説明

力覚システム

【課題】ユーザに対して力覚を付与すること。
【解決手段】ユーザUに対して力覚を付与する力覚付与手段を具備していて、互いに離されてユーザUに携帯される複数の力覚装置100、200を備え、力覚装置100、200は、ユーザUに対して所定の方向への力覚を付与させるべく、自装置が具備している力覚付与手段を制御する力覚制御部を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚システムに関する。特に本発明は、ユーザに対して力覚を付与する力覚システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチモーダル・インターフェースは、次世代マルチメディアと関連して、五感の全てを情報提示に用いるインターフェースとして注目されている。特に、物体に触っている触覚や、その物体から受ける力覚等の感覚を提示するインターフェースは、臨場感の大幅な増大に繋がるため、既知のインターフェースの操作性や、情報の知覚、情報の理解を向上させることができる。
【0003】
従来、力覚情報提示デバイスを利用して人を目的地に誘導する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4002970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術は、ディスプレイや音声ガイドによる視覚、聴覚情報に加えて、力覚感覚を利用して進行すべき方向を直感的に理解し易い形で提示することができる。しかしながら、一の力覚装置で付与することのできる力覚の種類には限りがあり、例えば、力覚感覚を利用して、進行方向に対して体の向きを左側に回転させることを想定した場合、それが体の向きを変えさせようとする力覚なのか、左方向に進ませようとする力覚なのか区別することができない。本発明の実施形態は、従来の技術の上述の欠点を解消することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によると、ユーザに対して力覚を付与する力覚システムであって、ユーザに対して力覚を付与する力覚付与手段を具備する複数の力覚装置を備え、力覚装置は、ユーザに対して所定の方向への力覚を付与させるべく、自装置が具備している力覚付与手段を制御する力覚制御部を具備し、力覚装置のうちのいずれか一の力覚装置、又は力覚装置以外の装置であって力覚付与手段を具備していない非力覚装置は、他の力覚装置を制御するマスター装置として動作し、マスター装置以外の他の力覚装置は、マスター装置から制御されるスレーブ装置として動作する。
【0007】
マスター装置は、各力覚付与手段により付与すべき力覚について、当該マスター装置の姿勢の状態から視た各力覚の方向をそれぞれ算出する力覚方向算出部を有し、力覚装置の力覚制御部は、マスター装置の力覚方向算出部が算出した方向に相当する方向への力覚を付与させるべく、自装置が具備している力覚付与手段を制御してよい。
【0008】
マスター装置及び/又はスレーブ装置は、マスター装置及びスレーブ装置に共通の基準姿勢に対するマスター装置の姿勢のズレ量と、共通の基準姿勢に対するスレーブ装置の姿勢のズレ量とに基づいて、マスター装置の力覚方向算出部が算出したマスター装置の姿勢の状態から視た力覚の方向を、スレーブ装置の姿勢の状態から視た方向に変換する力覚方向変換部を更に有し、スレーブ装置の力覚制御部は、力覚方向変換部が変換した後の方向への力覚を付与させるべく、自装置が具備している力覚付与手段を制御してよい。なおまた、基準姿勢や姿勢のズレ量の詳細は、後述する。
【0009】
マスター装置及びスレーブ装置は、マスター装置及びスレーブ装置に共通の基準姿勢に対する自装置の姿勢のズレ量を算出する姿勢ズレ量算出部を更に有し、マスター装置又はスレーブ装置の力覚方向変換部は、マスター装置の姿勢ズレ量算出部が算出したマスター装置の姿勢のズレ量と、スレーブ装置の姿勢ズレ量算出部が算出したスレーブ装置の姿勢のズレ量とに基づいて、マスター装置の力覚方向算出部が算出したマスター装置の姿勢の状態から視た力覚の方向を、スレーブ装置の姿勢の状態から視た方向に変換してよい。
【0010】
マスター装置及び/又はスレーブ装置は、ユーザに対して力覚を付与する切っ掛けとなるイベントの発生を検知するイベント検知部を更に有し、マスター装置の力覚方向算出部は、イベント検知部がイベントの発生を検知した場合に、各力覚付与手段により付与すべき力覚について、当該マスター装置の姿勢の状態から視た各力覚の方向をそれぞれ算出してよい。
【0011】
なおまた、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、複数の力覚装置を備え、例えば、個別に付与される各力覚の方向の組合せに対してそれぞれ意味を持たせることによって、進行方向と共にその方向の状況を案内する等、ユーザに対して付加的な案内を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る力覚システム1の利用環境の一例を示す図である。
【図2】マスター力覚装置100の構成の一例を示す図である。
【図3】スレーブ力覚装置200の構成の一例を示す図である。
【図4】力覚付与インターフェース180、280の構造の一例を示す図である。
【図5】マスター力覚装置100の制御部110の構成の一例を示す図である。
【図6】スレーブ力覚装置200の制御部210の構成の一例を示す図である。
【図7】マスター力覚装置100、及びスレーブ力覚装置200の動作シーケンスの一例を示す図である。
【図8】マスター力覚装置100とスレーブ力覚装置200のキャリブレーション方法の一例を示す図である。
【図9】ユーザUをナビゲーションするために利用する地図の一例を示す図である。
【図10】現在地Sにおいて付与すべき力覚の方向の一例を示す図である。
【図11】共通の基準姿勢に対するマスター力覚装置100及びスレーブ力覚装置200の傾きと、マスター力覚装置100の姿勢から視た力覚の方向の一例を示す図である。
【図12】第1の交差点Iにおいて付与すべき力覚の方向の一例を示す図である。
【図13】第2の実施形態に係る力覚システムの利用環境の一例を示す図である。
【図14】マスター力覚装置300の構成の一例を示す図である。
【図15】スレーブ力覚装置400の構成の一例を示す図である。
【図16】マスター力覚装置300の制御部310の構成の一例を示す図である。
【図17】スレーブ力覚装置400の制御部410の構成の一例を示す図である。
【図18】マスター力覚装置300、及びスレーブ力覚装置400の動作シーケンスの一例を示す図である。
【図19】第3の実施形態に係る力覚システムの利用環境の一例を示す図である。
【図20】マスター非力覚装置500の構成の一例を示す図である。
【図21】マスター非力覚装置500の制御部510の構成の一例を示す図である。
【図22】マスター非力覚装置500、及び各スレーブ力覚装置200の動作シーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る力覚システム1の利用環境の一例を示す。力覚システム1は、ユーザUに対して力覚を付与する。力覚は、物体がユーザUに与える力の感覚である。
