説明

加圧ローラ装置

【課題】一対のローラが圧接状態で使用されることにより転がり軸受の内輪と外輪との間での回転軸の平行度がずれる加圧ローラ装置において、回転軸の平行度のずれを吸収することができる加圧ローラ装置を提供する。
【解決手段】お互いが圧接状態にある一対のローラと、内輪と外輪と転動体とから構成されてローラを回転自在に軸支する転がり軸受と、を備える加圧ローラ装置であって、ローラの軸端部は、内輪又は外輪に装着され、ローラの軸端部と内輪又は外輪とのうち少なくとも一方は、回転軸を含む平面で切断したときの断面が円弧状に突出している円弧状突出部を備えて、円弧状突出部の頂部は、転がり軸受の軸方向長さの大略中点位置において、対向する摺接面と当接するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧接状態にある一対のローラを転がり軸受で支持する加圧ローラ装置に関する。特に、本発明は、加圧ローラ装置としての定着装置や用紙搬送装置や転写ベルト駆動装置が組み込まれた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機やプリンタ等の画像形成装置では、帯電装置を使用して被帯電部材(感光体)の表面を均一に帯電させ、その上に画像を露光することによって画像潜像が形成されている。形成された画像潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、これを記録媒体に転写し、或いは中間転写体、例えば中間転写ベルトに転写した上でさらに記録媒体に転写し、転写されたトナー像を定着装置で加熱定着処理することによって画像形成が行われている。
【0003】
このような画像形成装置においては、定着装置や用紙搬送装置や転写ベルト駆動装置が加圧ローラ装置として組み込まれている。
【0004】
例えば、定着装置は、加熱された定着ローラと加圧ローラとが圧接状態で回転することによりニップ部を形成し、加熱・加圧されたニップ部に用紙を通すことによりトナー像を用紙に定着させている。
【0005】
定着装置等の加圧ローラ装置では、圧接状態にある一対のローラが左右の転がり軸受によりそれぞれ回転自在に支持されている。このような転がり軸受は、内輪と外輪と転動体とから構成されている。転がり軸受の内輪は、耐熱ブッシュを介してローラの左右の軸端部に嵌着され、転がり軸受の外輪は、左右の取付フレームの内周に嵌合されている。
【0006】
定着装置等の加圧ローラ装置では、一対のローラが圧接状態で使用されているために、無負荷時には直線状に延在していた転がり軸受の内輪の回転軸が、わずかに湾曲して延在するようになる。すなわち、転がり軸受の回転軸がベンディング状態になっている。加圧ローラ装置に使用される転がり軸受においては、内輪の回転軸と外輪の回転軸との間の平行度が失われているために、転がり軸受はストレスを受けてしまう。平行度の失われた転がり軸受においては、ローラの回転周期に応じた異音が発生し、このような状態が長時間にわたって続くと、転がり軸受が破壊に至る事態も懸念される。
【0007】
転がり軸受の回転軸がベンディング状態になったときに受けるストレスを軽減させるために、例えば、特許文献1のように、低摩擦摺動性を有する被膜を内輪の内径面や外輪の外径面に形成することが提案されている。
【特許文献1】特開2008−8452号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1のように、低摩擦摺動性を有する被膜を形成することは、転がり軸受への一時的なストレス軽減には有効であるが、長期間の使用においては被膜が摩耗するか又は変質することにより摩擦摺動性が次第に悪くなるために、耐久性に問題がある。
【0009】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、一対のローラが圧接状態で使用されることにより転がり軸受の内輪と外輪との間での回転軸の平行度がずれる加圧ローラ装置において、回転軸の平行度のずれを吸収することができる加圧ローラ装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および作用・効果】
【0010】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、
