説明

加圧部材、定着装置及び画像形成装置

【課題】基体上に設けられた弾性層上にフッ素樹脂が被覆される場合であっても、高耐久性の加圧部材を提供する。
【解決手段】基体と、該基体上に設けられた弾性層と、該弾性層上に設けられ、カーボンとフッ素樹脂とを含んで構成される表面層とを少なくとも有し、該表面層のフッ素樹脂が、下記一般式(1)で示される構造を持つフッ素樹脂である電子写真の定着に用いられる加圧部材。


(式(1)中、RはCF、C、又はCを表す。xは0.045以上0.12以下の数字を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧部材、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、レーザープリンター、ファクシミリなどの画像形成装置には、未定着トナー像が形成された記録材を定着装置において熱と圧力によりトナー像を定着させる方式が採られている。
従来、定着装置は、円筒上の芯金の内部に加熱源を備え、芯金上に弾性層を備え、表面に離型層を形成した定着ローラと、この定着ローラに対向配置され少なくとも表面に離型層を形成した加圧ローラとを用い、未定着トナー像が形成された記録材を挟まれ搬送させることで熱と圧力を与え、未定着トナー像を定着させるローラ加圧方式(ローラニップ方式)が広く使用されている。
また、画像形成装置のカラー化、高速化、小型化の進展に伴い、従来のローラ加圧方式における加圧ローラの代わりにエンドレスベルトを用い、エンドレスベルト内部より圧力パッドを用いて加圧することで加圧領域を形成するベルト加圧方式(ベルトニップ方式)が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
電子写真における静電気的トラブルを解消させるためには、加圧部材の表面層を導電化させることが好ましく、このために、表面層の材料であるPFAにカーボンを添加させる処方が一般的である(特許文献2参照)。
これらの方式において、上記したローラ加圧方式に用いられる加圧部材は、高画質、耐熱性の観点から、耐熱性の弾性層と、弾性層上に体積固有抵抗が1013Ω・cm以下のPFAからなり、厚さ0.1mm以下のフッ素樹脂スリーブを被覆し、その内面がエキシマレーザーでエッチング処理されたローラが提案されている。(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3298354公報
【特許文献2】特開平10−186920号公報
【特許文献3】特開平8−238687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、基体上に設けられた弾性層上にフッ素樹脂が被覆される場合であっても、本構成を有さない場合に比べて、高耐久性の加圧部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、下記により解決した。即ち、
請求項1に係る発明は、
基体と、
該基体上に設けられた弾性層と、
該弾性層上に設けられ、カーボンとフッ素樹脂とを含んで構成される表面層と
を少なくとも有し、
該表面層のフッ素樹脂が、下記一般式(1)で示される構造を持つフッ素樹脂である電子写真の定着に用いられる加圧部材。
【0007】
【化1】

【0008】
式(1)中、RはCF、C、又はCを表す。xは0.045以上0.12以下の数字を表す。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記一般式(1)におけるxが、0.045以上0.010以下である請求項1に記載の加圧部材である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記一般式(1)におけるRが、Cである請求項1または請求項2に記載の加圧部材である。
【0011】
請求項4に係る発明は、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加圧部材と
前記加圧部材に接触する定着部材と、
を備えた定着装置である。
【0012】
請求項5に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーにより前記静電潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を該記録媒体へ定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段が、請求項3に記載の定着装置である画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、および請求項3に係る発明によれば、基体上に設けられた弾性層上にフッ素樹脂が被覆される場合であっても、本構成を有さない場合に比べて、高耐久性の加圧部材を提供する。