説明

加工食品用原料粉

【課題】おからを小麦粉、米粉、そば粉、豆粉、とうもろこし粉、芋粉などの食用粉に配合して有効利用すると共に、おから特有の臭いや食感を消した加工食品用原料粉を提供する。
【解決手段】小麦粉、米粉、そば粉、豆粉、とうもろこし粉、芋粉などの食用粉に、おから及びひじき粉100重量部当たり、それぞれ、5〜15重量部及び2〜10重量部混入することによって、おからの臭いや食感を消すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は加工食品用原料粉に関する。
【背景技術】
【0002】
おからを小麦粉、米粉、そば粉、豆粉、とうもろこし粉、芋粉などの色々な種類の穀粉に混合することが出来るので広く色々な食品に加工可能である。
【0003】
たとえば、特開2002−17237号公報には、強力粉にゴボウ、人参、ひじき及びおからなどを混合して発酵させたパンの製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−17237号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
豆腐の製造工程で副生するおからはその高い栄養価にもかかわらず、パサパサ感などの食感があると共に特有の臭いを有しており、その用途が著しく限定されているのが実情である。
【0005】
前述の特開2002−17237号公報にはおからをひじき他と共に使用することについての記載があるが、この公報には、ひじきをおからと併用することによっておから特有の臭いをなくすこと、および食感を改善することについてはまったく開示がない。
【0006】
したがって、本発明は、加工食品用原料粉として小麦粉、米粉、そば粉、豆粉、とうもろこし粉、芋粉などの色々な種類の穀粉と共に、おから及びひじきを使用することで、少量の摂取でも満腹感が得られるためにダイエット効果を有する。かつ、おから特有の臭いや食感も、かつ併用するひじきの臭いもない加工食品用原料粉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、穀粉を主体とする加工食品用原料粉であって、おから及びひじきを穀粉100重量部当たり、それぞれ、5〜15重量部及び2〜10重量部混入し、かつ、おからに対するひじきの重量割合を、40%〜100%とする事を特徴とする加工食品用原料粉である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、おから特有の臭いや食感をひじきによって消すことができるので、穀粉におからを混ぜても良好な風味を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の概要を説明すると、この発明に用いる穀粉としては、小麦粉、米粉、そば粉、豆粉、とうもろこし粉、芋粉などの少なくとも一種が挙げられるが、小麦粉、米粉、そば粉が好ましく用いられ、小麦粉および/または米粉がより好ましく用いられる。おからの混入量は小麦粉、米粉、そば粉、豆粉、とうもろこし粉、芋粉などの色々な種類の穀粉100重量部当たり5〜15重量部であり好ましくは7〜15重量部、より好ましくは8〜13重量部である。またひじきの混入量は小麦粉、米粉、そば粉、豆粉、とうもろこし粉、芋粉などの色々な種類の穀粉100重量部あたり2〜10重量部であり、好ましくは4〜10重量部、より好ましくは4〜6重量部である。おからの配合量が上記下限より少ないとおからの有効利用が図られず、満腹感、ダイエット効果が低下し、一方配合量が上限を超えると食感が減少してしまう。また、ひじきの配合量が上記下限より小さいと、おから特有の臭いをなくすことが困難になる。ひじきの配合量が上記上限を超えると、色調が黒くなりすぎる。また、ひじきは他の原料に比較して高価であるので、上記上限を超えて配合する利点はない。
【0010】
ひじきはおから特有の臭いや食感を特異的に解消すると共にひじき自体の臭いまたは味を加工食品用原料粉にもたらさない。本発明者はおからと併用する食品について幅広い食材を検討したが、おからとひじきの組合せのみが互いの臭い及び味を消し合うことを究明した。検討した食材は胡麻、胡椒、バジル、紫蘇、干ししいたけ、鰹節粉、高野豆腐、かんぴょう、わかめ、昆布、番茶、糠及び麦茶であり、これらの中で紫蘇、バジル、番茶はおからの臭いを軽減するが、それら自体の臭い又は味を加工食品用原料粉に付与してしまう。なお、前述した特開2002−17237号公報では、穀粉100重量部に対して水で戻した湿潤状態のひじきが12〜15重量部配合されている。乾燥ひじきを水に戻すと、体積が8倍程度に膨張するので、乾燥状態に換算すると、約1.5〜1.9重量部になる。前述したように、おからの臭いを消すためには、この量では不十分である。
【0011】
おからおよびひじきは穀粉100重量部当たり、合計で7〜20重量部であることが好ましく、合計使用割合がこの範囲より少ないと、得られるダイエット効果が小さくなり、合計使用割合がこの範囲より多いと、配合する小麦粉、米粉、そば粉、豆粉、とうもろこし粉、芋粉などの色々な種類の穀粉の食感が低下するようになる。
【0012】
