説明

加工食品

【課題】人と犬又は猫との双方が美味しく食べることができる加工食品を提供する。
【解決手段】畜肉が配合されていない人と犬又は猫との兼用の加工食品であって、人が畜肉臭を感じない程度の、畜肉エキスを0.00001〜0.1%及び/又は畜肉香料を0.000001〜0.01%添加していることを特徴とする加工食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人と犬又は猫との兼用の加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、犬や猫を家族の一員とし、犬や猫と人が同じ食品を一緒に食べて楽しい時間を過ごしたいという飼い主が増えてきている。
【0003】
しかしながら、人用の加工食品、特に焼菓子、冷菓、蒸菓子、ドーナツ、ゼリー等の加工食品を犬や猫に食べさせると、犬や猫にとっては脂質、糖質、塩分等の栄養の過剰摂取となり、糖尿病等の病気の要因となりうる。
【0004】
そのため、犬や猫の栄養バランスを配慮した人と犬又は猫との兼用の加工食品が市販されている。また、そら豆とチーズのスコーンや上新粉のマドレーヌなどのレシピも提案されている(非特許文献1)。
【0005】
しかしながら、上記加工食品は、犬や猫の栄養バランスについて配慮されていても、風味については人と犬又は猫との双方の嗜好が全く異なるため、両者を充分に満足させるものではなかった。
【0006】
【非特許文献1】Deco著、犬と一緒に!Happy!Healthy!手作りおやつ、株式会社世界文化社発行 発行日2009年8月1日、第25、45頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、人の嗜好に合わせて畜肉、畜肉エキス又は畜肉香料等の畜肉臭を有する原料が配合されていない加工食品は、畜肉臭を好む犬や猫の嗜好を充分に満足させるものではないと考えた。特に、焼菓子、冷菓、蒸菓子、ドーナツ、ゼリー等の加工食品には通常畜肉臭を有する原料を配合しないため、犬や猫の嗜好を充分に満足させる加工食品とはなり難い。
【0008】
一方で、犬や猫の嗜好に配慮して、焼菓子、冷菓、蒸菓子、ドーナツ、ゼリー等の加工食品に畜肉臭を有する原料を配合すると、人にとって畜肉臭が嗜好に合わず不快な風味となってしまう。そこで、本発明の目的は、人と犬又は猫との双方が美味しく食べることができる加工食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、畜肉が配合されていない人と犬又は猫との兼用の加工食品であって、人が畜肉臭を感じない程度の、畜肉エキスを0.00001〜0.1%及び/又は畜肉香料を0.000001〜0.01%添加するならば、意外にも人と犬又は猫との双方が美味しく食事できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)畜肉が配合されていない人と犬又は猫との兼用の加工食品であって、人が畜肉臭を感じない程度の、畜肉エキスを0.00001〜0.1%及び/又は畜肉香料を0.000001〜0.01%添加している加工食品、
(2)前記加工食品が焼菓子、冷菓、蒸菓子、ドーナツ、ゼリーのいずれかである(1)の加工食品、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、人と犬又は猫との双方が美味しく食べることのできる加工食品を提供することができる。これにより、飼い主は犬や猫とのコミュニケーションをより深めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0013】
本発明の加工食品は、畜肉が配合されていない人と犬との兼用の加工食品又は人と猫との兼用の加工食品であって、人が畜肉臭を感じない程度の、畜肉エキスを0.00001〜0.1%及び/又は畜肉香料を0.000001〜0.01%添加していることを特徴とする。これにより、畜肉が配合されていない加工食品、特に人にとって畜肉臭が不適当な加工食品であっても、犬や猫は畜肉臭を感じ、人は畜肉臭を感じないため、人と犬又は猫との双方が美味しく食べることができ、犬や猫とのコミュニケーションをより深めることができる。
【0014】