お互いが圧接状態にある一対のローラと、
内輪と外輪と転動体とから構成されてローラを回転自在に軸支する転がり軸受と、
を備える加圧ローラ装置であって、
ローラの軸端部は、内輪又は外輪に装着され、
ローラの軸端部と内輪又は外輪とのうち少なくとも一方は、回転軸を含む平面で切断したときの断面が円弧状に突出している円弧状突出部を備えて、
円弧状突出部の頂部は、転がり軸受の軸方向長さの大略中点位置において、対向する摺接面と当接するように構成されていることを特徴とする加圧ローラ装置が提供される。
【0011】
お互いが圧接状態にある一対のローラにおいては、ローラに作用する押圧力はローラを軸支している転がり軸受の内輪又は外輪に負荷される。したがって、転がり軸受での内輪の回転軸が外輪の回転軸に対して傾斜するので、一対のローラが圧接状態で使用される転がり軸受において、内輪と外輪との間での回転軸の平行度がずれている。
【0012】
しかしながら、本発明では、上記のような押圧力の印加に起因した転がり軸受での回転軸の平行度のずれが生じても、ローラの軸端部と内輪又は外輪とのうち少なくとも一方に設けられた円弧状突出部の頂部すなわち摺接点が、転がり軸受の軸方向長さの大略中点位置において、対向する摺接面上を移動するので、円弧状突出部は内輪と外輪との間での回転軸の平行度のずれを吸収することができる。したがって、回転軸の平行度のずれに起因した、ストレスや異音の発生を解消することができる。
【0013】
摺接面は、回転軸を含む平面で切断したときの断面が直線形状であり、円弧状突出部の円弧の中心は、回転軸上にあるか、又は、回転軸から、対向する摺接面の側にずれた位置に存在する形態は、内輪と外輪との間での回転軸の平行度のずれを吸収し、ストレスや異音の発生を解消することができることに加えて構成が簡単であることから好適である。
【0014】
また、摺接面は、回転軸を含む平面で切断したときの断面が凹状の円弧であり、凹状の円弧の曲率半径は円弧状突出部の円弧の曲率半径よりも大きく、円弧状突出部の円弧の中心は、回転軸上にあるか、又は、回転軸から、対向する摺接面の側にずれた位置に存在し、且つ、円弧状突出部の円弧の中心と凹状の円弧の中心とを結ぶ線は回転軸に対して直交している形態であっても、内輪と外輪との間での回転軸の平行度のずれを吸収し、ストレスや異音の発生を解消することができる。
【0015】
また、摺接面は、回転軸を含む平面で切断したときの断面が凸状の円弧であり、円弧状突出部の円弧の中心は、回転軸上にあるか、又は、回転軸から、対向する摺接面の側にずれた位置に存在し、且つ、円弧状突出部の円弧の中心と凸状の円弧の中心とを結ぶ線は回転軸に対して直交している形態であっても、内輪と外輪との間での回転軸の平行度のずれを吸収することができる。
【0016】
上記のような円弧状突出部又は摺接面は、ローラ又は転がり軸受に形成することも当然に可能であるが、円弧状突出部又は摺接面の少なくとも一つは、ローラと転がり軸受との間に設けられるブッシュ上に形成されていることが加工性の観点から好適である。
【0017】
円弧状突出部は、回転方向において、離間して配置されているか又は連続的に延在している。
【0018】
上述した加圧ローラ装置は、種々の装置に組み込んで使用することができるが、例えば、画像形成装置に組み込んで使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の加圧ローラ装置2について、図1乃至3を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の加圧ローラ装置2を模式的に説明する斜視図である。加圧ローラ装置2は、例えば、電子写真方式による画像形成装置(例えば、複写機、プリンタなど)、すなわち、像担持体(例えば感光体ドラム)上に潜像を形成した後、トナーで潜像を顕像化してトナー画像を形成し、続いてトナー画像を用紙に転写する定着装置として使用される。
【0021】
図1に示すように、加圧ローラ装置2は、駆動ローラ10と加圧ローラ20と引っ張りばね6と転がり軸受30とを備えている。転がり軸受30を介して加圧ローラ20を回転自在に軸支する可動フレーム4に取り付けされた引っ張りばね6の弾性付勢力により駆動ローラ10と加圧ローラ20とが互いに圧接されており、駆動ローラ10と加圧ローラ20とが圧接した領域には、ニップ部が形成されている。
