説明

加圧流動焼却炉の運転方法及び加圧流動焼却炉設備

【課題】サージングの発生を適切に防止すると共に、サージングの発生を防止するためのオペレータの常時監視を不要にする。
【解決手段】コンプレッサ2bの入口側圧力と出口側圧力とから圧力比を算出し、且つコンプレッサ2bから供給される燃焼用空気の流量から合計空気量を算出し、
過給機2のコンプレッサ2bにサージングが発生する条件を示すサージング領域に対し、安全率を介して決定されるサージング安全ラインを予め準備し、
実測された圧力比に対する実測された合計空気量をコンプレッサ動作点として決定し、実測された圧力比に対するサージング安全ライン上の合計空気量を比較用動作点として算出し、
コンプレッサ動作点から比較用動作点を減算して減算値を求め、減算値が基準値を下回った場合には排ガスバイパス弁31及び/又は加圧空気弁28を開放制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理等で生じた汚泥などの可燃性廃棄物を焼却処理する加圧流動焼却炉の運転方法及び加圧流動焼却炉設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥等の可燃性廃棄物の焼却において、焼却物の持つエネルギーを有効に取り出すための手段の1つとして加圧流動焼却方法がある。従来、焼却に用いられている加圧を行わない気泡流動炉は、常時、流動用ブロワを運転し続け、且つ排煙処理塔で煙突から強制的に排気するための誘引ファンを運転するものであるのに対し、近年、適用される加圧式流動焼却炉設備は、加圧用、流動用及び燃焼用空気の送風系に排ガスエネルギーを利用するタービン−コンプレッサ過給機を利用するため、起動時に起動用ブロワを使用するのみとなり、よってランニングコストが低減し、また誘引ファンの設置が不要になる利点がある。更に通常運転においては、起動用ブロワを停止しても排ガスエネルギーによるタービン回転により駆動されるコンプレッサでの送風が安定して行われ、炉の加圧、流動床の流動や燃焼用空気の搬送に用いられる流動用ブロワや誘引ファンの送風動力が不要になる自立運転状態となる。
【0003】
加圧流動焼却炉設備は、図8に示す如く加圧流動焼却炉1と、加圧流動焼却炉1で生じた排ガスによりタービン2aを駆動してコンプレッサ2bで燃焼用空気を圧送する過給機2と、過給機2の起動時にコンプレッサ2bへ燃焼用空気を押し込む起動用ブロワ3と、過給機2からの燃焼用空気と加圧流動焼却炉1の排ガスとを熱交換し得る空気予熱器4と、空気予熱器4からの排ガスを集塵処理する高温集塵機5と、タービン2aから流下した排ガスの白煙を防止する白煙防止空気予熱器6と、白煙防止空気予熱器6から流下した排ガスを処理する排煙処理塔7と、白煙防止空気予熱器6からの白煙防止空気及び排煙処理塔7からの排ガスを外気に排出する煙突8とを備えている。
【0004】
加圧流動焼却炉1には、汚泥等の被処理物を供給する供給流路9と、過給機2のコンプレッサ2bから空気予熱器4を介して燃焼用空気を供給する第一空気供給流路10が配置されている。又、第一空気供給流路10でコンプレッサ2bから空気予熱器4までの箇所には、燃焼用空気を加圧流動焼却炉1の始動用バーナ1aに供給する第二空気供給流路11が第一分岐点11aを介して接続されている。更に、第二空気供給流路11で第一分岐点11aから始動用バーナ1aまでの箇所には、加圧流動焼却炉1の通常運転後に燃焼用空気を他の供給先へ供給し得る利用供給流路13が第二分岐点13aを介して接続されている。又、加圧流動焼却炉1には、排ガスを、空気予熱器4、高温集塵機5、過給機2のタービン2aを介して白煙防止空気予熱器6へ排出する排出流路14が配置されている。
【0005】
過給機2のコンプレッサ2b側には、起動用ブロワ3から燃焼用空気を供給する入側の空気供給流路15が配置されており、空気供給流路15には、過給機2のタービン2aの駆動に伴って外気から燃焼用空気を吸引する外気側空気供給流路16が流入側分岐点16aを介して接続されている。ここで図8中、17は白煙防止空気予熱器6に対応する白煙防止ファン、18は白煙防止ファン17から白煙防止空気予熱器6へ接続する接続流路、19は白煙防止空気予熱器6から排煙処理塔7へ接続する排ガス処理流路、20は白煙防止空気予熱器6から煙突8へ接続する白煙防止空気流路、21は排煙処理塔7内の薬液循環に対応する排煙処理塔循環ポンプ、22は処理液を排煙処理塔7と排煙処理塔循環ポンプ21との間で循環させる循環流路を示している。
【0006】
空気供給流路15で流入側分岐点16aからコンプレッサ2bまでの箇所には、コンプレッサ2bの入口側圧力を測定する第一圧力計23が備えられている。又、第一空気供給流路10でコンプレッサ2bから第一分岐点11aまでの箇所には、コンプレッサ2bの出口側圧力を測定する第二圧力計24が備えられていると共に、第一空気供給流路10で第一分岐点11aより下流位置には、上流側から順に、燃焼用空気の流量を調整し得る燃焼用空気弁26と、燃焼用空気の流量を測定する第一流量計27とが備えられている。更に、第二空気供給流路11で第二分岐点13aから始動用バーナ1aまでの箇所には、空気供給開閉弁12が備えられている。又、外気側空気供給流路16には、空気の吸引量を調整し得る空気吸込弁25が備えられている。更に利用供給流路13には、上流側から順に、燃焼用空気を調整し得る加圧空気弁28と、他の供給先へ供給する燃焼用空気の流量を測定する第二流量計29とが備えられている。
【0007】
通常運転時で過給機2のコンプレッサ2bに生じるサージングを防止する際には、過給機2の構造等により決まるサージング領域Aについて、コンプレッサ側の出口/入口圧力と、コンプレッサ側供給空気量との関係から予め演算して決定しておき、過給機2のコンプレッサ2bへ取り込まれる燃焼用空気の入口側圧力を第一圧力計23で測定すると共に、過給機2のコンプレッサ2bから送り出される燃焼用空気の出口側圧力を第二圧力計24で測定し、出口側圧力と入口側圧力の圧力比(出口側圧力/入口側圧力)を算出する。同時に、過給機2のコンプレッサ2bから第一空気供給流路10を介して加圧流動焼却炉1へ供給される燃焼用空気の流量を第一流量計27で測定すると共に、過給機2のコンプレッサ2bから利用供給流路13を介して他の供給先へ送り出される燃焼用空気の流量を第二流量計29で測定し、加圧流動焼却炉1への燃焼用空気の流量と、他の供給先への燃焼用空気の流量とから合計空気量を算出する。そして図9に示す如く圧力比(出口側圧力/入口側圧力)と合計空気量で表されるサージング領域Aに対し、オペレータが現在の状況位置を判定し、現在の状況位置がサージング領域Aに近接する際には、加圧空気弁28を開いて燃焼用空気の出口側圧力を低減し、サージング領域Aから離間させ(図9では矢印の方向)、サージングの発生を防止する。
