説明

加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法及び層密度最適化システム

【課題】層密度の最適化を自動的に行うことができる加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法及び層密度最適化システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る層密度最適化方法は、流動層における圧力損失を検出する工程(S1)と、検出した圧力損失に基づいてBMの層密度を予測する工程(S2)と、予測したBMの層密度が予め定めた許容範囲であるか否かを判断する工程(S3)と、BMの層密度が予め定めた許容範囲を超えると判断された場合に、このBMの層密度を最適化する工程(S4)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法及び層密度最適化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンプレッサからの燃焼空気でボイラ内を加圧状態に保ちながら、石灰石を流動媒体(BM:Bed Material)とする流動層内に、石炭と石灰石と水とを混ぜた燃料(CWP:Coal Water Paste)を投入することにより、ボイラから発生する蒸気で蒸気タービンを駆動するとともに、ボイラから発生する排ガスでガスタービンを駆動するようにした加圧流動床ボイラが知られている。
【0003】
このような構成からなる加圧流動床ボイラでは、流動層の高さを調整して流動層内に埋没する蒸気管の伝熱面積を増減することにより、ボイラで発生する蒸気量を調整している。そのため、加圧流動ボイラにおいては、流動層を形成する流動媒体の粒径管理が重要な意味を有する。特に、この流動媒体の粒径が増大し、流動層内において粗大化したズリが生じた場合には、そのことを早急に検知し、適切な対応を採らなければならない。
【0004】
そこで、加圧流動床ボイラにおいては、従来より、流動媒体の粒径管理をするための技術が種々提案されている。例えば、火炉から流動媒体を実際に抜き出し、抜き出した流動媒体をふるいにかけてその粒径を測定する技術や、特許文献1に示す如く、流動媒体の重量分率や供給速度などを用いて演算を行い、その流動媒体の粒径分布を予側する技術などが提案されている。
【0005】
ところで、火炉から流動媒体を実際に抜き出し、抜き出した流動媒体をふるいにかけてその粒径を常に測定する場合には、流動媒体の粒径管理に関する信頼性を十分に確保することができるという点で優れた効果を奏する。しかし、この技術にあっては、例えば、火炉から流動媒体を抜き出す際に、その流動媒体を過度に抜き出してしまうと、火炉中の流動媒体が少なくなり、流動層を形成することができなくなるなどの問題が生じる。つまり、かかる技術では、流動媒体の層密度を最適な状態に維持することができない。また、かかる技術では、火炉から流動媒体を実際に抜き出す作業が必要となるので、作業コストが増大することとなる。
【0006】
また、特許文献1に開示された技術では、脱硫剤の重量分率、脱硫剤の供給速度、流動粒子の粒子重量及び脱硫剤の抜出重量を用いて演算を行っているため、計測項目が多岐に亘って演算が複雑なものとなり、流動媒体の層密度を容易に予測することができるとは言い難かった。また、計測項目が多いため、測定誤差が生じる可能性が増加し、流動媒体の層密度を的確に予測することができるとは言い難かった。
【0007】
そこで、本発明者らは、作業コストの低減を図りつつ、流動媒体の層密度を容易且つ的確に最適化することができる層密度最適化方法及び層密度最適化システムに関する技術を開発し、これを出願するに至っている(特願2005−250441参照)。この出願に係る技術は、火炉の圧力損失に基づいて流動媒体の層密度を予測し、さらに流動媒体の層密度と粒径分布(特に粒径分布の大きなズリ濃度)との相互関係を利用して、流動媒体の粒径分布を予測するものである。なお、これに関する特許文献として、例えば、下記特許文献2がある。
【特許文献1】特開2002−174406号公報
【特許文献2】特開2000−266315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記出願に係る技術は、必ずしも層密度の最適化を自動的に行うものではない。そのため、流動媒体の層密度が変動した場合には、この層密度を最適な状態に維持することが困難となる。そして、層密度が最適な状態に維持されないときには、流動媒体の粒径が変動し、次のような問題が生じる。
【0009】
例えば、流動媒体の粒径が変動し、その粒径が小さくなりすぎると、流動媒体が流動層内に留まらず、空塔部へ飛散する現象が起こりやすくなる。そして、この現象が起こってしまうと、流動層内における流動媒体の量が低下する。その結果、ボイラ後流のサイクロン(脱燐装置)における灰処理量が増大するとともに、ボイラ内の流動層高を維持することができなくなる。この流動層高を維持するためには、流動媒体を貯留するBMタンクからの流動媒体の供給量を増加させたり、或いはCWP中の石灰石の割合(L/C)を増加させることが必要となり、コスト増を招いてしまう。
【0010】
他方、流動媒体の粒径が変動し、その粒径が大きくなりすぎると、この流動媒体とボイラ内の伝熱管との接触面積が小さくなる。その結果、流動媒体と伝熱管内を流れる給水との熱交換率が低下し、ボイラ効率が悪化してしまう。また、流動媒体の粒径が大きくなりすぎると、この流動媒体が有する脱硫性能も悪化してしまう。そして、脱硫性能を維持するためには、CWP中の石灰石の割合(L/C)を増加させることが必要となり、コスト増を招いてしまう。さらに、流動媒体の粒径が大きくなりすぎると、粗粒化した流動媒体が伝熱管と接触することとなり、伝熱管の疲労が増大し、伝熱管が摩耗しやすくなる。
【0011】