本発明で用いる畜肉エキスは、牛、豚、鶏等の畜肉を水、アルコール、エーテル等に浸してその有効成分が溶解した溶液を濃縮したものである。市販されている畜肉エキスであれば、特に限定するものではないが、牛を原料としたビーフエキス、豚を原料としたポークエキス、鶏を原料としたチキンエキス等を用いることができる。これらの中でも、ビーフエキスは本発明の効果が顕著であるため好ましい。
【0015】
本発明で用いる畜肉エキスの添加量は、人が畜肉臭を感じない程度の量である、0.00001〜0.1%であり、0.0001〜0.001%が好ましい。畜肉エキスの添加量が前記範囲より少ないと、犬又は猫の嗜好を充分に満足させる加工食品が得られ難いため、人と犬又は猫との双方が美味しく食べることができず好ましくない。一方、畜肉エキスの添加量が前記範囲より多いと、人にとって不快な風味となってしまうため、人と犬又は猫との双方が美味しく食べることができず好ましくない。
【0016】
本発明で用いる畜肉香料は、畜肉の芳香を有する有機物で、物質に香気を付与するために使用されるものであり、天然の畜肉素材から抽出された天然香料や、化学的に合成された合成香料等の種類がある。本発明では、市販されている畜肉香料であれば、特に限定するものではないが、牛肉臭を有するビーフ香料、豚肉臭を有するポーク香料、鶏肉臭を有するチキン香料等が挙げられる。これらの中でも、ビーフ香料は本発明の効果が顕著であるため好ましい。
【0017】
本発明で用いる畜肉香料の添加量は、人が畜肉臭を感じない程度の量である、0.000001〜0.01%であり、0.00001〜0.0001%が好ましい。畜肉香料の添加量が前記範囲より少ないと、犬又は猫の嗜好を充分に満足させる加工食品が得られ難いため、人と犬又は猫との双方が美味しく食べることができず好ましくない。一方、畜肉香料の添加量が前記範囲より多いと、人にとって不快な風味となってしまうため、人と犬又は猫との双方が美味しく食べることができず好ましくない。
【0018】
本発明の加工食品は、喫食する際に畜肉が配合されていない加工食品全てに適用することができる。具体的には、マドレーヌ、クッキー、ビスケット、スポンジケーキ、パウンドケーキ、スコーン、バウムクーヘン、フィナンシェ等の焼菓子、シャーベット、アイスクリーム等の冷菓、蒸カステラ、蒸ケーキ、マーラーカオ、蒸饅頭、カスタードプディング等の蒸菓子、ドーナツ類、ゼリー類、食パン、フランスパン、イギリスパン等のプレーンな風味のパン類、スープ類等が挙げられる。中でも、人にとって通常畜肉臭が不適当な加工食品である焼菓子、冷菓、蒸菓子、ドーナツ、ゼリーは本発明の効果を発揮し易く、好適である。
【0019】
本発明の加工食品には、糖質として砂糖、乳糖、ブドウ糖果糖液糖、ハチミツ、オリゴ糖、黒みつ等を配合することができる。中でも、犬又は猫の栄養バランスを考慮して、ハチミツを用いることが好ましい。
【0020】
本発明で用いる糖質の配合量は、0.5〜8%が好ましく、1〜5%がより好ましい。糖質の配合量が前記範囲より少ないと、人にとって味気ない風味となり好ましくない。一方、糖質の配合量が前記範囲より多いと、犬又は猫にとって糖質の摂取過多となり糖尿病などの原因になり易いため好ましくない。
【0021】
本発明の加工食品は、本発明の効果を損なわない範囲で、畜肉エキス及び畜肉香料以外の原料を配合することができる。具体的には、例えば、薄力粉、強力粉、上新粉、タピオカ粉、片栗粉等の粉末類、ベーキングパウダー、ドライイースト等の膨張剤、卵、牛乳、チーズ、ヨーグルト等の乳製品類、バター、ショートニング、マーガリン、サラダ油等の油脂類、ゼラチン、寒天等のゲル化剤、バニラエッセンス、バニラオイル等の香料類、リンゴ、キウイ、バナナ、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、モモ等の果物類、さつまいも、カボチャ、栗、トマト等の野菜類、ゴマ、豆腐、豆乳、小豆等の豆類が挙げられる。
【実施例】
【0022】
以下に本発明の加工食品を実施例及び試験例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0023】
〔実施例1〕