【0008】
なお、本発明に関連する加圧流動焼却炉設備の構成を示す先行技術文献情報としては、例えば、下記の特許文献1,2が既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−28251号公報
【特許文献2】特開2007−170705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、過給機2のコンプレッサ2bに発生するサージングを防止するためには、オペレータが燃焼用空気の流量及び圧力等の状態を常に監視しなければならないという問題があった。
【0011】
又、加圧流動焼却炉1を通常運転する際には、脱水汚泥などの可燃性廃棄物の投入量、含水量、発熱量の変動に伴って排ガスの流量や圧力が変動し、空気流量変化や圧力変化によっては過給機2のコンプレッサ2bにサージングを生じる可能性があるため、サージングの発生を適切に防止することが求められていた。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑み、燃焼用空気の流量や圧力の変動によるサージングの発生を適切に防止すると共に、サージングの発生を防止するためのオペレータの常時監視を不要にする加圧流動焼却炉の運転方法及び加圧流動焼却炉設備を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の加圧流動焼却炉の運転方法は、流動床を有する加圧流動焼却炉と、該加圧流動焼却炉で生じた排ガスが有するエネルギーにより燃焼用空気を圧送する過給機と、該過給機のコンプレッサから前記加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼用空気の流量を調整する加圧空気弁と、前記過給機のタービンを迂回してタービンの上流側から下流側へ排ガスを流すバイパス流路と、該バイパス流路に設置されて排ガスの流量を調整する排ガスバイパス弁とを備える加圧流動焼却炉の運転方法であって、
前記過給機のコンプレッサの入口側圧力と、過給機のコンプレッサの出口側圧力とから圧力比を算出し、且つ前記過給機のコンプレッサから前記加圧流動焼却炉へ供給される燃焼用空気の流量と、過給機のコンプレッサから前記加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼用空気の流量とから、もしくは前記過給機のコンプレッサ出口空気流量から合計空気量を算出し、
前記過給機のコンプレッサにサージングが発生する条件を前記圧力比と前記合計空気量との関係で示すサージング領域に対し、安全率を介して決定されるサージング安全ラインを予め準備し、
実測された前記入口側圧力と実測された前記出口側圧力から算出する実測された圧力比に対する実測された合計空気量をコンプレッサ動作点として決定し、前記実測された圧力比に対するサージング安全ライン上の合計空気量を比較用動作点として算出し、
前記コンプレッサ動作点から比較用動作点を減算して減算値を求め、該減算値が基準値を下回った場合には排ガスバイパス弁及び/又は加圧空気弁を開放制御するものである。
【0014】
本発明の加圧流動焼却炉の運転方法において、前記過給機のコンプレッサにサージングが発生する条件を前記圧力比と前記合計空気量との関係で示すサージング領域から第一安全率を介して離間する第一サージング安全ラインと、前記サージング領域から第二安全率を介して離間し且つ第一サージング安全ラインと異なる位置にある第二サージング安全ラインとを予め準備し、
前記過給機のコンプレッサの入口側圧力と、過給機のコンプレッサの出口側圧力とから実測された圧力比を算出し、且つ前記過給機のコンプレッサから加圧流動焼却炉へ供給される燃焼用空気の流量と、過給機のコンプレッサから他の供給先へ供給される燃焼用空気の流量とを実測しその合計値から、もしくは前記過給機のコンプレッサ出口空気流量の実測値から実測された合計空気量を算出し、
前記実測された圧力比に対する合計空気量をコンプレッサ動作点として決定し、前記実測された圧力比に対する第一サージング安全ライン上の空気量を第一比較用動作点として算出し、前記実測された圧力比に対する第二サージング安全ライン上の空気量を第二比較用動作点として算出し、
前記コンプレッサ動作点から第一比較用動作点を減算して第一減算値を求め、該第一減算値が負になる場合には加圧空気弁を開放制御し、
前記コンプレッサ動作点から第二比較用動作点を減算して第二減算値を求め、該第二減算値が負になる場合には排ガスバイパス弁を開放制御することが好ましい。
【0015】
本発明の加圧流動焼却炉の運転方法において、前記第一安全率は前記第二安全率よりも小さい値であり、過給機のコンプレッサにサージングが発生する条件を前記圧力比と前記合計空気量との関係で示すサージング領域に、前記コンプレッサ動作点が接近すると、先ず排ガスバイパス弁を開放制御し、それでも接近する場合には更に加圧空気弁を開放制御することが好ましい。
【0016】
本発明の加圧流動焼却炉設備は、流動床を有する加圧流動焼却炉と、
該加圧流動焼却炉で生じた排ガスが有するエネルギーにより燃焼用空気を圧送する過給機と、
該過給機のコンプレッサの入口側圧力を測定する第一圧力計と、
前記過給機のコンプレッサの出口側圧力を測定する第二圧力計と、
前記過給機のコンプレッサから加圧流動焼却炉へ供給される燃焼用空気の流量を測定する第一流量計と、
前記過給機のコンプレッサから前記加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼用空気の流量を測定する第二流量計と、
前記過給機のコンプレッサから前記加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼用空気の流量を調整する加圧空気弁と、
前記過給機のタービンを迂回してタービンの上流側から下流側へ排ガスを流すバイパス流路と、
該バイパス流路に設置されて排ガスの流量を調整する排ガスバイパス弁と、
前記過給機のコンプレッサにサージングが発生する条件を前記コンプレッサの入口側圧力及びコンプレッサの出口側圧力とから算出する圧力比と前記第一流量計の測定値及び前記第二流量計の測定値から算出する合計空気量との関係で示されるサージング領域に対し、安全率を介して決定されるサージング安全ラインを予め記録した弁開度演算部とを備え、