【0016】
第1の実施形態に係る力覚システム1は、マスター力覚装置100、及びスレーブ力覚装置200を備える。マスター力覚装置100は、スレーブ力覚装置200とブルートゥース(Bluetooth(登録商標))信号により無線接続される。そして、マスター力覚装置100は、通信接続を介してスレーブ力覚装置200を制御する。
【0017】
マスター力覚装置100は、ユーザUの右腰RWに取り付けられている。そして、マスター力覚装置100は、右腰RWに対して力覚を付与する。また、スレーブ力覚装置200は、ユーザUの左腰LWに取り付けられている。そして、スレーブ力覚装置200は、左腰LWに対して力覚を付与する。
【0018】
また、本実施形態においては、説明が煩雑になることを防ぐことを目的として、力覚システム1が1個スレーブ力覚装置200を備える構成について説明するが、力覚システム1は、複数個のスレーブ力覚装置200を備えてよい。
【0019】
図2は、マスター力覚装置100の構成の一例を示す。マスター力覚装置100は、制御部110、メモリ130、ジャイロスコープ140、GPS(Global Positioning System)受信機150、磁気コンパス160、加速度センサー170、力覚付与インターフェース180、及びトランシーバ190を具備する。
【0020】
制御部110は、メモリ130、ジャイロスコープ140、GPS受信機150、磁気コンパス160、加速度センサー170、力覚付与インターフェース180、及びトランシーバ190の制御を行う。より具体的に説明すると、制御部110は、メモリ130、ジャイロスコープ140、GPS受信機150、磁気コンパス160、加速度センサー170、力覚付与インターフェース180、及びトランシーバ190とそれぞれ電気的に接続されている。そして、制御部110は、メモリ130、ジャイロスコープ140、GPS受信機150、磁気コンパス160、加速度センサー170、トランシーバ190からデータを受け取り、このデータについて演算、加工を行った上で、そのデータをメモリ130や、力覚付与インターフェース180や、トランシーバ190に出力する。
【0021】
メモリ130は、マスター力覚装置100が処理すべきデータを記憶する。より具体的に説明すると、メモリ130は、制御部110と電気的に接続されている。そして、メモリ130は、制御部110から出力されたデータを記憶する。そして、メモリ130に記憶されているデータは、制御部110から読み出される。
【0022】
ジャイロスコープ140は、マスター力覚装置100の角度を測定する計器である。より具体的に説明すると、ジャイロスコープ140は、制御部110と電気的に接続されている。そして、ジャイロスコープ140は、測定したマスター力覚装置100の角度、角速度を示すデータを、制御部110へ出力する。
【0023】
GPS受信機150は、複数のGPS衛星からの電波を受信して、それぞれとの距離を割り出すことにより、マスター力覚装置100の現在地を測定する部品である。より具体的に説明すると、GPS受信機150は、制御部110と電気的に接続されている。そして、GPS受信機150は、測定した現在地を示すデータを、制御部110へ出力する。
【0024】
磁気コンパス160は、地磁気を利用して、方位を測定する計器である。より具体的に説明すると、磁気コンパス160は、制御部110と電気的に接続されている。そして、磁気コンパス160は、測定した方位を示すデータを、制御部110へ出力する。
【0025】
加速度センサー170は、マスター力覚装置100の加速度を測定するための部品である。より具体的に説明すると、加速度センサー170は、制御部110と電気的に接続されている。そして、加速度センサー170は、測定した加速度を示すデータを、制御部110へ出力する。
【0026】
力覚付与インターフェース180は、ユーザUの右腰RWに対して力覚を付与する部材である。より具体的に説明すると、力覚付与インターフェース180は、制御部110と電気的に接続されている。そして、力覚付与インターフェース180は、制御部110から制御されて、右腰RWに対して力覚を付与する。なおまた、力覚付与インターフェース180は、この実施形態における力覚付与手段の一例であって、力覚付与手段はこれに限定されない。
【0027】
トランシーバ190は、ブルートゥース信号を中継する部材である。より具体的に説明すると、トランシーバ190は、制御部110と電気的に接続されている。そして、トランシーバ190は、制御部110から出力されたデータを、スレーブ力覚装置200へブルートゥース信号に乗せて送信する。また、トランシーバ190は、スレーブ力覚装置200からブルートゥース信号に乗せて送信されたデータを受信して、制御部110へ出力する。
【0028】
図3は、スレーブ力覚装置200の構成の一例を示す。スレーブ力覚装置200は、制御部210、メモリ230、ジャイロスコープ240、加速度センサー270、力覚付与インターフェース280、及びトランシーバ290を具備する。
【0029】
制御部210は、スレーブ力覚装置200を構成する部材の一つで、メモリ230、ジャイロスコープ240、力覚付与インターフェース280、及びトランシーバ290の制御やデータの演算、加工を行う部材である。より具体的に説明すると、制御部210は、メモリ230、ジャイロスコープ240、力覚付与インターフェース280、及びトランシーバ290とそれぞれ電気的に接続されている。そして、制御部210は、メモリ230、ジャイロスコープ240、加速度センサー270からデータを受け取り、演算、加工を行った上で、メモリ230や、力覚付与インターフェース280や、トランシーバ290に出力する。
【0030】
メモリ230は、スレーブ力覚装置200が処理すべきデータを、記憶するのに使う部材である。より具体的に説明すると、メモリ230は、制御部210と電気的に接続されている。そして、メモリ230は、制御部210から出力されたデータを記憶する。そして、メモリ230に記憶されているデータは、制御部210から読み出される。
【0031】
ジャイロスコープ240は、スレーブ力覚装置200の角度、角速度を測定する部材である。より具体的に説明すると、ジャイロスコープ240は、制御部210と電気的に接続されている。そして、ジャイロスコープ240は、測定したスレーブ力覚装置200の角度、角速度を示すデータを、制御部210へ出力する。
【0032】
加速度センサー270は、スレーブ力覚装置200の加速度を測定するための部品である。より具体的に説明すると、加速度センサー270は、制御部210と電気的に接続されている。そして、加速度センサー270は、測定した加速度を示すデータを、制御部210へ出力する。
【0033】
力覚付与インターフェース280は、ユーザUの左腰LWに対して力覚を付与する部材である。より具体的に説明すると、力覚付与インターフェース280は、制御部210と電気的に接続されている。そして、力覚付与インターフェース280は、制御部210から制御されて、ユーザUの左腰LWに対して力覚を付与する。なおまた、力覚付与インターフェース280は、この実施形態における力覚付与手段の一例であって、力覚付与手段はこれに限定されない。
