説明

加工モニタリング装置及びその方法

【課題】非接触式のエラー検出により物理的な障害を無くすとともに非接触式にした場合に発生するレーザ加工ヘッドの経年変化による検出の低下および新規なワーク素材等に対応した検出等を提供する。
【解決手段】ワークWの加工に対しモニタリングを行う加工モニタリング装置31である。そして、ワークWの加工時に発生する光を検出する検出部11aと、検出部11aによる検出結果に基づき特定のゲインを設定するコントローラ33とを備える。コントローラ33は、検出結果に対し複数に分割された分割倍率を分割数分変化させて所定の算出を行い算出結果が許容値に入った場合の分割倍率を抽出する抽出処理を実行し、抽出処理を設定回数実行し最も多く抽出された分割倍率を特定のゲインとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加工モニタリング装置及びその方法に関し、詳細にはレーザ加工機における自動調整機能付き加工モニタリング装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工の基本的な流れは、「位置決め」、「ピアス加工」、「切断加工」、「位置決め」、「ピアス加工」、「切断加工」を繰り返し実行する。
【0003】
そして、従来のレーザ加工機における加工監視には、例えば次のようなものがある。加工ヘッドが衝突した場合、衝突による損傷を最小限に止めるために、センサ部にシャーピン構造を採用しているものがある。このため、加工ヘッドが材料と干渉してから加工ヘッドが外れ機械の保護を行っている。
【0004】
他に、特許文献1参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−177372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の技術では、センサ部のシャーピン構造により、衝突による損傷を最小限に止めているが、加工を再開するためには、センサの交換が必要となる。
【0007】
また、ピアス加工の時点で加工ヘッドが穴に落ちている場合、切断工程で干渉を起こすという問題がある。さらに、軸の高速化に伴い、干渉する以前に回避する必要がある。
【0008】
本願発明は、非接触式のエラー検出により上記課題を解決するとともに非接触式にした場合に発生するレーザ加工ヘッドの経年変化による検出の低下および新規なワーク素材等に対応した検出を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の問題を解決するためのものであり、請求項1に係る発明は、ワークの加工に対しモニタリングを行う加工モニタリング装置において、前記ワークの加工時に発生する光を検出する検出部と、前記検出部による検出結果に基づき特定のゲインを設定するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記検出結果に対し複数に分割された分割倍率を分割数分変化させて所定の算出を行い算出結果が許容値に入った場合の分割倍率を抽出する抽出処理を実行し、前記抽出処理を設定回数実行し最も多く抽出された分割倍率を特定のゲインとする加工モニタリング装置である。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記ワーク毎に前記特定の倍率を加工条件として登録し製品の加工に際し参照する請求項1に記載の加工モニタリング装置である。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記ワークにおいて製品加工しない領域でピアス加工とアプローチ加工を行い前記特定のゲインを設定する請求項1または2に記載の加工モニタリング装置である。
【0012】
請求項4に係る発明は、製品の加工に係るピアス加工の際に前記特定のゲインを参照する請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工モニタリング装置である。
【0013】
請求項5に係る発明は、ワークの加工に対しモニタリングを行う加工モニタリング方法において、前記ワークの加工時に発生する光を検出する検出工程と、前記検出工程での検出結果に基づき特定のゲインを設定するコントロール工程とを有し、前記コントロール工程は、前記検出結果に対し複数に分割された分割倍率を分割数分変化させて所定の算出を行い算出結果が許容値に入った場合の分割倍率を抽出する抽出処理を実行し、前記抽出処理を設定回数実行し最も多く抽出された分割倍率を特定のゲインとする加工モニタリング方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非接触式により反射光を検出により加工監視を行うため、機械の損傷は全く無い。また状況確認後、加工を継続することが可能となる。
【0015】
