説明

加圧炉のブリーダーバルブ

排気導管を介した加圧炉の内部から周囲雰囲気へのガス流出を制御するシャフト炉ブリーダーバルブが提案されている。ブリーダーバルブは、排気導管に関連付けられたバルブシートと、少なくとも密封面に近接した凸面を備える中央閉鎖面及びバルブシートと協働する周辺密封面を有する可動閉鎖部材とを備える。バルブは、閉鎖部材に接続され、バルブシート上の閉位置とバルブシートから離れている開位置との間で閉鎖部材を移動させる作動機構部をさらに有する。発明によれば、閉鎖部材は周辺密封面の周囲に反曲した撓み部を備え、反曲した撓み部は、30°から70°までの範囲の角度で凸面に対して傾斜し、バルブシートと閉鎖部材との間を通過するガス流出に閉鎖部材の初期開放運動と反対である速度成分を与える撓み面を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略、シャフト炉で使用されるべきブリーダーバルブ、特に、高炉において、加圧シャフト炉の内部から周囲雰囲気へのガス流出を制御するブリーダーバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
高炉は、通常、炉設計に依存して、大気より1〜3バール高い範囲の運転圧力で運転する。圧力逃がしバルブ又は防爆バルブとも呼ばれるブリーダーバルブは、一般に、高炉のスロート部に設置され、排気導管を介する加圧炉の内部から周囲雰囲気へのガス流出を制御する。ブリーダーバルブは、炉内の圧力が動作圧力より高いある許容値を超える場合に、減圧を可能にする。ブリーダーバルブは、高炉が低速で運転しているときに高炉を換気するため利用されるシャットダウン排気装置として使用されることもある。
【0003】
例えば、US 4 158 367に開示されているようなブリーダーバブルは、一般に、排気導管に関連付けられたバルブシートと、バルブシートと協働する周辺密封面を有する可動閉鎖部材と、閉鎖部材に接続され、バルブシート上の閉位置とバルブシートから離れている開位置との間で閉鎖部材を移動させる作動機構部とを備える。正常動作中、炉スロート圧力は連続的に監視され、圧力が許容値を超える場合に、ブリーダーバルブは、ブリーダーバルブの作動機構部によって自動化されかつ制御された形で開かれる。運転安全性を確保し、かつ、例えば、作動機構部の故障の場合に、臨界圧力及び爆発の危険性を回避するために、ブリーダーバルブは、典型的に、安全弁として設計されている。このため、作動機構部は、バルブシートに対して閉鎖部材を付勢する弾性付勢手段を有する安全装置が付加的に装備されている。安全装置は、炉内の圧力が許容圧力を超えるときに、作動機構部の動作なしに、閉鎖部材の安全な開放を可能にさせる。上記の制御された開放手順の失敗の場合に、ブリーダーバルブは、圧力が付勢手段の弾性力に対抗して閉鎖部材に加える引き上げ力だけによって開く。
【0004】
US 4 158 367によるブリーダーバルブでは、閉鎖部材はほぼ凹状の中央閉鎖面を有する。しかし、近年では、ほぼ凸状の中央閉鎖面、例えば、US 3 601 357に開示されているように、円錐状又は球状のキャップ形状を伴う閉鎖部材を使用することが好まれている。ほぼ凸状の閉鎖面は、バルブの閉鎖に関して凹状の面より空気力学的に有利である。実際には、US 4 158 367に示されているような凹状の閉鎖面と比較すると、凸状の閉鎖面は、バルブの閉鎖中に受ける抵抗が低減する。明らかであるが、ブリーダーバルブが開放されると、ブリーダーバルブの問題のない、かつ、迅速な閉鎖が過剰な圧力損失と炉の生産工程に有害な結果をもたらすこととを避けるために要求される。
【0005】
安全上の理由から、ブリーダーバルブの安全開放中に、所与の減圧が所与の時間に達成されるべきである。達成可能な減圧は明らかにガススループットに依存する。所与のバルブ径に対し、ガススループットは、とりわけ、開放高さ、すなわち、安全開放中の閉鎖部材とバルブシートとの間の距離に依存する。開放高さは、流出する炉ガスによって引き起こされる引き上げ力と弾性付勢手段によって生成される閉じ力との間の力の釣り合いによって決定される。それらの空気力学的形状化に起因して、凸状閉鎖面付きの公知の閉鎖部材は、閉鎖が円滑化されている点で好ましいにもかかわらず、制限された引き上げ力だけが閉鎖部材に加えられることを可能にさせ、したがって、所与のバルブ径に対して制限された減圧だけを可能にさせる。