本発明は、かかる課題に鑑みて上記出願に係る技術を改良してなされたものであり、その目的は、層密度の最適化を自動的に行うことができる加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法及び層密度最適化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度を最適化するための方法であって、流動層を複数の層に分割して各層毎に圧力損失を検出する工程と、検出した圧力損失に基づいて各層における流動媒体の層密度を予測する工程と、予測した流動媒体の層密度が予め定められた許容範囲を超えた場合に、流動媒体の層密度を最適化する工程と、を含み、前記流動媒体の層密度を最適化する工程は、前記加圧流動床ボイラの炉底部における前記圧力損失が低下した場合に、この炉底部における層密度が低下したものと予測し、その低下の程度に応じて前記炉底部からの前記流動媒体の抜出量を増加させる一方、前記圧力損失が増加した場合には、前記層密度が増加したものと予測し、その増加の程度に応じて前記炉底部からの前記流動媒体の抜出量を減少させることにより、流動層における流動媒体の流動状態を変化させて、層密度を予め定められた許容範囲内に調節することを特徴とする。
【0013】
また、本発明において、前記流動媒体の層密度を最適化する工程は、前記流動媒体の抜出量を増加させる際にその抜出量が上限値を超えるときには、前記抜出量を当該上限値に修正するとともに、前記抜出量が上限値を超えた程度に応じて前記加圧流動床ボイラの火炉内へ供給する燃焼空気量を増加させる一方、前記流動媒体の抜出量を減少させる際にその抜出量が下限値未満のときには、前記抜出量を当該下限値に修正するとともに、前記抜出量が下限値を超えた程度に応じて前記火炉内へ供給する燃焼空気量を減少させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明において、前記流動媒体の層密度を予測する工程は、以下の式(1)を用いて流動媒体の層密度を演算して予測することを特徴とする。
ρf=ΔP/(h×g)・・・(1)
ただし、
ρf:層密度(kg/m
ΔP:圧力損失
h :流動層高
g :重力加速度
【0015】
また、本発明は、前記加圧流動床ボイラの燃料(CWP)を構成する石炭の炭種に応じて、前記層密度の許容範囲を定める工程をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明において、前記層密度の許容範囲を定める工程は、前記流動層高に応じて、前記層密度の許容範囲を補正することを特徴とする。
【0017】
また、本発明において、前記層密度の許容範囲を定める工程は、前記加圧流動床ボイラの空塔速度に応じて、前記層密度の許容範囲を補正することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、予測した前記層密度のデータを蓄積し、蓄積した層密度のデータに基づいて、前記流動媒体の抜き出し作業を行う予定日前日の層密度のデータに対する予定日当日の偏差量を算出し、算出した偏差量を参酌してズリ濃度を予測し、予測したズリ濃度が予め定められた許容範囲を超えるか否かを判断し、前記ズリ濃度が前記許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じて前記流動媒体の抜出量を変更する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記炉底部から抜き出した流動媒体のズリ濃度を実測し、その実測値が予め定められたズリ濃度の許容範囲を超えるか否かを判断し、前記実測値が前記許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じて前記流動媒体の抜出量を変更する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度を最適化するためのシステムであって、流動層を複数の層に分割して各層毎に圧力損失を検出する複数の圧力損失検出手段と、該圧力損失検出手段により検出した圧力損失に基づいて各層における流動媒体の層密度を予測する層密度予測手段と、該層密度予測手段により予測した流動媒体の層密度が予め定められた許容範囲を超えるか否かを判断する層密度判断手段と、該層密度判断手段により前記層密度が前記許容範囲を超えると判断された場合に、流動媒体の層密度を最適化する層密度最適化手段と、を備え、前記層密度最適化手段は、前記加圧流動床ボイラの炉底部における前記圧力損失が低下した場合に、この炉底部における層密度が低下したものと予測し、その低下の程度に応じて前記炉底部からの前記流動媒体の抜出量を増加させる一方、前記圧力損失が増加した場合には、前記層密度が増加したものと予測し、その増加の程度に応じて前記炉底部からの前記流動媒体の抜出量を減少させることにより、流動層における流動媒体の流動状態を変化させて、層密度を予め定められた許容範囲内に調節することを特徴とする。
【0021】
また、本発明において、前記層密度最適化手段は、前記流動媒体の抜出量を増加させる際にその抜出量が上限値を超えるときには、前記抜出量を当該上限値に修正するとともに、前記抜出量が上限値を超えた程度に応じて前記加圧流動床ボイラの火炉内へ供給する燃焼空気量を増加させる一方、前記流動媒体の抜出量を減少させる際にその抜出量が下限値未満のときには、前記抜出量を当該下限値に修正するとともに、前記抜出量が下限値を超えた程度に応じて前記火炉内へ供給する燃焼空気量を減少させることを特徴とする。
【0022】
また、本発明において、前記層密度予測手段は、以下の式(1)を用いて流動媒体の層密度を演算して予測することを特徴とする。
ρf=ΔP/(h×g)・・・(1)
ただし、
ρf:層密度(kg/m
ΔP:圧力損失
h :流動層高
g :重力加速度
【0023】
また、本発明は、前記加圧流動床ボイラの燃料(CWP)を構成する石炭の炭種に応じて、前記層密度の許容範囲を定める層密度管理値設定手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0024】
また、本発明において、前記層密度管理値設定手段は、前記流動層高に応じて、前記層密度の許容範囲を補正することを特徴とする。
【0025】
