説明

加圧回転体及び加熱定着装置

【課題】 普通紙サイズ紙と封筒を交互に通紙された場合に発生する黒スジ画像等の画像不良を防止する。
【解決手段】 加圧ローラの芯金の最大通紙幅の内側の所定領域に小径部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式を用いた画像形成装置に適用される加熱定着装置及びこの装置に用いられる加圧回転体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式の複写機、プリンタ等の多くは像加熱装置である加熱定着装置(定着器)として熱効率、安全性が良好な接触加熱型の熱ローラ定着方式の装置や、省エネルギータイプのフィルム加熱方式の装置を採用している。
【0003】
熱ローラ定着方式の加熱定着装置は、加熱用回転体としての加熱ローラ(定着ローラ)と、これに圧接させた加熱用回転体としての弾性ローラを基本構成とし、この一対のローラを回転させて該両ローラ対の圧接ニップ部である定着ニップ部に未定着画像(以下、トナー画像と記す)を形成担持させた被加熱材としての被記録材(転写材シート・静電記録紙・エレクトロファックス紙・印字用紙等)を導入して定着ニップ部を侠持搬送通過させることで、加熱ローラからの熱と定着ニップ部の加圧力にてトナー画像を被記録材面に永久画像として熱圧定着させるものである。
【0004】
また、フィルム加熱方式の加熱定着装置は例えば特開昭63-313182号公報・特開平2-157878号公報・特開平4-44075号公報・特開平4-204980号公報等に提案されており、固定配置したセラミックヒータ等の加熱体に加熱用回転体である耐熱性フィルム(定着フィルム)を加圧用回転体(弾性加圧ローラ)で密着させて摺動搬送させ、該フィルムを挟んで加熱体と加圧用回転体とで形成される圧接ニップ部である定着ニップ部にトナー画像を像担持した被記録材を導入してフィルムと一緒に搬送させて、フィルムを介して付与される加熱体からの熱と定着ニップ部の加圧力によってトナー画像を被記録材上に永久画像として定着させる装置である。
【0005】
フィルム加熱方式の加熱定着装置は、加熱体としてセラミックヒータ等の低熱容量線状加熱体を、フィルムとして薄膜の低熱容量のものを用いることができるため、省電力化・ウエイトタイム短縮化(クイックスタート性)が可能である。またフィルム加熱方式の加熱定着装置はフィルム駆動方法として用い加圧ローラとの摩擦力でフィルムを駆動する方法が知られているが、近年では部品点数が少なく低コストな構成である加圧ローラ駆動方式が多く用いられている。
【特許文献1】特開昭63-313182号公報
【特許文献2】特開平2-157878号公報
【特許文献3】特開平4-44075号公報
【特許文献4】特開平4-204980号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例で示すような加熱定着装置において、例えばA4やLTRサイズ紙等の大サイズ紙と封筒等の小サイズ紙の交互通紙を続けると、大サイズ紙の封筒端部相当位置で黒スジ等の画像不良が発生するという問題がある。これは、封筒通紙時に封筒端部でフィルム表面が荒らされ、その状態でトナー画像に接触すると僅かにトナーを剥ぎ取り、これを繰り返すことにより、フィルム上に蓄積していき、黒スジ画像が発生する。
【0007】
このように封筒の通紙によってフィルム表面が荒らされるのは、封筒が紙を折り曲げ、重ね合わせて製造されているために、重ね合せた上下の紙の送り速度の違いが、封筒端部で皺や折り目のずれ(最初の折り目と異なる部分で再度折り目ができること)となって解消される際に定着フィルムと強く摺擦するためである。特に、フラップ側ではフラップが固定されていない為、定着ニップ部で生じる封筒の上下の紙の速度差が図5のようにフラップ部の再折り曲げとなり、本現象がより顕著となる。
【0008】
上記封筒の上下の紙の送り量の差は一般的に、熱ローラ定着方式では定着ローラ駆動で紙搬送を行うため、図6のように紙の厚さ分(Δt)だけ回転半径の大きい紙の裏面側の方が速く(多く)送られ、フィルム加熱方式では加圧ローラ駆動で紙搬送を行う為、図7のように紙の厚さ分(Δt)だけ回転半径が大きい封筒の表面側の方が速く(多く)送られる。
【0009】