【0034】
トランシーバ290は、ブルートゥース信号を中継する部材である。より具体的に説明すると、トランシーバ290は、制御部210と電気的に接続されている。そして、トランシーバ290は、制御部210から出力されたデータを、マスター力覚装置100へブルートゥース信号に乗せて送信する。また、トランシーバ290は、マスター力覚装置100からブルートゥース信号に乗せて送信されたデータを受信して、制御部210へ出力する。
【0035】
図4は、力覚付与インターフェース180、280の構造の一例を示す。力覚付与インターフェース180、280は、同じ構成を有している。力覚インターフェース180、280は、3つの回転子G、G、Gを具備する。力覚付与インターフェース180、280は、x軸、y軸、z軸に固定された3つの回転子の回転数ω、ω、ωを独立に制御して、それぞれの回転子が発生する角運動量を合成することで任意の方向に角運動量ベクトルを発生することができる。力覚付与インターフェース180、280は、これを適切に制御すれば任意の方向にトルクを発生させることができる。角運動量ベクトルLを変化させたときに発生するトルクは、以下のように表される。各x、y、z軸周りに角速度ωで回転する角運動量Lは、各軸周りの慣性モーメントをIとすると、L=Iω(i=x、y、z)と表される。これらの各軸周りの角運動量から構成される合成角運動量ベクトルは、x、y、z軸方向の基本ベクトルをi、j、kとすると、L=Li+Lj+Lkと表される。この合成角運動量ベクトルの時間微分が発生するトルクベクトルτ=dL/dtである。力覚付与インターフェース180、280は、x、y、z軸方向の角速度の比ω:ω:ωを変えることで任意の方向に角運動量ベクトルの発生方向を制御することができる。
【0036】
図5は、マスター力覚装置100の制御部110の構成の一例を示す。制御部110は、イベント検知部111、姿勢ズレ量算出部112、力覚方向算出部113、及び力覚制御部114を具備する。以下、各構成要素の機能及び動作を説明する。
【0037】
イベント検知部111は、ユーザUに対して力覚を付与する切っ掛けとなるイベントの発生を検知する。
【0038】
姿勢ズレ量算出部112は、マスター力覚装置100及びスレーブ力覚装置200に共通の基準姿勢に対するマスター力覚装置100の姿勢のズレ量を算出する。
【0039】
力覚方向算出部113は、力覚付与インターフェース180、280により付与すべき力覚について、マスター力覚装置100の姿勢の状態から視た各力覚の方向をそれぞれ算出する。例えば、力覚方向算出部は、イベント検知部111がイベントの発生を検知した場合に、力覚付与インターフェース180、280により付与すべき力覚について、マスター力覚装置100の姿勢の状態から視た各力覚の方向をそれぞれ算出する。
【0040】
力覚制御部114は、ユーザUの右腰RWに対して所定の方向への力覚を付与させるべく、力覚付与インターフェース180を制御する。例えば、力覚制御部114は、力覚方向算出部113が算出した方向に相当する所定の方向への力覚を付与させるべく、力覚付与インターフェース180を制御する。例えば、所定の方向とは、現在地と目的地との位置関係によって定まる方向とすることが考えられる。
【0041】
図6は、スレーブ力覚装置200の制御部210の構成の一例を示す。制御部210は、姿勢ズレ量算出部212、力覚方向変換部215、及び力覚制御部214を具備する。以下、各構成要素の機能及び動作を説明する。
【0042】
姿勢ズレ量算出部212は、マスター力覚装置100及びスレーブ力覚装置200に共通の基準姿勢に対するスレーブ力覚装置200の姿勢のズレ量を算出する。
【0043】
力覚方向変換部215は、マスター力覚装置100及びスレーブ力覚装置200に共通の基準姿勢に対するマスター力覚装置100の姿勢のズレ量と、共通の基準姿勢に対するスレーブ力覚装置200の姿勢のズレ量とに基づいて、マスター力覚装置100の力覚方向算出部113が算出したマスター力覚装置100の姿勢の状態から視た力覚の方向を、スレーブ力覚装置200の姿勢の状態から視た方向に変換する。例えば、力覚方向変換部215は、マスター力覚装置100の姿勢ズレ量算出部112が算出したマスター力覚装置100の姿勢のズレ量と、スレーブ力覚装置200の姿勢ズレ量算出部212が算出したスレーブ力覚装置200の姿勢のズレ量とに基づいて、マスター力覚装置100の力覚方向算出部113が算出したマスター力覚装置100の姿勢の状態から視た力覚の方向を、スレーブ力覚装置200の姿勢の状態から視た方向に変換する。
【0044】
力覚制御部214は、左腰LWに対して所定の方向への力覚を付与させるべく、力覚付与インターフェース280を制御する。例えば、力覚制御部214は、マスター力覚装置100の力覚方向算出部113が算出した方向に相当する方向への力覚を付与させるべく、力覚付与インターフェース280を制御する。また、例えば、力覚制御部214は、力覚方向変換部215が変換した後の方向への力覚を付与させるべく、力覚付与インターフェース280を制御する。
【0045】
図7は、マスター力覚装置100、及びスレーブ力覚装置200の動作シーケンスの一例を示す。この動作フローは、マスター力覚装置100、及びスレーブ力覚装置200を利用して、ユーザUをナビゲーション(誘導)する場合を例にとって説明する。
【0046】
ユーザUは、マスター力覚装置100、及びスレーブ力覚装置200を利用してナビゲーションを開始するにあたり、予め、マスター力覚装置100とスレーブ力覚装置200のキャリブレーション(校正)を行っておく。例えば、ユーザUは、図8に示すように、マスター力覚装置100とスレーブ力覚装置200とを重ねた状態で、マスター力覚装置100とスレーブ力覚装置200のキャリブレーション用のボタン(図示せず)を押下操作する等して、キャリブレーションを実行させる。
【0047】
このような操作がなされると、マスター力覚装置100の制御部110は、ジャイロスコープ140によって測定された角度を示すデータを、メモリ130に記憶させる。また、マスター力覚装置100の制御部110は、キャリブレーションを行った相対位置を原点とし、加速度センサー170によって測定された加速度を示すデータと、GPS受信機150によって測定された現在位置を示すデータを、メモリ130に記憶させる。同様に、スレーブ力覚装置200の制御部210は、ジャイロスコープ240によって測定された角度を示すデータを、メモリ230に記憶させる。また、スレーブ力覚装置200の制御部210は、キャリブレーションを行った相対位置を原点とし、加速度センサー270によって測定された加速度や位置、速度を示すデータを、メモリ130に記憶させる。
【0048】