また、本発明において、前記層密度管理値設定手段は、前記加圧流動床ボイラの空塔速度に応じて、前記層密度の許容範囲を補正することを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、予測した前記層密度のデータを蓄積し、蓄積した層密度のデータに基づいて前記流動媒体の抜き出し作業を行う予定日前日の層密度のデータに対する予定日当日の偏差量を算出し、算出した偏差量を参酌してズリ濃度を予測し、予測したズリ濃度が予め定められた許容範囲を超えるか否かを判断し、前記ズリ濃度が前記許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じて前記流動媒体の抜出量を変更するように前記層密度最適化手段を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、前記炉底部から抜き出した流動媒体のズリ濃度の実測値が予め定められたズリ濃度の許容範囲を超えるか否かを判断し、前記実測値が前記許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じて前記流動媒体の抜出量を変更するように前記層密度最適化手段を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法及び層密度最適化システムにおいて、層密度の最適化を自動的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化システムの概略構成を示すブロック図、図2は加圧流動床ボイラにおけるBM循環経路の説明図、図3は層密度がプラントへ与える影響を説明するための模式図、図4は本発明の実施形態に係る加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法の手順を示すフローチャート、図5Aは流動層高と層密度との関係を示すグラフ、図5Bは空塔速度と層密度との関係を示すグラフ、図6Aは「前日値との層密度偏差量」を参酌して予測したズリ濃度の一例を示す図、図6Bは層密度とズリ濃度との関係を示すグラフ、図6Cは「前日値との層密度偏差量」とズリ濃度との関係を示すグラフ、図6Dはズリ濃度の傾向管理を説明するための説明図、図7は本発明の実施形態に係る加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法及び層密度最適化システムを適用する発電プラントの概略構成を示す説明図である。
【0030】
<発電プラント>
本発明の実施形態に係る加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法及び層密度最適化システムを適用する発電プラントは、加圧流動床複合発電方式(PFBC:Pressurized Fluidized Bed Combustion Combined Cyde)を採用した発電プラントであり、圧力容器内に収納した流動床ボイラから発生する蒸気で蒸気タービンを駆動し、さらにボイラの排ガスでガスタービンを駆動するように構成されている。
【0031】
この発電プラントは、コンプレッサからの燃焼空気でボイラ内を加圧状態に保ちながら、石灰石を流動媒体(BM)とする流動層内にCWPを投入することにより、CWPを効率よく燃焼させることができる。また、流動媒体に石灰石を採用することにより火炉内で脱硫することが可能となるので、硫黄硫化物(SOx)の発生を低く抑えることができる。さらに、流動層燃焼は、燃焼温度が低く抑えられる(約870℃)ため、窒素酸化物(NOx)の発生を低く抑えることができる。
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法及び層密度最適化システムを適用する発電プラントを具体的に説明する。
本発明の実施形態の適用対象である発電プラントは、図7に示すように、2つのボイラ10,20を備えており、ボイラ10,20の火炉11,21内にCWPを投入して燃焼させ、熱交換により発生した蒸気を高圧タービン31、中圧タービン32及び低圧タービン33に導いて各タービンを回転させることにより、発電機41を駆動して電力を発生させる。低圧タービン33を回転させた後の蒸気は、復水器50により復水され、再びボイラ10,20内へ導かれる。
【0033】
また、ボイラ10,20内で発生した高圧ガスをガスタービン34に導いてガスタービン34を回転させることにより、発電機42を駆動して電力を発生させる。さらに、高圧ガスは、ガスタービン34に同軸に連結されたコンプレッサ35を駆動して、燃焼空気をボイラ10,20へ供給するようになっている。ボイラ10,20へ燃料を供給する燃料供給系統は、石炭を供給する石炭ホッパ61と、石炭ホッパ61から供給される石炭を粗粉砕する粗粉砕機62と、粗粉砕機62で粉砕された石炭粉を分級する分級機63と、分級機63で分級された石炭粉を中継する中継ホッパ64と、粗粉砕機62で粉砕された石炭粉に水を混入しながらさらに粉砕する微粉砕機65と、石灰石を供給する石灰石ホッパ66と、水、粗粉砕機62で粉砕された石炭粉、微粉砕機65で水を混入しながら粉砕された石炭ペースト及び石灰石を混練する混練機67と、混練機67で混練されたCWPを一時貯留する燃料タンク68と、燃料タンク68から火炉11,21内へCWPを送出する燃料ポンプ69と、を備えている。
【0034】
2機のボイラ10,20は、それぞれ圧力容器12,22と、圧力容器12,22内に収容された火炉11,21とを備えており、火炉11,21内には水・蒸気管71が挿通されている。復水器50からの水・蒸気管71は、まずB火炉21内に導かれ、続いてA火炉11内へ導かれて熱交換が行われ、汽水分離器72へ導かれて蒸気と水とが分離される。汽水分離器72からの水・蒸気管71は、A火炉11、B火炉21、A火炉11の順で引き回された後、高圧タービン31へ導かれる。
【0035】
高圧タービン31は、水・蒸気管71から供給される蒸気により回転する。高圧タービン31を回転させた後の蒸気は、再びB火炉21に導かれて再熱され、中圧タービン32に導かれて中圧タービン32を回転させ、さらに低圧タービン33に導かれて低圧タービン33を回転させる。高圧タービン31、中圧タービン32及び低圧タービン33には、同軸に発電機41が接続されており、各タービン31,32,33が回転することにより発電機41が駆動されて発電が行われる。
【0036】
低圧タービン33を回転させた蒸気は、復水器50に導かれて復水される。復水器50内には、冷却水配管51が配設されている。この冷却水配管51には、深層取水した海水が導かれ、この海水は復水器50内で熱交換を行った後に、再び海中に放流される。
【0037】
復水器50の下流側には、復水ポンプ73、第1給水加熱器74a、第2給水加熱器74b、第3給水加熱器74c、脱気器75、給水ポンプ76、第5給水加熱器74d、第6給水加熱器74eが配設されており、復水の加熱及び脱気を行うようになっている。また、復水器50とボイラ10,20との間の復水配管77は、後に詳述する排ガス系統に設けられた2つの排熱回収交換器91,93を通過し、排ガスとの間で熱交換を行うようになっている。
【0038】
