説明

加工工具取付具

【課題】 簡単な作業でもって加工工具を工具取付部に確実に取り付けることができる加工工具取付具を提供すること。
【解決手段】 工具取付部35に加工工具36を固定するための固定部材38と、固定部材38を加工工具36に押圧させるための押圧具40と、を具備する加工工具取付具。押圧具40は第1及び第2押圧部材42,44と、第1及び第2押圧部材42,44を近接及び離隔する方向に移動させるための固定用ねじ46と、を備え、固定用ねじ36が第1押圧部材42を通して第2押圧部材44に螺合される。固定用ねじ46を締付け方向に回動すると、第1及び第2押圧部材42,44が相互に近接する方向に移動され、これらのテーパ面58,64及び固定部材38のテーパ面54,56によって固定用部材36が加工工具36に作用し、この固定部材36によって加工工具36が押圧固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タレット旋盤などの工具取付部に加工工具を着脱自在に取り付ける加工工具取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、NC旋盤においては、切削加工を行うときには加工工具としての切削バイトが用いられ、この切削バイトが工具取付部、例えばタレットの工具取付部に取り付けられる。旋盤本体にはZ軸方向に移動自在に基台が装着され、この基台にはX軸方向に移動自在に刃物台本体が装着され、この刃物台本体にタレットが設けられ、かかるタレットに周方向に間隔を置いて工具取付部が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この工具取付部に加工工具(例えば、切削バイト)を取り付けるための加工工具取付具は、ベース部材と、このベース部材に螺着された固定用ねじとから構成され、固定用ねじがベース部材に間隔をおいて配設される。加工工具を取り付けるときには、固定用ねじを締め付けることによって、この固定用ねじが加工工具に作用し、この固定用ねじによって着脱可能に取り付けられる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−315014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した加工工具取付具においては、次の通りの解決すべき問題がある。即ち、加工工具を固定するためには例えば2本の固定用ねじを締め付けなければならず、その固定作業が煩雑である。また、加工工具を確実に固定するためにはこれらの固定用ねじを均一に締め付けなければならず、その締付け調整が煩雑である。
【0006】
本発明の目的は、簡単な作業でもって加工工具を工具取付部に確実に取り付けることができる加工工具取付具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の加工工具取付具は、工作機械の工具取付部に加工工具を着脱自在に取り付けるための加工工具取付具であって、
前記工具取付部に前記加工工具を固定するための固定部材と、前記固定部材を前記加工工具に押圧させるための押圧具と、を具備しており、
前記押圧具は、相互に近接及び離隔する方向に移動自在に配設された第1及び第2押圧部材と、前記第1及び第2押圧部材を近接及び離隔する方向に移動させるための固定用ねじと、を備え、前記第1押圧部材の片面には、外側に向けて前記固定部材側に傾斜する第1テーパ面が設けられ、前記第2押圧部材の片面には、外側に向けて前記固定部材側に傾斜する第2テーパ面が設けられており、
前記固定部材の片面には前記加工工具を押圧するための押圧面が設けられ、その他面には、その一端部に前記第1押圧部材の前記第1テーパ面に対応する第3テーパ面が設けられているとともに、その他端部に前記第2押圧部材の前記第2テーパ面に対応する第4テーパ面が設けられており、