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、さらに表面のしわが抑制される加圧部材を提供する。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、画質の安定性に優れる定着装置を提供する。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、画質の安定性に優れる画像形成装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る加圧部材の一例である加圧ローラの断面を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係る定着装置の一例の断面を示す模式図である。
【図3】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る加圧部材は、基体と、該基体上に設けられる弾性層と、該弾性層上に設けられ、カーボンとフッ素樹脂とを含んで構成される表面層とを少なくとも有し、該表面層のフッ素樹脂が、下記一般式(1)で示される構造を持つフッ素樹脂(以下、「特定フッ素樹脂」とも言う。)である電子写真の定着に用いられる加圧部材である。
【0017】
【化2】

【0018】
一般式(1)中、RはCF、C、又はCを表す。xは0.045以上0.12以下の数字を表す。
【0019】
弾性層上に所望の抵抗値を得るためにカーボンとフッ素樹脂とを含んで構成される表面層を有する加圧部材を使用し、ローラニップ方式もしくはベルトニップ方式で繰り返し使用した場合、屈曲亀裂耐性に劣り、表面層に亀裂が生じたりして部材寿命を損ない易い。
特に、近年の電子写真機器の高速化に伴い、部材の通紙部/非通紙部の温度差が大きい状態で使用される場合が増えており、この状態でカーボンを添加したフッ素樹脂を使用した場合、温度差に伴う定着部材と加圧部材との外径差が回転時の周速差を生み出し、ニップの特に用紙端部で、フッ素樹脂層に繰り返しのねじりストレスが与えられ続ける。これが繰り返されるとフッ素樹脂層に亀裂が生じ、部材寿命を損なうのである。
【0020】
本実施形態に係る加圧部材は、基体と該基体上に設けられる弾性層および該弾性層上に設けた特定の表面層で記録媒体を挟まれ搬送するため、弾性層及び表面層が変形することになるが、表面層を構成するフッ素樹脂として、前記式(1)におけるxが0.045以上0.12以下の特定フッ素樹脂を用いることにより、加圧部材の耐久性が向上し、画像の乱れが生じず、高耐久性の加圧部材が得られることを突き止めた。この理由について検討したところ、前記xが0.045以上0.12以下の樹脂であると、加圧部材として使用された際、加圧に対し追随性が良く、効果的に離型、用紙剥離が行えていることが分かった。
【0021】
本実施形態に係る加圧部材の実施の形態の一例である加圧ローラを図1に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る加圧部材の一例の断面を示す模式図である。本実施形態に係る加圧部材は、ローラ状の形態でなく、無端ベルト状の形態であってもよい。
【0022】
加圧部材91は、例えば、基体911、基体911上に設けられた弾性層912、および表面層913から構成されている。
基体911は、例えば、アルミニウムや鉄、SUS等の一般的な金属、及びPPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド、LCP(液晶ポリマー)等の耐熱性を有する樹脂や、それらの樹脂にガラスファイバー等を添加し強化した材料で形成されている。
弾性層912は、高画質のため、デュロメータ硬さA10以上A40以下のシリコーンゴム、フッ素ゴムなどの材料、その他にJIS K6262に定められた圧縮永久歪み性能が小さいこと、JIS K6255に定められた反撥弾性率が大きいこと等が求められ、特にシリコーンゴムが好適に使用される。
【0023】
表面層913は、弾性層912の表面にあり、カーボンを含有する前記一般式(1)で表わされるフッ素樹脂で形成されている。
一般式(1)でRはCF、C、又はCであるが、好ましくはCF、およびCである。またxは0.045以上0.12以下であるが、好ましくは0.045以上0.10以下であり、より好ましくは0.045以上0.08以下である。さらに好ましくは0.048以上0.065以下である。この範囲内にあると、記録材料の離型性が良好で、しかも加圧部材の高耐久性が良好である。
【0024】
表面層に含まれるカーボンとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックが好ましい。
【0025】
