説明

加工顔料の製造方法、加工顔料、および顔料分散体

【課題】高いレベルで安定して微粒子化されており、各種製品の色材として用いた場合に、製品の製造工程においても熱による顔料の融解や凝集、結晶化がなく、熱によって分散した微粒子形状が崩れることがなく、高画質の表示機器および高意匠性の物品が得られる加工顔料の提供。
【解決手段】顔料が、少なくとも、アミノ基を有するα,β−不飽和含有単量体、および、酸基を有するα,β−不飽和結合含有単量体を構成成分とするアニオンカチオン型重合体である樹脂Aを含む材料で被覆されており、かつ、顔料と樹脂Aとの比率が、質量基準で、50/50〜99/1であることを特徴とする加工顔料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、油性の物品に使用するのに好適な加工顔料の製造方法、加工顔料、該加工顔料の分散体に関する。特に、塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、インクジェットインク、文具用インク、湿式トナー、繊維原着、画像表示ディスプレー用カラー、コーティング剤、UVコーティング剤などに用いる着色剤として好適な加工顔料を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、インクジェットインク、文具用インク、湿式トナー、繊維原着、画像表示ディスプレー用カラー、コーティング剤、UVコーティング剤の着色剤として、下記のような顔料分散体が使用されている。すなわち、少なくとも顔料と分散剤と液媒体とを使用し、これらを分散機にて分散を行って、液媒体中に顔料が微粒子に分散され安定化された顔料分散体が用いられている。その際の顔料分散体は、好ましくは顔料を一次粒子まで微粒子に分散させ、さらに、経時においても、その顔料の分散された微粒子の凝集が生じないように防ぐ必要がある。そのために顔料は、さまざまな手法の顔料化によって、微粒子化や表面処理などの最適化処理がされている。また、顔料に対して、該顔料の骨格に類似する類似骨格の顔料誘導体を開発して使用したり、各種構造の分散剤を開発して使用し、様々な分散方法によって、顔料を微粒子まで液媒体中で解砕させて、顔料分散体を得ている。
【0003】
さらに、このようにして得られた顔料分散体は、前記した用途に使用された場合に、顔料の凝集が無く、顔料が物品媒体に一様に塗布されるなどして、高い発色性や着色力、あるものにおいては高透明性などに優れることが要求される。さらに、顔料分散体に対しては、顔料分散体を使用した前記したような物品を得る工程において、焼付けや乾燥などの熱処理による影響、延伸や混合などの力による処理の影響、紫外線照射や電子線照射などの光による影響、などを受けることなく、これらの状況下におかれても、使用した顔料分散体における微粒子の状態を保ち、鮮明で透明性の高い物品を与えるものであることが必要とされる。そして、最近、前記に列挙したような用途では、顔料に対して従来よりも更なる透明性や発色性の向上が求められており、顔料の更なる微粒子化が必須となってきている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−111019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、顔料を、このような高いレベルにまで微粒子化させるためには、その分散の工程において、顔料を微粒子分散させることに多大な努力が必要となる。例えば、このような優れた顔料分散体を実現させるためには、各種分散剤や顔料誘導体の開発、その微粒子を得るために多大なエネルギーを使用した分散工程が必須となっている。
【0006】
さらに、本発明者らの検討によれば、従来にない高いレベルにまで微粒子化させた場合、液媒体に顔料を分散した顔料分散体においては、微粒子化による表面エネルギーの増大によって、顔料の液媒体中での安定性が悪くなって、下記に挙げるような微粒子化に起因する問題を生じる。すなわち、顔料分散体を製造する分散工程中に顔料の凝集などが起こり、顔料が微粒子形状になりにくかったり、また分散後の顔料分散体の流動性が無くなったり、初期には微粒子形状を保っていても、経時で顔料が凝集してしまうなどのことが生じる。また、顔料分散体を使用してなる物品の製造工程においては、例えば、熱によって顔料粒子が結晶成長や凝集したり、逆に融解したりして、顔料分散体での微粒子形状を保つことができないなどのことが生じる。このようなことが起こると、顔料分散体の高いレベルで微分散したパフォーマンスから来る透明性、着色力や発色性が発揮できなくなり、顕著な製品の品質向上効果が発揮されないといった問題があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、従来にも増して高いレベルで顔料を微粒子分散させることができ、しかも、液媒体中での安定性が高く、製造直後においては勿論のこと、経時でも顔料が凝集してしまうといったことがなく、さらに、製品の着色剤として使用した場合に、その高い透明性、着色力や発色性が十分に発揮される顔料分散体を提供する技術を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも樹脂Aの存在下で顔料を処理して、少なくとも該樹脂Aにて被覆されてなる加工顔料を得る際に、上記樹脂Aとして、アミノ基を有するα,β−不飽和含有単量体、および、酸基を有するα,β−不飽和結合含有単量体を構成成分とするアニオンカチオン型重合体を用い、かつ、微細化した顔料を、上記樹脂Aを含有した水系液媒体中で混合攪拌および/または分散させた後、樹脂Aを析出させて顔料に樹脂Aを被覆させる工程を有するか、或いは、顔料を、上記樹脂Aとともに混合攪拌および/またはミリングおよび/またはニーディングして、顔料を微細化するとともに樹脂Aを顔料に被覆させる工程を有することを特徴とする加工顔料の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の加工顔料の製造方法の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。
(1)前記顔料を処理する際に、1個以上の酸基と1個以上の芳香環とを有する化合物aをさらに使用する上記の加工顔料の製造方法。
(2)前記化合物aが、前記顔料の骨格と同一の骨格、或いは、前記顔料の骨格に類似の骨格、或いは、前記顔料を構成するいずれかの骨格と同一の骨格を有する上記の加工顔料の製造方法。
(3)前記顔料を処理する際に、酸基を有するα,β−不飽和結合含有単量体を少なくとも構成成分とするアニオン型重合体である樹脂Bをさらに使用する上記の加工顔料の製造方法。
(4)前記顔料が、アゾ系、シアニン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、インディゴ系、ジケトピロロピロール系、ペリレン系、ペリノン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アンタンスロン系、ジオキサジン系、インダスレン系、ベンツイミダゾロン系、アゾメチン系、アンスラキノン系およびアゾ金属錯体系からなる群から選択された1種である上記の加工顔料の製造方法。
(5)前記それぞれの酸基が、独立して、カルボン酸基、リン酸基およびスルホン酸基の少なくともいずれかである上記の加工顔料の製造方法。
【0010】
本発明の別の実施形態は、顔料が、少なくとも、アミノ基を有するα,β−不飽和含有単量体、および、酸基を有するα,β−不飽和結合含有単量体を構成成分とするアニオンカチオン型重合体である樹脂Aを含む材料で被覆されており、かつ、顔料と樹脂Aとの比率が、質量基準で、50/50〜99/1であることを特徴とする加工顔料である。
【0011】
本発明の別の実施形態は、本発明の加工顔料を、顔料分散剤によって油性の有機溶剤を主成分とする液媒体中に分散させてなることを特徴とする顔料分散体である。
【0012】
本発明の顔料分散体の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。
(1)前記顔料分散剤が、ポリアクリル系、ポリスチレン系、ポリスチレンアクリル系、ポリアクリルポリウレタン系、ポリエステルポリウレタン系、ポリエーテルポリウレタン系、ポリエステルポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテルポリウレタン系、ポリエーテルリン酸エステル系およびポリエステルリン酸エステル系の少なくともいずれかである上記の顔料分散体。
(2)塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、インクジェットインク、文具用インク、湿式トナー、繊維原着、画像表示ディスプレー用カラー、コーティング剤またはUVコーティング剤のいずれかに用いられる着色剤である上記の顔料分散体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来にも増して高いレベルで顔料を微粒子分散させることができ、しかも、油性の液媒体中での安定性が高く、製造直後においては勿論のこと、経時でも顔料が凝集してしまうといったことがなく、さらに、製品の着色剤として使用した場合に、その高い透明性、着色力や発色性が十分に発揮される顔料分散体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に発明の好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、塗料やグラビアインキなどの油性の物品の製造の際に着色剤として使用できる顔料分散体に関し、特には、その顔料分散体に使用される加工顔料、該加工顔料の製造方法に関するものである。
【0015】
本発明の加工顔料は、顔料が、少なくとも、アミノ基を有するα,β−不飽和含有単量体、および、酸基を有するα,β−不飽和結合含有単量体を構成成分とするアニオンカチオン型重合体である樹脂Aを含む材料で被覆されてなることを特徴とする。該加工顔料は、本発明の加工顔料の製造方法によって得ることができる。本発明の加工顔料の製造方法は、少なくとも樹脂Aの存在下で顔料を処理して、少なくとも該樹脂Aにて被覆されてなる加工顔料を得る際に、樹脂Aとして、アミノ基を有するα,β−不飽和含有単量体、および、酸基を有するα,β−不飽和結合含有単量体を構成成分とするアニオンカチオン型重合体を用い、かつ、微細化した顔料を、上記樹脂Aを含有した水系液媒体中で混合攪拌および/または分散させた後、樹脂Aを析出させて顔料に樹脂Aを被覆させるか、或いは、顔料を、上記樹脂Aとともに混合攪拌および/またはミリングおよび/またはニーディングして、顔料を微細化するとともに樹脂Aを顔料に被覆させる工程を有することを特徴とする。また、顔料を処理する際に、1個以上の酸基と1個以上の芳香環とを有する化合物aをさらに使用することが好ましい。該化合物aは、処理の対象とする顔料の骨格と同一、該顔料に類似の骨格、該顔料を構成する構造のいずれかの骨格、から選ばれるいずれかをその基本構造とするものが好ましい。また、必要に応じて、酸基を有するα,β−不飽和結合含有単量体を少なくとも構成成分とするアニオン型重合体である樹脂Bをさらに使用し、樹脂Aと併用することが好ましい。本発明者らは、上記したそれぞれの成分が下記のような作用を発揮する結果、本発明の顕著な効果が得られたものと考えている。