前記固定用ねじを締付け方向に回動すると、前記第1及び第2押圧部材が相互に近接する方向に移動し、前記第1押圧部材の前記第1テーパ面が前記固定部材の前記第3テーパ面に作用するとともに、前記第2押圧部材の前記第2テーパ面が前記固定部材の前記第4テーパ面に作用し、これによって前記固定部材の前記押圧面が前記加工工具に押圧作用することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の加工工具取付具では、前記固定用ねじは、頭部及びこの頭部から延びる軸部を有し、前記軸部に雄ねじ部が設けられており、前記第1押圧部材には収容凹部及びこの収容凹部から延びる貫通孔が設けられ、前記第2押圧部材には雌ねじ部が設けられており、前記固定用ねじの前記頭部は前記第1押圧部材の前記収容凹部に収容され、前記固定用ねじの前記雄ねじ部は前記第1押圧部材の前記貫通孔を通して前記第2押圧部材の前記雌ねじ部に螺合され、前記固定用ねじを締付け方向に回動すると、前記固定用ねじの前記頭部が第1押圧部材の前記収容凹部に作用することによって、前記第1押圧部材が前記第2押圧部材に向けて押圧されるととも、前記固定用ねじの前記雄ねじ部と前記第2押圧部材の前記雌ねじ部の作用によって、前記第2押圧部材が前記第1押圧部材に向けて押圧されることを特徴とする。
【0009】
更に、本発明の請求項3に記載の加工工具取付具では、前記第1押圧部材の前記収容凹部の開口部には、前記固定用ねじの離脱を防止するための離脱防止用ねじが螺着され、前記離脱防止用ねじには、前記固定用ねじを回動するための操作開口が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の加工工具取付具によれば、押圧具は相互に近接及び離隔する方向に移動自在である第1及び第2押圧部材を備え、第1押圧部材に第1テーパ面が設けられ、第2押圧部材に第2テーパ面が設けられ、また固定部材には、第1テーパ面に対応して第3テーパ面が設けられるとともに、第2テーパ面に対応して第4テーパ面が設けられているので、固定用ねじを締付け方向に回動すると、第1及び第2押圧部材が相互に近接する方向に移動し、第1押圧部材の第1テーパ面が固定部材の第3テーパ面に作用するとともに、第2押圧部材の第2テーパ面が固定部材の第4テーパ面に作用し、これによって固定部材が加工工具に押圧作用して加工工具を工具取付部に取り付けることができる。このとき、第1押圧部材の第1テーパ面が固定部材の第3テーパ面に、また第2押圧部材の第2テーパ面が固定部材の第4テーパ面に作用するので、固定部材の押圧面が加工工具に均一に作用し、固定部材を介して加工工具を確実に固定することができる。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の加工工具取付具によれば、固定用ねじの頭部は第1押圧部材の収容凹部に収容され、その雄ねじ部は第1押圧部材の貫通孔を通して第2押圧部材の雌ねじ部に螺合されるので、固定用ねじを締付け方向に回動すると、固定用ねじの頭部が第1押圧部材の収容凹部に作用することによって、第1押圧部材が第2押圧部材に向けて押圧されるとともに、固定用ねじの雄ねじ部と第2押圧部材の雌ねじ部の作用によって、第2押圧部材が第1押圧部材に向けて押圧され、かく押圧されることによって、第1及び第2押圧部材は相互に近接する方向に移動され、かくして、固定部材が加工工具に実質上均一に作用し、この固定部材を介して加工工具を確実に固定することができる。尚、この固定用ねじを緩み方向に回動すると、固定用ねじの雄ねじ部と第2押圧部材の雌ねじ部の作用によって、第1及び第2押圧部材は相互に離隔する方向に移動される。
【0012】
更に、本発明の請求項3に記載の加工工具取付具によれば、第1押圧部材の収容凹部の開口部に離脱防止用ねじが螺着されているので、固定用ねじを緩み方向に回動すると、この固定用ねじが離脱防止用ねじに当接して緩み方向の回動が阻止され、従って、離脱防止用ねじを取り付けた状態における固定用ねじの取外しを確実に防止することができる。また、離脱防止用ねじには固定用ねじを回動するための操作開口が設けられているので、この操作開口を通して固定用ねじを締付け方向及び緩み方向に回動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う加工工具取付具の一実施形態について説明する。図1は、一実施形態の加工工具取付具が適用される工作機械の一例を示す正面図であり、図2は、図1の工作機械におけるタレットを示す斜視図であり、図3は、図2のタレットに取り付けられた加工工具取付具を分解して示す斜視図であり、図4は、図3に示す加工工具取付具を固定用ねじを緩めたときの状態で示す断面図であり、図5は、図3に示す加工工具取付具を固定用ねじを締め付けたときの状態で示す断面図である。