該弁開度演算部は、第一圧力計及び第二圧力計から測定した実測された圧力比と、第一流量計及び第二流量計から測定した実測された合計空気量とによりコンプレッサ動作点を決定し、前記実測された圧力比に対するサージング安全ライン上の合計空気量を比較用動作点として算出し、前記コンプレッサ動作点から比較用動作点を減算して減算値を求め、該減算値が基準値を下回った場合には、排ガスバイパス弁及び/又は加圧空気弁を開放制御するように構成されたものである。
【0017】
本発明の加圧流動焼却炉設備は、流動床を有する加圧流動焼却炉と、
該加圧流動焼却炉で生じた排ガスが有するエネルギーにより燃焼用空気を圧送する過給機と、
該過給機のコンプレッサの入口側圧力を測定する第一圧力計と、
前記過給機のコンプレッサの出口側圧力を測定する第二圧力計と、
前記過給機のコンプレッサから加圧流動焼却炉及び該加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼用空気の合計空気流量を測定するコンプレッサ出口空気流量計と、
前記過給機のコンプレッサから前記加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼用空気の流量を調整する加圧空気弁と、
前記過給機のタービンを迂回してタービンの上流側から下流側へ排ガスを流すバイパス流路と、
該バイパス流路に設置されて排ガスの流量を調整する排ガスバイパス弁と、
前記過給機のコンプレッサにサージングが発生する条件を前記コンプレッサの入口側圧力及びコンプレッサの出口側圧力とから算出する圧力比と前記過給機のコンプレッサ出口空気流量から算出する合計空気量との関係で示されるサージング領域に対し、安全率を介して決定されるサージング安全ラインを予め記録した弁開度演算部とを備え、
該弁開度演算部は、第一圧力計及び第二圧力計から測定した実測された圧力比と、コンプレッサ出口空気流量計から測定した実測された合計空気量とによりコンプレッサ動作点を決定し、前記実測された圧力比に対するサージング安全ライン上の合計空気量を比較用動作点として算出し、前記コンプレッサ動作点から比較用動作点を減算して減算値を求め、該減算値が基準値を下回った場合には、排ガスバイパス弁及び/又は加圧空気弁を開放制御するように構成されたものである。
【0018】
本発明の加圧式焼却設備において、弁開度演算部に、サージング領域から第一安全率を介して離間する第一サージング安全ラインと、前記サージング領域から第二安全率を介して離間し且つ第一サージング安全ラインと異なる位置にある第二サージング安全ラインとを予め記録し、
前記弁開度演算部は、第一圧力計及び第二圧力計から測定した実測された圧力比と、第一流量計及び第二流量計、もしくはコンプレッサ出口空気流量計で測定した実測された合計空気量とによりコンプレッサ動作点を決定し、前記実測された圧力比に対する第一サージング安全ライン上の空気量を第一比較用動作点として算出すると共に、前記実測された圧力比に対する第二サージング安全ライン上の空気量を第二比較用動作点として算出し、前記コンプレッサ動作点から第一比較用動作点を減算して第一減算値を求め、該第一減算値が負になる場合には加圧空気弁を開放制御し、前記コンプレッサ動作点から第二比較用動作点を減算して第二減算値を求め、該第二減算値が負になる場合には排ガスバイパス弁を開放制御するように構成されることが好ましい。
【0019】
又、本発明の加圧流動焼却炉設備において、前記加圧空気弁の弁開度演算部は、前記加圧空気弁を制御する制御信号として、前記実測された合計空気量が前記第一比較用動作点での合計空気量の値ならば開も閉もしない現状維持を出力し、前記実測された合計空気量が前記第一比較用動作点での合計空気量の値よりも小さい値ならば開の信号を出力し、前記実測された合計空気量が前記第一比較用動作点での合計空気量の値よりも大きい値ならば閉の信号を出力し、前記排ガスバイパス弁の弁開度演算部は、前記排ガスバイパス弁を制御する制御信号として、前記実測された合計空気量が前記第二比較用動作点での合計空気量の値ならば開も閉もしない現状維持を出力し、前記実測された合計空気量が前記第二比較用動作点での合計空気量の値よりも小さい値ならば開の信号を出力し、前記実測された合計空気量が前記第二比較用動作点での合計空気量の値よりも大きい値ならば閉の信号を出力することが望ましい。
【0020】
又、本発明の加圧流動焼却炉設備において、前記加圧空気弁の弁開度演算部は、前記実測された合計空気量が前記第一比較用動作点での合計空気量の値からの偏差によって弁開度の変化速度を比例制御するように信号を出力し、前記排ガスバイパス弁の弁開度演算部は、前記実測された合計空気量が前記第二比較用動作点での合計空気量の値からの偏差によって弁開度の変化速度を比例制御するように信号を出力することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の加圧流動焼却炉の運転方法及び加圧流動焼却炉設備によれば、前記コンプレッサの入口側圧力及び出口側圧力とから算出する圧力比とコンプレッサ出口の空気流量から算出する合計空気量との関係で示されるサージング領域から離間してサージングの発生を防止するサージング安全ラインを予め準備し、前記過給機のコンプレッサの入口側圧力と、過給機のコンプレッサの出口側圧力とから実測された圧力比を算出し、且つ前記過給機のコンプレッサから加圧流動焼却炉へ供給される燃焼用空気の流量と、過給機のコンプレッサから他の供給先へ供給される燃焼用空気の流量と、もしくはコンプレッサ出口空気流量から実測された合計空気量を算出し、前記実測された圧力比に対する実測された合計空気量をコンプレッサ動作点として決定し、前記実測された圧力比に対するサージング安全ライン上の空気量を比較用動作点として算出し、前記コンプレッサ動作点から比較用動作点を減算して減算値を求め、該減算値が設定値を下回った場合には排ガスバイパス弁及び/又は加圧空気弁を開放制御し、よって燃焼用空気の流量や圧力の変動に基づくサージングの発生を適切に防止することができる。又、実測された圧力比、実測された合計空気量、サージング安全ラインから排ガスバイパス弁及び/又は加圧空気弁の開度を自動的に制御してサージングの発生を防止するので、サージングの発生を防止するためのオペレータの常時監視を不要にすることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の加圧流動焼却炉設備を示す全体概要構成図である。
【図2】本発明の加圧流動焼却炉の運転方法の処理を示すフローである。