【0016】
本発明で使用する樹脂Aは、その構造中にアミノ基と酸基とを有するため、このアミノ基と酸基がイオン結合することによって樹脂同士が結合するので、油性の媒体である有機溶剤中には溶解しない。このため、樹脂Aを主成分とする樹脂を顔料に対して被覆して処理した場合、樹脂Aは油性の媒体である有機溶剤に溶解せずに、油性媒体中で樹脂Aは顔料を被覆したままの状態で存在できることとなる。さらに、顔料を処理する場合に樹脂Aに加えて、1個以上の酸基と1個以上の芳香環とを有する化合物aを使用すると、下記のようにして該化合物aを介して顔料と樹脂Aとを結合させることができると考えられる。上記構造を有する化合物aは、その構造中の芳香環により顔料に高度に親和性を持つので顔料表面に吸着されて、顔料表面に酸基を導入する。特に、化合物aが、処理の対象とする顔料の骨格と同一、該顔料に類似の骨格、該顔料を構成する構造のいずれかの骨格などを基本構造とするものであると、その骨格が顔料骨格と似ているため、顔料との親和性がより高いものとなるので好ましい。顔料表面に導入された酸基は、その近傍に存在している樹脂Aのアミノ基とイオン結合して、顔料の表面に、化合物aの酸基と樹脂Aのアミノ基のイオン結合を形成する。さらに、前記した樹脂Aの樹脂同士のアミノ基と酸基とのイオン結合が形成されるので、より高度(強度)に樹脂Aで被覆された顔料を得ることができる。本発明では、さらに必要に応じて顔料の処理の際にアニオン型重合体である樹脂Bを使用するが、該樹脂Bは下記のような役割を果たす。樹脂B中の酸基と、樹脂A中のアミノ基とがイオン結合することによって、樹脂Aと樹脂Bは複合体を形成する。その結果、樹脂による顔料の被覆量を増大させたり、他の官能基などを顔料表面に導入することが可能となる。
【0017】
また、上記結合に寄与しなかった樹脂Aの過剰の酸基、アミノ基、或いは、樹脂Bの過剰な酸基は、顔料表面から脱離しない官能基となり、顔料を酸性表面または塩基性表面にする。そして、このように顔料を酸性表面または塩基性表面になると、顔料分散体を得るときに使用される分散剤との吸着が促されるので、顔料を安定に分散させることにおいて有効である。
【0018】
本発明の製造方法においては、樹脂Aの存在下で顔料を処理する場合に、顔料を分散、ミリングやニーディングして、微粒子状にした顔料を使用するので、その微粒子状で樹脂が被覆される。このため、得られた加工顔料を油性の液媒体中に分散させて顔料分散体とした場合に、分散工程で凝集を生じることがなく、高いレベルにまで微粒子化した顔料分散体にすることが可能である、という大きな利点がある。
【0019】
また、上記のようにして樹脂で被覆した顔料の分散体を、物品の着色剤に使用した場合には、該顔料分散体は、分散工程で凝集などすることなく高いレベルにまで微粒子化されていることから、物品中において顔料表面による光の散乱を防いだり、また、物品の製造工程において、顔料の凝集を防いだり、結晶の成長を防いだり、熱による融解を防いだりすることによって、その微粒子の形状を保ったまま物品となる。このため、本発明の顔料分散体を着色剤として用いた物品は、発色性、透明性、鮮明性、着色力、耐熱性が向上したものとなる。
【0020】
以上をまとめると、本発明によって得られる加工顔料は、アミノ基と酸基を持った樹脂Aによって、好ましくは化合物aを併用することで、さらに必要に応じて酸基をもった樹脂Bを併用することで、それぞれの官能基が寄与したイオン結合を介する結合によって、顔料表面に樹脂が被覆された安定した微粒子状のものとなる。そして、そのイオン結合の存在によって、顔料表面に被覆した樹脂は、使用する油性の物品や油性の液媒体に溶解しないので、微粒子状で、かつ、被覆されたままの顔料で存在し、また、樹脂由来の官能基が顔料表面に導入されているので、使用する分散剤との吸着を促し、油性の液媒体中に、微粒子状で安定に分散した顔料分散体を得ることができる。また、かかる顔料分散体を物品への着色剤として使用した場合、その製造工程において、顔料の凝集や結晶の成長、または溶解が抑制され、さらに微粒子状で物品に存在させることで光の散乱が防止されて、得られる物品は、高透明性、高発色性、高耐熱性を与えるものになる。
【0021】
以下に、本発明を構成する各成分について、詳細に説明する。
<顔料>
まず、使用される顔料について説明する。顔料は従来公知のものが使用されるが、特に好ましくは、有機顔料である。
有機顔料としては、溶性アゾ、不溶性アゾ、ジスアゾなどのアゾ系;シアニン系;銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、それらの塩素化物、臭素化物などのフタロシアニン系;キナクリドン、ジメチルキナクリドン、ジクロロキナクリドンなどのキナクリドン系;インディゴ系;ジケトピロロピロール、ジクロロジケトピロロピロール、ジメチルジケトピロロピロールなどのジケトピロロピロール系;ペリレン系;ペリノン系;イソインドリン系;イソインドリノン系;キノフタロン系;アンタンスロン系;ジオキサジン系;インダスレン系;ベンツイミダゾロン系;アゾメチン系;アンスラキノン系;ニッケルアゾなどのアゾ金属錯体系の赤系、青系、黄系、緑系、紫系、橙系、黒系の顔料が挙げられる。また、これらの顔料のうち2種以上の固溶体であってもよく、これらの各種の構造結晶体を使用できるが、これらの構造を有する顔料であれば特に限定されない。
【0022】
具体的にカラーインデックス(C.I.)のピグメントナンバーで例示すると、以下のものが挙げられる。
赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッドが挙げられ、下記のナンバーのものが使用できる。すなわち、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276などである。
【0023】
青色顔料としては、C.I.ピグメントブルーが挙げられ、下記のナンバーのものが使用できる。すなわち、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79などである。
【0024】
緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーンが挙げられ、下記のナンバーのものが使用できる。すなわち、C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55などである。
【0025】
黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエローが挙げられ、下記のナンバーのものが使用できる。すなわち、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75、81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208などである。
【0026】
オレンジ顔料としては、C.I.ピグメントオレンジが挙げられ、下記のナンバーのものなどが使用できる。すなわち、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79などである。
【0027】
紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレットが挙げられ、下記のナンバーのものなどが使用できる。すなわち、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50などである。
【0028】
黒色顔料としては、特に限定はなく、名称で例示すると、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、アゾメチンアゾ系、ペリレン系などが挙げられる。
【0029】
また、上記顔料は、各種処理をされた顔料を使用することができ、その処理方法は特に限定されない。例えば、その処理としては、顔料合成後、ニーダーなどの混練機にて、例えば食塩粉末、炭酸カルシウム粉末などの不活性粉末とともに混練し、微細化したもの、または表面を、ロジンソープなどを使用して表面処理したもの、水中で溶剤を併用して結晶を整えたものなど、顔料化を施した後の顔料が使用できる。
【0030】
<樹脂A>
次に、顔料を被覆する樹脂Aについて説明する。本発明に用いる樹脂Aは、アミノ基を有するα,β−不飽和結合含有単量体と、酸基を有するα,β−不飽和結合含有単量体とを少なくとも構成成分として得られるアニオンカチオン型重合体である。該樹脂Aは、顔料、好ましくは微粒子化された顔料表面を被覆する。この被覆は、樹脂Aの構造中のアミノ基と酸基とがイオン結合を形成して樹脂同士が結合することによって、また、必要に応じて、後述する酸基を有する化合物aを併用した場合は、上記に加えて該化合物a中の酸基と樹脂A中のアミノ基とがイオン結合を形成することによってなされるため、微粒子を構成する被覆された樹脂Aは油性液媒体に不溶のものになる。この結果、該樹脂Aを被覆することで、その顔料は、安定性、微粒子形状、熱安定性を持つものとなる。
【0031】
樹脂Aの構造中に有するアミノ基は、−NH2である第1級アミノ基、−NRHである第2級アミノ基、−NR2である第3級アミノ基、−N+3-である第4級アンモニウム塩基である。これらのアミノ基を有するα,β−不飽和結合単量体を、樹脂Aの合成に使用することで、樹脂Aの構造中に、これらのアミノ基を導入することができる。その際に使用するα,β−不飽和結合単量体はとくに限定されないが、例示すると、下記に挙げるようなものを使用することができる。これらは、1種またはそれ以上を使用することができる。
【0032】
第1級アミノ基を有するα,β−不飽和結合単量体としては、ビニルアセトアミドを加水分解して得られるビニルアミン、アリルアミン、アミノスチレン、2−アミノエチル(メタ)アクレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0033】