A火炉11及びB火炉21の上部には、排ガス配管81が連通接続されており、各火炉11,21内で発生した高圧ガスをガスタービン34へ供給するようになっている。また、各火炉11,21とガスタービン34との間には、脱硝を行うための無触媒脱硝装置82a,82b、煤塵を除去するための1次サイクロン83及び2次サイクロン84が配設されている。なお、1次サイクロン83及び2次サイクロン84で収集した煤塵は、灰クーラ85,86を経て灰処理装置へ送出される。
【0039】
ガスタービン34には、発電機42及びコンプレッサ35が同軸に接続されており、ガスタービン34が回転することにより、発電機42を駆動して発電を行うとともに、コンプレッサ35を駆動して燃焼空気をボイラ10,20内へ送り込むようになっている。コンプレッサ35には、プラント起動時にコンプレッサ35を駆動してボイラ10,20へ燃焼空気を送るための起動用モータ43が取り付けられている。
【0040】
ガスタービン34を回転させた後の排ガスは、第1の排熱回収交換器91、脱硝を行うための脱硝装置92、第2の第1の排熱回収交換器93、バグフィルタ94を経て、煙突95より大気中へ放散される。
【0041】
A火炉11及びB火炉21には、循環するBMを一時貯留するためのBMタンク13,23が連通接続されている。なお、図7に示す例では、BMタンク13,23を各ボイラ10,20毎に1機ずつ設けているが、BMタンク13,23を各ボイラ10,20毎に2機ずつ設けてもよい。また、各ボイラ10,20の上部には非常用温水タンク14が配設されている。この非常用温水タンク14は、ボイラ吸水系統が停止した際に、ボイラ10,20内の残燃料が燃焼することにより水壁管等が損傷することを防止するための装置で、水頭圧によりボイラ10,20へ給水するようになっている。
【0042】
A火炉11及びB火炉21の下部には、各火炉11,21内に析出した塵芥を回収するための塵芥回収管101が接続されており、回収された塵芥は灰クーラ102,103を経て灰処理装置へ送出される。また、A火炉11及びB火炉21には、ボイラ10,20の起動時等に各火炉11,21内を加熱するための軽油が供給されるようになっている。
【0043】
<BM循環系統>
次に、図2を参照して、BM循環系統を詳細に説明する。
ボイラ10内に配設したA火炉11内には、分散板から上方に向かって、例えば、0.2m、0.4m、0.6m、1.5m、2.6m、3.55m、7.8mの位置に、それぞれ圧力計111a〜111gが配設されている。また、ボイラ20内に配設したB火炉21内には、分散板から上方に向かって、例えば、0.2m、0.4m、0.6m、1.15m、2.425m、3.55m、7.8mの位置に、それぞれ圧力計111a〜111gが配設されている。
【0044】
火炉11,21の下部には、熱風炉150及びBM炉底抜出系統140が連通接続されているとともに、火炉11,21の上部には、火炉11,21内で発生した高温ガスを排出するための高温ガス管130が連通接続されている。また、火炉11,21とBMタンク13,23との間には、BM戻し配管161及びBM供給配管162が配設されており、BMタンク13,23、BM供給配管162、火炉11,21、BM炉底抜出系統140、BM戻し配管161の順でBMが循環するようになっている。なお、図2において、符号120は流動層を示す。
【0045】
<層密度とプラントへの影響の関係>
次に、図3を参照して、火炉11,21内の層密度がプラントへ与える影響を説明する。図3(a)は層密度が高い状態を示す模式図、図3(b)は層密度が良好な状態を示す模式図、図3(c)は層密度が低い状態を示す模式図である。
【0046】
図3(a)に示す状態では、BM粒径が小さく、間隙部が少ないため、火炉11,21内における圧力損失が高くなるとともに層密度が高値となる。このような状態では、火炉11,21内のBM流動性、ボイラ10,20の伝熱性、炉内の脱硫性能等が優れている反面、BM粒径が小さいため、ボイラ10,20の後流側へのBMが飛散し易くなり、サイクロンで回収する灰量が増加するだけでなく、層高維持性が悪化する。
【0047】
図3(c)に示す状態では、BM粒径が大きく、間隙部が多いため、火炉11,21内における圧力損失が低くなるとともに層密度が低値となる。このような状態では、ズリ濃度が高くなり、火炉11,21内のBM流動性、ボイラ10,20の伝熱性、火炉11,21内の脱硫性能等が悪化する。さらに、出力を維持するため、燃料が増加傾向となり、層温度が上昇するとともに、未燃焼分が増加する。このため、サイクロンの閉塞や、粗粒による伝熱管磨耗が発生し易い。
【0048】
このような状態に対して、図3(b)に示す状態では、BM粒径及び間隙部が適正であるため、良好な操業を行うことができる。しかし、高負荷帯での運転時には、BM粒径が次第に大きくなる特徴があり、定期的な炉底抜出を行って、層密度を管理値内に調整する必要がある。
【0049】
===層密度最適化システム===
次に、図1を参照して、本発明の実施形態に係る加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化システムを説明する。
本発明の実施形態に係る層密度最適化システム200は、図1に示すように、火炉11,21内に配設された複数の圧力計111a〜111g、層密度予測手段201、層密度判断手段202、層密度最適化手段203、層密度管理値設定手段204、制御手段205a,205bを主な構成要素とする。なお、本実施形態の各手段は、コンピュータ及びその周辺機器からなり、コンピュータを構成するCPU等がアプリケーションプログラムに従って動作することにより、各手段としての機能を発揮するようになっている。
【0050】
圧力計111a〜111gは、流動層における圧力損失を検出するためのものであり、上述したように、A火炉11内には、分散板から上方に向かって、0.2m、0.4m、0.6m、1.5m、2.6m、3.55m、7.8mの位置に配設されており、B火炉21内には、分散板から上方に向かって、0.2m、0.4m、0.6m、1.15m、2.425m、3.55m、7.8mの位置にそれぞれ設けられている。
【0051】
なお、本実施形態では、0.2m、0.4m、0.6mに配設された圧力計111a、111b、111cを用いて、ズリが対流しやすい部位である0.2m〜0.4m及び0.4m〜0.6mにおける層密度を管理しているが、加圧流動床ボイラ10,20の形状等に応じて、他の圧力計111d〜111gを用いて層密度の管理を行ってもよい。
【0052】