一方、非接触式のエラー検出により上記課題を解決するとともに非接触式にした場合に発生するレーザ加工ヘッドの経年変化による検出の低下および新規なワーク素材等に対応した検出を提供することができる。
【0016】
さらに、材料が無い場所で加工を行った場合に反射光がでないことを検知して、材料の有無を判断する。このため、加工ヘッドがワーク上にあるのか穴に落ちているか、加工モニタリング装置でセンシングでき、特に、ピアス加工は軸停止時に行うため、この期間に穴を判定することにより加工ヘッド干渉前に衝突を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】レーザ加工機及び加工モニタリング装置の概略を示す概略図である。
【図2】散乱光の検知を説明する説明図である。
【図3】オートゲイン調整機能を説明する説明図である。
【図4】加工ヘッド衝突検出機能を説明する説明図である。
【図5】オートゲイン調整機能の動作を示すフローチャートである。
【図6】オートゲイン調整機能の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】測定結果の処理を説明する説明図である。
【図8】16分割の倍率を説明する説明図である。
【図9】ノズルの経年変化への対応を説明する説明図である。
【図10】ピアス加工への対応を説明する説明図である。
【図11】加工モニタリング機能を説明する説明図である。
【図12】加工モニタリング機能を説明する説明図である。
【図13】加工モニタリング機能を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明する。図1はこの発明によるレーザ加工機1の一つの実施の形態を示している。
【0019】
レーザ加工機1はコの字形のフレーム3を備えている。フレーム3は、下部フレーム5と、上部フレーム7と、下部フレーム5と上部フレーム7とを連結するサイドフレーム9とで構成されている。
【0020】
上部フレーム7には加工ヘッド11がZ軸方向(垂直方向)に軸移動可能に設けられている。加工ヘッド11には図示省略のレーザ発振装置よりレーザビームを与えられ、図示省略のアシストガス供給源よりアシストガスを供給される。
【0021】
下部フレーム5上にはワーク支持移動装置13が設けられている。ワーク支持移動装置13は、下部フレーム5上に固定配置されたセンタテーブル15と、センタテーブル15の両側に配置されてY軸方向に移動自在なサイドテーブル17と、センタテーブル15を跨いでX軸方向に延在して両側のサイドテーブル17に固定連結されたキャレッジベース19とを含んでいる。
【0022】
キャレッジベース19にはキャレッジ21がX軸方向に移動可能に設けられており、キャレッジ21にはテーブル上においてワーク(板材)Wをクランプするワーククランプ23が取り付けられている。
【0023】
ワーククランプ23によってクランプされたワークWは、キャレッジ21のX軸方向の軸移動によってX軸方向へ移動し、サイドテーブル17のY軸方向の軸移動によってY軸方向移動する。このX軸移動とY軸移動により、ワークWの被加工位置を加工ヘッド11の真下位置に移動させることができ、加工ヘッド11の先端ノズルよりレーザビームがアシストガス噴射と共にワークWの被加工位置に向けて照射されることにより、レーザ加工が行われる。
【0024】
サイドフレーム9側にはレーザ加工機1の制御を行う制御部(CNC)25がプレス本体に隣接して設けられている。制御部(CNC)25のキャビネットには、NC操作盤27、タッチセンサパネル付きのディスプレイ装置29が取り付けられている。また、レーザ加工機1には加工モニタリング装置31が備えられている。この加工モニタリング装置31は制御部(コントローラ)33を有し制御部(CNC)25と連携してオートゲインの自動調整と加工の異常等を検出する。
【0025】
一方、制御部(CNC)25は、モータ位置検出器の各々よりモータ位置信号を入力し、加工プログラムに従ってフィードバック制御式に各制御軸(X軸、Y軸、Z軸)の軸制御を行うと共に、レーザ出力制御部、アシストガス制御部へ制御信号を出力する。加工ヘッド11の先端ノズルには先端ノズルとワーク上面とのZ軸方向の距離を静電容量や渦電流等によって非接触式に計測する距離センサを取り付けられている。
【0026】
図2を参照する。加工ヘッド11は検知部(例えば、光ファイバー等)11aを有している。この検知部11aはワークWに対する加工ポイントP等から反射した反射光・散乱光等Lを検知する。検知部11aで検出された光(光量)は制御部(コントローラ)33で処理される。
【0027】
図3を参照する。前記制御部(CNC)25は、オートゲインの調整をスタートさせる機能25aとゲイン(倍率)の登録を行う機能25bとを含む。
【0028】
