説明

加圧式の塗布具

【課題】 弾発部材の波を打ったような多数の湾曲により、スライド栓を軸方向に真っ直ぐ(水平)に加圧することができず、スライド栓が傾いたり、不均一に変形したりして、スライド栓後方への液漏れや弾発部材の加圧力損失、スライド栓の摺動不能、さらには筆記不良まで至る恐れがあった。
【解決手段】 ペン先と、前記ペン先の後端に接続される軸筒を有し、前記軸筒内に塗布液と、或いは、塗付液の後部に配置したグリースの後端界面に密着して前進するスライド栓と、そのスライド栓の後方に加圧システムとしての弾発部材が設けられてなる加圧式の塗布具であって、前記スライド栓の外周に、軸筒の内壁に摺接する環状突部を設けると共に、前記スライド栓の後端には、弾発部材の前方部を内周側及び/または外周側を囲繞するガイド部を設けた加圧式の塗布具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン先と、前記ペン先の後端に接続される軸筒を有し、前記軸筒内に塗布液と、前記塗布液の後端界面に密着して前進するスライド栓と、そのスライド栓の後方に加圧システムとしての弾発部材が設けられてなる加圧式の塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗布液及び前記塗布液の後端界面に密着して前進するスライド栓に圧力を加えて吐出支援を行う加圧式の塗布具が多く開示されている。加圧システムの例としては、圧縮気体やスプリングを利用したもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−254579号公報
【特許文献2】特表2003−525775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、芯筒体(軸筒にあたる)内に、粉末状の粉芯(塗布液にあたる)を収容し、その粉芯の後方に配置された押圧弁(スライド栓にあたる)を、スプリングで加圧することによって粉芯の吐出支援をする筆記用具が例示されている。前記押圧弁は、ペン先側に向って開口する有底筒状であると共に、その押圧弁の後端水平面には前記スプリングの前方部が直接当接されている。
ところで、そのスプリングが芯筒体内でスムーズに伸縮するためには、スプリングの外周と芯筒体内壁との間に僅かな隙間が必要であるが、その隙間によって、スプリングを圧縮させた際に、そのスプリング自身に波を打ったような多数の湾曲が生じてしまう。つまり、スプリングの前方部から押圧弁に作用する力は、芯筒体の軸心に対して傾斜した状態で作用することになり、それ故に、前記押圧弁を軸方向に真っ直ぐ(水平)に加圧することができなくなってしまっている。そのため、押圧弁が傾斜した状態で芯筒体の内壁を摺動することになり、摺動抵抗が増加してしまい、その結果、スプリングの加圧力損失や押圧弁の摺動不良、さらには筆記不良にまで至る恐れがあった。
【0005】
特許文献2では、インク管(軸筒にあたる)内に、筆記用媒体(塗布液にあたる)を収容し、その筆記用媒体の後方に配置されたインク駆動部材(スライド栓にあたる)を、スプリングで加圧することによって筆記用媒体の吐出支援をする加圧式筆記用具が例示されている。前記インク駆動部材は球状であると共に、そのインク駆動部材の後端球面には前記ばねの前方部が直接当接されている。
ところで、そのスプリングがインク管内でスムーズに伸縮するためには、前記の従来例と同様に、スプリングの外周とインク管内壁との間に僅かな隙間が必要であるが、その隙間によって、スプリングを圧縮させた際に、そのスプリング自身に波を打ったような多数の湾曲が生じてしまう。つまり、前記スプリングの前方部からインク駆動部材に作用する力は、インク管の軸心に対して傾斜した状態で作用することになり、それ故に、前記インク駆動部材を軸方向に真っ直ぐ(水平)に加圧することができなくなってしまっている。これに加え、前記インク駆動部材は圧縮性であるため、加圧された方向に変形し易く、インク管内壁への接触が方向によって不均一となってしまう。