【図3】図2のフローから続く処理を示すフローである。
【図4】本発明においてサージング領域、第一サージング安全ライン、第二サージング安全ラインを示すグラフである。
【図5】サージング領域等を示すグラフにおいてコンプレッサ動作点、第一比較用動作点、第二比較用動作点を算出した状態を示すグラフである。
【図6】コンプレッサ動作点から第一比較用動作点又は第二比較用動作点を減算した減算値と、加圧空気弁又は排ガスパイパス弁の開度の変化速度との関係を示すグラフである。
【図7】サージング領域等を示すグラフにおいて加圧空気弁及び排ガスバイパス弁を開いた際の作用を示すグラフである。
【図8】従来の加圧流動焼却炉設備を示す全体概要構成図である。
【図9】サージング領域を示すグラフにおいて加圧空気弁を開いた際の作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態例を図1〜図7を参照して説明する。又、図中、図8と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0024】
実施の形態例である加圧流動焼却炉の運転方法及び加圧流動焼却炉設備は、加圧流動焼却炉1と、加圧流動焼却炉1で生じた排ガスによりタービン2aを駆動してコンプレッサ2bで燃焼用空気を圧送する過給機2と、過給機2の起動時にコンプレッサ2bへ燃焼用空気を押し込む起動用ブロワ3と、過給機2からの燃焼用空気と加圧流動焼却炉1の排ガスとを熱交換し得る空気予熱器4と、空気予熱器4からの排ガスを集塵処理する高温集塵機5と、タービン2aから流下した排ガスの白煙を防止する白煙防止空気予熱器6と、白煙防止空気予熱器6から流下した排ガスを処理する排煙処理塔7と、白煙防止空気予熱器6からの白煙防止空気及び排煙処理塔7からの排ガスを外気に排出する煙突8とを備えている。
【0025】
加圧流動焼却炉1には、汚泥等の可燃性廃棄物である被処理物を供給する供給流路9と、過給機2のコンプレッサ2bから空気予熱器4を介して燃焼用空気を供給する第一空気供給流路10が配置されている。又、第一空気供給流路10でコンプレッサ2bから空気予熱器4までの箇所には、燃焼用空気を加圧流動焼却炉1の始動用バーナ1aに供給する第二空気供給流路11が第一分岐点11aを介して接続されている。更に、第二空気供給流路11で第一分岐点11aから始動用バーナ1aまでの箇所には、加圧流動焼却炉1の通常運転後に燃焼用空気を他の供給先へ供給し得る利用供給流路13が第二分岐点13aを介して接続されている。又、加圧流動焼却炉1には、排ガスを、空気予熱器4、高温集塵機5、過給機2のタービン2aを介して白煙防止空気予熱器6へ排出する排出流路14が配置されている。更に排出流路14で高温集塵機5から過給機2のタービン2aまでの箇所には、過給機2のタービン2aを迂回して排ガスをタービン2aの上流側から下流側の白煙防止空気予熱器6へ流すバイパス流路30が接続されている。
【0026】
過給機2のコンプレッサ2b側には、起動用ブロワ3から燃焼用空気を供給する空気供給流路15が配置されており、空気供給流路15には、過給機2のタービン2aの駆動に伴って外気から燃焼用空気を吸引する外気側空気供給流路16が流入側分岐点16aを介して接続されている。
【0027】
空気供給流路15で流入側分岐点16aからコンプレッサ2bまでの箇所には、過給機2のコンプレッサ2bへ取り込まれる燃焼用空気の入口側圧力を測定する第一圧力計23が備えられている。又、第一空気供給流路10でコンプレッサ2bから第二分岐点13aまでの箇所には、過給機2のコンプレッサ2bから送り出される出口側圧力を測定する第二圧力計24が備えられていると共に、第一空気供給流路10で第一分岐点11aより下流位置には、上流側から順に、燃焼用空気の流量を調整し得る燃焼用空気弁26と、燃焼用空気の流量を測定する第一流量計27とが備えられている。更に外気側空気供給流路16には、空気の吸引量を調整し得る空気吸込弁25が備えられている。又、利用供給流路13には、上流側から順に、燃焼用空気を調整し得る加圧空気弁28と、他の供給先へ供給する空気の流量を測定する第二流量計29とが備えられている。更にバイパス流路30には、流量を調整する排ガスバイパス弁31が備えられている。この実施例では、加圧流動焼却炉へ導かれる燃焼空気量を計測する第一流量計27と、加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼空気量を計測する第二流量計29とを備える例を示したが、第一分岐点11aよりも上流側に過給機のコンプレッサ出口空気流量、つまり合計空気流量が計測可能なコンプレッサ出口空気流量計を代替として設けても良い。
【0028】
第一圧力計23及び第二圧力計24は、圧力信号ライン23a,24aを介して圧力指示調節計(PIC)32に接続され、圧力指示調節計32は、圧力伝達信号ライン32aを介して弁開度演算部33に接続されている。又、圧力指示調節計32は、過給機2のコンプレッサ2bの出口側圧力と、過給機2のコンプレッサ2bの入口側圧力とから、出口側圧力に対する入口側圧力の圧力比(出口側圧力/入口側圧力)を算出して弁開度演算部33に伝達するようにしている。
【0029】
第一流量計27及び第二流量計29は、流量信号ライン27a,29aを介して流量指示調節計(FIC)34に接続され、流量指示調節計34は、流量伝達信号ライン34aを介して弁開度演算部33に接続されている。又、流量指示調節計34は、過給機2のコンプレッサ2bから加圧流動焼却炉1へ供給される燃焼用空気の流量と、過給機2のコンプレッサ2bから加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼用空気の流量とから、過給機コンプレッサから吐出される合計空気量を算出して弁開度演算部33に伝達するようにしている。ここで、第一分岐点11aよりも上流側に設けたコンプレッサ出口空気流量計を少なくとも第一流量計27の代替として設け、このコンプレッサ出口空気流量計から単独の流量信号ラインを介して流量指示調節計(FIC)34に接続されても良い。
【0030】