【発明の目的】
【0006】
したがって、本発明の目的は、安全開放中に増加した引き上げ力が閉鎖部材に実現されるように構成されたシャフト炉ブリーダーバルブを提供することである。
【発明の開示】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、排気導管に関連付けられたバルブシートと、中央閉鎖面及びバルブシートと協働する周辺密封面を有する可動閉鎖部材とを備え、排気導管を介した加圧炉の内部から周囲雰囲気へのガス流出を制御するシャフト炉ブリーダーバルブを提案する。ほぼ凸状又は完全に凸状でもよい中央閉鎖面が少なくとも密封面に近接した凸面を備えることに注意を要する。作動機構部が閉鎖部材に接続され、バルブシート上の閉位置とバルブシートから離れている開位置との間で閉鎖部材を移動させる。発明によれば、閉鎖部材は周辺密封面の周囲に反曲した撓み部を備え、反曲した撓み部は、30°から70°までの範囲の角度で閉鎖面の外側凸面に対して傾斜した撓み面を備える。それによって、撓み部は、バルブシートと閉鎖部材との間(すなわち、小さいアパーチャ)を通過する初期的なガス流出に、特に小さいアパーチャでガススループットを落とすことなく、閉鎖部材の初期開放運動と逆向きの実質的な速度成分を与える。
【0008】
反曲した撓み部により、増加した引き上げ力は、所与のバルブ径に対し、排気導管から閉鎖部材に沿って流出するガスによって閉鎖部材に伝達される。したがって、増加したガススループットが、(典型的に400と1000mmの間にある)バルブ径を増大させる必要なく、安全開放中に実現され得る。換言すると、閉鎖部材に接する反曲した撓み部を備えたブリーダーバルブは、同じ径を有する従来技術のブリーダーバルブより大きな減圧を実現する。必要に応じて、本発明によるブリーダーバルブは径を縮小させることが可能であり、すなわち、より小型に構築することが可能であり、それにもかかわらず従来技術の装置より大きな減圧、又は、少なくとも同一の減圧を保証することが可能である。反曲した撓み部は、少なくとも部分的に凸状又はほぼ凸状の中央閉鎖面付きの閉鎖部材の円滑化された閉鎖の性能に顕著な影響を与えないことがさらに明らかである。当然のことながら、30°〜70°、好ましくは、40°〜60°の範囲の角度で閉鎖面の外側凸状部分に対して傾斜した撓み面は、引き上げ力及びガススループットの両方に関して最適な結果を達成する。
【0009】
したがって、増加した引き上げ力を実現する好ましい実施形態では、反曲した撓み部は、40°〜60°の範囲の角度によって、ほぼ凸状の中央閉鎖面に対して、又は、少なくとも密封面に近接した凸面に対して傾斜した撓み面を備える。ガス流に乱流を引き起こす急激な表面移行を回避するため、反曲した撓み部は、好ましくは、撓み面と閉鎖面の凸状部分との間に配置され、閉位置において実質的に水平である移行面を備える。
【0010】
所与の開放高さに対し増加した引き上げ力及び増加したガススループットを実現する好ましい実施形態では、閉鎖面の凸状部分は、120°〜160°の範囲の挟角をもつ実質的に円錐状である。後者の実施形態では、さらに好ましくは、周辺密封面が実質的に円錐状の閉鎖面から(例えば、2mmまでの)小さい突起を形成するハードフェーシング堆積物で作られ、バルブシートが周辺密封面と協働する円錐台シート面を備える。密封面は、実質的に円錐状の閉鎖面の挟角の半分によって排気導管の中心軸に対して傾斜している。それによって、確実な金属と金属のシールが実現され得る。代替的に、バルブシートが周辺密封面と協働する円錐台シート面を備えるとき、周辺密封面は実質的に円錐状の閉鎖面と同一平面でもよい。より良好なマッチング許容差を要求するにもかかわらず、本実施形態は、肉盛溶接及び引き続く研削を必要とすることなく、円錐状の金属と金属のシールを提供できる。さらに本実施形態では、密封面は、実質的に円錐状の閉鎖面の挟角の半分で排気導管の中心軸に対して傾斜している。