【0014】
図1において、工作機械の一例としての図示のNC旋盤は、工場などの床面に設置される旋盤本体2を備え、この旋盤本体2の一端部(図1において左端部)に第1主軸部4が設けられている。第1主軸部4内には第1主軸(図示せず)が回転自在に支持され、この第1主軸に第1チャック手段6が装着され、この第1チャック手段6に加工すべき第1加工物(図示せず)が取り付けられ、第1駆動源(図示せず)によって、第1主軸、第1チャック手段6及び第1加工物が所定方向に回動される。また、旋盤本体2の他端部(図1において右端部)に第2主軸部8が設けられている。第2主軸部8内には第2主軸(図示せず)が回転自在に支持され、この第2主軸に第2チャック手段10が装着され、この第2チャック手段10に加工すべき第2加工物(図示せず)が取り付けられ、第2駆動源(図示せず)によって、第2主軸、第2チャック手段10及び第2加工物が所定方向に回動される。
【0015】
第1主軸部4と第2主軸部8との間には往復テーブル12が配設され、この往復テーブル12は、第1案内支持機構14を介してZ軸方向(図1において左右方向)に往復移動自在に旋盤本体2に支持されている。また、この往復テーブル12には刃物テーブル20が装着され、この刃物テーブル20は、第2案内支持機構22を介してX軸方向(Z軸方向に対して垂直な方向であって、図1において紙面に垂直な方向)に往復移動自在に往復テーブル12に支持されている。
【0016】
この実施形態では、刃物テーブル20の片側部(図1において左部)に刃物取付台24が設けられ、この刃物取付台24の工具取付部に後述する加工工具取付具26(図2及び図3参照)を用いて第1加工工具28、例えば切削用加工工具が取り付けられる。第1加工工具28は第1主軸部4の第1チャック手段6に対向して位置し、第1チャック手段6に保持された第1加工物に所要の加工を施す。
【0017】
また、刃物テーブル20の他側部(図1において右部)にタレット型刃物台30が設けられている。このタレット型刃物台30は、刃物テーブル20に取り付けられた取付本体部32と、この取付本体部32に回転軸(図示せず)を介して回転自在に支持されたタレット34を備え、このタレット34の工具取付部35に後述する加工工具取付具26を用いて第2加工工具36(図2参照)、例えば切削用加工工具が取り付けられる。第2加工工具36は第2主軸部8の第2チャック手段10に対向して位置し、第2チャック手段10に保持された第2加工物に所要の加工を施す。
【0018】
次に、図2及び図3を参照して、加工工具を取り付けるための加工工具取付具26について説明する。この加工工具取付具26は、刃物取付台24の工具取付部に第1加工工具28を取り付けるときに、またタレット34の工具取付部35に第2加工工具36を取り付けるときに用いられ、以下の説明においては、タレット34の工具取付部35に適用した例について説明するが、刃物取付台24の刃物取付部に適用するときにも同様に適用することができる。
【0019】
図2及び図3において、図示の加工工具取付具26は、第2加工工具36を固定するための固定部材38と、この固定部材38を押圧させるための押圧具40とを具備し、押圧具40が一対の押圧部材、即ち第1及び第2押圧部材42,44と、これら第1及び第2押圧部材42,44を相互に近接及び離隔する方向に移動させるための固定用ねじ46を有している。固定部材38は細長いブロック状部材から構成され、その片面(図2及び図3において上面)は平坦に形成されている。この固定部材38の他面(図2及び図3において下面)の長手方向中央部には中央凹部48が設けられ、この中央凹部48の片側面が第1当接部50として機能し、その他側面が第2当接部52として機能する。この固定部材38の他面の一端部(図3において左端部)にはテーパ面54(第3テーパ面を構成する)が設けられ、その他端部(図3において右端部)にはテーパ面56(第4テーパ面として機能する)が設けられている。一方のテーパ面54は、内側に向けて第1押圧部材42側に傾斜し(即ち、内側に向けて肉厚が漸増する)、中央の凹部48まで直線状に傾斜して延び、また他方のテーパ面56は、内側に向けて第2押圧部材44側に傾斜し(即ち、内側に向けて肉厚が漸増する)、中央の凹部48まで直線状に傾斜して延びている。