その結果、局所的に液密の弱い箇所や、局所的に余計な摺動抵抗が発生してしまう箇所ができてしまい、インク駆動部材後方への液漏れやスプリングの加圧力損失、インク駆動部材の摺動不良、さらには筆記不良にまで至る恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ペン先と、前記ペン先の後端に接続される軸筒を有し、前記軸筒内に塗布液の消費に伴って前進するスライド栓と、そのスライド栓の後方に加圧システムとしての弾発部材が設けられてなる加圧式の塗布具であって、前記スライド栓の外周に、軸筒の内壁に摺接する環状突部を設けると共に、前記スライド栓の後端には、弾発部材の前方部を内周側及び/または外周側を囲繞するガイド部を設けたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ペン先と、前記ペン先の後端に接続される軸筒を有し、前記軸筒内に塗布液の消費に伴って前進するスライド栓と、そのスライド栓の後方に加圧システムとしての弾発部材が設けられてなる加圧式の塗布具であって、前記スライド栓の外周に、軸筒の内壁に摺接する環状突部を設けると共に、前記スライド栓の後端には、弾発部材の前方部を内周側及び/または外周側を囲繞するガイド部を設けたので、安定した液密と効率的な加圧力伝達及びスムーズなスライド栓の摺動を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施例を示す縦断面図。
【図2】図1のA部拡大図。
【図3】第1実施例のスライド栓の正面図。
【図4】突起を有するスライド栓の例を示す図2相当図。
【図5】コイルスプリングの脱落防止手段の別例を示す縦断面図。
【図6】コイルスプリングの脱落防止手段の別例を示す縦断面図。
【図7】第2実施例を示す縦断面図。
【図8】図7のC部拡大図。
【図9】第2実施例のスライド栓の正面図。
【図10】第2実施例のスライド栓の斜視図。
【図11】図8のI−I部横断面図。
【図12】ガイド部の変形例を示す図11相当図。
【図13】第3実施例を示す縦断面図。
【図14】図13のD部拡大図。
【図15】第3実施例のスライド栓の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、作用について説明する。本発明は、ペン先と、前記ペン先の後端に接続される軸筒を有し、前記軸筒内に塗布液と、或いは、塗付液の後部に配置したグリースの後端界面に密着して前進するスライド栓と、そのスライド栓の後方に加圧システムとしての弾発部材が設けられてなる加圧式の塗布具であって、前記スライド栓の外周に、軸筒の内壁に摺接する環状突部を設けると共に、前記スライド栓の後端には、弾発部材の前方部の内周側及び/または外周側を囲繞するガイド部を有する。
前記弾発部材は軸筒内において圧縮された状態で配置され、その弾発部材が、前記スライド栓を加圧することによって、前記スライド栓は、インキの消費につれて徐々に軸筒内を前進する。その際、前記環状突部が、前記軸筒の内壁に全周で密着して液密を保つとともに、その軸筒の内壁に付着残留した塗布液の払拭を行う。
ところで、前記弾発部材が軸筒内でスムーズに伸縮するためには、前記弾発部材の外周と軸筒の内壁との間に僅かな隙間が必要であるが、その隙間によって、前記弾発部材を圧縮させた際に、その弾発部材自身に波を打ったような多数の湾曲が生じてしまう。つまり、前記弾発部材の前方部からスライド栓に作用する力は、軸筒の軸心に対して傾斜した状態で作用することになる。そこで、前記ガイド部が、前記弾発部材の前方部を内周側及び/または外周側を囲繞することで、前記弾発部材の前方部の湾曲を規制する。この規制により、弾発部材の前方部からスライド栓に作用する力が直線状に矯正される。その結果、スライド栓が、軸方向に真っ直ぐ(水平)に加圧されるようになる。これにより、スライド栓が傾いたり、不均一に変形したりすることなく、安定した液密と効率的な加圧力伝達及びスムーズなスライド栓の摺動を実現することができる。
【0010】