【0011】
必須ではないが、反曲した撓み部は、引き上げ力を最大化するために周辺密封面の周囲全体で閉鎖部材と接している方が有利である。
【0012】
好ましくは、バルブシートは閉鎖部材の周辺密封面と協働するシート面を備え、バルブシートは、シート面の内部、好ましくは、最も内部に埋め込まれたソフトシールを備える。内部に配置されたシート面と、最も内部の許される場所にあるソフトシールとによって、シール上の圧力印加面がブリーダーバルブで最小化される。
【0013】
逃がしバルブ設計を実現するために、作動機構部は、好ましくは、加圧炉の内部の圧力が許容値を超えるときに、作動機構部の動作なしに、閉鎖部材の安全開放を可能にするように、閉鎖部材を閉位置においてバルブシートに押し当てる弾性付勢手段を有する安全装置を備える。
【0014】
有利かつ小型の実施形態では、作動機構部は、バルブシート上の閉位置とバルブシートから離れている開位置との間で閉鎖部材を回動させる第1のシャフトの周りに回動可能であるサポートアームと、第2のシャフトの周りに回動可能であり、サポートアームに回動式に接続された長いアーム及びサポートアームを回動させるアクチュエータに回動式に接続された短いアームを有するレバーとを備える。本明細書で、長いアームは伸縮自在に構成され、長いアームを伸長に対抗して付勢するばね付勢手段を有し、それによって、閉鎖部材を閉位置においてバルブシートに弾性的に押し当てる。
【0015】
発明によるブリーダーバルブは、シャフト炉、特に、高炉に装備するため特に適していることが理解される。
【0016】
本発明のさらなる詳細及び利点は、添付図面に関連した非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図面に関する詳細な説明
図1は、従来どおりに高炉のような加圧シャフト炉のスロート部(図示せず)に設けられた全体的に参照番号10によって特定されているブリーダーバルブを示している。ブリーダーバルブ10は、閉鎖部材12と、400〜1000mmの典型的な内径を有し、炉スロート部と連通する排気導管16に同軸上に搭載された静止バルブシート14とを備える。ブリーダーバルブ10は、全体的に参照番号18によって特定され、(図1中、実線によって示されている)閉位置と(図1中、破線によって示されている)開位置との間で閉鎖部材12を移動させる作動機構部をさらに備える。
【0018】
作動機構部18は、閉鎖部材12が玉継手タイプの継手を用いて第1の端部に搭載されているサポートアーム20を備える。サポートアーム20の第2の端部は、シャフト23を用いて静止フレーム24に回動式に接続され、開位置と閉位置との間で閉鎖部材12を回動させる。作動機構部18は、位置25でフレーム24に回動式に接続され、アクチュエータのプランジャ28がベントレバー30に、より詳細には、位置31でベントレバー30の短いレバーアーム32に回動式に接続されているアクチュエータ26、例えば、油圧シリンダ又は空気圧シリンダをさらに備える。ベントレバー30は、ベントレバーの短いレバーアーム32と長いレバーアーム34との間の湾曲領域でシャフト33を用いて静止フレーム24に回動式に接続されている。レバー30の長いレバーアーム34は接続用ロッド36を介してサポートアーム20に接続されている。図1に示されているように、位置37における接続用ロッド36のサポートアーム20への接続及び位置39における接続用ロッド36のレバー30への接続の両方は回動可能である。すべての回動可能な接続23、25、31、33、37、39は図1の面に垂直である平行な回転軸を有する。
【0019】
作動機構部18の上記の構造は、原理的に知られ、US 4 158 367により詳細に記載されている。作動機構部18の動作に関する詳細について、また文献の後半(特に、US 4 158 367における図9及び10の説明)を引用する。特に当然のことながら、正常運転中に、作動機構部は、閉鎖部材12を排気導管16から流出するガスの経路から完全に外れた位置に、すなわち、静止バルブシート14から離れている位置に回動させることにより、ブリーダーバルブ10が開くことを可能にさせる。