この現象は、定着ニップ内の圧力が大きいほど、封筒端部でのフィルムとの摺擦が強くなるため、定着フィルムへ与えるダメージが大きくなり、画像不良の発生が顕著になる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、
芯金上にゴム層が形成され、加熱体に圧接するように配接されて該加熱体との間に形成される圧接部に未定着画像を有する記録材を侠持搬送させるように用いられる加圧回転体において、
上記加圧回転体の芯金形状において最大通紙幅の内側の所定領域に小径部を設けることにより、封筒通紙領域の加圧回転体の硬度を低くでき、封筒端部でのフィルムとの摺擦を軽減できるため、封筒端部相当位置での黒スジ画像等の画像不良等の発生を低減できる。
【0011】
更に、上記加圧回転体製造時に芯金大径部よりも芯金小径部の金型径が大きいものを用いて製造することにより、封筒端部相当位置での黒スジ画像等の画像不良の発生を低減できると同時に、良好な定着性と加圧回転体のトナー汚れの発生を防止することができる。
【0012】
また、加熱体に圧接して回転駆動される加圧回転体を有し、該加熱体と加圧回転体との間に形成される圧接部で未定着画像を有する記録材を侠持搬送させて加熱及び加圧により未定着画像を記録材に加熱定着させる加熱定着装置において、
上記加圧回転体の芯金形状において最大通紙幅の内側の所定領域に小径部を設けることにより、封筒通紙領域の加圧回転体の硬度を低くでき、封筒端部でのフィルムとの摺擦を軽減できるため、封筒端部相当位置での黒スジ画像等の画像不良等の発生を低減できる。
【0013】
更に、上記加圧ローラ製造時に芯金の径が細い部分の金型径が太くなっている金型を用いて製造することにより、封筒端部相当位置での黒スジ画像等の画像不良の発生を低減できると同時に、良好な定着性と加圧回転体のトナー汚れの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明により普通紙サイズ紙と封筒を交互に通紙された場合に発生する黒スジ画像等の画像不良を防止する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施例)
以下に、本発明に係る実施例を示す。
【0016】
まず図1は、本発明に係る画像形成装置(プロセススピード151mm/s、スループット24ppm(A4))の構成図である。
【0017】
図1において、1は感光ドラムであり、OPC、アモルファスSe、アモルファスSi等の感光材料がアルミニウムやニッケルなどのシリンダ状の基盤上に形成されている。感光ドラム1は矢印の方向に回転駆動され、まず、その表面は帯電装置としての帯電ローラ2によって一様帯電される。次に、画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビーム3による走査露光が施され、静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置4で現像、可視化される。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。
【0018】
可視化されたトナー像は、転写装置としての転写ローラ5により、所定のタイミングで搬送された転写材P上に感光ドラム1上より転写される。このとき転写材Pは感光ドラム1と転写ローラ5に一定の加圧力で挟持搬送される。このトナー像が転写された転写材Pは定着装置6へと搬送され、永久画像として定着される。一方、感光ドラム1上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置7により感光ドラム1表面より除去される。
【0019】
図2に本発明に係る加熱定着装置6の構成を示す。図2において、定着部材10は以下の部材から構成される。13は熱容量の小さな定着フィルムであり、クイックスタートを可能にするために100μm以下の厚みで耐熱性、熱可塑性を有するポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES、PPS、PFA、PTFE、FEP等のフィルムである。また、長寿命の加熱定着装置を構成するために十分な強度を持ち、耐久性に優れたフィルムとして、20μm以上の厚みが必要である。よって定着フィルム13の厚みとしては20μm以上100μm以下が最適である。さらにオフセット防止や記録材の分離性を確保するために表層にはPFA、PTFE、FEP等の離型性の良好な耐熱樹脂を混合ないし単独で被覆したものである。