図8は、マスター力覚装置100とスレーブ力覚装置200のキャリブレーション方法の一例を示す。マスター力覚装置100、及びスレーブ力覚装置200を同じ向きでピッタリと重ねる。マスター力覚装置100のメモリ130、及びスレーブ力覚装置200のメモリ230に記憶された各角度は、図8に示すように重ねられた状態で測定されたものである。したがって、その角度を示すX軸、Y軸、Z軸の値は、同一の値となり、その角度がマスター力覚装置100とスレーブ力覚装置200との共通の基準姿勢となる。即ち、図8での状態での位置情報は原点(0,0,0)となり、速度も(0,0,0)である。
【0049】
図7に戻って、マスター力覚装置100の姿勢ズレ量算出部112は、キャリブレーション後にマスター力覚装置100の姿勢が変化する度に、マスター力覚装置100及びスレーブ力覚装置200に共通の基準姿勢に対するマスター力覚装置100の姿勢のズレ量を算出する(S101)。例えば、姿勢ズレ量算出部112は、ジャイロスコープ140によって測定されたマスター力覚装置100の現在の姿勢(角度)を示すデータと、メモリ130に記憶されているマスター力覚装置100及びスレーブ力覚装置200に共通の基準姿勢を示すデータとに基づいて、基準姿勢に対する現在の姿勢のズレ量を算出する。また、姿勢ズレ量算出部112は、加速度センサー170によって測定された加速度情報と、メモリ130に記憶されている位置情報、速度情報から現在の位置情報、速度情報を算出する。
【0050】
同様に、スレーブ力覚装置200の姿勢ズレ量算出部212は、キャリブレーション後にスレーブ力覚装置200の姿勢が変化する度に、マスター力覚装置100及びスレーブ力覚装置200に共通の基準姿勢に対するスレーブ力覚装置200の姿勢のズレ量を算出する(S102)。そして、姿勢ズレ量算出部212は、算出したスレーブ力覚装置200の姿勢のズレ量を示すデータを、力覚方向変換部215(図6)へ送る。
【0051】
一方、ユーザUは、例えば、マスター力覚装置100のナビゲーション開始用のボタン(図示せず)を押下操作する等して、ナビゲーションを開始させる。このような操作がなされると、マスター力覚装置100のイベント検知部111は、GPS受信機150によって測定されたマスター力覚装置100の現在地を示すデータと、メモリ130に記憶されている地図データとに基づいて、地図データによって示される地図上の現在地Sを特定する。
そして、イベント検知部111は、このようにして現在地Sを特定すると、進行方向を指示するためにユーザUに対して力覚を付与すべき切っ掛けとなるイベントが検知されたものとして(S103:Yes)、その旨を示すデータを、姿勢ズレ量算出部112、及び力覚方向算出部113へ送る。また、イベント検知部111は、特定した現在地Sを示すデータを、力覚方向算出部113へ送る。イベントが検知されないときは(S103’No)、ステップS103へ戻る。
【0052】
姿勢ズレ量算出部112は、イベントが検知されたことを示すデータをイベント検知部111から受け取ると、マスター力覚装置100及びスレーブ力覚装置200に共通の基準姿勢に対するマスター力覚装置100の姿勢のズレ量を示す最新のデータを、トランシーバ190(図2)を介してスレーブ力覚装置200へブルートゥース信号に乗せて送信する(S105)。
【0053】
一方、マスター力覚装置100の力覚方向算出部113は、イベントが検知されたことを示すデータと、現在地Sを示すデータとをイベント検知部111から受け取ると、力覚付与インターフェース180、280により付与すべき力覚について、マスター力覚装置100の姿勢の状態から視た各力覚の方向をそれぞれ算出する(S104)。例えば、力覚方向算出部113は、イベント検知部111から受け取った現在地Sを示すデータと、ジャイロスコープ140によって測定されたマスター力覚装置100の現在の姿勢を示すデータと、磁気コンパス160によって測定された方位を示すデータと、メモリ130に記憶されている地図データとに基づいて、力覚付与インターフェース180、280により付与すべき力覚について、マスター力覚装置100の姿勢の状態から視た各力覚の方向をそれぞれ算出する。
【0054】
力覚方向算出部113は、各力覚の方向を算出するにあたり、最初に、地図上の各力覚の方向を特定する。図9は、ユーザUをナビゲーションするために利用する地図の一例を示す。例えば、図9に示すような地図上の現在地Sから目的地Gへ向かう場合、ユーザUは、現在地Sから第1の進行経路Rを辿って第1の交差点Iまで進み、第1の交差点Iから第2の進行経路Rを辿って第2の交差点Rまで進み、第2の交差点Iから第3の進行経路Rを辿って目的地Gまで進めばよいことになる。つまり、ユーザUは、現在地Sにおいて、腰の左右に第1の進行方向Rと同じ方向の力覚を受ければ、第1の進行方向に引っ張られるような感覚を知覚することになる。図10は、現在地Sにおいて付与すべき力覚の方向の一例を示す。ユーザUは、マスター力覚装置100によりF1の力を受け、スレーブ力覚装置200よりF2の力を受け、力F1、F2は方向R1と同方向を向いている。
【0055】
そして、力覚方向算出部113は、ジャイロスコープ140によって測定されたマスター力覚装置100の現在の姿勢を示すデータと、磁気コンパス160によって測定された方位を示すデータとに基づいて、上記のように特定した地図上の各力覚の方向について、マスター力覚装置100の姿勢の状態から視た方向として算出する。図11は、共通の基準姿勢に対するマスター力覚装置100及びスレーブ力覚装置200の傾きと、マスター力覚装置100の姿勢から視た力覚の方向の一例を示す。例えば、図11に示すように、マスター力覚装置100とスレーブ力覚装置200との共通の基準姿勢におけるある方向Cに対して、マスター力覚装置100の姿勢が角度θだけ傾いている場合、力覚方向算出部113は、その傾いている方向Cに対する付与すべき力覚の方向Fの角度θを、マスター力覚装置100の姿勢の状態から視た力覚の方向として算出する。
【0056】
そして、力覚方向算出部113は、上記のようにして算出した力覚付与インターフェース180により付与すべき力覚の方向F1を示すデータを、力覚制御部114へ送る。また、力覚方向算出部113は、上記のようにして算出した力覚付与インターフェース280により付与すべき力覚の方向F2を示すデータを、トランシーバ190を介してスレーブ力覚装置200へブルートゥース信号に乗せて送信する(S105)。
【0057】
