説明

加工ハチの子の製造方法

【課題】ハチの子のタンパク質を低分子化した加工ハチの子を得ることのできる新しい技術を提供すること。
【解決手段】ハチの子にアスペルギルス メレウス(Aspergillus melleus)由来のタンパク質分解酵素、バチルス サブチルス(Bacillus subtilis)由来のタンパク質分解酵素およびバチルス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のタンパク質分解酵素からなる群より該ハチの子の産地および性別に基づいて選択される少なくとも一のタンパク質分解酵素を作用させる工程を含むことを特徴とする、加工ハチの子の製造方法、並びに、該製造方法によって得られる加工ハチの子を含有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工ハチの子の製造方法、並びに、該方法によって得られる加工ハチの子を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハチの子とは、ハチの幼虫またはサナギであり、古くから漢方の生薬として用いられており、日本でも古くから貴重なタンパク源として食されている。
【0003】
ハチの子は様々な栄養成分を含んでいるが特にタンパク質が注目されている。タンパク質は消化酵素により低分子化され体内に吸収される。そこで予めハチの子のタンパク質を低分子化することにより、体内への吸収が良好になることが期待される。また、タンパク質を低分子化することにより、溶解性が向上し飲料などにも応用が期待される。さらにアレルギーの原因としてタンパク質が挙げられるがタンパク質を低分子化することによりアレルギー性を低減させることが期待される。
【0004】
ハチの子のタンパク質を低分子化する方法として、ハチの子にタンパク質分解酵素(プロテアーゼと称することもある)であるパパインを作用させる方法が知られている(特許文献1)。しかし、パパインを作用させてハチの子のタンパク質を低分子化する方法は、タンパク質の低分子化が十分ではなく、吸収性や溶解性を高めるために、ハチの子のタンパク質をより低分子化することが望まれている。
【0005】
また、水不溶性成分をプロテアーゼ処理する方法(特許文献2)や、脂質分解酵素を添加後、タンパク質分解酵素を添加する方法(特許文献3)が知られているが、工程が多く実用的でない。
【0006】
さらに、食品として使用する場合、酸性で作用するタンパク質分解酵素またはアルカリ性で作用するタンパク質分解酵素はハチの子のpHをこれらのタンパク質分解酵素が作用するpHである酸性またはアルカリ性に調整した後、再びpHを中性に戻す必要があり、作業性などの点から好もしくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-211946号公報
【特許文献2】特開2010-30975号公報
【特許文献3】特開2009-254348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ハチの子のタンパク質を低分子化した加工ハチの子を得ることのできる新しく、かつ簡便な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討を行った結果、ハチの子の産地および性別により作用させるタンパク質分解酵素の作用性が異なることが明らかとなった。そして、ハチの子の産地および性別により作用させるタンパク質分解酵素の種類を選択して使用することにより、ハチの子のタンパク質を効率的に低分子化することができ、その結果吸収性および溶解性の高い加工ハチの子を製造できることを見出した。具体的には、台湾産オスハチの子にアスペルギルス メレウス(Aspergillusmelleus)由来のタンパク質分解酵素を作用させること、中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子にバチルス サブチルス(Bacillus subtilis)由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のタンパク質分解酵素を作用させることにより、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
1. ハチの子に、アスペルギルス メレウス(Aspergillus melleus)由来のタンパク質分解酵素、バチルス サブチルス(Bacillus subtilis)由来のタンパク質分解酵素およびバチルス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のタンパク質分解酵素からなる群より該ハチの子の産地および性別に基づいて選択される少なくとも1のタンパク質分解酵素を作用させる工程を含むことを特徴とする、加工ハチの子の製造方法、
2. 台湾産オスハチの子にアスペルギルス メレウス(Aspergillus melleus)由来のタンパク質分解酵素を作用させる工程を含むことを特徴とする、前記1.の加工ハチの子の製造方法、
3. 中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子にバチルス サブチルス(Bacillus subtilis)由来またはバチルス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のタンパク質分解酵素を作用させる工程を含むことを特徴とする、前記1.の加工ハチの子の製造方法、
4. 脂質成分を除去する工程をさらに含むことを特徴とする前記1.〜3.のいずれかの加工ハチの子の製造方法、
5. 前記1.〜4.のいずれかの製造方法により得られる加工ハチの子を含有する組成物、
からなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、タンパク質がより低分子化された加工ハチの子を製造することができ、また、該方法によって得られる加工ハチの子を利用して、吸収性及び溶解性が高い加工ハチの子を含有する組成物を提供することができる。さらに、本発明に係る加工ハチの子の製造方法はその工程が少なく、簡便で実用的である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】台湾産オスハチの子を種々のタンパク質分解酵素で処理して得られた産物の電気泳動図である。レーン1は分子量マーカーを示し、レーン2は未処理、レーン3はパパイン処理、レーン4はオリエンターゼ22BF処理、レーン5はプロテアーゼP「アマノ」3G処理、レーン6はプロチンSD-AC10F処理の結果を示す。
【図2】中国産オスハチの子を種々のタンパク質分解酵素で処理して得られた産物の電気泳動図である。左側のレーンより、分子量マーカー、未処理、ProteaseS「アマノ」G、サモアーゼPC10F(大和化成 Bacillus stearothermophilus由来)、プロチンSD-AC10F、ProteaseP「アマノ」3G、ウマミザイムG、ペプチダーゼR、オリエンターゼ22BF、パパイン処理の結果を示す。
【図3】台湾産女王ハチの子を種々のタンパク質分解酵素で処理して得られた産物の電気泳動図である。左側のレーンより、分子量マーカー、未処理、ProteaseS「アマノ」G、サモアーゼPC10F(大和化成 Bacillus stearothermophilus由来)、プロチンSD-AC10F、ProteaseP「アマノ」3G、ウマミザイムG、ペプチダーゼR、オリエンターゼ22BF、パパイン処理の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ハチの子に、アスペルギルス メレウス(Aspergillus melleus)由来のタンパク質分解酵素、バチルス サブチルス(Bacillussubtilis)由来のタンパク質分解酵素およびバチルス リケニフォルミス(Bacilluslicheniformis)由来のタンパク質分解酵素からなる群より該ハチの子の産地および性別に基づいて選択される少なくとも一のタンパク質分解酵素を作用させる工程を含むことを特徴とする、加工ハチの子の製造方法、および該方法によって得られる加工ハチの子を含有する組成物に関する。本発明に係る加工ハチの子の製造方法によれば、加工されるハチの子の産地および性別により作用させるタンパク質分解酵素の種類を選択して使用することにより、ハチの子のタンパク質を効率的に低分子化することができ、その結果吸収性および溶解性の高い加工ハチの子を製造できる。
【0014】
本発明の加工ハチの子の一態様は、台湾産オスハチの子にアスペルギルス メレウス(Aspergillusmelleus)由来のタンパク質分解酵素を作用させることにより製造される。
【0015】
台湾産オスハチの子は粉末化されているものが望ましく、例えば台湾産オスハチの子を凍結乾燥後粉末化したものが好適に用いられる。台湾産オスハチの子の粉末は精製水、水道水または適当な緩衝液などの溶媒を加えて用いることができる。
【0016】
台湾産オスハチの子に作用させる、アスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素はアスペルギルス メレウスを培養することにより得られ、培養液、精製品であってもよい。また、アスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素は遺伝子組換え技術により得られたものであってもよく、さらに、例えば糖やポリエチレングリコールなどで修飾されたものであってもよい。
【0017】
アスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素は単独で作用させてもよく、さらに、アスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素と他のタンパク質分解酵素を併用して台湾産オスハチの子に作用させてもよい。また、タンパク質分解酵素は必要な量を一度に台湾産オスハチの子に作用させてもよいし、必要な量を2回以上に分けて台湾産オスハチの子に作用させてもよい。また、アスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素と他のタンパク質分解酵素を併用するように2種類以上のタンパク質分解酵素を台湾産オスハチの子に作用させる場合、ぞれぞれのタンパク質分解酵素を同時に台湾産オスハチの子に作用させてもよく、別々に分けて台湾産オスハチの子に作用させてもよい。
【0018】
アスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素と混合した後の台湾産オスハチの子の濃度は、3〜40W/V%を挙げることができ、好ましくは5〜15W/V%を挙げることができる。台湾産オスハチの子の濃度が低いとタンパク質分解産物の収量が悪く、また、台湾産オスハチの子の濃度が高いとタンパク質の分解効率が悪い。
【0019】
アスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素による台湾産オスハチの子の処理条件、例えば処理時間、pH、及び温度などの条件は、特に限定されず、台湾産オスハチの子の安定性及びアスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素の安定性や反応性などを考慮して適宜設定することが可能である。
【0020】
アスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素と台湾産オスハチの子を作用させる時間は、台湾産オスハチの子のタンパク質が低分子化されるのに十分な時間であれば特に限定されないが、数時間〜3日間、好ましくは10時間〜24時間が好ましい。24時間以上反応させてもタンパク質の低分子化は24時間反応させたときと比較して変化がなかった。
【0021】
アスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素を台湾産オスハチの子に作用させる際のpHは、該酵素が酵素活性を示すのに十分なpHであれば特に限定されないが、pH3〜11、好ましくはpH4〜11、さらに好ましくはpH5〜8が適当である。