層密度予測手段201は、圧力計111a,111b,111cにより検出した圧力損失に基づいて流動媒体の層密度を予測するための手段である。この層密度予測手段201は、以下の式(1)を用いて流動媒体の層密度を演算して予測する。
ρf=ΔP/(h×g)・・・(1)
ただし、
ρf:層密度(kg/m
ΔP:圧力損失
h :流動層高
g :重力加速度
【0053】
層密度判断手段202は、予測した流動媒体の層密度が予め定めた許容範囲内であるか否かを判断するための手段である。本実施形態では、0.2m〜0.4mにおける層密度の許容範囲を1,100〜1,200kg/mとし、0.4m〜0.6mにおける層密度の許容範囲を900〜1,000kg/mとしている。なお、層密度の許容範囲は、加圧流動床ボイラ10,20の形状等に応じて、適宜変更して設定することができる。
【0054】
層密度最適化手段203は、層密度判断手段202において層密度が予め定めた許容範囲を超えたと判断された場合に、流動層における流動媒体(BM)の流動状態を変化させて、層密度を予め定められた許容範囲内に自動調節する手段である。この層密度最適化手段203は、加圧流動床ボイラ10,20の炉底部における圧力損失が低下した場合には、炉底部における層密度が低下したものと予測し、その低下の程度に応じて炉底部からの流動媒体の抜出量を増加させる一方、圧力損失が増加した場合には、層密度が増加したものと予測し、その増加の程度に応じて炉底部からの流動媒体の抜出量を減少させるものである。そして、この層密度最適化手段203は、流動媒体の抜出量を増加させる際にその抜出量が上限値を超えるときには、抜出量を当該上限値に修正するとともに、抜出量が上限値を超えた程度に応じて加圧流動床ボイラ10,20の火炉11,21内へ供給する燃焼空気量を増加させる一方、流動媒体の抜出量を減少させる際にその抜出量が下限値未満のときには、抜出量を当該下限値に修正するとともに、抜出量が下限値を超えた程度に応じて火炉11,21内へ供給する燃焼空気量を減少させるものである。
【0055】
層密度管理値設定手段204は、加圧流動床ボイラ10,20の燃料(CWP)を構成する石炭の炭種に応じて、層密度判定手段202における層密度の許容範囲を定める手段である。この層密度管理値設定手段204は、流動層高に応じて層密度の許容範囲を補正するとともに、加圧流動床ボイラ10,20の空塔速度に応じて層密度の許容範囲を補正するものである。
【0056】
制御手段205aは、層密度予測手段201によって予測した層密度のデータを所定のデータ収録装置に蓄積し、蓄積した層密度のデータに基づいて流動媒体の抜き出し作業を行う予定日前日の層密度のデータに対する予定日当日の偏差量を算出し、算出した偏差量を参酌してズリ濃度を予測し、予測したズリ濃度が予め定められた許容範囲を超えるか否かを判断し、ズリ濃度が許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じて流動媒体の抜出量を変更するように層密度最適化手段203を制御するものである。
【0057】
制御手段205bは、炉底部から抜き出した流動媒体のズリ濃度の実測値が予め定められたズリ濃度の許容範囲を超えるか否かを判断し、実測値が許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じて流動媒体の抜出量を変更するように層密度最適化手段203を制御するものである。
【0058】
===層密度最適化方法===
次に、図4、図5A及び図5B、並びに図6A〜図6Dを参照して、本発明の実施形態に係る加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法の手順を説明する。
本発明の実施形態に係る層密度最適化方法は、図4に示すように、まず、流動層における圧力損失を検出し(S1)、検出した圧力損失に基づいてBMの層密度を予測し(S2)、予測したBMの層密度が予め定めた許容範囲であるか否かを判断する(S3)。そして、このS3の工程において、BMの層密度が許容範囲を超えると判断された場合には、火炉11,21内からBMを抜き取ったり、火炉11,21内へ供給する燃焼空気量を増減させたりすることにより、BMの層密度を最適化する(S4)。
【0059】
<S4>
S4の工程は、加圧流動床ボイラ10,20の炉底部における圧力損失が低下した場合に、この炉底部における層密度が低下したものと予測し、その低下の程度に応じて炉底部からのBMの抜出量を増加させる一方、圧力損失が増加した場合には、層密度が増加したものと予測し、その増加の程度に応じて炉底部からのBMの抜出量を減少させることにより、流動層におけるBMの流動状態を変化させて、層密度を予め定められた許容範囲内に調節するステップ(S401)を含む。
【0060】
さらに、S4の工程は、S401においてBMの抜出量を増加させる際にその抜出量が上限値を超えるときには、BMの抜出量を当該上限値に修正するとともに、BMの抜出量が上限値を超えた程度に応じて加圧流動床ボイラ10,20の火炉11,21内へ供給する燃焼空気量を増加させる一方、S401においてBMの抜出量を減少させる際にその抜出量が下限値未満のときには、BMの抜出量を当該下限値に修正するとともに、BMの抜出量が下限値を超えた程度に応じて火炉11,21内へ供給する燃焼空気量を減少させることにより、流動層におけるBMの流動状態を変化させて、層密度を予め定められた許容範囲内に調節するステップ(S402)を含む。
【0061】
<S5>
さらに、本発明の実施形態に係る層密度最適化方法は、図4に示すように、加圧流動床ボイラ10,20の燃料(CWP)を構成する石炭の炭種に応じて、層密度の許容範囲を定める工程(S5)を含む。このS5の工程は、加圧流動床ボイラ10,20の燃料(CWP)を構成する石炭の炭種を設定し(S501)、設定した炭種に応じて層密度の許容範囲を定める(S502)というものである。
【0062】
S502の工程において、石炭の炭種に応じて層密度の許容範囲、すなわち層密度管理値の上限値及び下限値を定める際には、石炭の炭種と層密度との関係や、石炭の成分などを参酌することとする。例えば、石炭の炭種が灰分の高いものである場合には、灰がBMとBMとの間隙部を埋めて火炉の圧力損失が高くなる傾向にある。そこで、かかる場合には、層密度管理値の上限値及び下限値を共に補正し、例えば、補正量を13.3(kg/m/%)とする。より具体的には、灰分12%を基準にし、灰分1%の増加に対し、層密度管理値の上限値及び下限値を共に13.3kg/m上乗せする。
