説明

加圧水型原子炉の格納容器冷却装置

【課題】ドーム状屋根部に散水された冷却水の散水量を低減させて所望の冷却効果を達成し得る加圧水型原子炉の格納容器冷却装置を提供する。
【解決手段】ドーム状屋根部2を有する加圧水型原子炉の格納容器1に、これを覆う建屋7を設けると共に、この建屋7の上部に貯水槽11を設けると共に、この貯水槽11から建屋7内に設けられた上記格納容器1のドーム状屋根部2上に散水させて冷却するにおいて、上記格納容器1のドーム状屋根部2の頂部に臨ませて、上記貯水槽11から冷却水を散水させる散水管14を設けると共に、上記格納容器1のドーム状屋根部2上にこれを覆うように散水される冷却水を滞留させて流下させる滞留水層20を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧水型原子炉の格納容器の冷却効率を高める冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子炉における緊急時の格納容器の冷却は、格納容器を覆う建屋の上部に設置された貯水タンクから、重力によって格納容器の上部へ冷却水を散水(重力スプレイ)し、その気化熱により格納容器を冷却するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のこの種の格納容器の冷却装置では、ドーム状屋根部の頂部に臨ませて冷却水を散水するように構成されているが、ドーム状屋根部の勾配角度が比較的大きく設定されていることから、散水された冷却水がドーム状屋根部からすぐに流れ落ちてしまい十分な冷却効果を得ることができなかった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、ドーム状屋根部を有する格納容器上に散水された冷却水をドーム状屋根部に滞留させながら格納容器下部へ流下させるように構成し、冷却水の散水量を低減させて所望の冷却効果を達成し得る加圧水型原子炉の格納容器冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、ーム状屋根部を有する加圧水型原子炉の格納容器に、これを覆う建屋を設けると共に、この建屋の上部に貯水槽を設けると共に、この貯水槽から上記格納容器のドーム状屋根部上に散水させて冷却する加圧水型原子炉の格納容器冷却装置において、上記格納容器のドーム状屋根部の頂部に臨ませて、上記貯水槽から冷却水を散水させる散水管を設けると共に、上記ドーム状屋根部上にこれを覆うように散水される冷却水を滞留させて流下させる滞留水層を形成した加圧水型原子炉の格納容器冷却装置である。
【0006】
請求項2の発明は、上記滞留水層が、上記格納容器のドーム状屋根部上に、少なくとも1又は2以上のシート状のメッシュを多重に重ねられたメッシュ層によって構成された請求項2に記載の加圧水型原子炉の格納容器冷却装置である。
【0007】
請求項3の発明は、上記ドーム状屋根部の上方に、散水された冷却水を一旦受け、これを均等に分配するための側部に孔を有する筒状の冷却水分配バケツが設けられる請求項1又は2に記載の加圧水型原子炉の格納容器冷却装置である。
【0008】
請求項4の発明は、上記ドーム状屋根部には、頂部に散水された冷却水を頂部から各半径方向に均等に分配する仕切り板が放射状に設けられる請求項1〜3いずれかに記載の加圧水型原子炉の格納容器冷却装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加圧水型原子炉の格納容器のドーム状屋根部に散水された冷却水をドーム状屋根上に沿って順次滞留させて格納容器下部へ流下させることにより、可及的に冷却効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0011】
図1は、本発明の好適な実施の形態を示す加圧水型原子炉の格納容器冷却装置の断面図である。
【0012】
図1に示すように、格納容器1は、その頂部に所定の勾配角を有するドーム状屋根部2と、このドーム状屋根部2に連結する筒状の胴部3とを備えている。この格納容器1内には原子炉4、蒸気発生器5等が収納されている。
【0013】
また、格納容器1には、外側部に所定の間隔を隔てて遮蔽壁6で区画形成された建屋7が設けられている。この建屋7の上部を構成する屋根部9には、その略中央部に外部に開放された排気口10が設けられており、この排気口10には、これを囲むように筒状の貯水槽11が設けられ建屋7に支持される。
【0014】
このように、筒状の貯水槽11が排気口10上に設けられることにより、貯水槽11の内筒部が排気口10に連結する排気筒12が接続されることになる。また、貯水槽11の底部13には建屋7内の格納容器1のドーム状屋根部2の頂部に臨んだ散水管14が取り付けられている。
【0015】
ドーム状屋根部2の上方には、散水管14から散水された冷却水を一旦受け、これを頂部から円周方向へ均等に分配するための側部に孔41を有する筒状の冷却水分配バケツ42(図4参照)が設けられている。孔41は、冷却水分配バケツ42から周方向に均等に散水するように、冷却水分配バケツ42の側部に複数形成される。
【0016】
さらに、ドーム状屋根部2には、頂部に冷却水分配バケツ42によって均等に散水された冷却水を頂部から各半径方向に均等に分配する仕切り板51が放射状に設けられている(図5参照)。
【0017】
仕切り板51は、ドーム状屋根部の内周側に放射状に設けられた複数の内周側仕切り板51aと、隣り合う内周側仕切り板51a間に位置して放射状に設けられた外周側仕切り板51bとで構成される。