弁開度演算部33は、加圧空気弁信号ライン28aを介して加圧空気弁28に接続され、内部の関数処理等により加圧空気弁28の開度を制御するようにしていると共に、バイパス弁信号ライン31aを介して排ガスバイパス弁31に接続され、内部の関数処理等により排ガスバイパス弁31の開度を制御するようにしている。又、弁開度演算部33には、図4、図5に示す如く過給機2のコンプレッサ2bの圧力比(出口側圧力/入口側圧力)と、過給機2の合計空気量との関係で示される、過給機2のコンプレッサ2bにサージングが発生するサージング領域A、及び/又はサージング領域Aの境界線であるサージングラインLが予め記録されていると共に、当該サージング領域Aから第一安全率R1を介して離間する第一サージング安全ラインL1と、サージング領域Aから第二安全率R2を介して離間し且つ第一サージング安全ラインL1と異なる位置にある第二サージング安全ラインL2とが予め記録されている。ここで図4、図5中、第一サージング安全ラインL1は、例えば、サージングラインLから1〜5%の距離(第一安全率R1)を有しており、第二サージング安全ラインL2は、第一サージング安全ラインL1より大きな距離(安全率)を備えるようにサージングラインから3〜10%の距離(第二安全率R2)を有している。もちろん、第一サージング安全ラインL1及び第二サージング安全ラインL2の設定は、過給機2の大きさや形式、加圧流動焼却炉設備の大きさや空気搬送系の長さや容量、後述する各サージング安全ラインに関係して動作する弁類の形式や容量、制御系の時定数などの組み合わせにより第一安全率R1、第二安全率R2を変え、サージング領域Aからの離間距離を適宜調整しても良い。
【0031】
以下本発明を実施する形態例の作用を説明する。
【0032】
通常運転時で過給機2のコンプレッサ2bに生じるサージングを防止する際には、図1の加圧流動焼却炉設備において図2、図3に示すフローにより処理する。
【0033】
最初に通常運転開始として、加圧流動焼却炉1を通常の運転状態にし、加圧流動焼却炉1の排ガスのみで過給機2を稼働させる(ステップS1)。
【0034】
次に、第一圧力計23で入口側圧力を測定する共に、第二圧力計24で出口側圧力を測定し、圧力指示調節計32により、出口側圧力に対する入口側圧力の圧力比(出口側圧力/入口側圧力)を算出して弁開度演算部33に伝達する。又、第一流量計27で、加圧流動焼却炉1へ供給される燃焼用空気の流量を測定すると共に、第二流量計29で、他の供給先へ供給される燃焼用空気の流量を測定し、流量指示調節計34により、夫々の燃焼用空気の流量から過給機2の合計空気量を算出して弁開度演算部33に伝達する。そして弁開度演算部33では、図5のグラフに示すように、実測された圧力比に対する現在の実測された合計空気量をコンプレッサ動作点Cとして決定する(ステップS2)。
【0035】
続いて弁開度演算部33は、図5のグラフに示すように、同じ圧力比に対する第一サージング安全ラインL1上の空気量を第一比較用動作点C1として算出すると共に、同じ圧力比に対する第二サージング安全ラインL2上の空気量を第二比較用動作点C2として算出する(ステップS3)。
【0036】
更に弁開度演算部33は、コンプレッサ動作点Cから第一比較用動作点C1を減算して第一減算値を求めると共に、コンプレッサ動作点Cから第二比較用動作点C2を減算して第二減算値を求め(ステップS4)、第一減算値を基準値(図2ではゼロ)と比較する(ステップS5)と共に、第二減算値を基準値(図3ではゼロ)と比較する(図3のステップS6)。ここで図2の符号Aは図3の符号Aにつながっていることを示している。
【0037】
第一減算値を基準値と比較し、第一演算値が基準値を上回る場合(ステップ5のYES)には、サージング領域Aに対してコンプレッサ動作点Cが第一サージング安全ラインL1より離間する側にあると判断し、加圧空気弁28の開度を閉操作側で演算し(ステップS7)、演算結果を加圧空気弁28に出力し(ステップS8)、加圧空気弁28の開度を調節して図2の最初の段階へ処理を戻す。又、第一減算値を基準値と比較し、第一演算値が基準値を下回る場合(ステップ5のNO)には、再度、第一減算値(コンプレッサ動作点C−第一比較用動作点C1)を基準値(図2ではゼロ)と比較し(ステップS9)、第一演算値が基準値を再び上回る場合(ステップ9のNO)には、サージング領域Aに対してコンプレッサ動作点Cが確実に第一サージング安全ラインL1より離間する側にあると判断し、図2の最初の段階へ処理を戻す。更に第一演算値が基準値(図2ではゼロ)を下回る場合(ステップ9のYES)には、サージング領域Aに対してコンプレッサ動作点Cが第一サージング安全ラインL1より近接する側にあると判断し、加圧空気弁28の開度を開操作側で演算し(ステップS10)、演算結果を加圧空気弁28に出力して加圧空気弁28の開度を調整し(ステップS11)、燃焼用空気を利用供給流路13へ放気(流下)して出口側圧力を逃がし、過給機2のコンプレッサ2bの負荷を下げて過給機2のコンプレッサ2bにサージングが発生することを防止し、図2の最初の段階へ処理を戻す。なお、図2中、符号※1はつながっていることを示し、ステップS8,S9のNO,S11の処理の後には、ステップS1とステップS2の間に処理を戻すことを示している。
【0038】
ここで加圧空気弁28の開度を開操作側または閉操作側に演算する際(ステップS7,S10)には、合計空気量から、第一サージング安全ラインL1上の空気量を減算した減算値(偏差)と、弁開度の変化速度とに基づく関数(図6参照)により、減算値が大きい場合には加圧空気弁28を速く開閉し且つ減算値が小さい場合には加圧空気弁28を遅く開閉するように加圧空気弁28の開度の速度を調整している。又、加圧空気弁28の開度を調整して出口側圧力を逃がす際には、コンプレッサ2b出口側の流路全体の見かけ上の圧力損失を小さくし、過給機2のコンプレッサ2b側の合計空気量を増やしている。更に図7において加圧空気弁28の開度を調整して出口側圧力を逃がす際には、加圧流動焼却炉1への空気量が変化する一方で、コンプレッサ動作点Cをサージング領域Aから離間させる作用は大きい(加圧空気弁・開の矢印方向)。
【0039】