【0063】
また、石炭の炭種がCa、Si、ALの割合が高く、且つこれらが均等に含まれるものである場合には、火炉内でズリの生成が起こりやすい傾向にある。そこで、かかる場合には、SiO/(SiO+AlO)を算出し,その算出結果が0.74〜0.84の範囲内ならズリ生成が起こりやすい傾向にあるので、1日の最低炉底抜出量を増加(例えば、1.6m/日)することとする。逆に、前記算出結果が0.74〜0.84の範囲外ならズリ生成が起こりにくい傾向にあるので、1日の最低炉底抜出量を減少(例えば、0.8m/日)することとする。
【0064】
さらに、S502の工程において、流動層高或いは加圧流動床ボイラ10,20の空塔速度に応じて、層密度の許容範囲を補正することが好ましい。これにより、火炉内の現状をより反映しつつ、層密度の許容範囲を設定することが可能となる。
例えば、流動層高に応じて層密度の許容範囲を補正するには、流動層高と層密度との関係を参酌して行う。すなわち、図5Aに示すように、流動層高が高いほど層密度が高くなり、流動層高が低いほど層密度が低くなる傾向にある。そこで、流動層高が高い場合には、層密度管理値の上限値及び下限値を上方に修正し、流動層高が低い場合には、層密度管理値の上限値及び下限値を下方に修正する。具体的には、流動層高が高い場合には、層高1mの増加に対し、層密度管理値の上限値及び下限値を136.4kg/m上乗せする。
【0065】
また、加圧流動床ボイラの空塔速度に応じて、層密度の許容範囲を補正するには、空塔速度と層密度との関係を参酌して行う。すなわち、図5Bに示すように、空塔速度が下がると層密度が増加し、空塔速度が上がると層密度が減少する傾向にある。そこで、空塔速度が下がった場合には、層密度管理値の上限値及び下限値を上方に修正し、空塔速度が上がった場合には、層密度管理値の上限値及び下限値を下方に修正する。具体的には、空塔速度が下がった場合には、空塔速度1m/sの低下に対し、層密度管理値の上限値及び下限値を91.65kg/m上乗せする。
【0066】
<S6>
さらに、本発明の実施形態に係る層密度最適化方法は、図4に示すように、S2で予測した層密度のデータを蓄積し、蓄積した層密度のデータに基づいて、BMの抜き出し作業を行う予定日前日の層密度のデータに対する予定日当日の偏差量を算出し、算出した偏差量を参酌してズリ濃度を予測し、予測したズリ濃度が予め定められた許容範囲を超えるか否かを判断し、ズリ濃度が許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じてBMの抜出量を変更する工程(S6)を含む。
【0067】
すなわち、S6の工程は、S2で予測した層密度のデータを蓄積し(S601)、蓄積した層密度のデータに基づいて、BMの抜き出し作業を行う予定日前日の層密度のデータに対する予定日当日の偏差量(以下「前日値との層密度偏差量」という。)を算出し(S602)、算出した偏差量を参酌してズリ濃度を予測し(S603)、予測したズリ濃度が予め定められた許容範囲を超えるか否かを判断し(S604)、ズリ濃度が許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じてBMの抜出量を変更するというものである。
【0068】
次に、図6A〜図6Dを参照して、S601〜S604をより具体的に説明する。
図6Aに示すように、S601で蓄積した層密度のデータが933kg/mの場合には、S602で算出した「前日値との層密度偏差量」が−7.1の値を示した。このような値は、ズリ濃度が減少傾向にあることを示唆するものである。そして、ズリ濃度が減少傾向にある場合には、火炉11,21内のズリ濃度の実測値は、S2で予測したズリ濃度よりも多めの値となるのが通常である(図6B及び図6C参照)。そこで、火炉11,21内のズリ濃度をS2で予測したズリ濃度よりも多めに予測することとする(S603)。例えば、S2で予測したズリ濃度が0.4%のときには、前日値との層密度偏差量−7.1の値を参酌し、0.5%と予測した。
【0069】
他方、S601で蓄積した層密度のデータが945kg/mの場合には、S602で算出した「前日値との層密度偏差量」が12.0の値を示した。このような値は、ズリ濃度が増加傾向にあることを示唆するものである。そして、ズリ濃度が増加傾向にある場合には、火炉11,21内のズリ濃度の実測値は、S2で予測したズリ濃度よりも小さな値となるのが通常である(図6B及び図6C参照)。そこで、火炉11,21内のズリ濃度をS2で予測したズリ濃度よりも少なめに予測することとする(S603)。例えば、S2で予測したズリ濃度が0.4%のときには、前日値との層密度偏差量12.0の値を参酌し、0.3%と予測した。
【0070】
次に、前述したS604では、S603で予測したズリ濃度が予め定められた層密度の許容範囲を超えるか否かを判断する。例えば、図6Dに示すグラフを参照し、S603で予測したズリ濃度が層密度管理値の下限値以上であり、且つ上限値以下であるか否かを判断する。そして、ズリ濃度が層密度の許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じてBMの抜出量を変更する。例えば、S604でズリ濃度が層密度管理値の下限値未満であると判断された場合には、その程度に応じてBMの抜出量を増加する。これにより、BMの層密度が変動した場合であっても、ズリ濃度を管理値内に維持することが可能となる。なお、図6Dは、ズリ濃度の傾向管理を説明するための説明図であり、前述したA火炉におけるズリ濃度の傾向管理を一例に挙げて説明している。同図において、左側縦軸は、層密度管理値(kg/m)を示し、右側縦軸はズリ濃度(%)、A火炉の総合出力(MW)及び炉底抜出量(m)を示す。そして、同図では、ズリ濃度の傾向管理の指標として、層密度の移動平均値を採用している。すなわち、前述した如く、層密度を算出する際には、火炉内の圧力損失のデータを使用しており、そのデータには多少の誤差が伴う。そこで、このような誤差(圧力変動)に対してズリ濃度の傾向管理を行い易くするために、ズリ濃度の傾向管理の指標として、層密度の移動平均値を採用しているのである。また、同図では、前述した炉底抜出量及びズリ濃度の指標として、いずれも層密度の移動平均値を採用している。すなわち、炉底抜出量及びズリ濃度の測定を毎日継続して実施した場合には、コスト増を招いてしまう。そこで、このようなコストの増加を抑制するために、炉底抜出量及びズリ濃度の指標として、炉底抜出量及びズリ濃度の測定を毎日継続して得られる値ではなく、層密度の移動平均値を採用しているのである。