小麦粉、そば粉、豆粉、とうもろこし粉、芋粉などの穀粉に混入するおからに対するひじきの重量割合は40〜100%であり、特に50〜80%であることが好ましい。ひじきの重量割合が20%より小さいと、小麦粉、米粉、豆粉、とうもろこし粉、芋粉などの穀粉に混入したおから特有の臭いを減ずることが困難になり、ひじきの重量割合が100%を超えると、前述した色調などの不具合が生ずるようになる。
【0013】
この発明の加工食品用原料粉は、小麦粉、米粉、そば粉、豆粉、とうもろこし粉、芋粉などの穀粉に乾燥状態のおから及びひじき粉末を配合している。そして、本発明の効果(特有の臭い、食感の改善)を奏する範囲内であれば他の成分を添加することもできる。これらの粉末の粒径は穀粉として用いられる粒径程度であれば支障なく用いることができる。この加工食品用原料粉はホットケーキミックス、ピザミックス、団子粉ミックス、お好み焼きミックス、たこ焼きミックスなどとして用いられるが、ピザミックスがより好ましく用いられる。また、この発明の加工食品用原料粉は上記特性からパン、ケーキ、シリアル、菓子、麺(うどん、そば、パスタなど)、お好み焼き、たこ焼きなどを製造する際にも好適に用いる事ができ、麺がより好ましく製造される。これらを製造する際の調理条件は特別な条件は必要なく通常の方法を採用することができる。
【0014】
また、本発明の加工食品用原料粉は乾燥麺としても使用することができる。
【0015】
実施例1
ピザ
強力粉190g及び薄力粉40gを混合した穀粉230gに、乾燥おから20g及び乾燥したひじき粉末10gを配合した配合物に、ドライイースト5g、塩小さじ1/3杯、砂糖一つまみ及び水200ccから250cc(乾物の乾燥度合いにより増減が必要)を加えて混合した。混合物を約25℃で約30分間発酵させて三分割し、円板状に成形してピザ生地(ピザ生地C)を3枚作成した。このピザ生地を、油を使用することなく、180〜200℃で約5分間焼成してピザを得た。
【0016】
実施例1のピザを100人が試食し、食感及びおからの臭いの有無を判定した。食感はさくさく感及びもちもち感の2つの観点から判定し、その基準は、×(悪い)、△(普通)、○(良い)及び◎(さらに良い)でとした。また、おからの臭いの判定基準は、×(臭いあり)、○(僅かに臭いあり)及び◎(まったく臭いなし)とした。結果を表1に示す。
【0017】
比較例1,2、及び実施例2
ひじき粉末の配合量を3g(比較例1、ピザ生地A)、5g(比較例2、ピザ生地B)15g(実施例2、ピザ生地D)、に変えた以外は実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0018】
実施例3
実施例1のピザを使用してダイエットを目的として、60日食した。
ピザの具は野菜や肉、魚、など好みの具材とピザ用チーズを適当量のせ、朝、昼、夜、一日三食、食した結果、体重85kgの男子(21歳)が75kgとなった。
この男子はダイエットが目的のために使用した具材自体のカロリーをコントロールした事、また運動を積極的に取り入れた事を考慮しても期待どおりの結果となった。
ピザに使用した加工食品用原料粉の中のおからとひじきが食後、胃の中で一緒に摂った水分を吸収し、充分な満腹感をもたらした。そのうえ腹持ちも良かった。ダイエットを続けるときの空腹感を感じることが少なかった。
このピザを食すると便通が良くなり腸の調子が良くなった。排便を整えることはダイエットには有効であった。
【0019】
実施例4
うどん
強力粉190g、薄力粉20g、米粉20gに乾燥おから20gと乾燥ひじき粉10gを水分約200ccでこねて一晩冷蔵庫で寝かせて製麺し、中太のうどんを得た。このうどんを沸騰したお湯に入れて、浮き上がってくるまで3〜4分茹でて、冷水でしめ、ざるうどんとし市販のめんつゆで食した。麺はおからの臭いもなく、つるつると歯ごたえもよい腰のある食感となった。
以上の分量で、2人分位。うどんはご飯よりも腹持ちがわるいとされるが充分に腹持ちも良かった。
【0020】
実施例5
パスタ
実施例4の麺を使ってイタリア風にトマトのパスタとした。トマト水煮缶1個、シメジ、たまねぎ、ベーコン、にんにくを適宜使ったパスタソースで茹でた麺を合え、粉チーズをふって食した。麺はおからの臭いもなく弾力のある食感でパスタとして充分においしかった。実施例4同様に腹持ちが良かった。
【0021】
実施例6
ホットケーキ
薄力粉230gにおから20gと乾燥ひじき粉10g、ベーキングパウダー8g、砂糖10g、塩一つまみ、卵1個、牛乳約180ccでホットケーキとして食した。得られたホットケーキはおからの臭いはせず焼きあがりも香ばしくておいしいものであった。
【0022】
実施例7
中華饅
強力粉150g、薄力粉80g、乾燥おから20g、乾燥ひじき粉10g、塩ひとつまみ、砂糖20g、ベーキングパウダー8g、サラダ油小さじ2、胡麻油小さじ1、水分は約180〜200z ccくらいを良くこねて生地を作った。肉まんの具(豚挽き肉150g、春雨15gをぬるま湯でもどした物、生しいたけ3枚、ねぎ半本、塩小さじ半分、醤油小さじ1、胡麻油大匙1を炒める)を包み込み蒸し器で約10分蒸した。得られた中華饅はおからの臭いもなくもちもちとした食感の中華まんじゅうであった。
【0023】
実施例8
だんご