一方、第二減算値を基準値(図3ではゼロ)と比較し、図3に示す如く第二演算値が基準値を上回る場合(ステップ6のYES)には、サージング領域Aに対してコンプレッサ動作点Cが第二サージング安全ラインL2より離間する側にあると判断し、排ガスバイパス弁31の開度を閉操作側で演算し(ステップS12)、演算結果を排ガスバイパス弁31に出力し(ステップS13)、排ガスバイパス弁31の開度を調節して図2の最初の段階へ処理を戻す。又、第二減算値を基準値と比較し、第二演算値が基準値を下回る場合(ステップ6のNO)には、再度、第二減算値(コンプレッサ動作点C−第二比較用動作点C2)を基準値(図3ではゼロ)と比較し(ステップS14)、第二演算値が基準値を再び上回る場合(ステップ14のNO)には、サージング領域Aに対してコンプレッサ動作点Cが確実に第二サージング安全ラインL2より離間する側にあってサージングの発生が確実にないと判断し、図2の最初の段階へ処理を戻す。更に第二演算値が基準値を下回る場合(ステップ14のYES)には、サージング領域Aに対してコンプレッサ動作点Cが第二サージング安全ラインL2より近接する側にあると判断し、排ガスバイパス弁31の開度を開操作側で演算し(ステップS15)、演算結果を排ガスバイパス弁31に出力して排ガスバイパス弁31の開度を調整し(ステップS16)、排ガスを過給機2のタービン2aから迂回させるようにバイパス流路30へ流し、過給機2のタービン2aへの仕事量を減らして圧力比を下げ、過給機2のコンプレッサ2bにサージングが発生することを防止し、図2の最初の段階へ処理を戻す。なお図3中、符号※1は図2の※1とつながっていることを示し、ステップS13,S14のNO,S16の処理の後には、ステップS1とステップS2の間に処理を戻すことを示している。
【0040】
ここで排ガスバイパス弁31の開度を開操作側または閉操作側に演算する際(ステップS12,S15)には、合計空気量から、第二サージング安全ラインL2上の空気量を減算した減算値(偏差)と、弁開度の変化速度とに基づく関数(図6参照)により、減算値が大きい場合には排ガスバイパス弁31を速く開閉し且つ減算値が小さい場合には排ガスバイパス弁31を遅く開閉するように排ガスバイパス弁の開度の速度を調整している。又、排ガスバイパス弁31の開度を調整して排ガスを過給機2のタービン2aから迂回させる際には、過給機2のタービン2a側の入口圧力、加圧燃焼炉内の圧力、過給機2のコンプレッサ2b側の出口圧力が低下し、過給機2の回転数の低下により過給機2のコンプレッサ2bから供給される燃焼用空気の流量を減らしている。更に図7において排ガスバイパス弁31の開度を調整して排ガスを過給機2のタービン2aから迂回させる際には、コンプレッサ動作点Cをサージング領域Aから離間させる作用は若干小さい一方で(排ガスバイパス弁・開の矢印方向)、応答性が極めて良い。
【0041】
而して、このように実施の形態例によれば、過給機2のコンプレッサ2bにサージングが発生するサージング領域Aと、サージング領域Aから離間してサージングの発生を防止する第一サージング安全ラインL1及び第二サージング安全ラインL2とを予め準備し、過給機2のコンプレッサ2bの入口側圧力と、過給機2のコンプレッサ2bの出口側圧力とから圧力比を算出し、且つ過給機2のコンプレッサ2bから加圧流動焼却炉1へ供給される燃焼用空気の流量と、過給機2のコンプレッサ2bから他の供給先へ供給される燃焼用空気の流量とから合計空気量を算出し、圧力比に対する合計空気量をコンプレッサ動作点Cとして決定し、圧力比に対するサージング安全ラインL1,S2上の空気量を比較用動作点C1,C2として算出し、コンプレッサ動作点Cから比較用動作点C1,C2を減算して減算値を求め、減算値が設定値を下回った場合には排ガスバイパス弁31及び/又は加圧空気弁28を開放制御し、よって燃焼用空気の流量や圧力の変動に基づくサージングの発生を適切に防止することができる。又、圧力比、合計空気量、第一サージング安全ラインL1、第二サージング安全ラインL2から排ガスバイパス弁31及び/又は加圧空気弁28の開度を自動的に制御してサージングの発生を防止するので、サージングの発生を防止するためのオペレータの常時監視を不要にすることができる。
【0042】
実施の形態例において、過給機2のコンプレッサ2bのサージング領域Aから第一安全率R1を介して離間する第一サージング安全ラインL1と、サージング領域Aから第二安全率R2を介して離間し且つ第一サージング安全ラインL1と異なる位置にある第二サージング安全ラインL2とを予め準備し、過給機2のコンプレッサ2bの入口側圧力と、過給機2のコンプレッサ2bの出口側圧力とから圧力比を算出し、且つ過給機2のコンプレッサ2bから加圧流動焼却炉1へ供給される燃焼用空気の流量と、過給機2のコンプレッサ2bから他の供給先へ供給される燃焼用空気の流量とから合計空気量を算出し、圧力比に対する合計空気量をコンプレッサ動作点Cとして決定し、圧力比に対する第一サージング安全ラインL1上の空気量を第一比較用動作点C1として算出し、圧力比に対する第二サージング安全ラインL2上の空気量を第二比較用動作点C2として算出し、コンプレッサ動作点Cから第一比較用動作点C1を減算して第一減算値を求め、第一減算値が設定値を下回った場合には加圧空気弁28を開放制御し、コンプレッサ動作点Cから第二比較用動作点C2を減算して第二減算値を求め、第二減算値が設定値を下回った場合には排ガスバイパス弁31を開放制御するので、第一サージング安全ラインL1を介して加圧空気弁28を開放制御すると共に、第二サージング安全ラインL2を介して排ガスバイパス弁31を開放制御し、燃焼用空気の流量や圧力の変動に基づくサージングの発生を好適に防止することができる。又、圧力比、合計空気量、第一サージング安全ラインL1、第二サージング安全ラインL2から排ガスバイパス弁31及び/又は加圧空気弁28の開度を自動的に制御してサージングの発生を防止するので、サージングの発生を防止するためのオペレータの常時監視を不要にすることができる。
【0043】
又、第一サージング安全ラインL1の第一安全率R1と、第二サージング安全ラインL2の第二安全率R2とを異なる安全率で設定することで、コンプレッサ動作点Cがサージング領域Aに近づくにつれて排ガスバイパス弁31及び加圧空気弁28を段階的に使用し、サージングの発生を好適に防止することができる。ここで図4、図5に示す如く第一サージング安全ラインL1を記録すると共に、第二サージング安全ラインL2を第一サージング安全ラインL1より更にサージング領域Aから離間する位置で記録する場合には、応答性の良い排ガスバイパス弁31を最初に使用し、サージング領域Aから離間させる作用が大きい加圧空気弁28を次に使用することにより、サージングの発生を極めて好適に防止することができる。更に第一サージング安全ラインL1及び第二サージング安全ラインL2は、過給機2と他の設備の組み合わせに応じて第一安全率R1及び/又は第二安全率R2を適宜変更し得るので、第一サージング安全ラインL1を第二サージング安全ラインL2に対してサージング領域Aから更に離間させる場合のように設定の自由度を高めることができる。
【0044】