【0020】
また、第1押圧部材42の片面(図3において上面)には、その一端部(図3において左端部)にテーパ面58(第1テーパ面を構成する)が設けられ、その他端部(図3において右端部)に固定部材38側に突出する当接突部60が設けられ、テーパ面58と当接突部60との間に凹部62が設けられている。第1押圧部材42のテーパ面58は、固定部材38の一方のテーパ面54(第3テーパ面)に対応し、外側に向けて固定部材38側に傾斜し、凹部62から外側端まで直線状に傾斜して延びている。この第1当接部材42の他面(図3において下面)は、平坦に形成されている。
【0021】
更に、第2押圧部材44は、第1押圧部材42と略左右対称に構成されており、その一端部(図3において右端部)にテーパ面64(第2テーパ面を構成する)が設けられ、その他端部(図3において左端部)に固定部材38側に突出する当接突部66が設けられ、テーパ面64と当接突部66との間に凹部68が設けられている。第2押圧部材44のテーパ面64は、固定部材38の他方のテーパ面56(第4テーパ面)に対応し、外側に向けて固定部材38側に傾斜し、凹部68から外側端まで直線状に傾斜して延びている。この第2当接部材44の他面(図3において下面)も、平坦に形成されている。
【0022】
この実施形態では、更に、第1押圧部材42の一端部に収容凹部70が設けられているとともに、この収容凹部70から第1押圧部材42を貫通するように貫通孔72(図4及び図5参照)が設けられている。また、第2押圧部材44には雌ねじ部74が設けられている。固定用ねじ46は、頭部76と、この頭部76から延びる軸部78とを有し、軸部78に雄ねじ部80が設けられている。図4及び図5に示すように、この固定用ねじ46の軸部78は、第1押圧部材42の貫通孔72を挿通され、その雄ねじ部80が第2押圧部材44の雌ねじ部74に螺着される。
【0023】
この固定用ねじ46を締付け方向に回動して締め付けると、図5に示すように、その頭部76は収容凹部70に収容される。この収容凹部70の開口部には、離脱防止用ねじ82が装着される。この実施形態では、収容凹部70の開口部に雌ねじ部84が設けられ、離脱防止用ねじ82には雄ねじ部86が設けられ、この雄ねじ部86が収容凹部70の雌ねじ部84に着脱自在に螺着される。このように螺着した離脱防止用ねじ82は、第1押圧部材42の貫通孔72を通して第2押圧部材44の雌ねじ部74に螺着された固定用ねじ46の頭部76と所定の間隔が保たれるように螺着される。この離脱防止用ねじ82には円形状の操作開口87が設けられ、この操作開口87を通して操作工具(図示せず)を挿入して固定用ねじを締付け方向及び緩み方向に回動操作することができる。
【0024】
このような加工工具取付具26を用いて第2加工工具36を取り付けるときには、タレット34の工具取付部35に着脱自在に取り付けられる。タレット34の工具取付部35は、タレット34に周方向に間隔をおいて配設された取付凹部88により構成され、この取付凹部88を規定する側壁90,92間に取り付けられる。また、第2加工工具36は細長い直方体状の工具本体94(図4及び図5における上面及び下面は平坦に形成されている)を備え、この工具本体94の先端部にバイト部96が設けられている。例えば、図2、図4及び図5に示すように、取付凹部88の側壁90に接するように第2加工工具36の工具本体94が設けられ、その側壁92に接するように加工工具取付具26の第1及び第2押圧部材42,44が取り付けられ、第2加工工具36の工具本体94と第1及び第2押圧部材42,44との間に固定部材38が介在される。
【0025】
このタレット34の工具取付部35に第2加工工具36を取り付ける場合、例えば、次のようにして取り付けることができる。図4に示すように、固定用ねじ46の軸部78を第1押圧部材42の貫通孔72を通して挿通し、その雄ねじ部80を第2押圧部材44の雌ねじ部74に螺着し、第1押圧部材42の開口部に離脱防止用ねじ82を螺着し、このように固定用ねじ46を介して連結した第1及び第2押圧部材42,44の上側に固定部材38を載置する。このように載置すると、図4に示すように、固定部材38の一方のテーパ面54(第3テーパ面)は第1押圧部材42のテーパ面58(第1テーパ面)に支持され、また固定部材38の他方のテーパ面56(第4テーパ面)が第2押圧部材44のテーパ面64(第2テーパ面)に支持され、このような支持状態では、第1及び第2押圧部材42,44の当接突部60,66は固定部材38の中央凹部48内に位置する。