また、第2級アミノ基を有するα,β−不飽和結合単量体としては、ビニルメチルアミン、アリルメチルアミン、メチルアミノスチレン、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0034】
第3級アミノ基(第3級アミン)を有するα,β−不飽和結合単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、N−エチルモルホリノ(メタ)アクリレート、ジメチルプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルベンゾトリアゾール、ビニルカルバゾール、ジメチルアミノスチレン、ジアリルメチルアミンなどが挙げられる。
【0035】
第4級アンモニウム塩基(第4級アンモニウム塩)を有する、α,β−不飽和結合単量体としては、トリメチルアンモニウムスチレンクロライド、ジメチルラウリルアミノスチレンクロライド、ビニルメチルピリジニルアイオダイド、塩化トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、塩化ジエチルメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、塩化ベンジルジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレートメチル硫酸塩、ジアリルジメチルアンモニウム塩クロライドなどが挙げられる。
【0036】
樹脂Aを構成する酸基は、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基のいずれかであることが好ましい。これらの酸基を有するα,β−不飽和結合単量体を、樹脂Aの合成に使用することで、樹脂Aの構造中に、これらの酸基を導入することができる。その際に使用する単量体は特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。カルボン酸基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸を反応させた単量体が挙げられる。また、スルホン酸基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、ジメチルプロピルスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スルホン酸エーテル(メタ)アクリレート、スルホン酸エーテル(メタ)アクリルアミド、ビニルスルホン酸などが挙げられる。また、リン酸基を有する単量体としては、(ジまたはトリ)メタクリロイロキシエチルリン酸エステルなどが挙げられる。これらの1種またはそれ以上が使用できる。
【0037】
また、本発明で使用する樹脂Aを合成する場合は、前記列挙したような、アミノ基を有するα,β−不飽和結合含有単量体と、酸基を有するα,β−不飽和結合含有単量体に加えて、さらに、これらと共重合しうる他のα,β−不飽和結合含有単量体を共重合させてもよい。その際に使用するα,β−不飽和結合含有単量体は、特に限定されず、下記に列挙するような従来公知の単量体をいずれも使用できる。
【0038】
例えば、スチレン、ビニルトルエン、ビニルヒドロキシベンゼン、クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルエチルベンゼン、ビニルジメチルベンゼン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブテン、ブタジエン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、シクロデセン、ジクロロエチレン、クロロエチレン、フロロエチレン、テトラフロロエチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルエチルケトン、イソシアナトジメチルメタンイソプロペニルベンゼン、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、ヒドロキシメチルスチレンなどのビニル系単量体である。
【0039】
また、メチル(メタ)アクリレート、エーテル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−メチルプロパン(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、べへニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロデシルメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、t−ブチルベンゾトリアゾールフェニルエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの、脂肪族、脂環族、芳香族アルキル(メタ)アクリレートなどである。
【0040】
また、水酸基を含有する単量体として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシ−3−メチルペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルなどである。
【0041】
また、ポリ(n=2以上)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)プロレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)テトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノまたはポリ(n=2以上)エチレングリコールモノまたはポリ(n=2以上)プロレングリコールランダムコポリマーのモノ(メタ)アクリレート、モノまたはポリ(n=2以上)エチレングリコールモノまたはポリ(n=2以上)プロレングリコールブロックコポリマーのモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレートなどである。
【0042】
また、(メタ)アクリロイロキシエチルモノまたはポリ(n=2以上)カプロラクトンなどの前記した(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルを開始剤として、ε−カプロラクトンやγ−ブチロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られるポリエステル系モノ(メタ)アクリル酸エステルなどである。
【0043】
また、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレートや2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルスクシネートなどの前記した(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルに2塩基酸を反応させてハーフエステル化したのち、もう一方のカルボン酸にアルキレングリコールを反応させたエステル系(メタ)アクリレートなどである。
【0044】
また、グリセロールモノ(メタ)アクリレートやジメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレートなどの3個以上の水酸基をもつ多官能水酸基化合物のモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのハロゲン元素含有(メタ)アクリレート、エーテル−α−ヒドロキシメチルアクリレートなどのα位水酸基メチル置換アクリレート類などである。
【0045】
また、(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノオクチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノステアリルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノオレイルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノステアリン酸エステル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノオクチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレートなどの(ポリアルキレン)グリコールモノアルキル、アルキレン、アルキンエーテルまたはエステルのモノ(メタ)アクリレートなどである。
【0046】
また、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート、メチルモルホリノ(メタ)アクリレート、メチルモルホリノエチル(メタ)アクリレートなどの酸素原子含有環状アルコールの(メタ)アクリレートなどである。
【0047】
また、(メタ)アクリロイロオキシエチルイソシアネート、エチレンイミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド系単量体などである。
【0048】
また、オクタフルオロオクチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラメチルシランエチル(メタ)アクリレートなどのフッ素またはケイ素基含有(メタ)アクリレートなどである。そして、上記に列挙したものの中から適宜に選択した1種またはそれ以上を使用することができる。
【0049】
また、樹脂Aを製造する場合、これらの単量体を重合して得られるオリゴマーの片末端に不飽和結合を導入して得られるマクロモノマーや、コバルトポルフィリンなどのコバルト化合物などを使用して得られる、その末端に不飽和結合を有するマクロモノマーなども使用できる。
【0050】
以上に列挙した単量体を構成成分とし得られる樹脂Aは、そのアミン価が、樹脂Aの構造中のアミノ基を中和しうる塩化水素量と当量である水酸化カリウムの量で換算して、10〜300mgKOH/g、さらに好ましくは、20〜100mgKOH/gであるとよい。これは、該アミン価が10mgKOH/g未満であると、樹脂Aのアミノ基と、樹脂Aの酸基、さらには樹脂Bの酸基や化合物aの酸基とのイオン結合量が少なくなるため、被覆した樹脂が油性溶媒に溶解してしまう可能性があるからである。一方、該アミン価が300mgKOH/gを超えると、樹脂Aの構造中に、対する酸基を導入する際に導入できる酸基の量が少なくなり、結果として形成するイオン結合が少なくなって樹脂同士の結合が十分でなくなる恐れがあるので好ましくない。また、アミン価が高過ぎると水への親和性が高く、水に溶解したり、耐水性が悪くなってしまう場合があるので、この点からも好ましくない。
