該ガイド部材を前記圧電素子保持板の前記挿通孔に挿通させた状態で前記中空部分に前記与圧ボルトを通すと、該与圧ボルトによって押し広げられて該挿通孔に当接する
ことを特徴とする力センサー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の力センサーであって、
複数の前記ガイド部材が挿通する複数の挿通孔が形成されて、前記複数の圧電素子保持板と交互に積層された複数の電極板を備え、
前記ガイド部材は、絶縁材料によって形成されている
ことを特徴とする力センサー。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の力センサーであって、
互いに直交するx方向,y方向,z方向の三軸に対し、前記圧電素子保持板は、x方向の力に感度を有するx方向用圧電素子が設けられた圧電素子保持板と、y方向の力に感度を有するy方向用圧電素子が設けられた圧電素子保持板と、z方向の力に感度を有するz方向用圧電素子が設けられた圧電素子保持板と、を含み、前記三軸方向の力を検出する
ことを特徴とする力センサー。
【請求項5】
加えられた力を検出する力検出装置であって、
請求項4に記載の力センサーを2つ以上備え、所望の軸回りのモーメントを検出する
ことを特徴とする力検出装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の力センサーを搭載したロボットハンド。
【請求項7】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の力センサーを搭載したロボット。
【請求項8】
積層された複数の圧電素子が下部部材と上部部材との間で挟持されて、与圧ボルトによって与圧されて成る力センサーの製造方法であって、
弾性材料によって中空形状に形成された複数のガイド部材を、前記下部部材の所定位置に立設する第1の工程と、
複数の挿通孔が形成されて該複数の挿通孔の間に前記圧電素子が設けられた複数の圧電素子保持板を、該複数の挿通孔に前記ガイド部材を挿通させて積層する第2の工程と、
積層された複数の前記圧電素子保持板の上に前記上部部材を載置する第3の工程と、
前記ガイド部材の中空部分よりも軸径が大きな前記与圧ボルトを、前記上部部材に設けられたボルト孔から前記ガイド部材の前記中空部分に挿入する第4の工程と、
前記与圧ボルトを用いて前記上部部材と前記下部部材とを締結する第5の工程と
を備えることを特徴とする力センサーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−64623(P2013−64623A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202802(P2011−202802)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】