【0020】
また、11は定着フィルム13の内部に具備された加熱用ヒータであり、高熱伝導であるAl2O3又はAlN基板からなる。本実施例では、背面加熱型の加熱ヒータを使用した。これにより記録材上のトナー像を溶融、定着させるニップ部の加熱を行う。発熱体11aと普通サイズ紙用と小サイズ紙用の2本設けた。
【0021】
12は加熱用ヒータ11を保持し、ニップと反対方向への放熱を防ぐための断熱ステイホルダーであり、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等により形成されており、定着フィルム13が余裕をもってルーズに外嵌されていて、矢印の方向に回転自在に配置されている。また、定着フィルム13は内部の加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12に摺擦しながら回転するため、加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12と定着フィルム13の間の摩擦抵抗を小さく抑える必要がある。このため加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12の表面に耐熱性グリース等の潤滑剤を少量介在させてある。これにより定着フィルム13はスムーズに回転することが可能となる。
【0022】
加圧ローラ20は芯金21の外側にシリコンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムあるいはシリコーンゴムを発泡して形成された弾性層22からなり、この上にPFA、PTFE、FEP等の離型性層を形成してある。加圧ローラ20は上記の定着部材10の方向に不図示の加圧手段により、長手方向両端部から加熱定着に必要なニップ部を形成するべく12kgfの力で加圧されており、長手方向端部から芯金21を介して不図示の回転駆動により、矢印の方向に回転駆動される。これにより上記定着フィルム13はステイホルダー12の外側を図の矢印方向に従動回転する。あるいは定着フィルム13の内部に不図示の駆動ローラを設け、駆動ローラを回転駆動することにより、定着フィルム13を回転させる。
【0023】
本実施例の加圧ローラは、図3のようにcom10、DL等の封筒幅に対応するために120mm幅で芯金径が細くなっている。これにより、封筒通紙域のゴム厚が厚くなり、ローラ硬度が低くなる。従って、封筒通紙域の圧力が低下し、定着フィルムと封筒端部の摺擦を軽減できるため、黒スジ等の画像不良を防ぐことができる。
【0024】
表1に芯金径を細くした部分のローラ硬度を示す。
【0025】
【表1】

表1から分かるように、芯金径が細くなればなるほどその部分のローラ硬度が小さくなることが分かる。尚、本実施例では芯金の強度を考慮して、芯金径の下限をΦ11とした。
【0026】
次に、上記の加圧ローラで実際に封筒と普通サイズ紙(LTR)を交互に印字した場合に黒スジ画像が発生するまでの通紙枚数の比較を行った結果を表2に示す。尚、本実施例では、一般的な使用モードに最も近いと思われる。普通サイズ紙(LTR)4枚と封筒(com10)1枚を1セットとし、1セット/4分の間欠プリントモードで比較を行った。
【0027】
【表2】

表2から分かるように、封筒通紙域の径を細くし、ローラ硬度を下げていく程、不良画像の発生を防ぐ効果が大きくなる。尚、本実施例では芯金径を細くする領域をcom10(幅:104.7mm)、DL(幅:110mm)に対応するために120mmとしたが、これを変えることによってその他のサイズの封筒に対応することも可能である。又、本実施例ではフィルム加熱方式について説明したが、熱ローラ方式に於いても同様の効果が得られた。
【0028】
本実施例と同様の効果を得るために、封筒通紙域のローラゴム材の硬度を低くする等の方法によっても可能であるが、ローラの製造が非常に困難であり、コストが非常にアップしてしまう。
【0029】
以上のように、封筒通紙域の加圧ローラ芯金を非通紙域より小さくすることにより、封筒端部での定着フィルムのダメージを軽減でき、不良画像の発生を防ぐことができる。
【0030】
(第2の実施例)