以下、第1実施例について図1、2、3に基づき詳細に説明する。筆記具本体は、軸筒1と、その軸筒1の先端内孔2に圧入されたチップホルダー3、そのチップホルダー3の先端内孔4に圧入されたボールペンチップ5、そのボールペンチップ5の先端6に回転自在に配置されたボール7、並びに、前記軸筒1内に収容された塗付液8、その塗付液8の後端に密着して配置された液状グリース9、そのグリース9の後端に密着して配置されたスライド栓10、並びに、そのスライド栓10の後方に配置されたコイルスプリング(弾発部材)11、前記軸筒1の後端開口部12に圧入され、前記コイルスプリング11の脱落を防止する尾栓13から構成されている。そして、前記塗布液8は、軸筒1やチップホルダー3及びボールペンチップ5の各々の内孔を介して、ボール7の表面へと供給される。
尚、本例においては、チップホルダー3と、そのチップホルダー3の先端内孔4に圧入されたボールペンチップ5と、そのボールペンチップ5の先端6に回転自在に配置されたボール7からペン先14を構成しているが、ボール7が配置されたボールペンチップ5をペン先14とし、前記軸筒1の先端内孔2に圧入しても良い。
また、本例では、ペン先14の一例としてボールペンチップ5を挙げたが、射出成形によって形成した焼結体や、繊維収束体を研磨切削した、所謂、繊維ペン先、押出成形によって形成した、所謂、樹脂ペン先等も適宜採用することができる。
【0011】
前記軸筒1は、ポリプロピレン樹脂の押出成形品であるが、塗布液8或いはグリース9による膨潤・溶解・分解等の変質や形状変化がなく、且つ、水蒸気透過性の低い材質であれば、フッ素やナイロン等の樹脂、或いは樹脂表面にアルミ蒸着や酸化珪素蒸着を施したもの、樹脂中にアルミ粉末やガラス粉末を混入させたもの、ステンレスや真鍮等の金属等を使用しても良く、射出成形品であっても良い。
【0012】
前記軸筒1内に収容される塗布液8は、アルコール等の有機溶剤を主媒体とした油性インキであるが、水を主媒体とした水性インキも使用可能であり、これに着色成分である顔料及び/または染料、凍結防止等のための高沸点有機溶剤、被筆記面への定着性を付与する樹脂成分、表面張力や粘弾性、潤滑性等を調整する界面活性剤や多糖類、防錆・防黴剤等が配合されたものや、誤字修正等を目的とした酸化チタン等の白色隠蔽成分を配合したものであっても良い。
【0013】
前記軸筒1内に収容されるスライド栓10は、略円柱状であり、その円柱部15の外周中腹に環状突部16を有すると共に、スライド栓10の前端、並びに、後端に円筒状の開口部17、18を有し、その開口部17、18の底面19、20は、軸筒1の軸心に対して水平に形成されている。
前記環状突部16の外形は、1つの円弧により形成されており、その円弧の頂点近傍で若干の弾性変形を有した状態で軸筒内壁21に接触している。前記後端開口部18の内径は、前記コイルスプリング11の外径よりも僅かに大きく形成されており、前記コイルスプリング11の前方部22を挿入することで、ガイド部としての役割を果たす。
尚、本例では、前記環状突部16の外形を1つの円弧により形成し、その円弧の頂点近傍で軸筒内壁21に接触させているが、塗布液8の液密性及び軸筒内壁21からの塗布液8の払拭性が十分であれば、2つ以上の円弧や曲線、直線を連結して外形を形成しても良い。
また、前記環状突部16の数に関しても、1つに限ることなく、前後に2つ、或いは、3つ形成しても良い。さらに、スライド栓10の全体形状は、組立時の方向性を考慮すると前後対称であることが望ましいが、前部と後部に各々特別な機能を持たせるような場合など、前後非対称であっても構わない。
また、後端開口部18の内径を前記コイルスプリング11の外径よりも僅かに大きく形成したが、後端開口部18の内径を前記コイルスプリング11の外径よりも僅かに大きく形成して、前記コイルスプリング11の前方部22を圧入したり、後端開口部18の内壁23に突起24を設けて、前記コイルスプリング11の前方部22を引っ掛けるなどして固定しても良い(図4参照)。
【0014】
さらに、前記スライド栓10は、アスカーC硬度で50度のニトリルゴム製であるが、ブチルゴムやシリコンゴム等、他のゴム材料やエラストマー、または、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などでもよく、前記軸筒内壁21との密着性及び摺動性が良好であり、塗布液8との相溶性を考慮し、膨潤・溶解・分解等の変質や形状変化のないものであれば、材質・硬度共に適宜選択することができる。尚、本例では、前記スライド栓10の円柱部15と環状突部16、ガイド部18を一体に設けたが、これらは各々別体としても良く、異なる材質により構成することもできる。