団子粉(もち米、うるち米、片栗粉の混合粉)230g、乾燥おから20g、乾燥ひじき粉10g、水約180ccを良くこねて、直径2cmくらいに丸め沸騰したお湯で茹でた。だんごはおからの臭いもなく弾力のある食感となった。好みであんこ、きな粉、黒蜜をかけて食した。
【0024】
比較例3(ピザ生地E)
ひじき粉末を配合しなかった以外は実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0025】
比較例4
おから+わかめ粉末
強力粉190g、薄力粉40g、乾燥わかめ10g、乾燥おから20g、砂糖一つまみ、塩一つまみ、ドライイースト5g、水約220ccでピザ生地を作った。わかめは海草でひじきと同様に使用できると考えたが、わかめは磯臭く、粉末にしてもわかめとしての食感も残った。わかめ臭いピザとなった。上に具をのせてもわかめの特徴は消えなかった。またおからとわかめの食感が残り少しざらついた生地となった。
【0026】
比較例5
おから+番茶
強力粉190g、薄力粉40g、番茶8gと熱湯で濃い目のお茶を抽出して冷ましたもの約200cc、乾燥おから20g、塩小さじ1、砂糖一つまみ、ドライイースト5gでピザ生地を作った。
番茶はおからの臭いは抑えた。しかしおからの食感はのこり少しざらついた生地となった。
【0027】
おからは食品として充分栄養がある。一般分析値を見ると、乾燥物中1kgあたりの粗たんぱく質は約26%、粗脂肪は約13%、可溶性無窒素物は約33%、粗繊維は約15%と非常に栄養価が高い。また、おからには脳の記憶力を高めるホスファチジルコリン(レシチンともいう)が豊富に含まれている。そのため最近はおからクッキーやおからドーナッツなどの菓子、おからこんにゃくなどの加工食品が多数考案されている。また一方ではバイオエタノール、飼料、化粧品、猫の砂などに再利用されている。しかし、おからは充分利用されているとは言いがたく、現在産業廃棄物としてほとんど再利用されず捨てられている。
【0028】
なお、本発明は、何ら上記実施例に限定されるものではなく、例えば、以下のものにも適用可能である。
1、前記実施例では、パン、ケーキ、シリアル、菓子、麺、お好み焼き、たこ焼きなどを適用例として示したが、それらは一例であり、各種の食べ物に適用可能である。例えば、じゃがいもに本発明を入れてコロッケを造るという具合である。
2、おからを乾燥させて粉末にしても、おから独特の臭いや食感が残り、主食用穀粉のように利用できにくい。その独特の臭いや食感を消すために油やバターや砂糖や醤油などで味をつけることが必要である。そのような調理は結局、油分、塩分、糖分をおからと共に多量に摂取することになり、本来のおからの利点が帳消しになる。本発明は麺、ピザ生地、団子などのように味を後に加味することが可能となる。
3、本発明は、穀粉に特定量のおからとひじきを組み合わせて配合することにより、その食感を改善し、おから特有の臭いを解消することが出来るため、本発明の加工食品用原料粉は主食用としても利用することができる。
4、本発明は、ホットケーキミックス、ピザミックス、団子粉ミックス、お好み焼きミックス、たこ焼きミックスなどとしても有用である。
5、本発明は、調理して冷めても硬くなりにくいので冷凍食品としても有用である。
6、小麦粉、米粉、そば粉、豆粉、とうもろこし粉、芋粉、などの他に粉末じゃがいも、粉末かぼちゃ、などにも加えることで量を増やし、カロリーは抑えるという効果もあり有用である。
7、本発明は、フライパンなどで焼くときにも油を使わずに調理が可能なので、ダイエットとしても有用である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、パン、ケーキ、シリアル、菓子、麺、お好み焼き、たこ焼きなどの分野に好適である。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉を主体とする加工食品用原料粉であって、おから及びひじきを穀粉100重量部当たり、それぞれ、5〜15重量部及び2〜10重量部混入し、かつ、おからに対するひじきの重量割合を、40%〜100%とすることを特徴とする加工食品用原料粉。
【請求項2】
おから及びひじきを、穀粉100重量部当たり、合計で7〜20重量部混入することを特徴とする請求項1記載の加工食品用原料粉。
【請求項3】
パン、ケーキ、シリアル、菓子、麺、お好み焼き、たこ焼きに用いられる請求項1または2記載の加工食品用原料粉。
【請求項4】
請求項1または2記載の加工食品用原料粉を使用したピザミックス。
【請求項5】
請求項1または2記載の加工食品用原料粉を使用した麺。

【公開番号】特開2010−69(P2010−69A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184281(P2008−184281)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【特許番号】特許第4253033号(P4253033)
【特許公報発行日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(507009744)
【Fターム(参考)】