一方、加工モニタリング装置31(オートゲイン調整の場合)は、上記検出部(光ファイバー等)11aを備えると共に制御部(コントローラ)33を備える。前記制御部(コントローラ)33はゲイン(倍率)を測定する機能33aと倍率測定結果を送信する機能33bを有する。すなわち、制御部(コントローラ)33は、検出結果に対し複数に分割された分割倍率を分割数分変化させて所定の算出を行い算出結果が許容値に入った場合の分割倍率を抽出する抽出処理を実行し、抽出処理を設定回数実行し最も多く抽出された分割倍率を特定のゲインとする。
【0029】
図4を参照する。前記制御部(CNC)25は、ピアス加工をスタートする機能25cと切断開始/アラームを命令する機能25dを含む。
【0030】
一方、加工モニタリング装置31(加工ヘッド衝突検出の場合)は、検出部(光ファイバー)11aを備えると共に制御部(コントローラ)33を備える。さらに、前記制御部(コントローラ)33はピアス加工の光量を測定する機能33cとピアス加工の測定結果を送信する機能33dを含む。
【0031】
図5を参照し、オートゲインを設定する動作を示す。ここで、本実施例で使用する用語について定義する。「基準電圧」は、監視機能が正常に機能するための目標値である(良好加工中の反射光量(散乱光量を含む)の変換値)。すなわち、「基準電圧」(1±0.2V以内)=「良好加工中の反射光量」×「ゲイン」という式で定義される。
【0032】
「ゲイン」は加工中に光ファイバ11aで集めた光量を電圧に変換するためのもので、加工中の反射光を調整する倍率である(光量に倍率を掛ける)。
【0033】
初めに、ステップS501では、制御部(CNC)25の制御によりキャリブレーション用スリット加工を開始する。
【0034】
ステップS503では、制御部(CNC)25の制御によりピアス加工を実行する(図のピアス加工点PPの加工)。
【0035】
ステップS505では、制御部(CNC)25の制御によりアプローチ加工を行う(図のアプローチ加工AP)。
【0036】
ステップS507では、制御部(CNC)25がスタート信号出力を加工モニタリング装置31へ送信する。
【0037】
以下のステップS509〜ステップS519までの処理は、上記ステップS505でのアプローチ加工中に実行される。
【0038】
ステップS509では、制御部(コントローラ)33がマスク時間として切断開始時、反射光が安定するまでの時間を無視する(動作しない時間)。
【0039】
ステップS511では、制御部(コントローラ)33がオートゲイン検出(複数に分割された異なる値のゲインの呼出)を行う。そして、最大ゲイン(倍率)よりゲイン(倍率)を分割毎に減少させ、所定の計算(「検出した光量」×「ゲイン(倍率)」)を実行し、この計算結果が上記の「基準電圧」に対し許容値範囲に入ったゲイン(倍率)を適正ゲイン(倍率)と判断する。
【0040】
ステップS513では、制御部(コントローラ)33が、オートゲイン検出を設定回数行うため検出回数のカウントを行う。設定回数行ったと判断したとき処理はステップS515に進む。設定回数行っていない場合に処理はステップS511に戻る。
【0041】
ステップS515では制御部(コントローラ)33が結果集積を行う。すなわち、n数回選択されたゲイン(倍率)のうち、最も多いゲイン値を特定のゲイン(倍率)として出力する。
【0042】
ステップS517では、制御部(コントローラ)33が、結果出力を行う。すなわち、4ビットで制御部(CNC)25へ出力を行い加工条件ファイルに書き込む。なお、その他の加工条件は、オートゲインより事前に調整が完了している。
【0043】
ステップS519では、制御部(コントローラ)33が完了信号を出力する。
【0044】
図6を参照する(上記ステップS511−S515における処理結果)。特定のゲイン(倍率)を求めるタイミングはマスク時間終了後の16段階で調整N回のみである。最大ゲイン(倍率)よりゲイン(倍率)を減少させ、所定の計算(「検出した光量」×「ゲイン(倍率)」)を実行し、この計算結果が上記の基準電圧(1V)に対し許容値に入ったゲイン(倍率)を求める。この場合に、最大ゲイン(倍率)からゲイン(倍率)を減少する段階が16段階ある。上記の処理をN回(20回等)行うので、本例では、16×20回行い、基準電圧に対し最も閾値に多く入った加工反射光が変換された電圧に対応するゲインを適正ゲインと判断する。換言すれば16段で1setで、ここからゲイン(倍率)が1つ選択される。これを20回行い、ゲイン(倍率)を20つ選択し、この中から最も多いゲイン(倍率)を適正と判断する。
【0045】
図7を参照する。通常は20set行うが、説明を簡単にするため3回行った場合を想定している。すなわち、3回抽出されたゲイン(倍率)の内、最も多い0.4倍のゲイン(倍率)を特定のゲイン(倍率)として出力している。
【0046】