【0018】
また、建屋7の胴部には、その上方に外気導入口15が設けられると共に、格納容器1と建屋7との間には外気導入口15から導入される外気を格納容器1の底部から上方に案内するための外気通風路16が形成されている。この外気通風路16は、仕切壁17によって区画形成されている。
【0019】
特に、本発明に係る実施例にあっては格納容器1の上部を構成するドーム状屋根部2上の表面部に、シート状のメッシュを1又は2以上に多重に重ね合わせてメッシュ層(ワイヤーメッシュ)19を形成して冷却水を滞留する滞留水層20を構成したものである(図2参照)。
【0020】
図3に示すように、メッシュ層(ワイヤーメッシュ)19は、丸で囲んだZ部詳細に示すように、細い金属線mを編み込んで無結節網とし、これに一定方向のウエーブ18aをつけてメッシュシート18とし、そのメッシュシート18のウエーブ18aの方向が交互に変わるように幾重にも重ね合わせて形成される。
【0021】
このメッシュシート18のメッシュサイズ18bとウエーブ18aは、メッシュサイズ18bとウエーブ18aとで形成される空隙が、広くしすぎてしまうと冷却水が滞留せず、狭すぎると冷却水が温まって冷却効果が落ちてしまうので、水がある程度滞留しつつ流れるような空隙となるようメッシュサイズ18bとウエーブ18aにする。
【0022】
滞留水層20として、ワイヤーメッシュ19を用いるのは、軽量のため価格が低廉で、装置の大きさ・形状に対して制限されず、既設装置への取り付けが容易で、高温及び腐食に対して制限されず、且つ接触面積が大きく冷却水の滞留効果が高いからである。
【0023】
また、このメッシュ層19からなる滞留水層20はドーム状屋根部2の仕切り板51の隙間全域を覆うように構成されている。従って、貯水槽11から重力スプレイにより散水管14及び冷却水分配バケツ42を介して散水された冷却水は、格納容器1のドーム状屋根部2へ均等に散水される。散水される冷却水はその上流から下流側、言い換えるとドーム状屋根部2の頂部から裾野部に沿って仕切り板51により各半径方向に均等に分配されると共に、メッシュ層19によって流速が減速されて流下し、格納容器1を効率的に冷却することができる。このように冷却水の流下速度が低減されることは冷却水の循環供給量を低減させることができる。また、格納容器1のドーム状屋根部2という高温領域を冷却水を滞留させながら減速させて下流させることにより、効果的に冷却することができる。
【0024】
図1でAは内部自然循環と凝縮による格納容器1壁への熱伝達を、Bは自然通風(大気)による除熱を、Cは貯水槽の重力スプレイによる除熱を表す。
【0025】
本実施の形態によれば、冷却水を滞留させた滞留水層20が、格納容器1の熱を効率よく放熱するので、十分な冷却効果を得られ、冷却水の利用効率も向上する。
【0026】
従って、散水管14からドーム状屋根部2への水量を従来より減少させても同等の冷却効果が得られるので、散水管14を細くしたり、流量調節弁を設けてもよい。
【0027】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の格納容器冷却装置の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1の丸Mで囲んだ滞留水層の拡大断面図である。
【図3】図1に示した滞留水層に用いたメッシュ層の構造を示す模式図である。
【図4】図1に示した冷却水分配バケツの拡大斜視図である。
【図5】図1に示したドーム状屋根部の平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 格納容器
2 ドーム状屋根部
7 建屋
11 貯水槽
14 散水管
20 滞留水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム状屋根部を有する加圧水型原子炉の格納容器に、これを覆う建屋を設けると共に、この建屋の上部に貯水槽を設けると共に、この貯水槽から建屋内に設けられた上記格納容器のドーム状屋根部上に散水させて冷却する加圧水型原子炉の格納容器冷却装置において、
上記格納容器のドーム状屋根部の頂部に臨ませて、上記貯水槽から冷却水を散水させる散水管を設けると共に、上記格納容器のドーム状屋根部上にこれを覆うように散水される冷却水を滞留させて流下させる滞留水層を形成したことを特徴とする加圧水型原子炉の格納容器冷却装置。
【請求項2】
上記滞留水層が、上記格納容器のドーム状屋根部上に、少なくとも1又は2以上のシート状のメッシュを多重に重ねられたメッシュ層によって構成された請求項1に記載の加圧水型原子炉の格納容器冷却装置。
【請求項3】
上記ドーム状屋根部の上方に、散水された冷却水を一旦受け、これを均等に分配するための側部に孔を有する筒状の冷却水分配バケツが設けられる請求項1又は2に記載の加圧水型原子炉の格納容器冷却装置。
【請求項4】
上記ドーム状屋根部には、頂部に散水された冷却水を頂部から各半径方向に均等に分配する仕切り板が放射状に設けられる請求項1〜3いずれかに記載の加圧水型原子炉の格納容器冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−236572(P2009−236572A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80780(P2008−80780)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】