また、カーボンブラックは2種類以上含有してもよい。そのとき、これらのカーボンブラックは互いに電気的性質の異なるものであると好ましく、例えば酸化処理の度合い、DBP吸油量、窒素吸着を利用したBET法による比表面積等の物性が異なるものを用いる。
【0026】
前記カーボンブラックとして、具体的には、Linon社製のケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC300J、ケッチェンブラックEC600JD、東海カーボン社製のトーカブラック#5500、トーカブラック#4500、三菱化学社製カーボンブラック#3030B、#3050B、#3230B等が挙げられる。
【0027】
表面層には、更に他の導電剤を含有していてもよい、他の導電剤としては、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等である。そしてこれらを単独、あるいは併用して使用してもよい。
【0028】
表面層に含まれるカーボンの含有量は、質量換算で1%以上7%以下が好ましく、1.5%以上5%以下がより好ましい。この範囲内にあると表面層の導電性が確保でき帯電による問題が発生せず、記録材料の離型性が良好で、しかも加圧部材の耐久性が良好である。
【0029】
一般式(1)で表わされるフッ素樹脂にカーボンを含有させる方法としては、フッ素樹脂を加熱しながらカーボンをニーダー、二軸ロールなどの混練機を使用して混練する方法、二軸押出し混練り機による方法などいずれの方法を用いてもよい。好ましくは二軸押出し混練り機を用いる方法である。
【0030】
表面層に用いる特定フッ素樹脂には、耐久性を向上させる為、画質が損なわれない範囲で、さらにPTFE等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の添加剤を含有させることもあるが、高離型性を得る為に、該含有量としては、極力少量であることが好ましい。
【0031】
表面層の好ましい体積抵抗値としては4logΩcm以上10logΩcm以下であり、4logΩcm以上7logΩcm以下であることがより好ましい。この範囲内にあると表面層の導電性が確保でき帯電による問題が発生せず、しかも加圧部材の耐久性が良好である。
体積抵抗値は、二重リング電極法を用いて測定する。
【0032】
本実施形態に係る加圧部材において、前記基体は材質により、荷重をかけたときに永久変形しない程度の強度を保てるだけの厚みを持っていることが好ましい。前記弾性層は厚みが1mm以上12mm以下であり、前記表面層は厚みが50μm以上150μm以下である。前記弾性層は厚みが1mm未満であると、加圧部材の表面に弾性が伝わらず、12mmを超えると、記録媒体のしわが発生してしまう。また、前記表面層厚みが50μm未満であると、定着装置内での機械的なストレスの繰り返しにより、表面層にしわが発生してしまい、150μmを超えると、加圧部材の表面硬度が高くなり、定着に必要な所望のニップ幅が得られない。
【0033】
ここで、表面層の厚みは、ダブルスキャン高精度レーザ測定器(キーエンス株式会社製)を使用し測定した。
また、弾性層の厚みは、加圧部材91から弾性層912及び表面層913を切り出し、定圧厚さ測定器PG−02(株式会社テクロック製)を使用し弾性層912及び表面層913の合計厚みを測定した後、表面層913の厚みを引くことで弾性層912の厚みを求めた。
それぞれローラまたは無端ベルトの軸方向に両端部から20mm、中央部の計3点、周方向に90°おきに計4点の合計12点測定し、その平均値を求めることでそれぞれの加圧部材の弾性層912及び表面層913の厚みとした。
【0034】
本実施形態に係る加圧部材を製造する方法としては、ロール状または無端ベルト状の基体上にシリコーンゴム等を押し出して被覆成型する方法、コーティング後に加熱成型して被覆する方法などにより弾性層を形成する。
また、加圧部材がロール形態である場合は、ロールの径より小径のチューブ状に特定フッ素樹脂を溶融押し出し成型し、1から10%の拡張率で金型内に流し込んだゴムと加硫接着させて一体に被覆させるのが望ましい。このときチューブの内面をエキシマ等によって表面処理しておいてもよい。
【0035】
次に、定着装置90について説明する。図2は、本実施形態に係る定着装置90の構成を示す概略図である。
図2に示すように、定着装置90は、無端ベルトとしての定着ベルト92と、回転駆動する回転体の一例としての加圧ロール91とを備えて構成されている。定着ベルト92は、基材層と前記基材層上に積層された層(離型層)の複数層から構成されている。加圧ロール91は上記の本実施形態に係る加圧部材を採用する。
【0036】
なお、定着装置90は、上記した構成に限られず、定着部材(加熱部材)がロールで加圧部材がロールを適用した方式、定着部材がロールで加圧部材がベルトを適用した方式等、周知の方式であってもよい。そして加圧部材として本実施形態に係る加圧部材を適用する。
【0037】