【0015】
また、塗布液8の後端に密着してグリース9を充填し、スライド栓10との隔壁とすれば、塗布液8との間に相溶性がある材質でも、スライド栓10として採用することができる。そのグリース9の例としては、水やエチレングリコール、グリセリン等を増粘化した水性グリースや、シリコーンや流動パラフィン、ポリブデン、アルファーオレフィンをゲル化、或いは増粘化した油性グリース等、スライド栓との相溶性がなく、塗布液8との反転を起こさないものであれば適宜選択することができる。
【0016】
前記スライド栓10の後方に配置されるコイルスプリング11は、その前方部22に、座巻が1巻設けられており、その座巻部を含む3巻を前記スライド栓10の後端開口部18に挿入している。このコイルスプリング11は、スライド栓10を前方に付勢して塗布液8の吐出支援を行う加圧システムである。そのコイルスプリング10は、その前端を前記後端開口部18の軸筒1の軸心に対して水平な底面20に当接させ、コイルスプリング11の後端を尾栓13に当接させることによって圧縮した状態で設置されている。
尚、前記コイルスプリング11がスライド栓10の前進に合わせて伸張するように、コイルスプリング11をスライド栓10に固定する等した場合には、コイルスプリング11の前端を、必ずしも後端開口部18の底面20に当接させる必要はない。例えば、前述した図4に示すように内面の突起24でコイルスプリング11の中間部を固定、或いは、コイルスプリング11の前端突起24に当接させても良い。
また、後端開口部18の底面20は、コイルスプリング11からの加圧力を円周で均等に受け止められる形状であれば、中央に向って突出したり、窪んだ形状であっても構わない。コイルスプリング11の前端が後端開口部18の底面20に当接しない場合も同様である。
【0017】
前記コイルスプリング11はステンレス製であるが、ピアノ線や樹脂など、求める特性に応じて適宜選択することができる。さらに、本例における弾発部材をコイルスプリング11としているが、板ばねであっても良く、或いは、湾曲させた状態で配置した弾性鋼材などであっても良い。
【0018】
ところで、前記コイルスプリング11が軸筒1内でスムーズに伸縮するためには、コイルスプリング11の外周と軸筒内壁21との間に僅かな隙間が必要であるが、その隙間によって、コイルスプリング11を圧縮させた際に、そのコイルスプリング11自身に波を打ったような多数の湾曲が生じてしまう。つまり、コイルスプリング11の前方部22からスライド栓10に作用する力は、軸筒1の軸心に対して傾斜した状態で作用することになる。そこで、前記スライド栓10のガイド部18にコイルスプリング11の前方部22を挿入することで、コイルスプリング11自身に波を打ったような多数の湾曲が生じても、コイルスプリング11の前方部22の外周とガイド部18の内壁23が接触して、コイルスプリング11の前方部22の湾曲を規制する。この規制により、コイルスプリング11の前方部22からスライド栓10に作用する力がほぼ直線状に矯正される。その結果、スライド栓10が、軸方向に真っ直ぐ(水平)に加圧されるようになる。これにより、スライド栓10が傾いたり、不均一に変形したりすることなく、安定した液密と効率的な加圧力伝達及びスムーズなスライド栓摺動を実現することができる。
尚、本例では、コイルスプリング11の前方部22のガイド巻数を3巻としたが、コイルスプリング11の前方部22の湾曲を規制できれば、必ずしも3巻である必要はない。
【0019】
前記尾栓13は、中心部分に貫通孔26を有する略円筒状としているが、スライド栓の後方空間27を密封することなく、外気との通気を可能に維持できれば、側面に通気孔を設けた中実尾栓としてもよい。また、尾栓13に代えて、コイルスプリング11の脱落を防止する手段としては、前記軸筒1の外側から圧力をかけて内径を絞ったり(図5参照)、軸筒1の一部を内側へ倒し込んだり(図6参照)して、コイルスプリング11の後端を突き当てるための当接部28を設けても良く、或いは、軸筒内壁21に突起を設けてコイルスプリング11の後端部を引っ掛けるなどしても良い。さらには、軸筒1とコイルスプリング11の後端部を接着、または溶着する等して、コイルスプリング11の後端を軸筒1に固定しても良い。尚、固定する箇所は、全周か、2点以上放射状に固定することが望ましい。