【0051】
また、樹脂Aは、その酸価が、それを中和しうる水酸化カリウムの量で換算して、10〜300mgKOH/g、さらに好ましくは、20〜200mgKOH/gであるとよい。これは、酸価が10mgKOH/g未満であると、樹脂A中の酸基が少な過ぎ、樹脂A中のアミノ基とのイオン結合が少なく、樹脂同士の結合が十分でなく被覆した樹脂が油性溶媒に溶解してしまう可能性があるからである。一方、酸価が300mgKOH/gを超えると、樹脂Aの構造中に、対するアミノ基を導入する際に導入できるアミノ基量が少なくなって、結果として形成するイオン結合が少なくなって、樹脂同士の結合が十分でなくなる恐れがある。また、酸価が300mgKOH/gを超えると、水への親和性が高く、耐水性が悪くなってしまう場合があるので、好ましくない。
【0052】
上記樹脂Aの分子量としては、ゲルパークロマトグラフにおけるスチレン換算の数平均分子量(Mn)として、1,000〜100,000であることが好ましい。より好ましくはMnが3,000〜50,000、さらにはMn5,000〜30,000であることが好ましい。また、それらの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量の比である分散度(Mw/Mn)は、1〜3が好ましく、さらには1.1〜2.5であることが好ましい。
【0053】
上記樹脂Aを得る方法については、特に限定されない。例えば、従来公知の、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合で得ることができる。好ましくは、溶液重合で得ることができる。特に、分子間同士のイオン結合があるので、イオン解離をする溶剤中で行う溶液重合が好ましい。
【0054】
その際に使用できるイオン解離させる溶剤としては、水、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの極性溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびその(モノまたはジ)アルキルエーテルやその多量体であるグリコール溶剤が挙げられ、それらの1種またはその混合物が使用される。また必要に応じて、従来公知の有機溶剤も使用できるが、その際には、前記したイオン解離を促す溶剤を併用することが好ましい。
【0055】
また、懸濁重合、乳化重合によって樹脂Aを得た場合は、そのままろ別して取り出したり、塩を入れて塩析させたりして取り出すことができる。また、必要であれば溶剤に溶解、または中和して水溶液化することもできる。また、溶液重合で得られた樹脂溶液は、そのまま使用することができるが、必要に応じて樹脂溶液を低極性の貧溶剤である溶剤、例えば、ヘキサン、メタノール、トルエンなどに析出させて樹脂Aを固形で取り出して使用することもできる。
【0056】
また、樹脂Aは酸基とアミノ基を持つので、その酸基またはアミノ基を中和して水溶性化をすることができる。酸基を中和して水溶性化する場合は、アルカリ物質、例えば、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどで中和する。また、アミン基を中和して水溶液化する場合は、酸物質、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸などで中和する。
【0057】
樹脂Aを中和して水溶液化する場合、酸基を中和するアルカリ物質としては、特に、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリンなどのpKaが小さい弱塩基が好ましい。また、アミノ基を中和する酸性物質としては、特に、酢酸、プロピオン酸などの弱酸が好ましい。
【0058】
本発明の製造方法において、樹脂Aと共に、後述する酸基を有するアニオン型重合体である樹脂Bを使用する場合には、樹脂Aは、酸を中和して得られる水溶液の方が好ましい。
【0059】
ここで、樹脂Aと、樹脂Bとの間、さらに必要に応じて使用する後述する化合物aとの間でイオン結合を形成するのに必要である酸−塩基度の関係について述べる。その強弱は特に限定されないが、好ましくは以下のようである。
樹脂Aの酸基、樹脂B或いは化合物aの各酸基の酸性度をそれぞれ、pKa(A酸)、pKa(B酸)、pKa(a酸)、樹脂Aのアミノ基、樹脂Aまたは樹脂Bの酸基を中和するアルカリ物質、の塩基性度をそれぞれ、pKa(Aアミノ)、pKa(中和アルカリ)とすると、次の関係が成り立つ方が好ましい。
pKa(a酸)<pKa(A酸)=pKa(B酸)
pKa(Aアミノ)>pKa(中和アルカリ)
【0060】
上記の関係を有する場合に、より好ましい理由を、本発明者らは以下のようであると考えている。例えば、樹脂Aの酸基を弱塩基(アルカリ物質)で中和しておき、この樹脂Aの酸基より強酸であり、かつ、顔料に高度に親和性を持つ化合物aの存在下、顔料を添加すると、樹脂Aのアミノ基の方が上記中和アルカリ物質よりも強塩基であるために、該アルカリ物質とよりも、顔料表面に存在する化合物aの酸基と樹脂Aのアミノ基がイオン結合をする。この結果、樹脂Aは、化合物aの酸基を介してより好ましい状態で顔料を被覆できたものと考えられる。これに対し、樹脂Aの酸基を、樹脂Aのアミノ基よりも強塩基(アルカリ物質)で中和しておき、顔料に高度に親和性を持つ化合物aの存在下、顔料を添加した場合は、樹脂Aを中和したアルカリ物質のほうが樹脂Aのアミノ基に比べて強塩基であるので、化合物aの酸基は、この中和アルカリ物質で中和されてしまう。この結果、化合物aと樹脂Aとのイオン結合が形成されにくくなって、顔料との結合なしに樹脂Aが顔料を被覆することになる。本発明の実施形態は、この場合も含むが、特に好ましくは、先に説明したように構成し、化合物aを入れることで化合物aの酸基を介して樹脂Aと顔料との結合があるようにした方がより好ましい。
【0061】
樹脂Aの重合方法としては、従来公知のラジカル重合方法によって得ることが好ましい。その際に使用できる開始剤としては、ラジカル重合を開始できるものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機過酸化物やアゾ化合物を使用することができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシル−3,3−イソプロピルヒドロパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、ジクミルヒドロパーオキシド、アセチルパーオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキシド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチレート)などが挙げられる。
【0062】
重合温度に応じて適当な半減期のラジカル重合開始剤を選択する。ラジカル重合開始剤の使用量は、共重合反応に使用される単量体の合計100質量部に対して0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部である。
【0063】
さらに本発明において分子量、分子量分布制御の目的で連鎖移動剤を使用してもよい。具体例としては、ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、メルカプト酢酸などのメルカプタン系;ジブチルスルフィド、ジブチルジスルフィド、などのスルフィド系;四塩化炭素、クロロホルム、四臭化炭素、ブチルブロミドなどのハロゲン系などが挙げられる。連鎖移動剤の使用量は、共重合反応に使用される単量体の合計100質量部に対して0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0064】
また同様に連鎖移動重合として、付加解裂型連鎖移動重合も使用でき、その際にしようされる連鎖移動剤としては、α−ブロモメチルアクリル酸エステル類、α−アイオドメチルアクリル酸エステル類、α−アルキルチオメチルアクリル酸エステル類などのα置換メチルアクリレート類;コバルトポルフィリン、コバルトフタロシアニンなどのコバルト化合物;トリフロロメタンアイオダイドなどのヨウ素化合物を使用するヨウ素移動重合などが挙げられ、特に限定されない。
【0065】
また、従来公知であるコントロールラジカル重合方法を使用して得ても良い。これによってブロックコポリマー、構造を得ることができる。これを行うことで、分子量分布が狭く、酸基およびアミノ基をもつブロック共重合体やモノマー濃度勾配があるグラジエント共重合体、グラフト共重合、星型ポリマーなどの各種高次構造のものを得ることができるので好ましい。その方法としては、有機ハロゲン化物などを開始化合物として銅、鉄、ルテニウムなどの重金属のアミノ化合物などの錯体などを使用する原子移動ラジカル重合法、テトラメチルピペリジニルオキサイドラジカルなどを使用するニトロキサイド法、ジチオカルボン酸エステル化合物やキサンテート化合物を使用する可逆的付加解裂型連鎖移動重合法、ゲルマニウムやビスマス、テルルなどのアルキル金属化合物を使用する移動交換重合法、重合を阻害するようなリン、窒素、酸素を有する化合物を使用する可逆連鎖移動触媒重合法などが挙げられ、特に限定されない。
以上のようにして、本発明に使用される樹脂Aを得る。
【0066】
<化合物a>
続いて、本発明で用いる化合物aについて、説明する。本発明の製造方法では、顔料と樹脂Aとを用いて加工顔料を得る際に、他の化合物として、酸基と芳香環とをそれぞれ1つ以上有する化合物aを使用することが好ましい。この化合物aは、その構造中の芳香環によって顔料に著しく吸着して、顔料表面を酸性にするものであり、その構造中の酸基によって顔料表面に酸基を導入するものである。この化合物aにより導入された顔料表面の酸基は、樹脂Aのアミノ基とイオン結合するように働く。また前記したように、樹脂A中のアミノ基と酸基とがイオン結合して樹脂同士が結合し、さらに、上記した化合物aによって導入された顔料表面の酸基と樹脂A中のアミノ基とが結合することで、樹脂Aは、より強固に顔料との被覆を形成することができる。
【0067】
上記化合物aは、1つ以上の酸基を有することが必須であり、この酸基は前記したような酸基、すなわち、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基のいずれかであることが好ましい。特に好ましくは、強酸基であるスルホン酸基がよい。
【0068】
また、化合物aには、顔料との親和性を高めるために、芳香環を1つ以上含有するものであることを必須とする。この芳香環の存在によって、顔料表面にπ−π結合により吸着することができる。