【0022】
図2は、加圧ローラ20の軸端部24を可動フレーム4に対して回転自在に支持する転がり軸受30を示している。この転がり軸受30は、加圧ローラ20の軸端部24に装着される内輪32と、可動フレーム4の取付穴4aに装着される外輪34と、内輪の軌道面と外輪の軌道面との間に介在する複数の転動体36(ボールや円筒ころ)と、を備えている。
【0023】
図2に示す実施形態では、内輪32は、耐熱性を有する第一ブッシュ40を介して、加圧ローラ20の軸端部24の外周面26に対して嵌着されている。
【0024】
本願発明の第一実施形態に係る特徴部分について図3を参照しながら説明する。図3は、図2に示した第一実施形態に係る加圧ローラ装置の要部を模式的に説明する図であり、回転軸Oを含む平面で切断したときの断面図である。
【0025】
加圧ローラ20の軸端部24の側に設けられた第一ブッシュ40は、半円状に突出した突出部42を備えてなり、突出部42の円弧面44の頂部45は、転がり軸受30の回転軸O’の方向の幅の大略中点位置(回転中心Qに対応している)において、対向する内輪32の内周面38(すなわち摺接面として機能している)と当接するように配置されている。突出部42の円弧面44の中心Aは、回転軸O’の上に位置している。また、一対のローラ10,20が圧接されていない状態にあるときには、外輪34の回転軸Oと内輪32の回転軸O’とが実質的に一致して、回転軸O,O’の平行度が得られている。なお、本発明を限定しない具体的な数値として、例えば、軸端部24の外径寸法φが13.94mmであり、内輪32の内径寸法φが17mmであり、突出部42の円弧面44の曲率半径が8.453mmであり、円弧面44の頂部45と内輪32の内周面38との間のクリアランスが0.085mmである。
【0026】
このように構成された加圧ローラ装置2において、引っ張りばね6の弾性付勢力で駆動ローラ10と加圧ローラ20とが互いに圧接されることにより、内輪32の回転軸O’がベンディングし、内輪32の回転軸O’は外輪34の回転軸Oに対してわずかに傾斜して回転軸O,O’の平行度が失われる。そのとき、円弧面44の頂部45は、回転中心Q(この場合、円弧中心Aと一致している)を中心にして回転移動して、内輪32の内周面38の摺接点から遠ざかるが、円弧面44の他の部分が新しい頂部45として、さきほどの摺接点で当接する。したがって、突出部42の円弧面44は内輪32と外輪34との間での回転軸O,O’の平行度のずれを吸収することができ、回転軸O,O’の平行度のずれに起因した、ストレスや異音の発生を解消することができる。また、当該実施形態の場合、突出部42の円弧面44の頂部45と、対向する内輪32の内周面38との間のクリアランスが変化しないので、回転時の微小な変位(ふれ)の発生を防止することができる。
【0027】
なお、突出部42の円弧面44の中心Aが、回転軸Oよりも内輪32の側にずれた位置に存在する場合であっても、上記クリアランスを拡大させるように作用するものの、回転軸O,O’の平行度のずれに起因した、ストレスや異音の発生を解消することは可能である。
【0028】
次に、図4を参照しながら、本発明の第二実施形態に係る画像形成装置の加圧ローラ装置2について説明するが、上述した実施形態と重複する部分については省略して、相違点を中心に説明する。
【0029】
図4は、本発明の第二実施形態に係る加圧ローラ装置2の模式的な説明図である。すなわち、本発明の第二実施形態は、加圧ローラ20の軸端部24の側に設けられた第一ブッシュ40が円弧状の突出部42を有し、内輪32の側に設けられた第二ブッシュ50が円弧状の凹部52を有することを特徴としている。
【0030】
加圧ローラ20の軸端部24の側に設けられた第一ブッシュ40は、半円状に突出した突出部42を備えている。また、内輪32の側に設けられた第二ブッシュ50は、半円状に陥没した凹部52を備えている。さらに、凹状の円弧面54の曲率半径bは突出部42の円弧面44の曲率半径aよりも大きく、且つ、突出部42の円弧面44の中心Aと凹状の円弧面54の中心Bとを結ぶ線は回転軸O’に対して直交している。
【0031】