【0026】
次に、固定部材38が載置された状態の第1及び第2押圧部材42,44をタレット34の工具取付部35、具体的には取付凹部88の側壁92に載置するように取り付け、更にこの固定部材38の上側に第2加工工具36の工具本体94を載置する。尚、図4においては、理解を容易にするために、第2加工工具36を取付凹部88の側壁90に接した状態で示し、第2加工工具36と固定部材38との間に間隙が存在するように示しているが、実際には、固定部材38の上側に第2加工工具36が載置され、この第2加工工具36と取付凹部88の側壁90との間に間隙が存在する。
【0027】
その後、工具(図示せず)を用いて固定用ねじ46を締付け方向に回動させる。このように回動すると、図4及び図5から理解されるように、固定用ねじ46の頭部76が第1押圧部材42の収容凹部70の底部に作用し、この第1押圧部材42が第2押圧部材44に向けて押圧されるとともに、固定用ねじ46の雄ねじ部80及び第2押圧部材44の雌ねじ部74の作用によって、第2押圧部材44が第1押圧部材42に向けて押圧され、第1及び第2押圧部材42,44が相互に近接する方向に移動される。かくすると、第1押圧部材42のテーパ面58(第1テーパ面)が固定部材38の一方のテーパ面54(第3テーパ面)に作用し、また第2押圧部材44のテーパ面64(第2テーパ面)が固定部材38の他方のテーパ面56(第4テーパ面)に作用し、これら4つのテーパ面の作用によって固定部材38が図4において上方に移動される。
【0028】
このようにして固定用ねじ46を締付け方向に強く締め付けると、図5に示すように、第1及び第2押圧部材42,44のテーパ面58,64及び固定部材38のテーパ面54,56を介してこの固定部材38が第2加工工具36の工具本体94を取付凹部88の側壁90に押圧し、第2加工工具36はこの側壁90と固定部材38との間に確実に挟持固定される。このような固定状態においては、固定用ねじ46の頭部76は第1押圧部材42の収容凹部70内に収容される。
【0029】
このような装着状態においては、固定用ねじ46を緩み方向に回動させると、この固定用ねじ46の頭部76が離脱防止用ねじ82に当接し、固定用ねじ46の離脱方向の移動が阻止され、第1及び第2押圧部材42,44からの外れが防止される。
【0030】
第2加工工具36を取り外すときには、上述とは反対に、固定用ねじ46を緩み方向に回動させればよい。かくすると、第1及び第2押圧部材42,44が相互に離隔する方向に移動され、第1及び第2押圧部材42,44のテーパ面58,64及び固定部材38のテーパ面54,56の作用によって、固定部材38が図4において下方に移動され、第2加工工具36と取付凹部88の側壁90との間に間隙が生じ、第2加工工具36を工具取付部35から容易に取り外すことができる。
【0031】
この加工工具取付具26を備えた工作機械では、一つの固定用ねじ46を締め付けることによって、第2加工工具36をタレット34の工具取付部35に取り付けることができ、またこの固定用ねじ46を緩めることによって、第2加工工具36をタレット34の工具取付部35から取り外すことができ、簡単な作業でもって第2加工工具36の取付け、取外しを行うことができる。また、その取付けについては、第1及び第2押圧部材42,44のテーパ面58,64及び固定部材38のテーパ面54,56の作用によって、固定部材38全体が第2加工工具36の工具本体94に作用するので、第2加工工具36をタレット34の工具取付部35に確実に取り付けることができる。
【0032】
以上、本発明に従う加工工具取付具の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0033】