スレーブ力覚装置200の力覚方向変換部215(図6)は、マスター力覚装置100からブルートゥース信号に乗せて送信されたマスター力覚装置100の姿勢のズレ量を示すデータと、力覚付与インターフェース280により付与すべき力覚の方向Fを示すデータとをトランシーバ290を介して受信すると、これらデータと、姿勢ズレ量算出部212から受け取ったスレーブ力覚装置200の姿勢のズレ量を示す最新のデータとに基づいて、マスター力覚装置100の力覚方向算出部113が算出したマスター力覚装置100の姿勢の状態から視た力覚の方向を、スレーブ力覚装置200の姿勢の状態から視た方向に変換する(S106)。例えば、マスター力覚装置100の姿勢は、図11に示すように、マスター力覚装置100とスレーブ力覚装置200との共通の基準姿勢におけるある方向Cに対して方向Cを向いて角度θだけ傾いているとする。また、スレーブ力覚装置200の姿勢は、方向Cに対して方向Cを向いて角度θだけ傾いているとする。そして、このマスター力覚装置100の姿勢の状態から視た力覚の方向Fは、マスター力覚装置100の傾いている方向Cに対して角度θだけ傾いているとする。その場合、スレーブ力覚装置200の姿勢の状態から視た力覚の方向Fは、スレーブ力覚装置200の傾いている方向Cに対して角度(θ−θ+θ)だけ傾いていることになる。力覚方向変換部215は、この角度(θ−θ+θ)を、スレーブ力覚装置200の姿勢の状態から視た力覚の方向として変換する。そして、力覚方向変換部215は、変換した力覚の方向Fを示すデータを、力覚制御部214へ送る。なおまた、上記の説明では、説明が煩雑になることを防ぐことを目的として、各方向を平面視した場合について説明したが、実際には、3次元の角度として演算される。
【0058】
スレーブ力覚装置200の力覚制御部214は、付与すべき力覚の方向Fを示すデータを力覚方向変換部215から受け取ると、その方向Fへの力覚を付与させるべく、力覚付与インターフェース280を制御する(S107)。
【0059】
一方、マスター力覚装置100の力覚制御部114は、付与すべき力覚の方向Fを示すデータを力覚方向算出部113から受け取ると、その方向Fへの力覚を付与させるべく、力覚付与インターフェース180を制御する(S108)。
【0060】
このようにして、ユーザUは、第1の進行方向Rと同じ方向F、Fの力覚を左右の腰に受けることになる。その結果、ユーザUは、現在地Sにおいて、左右の腰を第1の進行方向Rへ引っ張られるような感覚を知覚することになり、その方向Rへ進めばよいことを知ることができる。
【0061】
そして、ユーザUが第1の進行方向Rに沿って移動している間にも、マスター力覚装置100の制御部110のイベント検知部111は、GPS受信機150によって測定されたマスター力覚装置100の現在地を示すデータと、メモリ130に記憶されている地図データとに基づいて、地図データによって示される地図上の現在地Sを特定する。そして、イベント検知部111は、ユーザUの現在地が第1の交差点Iに達した場合、進行方向を変更するためにユーザUに対して力覚を付与すべき切っ掛けとなるイベントが検知されたものとして(S103:Yes)、その旨を示すデータを、姿勢ズレ量算出部112、及び力覚方向算出部113へ送る。また、イベント検知部111は、特定した現在地S=Iを示すデータを、力覚方向算出部113へ送る。
【0062】
姿勢ズレ量算出部112は、イベントが検知されたことを示すデータをイベント検知部111から受け取ると、マスター力覚装置100及びスレーブ力覚装置200に共通の基準姿勢に対するマスター力覚装置100の姿勢のズレ量を示す最新のデータを、トランシーバ190を介してスレーブ力覚装置200へブルートゥース信号に乗せて送信する(S105)。
【0063】
一方、マスター力覚装置100の力覚方向算出部113は、イベントが検知されたことを示すデータと、現在地Sを示すデータとをイベント検知部111から受け取ると、力覚付与インターフェース180、280により付与すべき力覚について、マスター力覚装置100の姿勢の状態から視た各力覚の方向をそれぞれ算出する(S104)。例えば、ユーザUは、現在地S=Iにおいて、腰の右側に前方への力覚を受けて、腰の左側に後方への力覚を受ければ、反時計回りに回転させられるような感覚を知覚することになる。図12は、第1の交差点Iにおいて付与すべき力覚の方向の一例を示す。したがって、第1の交差点Iにおいて、マスター力覚装置100によって付与すべき力覚の方向は、図12に示すように、前方方向Fとなる。同様に、第1の交差点Iにおいて、スレーブ力覚装置200によって付与すべき力覚の方向は、図12に示すように、後方方向Fとなる。
【0064】
以降、マスター力覚装置100とスレーブ力覚装置200は、上述したステップS105からステップS108までの処理を行う。このようにして、ユーザUは、右腰RWに前方方向Fの力覚を受けて、左腰LWに後方方向Fの力覚を受けることになる。その結果、ユーザUは、反時計回りに回転させられるような感覚を知覚することになり、その方向へ体の向きを変えればよいことを知ることができる。なおまた、ユーザUの体の向きを変えさせるための力覚は、ユーザUの体の正面が第2の進行方向Rを向くまで継続される。
【0065】
このように、マスター力覚装置100、及びスレーブ力覚装置200は、ステップS101からステップS108までの処理を繰り返すことによって、ユーザUを図9に示す目的地Gまで誘導することができる。
【0066】
第1の実施形態によれば、個別に付与される各力覚の方向の組合せに対しそれぞれ意味を持たせることによって、ユーザに対して付加的な案内を行うことができる。
【0067】
<第2の実施形態>
図13は、第2の実施形態に係る力覚システム2の利用環境の一例を示す。本実施形態に係る力覚システム2は、ユーザUに対してマスター力覚装置300、及びスレーブ力覚装置400を備える。なおまた、マスター力覚装置300、及びスレーブ力覚装置400の利用環境は、第1の実施形態におけるマスター力覚装置100、及びスレーブ力覚装置200の利用環境とそれぞれ同様であるから、その詳細な説明を省略する。
【0068】
本実施形態においては、説明が煩雑になることを防ぐことを目的として、力覚システム2が一個のスレーブ力覚装置400を備える構成について説明するが、力覚システム2は、複数個のスレーブ力覚装置400を備えてよい。
【0069】
図14は、マスター力覚装置300の構成の一例を示す。マスター力覚装置300は、制御部310、メモリ330、ジャイロスコープ340、GPS受信機350、磁気コンパス360、加速度センサー370、力覚付与インターフェース380、及びトランシーバ390を具備する。なおまた、マスター力覚装置300のこれら各ハードウェアの主たる機能は、それぞれ第1の実施形態におけるマスター力覚装置100の各ハードウェアの主たる機能とそれぞれ同様であるから、その詳細な説明を省略する。
【0070】
図15は、スレーブ力覚装置400の構成の一例を示す。スレーブ力覚装置400は、制御部410、メモリ430、ジャイロスコープ440、加速度センサー470、力覚付与インターフェース480、及びトランシーバ490を具備する。なおまた、スレーブ力覚装置400のこれら各ハードウェアの主たる機能は、それぞれ第1の実施形態におけるスレーブ力覚装置200の各ハードウェアの主たる機能とそれぞれ同様であるから、その詳細な説明を省略する。
【0071】
図16は、マスター力覚装置300の制御部310の構成の一例を示す。制御部310は、イベント検知部311、姿勢ズレ量算出部312、力覚方向算出部313、力覚方向変換部315、及び力覚制御部314を具備する。以下、各構成要素の機能及び動作を説明する。力覚方向変換部315が新たに付加されている。しかし、なおまた、イベント検知部311、姿勢ズレ量算出部312、力覚方向算出部313、及び力覚制御部314の機能及び動作は、第1の実施形態におけるイベント検知部111、姿勢ズレ量算出部112、力覚方向算出部113、及び力覚制御部114の機能及び動作と同様であるから、その詳細な説明を省略する。