実施の形態例において、第一圧力計23及び第二圧力計24で測定した圧力から圧力比を算出して弁開度演算部33に送る圧力指示調節計32を備えると、圧力比を適切に算出して加圧空気弁28及び/又は排ガスバイパス弁31を開放制御するので、燃焼用空気の流量や圧力の変動に基づくサージングの発生を好適に防止することができると共に、サージングの発生を防止するためのオペレータの常時監視を不要にすることができる。
【0045】
実施の形態例において、加圧空気弁28の弁開度演算部33は、加圧空気弁28を制御する制御信号として、実測された合計空気量が第一比較用動作点C1での合計空気量の値ならば開も閉もしない現状維持を出力し、実測された合計空気量が第一比較用動作点C1での合計空気量の値よりも小さい値ならば開の信号を出力し、実測された合計空気量が第一比較用動作点C1での合計空気量の値よりも大きい値ならば閉の信号を出力し、排ガスバイパス弁31の弁開度演算部33は、前記排ガスバイパス弁31を制御する制御信号として、実測された合計空気量が第二比較用動作点C2での合計空気量の値ならば開も閉もしない現状維持を出力し、実測された合計空気量が第二比較用動作点C2での合計空気量の値よりも小さい値ならば開の信号を出力し、実測された合計空気量が第二比較用動作点C2での合計空気量の値よりも大きい値ならば閉の信号を出力するので、燃焼用空気の流量や圧力の変動に基づくサージングの発生を好適に防止することができると共に、簡単な制御装置で自立して加圧空気弁28および排ガスバイパス弁31を制御することができ、初期コストもメンテナンス頻度も低減することができる。更に、加圧空気弁28の弁開度演算部33は、実測された合計空気量が第一比較用動作点C1での合計空気量の値からの偏差によって弁開度の変化速度を比例制御するように信号を出力し、排ガスバイパス弁31の弁開度演算部33は、実測された合計空気量が第二比較用動作点C2での合計空気量の値からの偏差によって弁開度の変化速度を比例制御するように信号を出力するので、燃焼用空気の流量や圧力の変動に基づくサージングの発生を好適に防止することができる。
【0046】
尚、本発明の加圧流動焼却炉の運転方法及び加圧流動焼却炉設備は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 加圧流動焼却炉
2 過給機
2b コンプレッサ
23 第一圧力計
24 第二圧力計
27 第一流量計
28 加圧空気弁
29 第二流量計
30 バイパス流路
31 排ガスバイパス弁
32 圧力指示調節計
33 弁開度演算部
A サージング領域
C コンプレッサ動作点
C1 第一比較用動作点
C2 第二比較用動作点
L1 第一サージング安全ライン
L2 第二サージング安全ライン
R1 第一安全率
R2 第二安全率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床を有する加圧流動焼却炉と、該加圧流動焼却炉で生じた排ガスが有するエネルギーにより燃焼用空気を圧送する過給機と、該過給機のコンプレッサから前記加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼用空気の流量を調整する加圧空気弁と、前記過給機のタービンを迂回してタービンの上流側から下流側へ排ガスを流すバイパス流路と、該バイパス流路に設置されて排ガスの流量を調整する排ガスバイパス弁とを備える加圧流動焼却炉の運転方法であって、
前記過給機のコンプレッサの入口側圧力と、過給機のコンプレッサの出口側圧力とから圧力比を算出し、且つ前記過給機のコンプレッサから前記加圧流動焼却炉へ供給される燃焼用空気の流量と、過給機のコンプレッサから前記加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼用空気の流量とから、もしくは前記過給機のコンプレッサ出口空気流量から合計空気量を算出し、
前記過給機のコンプレッサにサージングが発生する条件を前記圧力比と前記合計空気量との関係で示すサージング領域に対し、安全率を介して決定されるサージング安全ラインを予め準備し、
実測された前記入口側圧力と実測された前記出口側圧力から算出する実測された圧力比に対する実測された合計空気量をコンプレッサ動作点として決定し、前記実測された圧力比に対するサージング安全ライン上の合計空気量を比較用動作点として算出し、
前記コンプレッサ動作点から比較用動作点を減算して減算値を求め、該減算値が基準値を下回った場合には排ガスバイパス弁及び/又は加圧空気弁を開放制御することを特徴とする加圧流動焼却炉の運転方法。
【請求項2】
前記過給機のコンプレッサにサージングが発生する条件を前記圧力比と前記合計空気量との関係で示すサージング領域から第一安全率を介して離間する第一サージング安全ラインと、前記サージング領域から第二安全率を介して離間し且つ第一サージング安全ラインと異なる位置にある第二サージング安全ラインとを予め準備し、
前記過給機のコンプレッサの入口側圧力と、過給機のコンプレッサの出口側圧力とから実測された圧力比を算出し、且つ前記過給機のコンプレッサから加圧流動焼却炉へ供給される燃焼用空気の流量と、過給機のコンプレッサから他の供給先へ供給される燃焼用空気の流量とを実測しその合計値から、もしくは前記過給機のコンプレッサ出口空気流量の実測値から実測された合計空気量を算出し、
前記実測された圧力比に対する合計空気量をコンプレッサ動作点として決定し、前記実測された圧力比に対する第一サージング安全ライン上の空気量を第一比較用動作点として算出し、前記実測された圧力比に対する第二サージング安全ライン上の空気量を第二比較用動作点として算出し、
前記コンプレッサ動作点から第一比較用動作点を減算して第一減算値を求め、該第一減算値が負になる場合には加圧空気弁を開放制御し、
前記コンプレッサ動作点から第二比較用動作点を減算して第二減算値を求め、該第二減算値が負になる場合には排ガスバイパス弁を開放制御することを特徴とする請求項1に記載の加圧流動焼却炉の運転方法。
【請求項3】
前記第一安全率は前記第二安全率よりも小さい値であり、過給機のコンプレッサにサージングが発生する条件を前記圧力比と前記合計空気量との関係で示すサージング領域に、前記コンプレッサ動作点が接近すると、先ず排ガスバイパス弁を開放制御し、それでも接近する場合には更に加圧空気弁を開放制御することを特徴とする請求項2に記載の加圧流動焼却炉の運転方法。
【請求項4】
流動床を有する加圧流動焼却炉と、
該加圧流動焼却炉で生じた排ガスが有するエネルギーにより燃焼用空気を圧送する過給機と、
該過給機のコンプレッサの入口側圧力を測定する第一圧力計と、
前記過給機のコンプレッサの出口側圧力を測定する第二圧力計と、
前記過給機のコンプレッサから加圧流動焼却炉へ供給される燃焼用空気の流量を測定する第一流量計と、