【0022】
アスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素を台湾産オスハチの子に作用させる際の温度は、該酵素が酵素活性を示すのに十分な温度であれば特に限定されないが、30℃〜80℃、好ましくは30℃〜60℃、より好ましくは35℃〜55℃が適当である。
【0023】
アスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素を台湾産オスハチの子に作用させている間は静置であってもよくさらに、振とう、攪拌などを行ってもよい。好ましくは静置により作用させるのがよい。振とう、攪拌を行った場合台湾産オスハチの子の不溶成分が容器の壁に付着し酵素作用の効率が良くない。
【0024】
本発明の加工ハチの子の別の態様は、中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子にバチルス サブチルス(Bacillus subtilis)由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のタンパク質分解酵素を作用させることにより製造される。
【0025】
中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子は粉末化されているものが望ましく、例えば中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子を凍結乾燥後粉末化したものが好適に用いられる。中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子の粉末は精製水、水道水または適当な緩衝液などの溶媒を加えて用いることができる。
【0026】
中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子に作用させる、バチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素はバチルス サブチルスを培養することにより得られ、培養液、精製品であってもよい。また、バチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素は遺伝子組換え技術により得られたものであってもよく、さらに、例えば糖やポリエチレングリコールなどで修飾されたものであってもよい。一方、バチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素はバチルス リケニフォルミスを培養することにより得られ、培養液、精製品であってもよい。また、バチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素は遺伝子組換え技術により得られたものであってもよく、さらに、例えば糖やポリエチレングリコールなどで修飾されたものであってもよい。
【0027】
バチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素は単独で作用させてもよく、さらに、これらタンパク質分解酵素と他のタンパク質分解酵素を併用して中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子に作用させてもよい。また、タンパク質分解酵素は必要な量を一度に中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子に作用させてもよいし、必要な量を2回以上に分けて中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子に作用させてもよい。また、バチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素と他のタンパク質分解酵素を併用するように2種類以上のタンパク質分解酵素を中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子に作用させる場合、ぞれぞれのタンパク質分解酵素を同時に中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子に作用させてもよく、別々に分けて中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子に作用させてもよい。
【0028】
バチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素と混合した後の中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子の濃度は、3〜40W/V%を挙げることができ、好ましくは5〜30W/V%を挙げることができる。中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子の濃度が低いとタンパク質分解産物の収量が悪く、また、中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子の濃度が高いとタンパク質の分解効率が悪い。中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子は、上記台湾産オスハチの子と比較して溶解性が高いため、より高い濃度で使用することができる。
【0029】
バチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素による中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子の処理条件、例えば処理時間、pH、及び温度などの条件は、特に限定されず、中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子の安定性及びバチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素の安定性や反応性などを考慮して適宜設定することが可能である。