図8を参照する。倍率調整領域の拡大への対応を示す。フォトカプラにより加工で発生する反射光・散乱光等を電気信号に変換を行い、その後の抵抗を変更することにより変換率を変更するものであるが、上述のように16分割にした場合に、例えば7分割の場合に比べて5[倍]の光量に対応できる。これにより、監視範囲が拡大し、新素材または新機能に対応できる。さらに、1/2[倍]の光量に対応できるため監視範囲が拡大し、経年変化または新素材に対応できる。
【0047】
図9を参照する。ノズルの酸化(経年変化)を示す。ノズルの酸化等によって、内壁部(加工点に最も近いため内壁部に反射する光量が多い)の反射率低下が生じる。初期設定倍率では、基準電圧(1±0.2V)に対し大幅に減衰してしまい、監視精度が悪化する。オートゲイン調整を行うことで現状の加工状態に最適な監視状態に設定できる。また、オートゲイン調整を行うことで、ノズル以外にレンズ・ミラーの消耗による反射光の変化にも調整が可能となる。なお、表9AはワークWの材質が「C−SUS1.0S」の場合であり、表9BはワークWの材質が「C−SECC1.6S」の場合であり、表9CはワークWの材質が「SPH6.0E」の場合である。
【0048】
図10を参照する。ピアス加工への対応を示す。ピアス監視機能についてもゲイン設定は重要である。ピアス加工の初期設定時間は5(sec)である。続いて、ピアス延長時間が5(sec)である。基準電圧(例えば、1V)に対し許容値以外のときは(ピアス加工の際の停止状態であることの条件も満たす)、加工機アラーム、画面メッセージ「ピアス未貫通」を行う。
【0049】
図11、図12および図13を参照する。ピアス加工監視機能で、例えば、図11のようにワークWが加工ヘッド11の下側に存在しない場合でワークWと干渉する場合はピアス加工時の停止を条件として事前にアラームを出すことができる。図12、13は正常の場合である。
【0050】
この発明は前述の発明の実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことにより、その他の態様で実施し得るものである。
【符号の説明】
【0051】
1 レーザ加工機
3 フレーム
5 下部フレーム
7 上部フレーム
9 サイドフレーム
11 加工ヘッド
11a 検出部(光ファイバー)
13 ワーク支持移動装置
15 センタテーブル
17 サイドテーブル
19 キャレッジベース
21 キャレッジ
23 ワーククランプ
25 制御部(CNC)
25a オートゲイン調整スタート機能
25b 倍率登録機能
27 NC操作盤
29 ディスプレイ装置
31 加工モニタリング装置
33 制御部(コントローラ)
33a ゲイン(倍率)測定機能
33b ゲイン(倍率)測定結果送信機能
33c ピアス測定機能
33d ピアス測定結果送信機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの加工に対しモニタリングを行う加工モニタリング装置において、
前記ワークの加工時に発生する光を検出する検出部と、前記検出部による検出結果に基づき特定のゲインを設定するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記検出結果に対し複数に分割された分割倍率を分割数分変化させて所定の算出を行い算出結果が許容値に入った場合の分割倍率を抽出する抽出処理を実行し、前記抽出処理を設定回数実行し最も多く抽出された分割倍率を特定のゲインとすることを特徴とする加工モニタリング装置。
【請求項2】
前記ワーク毎に前記特定の倍率を加工条件として登録し製品の加工に際し参照することを特徴とする請求項1に記載の加工モニタリング装置。
【請求項3】
前記ワークにおいて製品加工しない領域でピアス加工とアプローチ加工を行い前記特定のゲインを設定することを特徴とする請求項1または2に記載の加工モニタリング装置。
【請求項4】
製品の加工に係るピアス加工の際に前記特定のゲインを参照することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工モニタリング装置。
【請求項5】
ワークの加工に対しモニタリングを行う加工モニタリング方法において、
前記ワークの加工時に発生する光を検出する検出工程と、前記検出工程での検出結果に基づき特定のゲインを設定するコントロール工程とを有し、
前記コントロール工程は、前記検出結果に対し複数に分割された分割倍率を分割数分変化させて所定の算出を行い算出結果が許容値に入った場合の分割倍率を抽出する抽出処理を実行し、前記抽出処理を設定回数実行し最も多く抽出された分割倍率を特定のゲインとすることを特徴とする加工モニタリング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−86115(P2013−86115A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227694(P2011−227694)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】