【0020】
次に、スライド栓の変形例である第2実施例について図6、7、8、9に基づき詳細に説明する。本実施例におけるスライド栓29の形状は、略円柱状であり、その円柱部30の外周中腹に環状突部31を有すると共に、円柱部の前端面32、並びに、後端面33に延設された細径部34、35を有する。
前記環状突部31の外形は、1つの緩やかな円弧により形成されており、その円弧の頂点近傍で弾性変形を有した状態で軸筒内壁21に接触している。外形を緩やかな円弧とすることで、軸筒内壁21に対する接触区間を長くし、液密性の信頼度を上げることができるため、加圧力を強化したい時などに適している。前記後端側細径部35の外径は、コイルスプリング11の内径よりも僅かに小さく形成されており、コイルスプリング11の前方部22に挿入することで、ガイド部としての役割を果たす。
尚、本例では、後端側細径部35の外径をコイルスプリング11の内径よりも僅かに小さく形成したが、後端側細径部35の外径をコイルスプリング11の内径よりも僅かに大きく形成して、コイルスプリング11の前方部22に圧入したり、後端側細径部35の外壁36に前記第1実施例と同様な突起を設けて、コイルスプリング11の前方部22を引っ掛けるなどして固定しても良い。
また、前端側細径部34の外径をチップホルダー3の内径よりも小さく設定しておけば、塗布液8の消費によってスライド栓29がチップホルダー3の後端に達した時、その前端側細径部34がチップホルダー3の内孔37に進入し、チップホルダー3内に残留する塗布液8を押し出すことが可能であるため、無駄なく経済的に使用できる。
【0021】
前記スライド栓29の後方に配置されるコイルスプリング11は、その前方部22に、座巻が3巻設けられており、その座巻部3巻の内部に、前記スライド栓29の後端細径部35を挿入している。コイルスプリング11は、スライド栓29を前方に付勢して塗布液8の吐出支援を行う加圧システムである。そのコイルスプリング11は、その前端を前記円柱部30の軸筒1の軸心に対して水平な後端面33に当接させ、コイルスプリング11の後端を尾栓13に当接させることによって圧縮した状態で設置されている。
尚、前記コイルスプリング11がスライド栓の前進に合わせて伸張するように、コイルスプリング11をスライド栓29に固定する等した場合には、コイルスプリング11の前端を、必ずしも円柱部30の後端面33に当接させる必要はない。
また、円柱部30の後端面33は、コイルスプリング11からの加圧力を円周で均等に受け止められる形状であれば、内側或いは外側に向って傾斜するテーパ面や曲面であっても構わない。コイルスプリング11の前端が円柱部30の後端面33に当接しない場合も同様である。
【0022】
ところで、前記コイルスプリング11が軸筒1内でスムーズに伸縮するためには、コイルスプリング11の外周と軸筒内壁21との間に僅かな隙間が必要であるが、その隙間によって、コイルスプリング11を圧縮させた際に、そのコイルスプリング11自身に波を打ったような多数の湾曲が生じてしまう。つまり、コイルスプリング11の前方部22からスライド栓29に作用する力は、軸筒1の軸心に対して傾斜した状態で作用することになる。そこで、前記スライド栓29のガイド部35をコイルスプリング11の前方部22内に挿入することで、コイルスプリング11自身に波を打ったような多数の湾曲が生じても、コイルスプリング11の前方部22の内周とガイド部35の外壁36が接触して、コイルスプリング11の前方部22の湾曲を規制する。この規制により、コイルスプリング11の前方部22からスライド栓29に作用する力が直線状に矯正される。その結果、スライド栓29が、軸方向に真っ直ぐ(水平)に加圧されるようになる。これにより、スライド栓29が傾いたり、不均一に変形したりすることなく、安定した液密と効率的な加圧力伝達及びスムーズなスライド栓摺動を実現することができる。