【0030】
バチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素と中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子を作用させる時間は、中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子のタンパク質が低分子化されるのに十分な時間であれば特に限定されないが、数時間〜3日間、好ましくは10時間〜24時間が好ましい。24時間以上反応させてもタンパク質の低分子化は24時間反応させたときと比較して変化がなかった。
【0031】
バチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素を中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子に作用させる際のpHは、該酵素が酵素活性を示すのに十分なpHであれば特に限定されないが、pH3〜11、好ましくはpH4〜11、さらに好ましくはpH5〜8が適当である。
【0032】
バチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素を中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子に作用させる際の温度は、該酵素が酵素活性を示すのに十分な温度であれば特に限定されないが、30℃〜80℃、好ましくは30℃〜60℃、より好ましくは35℃〜55℃が適当である。
【0033】
バチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素を中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子に作用させている間は静置であってもよくさらに、振とう、攪拌などを行ってもよい。好ましくは静置により作用させるのがよい。振とう、攪拌を行った場合、中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子の不溶成分が容器の壁に付着し酵素作用の効率が良くない。
【0034】
本発明の加工ハチの子の製造においては、一般に、如上のアスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素、バチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素を失活させる工程を含む。アスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素、バチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素を失活させる方法は、食品として問題がない程度にこれらタンパク質分解酵素を失活させればよい。失活の方法としては、加熱により失活させる方法、薬剤を用いて失活させる方法、ろ過によりこれらタンパク質分解酵素を除く方法が例示でき、これら方法を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせてもよい。好ましくは、加熱によりこれらタンパク質分解酵素を失活させる。加熱温度は60℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上で加熱することが適当である。さらに、食品の殺菌工程が必要な場合は、これらタンパク質分解酵素を失活させる工程と兼ねてもよい。
【0035】
さらにアスペルギルス メレウス由来のタンパク質分解酵素、バチルス サブチルス由来のタンパク質分解酵素またはバチルス リケニフォルミス由来のタンパク質分解酵素をハチの子に作用させる際にこれらタンパク質分解酵素の安定化剤や反応促進剤などを添加してもよい。
【0036】
ハチの子には脂質成分が多く含まれており、飲料類に用いる場合、その脂質が浮遊する場合がある。そこで、飲料類に用いる場合、脂質成分を除去するのが望ましい。脂質成分を除去する方法として、遠心分離、フィルターろ過などによる脂質成分の除去、リパーゼなどの酵素処理による脂質成分の分解、静置により脂質を上層にタンパク質などを下層に分離し、下層を回収することで脂質を除去する方法などが例示される。フィルターろ過により脂質成分を除去する場合、最終的に50μm以下、好ましくは30μm以下の孔径を有するフィルターでろ過を行うのが望ましい。フィルターろ過は1回のみでもよく、複数回行っても良い。複数回のフィルターろ過において用いるフィルターは、同一孔径のフィルターであってよく、また、最初は大きな孔径のフィルターを用い、順次小さな孔径のフィルターを用いてもよい。加工ハチの子を得る上記本発明の方法において、脂質成分の除去は、好ましくはタンパク質分解酵素処理後に実施される。
【0037】
本発明では、上記方法によって得られる加工ハチの子を利用して、該加工ハチの子を含有する組成物を得ることができる。組成物は特に限定されないが、例えば、食品、医薬品、医薬部外品として使用することができる。また、組成物にはその用途により食品用添加物や医薬用担体などの各種成分を添加することができる。各種成分としては、例えば食品、糖、脂質、乳化剤、増粘剤、調味料、香料、酸味調整剤、保存料、果汁、香料、各種栄養成分などが挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。また、各種成分は単独で用いても良いし二種以上を混合して用いてもよい。例えば糖としては、蔗糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロースなどを例示することができる。乳化剤としては、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチンなどを例示することができる。増粘剤としてはカラギーナン、アラビアガム、キサンタンガム、グァーガム、ペクチン、ローカストビーンガム、澱粉、ジェランガムなどを例示することができる。