【0069】
本発明で使用する化合物aとしては、上記の条件を満足するものであればよく、各種挙げられ、特に限定されない。例えば、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、安息香酸、ロジン酸、ジフェニルフォスファイトなどの低分子化合物や、その他染料構造のものが挙げられる。特に好ましくは、化合物aは、その骨格が、本発明において使用する顔料の骨格と同一、または、その顔料を構成する構造の一部と骨格が同一、または、使用する顔料の骨格と類似構造と同一の骨格を有するもの、または多環式の顔料類似構造のものであるとよい。さらに、これらから選ばれるそれぞれの骨格の一部に、1つ以上の酸基、特に好ましくはスルホン酸基を有することが、顔料の親和性を高めるために、より好ましい。
【0070】
特にその化合物aは限定されないが、本発明において用いる好ましいものとしては、下記のものが挙げられる。具体的には、前記したC.I.ナンバーの顔料構造に、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基を導入したものであり、特に好ましくは、スルホン酸基を導入したものが挙げられる。
例えば、モノスルホン化銅フタロシアニン、テトラスルホン化銅フタロシアニン、スルホン化ジメチルジケトピロロピロール、スルホン化ジケトピロロピロール、スルホン化ジメチルキナクリドン、スルホン化ジメチルキナクリドン、スルホン化ジクロロキナクリドン、スルホン化臭素化銅フタロシアニン、スルホン化塩素化銅フタロシアニン、スルホン化アゾ化合物などである。また、顔料類似構造としては、特開2001−271004号公報、特開2005−097562号公報、特開2006−232867号公報、特開2006−265528号公報、特開2006−299050号公報、特開2006−321979号公報、特開2007−023266号公報、特開2004−91497号公報などに記載のスルホン化化合物;それらを構成する構造の一部のスルホン酸基を導入したものが挙げられる。これらは、原料にスルホン酸基を有するものを使用したり、得られた顔料を硫酸に溶解させてスルホン化させたり、亜硫酸ガスにてスルホン化させたりすることで得ることができる。
【0071】
上記したような化合物aの使用量は、顔料100質量部に対して0.5質量部〜50質量部、好ましくは1質量部〜20質量部である。0.5質量部未満であると少な過ぎて、化合物aを使用したことによる性能が十分に発揮されず、一方、50質量部を超えると、多過ぎて色が元の顔料色とは違ってくるなど、化合物aの性質が大きく出てしまい、顔料本来のもつ性質を阻害してしまうといった別の問題が生じる恐れがあるので好ましくない。
【0072】
<樹脂B>
次に、本発明において、顔料の処理の際に必要に応じて使用される樹脂Bについて説明する。樹脂Bは、本発明で必須の樹脂Aともに添加する他の樹脂であって、酸基を有するアニオン型重合体であり、1種以上を使用できる。これは、樹脂Aだけではそのイオン結合が多く、結合した樹脂Aによる皮膜が硬くなり過ぎる場合に、樹脂Bにクッション剤的な役割を果させるといった目的で添加するものである。さらには、他の官能基の表面導入や、樹脂Aだけからなる皮膜では量が少ないときに使用して樹脂量を増加させることで顔料分を下げる目的で、また、顔料表面に樹脂由来の官能基を付与することを目的として添加するものである。
【0073】
この樹脂Bとしては、前記した酸基を有するα,β−不飽和結合含有単量体、さらに好ましくはその酸基を有する単量体と共重合しうる前記したα,β−不飽和結合含有単量体とを、さらに必要に応じて、連鎖移動剤などを使用して、共重合させて得られる樹脂を用いることができる。
【0074】
樹脂Bの構造中の酸基としては、前記したと同様に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。特に好ましくは、カルボン酸基などの弱酸基であるとよい。これは、樹脂Bの酸基が強酸であると、樹脂Aと化合物aとのイオン結合が形成されていても、添加した樹脂Bの方が強酸である場合には、樹脂Aのアミノ基と樹脂Bの酸基とのイオン結合に変わってしまい、顔料表面に吸着した化合物aの酸基を介して形成された顔料と樹脂Aとのイオン結合を切断してしまう恐れがあるからである。
【0075】
本発明で使用する樹脂Bは、前記した樹脂Aと同様の方法で重合、さらに前記した方法で取り出したり、処理することができる。
【0076】
また、樹脂Bの分子量は、GPCにおけるスチレン換算の分子量としては、1,000〜50,000、好ましくは3,000〜30,000がよい。また、その含有する酸価としては10〜300mgKOH/g、好ましくは20〜150mg/KOHである。
【0077】
本発明の加工顔料の製造方法における、樹脂AおよびBの、顔料に対する使用量について説明する。顔料100質量部に対して、樹脂A、また必要に応じて添加する樹脂Bを併せた総樹脂量は、1質量部〜100質量部で、さらに好ましくは10質量部〜50質量部である。1質量部未満であると顔料を被覆する樹脂量が足りず、本発明の効果が十分得られない恐れがあるからである。一方、総樹脂量が100質量部を超えると、顔料の比率が低くなり過ぎ、これを用いて必要とする顔料濃度の分散体にした場合に、その含有樹脂比率が高くなり過ぎて所望性能に影響を及ぼす恐れが生じたり、樹脂分が顔料分より多いと発色性が劣る可能性があるからである。
樹脂Aと樹脂Bの比率においては、特に限定されず、その構造中における酸基とアミノ基の量によって一概には言えないが、総樹脂量を100とした場合に、質量基準で、例えば、A:B=100:0〜1:99、好ましくは、A:B=100:0〜40:60である。
【0078】
以上説明したように、本発明の加工顔料は、対象とする顔料を、必要に応じて化合物aを使用して、樹脂A、必要に応じて樹脂Bを添加して、これらの間のそれぞれのイオン結合を介して顔料を樹脂Aで被覆化している加工顔料である。これは、イオン結合していることよって、イオン解離をさせない溶剤中で顔料を樹脂で被覆して、微粒子のまま存在させることとなるものである。
【0079】
次に、本発明の加工顔料を得る方法について詳細に説明する。
本発明の加工顔料を得る方法としては、以下の2つが挙げられる。
(1)微細化された顔料、またはその水ペースト、さらに、必要に応じて化合物aを添加した顔料または水ペーストを、その酸基またはアミノ基を中和して得られる樹脂Aの水溶液、さらに必要に応じてその酸基を中和して得られる水溶液の樹脂Bを使用して、顔料を水性分散する。その後、樹脂の酸基をアルカリ物質で中和している場合は酸物質を、樹脂Aのアミノ基を酸性物質で中和している場合は、アルカリ物質を加えて、pHを変化させることで樹脂を析出させ、顔料を樹脂で被覆する方法。
【0080】
(2)顔料を必要に応じて不活性塩などを使用して、ミリングやニーディングを行って微細化する工程において、その微細化時に必要に応じて化合物aを加えて、同時に、またはある程度微細化した後に、樹脂Aの粉末や溶液、中和された水溶液、必要に応じて樹脂Bの粉末や溶液、中和された水溶液を加えて、顔料の微細化工程を行う。次いで、水または酸性水溶液などに微細化した顔料を析出させ、塩の除去をする。それと同時に、樹脂が水に不溶の場合は、樹脂を水に析出させるだけで、または、樹脂が中和されている場合は、pHを変化させることにより樹脂を析出させて顔料を被覆する方法。
【0081】
上記の方法について、個別に説明する。
上記した方法(1)で用いる顔料には、微細化された顔料を用いるが、微細化の方法(微細化工程)は特に限定されない。例示すると、ニーダー、押出し機、ボールミルなどの従来公知の混練機によって、常温でまたは加熱して30分〜60時間、好ましくは1時間〜12時間混練する。また必要に応じて、その系中に微細化するための微細なメディアとして炭酸塩、塩化物塩を併用して、さらに潤滑的などに行うためにグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの粘性のある溶剤を併用して行うことが好ましい。塩は、顔料に対して1倍〜30倍、好ましくは2倍〜20倍の量を使用する。顔料の水ペーストは、この得られた顔料と塩などの複合物を水に析出させ、十分に塩などを除去することで得られる。
【0082】
この際、顔料のミリング中に、本発明の化合物aを添加することが好ましい。これは、顔料と化合物aとの混練工程において、顔料と化合物aとが、π−π結合という強い力によって結合し、顔料表面に化合物aが均一に吸着して、顔料の表面を化合物aの酸基で覆うことが可能となるからである。しかしこれに限らず、微細化された顔料を水中で解膠し、中和した化合物aを加えて、よく攪拌した後、中和析出させて顔料表面に化合物aを吸着させてもよい。
【0083】
上記のようにして微細化された顔料は、水ペーストとして使用してもよいし、乾燥して粉末状の顔料として使用してもよい。好ましくは、乾燥による二次凝集を防ぐため、水ペーストとした方が好ましい。
上記のようにして得られた単独の微細化顔料は、目的の色度に合わせ、主顔料と1種または2種以上の補色顔料と組み合わせて微細化されてもよく、また、微細化された個々の顔料を同時に脱塩して混合物のペーストとしてもよい。
【0084】
上記のようにして微細化して得られた微細化顔料を、水、樹脂A、必要に応じて樹脂B、さらには有機溶剤、さらに必要に応じて消泡剤などの添加剤を加え、従来公知の方法で分散することで、上記した方法(1)で使用する顔料の水性分散液を得ることができる。
【0085】
上記の分散工程で使用する有機溶剤は、樹脂が水に溶解しにくい場合、その樹脂に親和性をもち、且つ、樹脂を水に対して親和性を出させるため、または顔料の初期濡れ性の向上のために使用するものである。この溶剤としては、従来公知の有機溶剤が使用できるが、特にこの場合は、水溶性がある溶剤が好ましい。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトンなどのケトン系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなど、および、それらのモノまたはジアルキルエーテルなどのグリコール系溶剤、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ジメチルエチレン尿素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが1種以上使用される。分散工程における有機溶剤の添加量は特に限定されないが、顔料に対して、1〜200%、さらに好ましくは10〜100%とするとよい。
【0086】