【0072】
力覚方向変換部315は、マスター力覚装置300及びスレーブ力覚装置400に共通の基準姿勢に対するマスター力覚装置300の姿勢のズレ量と、共通の基準姿勢に対するスレーブ力覚装置400の姿勢のズレ量とに基づいて、力覚方向算出部313が算出したマスター力覚装置300の姿勢の状態から視た力覚の方向を、スレーブ力覚装置400の姿勢の状態から視た方向に変換する。例えば、力覚方向変換部315は、マスター力覚装置300の姿勢ズレ量算出部312が算出したマスター力覚装置300の姿勢のズレ量と、スレーブ力覚装置400の姿勢ズレ量算出部412が算出したスレーブ力覚装置400の姿勢のズレ量とに基づいて、マスター力覚装置300の力覚方向算出部313が算出したマスター力覚装置300の姿勢の状態から視た力覚の方向を、スレーブ力覚装置400の姿勢の状態から視た方向に変換する。
【0073】
図17は、スレーブ力覚装置400の制御部410の構成の一例を示す。制御部410は、姿勢ズレ量算出部412、及び力覚制御部414を具備する。なおまた、姿勢ズレ量算出部412、及び力覚制御部414の機能及び動作は、第1の実施形態における姿勢ズレ量算出部212、及び力覚制御部214の機能及び動作とそれぞれ同様であるから、その詳細な説明を省略する。ただし、第2の実施形態のスレーブ力覚装置400の制御部410は、第1の実施形態のスレーブ力覚装置200の制御部210の力覚方向変換部215を欠いている。
【0074】
図18は、マスター力覚装置300、及びスレーブ力覚装置400の動作シーケンスの一例を示す。この動作フローは、マスター力覚装置300、及びスレーブ力覚装置400を利用して、ユーザUをナビゲーションする場合を例にとって説明する。また、第1の実施形態においては、スレーブ力覚装置400の力覚付与インターフェース480により付与すべき力覚の方向について、スレーブ力覚装置400の姿勢から視た方向への変換処理を、スレーブ力覚装置400にて処理する例について説明した。これに対し、本実施形態においては、スレーブ力覚装置400の力覚付与インターフェース480により付与すべき力覚の方向について、スレーブ力覚装置400の姿勢から視た方向への変換処理を、マスター力覚装置300にて処理する例について説明する。
【0075】
ユーザUは、マスター力覚装置300、及びスレーブ力覚装置400を利用してナビゲーションを開始するにあたり、予め、マスター力覚装置300とスレーブ力覚装置400のキャリブレーションを行っておく。また、マスター力覚装置300とスレーブ力覚装置400のキャリブレーションの方法は、第1の実施形態におけるマスター力覚装置100とスレーブ力覚装置200のキャリブレーションの方法と同様であるから、その詳細な説明を省略する。
【0076】
マスター力覚装置300の姿勢ズレ量算出部312は、キャリブレーション後にマスター力覚装置300の姿勢が変化する度に、マスター力覚装置300及びスレーブ力覚装置400に共通の基準姿勢に対するマスター力覚装置300の姿勢のズレ量を算出する(S201)。また、姿勢ズレ量算出部312によるステップS201の処理は、第1の実施形態におけるステップS101の処理と同様であるから、その詳細な説明を省略する。
【0077】
同様に、スレーブ力覚装置400の姿勢ズレ量算出部412は、キャリブレーション後にスレーブ力覚装置400の姿勢が変化する度に、マスター力覚装置300及びスレーブ力覚装置400に共通の基準姿勢に対するスレーブ力覚装置400の姿勢のズレ量を算出する(S202)。
【0078】
一方、ユーザUは、例えば、マスター力覚装置300のナビゲーション開始用のボタン(図示せず)を押下操作する等して、ナビゲーションを開始させる。このような操作がなされると、マスター力覚装置300のイベント検知部311は、GPS受信機350によって測定されたマスター力覚装置300の現在地を示すデータと、メモリ330に記憶されている地図データとに基づいて、地図データによって示される地図上の現在地Sを特定する。そして、イベント検知部311は、このようにして現在地Sを特定すると、進行方向を指示するためにユーザUに対して力覚を付与すべき切っ掛けとなるイベントが検知されたものとして(S203:Yes)、その旨を示すデータを、姿勢ズレ量算出部312、及び力覚方向算出部313へ送ると共に、トランシーバ390を介してスレーブ力覚装置400へブルートゥース送信する(S204)。また、イベント検知部311は、特定した現在地Sを示すデータを、力覚方向算出部313へ送る。
【0079】
姿勢ズレ量算出部312は、イベントが検知されたことを示すデータをイベント検知部311から受け取ると、マスター力覚装置300及びスレーブ力覚装置400に共通の基準姿勢に対するマスター力覚装置300の姿勢のズレ量を示す最新のデータを、力覚方向変換部315へ送る。
【0080】
一方、マスター力覚装置300の力覚方向算出部313は、イベントが検知されたことを示すデータと、現在地Sを示すデータとをイベント検知部311から受け取ると、力覚付与インターフェース380、480により付与すべき力覚について、マスター力覚装置300の姿勢の状態から視た各力覚の方向をそれぞれ算出する(S205)。また、力覚方向算出部313によるステップS205の処理は、第1の実施形態におけるステップS104の処理と同様であるから、その詳細な説明を省略する。そして、力覚方向算出部313は、力覚付与インターフェース380により付与すべき力覚の方向を示すデータを、力覚制御部314へ送る。また、力覚方向算出部313は、力覚付与インターフェース480により付与すべき力覚の方向を示すデータを、力覚方向変換部315へ送る。
【0081】
一方、スレーブ力覚装置400の姿勢ズレ量算出部412は、マスター力覚装置300からブルートゥース信号に乗せて送信されたイベントの検知を示すデータを受信すると、マスター力覚装置300及びスレーブ力覚装置400に共通の基準姿勢に対するスレーブ力覚装置400の姿勢のズレ量を示す最新のデータを、トランシーバ490を介してマスター力覚装置300へブルートゥース信号に乗せて送信する(S206)。
【0082】
マスター力覚装置300の力覚方向変換部315は、マスター力覚装置300の姿勢のズレ量を示すデータを姿勢ズレ量算出部312から受け取って、力覚付与インターフェース480により付与すべき力覚の方向を示すデータを力覚方向算出部313から受け取って、スレーブ力覚装置400からブルートゥース送信されたスレーブ力覚装置400の姿勢のズレ量を示すデータをトランシーバ390を介して受信すると、これらデータに基づいて、マスター力覚装置300の力覚方向算出部313が算出したマスター力覚装置300の姿勢の状態から視た力覚の方向を、スレーブ力覚装置400の姿勢の状態から視た方向に変換する(S207)。なおまた、力覚方向変換部315によるステップS207の処理は、第1の実施形態におけるステップS106の処理と同様であるから、その詳細な説明を省略する。そして、力覚方向変換部315は、変換した力覚の方向3を示すデータを、トランシーバ390を介してスレーブ力覚装置400へブルートゥース信号に乗せて送信する。