酸味調整剤としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコン酸、酒石酸などを例示することができる。保存料としては、安息香酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、パラベン、亜硫酸ナトリウム、ペクチン分解物、グリシンなどを例示することができる。果汁としては、トマト果汁、梅果汁、リンゴ果汁、レモン果汁、オレンジ果汁、ベリー系果汁などを例示することができる。香料としては、ハーブ、スパイスなどの香辛料、フルーツ系香料、バニラなどの香料などを例示することができる。この他、好ましい他の成分として、ビタミンDなどのビタミン類やカルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛などのミネラル類などの栄養成分が挙げられる。
【0038】
組成物を食品として供する場合、食品の具体的形態としては、例えば、飲料類、菓子、キャンディ、ガム、パン、畜肉製品、乳製品、レトルト食品、即席食品、冷凍食品、ゼリー状食品、養蜂産品、漬物、調味料などを挙げることができる。これらの食品は、いわゆる健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養機能食品、栄養補助食品、サプリメントなどとしても有用である。また、食品としての形状としては、顆粒、粉末、タブレット、カプセル、チュアブル、ドリンク、ゼリー、ペースト、粒などを挙げることができる。
【0039】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
台湾産オスハチの子についてタンパク質分解酵素のスクリーニングを実施した。表1に試験に供したタンパク質分解酵素とその起源を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
試験したタンパク質分解酵素のうち、プロテアーゼP「アマノ」3G(Aspergillus melleus由来)が台湾産オスハチの子のタンパク質をよく分解しており良好な結果を示した。以下に、スクリーニングの方法とその結果を具体的に説明する。
【0043】
まず、凍結乾燥後粉末化した台湾産オスハチの子2gに精製水を加え、40mLにし、ハチの子希釈液を調製した。表1に示すタンパク質分解酵素を添加し、40℃で16時間反応させた後、沸騰水中で30分加熱しタンパク質分解酵素を失活させ、放冷後、電気泳動を行った。比較対照として、パパインを用いて同様の処理を行った。
【0044】
タンパク質分解酵素の添加量はプロテアーゼP「アマノ」3Gを台湾産オスハチの子希釈液40mL当り34.4mg添加し、その他のタンパク質分解酵素は下記に示す[タンパク質分解酵素活性測定方法]に従って活性測定を行いプロテアーゼP「アマノ」3Gと同じ活性(ΔA660)になるようにハチの子希釈液に添加した。
【0045】
[タンパク質分解酵素活性測定方法]
(1)基質溶液の調製
基質液の調製:75mLの100mM ビス−トリスプロパン緩衝液(pH7.0)に0.6gのカゼイン(ハマルステイン処方)を懸濁させ、沸騰水中で加熱溶解した。放冷後、pHを7.0に調整し、100mLにメスアップして、基質液とした。タンパク質分解酵素活性が高く希釈が必要な場合は100mM ビス−トリスプロパン緩衝液(pH7.0)を使用し希釈した。
(2)タンパク質分解酵素活性の測定
2mLの基質溶液を40℃で5分間放置した後、サンプル液を0.4mL添加し、40℃で30分間反応後、0.44M トリクロロ酢酸溶液を2mL添加し、反応を停止させた。反応停止後10分間室温に放置して、No2のろ紙(アドバンテック東洋)でろ過を行った。ろ液0.5mLに0.55M Na2CO3溶液1.25mLおよび精製水で3倍希釈したフェノール試薬0.25mLを添加し、37℃で30分間放置後660nmにおける吸光度を測定した。このときの吸光度をAとする。
(3)ブランクの測定
0.44M トリクロロ酢酸溶液を2mL添加後にサンプル液0.4mLを加えた以外は上記(2)タンパク質分解酵素活性の測定と同様に行った。このときの660nmにおける吸光度をBとする。
(4)計算
下式によりΔA660を求めた。下式中、Dは希釈率を意味する。
ΔA660=(A−B)×D
【0046】
図1に、プロテアーゼP「アマノ」3G、オリエンターゼ22BF、プロチンSD-AC10F及びパパインの処理により得られた各産物の電気泳動図を示す。図1に示すように、試験したタンパク質分解酵素のうち、プロテアーゼP「アマノ」3G、オリエンターゼ22BF、プロチンSD-AC10Fの処理により得られた各産物は、パパイン処理により得られた産物と比較してタンパク質がより低分子化されていた。特に、プロテアーゼP「アマノ」3G処理によるタンパク質の低分子化が、パパイン処理と比較して顕著であった。
【0047】
なお、プロテアーゼP「アマノ」3Gをハチの子40mL当り34.4mg添加したもののタンパク質分解酵素活性は、100mM ビス−トリスプロパン緩衝液(pH7.0)で10倍希釈したときの「A−B」の値は0.125であった(ΔA660=1.25)。
【実施例2】
【0048】
台湾産オスハチの子をプロテアーゼP「アマノ」3Gで処理した加工ハチの子からの脂質成分の除去を検討した。
【0049】
凍結乾燥後粉末化した台湾産オスハチの子100gに精製水を加え、1000mLとした。プロテアーゼP「アマノ」3Gを2g添加し、50℃で16時間反応させた後、沸騰水中で30分加熱しタンパク質分解酵素を失活させ、放冷後、凍結乾燥を行い、酵素処理ハチの子を得た。
【0050】
凍結乾燥後粉末化した台湾産オスハチの子100gに精製水を加え、1000mLとした。プロテアーゼP「アマノ」3Gを2g添加し、50℃で16時間反応させた後、沸騰水中で30分加熱しタンパク質分解酵素を失活させ、放冷後、孔径が100μm、50μm、30μmのフィルターを順次用い最終的に7μmのフィルターでろ過後、凍結乾燥を行い、ろ過ハチの子を得た。
【0051】