定着ベルト92が用紙Kのトナー像保持面側に配置されるとともに、定着ベルト92の内側には、加熱手段の一例としての抵抗発熱体であるセラミックヒータ82が配設され、セラミックヒータ82から挟込領域Nに熱を供給するように構成している。
【0038】
セラミックヒータ82は、加圧ロール91側の面がフラットに形成されている。そして、定着ベルト92を介して加圧ロール91に加圧される状態で配置され、挟込領域Nを形成している。したがって、セラミックヒータ82は圧力部材としても機能している。挟込領域Nを通過した用紙Kは、挟込領域Nの出口領域(剥離挟込部)において定着ベルト92の曲率の変化によって定着ベルト92から剥離される。
【0039】
さらに、定着ベルト92内周面とセラミックヒータ82との間には、定着ベルト92の内周面とセラミックヒータ82との摺動抵抗を小さくするため、低摩擦シート68が配設されている。この低摩擦シート68は、セラミックヒータ82と別体に構成しても、セラミックヒータ82と一体的に構成してもよい。
【0040】
さらに、定着装置90では、定着ベルト92は、原形が円筒形状に形成された無端ベルトであり、ベース層と、このベース層の加圧ロール91側の面または両面に被覆された離型層とから構成されている。
【0041】
また、剥離の補助手段として、定着ベルト92の挟込領域Nの下流側に、剥離部材70を配設する。剥離部材70は、剥離バッフル71が定着ベルト92の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ベルト92と近接する状態でホルダ72によって保持されている。
【0042】
加えて、ホルダ95の両端部にはエッジガイド(不図示)が配設されている。エッジガイドは、ホルダ95の両端部において対向するように配置された両エッジガイドの内側面が、定着ベルト92の幅と一致する間隔を持つように配置されている。そして、定着ベルト92が回転する際には、定着ベルト92の端部が両エッジガイドの内側面に接することによって、定着ベルト92の幅方向への移動(ベルトウォーク)が規制されている。このように、定着ベルト92は、エッジガイドによって片寄りが規制されるように設定されている。
【0043】
そして、未定着トナー像を有する用紙Kは、定着入口ガイドによって定着装置90の挟込領域Nに導かれる。用紙Kが挟込領域Nを通過する際には、用紙K上のトナー像は、挟込領域Nに作用する圧力と、定着ベルト92側のセラミックヒータから供給される熱とによって定着される。
【0044】
ここで、定着装置90においては、加圧ロール91は、両端部の外径が中央部の外径よりも大きい逆クラウン形状(フレア形状)に形成されるとともに、定着ベルト92も、内面に凹凸形状を有し、この凹凸形状は挟込領域においては前記加圧ロール91の表面形状に沿った形状に広がり変形するように構成されている。このように構成することによって、用紙が挟込領域を通過するに際して、加圧ロール91による用紙への中央部から両端部に向かって幅方向に引張力が作用することによって用紙が伸びるのとともに定着ベルト92の表面幅方向の長さも伸びる。
【0045】
このため、定着装置90でも、中央部から両端部に亘る全領域において、定着ベルト92は用紙Kに対して滑りが抑制される。
【0046】
なお、加熱源としてはセラミックヒータ82以外に、ハロゲンランプであったり、あるいは電磁誘導コイルによる電磁誘導発熱を利用したものであったりしてもかまわない。
【0047】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーにより前記静電潜像をトナー像として現像する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された前記トナー像を該記録媒体へ定着する定着手段と、を備え、前記定着手段が既述の本実施形態の定着装置である画像形成装置である。
本実施形態に係る画像形成装置の一例を図3に基づいて説明する。図3は本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【0048】
画像形成装置10において、画像形成装置100の本体を構成する筐体12内に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各トナーに対応した光ビームを出射する光走査装置14Y、14M、14C、14Kが固定されている。また、光走査装置14Kに隣接する位置に、画像形成装置10の各部の動作を制御する主制御部35が設けられている。
【0049】
光走査装置14Y、14M、14C、14Kは、光源から出射された光ビームを図示しない回転多面鏡(ポリゴンミラー)で走査するとともに、反射ミラー等の複数の光学部品で反射して、各トナーに対応した光ビーム16Y、16M、16C、16Kを出射するようになっている。
【0050】