前記過給機のコンプレッサから前記加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼用空気の流量を測定する第二流量計と、
前記過給機のコンプレッサから前記加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼用空気の流量を調整する加圧空気弁と、
前記過給機のタービンを迂回してタービンの上流側から下流側へ排ガスを流すバイパス流路と、
該バイパス流路に設置されて排ガスの流量を調整する排ガスバイパス弁と、
前記過給機のコンプレッサにサージングが発生する条件を前記コンプレッサの入口側圧力及びコンプレッサの出口側圧力とから算出する圧力比と前記第一流量計の測定値及び前記第二流量計の測定値から算出する合計空気量との関係で示されるサージング領域に対し、安全率を介して決定されるサージング安全ラインを予め記録した弁開度演算部とを備え、
該弁開度演算部は、第一圧力計及び第二圧力計から測定した実測された圧力比と、第一流量計及び第二流量計から測定した実測された合計空気量とによりコンプレッサ動作点を決定し、前記実測された圧力比に対するサージング安全ライン上の合計空気量を比較用動作点として算出し、前記コンプレッサ動作点から比較用動作点を減算して減算値を求め、該減算値が基準値を下回った場合には、排ガスバイパス弁及び/又は加圧空気弁を開放制御するように構成されたことを特徴とする加圧流動焼却炉設備。
【請求項5】
流動床を有する加圧流動焼却炉と、
該加圧流動焼却炉で生じた排ガスが有するエネルギーにより燃焼用空気を圧送する過給機と、
該過給機のコンプレッサの入口側圧力を測定する第一圧力計と、
前記過給機のコンプレッサの出口側圧力を測定する第二圧力計と、
前記過給機のコンプレッサから加圧流動焼却炉及び該加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼用空気の合計空気流量を測定するコンプレッサ出口空気流量計と、
前記過給機のコンプレッサから前記加圧流動焼却炉以外の供給先へ供給される燃焼用空気の流量を調整する加圧空気弁と、
前記過給機のタービンを迂回してタービンの上流側から下流側へ排ガスを流すバイパス流路と、
該バイパス流路に設置されて排ガスの流量を調整する排ガスバイパス弁と、
前記過給機のコンプレッサにサージングが発生する条件を前記コンプレッサの入口側圧力及びコンプレッサの出口側圧力とから算出する圧力比と前記過給機のコンプレッサ出口空気流量から算出する合計空気量との関係で示されるサージング領域に対し、安全率を介して決定されるサージング安全ラインを予め記録した弁開度演算部とを備え、
該弁開度演算部は、第一圧力計及び第二圧力計から測定した実測された圧力比と、コンプレッサ出口空気流量計から測定した実測された合計空気量とによりコンプレッサ動作点を決定し、前記実測された圧力比に対するサージング安全ライン上の合計空気量を比較用動作点として算出し、前記コンプレッサ動作点から比較用動作点を減算して減算値を求め、該減算値が基準値を下回った場合には、排ガスバイパス弁及び/又は加圧空気弁を開放制御するように構成されたことを特徴とする加圧流動焼却炉設備。
【請求項6】
弁開度演算部に、サージング領域から第一安全率を介して離間する第一サージング安全ラインと、前記サージング領域から第二安全率を介して離間し且つ第一サージング安全ラインと異なる位置にある第二サージング安全ラインとを予め記録し、
前記弁開度演算部は、第一圧力計及び第二圧力計から測定した実測された圧力比と、第一流量計及び第二流量計、もしくはコンプレッサ出口空気流量計で測定した実測された合計空気量とによりコンプレッサ動作点を決定し、前記実測された圧力比に対する第一サージング安全ライン上の空気量を第一比較用動作点として算出すると共に、前記実測された圧力比に対する第二サージング安全ライン上の空気量を第二比較用動作点として算出し、前記コンプレッサ動作点から第一比較用動作点を減算して第一減算値を求め、該第一減算値が負になる場合には加圧空気弁を開放制御し、前記コンプレッサ動作点から第二比較用動作点を減算して第二減算値を求め、該第二減算値が負になる場合には排ガスバイパス弁を開放制御するように構成されたことを特徴とする請求項4又は5に記載の加圧流動焼却炉設備。
【請求項7】
前記加圧空気弁の弁開度演算部は、前記加圧空気弁を制御する制御信号として、前記実測された合計空気量が前記第一比較用動作点での合計空気量の値ならば開も閉もしない現状維持を出力し、前記実測された合計空気量が前記第一比較用動作点での合計空気量の値よりも小さい値ならば開の信号を出力し、前記実測された合計空気量が前記第一比較用動作点での合計空気量の値よりも大きい値ならば閉の信号を出力し、前記排ガスバイパス弁の弁開度演算部は、前記排ガスバイパス弁を制御する制御信号として、前記実測された合計空気量が前記第二比較用動作点での合計空気量の値ならば開も閉もしない現状維持を出力し、前記実測された合計空気量が前記第二比較用動作点での合計空気量の値よりも小さい値ならば開の信号を出力し、前記実測された合計空気量が前記第二比較用動作点での合計空気量の値よりも大きい値ならば閉の信号を出力することを特徴とする請求項6に記載の加圧流動焼却炉設備。
【請求項8】
前記加圧空気弁の弁開度演算部は、前記実測された合計空気量が前記第一比較用動作点での合計空気量の値からの偏差によって弁開度の変化速度を比例制御するように信号を出力し、前記排ガスバイパス弁の弁開度演算部は、前記実測された合計空気量が前記第二比較用動作点での合計空気量の値からの偏差によって弁開度の変化速度を比例制御するように信号を出力することを特徴とする請求項6又は7に記載の加圧流動焼却炉設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−137576(P2011−137576A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296791(P2009−296791)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人日本下水道協会、「第46回下水道研究発表会講演集 平成21年度」、表紙、目次、奥付、及び第778〜780ページの「過給式流動炉の実証運転(その3)」のコピー、発行日 平成21年6月30日
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】