また、前記ガイド部35は、コイルスプリングの前方部が湾曲しようとする力を抑え込む必要があり、肉厚であるほうが好ましい。そのため、直径の小さなコイルスプリングには、第1実施例のような外側からコイルスプリングの前方部を囲繞するスライド栓が適しており、直径の大きなコイルスプリングには、第2実施例のような内側からコイルスプリングの前方部を囲繞するスライド栓が適している。
また、本例では、前記ガイド部35の断面形状を円形(図10参照)としたが、コイルスプリング11の前方部22の湾曲を規制できれば、多角形や、中心を基点として放射状へ広がる様な形状(図12参照)であっても良い。
【0023】
ところで、加圧式筆記具においては、加圧システムによって塗布液に圧力が加えられるため、その塗布液がスライド栓の環状突部と軸筒内壁の間を押し分けて、スライド栓の後方へと洩れ出してしまう危険性が高い。そのため、液密性を確保するためには、環状突部の外径を、軸筒内壁に対して十分大きく設定する必要がある。一方で、スムーズな摺動を得るためには、余計な摺動抵抗を発生させないことが望ましく、環状突部以外の部分は、軸筒の内径よりも小さく設定する必要がある。また、環状突部は、それ以外の部分とは別体として構成することもできるが、実際には、部品点数や組立工数、コスト、不慮の分解防止の面で一体に成形することが好ましい。その結果、環状突部の最小外径と環状突部の最大外径の差が大きくなってしまい、スライド栓の成形時に金型から製品を抜き取ることが困難なものとなってしまっている。仮に抜き取ることができたとしても、抜き取る過程において環状突部に無理な力がかかってしまい、裂けや潰れ等の問題が生じてしまう。尚、スライド栓を成形する金型の構造を軸線方向に分割される金型としても、環状突部に僅かながらではあるものの突状のパーティングラインが形成されてしまい、製品としての機能を著しく損ねてしまう。
そこで、本第2実施例のスライド栓29は、円柱部30と環状突部31の間に、前記円柱部30よりも大きく、環状突部31よりも小さな外径を有する段部38を設けている。そして、その段部38上に金型のパーティングラインを設定することにより、環状突部31の最小外径と環状突部31の最大外径の差を緩和している。この外径の差を少なくすることによって、環状突部31の外径を軸筒1の内径に対して十分大きく設定しても、金型からスライド栓29を抜き取ることが容易になり、液密性を確保して、加圧による塗布液8の洩れ出しを防ぐことができる。
【0024】
次に、スライド栓の変形例である第3実施例について図12、13、14に基づき詳細に説明する。本実施例におけるスライド栓39の形状は、略円柱状であり、その円柱部40の外周中腹に環状突部41を有すると共に、スライド栓39の後端に輪状の溝部42を有し、その溝部42の底面43は、軸筒1の軸心に対して水平に形成されている。
前記溝部42の外径は、コイルスプリング11の外径よりも僅かに大きく、前記溝部42の内径は、コイルスプリング11の内径よりも僅かに小さく形成されており、前記溝部42内に、コイルスプリング11の前方部22を挿入することで、ガイド部としての役割を果たす。
尚、本例では、前記溝部42の外径を、コイルスプリング11の外径よりも僅かに大きく、前記溝部42の内径は、コイルスプリング11の内径よりも僅かに小さく形成している。しかし、前記溝部42の外径を、コイルスプリング11の外径よりも僅かに小さくしたり、前記溝部42の内径を、コイルスプリング11の内径よりも僅かに大きくしたりして、コイルスプリング11の前方部22に圧入しても良く、また、前記溝部42の内壁44に前記第1・第2実施例と同様な突起を設けて、コイルスプリング11の前方部22を引っ掛けるなどして固定しても良い。
【0025】
前記スライド栓39の後方に配置されるコイルスプリング11は、その前方部22に座巻を有さず、前端から4巻を前記スライド栓39の溝部42に挿入している。このコイルスプリング11は、スライド栓39を前方に付勢して塗布液8の吐出支援を行う加圧システムである。そのコイルスプリング11は、その前端を前記溝部42の、軸筒1の軸心に対して水平な底面43に当接させ、コイルスプリング11の後端を尾栓13に当接させることによって圧縮した状態設置されている。