光ビーム16Y、16M、16C、16Kは、それぞれ対応する各感光体(像保持体)18Y、18M、18C、18Kに導かれる。各感光体18Y、18M、18C、18Kは、図示しないモータ及びギアによる駆動手段によって、矢印A方向に回転するようになっている。
【0051】
感光体18Y、18M、18C、18Kの回転方向上流側には、感光体18Y、18M、18C、18Kの表面を帯電する帯電器20Y、20M、20C、20Kが設けられている。
【0052】
また、感光体18Y、18M、18C、18Kの回転方向下流側には、Y、M、C、Kの各トナーをそれぞれ感光体18Y、18M、18C、18K上に現像する現像器(現像手段)22Y、22M、22C、22Kが設けられている。
【0053】
感光体18Y、18M、18C、18Kの回転方向で、現像器22Y、22M、22C、22Kの下流側には、現像されたトナー像が一次転写される中間転写ベルト28が配置されている。
【0054】
中間転写ベルト28は、例えば、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は10から1014Ωcmとなるように形成されており、その厚みは例えば0.1mm程度に構成されている。
【0055】
感光体18Y、18M、18C、18Kと中間転写ベルト28が対向する位置で中間転写ベルト28の内側には、感光体18Y、18M、18C、18K上に形成された各色トナー像を中間転写ベルト28に転写する一次転写ロール24Y、24M、24C、24Kが配置されている。この一次転写ロール24Y、24M、24C、24Kによって、感光体18Y、18M、18C、18Kから中間転写ベルト28に一次転写を行う一次転写部25が構成されている。
【0056】
一次転写ロール24Y、24M、24C、24Kは、図示しないシャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とを有している。シャフトは、例えば、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層は、例えば、カーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5から108.5Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。
【0057】
一次転写ロール24Y、24M、24C、24Kは、中間転写ベルト28を挟んで各感光体18Y、18M、18C、18Kに圧接されている。一次転写ロール24Y、24M、24C、24Kには、図示しない電圧印加手段によって各トナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同じ。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体18Y、18M、18C、18K上のトナー像が中間転写ベルト28に順次、静電吸引され、中間転写ベルト28上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0058】
さらに、感光体18Y、18M、18C、18Kの回転方向下流側には、感光体18Y、18M、18C、18K上の残留トナーが除去されるクリーナ26Y、26M、26C、26Kが設けられている。
【0059】
中間転写ベルト28の内側には、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト28を移動させる駆動ロール30と、各感光体18Y、18M、18C、18Kの配列方向に沿って直線状に延び、中間転写ベルト28を支持する支持ロール32が設けられている。これにより、中間転写ベルト28は、矢印B方向に循環駆動されるようになっている。
【0060】
また、中間転写ベルト28の内側には、中間転写ベルト28に対しての張力を与える張力付与ロール34が設けられている。
【0061】
中間転写ベルト28の移動方向下流側には、中間転写ベルト28上のトナー像を記録媒体K上に転写する二次転写部42が設けられている。
【0062】
二次転写部42は、中間転写ベルト28のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール(転写手段)38と、ニ次転写位置で中間転写ロールを支持する支持ロール36とによって構成されている。
【0063】
二次転写ロール38は、図示しないシャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、例えば、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層は、例えば、カーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が1×107.5Ωcm以上1×108.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