【0020】
図2は閉位置におけるブリーダーバルブ10と作動機構部18の一部分とを非常に概略的に示している。図2は、作動機構部18の一部分である安全装置40の構造をさらに示している。安全装置40は、閉鎖部材12をバルブシート14に弾性的に押し当てる弾性付勢手段を有する。弾性付勢手段は、ベントレバー30の長いレバーアーム34のばね付勢伸縮構造によって形成されている。このために、長いアーム34は伸縮自在に構成され、ピストンロッド42、及び、ピストンロッド42が相対的に滑動自在に取り付けられた円筒ガイド44を備える。圧縮ばね46は、ピストンロッド42をガイド44に関して内部へばね付勢するように、すなわち、長いレバーアーム34を収縮させるようにガイド44の内部に配置されている。閉位置における作動機構部18の連結構造によって、図2から明らかであるように、圧縮ばね46は閉鎖部材12をバルブシート14の方へばね付勢する。圧縮ばね46は、それ自体で知られているどのような適当な手段によって形成されてもよく、例えば、ガイド44の内部に配置された複数個のいわゆる「皿ワッシャー」によって形成されてもよい。
【0021】
図1及び図2を参照すると、安全装置40は、排気導管16内の圧力、すなわち、炉スロート部における圧力が許容値(設定圧)を超える場合に、アクチュエータ26の動作なしに閉鎖部材12の安全開放を可能にすることがわかる。このような設定圧が、安全装置40によって閉鎖部材12に引き起こされるばね付勢力を上回る力を閉鎖部材12に与えるとき、閉鎖部材12はバルブシート14を持ち上げ、安全開放を生じる。この安全開放が実現される理由は、サポートアーム20が回動し、圧縮ばね46の作用に対抗して、接続用ロッド36を介して長いレバーアーム34の伸縮自在の伸長を引き起こし得るからである。そのため、アクチュエータ26の動作は安全開放のため必要とされない。したがって、圧縮ばね46は、(機構部18に起因する適切なレバー比を考慮して)設定圧、すなわち、閉鎖部材12における最大許容圧に対応するバイアスまで予張力が加えられる。当業者は、作動機構部18がブリーダーバルブ10の閉位置において自動的にロックするように設計されていることがわかる。実際に、図2に示されている閉位置から、ブリーダーバルブ10は、長いレバーアーム34の伸長によって、すなわち、圧縮ばね46の作用に対抗することによってのみ開放可能である。よって、アクチュエータ26は、バルブシート14上の閉鎖部材12の密封係合を維持するために動作する必要がない。最大許容圧を上回らない限り、ブリーダーバルブ10は閉成状態を保つ。安全装置40は必ずしも上述された構造を有しなくてもよいことが理解される。安全開放が保証される限り、その他の構造、例えば、US 4 158 367及びUS 3 601 357に開示されている構造が可能である。
【0022】
図3は、図1のブリーダーバルブ10に装備される新規な閉鎖部材12’を示している。図3は、新規な閉鎖部材12’と協働するように設計された修正バルブシート14’をさらに示している。閉鎖部材12’は、バルブ10が閉成されているときに、排気導管16の内側の方を向く下方中央閉鎖面52付きの中央部50を有する。図3から明らかであるように、中央閉鎖面52はほぼ凸状の形状を有する。中央閉鎖面は完全に凸形でなくてもよく、例えば、中央閉鎖面の中央部が平坦でもよく、又は、凹状でもよいが、中央閉鎖面52は、少なくとも(後述される)密封面が設けられている中央閉鎖面の周辺に近接している外側部が凸状であるべきである。実際に、中央閉鎖面52は、流出する炉ガスによって引き起こされる抵抗力に打ち勝つために必要な比較的小さい力を用いてバルブシート14’へ向かう閉鎖部材12’の急速な移動を可能にすることにより、(例えば、作動機構部18又は手動による)バルブ10の閉鎖を円滑化し加速するように設計されている。換言すると、中央部50における中央閉鎖面52は、バルブ10の閉鎖運動中にガスの中を通る素早い運動に対し最小限の抵抗を受ける空気力学的ノーズ部の形で設計されている。したがって、中央部50の下方面は完全に凸状でなくてもよいことが理解される。「ほぼ凸状」は、上記の空気力学的有利性を保証するあらゆる形状を網羅することが意図されるので、中央閉鎖面52の円錐形状、球状キャップ形状、又は、尖頂型形状のような種々の可能な形状を含む。