突出部42の円弧面44の頂部45は、転がり軸受30の回転軸O’の方向の幅の大略中点位置(回転中心Qに対応している)において、対向する第二ブッシュ50の凹部52の円弧面54(すなわち摺接面として機能している)と当接するように配置されている。突出部42の円弧面44の中心Aは、回転軸O’の上に位置するように図示されているが、必ずしも回転軸O’の上に位置していなくてもよい。突出部42の円弧面44の中心Aは、回転軸O’から凹部52の円弧面54の底部59の側にあればよい。また、一対のローラ10,20が圧接されていないときには、外輪34の回転軸Oと内輪32の回転軸O’とが実質的に一致して、回転軸O,O’の平行度が得られている。
【0032】
このように構成された加圧ローラ装置2において、引っ張りばね6の弾性付勢力で駆動ローラ10と加圧ローラ20とが互いに圧接されることにより、内輪32の回転軸O’がベンディングし、内輪32の回転軸O’は外輪34の回転軸Oに対してわずかに傾斜して回転軸O,O’の平行度が失われる。そのとき、円弧面44の頂部45は、回転中心Qを中心にして回転移動して、凹部52の円弧面54の底部59(摺接点)から遠ざかるが、円弧面44の他の部分が新しい頂部45として、さきほどの摺接点で当接する。したがって、突出部42の円弧面44は内輪32と外輪34との間での回転軸O,O’の平行度のずれを吸収することができ、回転軸O,O’の平行度のずれに起因した、ストレスや異音の発生を解消することができる。また、突出部42の円弧面44の中心Aが回転軸O’の上に位置する場合、突出部42の円弧面44の頂部45と、対向する内輪32の内周面38との間のクリアランスが変化しないので、回転時の微小な変位(ふれ)の発生を防止することができる。
【0033】
なお、突出部42の円弧面44の中心Aが回転軸O’上には無くて、回転軸O’から凹部52の円弧面54の底部59の側にずれた位置に存在する場合であっても、上記クリアランスを拡大させるように作用するが、回転軸O,O’の平行度のずれに起因した、ストレスや異音の発生を解消することは可能である。
【0034】
次に、図5を参照しながら、本発明の第三実施形態に係る画像形成装置の加圧ローラ装置2について説明するが、上述した実施形態と重複する部分については省略して、相違点を中心に説明する。
【0035】
図5は、本発明の第三実施形態に係る加圧ローラ装置2の模式的な説明図である。すなわち、本発明の第三実施形態は、加圧ローラ20の軸端部24の側に設けられた第一ブッシュ40が円弧状の突出部42を有し、内輪32の側に設けられた第二ブッシュ50が円弧状の突出部56を有することを特徴としている。
【0036】
加圧ローラ20の軸端部24の側に設けられた第一ブッシュ40は、半円状に突出した突出部42を備えている。また、内輪32の側に設けられた第二ブッシュ50は、半円状に突出した突出部56を備えている。さらに、突出部42の円弧面44の中心Aと突出部56の円弧面58の中心Bとを結ぶ線は回転軸O’に対して直交している。
【0037】
突出部42の円弧面44の頂部45は、転がり軸受30の回転軸O’の方向の幅の大略中点位置(回転中心Qに対応している)において、対向する第二ブッシュ50の突出部56の円弧面58(すなわち摺接面として機能している)と当接するように配置されている。突出部42の円弧面44の中心Aは、回転軸O’の上に位置するように図示されているが、必ずしも回転軸O’の上に位置していなくてもよい。突出部42の円弧面44の中心Aは、回転軸O’から突出部56の円弧面58の頂部55の側にあればよい。また、一対のローラ10,20が圧接されていないときには、外輪34の回転軸Oと内輪32の回転軸O’とが実質的に一致して、回転軸O,O’の平行度が得られている。
【0038】
このように構成された加圧ローラ装置2において、引っ張りばね6の弾性付勢力で駆動ローラ10と加圧ローラ20とが互いに圧接されることにより、内輪32の回転軸O’がベンディングし、内輪32の回転軸O’は外輪34の回転軸Oに対してわずかに傾斜して回転軸O,O’の平行度が失われる。そのとき、円弧面44の頂部45は、回転中心Qを中心にして回転移動して、突出部56の円弧面58の摺接点から遠ざかるが、円弧面44の他の部分が新しい頂部45として、さきほどの摺接点で当接する。したがって、突出部42の円弧面44は内輪32と外輪34との間での回転軸O,O’の平行度のずれを吸収することができ、回転軸O,O’の平行度のずれに起因した、ストレスや異音の発生を解消することができる。また、突出部42の円弧面44の中心Aが回転軸O’の上に位置する場合、突出部42の円弧面44の頂部45と、対向する内輪32の内周面38との間のクリアランスが変化しないので、回転時の微小な変位(ふれ)の発生を防止することができる。