【0071】
<S7>
さらに、本発明の実施形態に係る層密度最適化方法は、図4に示すように、炉底部から抜き出したBMのズリ濃度を実測し、その実測値が予め定められたズリ濃度の許容範囲を超えるか否かを判断し、実測値が許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じてBMの抜出量を変更する工程(S7)を含む。具体的には、S7の工程は、炉底部から抜き出したBMのズリ濃度を実測し(S701)、実測したズリ濃度を所定の入力部から入力し、入力された実測値が予め定められたズリ濃度の許容範囲を超えるか否かを判断し(S703)、実測値が許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じてBMの抜出量を変更するというものである。これにより、BMの層密度が変動した場合であっても、より正確にズリ濃度を管理値内に維持することが可能となる。
【0072】
以上の通り、本発明の実施施形態に係る層密度最適化方法及び層密度最適化システムによれば、BMの粒径管理を容易且つ的確に行うことが可能となり、さらに層密度の最適化を行うことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態に係る加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】BM循環経路の説明図である。
【図3】層密度がプラントへ与える影響を説明するための模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係る加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法の手順を示すフローチャートである。
【図5A】流動層高と層密度との関係を示すグラフである。
【図5B】空塔速度と層密度との関係を示すグラフである。
【図6A】「前日値との層密度偏差量」を参酌して予測したズリ濃度の一例を示す図である。
【図6B】層密度とズリ濃度との関係を示すグラフである。
【図6C】「前日値との層密度偏差量」とズリ濃度との関係を示すグラフである。
【図6D】ズリ濃度の傾向管理を説明するための説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法及び層密度最適化システムを適用する発電プラントの概略構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
10,20 ボイラ 11,21 火炉
12,22 圧力容器 13,23 BMタンク
14 非常用温水タンク 31 高圧タービン
32 中圧タービン 33 低圧タービン
34 ガスタービン 35 コンプレッサ
41,42 発電機 43 起動用モータ
50 復水器 51 冷却水配管
61 石炭ホッパ 62 粗粉砕機
63 分級機 64 中継ホッパ
65 微粉砕機 66 石炭石ホッパ
67 混練機 68 燃料タンク
69 燃料ポンプ 71 水・蒸気管
72 汽水分離器 73 復水ポンプ
74a〜74e 給水加熱器 75 脱気器
76 給水ポンプ 77 復水配管
81 排ガス配管 82a,82b 無触媒脱硝装置
83 1次サイクロン 84 2次サイクロン
85,86 灰クーラ 91,93 排熱回収交換器
92 脱硝装置 94 バグフィルタ
95 煙突 101 塵芥回収管
102,103 灰クーラ 111a〜111g 圧力計
120 流動層 130 高温ガス管
140 BM炉底抜出系統 150 熱風炉
161 BM戻り配管 162 BM供給配管
200 層密度最適化システム 201 層密度予測手段
202 層密度判断手段 203 層密度最適化手段
204 層密度管理値設定手段 205a,205b 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度を最適化するための方法であって、
流動層を複数の層に分割して各層毎に圧力損失を検出する工程と、
検出した圧力損失に基づいて各層における流動媒体の層密度を予測する工程と、
予測した流動媒体の層密度が予め定められた許容範囲を超えた場合に、流動媒体の層密度を最適化する工程と、を含み、
前記流動媒体の層密度を最適化する工程は、前記加圧流動床ボイラの炉底部における前記圧力損失が低下した場合に、この炉底部における層密度が低下したものと予測し、その低下の程度に応じて前記炉底部からの前記流動媒体の抜出量を増加させる一方、前記圧力損失が増加した場合には、前記層密度が増加したものと予測し、その増加の程度に応じて前記炉底部からの前記流動媒体の抜出量を減少させることにより、流動層における流動媒体の流動状態を変化させて、層密度を予め定められた許容範囲内に調節することを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記流動媒体の層密度を最適化する工程は、前記流動媒体の抜出量を増加させる際にその抜出量が上限値を超えるときには、前記抜出量を当該上限値に修正するとともに、前記抜出量が上限値を超えた程度に応じて前記加圧流動床ボイラの火炉内へ供給する燃焼空気量を増加させる一方、前記流動媒体の抜出量を減少させる際にその抜出量が下限値未満のときには、前記抜出量を当該下限値に修正するとともに、前記抜出量が下限値を超えた程度に応じて前記火炉内へ供給する燃焼空気量を減少させることを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記流動媒体の層密度を予測する工程は、以下の式(1)を用いて流動媒体の層密度を演算して予測することを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法。
ρf=ΔP/(h×g)・・・(1)
ただし、
ρf:層密度(kg/m
ΔP:圧力損失
h :流動層高
g :重力加速度
【請求項4】
請求項1〜3において、
前記加圧流動床ボイラの燃料(CWP)を構成する石炭の炭種に応じて、前記層密度の許容範囲を定める工程をさらに含むことを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記層密度の許容範囲を定める工程は、前記流動層高に応じて、前記層密度の許容範囲を補正することを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、