分散工程における分散媒体(水、有機溶剤)中の顔料濃度は1〜50%、好ましくは5〜30%とするとよい。1%未満だと低濃度のため粘度が低くなり過ぎてしまい分散のエネルギーが伝わらず分散が進みにくい。一方、顔料濃度が50%を超えると液の流動性が悪くなるので、あまり好ましくない。
【0087】
また、微細化顔料、水、樹脂A、有機溶剤や添加剤などを分散する場合には、従来公知の攪拌装置や分散装置、分散方法をとることができ、特に限定されない。攪拌機としては、ディゾルバーやホモジナイザーなどが挙げられ、分散方法としては、ビーズミル分散、超音波分散、乳化装置を使用した分散などが挙げられる。本発明において、好適に使用できる分散機としては、例えば、ニーダー、アトライター、ボールミル、ガラスやジルコンなどを使用したサンドミルや、横型メディア分散機、コロイドミル、超音波分散機などが挙げられる。
【0088】
本発明において特に好ましい分散方法は、ビーズ分散と超音波分散であり、非常に微小なビーズを使用して分散する方法や、高出力で超音波分散することがよい。分散の確認は従来公知の方法、例えば、顕微鏡で観察したり、粒度分布計にて粒子径を測定するなどして確認する。この際の平均粒子径は特に制限はないが、好ましくは300nm以下、さらに好ましくは150nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。
【0089】
また、この後に遠心ろ過やフィルターろ過をすることによって粗大粒子を取り除いてもよい。以上のようにして、微細化顔料の水性分散液を得ることができる。
【0090】
次に、先に挙げた(1)の加工顔料の製造方法で行う、上記のようにして得られた水性顔料分散液の処理について説明する。すなわち、以上のようにして所定時間攪拌および/または分散した後、攪拌しながら酸性水、すなわち酸性物質を添加して樹脂A、および樹脂Bを析出させ、微細化顔料を樹脂で被覆させる。
【0091】
この場合、上記で得られた水性顔料分散液を希釈して行ってもよく、好ましくは顔料濃度を5〜10質量%程度にするとよい。これは酸で析出させていくと著しく増粘するためで、攪拌をスムーズにさせるためである。また、酸性物質としては、従来公知のものが使用され、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などの有機酸が使用でき、特に好ましくは、酢酸などの弱酸を用いる。すなわち、強酸であると、樹脂Aのアミノ基と酸基のイオン結合、または化合物aと樹脂Aのイオン結合を切断してしまい、本発明で目的とする被覆顔料が得られ難いからである。また酸性物質はそのまま、好ましくは1〜10質量%に希釈して徐々に添加することがよい。また、酸性物質を添加していくと析出するが、pHを1まで、好ましくは3まで、さらに好ましくは4.5にすることがよい。これは、あまりに酸性にし過ぎると、樹脂Aのアミノ基が中和されてしまい、水への溶解性やイオン結合の切断に繋がる恐れがあるからである。
【0092】
また、析出した後、ろ過する場合、粒子径が小さいとろ過に時間がかかるので粒子を凝集させるため、或いは強く顔料表面に樹脂A、および樹脂Bを吸着させるために、例えば50〜80℃に加温してもよい。
【0093】
析出処理させた際、塩を生じるので、この塩を十分除去することが好ましいく、次いで、ろ過・洗浄することが好ましい。得られた顔料のペーストは、乾燥してチップ化し、さらには粉砕してパウダー化して加工顔料として使用する。以上のようにして、(1)の方法を使用して加工顔料を得ることができる。
【0094】
次に、前記した(2)の方法について詳細に説明する。これは前記した顔料の微細化工程において、微細化する顔料に、樹脂A、または必要に応じて樹脂Bの粉末、溶剤溶液、水溶液を添加して樹脂の被覆を行うものであり、通常の方法と同様にして混練するものである。
これらの添加は、顔料を微細化する際に予め、または、顔料をある程度微細化した後に添加する、または、樹脂Aのみ添加した状態で顔料を微細化した後、樹脂Bを入れてさらに混練する方法などが取れる。その後、目的の微粒子形状にした後、水に出して塩を除去したり、酸性水やアルカリ水に出して樹脂を析出させつつ塩を除去したりして行う。より好ましい方法としては、顔料と、化合物aとを入れて混練し、顔料がある程度微細化された後、樹脂Aを入れて混練し、さらに樹脂Bを入れて混練するほうがよい。このようにすれば、顔料に化合物aが吸着した後、樹脂Aが化合物aの酸基を介して顔料とイオン結合をし、さらに樹脂Bにて処理されることとなるからである。子の方法では、次いで、前記したように、ろ過、洗浄、乾燥して加工顔料を得ることができる。
本発明の加工顔料は、以上の2つの方法で得ることができる。
【0095】
次に、上記の方法により得られた本発明の加工顔料を使用して得られる、顔料分散体について説明する。
【0096】
本発明の顔料分散体は、少なくとも本発明の加工顔料、分散剤、液媒体からなる。
この際に使用する分散剤としては、ポリアクリル系、ポリスチレン系、ポリスチレンアクリル系、ポリアクリルポリウレタン系、ポリエステルポリウレタン系、ポリエーテルポリウレタン系、ポリエステルポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテルリン酸エステル系、ポリエステルリン酸エステル系が使用でき、その構造であれば特に限定されない。
【0097】
具体的には、ポリアクリル系、ポリスチレンアクリル系の分散剤としては、前記した単量体を重合して得られる分散剤が挙げられる。また、このポリアクリル系やポリスチレンアクリル系などの重合体において、その構成する単量体の一成分として、水酸基を含有する単量体を共重合させ、それにイソホロンジイソシアネートやトルエンジイソシアネートなどのジイソシアネートなどの化合物の一つのイソシアネートに、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルイミダゾールなどの3級アミノ基含有アルキルアルコールやアミンを反応させた、イソシアネート化合物との反応物であるポリアクリルポリウレタン系の分散剤が挙げられる。また、ポリカプロラクトンやポリ12−ヒドロキシステアリン酸の末端水酸基に前記したジイソシアネート、またはそのアロファネート、ウレトジオンなどの多量体、またはトリメチロールプロパンに、ジイソシアネートの反応物などのポリイソシアネートと、前記したアミノ基含有アルキルアミンやアルコールなどを反応させたポリエステルポリウレタン系の分散剤が挙げられる。
【0098】
ポリエステルポリウレタン系のポリエステルの代わりにポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルを反応させたポリエーテルポリウレタン系の分散剤が挙げられる。また、ポリカプロラクトンやポリ12−ヒドロキシステアリン酸、ポリリシノール酸などのポリエステルにポリエチレンイミンやポリアリルアミンなどのポリアミンを反応させたポリエステルポリアミド系の分散剤が挙げられる。また、前記したポリエステルと前記したアミノ基を有するアルキルアミンやジブチルアミンなどの第2級アミン化合物と、エポキシ基を有する化合物との反応生成物であるポリエステル系の分散剤が挙げられる。また、前記したポリエステルやポリエーテルと三塩化リンなどのリン系化合物との反応生成物であるポリエーテルリン酸エステル系の分散剤、ポリエステルリン酸エステル系の分散剤が挙げられる。これらの中でも好ましくは、樹脂Aまたは樹脂Bの酸基との吸着を促すため、アミノ基を有する分散剤が好ましい。
【0099】
次に、本発明の顔料分散体に用いる液媒体は、有機溶剤を主成分とするものである。本発明の加工顔料は、イオン結合を介して顔料と樹脂、または樹脂同士が結合して顔料を被覆している加工顔料である。そのため、イオン結合を解すような溶剤を使用することは好ましくない。すなわち、水やジメチルスルホキシドなどの極性溶剤のような媒体は、不向きであり、さらに、系中にそのイオン結合を解くような低分子の酸性物質、塩基性物質、特に、塩酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸などの強酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの強塩基を添加するのも好ましくない。
【0100】
本発明の顔料分散体に使用できる有機溶剤としては、以下の低極性の溶剤が挙げられる。例えば、ヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソデカンなどの炭化水素系溶剤、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノンなどの炭素数が大きいケトン類、ブタノール、ヘキサノール、ラウリルアルコールなどの炭素数が大きいアルコール類、酢酸エーテル、酢酸ブチル、ジオクチルフタレート、などのエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコール系のアルキルエーテルアルキルエステル類、または前記した単量体などである。ただし、イオン結合を解す前記溶剤であっても、この低極性溶剤を併用する場合には使用できる。
【0101】
本発明の顔料分散体には、本発明の加工顔料と分散剤、液媒体以外にも各種の添加剤を加えることができる。例えば、紫外線吸収剤、抗酸化剤などの耐久性向上剤;沈降防止材;剥離剤叉は剥離性向上剤;芳香剤、抗菌剤、防黴剤;可塑剤、乾燥防止剤などが使用でき、さらに必要であれば化合物a、分散助剤、染料などを添加することもできる。
【0102】
本発明の顔料分散体を得る分散方法は、加工顔料の製造方法の(1)として先に説明した液媒体での方法で分散して得ることができる。この際の平均粒子径は特に制限はないが、好ましくは300nm以下、さらに好ましくは150nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。これは、微細化された顔料の粒子径と同様になることができるし、そのほうが好ましい。
【0103】
以上の様にして加工顔料およびそれを使用した顔料分散体を得ることができ、その顔料分散体は、従来公知の油性の物品に好適に使用される、例えば、インキ、塗料、コーティング剤、IT関連コーティング・インキなどの着色剤に使用できる。さらに具体的には、自動車塗装用、金属塗装用、建材塗装用などの塗料;グラビアインキ、オフセットインキ、フレキソインキ、UVインクなどのインキ;油性インクジェットインク、UVインクジェットインク、画像表示ディスプレー用カラー、湿式トナーなどのIT関連コーティング剤やインク;プラスチック表面コート剤、UVコーティング剤などのコーティング剤;油性文具ペン用インク;繊維の原液着色用着色剤などが挙げられ、それぞれの用途に合わせた顔料濃度で使用される。そして、これらの物品に、その極めて高いレベルで、かつ安定化した微粒子からくる高透明性、高発色性を与え、顔料を樹脂で被覆することによって、物品の製造時における熱による顔料の凝集や溶解を防ぎ耐熱性を向上させるものである。