【0039】
次に、図6を参照しながら、本発明の第四実施形態に係る画像形成装置の加圧ローラ装置2について説明するが、上述した実施形態と重複する部分については省略して、相違点を中心に説明する。
【0040】
図6は、本発明の第四実施形態に係る加圧ローラ装置2の模式的な説明図である。すなわち、本発明の第四実施形態は、加圧ローラ20の軸端部24の側に設けられた第一ブッシュ40が円弧状の突出部42を有し、内輪32の側に設けられた第二ブッシュ50が円弧状の突出部56を有することを特徴としている。
【0041】
加圧ローラ20の軸端部24の側に設けられた第一ブッシュ40は、半円状に突出した突出部42を備えている。また、内輪32の側に設けられた第二ブッシュ50は、半円状に突出した突出部56を備えている。さらに、突出部42の円弧面44の中心Aと突出部56の円弧面58の中心Bとを結ぶ線は回転軸O’に対して直交している。
【0042】
突出部42の円弧面44の頂部45は、転がり軸受30の回転軸O’の方向の幅の大略中点位置(回転中心Qに対応している)において、対向する第二ブッシュ50の突出部56の円弧面58(すなわち摺接面として機能している)と当接するように配置されている。突出部42の円弧面44の中心Aが回転軸O’よりも内輪32の側に位置して図5に示した第三実施形態の場合よりも曲率半径aが短くなっている。また、一対のローラ10,20が圧接されていないときには、外輪34の回転軸Oと内輪32の回転軸O’とが実質的に一致して、回転軸O,O’の平行度が得られている。
【0043】
このように構成された加圧ローラ装置2において、引っ張りばね6の弾性付勢力で駆動ローラ10と加圧ローラ20とが互いに圧接されることにより、内輪32の回転軸O’がベンディングし、内輪32の回転軸O’は外輪34の回転軸Oに対してわずかに傾斜して回転軸O,O’の平行度が失われる。そのとき、円弧面44の頂部45は、回転中心Qを中心にして回転移動して、突出部56の円弧面58の摺接点から遠ざかるが、円弧面44の他の部分が新しい頂部45として、さきほどの摺接点で当接する。したがって、上記クリアランスを拡大させるように作用するが、突出部42の円弧面44は内輪32と外輪34との間での回転軸O,O’の平行度のずれを吸収することができ、回転軸O,O’の平行度のずれに起因した、ストレスや異音の発生を解消することができる。
【0044】
上記実施形態においては、転がり軸受30の内輪32と加圧ローラ20の軸端部24の外周面26との間に円弧状の突出部42,56を設ける場合について説明したが、円弧状の突出部を転がり軸受30の外輪34と加圧ローラ20の軸端部24の内周面28との間に設ける場合においても同様のことが言える。
【0045】
その一例として、図7を参照しながら、本発明の第五実施形態に係る画像形成装置の加圧ローラ装置2について説明するが、上述した実施形態と重複する部分については省略して、相違点を中心に説明する。
【0046】
図7は、本発明の第五実施形態に係る加圧ローラ装置2の模式的な説明図である。すなわち、本発明の第五実施形態は、外輪34が、耐熱性を有する第三ブッシュ60を介して、加圧ローラ20の軸端部24の内周面28に対して嵌着されていることを特徴としている。
【0047】
図7は、加圧ローラ20の軸端部24を可動フレーム4に対して回転自在に支持する転がり軸受30を示している。この転がり軸受30は、加圧ローラ20の軸端部24に装着される外輪34と、可動フレーム4の取付部4bに装着される内輪32と、内輪32の軌道面と外輪34の軌道面との間に介在する複数の転動体36(ボールや円筒ころ)と、を備えている。
【0048】
