説明

加工方法および分析方法

【課題】短時間で容易に試料の薄片部を形成することができる加工方法を提供する。
【解決手段】本実施形態の加工方法は、平坦化工程(ステップS1)および薄片部形成工程(ステップS2)を順に行うことで、試料1Bの薄片部13を形成することができる。薄片部形成工程(ステップS2)では、試料の平坦面11の下部に対して、集束イオンビーム装置から出力された集束イオンビームが平坦面11に平行な方向に照射される。集束イオンビームの照射により試料がスパッタエッチングされて、平坦面11に対向する対向面12が形成される。これにより、平坦面11と対向面12とに挟まれた薄片部13を有する試料1Bが作成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工方法および分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料を観察または分析する際に、その試料を薄片化することが必要である場合がある。例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy、以下「TEM」と略す。)により試料を観察する際には、試料を薄片化することが必要である。また、電子線マイクロアナライザ(ElectronProbe Micro Analyzer、以下「EPMA」と略す。)により試料を元素分析する際に、試料を薄片化することにより空間分解能向上が可能である(特許文献1や非特許文献1,2を参照)。また、その試料の薄片はできる限り薄いことが望ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第99/05506号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本表面科学会編、表面分析技術選書、透過型電子顕微鏡、pp.33-42
【非特許文献2】杉村、他、「特集 材料と分析技術 −分析事例紹介−」、デンソーテクニカルレビュー、Vol.12、No.2、pp.20-29、2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、試料を薄片化するには長時間を要する。また、薄片を扱うには困難を伴い、薄片を扱うための専用のマニピュレータが必要である。したがって、薄片化を要する試料の観察または分析は容易ではない。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、短時間で容易に試料の薄片部を形成することができる加工方法を提供することを目的とする。また、本発明は、容易に試料の分析をすることができる分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加工方法は、(1) 試料の一部を平坦面とする平坦化工程と、(2) 平坦化工程により得られた試料の平坦面の下部に対して、集束させたイオンビームを平坦面に平行な方向に照射することで試料をスパッタエッチングし、平坦面に対向する対向面を形成して、平坦面と対向面とに挟まれた薄片部を形成する薄片部形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の分析方法は、(1) 試料の一部を平坦面とする平坦化工程と、(2) 平坦化工程により得られた試料の平坦面の下部に対して、集束させたイオンビームを平坦面に平行な方向に照射することで試料をスパッタエッチングし、平坦面に対向する対向面を形成して、平坦面と対向面とに挟まれた薄片部を形成する薄片部形成工程と、(3) 薄片部形成工程により形成された薄片部の分析を行う分析工程と、を備えることを特徴とする。分析工程においてEPMAにより薄片部の元素分析を行うのが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、短時間で容易に試料の薄片部を形成することができ、また、容易に試料の分析をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の加工方法および分析方法のフローチャートである。
【図2】本実施形態の加工方法および分析方法における薄片部形成工程(ステップS2)を説明する図である。
【図3】本実施形態の加工方法および分析方法における薄片部形成工程(ステップS2)により形成された薄片部13を有する試料1Bを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態の加工方法および分析方法のフローチャートである。本実施形態の加工方法は、平坦化工程(ステップS1)および薄片部形成工程(ステップS2)を順に行うことで、試料の薄片部を形成することができる。本実施形態の分析方法は、平坦化工程(ステップS1),薄片部形成工程(ステップS2)および分析工程(ステップS3)を順に行うことで、試料の薄片部を分析することができる。図2は、本実施形態の加工方法および分析方法における薄片部形成工程(ステップS2)を説明する図である。図3は、本実施形態の加工方法および分析方法における薄片部形成工程(ステップS2)により形成された薄片部13を有する試料1Bを説明する図である。図3(a)は斜視図であり、同図(b)は正面図である。
【0013】
平坦化工程(ステップS1)では、加工対象である試料1Aの一部が平坦面11とされる。試料1Aが脆性材料(例えばガラスファイバ)であれば、劈開等により平坦面11が形成される。また、鏡面研磨またはイオンビーム加工により平坦面11が形成されてもよい。
【0014】
続く薄片部形成工程(ステップS2)では、図2に示されるように、平坦化工程により得られた試料1Aの平坦面11の下部に対して、集束イオンビーム装置20から出力された集束イオンビーム30が平坦面11に平行な方向に照射される。集束イオンビーム装置20ではイオン源として通常Ga液体金属が用いられる。集束イオンビーム30は、数μm以下に集束され、試料1Aに対し照射され走査される。例えば、集束イオンビーム装置20としてFEI社製FIB200が用いられ、加速電圧が30kVであり、エミッション電流が2.2μAである。
【0015】
そして、この集束イオンビームの照射により試料1Aがスパッタエッチングされて、平坦面11に対向する対向面12が形成される。これにより、図3に示されるように、平坦面11と対向面12とに挟まれた薄片部13を有する試料1Bが作成される。薄片部13の厚みは例えば1μm程度である。対向面12は、試料1Bの一方側から他方側へ貫通する孔の壁面であってもよく、貫通していない凹部空間の壁面であってもよい。貫通孔の幅および高さは任意である。凹部空間の幅,高さ及び奥行きも任意である。
【0016】
分析工程(ステップS3)では、薄片部形成工程により形成された薄片部13の分析が行われる。このとき、EPMAにより薄片部13の元素分析が行われるのが好適である。EPMAは、試料表面を元素分析する方法として最も利用されている。EPMAは、分析精度や感度が優れるものの、TEMやFE-AESなどと比べて空間分解能が劣っているとされている。EPMAの分解能を向上させる1つの方法が試料の薄片化である。EPMAでは、電子線照射に伴って試料で発生するX線を検出するので、薄片化によりX線発生領域を小さくすることができる。なお、EPMA以外にも、蛍光X線分析などの表面分析技術も適用可能である。
【0017】
本実施形態では、薄片化された試料が作製されるのではなく、試料1Bの一部に薄片部13が形成され、試料1Bの扱いが容易である。したがって、短時間で容易に試料1Bの薄片部13が形成され得る。また、容易に試料1Bの分析が行われ得る。さらに、このようにして形成された薄片部13の元素分析がEPMAにより行われることで、空間分解能の向上が可能となる。
【符号の説明】
【0018】
1A,1B…試料、11…平坦面、12…対向面、13…薄片部、20…集束イオンビーム装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の一部を平坦面とする平坦化工程と、
前記平坦化工程により得られた前記試料の平坦面の下部に対して、集束させたイオンビームを前記平坦面に平行な方向に照射することで前記試料をスパッタエッチングし、前記平坦面に対向する対向面を形成して、前記平坦面と前記対向面とに挟まれた薄片部を形成する薄片部形成工程と、
を備えることを特徴とする加工方法。
【請求項2】
試料の一部を平坦面とする平坦化工程と、
前記平坦化工程により得られた前記試料の平坦面の下部に対して、集束させたイオンビームを前記平坦面に平行な方向に照射することで前記試料をスパッタエッチングし、前記平坦面に対向する対向面を形成して、前記平坦面と前記対向面とに挟まれた薄片部を形成する薄片部形成工程と、
前記薄片部形成工程により形成された薄片部の分析を行う分析工程と、
を備えることを特徴とする分析方法。
【請求項3】
前記分析工程においてEPMAにより前記薄片部の元素分析を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の分析方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−163487(P2012−163487A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25161(P2011−25161)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】