酵素処理ハチの子、ろ過ハチの子、及び凍結乾燥後粉末化した台湾産オスハチの子について成分の分析を行った結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
表2に示すように、ろ過処理を行うことにより脂質成分が除去されていることが明らかとなった。なお、表2に示す水分、たんぱく質、脂質、灰分、炭水化物は100g中の重量を示す。
【実施例3】
【0054】
実施例2で得られたろ過ハチの子1gを精製水100mLに溶解して溶解性を検討した。その結果、ろ過ハチの子はきれいに溶解し、脂質成分の浮遊はなかった。なお、実施例2のハチの子を同様に溶解したが、溶解性は良くなく、脂質性の浮遊物が認められた。
【実施例4】
【0055】
中国産オスハチの子についてタンパク質分解酵素のスクリーニングを実施した。
【0056】
凍結乾燥後粉末化した中国産オスハチの子2gに精製水を加え、40mLにし、ハチの子希釈液を調製した以外は実施例1と同様に行った。比較対照として、パパインを用いて同様の処理を行った。
【0057】
図2に電気泳動図を示す。図2に示すように試験したタンパク質分解酵素のうち、オリエンターゼ22BF、プロチンSD-AC10Fの処理により得られた各産物は、パパイン処理により得られた産物と比較してタンパク質がより低分子化されていた。特に、オリエンターゼ22BF、プロチンSD-AC10F処理によるタンパク質の低分子化が、パパイン処理と比較して顕著であった。
【実施例5】
【0058】
台湾産女王ハチの子についてタンパク質分解酵素のスクリーニングを実施した。
【0059】
凍結乾燥後粉末化した台湾産女王ハチの子2gに精製水を加え、40mLにし、ハチの子希釈液を調製した以外は実施例1と同様に行った。比較対照として、パパインを用いて同様の処理を行った。
【0060】
図3に電気泳動図を示す。図3に示すように試験したタンパク質分解酵素のうち、オリエンターゼ22BF、プロチンSD-AC10Fの処理により得られた各産物は、パパイン処理により得られた産物と比較してタンパク質がより低分子化されていた。特に、オリエンターゼ22BF、プロチンSD-AC10F処理によるタンパク質の低分子化が、パパイン処理と比較して顕著であった。
【実施例6】
【0061】
台湾産女王ハチの子をオリエンターゼ22BFで処理した加工ハチの子からの脂質成分の除去を検討した。
【0062】
凍結乾燥後粉末化した台湾産女王ハチの子100gに精製水を加え、1000mLとした。オリエンターゼ22BFを1g添加し、40℃で16時間反応させた後、沸騰水中で30分加熱しタンパク質分解酵素を失活させ、放冷後、2時間放置することにより上層及び下層に分離し、脂質を含む上層を除去して下層を回収し、脂質除去ハチの子を得た。
【0063】
脂質除去ハチの子について成分の分析を行った結果を表3に示す。
【0064】
【表3】

【0065】
表3に示すように、脂質除去ハチの子は脂質成分が除去されていることが明らかとなった。なお、表3に示す水分、たんぱく質、脂質、灰分、炭水化物は100g中の重量を示す。
【実施例7】
【0066】
実施例6で得られた加工ハチの子を用いて飲料を作成した。つまり水84.724gに果糖ぶどう糖液糖11g、黒糖3g、加工ハチの子0.4g、酸味料0.22g、香料0.3g、増粘剤(ペクチン)0.3g、グレープフルーツ種子抽出物0.05g、ビタミンB1 0.002g、ビタミンB2 0.002g、ビタミンB6 0.002gの割合で混合し、ビンに充填後、栓をし、蒸気滅菌を行い飲料の作成を行った。その結果、脂質様の物質の浮遊もなく、飲料として問題となるものはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る加工ハチの子の製造方法によって得られる加工ハチの子は、飲食物などに好適に使用することができ、特に健康食品などに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハチの子に、アスペルギルス メレウス(Aspergillus melleus)由来のタンパク質分解酵素、バチルス サブチルス(Bacillus subtilis)由来のタンパク質分解酵素およびバチルス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のタンパク質分解酵素からなる群より該ハチの子の産地および性別に基づいて選択される少なくとも1のタンパク質分解酵素を作用させる工程を含むことを特徴とする、加工ハチの子の製造方法。
【請求項2】
台湾産オスハチの子にアスペルギルス メレウス(Aspergillus melleus)由来のタンパク質分解酵素を作用させる工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の加工ハチの子の製造方法。
【請求項3】
中国産オスハチの子または台湾産女王ハチの子にバチルス サブチルス(Bacillus subtilis)由来またはバチルス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のタンパク質分解酵素を作用させる工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の加工ハチの子の製造方法。
【請求項4】
脂質成分を除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加工ハチの子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法により得られる加工ハチの子を含有する組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−97932(P2011−97932A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227596(P2010−227596)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(592207809)森川健康堂株式会社 (14)
【Fターム(参考)】