【0023】
図3に示されている実施形態では、中央閉鎖面52は、中心に丸みを帯びた先端が付いている実質的に円錐状である。ディスク形状の閉鎖部材12’は回転体の形状を有すること、すなわち、閉鎖部材12’及び中央閉鎖面52が中心軸Aに関する回転対称性を示すことが理解される。ほぼ凸状の中央閉鎖面52が倣って成形された直円錐の挟角αは、比較的大きい角度、すなわち、120°〜160°の範囲、好ましくは、130°〜150°の範囲で選択される。
【0024】
図3に示されているように、閉鎖部材12’は、閉鎖部材12’の周囲外側部56の下方側に位置し、バルブシート14’のシート面58と協働する周辺密封面54をさらに備える。周辺密封面54は、別個の挿入物によって形成されてもよく、又は、閉鎖部材12’と一体的に形成されてもよく、超硬合金のような適当な材料で作られている。この場合、周辺密封面54は、中央閉鎖面52と同一平面であり、すなわち、同じ幾何学的な表面内の高さである。
【0025】
さらなる実施形態では、ハードフェーシング堆積物が密封面54を形成する。後者の場合、ハードフェーシング堆積物は、閉鎖部材12’の円錐状主面から小さい突起を形成し、小さい突起は数10分の1ミリメートルから最大で数ミリメートルまで突起することがある。十分な厚さ(例えば、5mm)のハードフェーシング堆積物が、この目的のため閉鎖部材12’に設けられた適切な凹部に肉盛溶接によって生成され得る。ハードフェーシング堆積物は、大きい半径(例えば、500〜2000mm)の円形断面、すなわち、円弧状外形をハードフェーシング堆積物に与えるように研削によって成形されている。付加的なソフトシールの失敗又は不在の場合(後述されている、図4を参照のこと)、このような円弧状外形は、密封面54がシート面58上に載るとき、確実な金属と金属の接合を提供する。
【0026】
環状密封面54は、中央閉鎖面52を画定する円錐の挟角αの半分だけ(ブリーダーバルブ10が閉成しているときに軸Aと一致する)鉛直に対し傾斜している。図3においてさらに分かるように、バルブシート14’は、バルブシート14’、例えば、排気導管16に取り付ける環状シートフランジ60を備える。
【0027】
図4は、バルブシート14’、特に、より詳細にシート面58を示している。当然のことながら、環状シート面58は、周辺密封面54に関して接合された形で、それゆえ、中央閉鎖面52を画定する同じ挟角αを有する円錐の錐台の表面に倣って成形されている。したがって、シート面58は、鉛直(又は、ブリーダーバルブ10が閉じられているときに軸A)に関して、60°〜80°の範囲、好ましくは、65°〜75°の範囲にあるα/2と等しい角度βで傾斜している。さらに図4に示されているように、バルブシート14’は、付加的なソフトシール62、例えば、耐熱性接合材料で作られ、蟻溝64に配置された環状Oリングシールを備える。ソフトシール62は、シート面58の最も内部に、すなわち、できる限り最も内側の半径方向の場所に埋め込まれていることがわかる。さらに、シート面58は、図4から明らかであるように、シートフランジ60の内側に配置されている。それによって、シート面58、特に、ソフトシール62における(排気導管16の内部の)圧力印加面は最小化される。図4は、バルブシート14’の丸みを帯びた内側エッジ66をさらに示している。
【0028】
図3にさらに示され、かつ、図5により詳細に示されているように、新規な閉鎖部材12’は、排気導管16(図1を参照)から出るガスの初期的な流れ方向と反対に後へ折れ曲げられ、又は、下方へ湾曲させられている反曲した撓み部70を備える。反曲した撓み部70は、密封面54の周囲に、すなわち、閉鎖部材12’の外側部56において密封面54の半径方向外側に配置されている。換言すると、外側部56の一部分が周辺密封面54から半径方向下方へ突出し、反曲した撓み部70を形成する。