【0064】
また、二次転写ロール38は、中間転写ベルト28を挟んでニ次転写位置で中間転写ロールを支持する支持ロール36に圧接配置されている。ここで、二次転写ロール38は、接地されるとともにニ次転写位置で中間転写ロールを支持する支持ロール36との間に二次転写バイアスが印加され、2次転写部42に搬送される記録媒体K上にトナー像を二次転写するようになっている。
【0065】
二次転写位置で中間転写ロールを支持する支持ロール36は、例えば、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRとのブレンドゴムのチューブ、内部がEPDMゴムで構成されている。そして、表面抵抗率が1×10Ω/□以上1010Ω/□以下となるように形成され、デュロメータ硬さは例えばC70に設定される。ここで、上記デュロメータ硬さは、JIS K6253に準拠し、デュロメータタイプC(例えば高分子計器株式会社製:ASKER C型)を用いて測定される値を意味する。
【0066】
また、ニ次転写位置で中間転写ロールを支持する支持ロール36は、中間転写ベルト28の裏面側に配置されて二次転写ロール38の対向電極を形成しており、ニ次転写位置で中間転写ロールを支持する支持ロール36と接触配置された金属製の給電ロール40を介して二次転写バイアスが安定的に印加されるようになっている。
【0067】
中間転写ベルト28の移動方向における二次転写部42の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト28上の残留トナーや紙粉を除去する中間転写ベルトクリーナ46が、中間転写ベルト28に対して接離自在に設けられている。中間転写ベルトクリーナ46における中間転写ベルト28の内側には、クリーニングロール44が設けられている。
【0068】
一方、イエロートナーに対応する一次転写ロール24Yの上流側には、各トナーに対応した画像形成のタイミングを合わせるための基準となる信号を発生するホームポジションセンサ48が設けられている。
【0069】
ホームポジションセンサ48は、中間転写ベルト28の裏側に設けられたマークを検知して基準信号を発生するようになっている。この基準信号に基づいて、前述の主制御部35が画像形成装置10の各部を動作させ、画像形成を開始するようになっている。
【0070】
また、ブラックトナーに対応する一次転写ロール24Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が設けられている。
【0071】
一方、画像形成装置10の下方側には、記録媒体Kを収納する給紙手段50が設けられている。給紙手段50の一方端には、記録媒体Kをタイミングで取り出して搬送するピックアップロール52が設けられている。
【0072】
ピックアップロール52の上方には、図示しないモータ及びギアによる駆動手段で回転駆動され、ピックアップロール52によって送出された記録媒体Kを、前述の二次転写部42に搬送する複数の搬送ロール54、55が設けられている。
【0073】
記録媒体Kの搬送方向における搬送ロール55の下流側には、記録媒体Kを二次転写部42へ送り込む用紙搬送路58が設けられている。
【0074】
二次転写部42における記録媒体Kの送出方向には、トナー像の二次転写が終了した記録媒体Kを定着装置90へ搬送する搬送ベルト41が設けられている。搬送ベルト41は、支持ロール57、59によって張架され、図示しないモータ及びギアによる駆動手段で移動されるように設けられている。
【0075】
定着装置90の入口側には、記録媒体Kを定着装置90に案内するガイド37が設けられている。また、定着装置90の出口側には、画像形成装置10の筐体12に固定された用紙集積手段39が設けられている。
【0076】
ここで、画像形成装置10の画像形成の動作の一例について説明する。
まず、図示しない画像読取装置やパーソナルコンピュータ等から出力される画像データが、図示しない画像処理装置によって画像処理を施される。画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、光走査装置14Y、14M、14C、14Kに出力される。
【0077】
光走査装置14Y、14M、14C、14Kは、入力された色材階調データに応じて、光ビーム16Y、16M、16C、16Kを各々の感光体18Y、18M、18C、18Kに照射する。
【0078】
感光体18Y、18M、18C、18Kは、予め帯電器20Y、20M、20C、20Kによって表面が帯電されており、光ビーム16Y、16M、16C、16Kによって表面が露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、現像器22Y、22M、22C、22Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0079】