【実施例】
【0104】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。尚、文中「部」または「%」とあるのは質量基準である。
【0105】
<樹脂Aの合成>
[合成例1]
攪拌機、逆流コンデンサー、温度計、窒素導入管、滴下装置を取り付けた反応装置に、プロピレングリコールモノメチルエーテル100部、工業用エタノール100部添加し、湯浴にて80℃に加温した。別容器にスチレン(以下、Stと略記)50部、アクリル酸ブチル70部、メタクリル酸(以下、MAAと略記)40部、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(以下、DMAEMAと略記)40部、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記)2.8部仕込んで開始剤をモノマーに溶解させた。
【0106】
次いで、モノマー混合物の1/2を添加し、反応系中にこの残りのモノマー混合溶液を1.5時間にわたって滴下した。80℃になるように湯浴を調整し、滴下終了後1時間のちに、AIBNを1部加え、次いでその温度のままで5時間重合した。
【0107】
重合終了後、50℃に冷却し、別容器に水70.4gに28%アンモニア水溶液29.6部を加えた混合物を加え、中和した。淡黄色透明の粘度のある本発明の樹脂Aである樹脂溶液を得た。赤外水分計にて測定したところ、固形分は41.3%で、ほぼ重合率は100%であった。
この中和前の樹脂溶液をサンプリングし、分子量をGPCで測定したところ、その数平均分子量で8,300であった。またこの樹脂中の理論酸価は127.3mgKOH/g、理論アミン価は71.4mgKOH/gである。これをアニオンカチオン型重合体−1(樹脂Aに該当)とする。
【0108】
[合成例2〜4]
表1に示すモノマー組成で、合成例1と同様にして、樹脂Aであるアニオンカチオン型重合体−2〜−4を得た。得られた樹脂の組成、性状を表1に示す。
【0109】

【0110】
[合成例5]
攪拌機、逆流コンデンサー、温度計および窒素導入管を取り付けた反応容器に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、DMDGと略記)200部、ヨウ素5.0部、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、V−70と略記)24.2部、BzMA120部、メタクリル酸メチル(以下、MMAと略記)30部およびN−ヨードコハク酸イミド(以下、NISと略記)0.1部を仕込んで、窒素バブリングしながら45℃で4時間重合させて第1ブロック部を合成した。サンプリングし固形分を測定し、不揮発分から換算した重合転化率は100%であった。また、GPCでの可視光検出機(以下、RIと略記)におけるMnは7,400であり、PDIは1.22であった。
【0111】
次いで、MAA30部、DMAEMA20部を順次加え、さらに同温度で4時間重合させて第2ブロック部を合成した。サンプリングし固形分を測定し、不揮発分から換算した重合転化率は99%であった。この時のGPCのRIにおけるMnは8,200であり、PDIは1.35であった。分子量が第1ブロック部から大きくなっていることから、得られたポリマーはジブロックポリマーとなっていると考えられる。
【0112】
重合終了後、別容器に水76.7gに28%アンモニア水溶液23.3部を加えた混合物を加え中和したところ淡青色透明である樹脂溶液を得た。これは得られたポリマーがブロック構造なので水不溶部が凝集し一部乳化しているため淡い青色を呈していると考えられる。赤外水分計にて測定したところ、固形分は41.0%あった。
また、この樹脂中の理論酸価は97.8mgKOH/g、理論アミン価は35.7mgKOH/gである。これをアニオンカチオン型重合体−5とする(樹脂Aに該当)。
【0113】
また、それぞれのアニオンカチオン型重合体について、重合後樹脂溶液をメタノールに析出させ、ろ過、メタノール洗浄、乾燥、粉砕して固形の樹脂を得、これをトルエン、酢酸エーテル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGMAcと略記)に添加して攪拌したところ、溶解しないことを確認した。
【0114】
<樹脂Bの合成>
[合成例6〜8]
合成例1と同様にして、樹脂Bであるアニオン型重合体−1〜−3を得た。得られた樹脂の組成、性状を表2に示す。
【0115】

【0116】
[合成例9]
合成例5と同様の反応装置にDMDGを200部、ヨウ素5.0部、V−70を24.2部、BzMAを130部、MMAを30部およびNISを0.1部仕込んで、窒素バブリングしながら45℃で4時間重合させて第1ブロック部を合成した。サンプリングし固形分を測定し、不揮発分から換算した重合転化率は100%であった。また、GPCでのRIにおけるMnは7,300であり、PDIは1.24であった。
【0117】
次いで、MAAを40部加え、さらに同温度で4時間重合させて第2ブロック部を合成した。サンプリングし固形分を測定し、不揮発分から換算した重合転化率は100%であった。この時のGPCのRIにおけるMnは8,000であり、PDIは1.34であった。分子量が第1ブロック部のときに比べて大きくなっていることから、得られたポリマーはジブロックポリマーとなっていると考えられる。
【0118】
重合終了後、別容器に水69.0gに28%アンモニア水溶液31.0部を加えた混合物を加え中和したところ、淡青色透明である樹脂溶液を得た。赤外水分計にて測定したところ、固形分は41.5%あった。
また、この固形分(樹脂)中の理論酸価は130.4mgKOH/gである。これをアニオン型重合体−4(樹脂Bに該当)とする。
【0119】
<顔料混練物の製造>
[配合例1]
市販のジケトピロロピロール系赤色顔料(C.I.P.R.254)100部、ジエチレングリコール200部、食塩700部を3Lのニーダーに投入し、温度が80℃〜100℃を保つように調整し、8時間磨砕して、混練物R−1を得た。得られた混練物R−1の800部を2,000部の水に投入し、4時間、高速攪拌した。次いで、ろ過、洗浄を行い、混合顔料の水ペースト(顔料純分29.3%)を得た。これを混練物R−1と称す。
【0120】
[配合例2]
配合例1に、さらにモノスルホン化ジケトピロロピロール(平均スルホン酸基量0.5個/1分子)5部を加えて、同様にして混練物R−2を得た。固形分は顔料純分で23.5%であった。
【0121】
[配合例3]
市販のニッケルアゾ系黄色顔料(C.I.P.Y.150)100部、ジエチレングリコール200部、食塩700部を3Lのニーダーに投入し、温度が80℃〜100℃を保つように調整し、8時間磨砕して、混練物Y−1を得た。この混練物Y−1を用い、配合例1と同様の方法で水ペーストを得た。固形分は、顔料純分で30.2%であった。
【0122】
[配合例4]
市販のブロム化フタロシアニン系緑色顔料(C.I.P.G.36)100部、分散剤として、特開2001−271004号公報の合成例に記載のアントラキノン系化合物(化学式1)6部、ジエチレングリコール200部、食塩700部を3Lのニーダーに投入し、温度が100℃〜120℃を保つように調整し、8時間磨砕して、混練物G−1を得た。そして、配合例1と同様にして後処理した。固形分は、顔料純分で37.2%であった。

【0123】
[配合例5]
市販のε型フタロシアニン系青色顔料(C.I.P.B.15:6)100部、モノスルホン化銅フタロシアニン5部、ジエチレングリコール200部、食塩700部を3Lのニーダーに投入し、温度が100℃〜120℃を保つように調整し、8時間磨砕して、混練物B−1を得た。そして、配合例1と同様にして後処理を行った。固形分は、顔料純分で24.1%であった。
【0124】
[配合例6]
市販のジオキサジン系紫色顔料(C.I.P.V.23)100部、ジエチレングリコール200部、食塩700部を3Lのニーダーに投入し、温度が60℃〜80℃を保つように調整し、8時間磨砕して、混練物V−1を得た。配合例1と同様にして処理して、固形分が顔料純分で32.6%の水ペーストを得た。
【0125】
[比較例1〜6]
配合例1〜6の水ペーストを、そのまま乾燥、粉砕して、樹脂処理の無い比較顔料を作成した。
【0126】
[実施例1]
配合例1で得た混練物R−1を100部、合成例1で得たアニオンカチオン型重合体−1(樹脂A)を7.1部、水39.4部を加え、ディスパーにて混合攪拌した。次いで、ガラス瓶にビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを500部充填させ、ペイントコンディショナーにて5時間分散させ、顔料を微分散させた。これをメンブランフィルターにてろ過して粗大粒子を除去し、プレ水性顔料分散液を得た。このとき、TEM観察による一次粒子の平均粒子径は約46nmであった。
【0127】
次いで、3リットルのビーカーに、このプレ水性顔料分散液をイオン交換水で希釈して、顔料分を約5%とし、あらかじめ用意しておいた5%酢酸水溶液を攪拌しながら添加して、樹脂Aを析出させ顔料を被覆させた。最終的な顔料処理液のpHは4.9であった。さらにこの顔料処理液を、水浴にて50℃に加温して、1時間攪拌して、よく樹脂を顔料に吸着させた。次いでこの処理液をろ過し、イオン交換水でよく洗浄し、乾燥して粉砕した。これを本実施例の加工顔料R−1とした。
【0128】
[実施例2]
配合例2で得た、PR−254混練物を100部、合成例2で得たアニオンカチオン型重合体−2(樹脂A)を5.6部、水を11.9部添加して、実施例1と同様にして3時間分散した。次いで、合成例6で得たアニオン型重合体−1(樹脂B)を5.74部添加してさらに2時間分散した。次いで、実施例1と同様にして、プレ水性顔料分散液を得た。この時の平均粒子径は45nmであった。これを実施例1と同様にして析出させ、加温攪拌、乾燥、粉砕して、本実施例の加工顔料R−2を得た。
【0129】
[実施例3〜8]
実施例1または2と同様にして、下記表3の如き構成の加工顔料をそれぞれ得た。
【0130】

【0131】
[実施例9]
市販のアンスラキノニール系赤色顔料(C.I.P.R.177)100部、ジエチレングリコール200部、食塩700部を、3Lのニーダーに投入し、予備的に混合攪拌させ、次いで、アニオンカチオン型重合体−2(樹脂A)を23.8部添加して、温度が80℃〜100℃に保たれるように調整し、8時間磨砕した。次いで、水2,000部に酢酸6部を溶解させた浴に、高速攪拌しながらこの混練物を徐々に添加して、樹脂を析出させた。次いで、ろ過してイオン交換水でよく洗浄した後、乾燥して粉砕した。この平均粒子径は32nmであった。これを加工顔料R−5とする。