当然のことながら、反曲した撓み部70は、閉鎖部材12’の初期開放運動と反対向きの速度成分を、バルブシート14’と閉鎖部材12’との間を通過する(すなわち、安全開放中に)ガス流出に与えるように成形されている。後者の態様は後述の図6の説明からより明らかになる。図5においてわかるように、反曲した撓み部70は、内側傾斜移行面72及び外側傾斜撓み面74の2つの主な面を備える。閉位置において軸Aと実質的に垂直に、すなわち、水平になるように、中央閉鎖面52(及び密封面54)に対して傾斜している移行面72は、閉鎖表面52(及び密封面54)と撓み面74との間の比較的滑らかな表面移行に寄与する。反曲した撓み部70の撓み面74は、30°〜70°、好ましくは、40°〜60°の範囲の角度γで閉鎖面52に対して傾斜している。好ましいが、反曲した撓み部70は、必ずしも周囲全体で閉鎖部材12’と隣接しなくてもよいことが理解される。図5においてさらにわかるように、外側部56は、反曲した撓み部70の周辺に隣接した丸みを帯びた外側エッジ76をさらに備える。その上、面54、72、74の間の移行は丸みがあり、すなわち、急峻なエッジがない。
【0029】
図6は新規な閉鎖部材12’上の反曲した撓み部70の機能を示している。図6は、安全開放中に新規な閉鎖部材12’とバルブシート14’との間を通過するガス流出の流線シミュレーションを表している。安全開放中に、77で示されているバルブシート14’より上方の閉鎖部材12’の開放高さ(持ち上げ高さ)は、正常時に数センチメートルの範囲に入る。図6の流線78によって示されているように、矢印79によって示されたガス流出は、最初に排気導管16と平行に上方へ向けられ、その後、側方に逸れ、部分的に下方へ向けられた湾曲した経路に沿っている。当然のことながら、このガス流出は、閉鎖部材12’の初期開放運動と反対向き、したがって、排気導管16中の初期的なガス流方向と反対向きの速度成分をガス流出79に与える反曲した撓み部70によって実現されている。それによって、同じ径を有する従来技術のブリーダーバルブから知られている閉鎖部材と比較して、矢印80によって示された増加した総引き上げ力がガス流出によって閉鎖部材12’に加えられる。よって、(圧縮ばね46によって加えられた所与のばね付勢力に対し)増加した開放高さ77が実現される。増加した開放高さ77は、ガススループットを増加させ、その結果、安全開放中に長時間に亘って減圧を増加させる。さらに、長時間に亘る所与の所要減圧に対し、閉鎖部材12’、したがって、バルブシート14’は、従来技術のブリーダーバルブより径が縮小される。
【0030】
図6に関して、流線78は、所与の圧力における提示された閉鎖部材12’及びバルブシート14’の数値的な有限要素法計算によって得られたことに注意を要する。(面部72、撓み面74及び丸みを帯びた外側エッジ76付きの)反曲した撓み部70を含む閉鎖部材12’の外側部56、ならびに、例えば、角度β及び丸みを帯びたエッジ66付きのバルブシート14’は、ガス流出79中の乱流を最小限に抑えるように成形されている。さらに当然のことながら、それぞれの角度α、β、γは、所与の開放高さ77で実現可能なスループットを最大化するようにさらに選択される(図8を参照)。
【0031】
反曲した撓み部70付きの新規な閉鎖部材12’のさらなる利点は図7から明らかになる。図7は、新規な閉鎖部材(図3〜6の12’を参照)に加えられた引き上げ力Fを、同一の密封径をもつが、しかし、反曲した撓み部70がない従来技術の閉鎖部材(図1〜2の12を参照)に加えられた引き上げ力と比較するための安全開放高さh(図6の77を参照)の関数としての引き上げ力F(図6の80を参照)のグラフである。新規な閉鎖部材12’についてプロットされた曲線は三角形で印が付けられ、既知の閉鎖部材12についてプロットされた曲線は円形で印が付けられている。図7からは、新規な閉鎖部材12’によれば、得られた引き上げ力F(図6の80を参照)は、公知の閉鎖部材12より開放高さhの非常に長い区間に亘る開放高さh(図6の77を参照)の増加関数であることがわかる。安全装置40によって引き起こされるばね付勢力は開放高さhに実質的に比例するので、安全開放中に実現される開放高さh(図6の77)は、(所与の圧縮ばね46に関して)新規な閉鎖部材12’の場合に著しく大きい。