続いて、感光体18Y、18M、18C、18K上に形成されたトナー像は、一次転写部25において中間転写ベルト28上に転写される。この転写は、一次転写ロール24Y、24M、24C、24Kにより中間転写ベルト28に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト28の表面に順次重ね合わせることで行われる。
【0080】
続いて、トナー像が転写された中間転写ベルト28は、二次転写部42に搬送される。
一方、トナー像が二次転写部42に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール52が回転し、給紙手段50から記録媒体Kが送出される。
【0081】
ピックアップロール52により送出された記録媒体Kは、搬送ロール54、56により搬送され、用紙搬送路58を経て二次転写部42に到達する。この二次転写部42に到達する前に記録媒体Kは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト28の移動タイミングに合わせて位置合わせロール(図示せず)が回転することで、記録媒体Kの位置とトナー像の位置との位置合わせが行われる。
【0082】
二次転写部42では、中間転写ベルト28を介して、二次転写ロール38がニ次転写位置で中間転写ロールを支持する支持ロール36に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された記録媒体Kは、中間転写ベルト28と二次転写ロール38との間に挟み込まれる。
【0083】
また、このとき、給電ロール40からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加され、二次転写ロール38とニ次転写位置で中間転写ロールを支持する支持ロール36との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト28上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール38とニ次転写位置で中間転写ロールを支持する支持ロール36とによって押圧され、記録媒体K上に一括して静電転写される。
【0084】
続いて、トナー像が静電転写された記録媒体Kは、二次転写ロール38によって中間転写ベルト28から剥離された状態でそのまま搬送され、搬送ベルト60へと搬送される。
【0085】
搬送ベルト60では、定着装置90における最適な搬送速度に合わせて、記録媒体Kを定着装置90まで搬送する。定着装置90に搬送された記録媒体K上の未定着トナー像は、定着装置90によって記録媒体K上に定着される。
【0086】
定着画像が形成された記録媒体Kは、用紙集積手段39に排出され集積される。
【0087】
一方、記録媒体Kへの転写が終了した後、中間転写ベルト28上に残った残留トナーは、中間転写ベルト28の回転移動にともなって中間転写ベルトクリーナ46まで搬送され、中間転写ベルト28上から除去される。
このようにして、画像形成装置10の画像形成が行われる。
【実施例】
【0088】
以下に、本発明の実施形態について実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお以下に示す「部」は質量換算である。
【0089】
〔実施例1〕
加圧部材の基体として、芯金にアルミニウム(A−5052材、外径φ33.8mm、肉厚3mmの円筒体)を使用した。
弾性層には液状シリコーンゴム(DY35−4039A/B、東レ・ダウ・コーニング株式会社製)を使用した。
特定フッ素樹脂として、テトラフルオロエチレン−パーフロロエチルビニルエーテル共重合体(共重合モル比95.1:4.9、三井・デュポンフロロケミカル社製 商品名 PF-059)97.5部に、カーボン(ライオン(株)製 ケッチェンブラックEC)2.5部を添加し、二軸混練り機を用いて押出し混練した。
【0090】
この混練物を温度370℃にて押し出し成型機を用いて、チューブ(表面層、チューブの径:62.5mm、チューブの厚み:100μm)を作製した。次に、チューブ内面を株式会社潤工社製テトラエッチにてケミカルエッチング処理し、チューブを前記したアルミニウムを芯金にする基体と径φ65の外金型の内面へ配置し、チューブ処理面にプライマー(東レ・ダウコーニング社製 DY39-125A/B)を塗布した後に、外金型と同径上に、表面をプライマー(東レ・ダウコーニングシリコーン社製 DY39-051A/B)にて表面処理した芯金を固定し、チューブと芯金との間に前記液状シリコーンゴムを注入し、金型全体を100℃、30分間、液状シリコーンゴム(デュロメータ硬さ:30/A)を加硫させるとともに芯金およびフッ素樹脂チューブとの加硫接着を行った。液状シリコーンゴムが弾性層となる。加硫完了後これを冷却し、金型から抜き出し、200℃、4時間二次加硫を行うことで加圧ロールを作製した。