外輪34の側に設けられた第三ブッシュ60は、半円状に突出した突出部42を備えてなり、突出部62の円弧面64の頂部65は、転がり軸受30の回転軸Oの方向の幅の大略中点位置(回転中心Qに対応している)において、対向する加圧ローラ20の軸端部24の内周面28(すなわち摺接面として機能している)と当接するように配置されている。突出部62の円弧面64の中心Cは、回転軸Oの上に位置している。また、一対のローラ10,20が圧接されていない状態にあるときには、外輪34の回転軸Oと内輪32の回転軸O’とが実質的に一致して、回転軸O,O’の平行度が得られている。
【0049】
このように構成された加圧ローラ装置2において、不図示の引っ張りばね6の弾性付勢力で駆動ローラ10と加圧ローラ20とが互いに圧接されることにより、外輪34の回転軸Oがベンディングし、外輪34の回転軸Oは内輪32の回転軸O’に対してわずかに傾斜して回転軸O,O’の平行度が失われる。そのとき、円弧面64の頂部65は、回転中心Qを中心にして回転移動して、軸端部24の内周面28の摺接点から遠ざかるが、円弧面64の他の部分が新しい頂部65として、さきほどの摺接点で当接する。したがって、突出部62の円弧面64は内輪32と外輪34との間での回転軸O,O’の平行度のずれを吸収することができ、回転軸O,O’の平行度のずれに起因した、ストレスや異音の発生を解消することができる。また、当該実施形態の場合、突出部62の円弧面64の頂部65と、対向する軸端部24の内周面28との間のクリアランスが変化しないので、回転時の微小な変位(ふれ)の発生を防止することができる。
【0050】
次に、図8を参照しながら、本発明の第六実施形態に係る画像形成装置の加圧ローラ装置2について説明するが、上述した実施形態と重複する部分については省略して、相違点を中心に説明する。
【0051】
図8は、上記第五実施形態を変形した第六実施形態に係る加圧ローラ装置2の模式的な説明図である。すなわち、本発明の第六実施形態は、突出部62の円弧面64の中心Cが、回転中心Qに一致しないで、回転軸Oよりも軸端部24の側にずれた位置に存在することを特徴としている。
【0052】
図8に示すように、突出部62の円弧面64の中心Cが、突出部62の円弧面64の中心Cと回転中心Qとを結ぶ線は回転軸Oに対して直交しているとともに、回転軸Oよりも軸端部24の側に位置している。中心Cがこのような位置にあるとき、突出部62の円弧面64の曲率半径が小さくなっている。そして、突出部62の頂部65が軸端部24の内周面28に対して摺接している。加圧ローラ20のベンディングにより回転軸Oが傾いたときに、第三ブッシュ60の突出部62は回転中心Qを中心に回転するが、円弧面64の曲率半径が小さく構成されているために、円弧面64の頂部65の回転移動の妨げにはならない。したがって、突出部62の円弧面64の中心Cが、回転軸Oよりも軸端部24の側にずれた位置に存在する場合であっても、回転軸Oが傾いたときに、突出部62の円弧面64の頂部65と、対向する軸端部24の内周面28との間のクリアランスを拡大させるように作用するものの、回転軸O,O’の平行度のずれに起因した、ストレスや異音の発生を解消することは可能である。
【0053】
なお、上述した様々な説明は、本発明の実施形態を具体的に説明するために開示したものであり、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態では、突出部42,56,62や凹部52をブッシュ40,50,60に形成したブッシュ形成タイプのものであるが、軸端部24の外周面26や内周面28、あるいは内輪32の内周面38や外輪34の外周面39に直接に形成した直接形成タイプであってもよい。
【0054】
また、上記各実施形態では、円弧面44,58を有する突出部42,56は、加圧ローラ20の回転方向において連続的に延在しているが、他の形態にすることもできる。例えば、図9に示した変形例のように、第一ブッシュ40に設けられる突出部42は、回転方向において離間して配置された構成であってもよい。すなわち、図9において、鍔状部分から8つの突出部42が軸方向に延在し、それらは切欠によって分離・分割されている。このような離間配置は、他の突出部56や凹部52や摺接面28,38にも適用することができる。
【0055】
また、本発明に係る加圧ローラ装置2は、一対のローラ10,20が圧接状態で使用されることにより転がり軸受30の内輪32と外輪34との間での回転軸O,O’の平行度がずれるような種々の使用形態において有効であり、一例としての画像形成装置においては、上述した定着装置に加えて、用紙搬送装置や転写ベルト駆動装置にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の加圧ローラ装置の模式的な斜視図である。