【0032】
図8は、新規な閉鎖部材(図3〜6の12’を参照)を用いて実現される流速Qを同一の密封径をもつが、しかし、撓み面がない公知の閉鎖部材(図1〜2の12を参照)を用いて実現される流速と比較するための安全開放高さhの関数としての流速Q(ガススループット)のグラフである。新規な閉鎖部材12’についてプロットされた曲線は三角形で印が付けられ、既知の閉鎖部材12についてプロットされた曲線は四角で印が付けられている。安全開放中に開放高さhを増加することによって得られる流速Qの増加に加えて、図8から明らかであることは、増加した挟角α(及びシート角β)によって、ならびに、新規な閉鎖部材12’及びブリーダーバルブ14’の優れた等エントロピー効率によって、流速の付加的な増加が任意の所与の同一の開放高さhに対し実現されることである。当然のことながら、さらなる増加はバルブ径の増加によって実現され得る。図7および図8の両方のグラフは、有限要素法計算によって数値的に得られたことに注意を要する。反曲した撓み部70の最適設計は中央閉鎖面52自体の設計に依存することが理解される。したがって、異なる設計の凸状中央閉鎖面(例えば、球状カップの形)を使用するとき、異なる設計の反曲した撓み面が必要とされることがある。
【0033】
最後に、既存のブリーダーバルブは、ブリーダーバルブ10の他の既存の部品の変更又は交換を要求せずに、新規な閉鎖部材12’及び対応するバルブシート14’を使って比較的簡単に改良され得ることになお注意を要する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】閉位置(実線)と開位置(破線)との間でバルブを移動させる作動機構部を示すブリーダーバルブの概略側面図である。
【図2】図1に示された作動機構部の一部分である安全装置を説明する部分概略図である。
【図3】発明によるブリーダーバルブのバルブシート及び閉鎖部材を示す部分側面図と部分断面図とからなる図である。
【図4】図3によるバルブシートの分離された断面図である。
【図5】図3による閉鎖部材の反曲した撓み面を示す分離された断面図である。
【図6】発明によるブリーダーバルブを示し、安全開放中のガス流の流線を説明する部分断面図である。
【図7】発明による閉鎖部材に加えられる引き上げ力と従来技術の閉鎖部材に加えられる引き上げ力とを比較するための安全開放高さの関数としての引き上げ力のグラフである。
【図8】所与の開放高さにおける発明による閉鎖部材を用いて達成される流速と従来技術の閉鎖部材を用いて達成される流速とを比較するための安全開放高さの関数としての流速のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気導管(16)に連携されたバルブシート(14’)と、
中央閉鎖面、及び、前記バルブシート(14’)と協働する周辺密封面(54)を有し、前記閉鎖面が少なくとも前記密封面(54)に近接した凸面(52)を備える、可動閉鎖部材(12’)と、
前記閉鎖部材(12’)に接続され、前記バルブシート(14’)上の閉位置と前記バルブシート(14’)から離れている開位置との間で前記閉鎖部材(12’)を移動させる作動機構部(18)と、
を備え、前記排気導管(16)を介した加圧炉の内部から周囲雰囲気へのガス流出を制御するブリーダーバルブ(10)であって、
前記閉鎖部材(12’)が前記周辺密閉面(54)の周囲に反曲した撓み部(70)を備え、前記反曲した撓み部(70)が、30°〜70°の範囲の角度(γ)で前記凸面(52)に対して傾斜した撓み面(74)を備え、前記バルブシート(14’)と前記閉鎖部材(12’)との間を通過するガス流出に前記閉鎖部材(12’)の初期開放運動と逆向きの速度成分を与えることを特徴とする、ブリーダーバルブ。
【請求項2】
前記反曲した撓み部(70)が40°〜60°の範囲の角度(γ)で前記凸面(52)に対して傾斜した撓み面(74)を備える、請求項1に記載のブリーダーバルブ。
【請求項3】
前記反曲した撓み部(70)が、前記撓み面(74)と前記凸面(52)との間に配置され、閉位置において水平である移行面(72)を備える、請求項2に記載のブリーダーバルブ。