【0083】
スレーブ力覚装置200の力覚制御部214は、マスター力覚装置300から送信された付与すべき力覚の方向を示すデータをトランシーバ490を介して受信すると、その方向への力覚を付与させるべく、力覚付与インターフェース480を制御する(S209)。
【0084】
一方、マスター力覚装置300の力覚制御部314は、付与すべき力覚の方向を示すデータを力覚方向算出部313から受け取ると、その方向への力覚を付与させるべく、力覚付与インターフェース380を制御する(S210)。
【0085】
このようにして、ユーザUは、第1の実施形態と同様に、マスター力覚装置300、及びスレーブ力覚装置400から力覚が付与されることにより、目的地まで誘導されることになる。
【0086】
また、本実施形態は、スレーブ力覚装置400からマスター力覚装置300へ、スレーブ力覚装置400の姿勢のズレ量を示すデータをブルートゥース信号に乗せて送信させる切っ掛けとして、イベントの検知を示すデータを、マスター力覚装置300からスレーブ力覚装置400へブルートゥース送信する例について説明した。しかしながら、スレーブ力覚装置400は、スレーブ力覚装置400の姿勢のズレ量を示すデータを、所定時間置きにマスター力覚装置300へブルートゥース信号に乗せて送信するようにしてもよい。
【0087】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、個別に付与される各力覚の方向の組合せに対しそれぞれ意味を持たせることによって、ユーザに対して付加的な案内を行うことができる。
【0088】
<第3の実施形態>
図19は、第3の実施形態に係る力覚システムの利用環境の一例を示す。第3の実施形態に係る力覚システムは、ユーザUに対してマスター非力覚装置500、及び2つのスレーブ力覚装置200a、b(以下、スレーブ力覚装置200と総称する。)を備える。マスター非力覚装置500は、各スレーブ力覚装置200とブルートゥース信号を介して通信接続される。そして、マスター非力覚装置500は、各スレーブ力覚装置200を制御する。なおまた、各スレーブ力覚装置200a、bは、第1の実施形態におけるスレーブ力覚装置200と同じ装置である。
【0089】
マスター非力覚装置500は、ユーザUの首からストラップ等によってぶら下げられている。スレーブ力覚装置200aは、ユーザUの右腰RWに取り付けられている。そして、スレーブ力覚装置200aは、右腰RWに対して力覚を付与する。また、スレーブ力覚装置200bは、ユーザUの左腰LWに取り付けられている。そして、スレーブ力覚装置200bは、左腰LWに対して力覚を付与する。
【0090】
なおまた、本実施形態においては、説明が煩雑になることを防ぐことを目的として、力覚システムが一のスレーブ力覚装置200を備える構成について説明するが、力覚システムは、複数のスレーブ力覚装置200を備えてよい。
【0091】
図20は、マスター非力覚装置500の構成の一例を示す。マスター非力覚装置500は、制御部510、メモリ530、ジャイロスコープ540、GPS受信機550、磁気コンパス560、加速度センサー570、及びトランシーバ590を具備する。また、マスター非力覚装置500のこれら各ハードウェアの主たる機能は、それぞれ第1の実施形態におけるマスター力覚装置100の各ハードウェアの主たる機能とそれぞれ同様であるから、その詳細な説明を省略する。ただし、マスター非力覚装置500は、マスター力覚装置100(図2)の力覚付与インターフェース180に相当するものを欠いている。
【0092】
図21は、マスター非力覚装置500の制御部510の構成の一例を示す。制御部510は、イベント検知部511、姿勢ズレ量算出部512、及び力覚方向算出部513を具備する。なおまた、制御部510のこれら各構成の機能及び動作は、それぞれ第1の実施形態におけるマスター力覚装置100の各構成の機能及び動作とそれぞれ同様であるから、その詳細な説明を省略する。ただし、マスター非力覚装置500は、マスター力覚装置100(図2)の制御部110が力覚付与インターフェース180にデータを出力する力覚制御部114に相当するものを欠いている。
【0093】
図22は、マスター非力覚装置500、及び2つのスレーブ力覚装置200の動作シーケンスの一例を示す。上述した第1の実施形態は、マスター力覚装置100の力覚付与インターフェース180と、スレーブ力覚装置200の力覚付与インターフェース280とを制御するシステムであった。これに対し、本実施形態は、マスター非力覚装置500が力覚付与インターフェースを具備していないため、2つのスレーブ力覚装置200の各力覚付与インターフェース280を制御するものである。
【0094】
マスター非力覚装置500の姿勢ズレ量算出部512は、キャリブレーション後にマスター非力覚装置500の姿勢が変化する度に、2つのスレーブ力覚装置200と共通の基準姿勢に対するマスター非力覚装置500の姿勢のズレ量を算出する(S301)。また、姿勢ズレ量算出部512によるステップS301の処理は、第1の実施形態におけるステップS101の処理と同様であるから、その詳細な説明を省略する。
【0095】
同様に、スレーブ力覚装置200の姿勢ズレ量算出部412は、キャリブレーション後にスレーブ力覚装置200の姿勢が変化する度に、マスター非力覚装置500との共通の基準姿勢に対するスレーブ力覚装置200の姿勢のズレ量を算出する(S302)。
【0096】
一方、ユーザUは、例えば、マスター非力覚装置500のナビゲーション開始用のボタン(図示せず)を押下操作する等して、ナビゲーションを開始させる。このような操作がなされると、マスター非力覚装置500のイベント検知部511は、GPS受信機550によって測定されたマスター非力覚装置500の現在地を示すデータと、メモリ530に記憶されている地図データとに基づいて、地図データによって示される地図上の現在地Sを特定する。そして、イベント検知部511は、このようにして現在地Sを特定すると、進行方向を指示するための力覚を付与すべき切っ掛けとなるイベントが検知されたものとして(S303:Yes)、その旨を示すデータを、姿勢ズレ量算出部512、及び力覚方向算出部513へ送る。そして、力覚方向算出部513は、力覚の方向を算出し(S304)、これらのデータを、トランシーバ590を介して2つのスレーブ力覚装置200へブルートゥース信号に乗せて送信する(S305)。2つのスレーブ力覚装置200は、力覚の方向を変換し(S306)、力覚付与インターフェース280を制御する(S307)。
【0097】
したがって、本実施形態の動作シーケンスは、マスター非力覚装置500自身の力覚付与インターフェースの制御動作が存在しないことを除けば、第1の実施形態の動作シーケンスと同様の処理となる。このように、力覚システムは、マスターとなる装置が力覚装置でなくとも運用することができる。
【0098】