尚、前記コイルスプリング11がスライド栓39の前進に合わせて伸張するように、コイルスプリング11をスライド栓39に固定する等した場合には、コイルスプリング11の前端を、必ずしも溝部42の底面43に当接させる必要はない。
また、溝部42の底面43は、コイルスプリング11からの加圧力を円周で均等に受け止められる形状であれば、内側或いは外側に向って傾斜するテーパ面や曲面であっても構わない。コイルスプリング11の前端が溝部42の底面43に当接しない場合も同様である。
【0026】
ところで、前記コイルスプリング11が軸筒1内でスムーズに伸縮するためには、コイルスプリング11の外周と軸筒内壁21との間に僅かな隙間が必要であるが、その隙間によって、コイルスプリング11を圧縮させた際に、そのコイルスプリング11自身に波を打ったような多数の湾曲が生じてしまう。つまり、コイルスプリング11の前方部22からスライド栓39に作用する力は、軸筒1の軸心に対して傾斜した状態で作用することになる。そこで、前記スライド栓39のガイド部42にコイルスプリング11の前方部22を挿入することで、コイルスプリング11自身に波を打ったような多数の湾曲が生じても、コイルスプリング11の前方部22の内周及び外周とガイド部42の内壁44が接触して、コイルスプリング11の前方部22の湾曲を規制する。この規制により、コイルスプリング11の前方部22からスライド栓39に作用する力が直線状に矯正される。その結果、スライド栓39が、軸方向に真っ直ぐ(水平)に加圧されるようになる。これにより、スライド栓39が傾いたり、不均一に変形したりすることなく、安定した液密と効率的な加圧力伝達及びスムーズなスライド栓摺動を実現することができる。
また、前記ガイド部42は、コイルスプリング11の前方部22を、内周側及び外周側の両側から囲繞しているため、コイルスプリング11の前方部22が湾曲しようとする力を分散して受け止めることができ、より確実に、コイルスプリング11の前方部22を直線状に矯正する事ができる。
【符号の説明】
【0027】
1 軸筒
2 軸筒の先端内孔
3 チップホルダー
4 チップホルダーの先端内孔
5 ボールペンチップ
6 ボールペンチップの先端
7 ボール
8 塗布液
9 グリース
10 スライド栓
11 コイルスプリング(弾発部材)
12 軸筒の後端開口部
13 尾栓
14 ペン先
15 円柱部
16 環状突部
17 前端開口部
18 後端開口部(ガイド部)
19 前端開口部の底面
20 後端開口部の底面
21 軸筒内壁
22 前方部
23 後端開口部の内壁
24 突起
25 弾性鋼材
26 貫通孔
27 スライド栓の後方空間
28 当接部
29 スライド栓
30 円柱部
31 環状突部
32 円柱部の前端面
33 円柱部の後端面
34 前端側細径部
35 後端側細径部(ガイド部)
36 後端細径部の外壁
37 チップホルダーの内孔
38 段部
39 スライド栓
40 円柱部
41 環状突部
42 溝部(ガイド部)
43 溝部の底面
44 溝部の内壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン先と、前記ペン先の後端に接続される軸筒を有し、前記軸筒内に塗布液の消費に伴って前進するスライド栓と、そのスライド栓の後方に加圧システムとしての弾発部材が設けられてなる加圧式の塗布具であって、前記スライド栓の外周に、軸筒の内壁に摺接する環状突部を設けると共に、前記スライド栓の後端には、弾発部材の前方部を内周側及び/または外周側を囲繞するガイド部を設けたことを特徴とする加圧式の塗布具。
【請求項2】
前記ガイド部を中実状に形成したことを特徴とする請求項1記載の加圧式の塗布具。
【請求項3】
前記塗付液とスライド栓との間にグリースを介在させたことを特徴とする請求項1、或いは、請求項2に記載の加圧式の塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−111896(P2013−111896A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261511(P2011−261511)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】