【請求項4】
前記凸面(52)が、120°〜160°の範囲の挟角(α)をもつ円錐状である、請求項3に記載のブリーダーバルブ。
【請求項5】
前記周辺密封面(54)が前記円錐状の面(52)から突起を形成するハードフェーシング堆積物で作られ、前記バルブシート(14’)が前記周辺密封面(54)と協働し前記円錐状の面(52)の挟角(α)の半分で前記排気導管の中心軸(A)に対して傾斜している円錐台シート面(58)を備える、請求項4に記載のブリーダーバルブ。
【請求項6】
前記周辺密封面(54)が前記円錐状の面(52)と同一平面であり、前記バルブシート(14’)が前記周辺密封面(54)と協働し前記円錐状の面(52)の挟角(α)の半分で前記排気導管の中心軸に対して傾斜している円錐台シート面(58)を備える、請求項4に記載のブリーダーバルブ。
【請求項7】
前記反曲した撓み部(70)が前記周辺密封面(54)の周囲全体で前記閉鎖部材(12)と接している、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブリーダーバルブ。
【請求項8】
前記バルブシート(14’)が前記閉鎖部材(12’)の前記周辺密封面(54)と協働するシート面(58)を備え、前記バルブシート(14’)が前記シート面(58)の内部に埋め込まれたソフトシール(62)を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブリーダーバルブ。
【請求項9】
前記閉鎖部材(12’)が400〜1000mmの内径を有する導管を密封する大きさにされている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブリーダーバルブ。
【請求項10】
前記作動機構部(18)が、前記加圧炉の内部の圧力が許容値を超えるときに、前記閉鎖部材(12’)を前記閉位置において前記バルブシート(14’)に押し当て、前記閉鎖部材(12’)の安全開放を可能にする弾性付勢手段を有する安全装置(40)を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブリーダーバルブ。
【請求項11】
前記作動機構部(18)が、
前記バルブシート(14’)上の閉位置と前記バルブシートから離れている開位置との間で前記閉鎖部材(12’)を回動させる第1のシャフト(23)の周りに回動可能であるサポートアーム(20)と、
第2のシャフト(33)の周りに回動可能であり、前記サポートアーム(20)に回動式に接続された長いアーム(34)及び前記サポートアーム(20)を回動させるアクチュエータ(26)に回動式に接続された短いアーム(32)を有するレバー(30)と、
を備え、
前記長いアーム(34)が伸縮自在に構成され、前記長いアーム(34)を伸長に対抗して付勢するばね付勢手段(42、44、46)を有し、それによって、前記閉鎖部材(12’)を前記閉位置において前記バルブシート(14’)に弾性的に押し当てる、
請求項10に記載のブリーダーバルブ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の1個以上のブリーダーバルブを備える、シャフト炉、特に、高炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−526181(P2009−526181A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553709(P2008−553709)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050795
【国際公開番号】WO2007/090747
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(500173376)ポール ヴルス エス.エイ. (44)
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH S.A.
【Fターム(参考)】