【0091】
(実施例2から6、比較例1から4)
実施例1において特定フッ素樹脂を表1のように変更し、それ以外は実施例1と同じ操作を施して実施例2から6、および比較例1から4の加圧ロールを作製した。
なお、各々のフッ素樹脂については、テトラフルオロエチレンとパーフロロアルキルビニルエーテルのmol比を表1のようにして定法により重合した。材料中の実際のパーフロロアルキルビニルエーテル含有量を、固体19F-NMRと固体13C-NMRを用いて、以下の条件により測定した結果を、表1に記載した。
【0092】
固体19F-NMRの測定
測定装置:Chemagnetic製CMX300 5mmプローブ
測定手法:depth2法(共鳴周波数 282.67MHz)
測定条件:90°Pulse 3.0μs、帯域幅:100kHz、繰り返し時間:5s
回転速度:8kHz、積算回数 32
測定温度:240℃
【0093】
固体13C-NMRの測定
測定装置:Chemagnetic製CMX300 5mmプローブ
測定手法:シングルパルス法(共鳴周波数 75.5563MHz)
回転速度:8kHz、積算回数 800
測定温度:240℃
【0094】
【表1】

【0095】
<評価>
作製した加圧ロールを画像形成装置(富士ゼロックス株式会社製:モノクロ複合機4112)における加圧ロールとして用い、以下の条件で亀裂発生評価試験、ロール表面のしわ発生試験を行った。その結果を表2に示す。
【0096】
(亀裂発生評価試験)
富士ゼロックス社製コピー用紙P紙(坪量64gsm)のA4サイズ紙を横送りで、像密度5%のラダーチャートを乗せて連続走行試験を行い、50,000枚通紙する毎に、加圧ロールの表面を目視で確認し、表面に亀裂が発生するまでの走行枚数を最大で1,200,000枚まで評価した。
【0097】
(ロール表面のしわ発生試験)
亀裂評価試験と同じく連続走行試験を行い、50,000枚通紙する毎に、加圧ロールの表面を目視で確認し、表面にシワが発生するまでの走行枚数を最大で1,200,000枚まで評価した。
【0098】
【表2】

【0099】
表2から本発明の実施形態である表面層を有する実施例1から実施例6はいずれも、120万枚定着しても、亀裂発生がなく、また実施例1から実施例5はロール表面のしわは観察されなかった。これに対しフッ素樹脂のパーフロロアルキルビニルエーテルの組成比(式(1)のx)が4.5mol%未満である比較例1から比較例4は亀裂が50万枚以下で発生し、またロール表面のしわが発生した。
【符号の説明】
【0100】
90 定着装置
91 加圧部材
911 基体
912 弾性層
913 表面層
92 定着ロール
10 画像形成装置
18 感光体
20 帯電器
22 現像器
29 電圧印加部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
該基体上に設けられた弾性層と、
該弾性層上に設けられ、カーボンと、フッ素樹脂とを含んで構成される表面層とを少なくとも有し、
該表面層のフッ素樹脂が、下記一般式(1)で示される構造を持つフッ素樹脂である電子写真の定着に用いられる加圧部材。
【化1】


(式(1)中、RはCF、C、又はCを表す。xは0.045以上0.12以下の数字を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるxが、0.045以上0.010以下である請求項1に記載の加圧部材。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるRが、Cである請求項1または請求項2に記載の加圧部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加圧部材と
前記加圧部材に接触する定着部材と、
を備えた定着装置。
【請求項5】
像保持体と、
前記像保持体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーにより前記静電潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を該記録媒体へ定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段が、請求項4に記載の定着装置である画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−8097(P2011−8097A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152522(P2009−152522)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】