上述した実施形態では、固定用ねじ46の離脱を防止するために離脱防止用ねじ82を設けているが、このような離脱防止用ねじ82に代えて、離脱防止用部材(例えば、リング状部材)を第1押圧部材42に一体的に設けるようにしてもよい。この場合、第1押圧部材42を通して第2押圧部材44に固定用ねじ46を螺着した状態にてこの離脱防止用部材を収容凹部70の開口部に溶接などによって一体化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】一実施形態の加工工具取付具が適用される工作機械の一例を示す正面図。
【図2】図1の工作機械におけるタレットを示す斜視図。
【図3】図2のタレットに取り付けられた加工工具取付具を分解して示す斜視図。
【図4】図3に示す加工工具取付具を固定用ねじを緩めたときの状態で示す断面図。
【図5】図3に示す加工工具取付具を固定用ねじを締め付けたときの状態で示す断面図。
【符号の説明】
【0035】
2 旋盤本体
24 刃物取付台
26 加工工具取付具
30 タレット型刃物台
35 工具取付部
36 第2加工工具
38 固定部材
40 押圧具
42,44 押圧部材
46 固定用ねじ
54,56,58,64 テーパ面
70 収容凹部
76 頭部
78 軸部
82 離脱防止用ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の工具取付部に加工工具を着脱自在に取り付けるための加工工具取付具であって、
前記工具取付部に前記加工工具を固定するための固定部材と、前記固定部材を前記加工工具に押圧させるための押圧具と、を具備しており、
前記押圧具は、相互に近接及び離隔する方向に移動自在に配設された第1及び第2押圧部材と、前記第1及び第2押圧部材を近接及び離隔する方向に移動させるための固定用ねじと、を備え、前記第1押圧部材の片面には、外側に向けて前記固定部材側に傾斜する第1テーパ面が設けられ、前記第2押圧部材の片面には、外側に向けて前記固定部材側に傾斜する第2テーパ面が設けられており、
前記固定部材の片面には前記加工工具を押圧するための押圧面が設けられ、その他面には、その一端部に前記第1押圧部材の前記第1テーパ面に対応する第3テーパ面が設けられているとともに、その他端部に前記第2押圧部材の前記第2テーパ面に対応する第4テーパ面が設けられており、
前記固定用ねじを締付け方向に回動すると、前記第1及び第2押圧部材が相互に近接する方向に移動し、前記第1押圧部材の前記第1テーパ面が前記固定部材の前記第3テーパ面に作用するとともに、前記第2押圧部材の前記第2テーパ面が前記固定部材の前記第4テーパ面に作用し、これによって前記固定部材の前記押圧面が前記加工工具に押圧作用することを特徴とする加工工具取付具。
【請求項2】
前記固定用ねじは、頭部及びこの頭部から延びる軸部を有し、前記軸部に雄ねじ部が設けられており、前記第1押圧部材には収容凹部及びこの収容凹部から延びる貫通孔が設けられ、前記第2押圧部材には雌ねじ部が設けられており、前記固定用ねじの前記頭部は前記第1押圧部材の前記収容凹部に収容され、前記固定用ねじの前記雄ねじ部は前記第1押圧部材の前記貫通孔を通して前記第2押圧部材の前記雌ねじ部に螺合され、前記固定用ねじを締付け方向に回動すると、前記固定用ねじの前記頭部が第1押圧部材の前記収容凹部に作用することによって、前記第1押圧部材が前記第2押圧部材に向けて押圧されるととも、前記固定用ねじの前記雄ねじ部と前記第2押圧部材の前記雌ねじ部の作用によって、前記第2押圧部材が前記第1押圧部材に向けて押圧されることを特徴とする請求項1に記載の加工工具取付具。
【請求項3】
前記第1押圧部材の前記収容凹部の開口部には、前記固定用ねじの離脱を防止するための離脱防止用ねじが螺着され、前記離脱防止用ねじには、前記固定用ねじを回動するための操作開口が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の加工工具取付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−120093(P2010−120093A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293172(P2008−293172)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(591014835)高松機械工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】