本実施例では、前記実施例の芯金形状に加えて、図4のように加圧ローラ弾性層形成時に芯金小径部の金型外径を大きなものを用いて製造することによって、加熱定着時の外径形状がほぼストレートの加圧ローラを使用した。尚、その他の条件は前記実施例と同様であり再度の説明は省略する。
【0031】
前記実施例のように、長手方向に芯金径が異なり、ゴム厚が異なるローラをストレート形状の金型で製造した場合、ゴム加硫時の温度(130℃)付近ではローラ外径は金型形状にならうためほぼストレートとなるが、例えば室温付近ではゴムの収縮量が大きい芯金小径部のローラ外径が通常径部より細くなってしまう。このようなローラで加熱定着を行った場合、ローラ外径が小さいところで、定着ニップが細くなり、その部分の定着性が不十分であったり、加圧ローラコンタミが発生する場合がある。
【0032】
実際には、加熱定着を行っているローラ温度付近(表面温度100℃付近)でローラ外径がほぼストレートになっていることが望ましい。
【0033】
表3に前記実施例の芯金形状(Φ18-11-18)に加えて、小径芯金部の金型径を半径で150μm、200μm、250μm大きくして製造した加圧ローラを用いて定着性と加圧ローラトナー汚れの比較を行った。尚、定着性、加圧ローラ汚れの評価は共にラフ紙(FB75g/m2)で行った。
【0034】
【表3】

表3から分かるようにストレート型でも、定着性は許容レベルであり、加圧ローラ汚れも10万枚毎に平滑紙を通紙する等のクリーニングを行えば除去できるレベルではあるが、金型径を大きくしていくことにより、良好な定着性と加圧ローラ汚れを防止することができる。尚、本実施例の加圧ローラを用いても封筒端部での黒スジ等の画像不良を防止できることは確認されている。
【0035】
以上のように、加圧ローラ芯金径が細い部分の金型径を大きくすることによって、封筒端部での画像不良等の発生を防ぐと同時に加圧ローラコンタミを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係わる画像形成装置の構成図。
【図2】実施例1の加熱定着装置図。
【図3】実施例1の加圧ローラを表す図。
【図4】実施例2の加圧ローラ金型形状を表す図。
【図5】解決しようとする課題を説明する図。(a)定着器通過前の封筒、(b)定着器通過後の封筒。
【図6】熱ローラ方式定着器の封筒の紙送り速度関係を説明する図。
【図7】フィルム加熱方式定着器の封筒の紙送り速度関係を説明する図。
【符号の説明】
【0037】
11 加熱部材(ヒータ)
11a セラミック基板
11b 通電発熱抵抗層
11c 薄肉ガラス保護層
12 ステイホルダー
13 薄肉フィルム(定着フィルム)
14 温度検知素子
15 サーモプロテクタ
20 加圧ローラ
21 加圧ローラ芯金
22 加圧ローラ弾性層
23 加圧ローラ離型層
24 加圧ローラ金型
25 端部キャップ
30 定着ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金上にゴム層が形成され、加熱体に圧接するように配接されて該加熱体との間に形成される圧接部に未定着画像を有する記録材を侠持搬送させるように用いられる加圧回転体において、
上記加圧回転体の芯金形状において最大通紙幅の内側の所定領域に小径部を設けることを特徴とする加圧回転体。
【請求項2】
上記加圧回転体製造時に芯金大径部よりも芯金小径部の金型径が大きいものを用いて製造することを特徴とする請求項1に記載の加圧回転体。
【請求項3】
加熱体に圧接して回転駆動される加圧回転体を有し、該加熱体と加圧回転体との間に形成される圧接部で未定着画像を有する記録材を侠持搬送させて加熱及び加圧により未定着画像を記録材に加熱定着させる加熱定着装置において、
上記加圧回転体の芯金形状において最大通紙幅の内側の所定領域に小径部を設けることを特徴とする加熱定着装置。
【請求項4】
上記加圧ローラ製造時に芯金の径が細い部分の金型径が太くなっている金型を用いて製造することを特徴とする請求項3に記載の加熱定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−84806(P2006−84806A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269784(P2004−269784)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】