【図2】図1に示した加圧ローラ装置の模式的な要部拡大図である。
【図3】第一実施形態に係る加圧ローラ装置の要部を模式的に説明する図である。
【図4】第二実施形態に係る加圧ローラ装置の要部を模式的に説明する図である。
【図5】第三実施形態に係る加圧ローラ装置の要部を模式的に説明する図である。
【図6】第四実施形態に係る加圧ローラ装置の要部を模式的に説明する図である。
【図7】第五実施形態に係る加圧ローラ装置の要部を模式的に説明する図である。
【図8】第六実施形態に係る加圧ローラ装置の要部を模式的に説明する図である。
【図9】本発明の変形例に係る加圧ローラ装置のブッシュを模式的に説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
2:加圧ローラ装置
4:可動フレーム
4a:取付穴
4b:取付部
6:引っ張りばね
10:駆動ローラ
20:加圧ローラ
24:軸端部
26:外周面
28:内周面(摺接面)
30:転がり軸受
31:挿通穴
32:内輪
34:外輪
36:転動体
38:内周面(摺接面)
39:外周面
40:第一ブッシュ
42:突出部
44:円弧面
45:頂部
50:第二ブッシュ
52:凹部
54:円弧面
55:頂部
56:突出部
58:円弧面
59:底部
60:第三ブッシュ
62:突出部
64:円弧面
65:頂部
A:第一ブッシュの円弧中心
B:第二ブッシュの円弧中心
C:第三ブッシュの円弧中心
O:外輪の回転軸
O’:内輪の回転軸
Q:回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
お互いが圧接状態にある一対のローラと、
内輪と外輪と転動体とから構成されてローラを回転自在に軸支する転がり軸受と、
を備える加圧ローラ装置であって、
ローラの軸端部は、内輪又は外輪に装着され、
ローラの軸端部と内輪又は外輪とのうち少なくとも一方は、回転軸を含む平面で切断したときの断面が円弧状に突出している円弧状突出部を備えて、
円弧状突出部の頂部は、転がり軸受の軸方向長さの大略中点位置において、対向する摺接面と当接するように構成されていることを特徴とする加圧ローラ装置。
【請求項2】
摺接面は、回転軸を含む平面で切断したときの断面が直線形状であり、
円弧状突出部の円弧の中心は、回転軸上にあるか、又は、回転軸から、対向する摺接面の側にずれた位置に存在することを特徴とする、請求項1記載の加圧ローラ装置。
【請求項3】
摺接面は、回転軸を含む平面で切断したときの断面が凹状の円弧であり、
凹状の円弧の曲率半径は円弧状突出部の円弧の曲率半径よりも大きく、
円弧状突出部の円弧の中心は、回転軸上にあるか、又は、回転軸から、対向する摺接面の側にずれた位置に存在し、且つ、
円弧状突出部の円弧の中心と凹状の円弧の中心とを結ぶ線は回転軸に対して直交していることを特徴とする、請求項1記載の加圧ローラ装置。
【請求項4】
摺接面は、回転軸を含む平面で切断したときの断面が凸状の円弧であり、
円弧状突出部の円弧の中心は、回転軸上にあるか、又は、回転軸から、対向する摺接面の側にずれた位置に存在し、且つ、
円弧状突出部の円弧の中心と凸状の円弧の中心とを結ぶ線は回転軸に対して直交していることを特徴とする、請求項1記載の加圧ローラ装置。
【請求項5】
円弧状突出部又は摺接面の少なくとも一つは、ローラと転がり軸受との間に設けられるブッシュ上に形成されていることを特徴とする、請求項1記載の加圧ローラ装置。
【請求項6】
円弧状突出部は、回転方向において、離間して配置されているか又は連続的に延在していることを特徴とする、請求項1記載の加圧ローラ装置。
【請求項7】
請求項1乃至6記載の加圧ローラ装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−243560(P2009−243560A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89843(P2008−89843)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】