【0132】
<顔料分散体の作成>
[実施例10]
アクリル樹脂ワニス50部に、先に得た加工顔料R−1を15部、ポリエステルポリアミド系分散剤を10部、およびPGMAcを25部配合し、プレミキシングの後、横型ビーズミルで分散し、本発明の顔料分散体を得た。上記のアクリル樹脂ワニスには、メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル=70/15/15のモル比で重合させて得られたものであり、その分子量12,000、酸価97.8mgKOH/gであり、固形分40%のPGMAc溶液を用いた。また、上記のポリエステルポリアミド系分散剤には、12−ヒドロキシステアリン酸を開始剤とするポリカプロラクトンとポリエチレンイミンの反応生成物(固形分46%)を用いた。
【0133】
[実施例11〜18]
実施例1の加工顔料に変えて、それぞれ、加工顔料R−2、R−3、R−4、R−5、Y−1、G−1、B−1、V−1をそれぞれ用いた以外は実施例10と同様にして、実施例11〜18の各色の顔料分散体を得た。
【0134】
[実施例10〜18の顔料分散体の評価]
上記のようにして得た、実施例10〜18の各色の顔料分散体の顔料の平均粒子径を測定したところ、平均粒子径は、凡そ40〜55nmであり、加工顔料を得る中間段階でのプレ水性顔料分散液における粒子径と同等になるまで微分散されていることが確認できた。また、それぞれの顔料分散体の粘度を測定した。顔料分散体の粒子径と粘度を表4にまとめた。
【0135】

【0136】
[比較例7〜12]
比較例1〜6で得た樹脂処理していない各顔料を用いた以外は実施例10と同様にして、比較顔料分散体をそれぞれに得た。得られた各色の顔料分散体の顔料の平均粒子径を測定したところ、平均粒子径は凡そ30〜50nmであり、混練後の微細化された粒子径を与える微分散された顔料分散体であることを確認した。また、粘度も低粘度あった。
【0137】
[実施例19]
実施例10において、顔料として、加工顔料R−1に変えて加工顔料B−1を使用し、溶剤として、PGMAcに変えてブチルカルビトールアセテートを使用し、分散剤を、ポリウレタン系分散剤(ポリカプロラクトン、ジメチルアミノエチルアミン、トルエンジイソシアネート、トリメチロールプロパンの反応生成物)に変えた以外は実施例10と同様にして、顔料分散体B−2を得た。得られた顔料分散体は、平均粒子径は52nmであり、粘度は26.0mPa・sであった。
【0138】
[実施例20]
実施例19において、溶剤を酢酸ブチルとブタノール(91/10質量比)に変え、分散剤をBYK−2001(アミン価を持ったアクリル系ブロック共重合体)に変えた以外は、実施例19と同様にして、顔料分散体B−3を得た。得られた顔料分散体は、平均粒子径は48nmであり、粘度は20.3mPa・sであった。
【0139】
[応用例1]
実施例10〜19で得た本発明の顔料分散体を、画像表示用ディスプレー用カラー(着色剤)として使用して、それぞれRGBのカラーフィルターを作成した。得られたカラーフィルターは、優れた分光カーブ特性を有し、耐光性、耐熱性などの堅牢性に優れ、コントラストや光透過性にも優れた性質を有し、画像表示として優れた性質を示した。特に、このカラーフィルター板を270℃、10分間加温したところ、すべての顔料分散体において、その加温前と加温後のコントラストの保持率はすべて80%であり、優れた耐熱性となり、熱にも耐えうる微粒子化状態を得ることができた。
【0140】
比較例7〜12の顔料分散体を使用して、上記と同様にしてカラーフィルター板を作成した。この結果、本発明の実施例の顔料分散体と同様に、優れた分光カーブ特性を有し、耐光性などの堅牢性に優れ、コントラストや光透過性にも優れた性質を有し、画像表示として優れた性質を示した。しかし、270℃、10分の加熱を行ったところ、加熱前と加熱後のコントラストの保持率はすべて40%以下に低下した。
【0141】
すなわち、本発明の実施例の加工顔料は、油性の媒体である有機溶剤に溶解しない特定の樹脂Aで被覆されており、さらに好適な形態では、顔料表面に導入した酸基を介して樹脂Aが顔料表面とイオン結合することで、顔料からはがれにくい。このことによって、製品の着色剤として使用した場合に、製品の製造工程において、熱による顔料の融解や凝集、結晶化がなく、熱によって分散した微粒子形状が崩れることがなく、この結果、本発明の実施例の加工顔料を使用したカラーフィルター板では耐熱性が向上して、コントラストの保持率が向上したと考えられる。これに対し、樹脂処理していない比較例の顔料を用いた場合は、熱により顔料が凝集してしまい、カラーフィルター板とした際の、コントラストが低下したものと考えられる。
【0142】
[応用例2]
実施例20の顔料分散体B−3を250部、アクリル樹脂溶液を250部、エタノールを286部、メチルシクロヘキサンを60部混合攪拌して、インキを作成した。上記アクリル樹脂溶液としては、メタクリル酸メチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/アクリロイロキシエチルフタレート/メタクリル酸ラウリル共重合体を、エタノール/シクロヘキサン混合溶媒(固形分40%)に溶解したものを用いた。得られたインキの粘度は5.9mPa・sであり、50℃で1週間保存しても粘度変化は4.3%と低く、顔料の沈降も見られなかった。次に、このインキを繊維束の芯を有するペン体に詰めてポリエチレンフィルムに筆記したところ、良好に筆記できた。
【0143】
[応用例3]
実施例19の顔料分散体B−2を100部、応用例2で使用したアクリル樹脂溶剤250部および添加溶剤をブトキシカルビトールアセテートに変えて346部を混合攪拌してインキを作成した。次いでこの100部を、エトキシプロパノール20部、ベンジルアルコール5部を加えてインク化して、インクジェット印刷機にて印刷したところ、良好な印刷物が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の加工顔料を分散して得られる顔料分散体は、高いレベルで安定して微粒子化されており、各種製品の色材として用いた場合に、製品の製造工程においても、熱による顔料の融解や凝集、結晶化がなく、熱によって分散した微粒子形状が崩れることもなく、特に、カラーディスプレーなどの画像表示機器において、高画質、高発色性を与え、綺麗な画像を得ることができ、また、一般物品の塗装においては高い意匠性を与えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂Aの存在下で顔料を処理して、少なくとも該樹脂Aにて被覆されてなる加工顔料を得る際に、
上記樹脂Aとして、アミノ基を有するα,β−不飽和含有単量体、および、酸基を有するα,β−不飽和結合含有単量体を構成成分とするアニオンカチオン型重合体を用い、かつ、
微細化した顔料を、上記樹脂Aを含有した水系液媒体中で混合攪拌および/または分散させた後、樹脂Aを析出させて顔料に樹脂Aを被覆させる工程を有するか、或いは、
顔料を、上記樹脂Aとともに混合攪拌および/またはミリングおよび/またはニーディングして、顔料を微細化するとともに樹脂Aを顔料に被覆させる工程を有することを特徴とする加工顔料の製造方法。
【請求項2】
前記顔料を処理する際に、1個以上の酸基と1個以上の芳香環とを有する化合物aをさらに使用する請求項1に記載の加工顔料の製造方法。
【請求項3】
前記化合物aが、前記顔料の骨格と同一の骨格、或いは、前記顔料の骨格に類似の骨格、或いは、前記顔料を構成するいずれかの骨格と同一の骨格を有する請求項2に記載の加工顔料の製造方法。
【請求項4】
前記顔料を処理する際に、酸基を有するα,β−不飽和結合含有単量体を少なくとも構成成分とするアニオン型重合体である樹脂Bをさらに使用する請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工顔料の製造方法。
【請求項5】
前記顔料が、アゾ系、シアニン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、インディゴ系、ジケトピロロピロール系、ペリレン系、ペリノン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アンタンスロン系、ジオキサジン系、インダスレン系、ベンツイミダゾロン系、アゾメチン系、アンスラキノン系およびアゾ金属錯体系からなる群から選択された1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の加工顔料の製造方法。
【請求項6】
前記それぞれの酸基が、独立して、カルボン酸基、リン酸基およびスルホン酸基の少なくともいずれかである請求項1〜5のいずれか1項に記載の加工顔料の製造方法。
【請求項7】
顔料が、少なくとも、アミノ基を有するα,β−不飽和含有単量体、および、酸基を有するα,β−不飽和結合含有単量体を構成成分とするアニオンカチオン型重合体である樹脂Aを含む材料で被覆されており、かつ、顔料と樹脂Aとの比率が、質量基準で、50/50〜99/1であることを特徴とする加工顔料。
【請求項8】
請求項7に記載の加工顔料を、顔料分散剤によって油性の有機溶剤を主成分とする液媒体中に分散させてなることを特徴とする顔料分散体。
【請求項9】
前記顔料分散剤が、ポリアクリル系、ポリスチレン系、ポリスチレンアクリル系、ポリアクリルポリウレタン系、ポリエステルポリウレタン系、ポリエーテルポリウレタン系、ポリエステルポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテルポリウレタン系、ポリエーテルリン酸エステル系およびポリエステルリン酸エステル系の少なくともいずれかである請求項8に記載の顔料分散体。
【請求項10】
塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、インクジェットインク、文具用インク、湿式トナー、繊維原着、画像表示ディスプレー用カラー、コーティング剤またはUVコーティング剤のいずれかに用いられる着色剤である請求項8または9に記載の顔料分散体。

【公開番号】特開2011−252052(P2011−252052A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125557(P2010−125557)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】