前記層密度の許容範囲を定める工程は、前記加圧流動床ボイラの空塔速度に応じて、前記層密度の許容範囲を補正することを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法。
【請求項7】
請求項1〜6において、
予測した前記層密度のデータを蓄積し、蓄積した層密度のデータに基づいて、前記流動媒体の抜き出し作業を行う予定日前日の層密度のデータに対する予定日当日の偏差量を算出し、算出した偏差量を参酌してズリ濃度を予測し、予測したズリ濃度が予め定められた許容範囲を超えるか否かを判断し、前記ズリ濃度が前記許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じて前記流動媒体の抜出量を変更する工程をさらに含むことを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法。
【請求項8】
請求項1〜7において、
前記炉底部から抜き出した流動媒体のズリ濃度を実測し、その実測値が予め定められたズリ濃度の許容範囲を超えるか否かを判断し、前記実測値が前記許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じて前記流動媒体の抜出量を変更する工程をさらに含むことを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化方法。
【請求項9】
加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度を最適化するためのシステムであって、
流動層を複数の層に分割して各層毎に圧力損失を検出する複数の圧力損失検出手段と、
該圧力損失検出手段により検出した圧力損失に基づいて各層における流動媒体の層密度を予測する層密度予測手段と、
該層密度予測手段により予測した流動媒体の層密度が予め定められた許容範囲を超えるか否かを判断する層密度判断手段と、
該層密度判断手段により前記層密度が前記許容範囲を超えると判断された場合に、流動媒体の層密度を最適化する層密度最適化手段と、を備え、
前記層密度最適化手段は、前記加圧流動床ボイラの炉底部における前記圧力損失が低下した場合に、この炉底部における層密度が低下したものと予測し、その低下の程度に応じて前記炉底部からの前記流動媒体の抜出量を増加させる一方、前記圧力損失が増加した場合には、前記層密度が増加したものと予測し、その増加の程度に応じて前記炉底部からの前記流動媒体の抜出量を減少させることにより、流動層における流動媒体の流動状態を変化させて、層密度を予め定められた許容範囲内に調節することを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化システム。
【請求項10】
請求項9において、
前記層密度最適化手段は、前記流動媒体の抜出量を増加させる際にその抜出量が上限値を超えるときには、前記抜出量を当該上限値に修正するとともに、前記抜出量が上限値を超えた程度に応じて前記加圧流動床ボイラの火炉内へ供給する燃焼空気量を増加させる一方、前記流動媒体の抜出量を減少させる際にその抜出量が下限値未満のときには、前記抜出量を当該下限値に修正するとともに、前記抜出量が下限値を超えた程度に応じて前記火炉内へ供給する燃焼空気量を減少させることを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化システム。
【請求項11】
請求項9又は10において、
前記層密度予測手段は、以下の式(1)を用いて流動媒体の層密度を演算して予測することを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化システム。
ρf=ΔP/(h×g)・・・(1)
ただし、
ρf:層密度(kg/m
ΔP:圧力損失
h :流動層高
g :重力加速度
【請求項12】
請求項9〜11において、
前記加圧流動床ボイラの燃料(CWP)を構成する石炭の炭種に応じて、前記層密度の許容範囲を定める層密度管理値設定手段をさらに備えたことを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化システム。
【請求項13】
請求項12において、
前記層密度管理値設定手段は、前記流動層高に応じて、前記層密度の許容範囲を補正することを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化システム。
【請求項14】
請求項12又は13において、
前記層密度管理値設定手段は、前記加圧流動床ボイラの空塔速度に応じて、前記層密度の許容範囲を補正することを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化システム。
【請求項15】
請求項9〜14において、
予測した前記層密度のデータを蓄積し、蓄積した層密度のデータに基づいて前記流動媒体の抜き出し作業を行う予定日前日の層密度のデータに対する予定日当日の偏差量を算出し、算出した偏差量を参酌してズリ濃度を予測し、予測したズリ濃度が予め定められた許容範囲を超えるか否かを判断し、前記ズリ濃度が前記許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じて前記流動媒体の抜出量を変更するように前記層密度最適化手段を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化システム。
【請求項16】
請求項9〜15において、
前記炉底部から抜き出した流動媒体のズリ濃度の実測値が予め定められたズリ濃度の許容範囲を超えるか否かを判断し、前記実測値が前記許容範囲を超えると判断された場合には、その超えた程度に応じて前記流動媒体の抜出量を変更するように前記層密度最適化手段を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする加圧流動床ボイラにおける流動媒体の層密度最適化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−196718(P2008−196718A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29533(P2007−29533)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】