また、本実施形態は、スレーブとして、上述した第1の実施形態と同じスレーブ力覚装置200を2台利用する例について説明した。しかしながら、利用するスレーブ力覚装置は、これに限られず、例えば、上述した第2の実施形態と同じスレーブ力覚装置400を2台利用するようにしてもよい。その場合の動作シーケンスは、マスター非力覚装置500自身の力覚付与インターフェースの制御動作が存在しないことを除けば、第2の実施形態の動作シーケンスと同様の処理となる。
【0099】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態や第2の実施形態と同様に、個別に付与される各力覚の方向の組合せに対しそれぞれ意味を持たせることによって、ユーザに対して付加的な案内を行うことができる。
【0100】
以上説明したように、本実施形態に係る力覚システムは、ユーザUの現在位置や誘導すべき方向に応じて、左右に取り付けられた2つの力覚装置100、200によりそれぞれ所定の方向の力覚を付与するようにしたので、既知の技術と比較して、ユーザUに対する指示の内容をより分かり易く示すことができる。
【0101】
なおまた、上述した実施形態においては、マスター力覚装置がイベント検知部を具備する例について説明したが、スレーブ力覚装置がイベント検知部を具備するようにしてもよい。
【0102】
また、上述した実施形態においては、マスター力覚装置とスレーブ力覚装置とを重ねた状態でキャリブレーションを行う例について説明したが、マスター力覚装置の姿勢とスレーブ力覚装置の姿勢との関係の基準をとれればよく、基準となる互いの姿勢が違えていてもよい。
【0103】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0104】
100 マスター力覚装置
110 制御部
111 イベント検知部
112 姿勢ズレ量算出部
113 力覚方向算出部
114 力覚制御部
130 メモリ
140 ジャイロスコープ
150 GPS受信機
160 磁気コンパス
170 加速度センサー
180 力覚付与インターフェース
190 トランシーバ
200 スレーブ力覚装置
210 制御部
212 姿勢ズレ量算出部
214 力覚制御部
215 力覚方向変換部
230 メモリ
240 ジャイロスコープ
280 力覚付与インターフェース
290 トランシーバ
300 マスター力覚装置
310 制御部
311 イベント検知部
312 姿勢ズレ量算出部
313 力覚方向算出部
314 力覚制御部
315 力覚方向変換部
330 メモリ
340 ジャイロスコープ
350 GPS受信機
360 磁気コンパス
370 加速度センサー
380 力覚付与インターフェース
390 トランシーバ
400 スレーブ力覚装置
410 制御部
412 姿勢ズレ量算出部
414 力覚制御部
430 メモリ
440 ジャイロスコープ
480 力覚付与インターフェース
490 トランシーバ
500 マスター非力覚装置
510 制御部
511 イベント検知部
512 姿勢ズレ量算出部
513 力覚方向算出部
530 メモリ
540 ジャイロスコープ
550 GPS受信機
560 磁気コンパス
570 加速度センサー
590 トランシーバ
U ユーザ
RW 右腰
LW 左腰
S 現在地
第1の交差点
第2の交差点
G 目的地
第1の進行経路
第2の進行経路
第3の進行経路
F 付与すべき力覚の方向
力覚付与インターフェース180により付与すべき力覚の方向
力覚付与インターフェース280により付与すべき力覚の方向
C 共通の基準姿勢におけるある方向
マスター力覚装置100の傾いている方向
スレーブ力覚装置200の傾いている方向
θ 基準姿勢に対するマスター力覚装置100の姿勢の傾きの角度
θ 基準姿勢に対するスレーブ力覚装置200の姿勢の傾きの角度
θ マスター力覚装置100の傾いている方向に対する力覚の方向の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対して力覚を付与する力覚システムであって、
ユーザに対して力覚を付与する力覚付与手段を具備する複数の力覚装置
を備え、
前記力覚装置は、
ユーザに対して所定の方向への力覚を付与させるべく、自装置が具備している前記力覚付与手段を制御する力覚制御部
を具備し、
前記力覚装置のうちのいずれか一の力覚装置、又は前記力覚装置以外の装置であって前記力覚付与手段を具備していない非力覚装置は、他の力覚装置を制御するマスター装置として動作し、前記マスター装置以外の他の力覚装置は、前記マスター装置から制御されるスレーブ装置として動作する力覚システム。
【請求項2】
前記マスター装置は、
前記各力覚付与手段により付与すべき力覚について、当該マスター装置の姿勢の状態から視た各力覚の方向をそれぞれ算出する力覚方向算出部
を有し、
前記力覚装置の力覚制御部は、前記マスター装置の力覚方向算出部が算出した方向に相当する方向への力覚を付与させるべく、自装置が具備している前記力覚付与手段を制御する
請求項1に記載の力覚システム。
【請求項3】
前記マスター装置及び/又は前記スレーブ装置は、
前記マスター装置及び前記スレーブ装置に共通の基準姿勢に対する前記マスター装置の姿勢のズレ量と、前記共通の基準姿勢に対する前記スレーブ装置の姿勢のズレ量とに基づいて、前記マスター装置の力覚方向算出部が算出した前記マスター装置の姿勢の状態から視た力覚の方向を、前記スレーブ装置の姿勢の状態から視た方向に変換する力覚方向変換部
を更に有し、
前記スレーブ装置の力覚制御部は、前記力覚方向変換部が変換した後の方向への力覚を付与させるべく、自装置が具備している前記力覚付与手段を制御する
請求項2に記載の力覚システム。
【請求項4】
前記マスター装置及び前記スレーブ装置は、
前記マスター装置及び前記スレーブ装置に共通の基準姿勢に対する自装置の姿勢のズレ量を算出する姿勢ズレ量算出部
を更に有し、
前記マスター装置又は前記スレーブ装置の力覚方向変換部は、前記マスター装置の姿勢ズレ量算出部が算出した前記マスター装置の姿勢のズレ量と、前記スレーブ装置の姿勢ズレ量算出部が算出した前記スレーブ装置の姿勢のズレ量とに基づいて、前記マスター装置の力覚方向算出部が算出した前記マスター装置の姿勢の状態から視た力覚の方向を、前記スレーブ装置の姿勢の状態から視た方向に変換する
請求項3に記載の力覚システム。
【請求項5】
前記マスター装置及び/又は前記スレーブ装置は、
ユーザに対して力覚を付与する切っ掛けとなるイベントの発生を検知するイベント検知部
を更に有し、
前記マスター装置の力覚方向算出部は、前記イベント検知部がイベントの発生を検知した場合に、前記各力覚付与手段により付与すべき力覚について、当該マスター装置の姿勢の状態から視た各力覚の方向をそれぞれ算出する
請求項2から4のいずれか一項に記載の力覚システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−33425(P2013−33425A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170082(P2011−170082)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】