ビーフエキスを添加したマドレーヌを製した。具体的には、ミキサーに全卵100部、ハチミツ6部、ビーフエキス0.002部、薄力粉120部、ベーキングパウダー2部、ショートニング30部を投入し、常法に則り撹拌混合した。次いで、マドレーヌ型に充填し、170℃で20分間焼成し本発明の加工食品(マドレーヌ)を製した。なお、ビーフエキスの添加量はマドレーヌ全体に対し0.0008%であった。
【0024】
〔実施例2〕
ビーフエキス0.002部をビーフ香料0.0001部に変更した以外は実施例1に準じて、本発明の加工食品(マドレーヌ)を製した。なお、ビーフ香料の添加量はマドレーヌ全体に対し0.00004%であった。
【0025】
〔試験例1〕
畜肉エキス又は畜肉香料の添加量による本発明の効果への影響を調べた。具体的には、実施例1における畜肉エキス及び実施例2における畜肉香料の添加量を表1に示す添加量に変更した以外は、実施例1に準じて、本発明の加工食品(マドレーヌ)を製した。次いで、下記評価方法に従って、人と犬とが美味しく食べることができるか調べた。
【0026】
〔人の評価方法〕
上記製したマドレーヌを試食し、下記評価基準に従って官能評価を行った。なお、成人男女30人を対象にした。
<評価基準(人)>
○:畜肉臭がせず、美味しく食べることができる。
△:畜肉臭が若干するが、問題ない程度に美味しく食べることができる。
×:畜肉臭がして、違和感がある。
【0027】
〔犬の評価方法〕
まず、畜肉エキスを除いた以外は実施例1に準じて製したマドレーヌ(無添加区)と、上記製した各畜肉エキス又は畜肉香料を添加したマドレーヌ(添加区)とを30cm離して設置した。次に無添加区及び添加区のマドレーヌと犬の鼻先とが3m離れた地点から犬を放し、犬がどちらを先に食べるか観察した。先に食べた方を犬はより美味しいと感じていると考え、下記評価基準に従い評価した。なお、小型犬〜中型犬30匹を対象にした。
<評価基準(犬)>
○:80%以上の犬が先に添加区のマドレーヌを食べた。
△:60〜79%の犬が先に添加区のマドレーヌを食べた。
×:59%以下の犬が先に添加区のマドレーヌを食べた。
【0028】
<総合評価基準>
○:人及び犬の評価の双方が○である場合。
△:総合評価が○又は×以外の場合。
×:人又は犬の評価のどちらか一方が×である場合。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の結果、畜肉エキスを0.00001〜0.1%又は畜肉香料を0.000001〜0.01%添加している加工食品は、人と犬の双方が美味しく食べることができるものであり好ましかった。特に、畜肉エキスを0.0001〜0.001%又は畜肉香料を0.00001〜0.0001%添加している加工食品は、人と犬の双方がより美味しく食べることができるものでありより好ましかった。
【0031】
〔実施例3〕
ビーフエキスを添加したシャーベットを製した。具体的には、二重釜にオリゴ糖10部、水200部、ビーフエキス0.004部を投入し煮詰め、シロップを調製する。次いで、ミキサーに上記製したシロップとキウイ300部を投入し、1分間撹拌後、−15℃で3時間冷凍させ、本発明の加工食品(シャーベット)を製した。なお、ビーフエキスの添加量はシャーベットに全体に対し0.0008%であった。
【0032】
〔実施例4〕
ビーフエキス0.004部をビーフ香料0.0003部に変更した以外は実施例3に準じて、本発明の加工食品(シャーベット)を製した。なお、ビーフ香料の添加量はシャーベットに全体に対し0.00006%であった。
【0033】
〔実施例5〕
ビーフエキスを添加した蒸ケーキを製した。具体的には、ミキサーに無塩バター10部、ハチミツ11部、全卵35部、低脂肪牛乳50部、薄力粉70部、ベーキングバウダー1部、ビーフエキス0.0004部、茹でた角切りのサツマイモ10部を投入し、常法に則り攪拌混合し生地を製した。次いで、製した生地をカップケーキの型に充填し、蒸煮機に入れ、100℃で10分間蒸煮し、本発明の加工食品(蒸ケーキ)を製した。なお、ビーフエキスの添加量は蒸ケーキ全体に対し0.0002%であった。
【0034】
〔実施例6〕
ビーフエキス0.0004部をビーフ香料0.00004部に変更した以外は実施例5に準じて、本発明の加工食品(蒸ケーキ)を製した。なお、ビーフ香料の添加量は蒸ケーキ全体に対し0.00002%であった。
【0035】
〔実施例7〕
ビーフエキスを添加したドーナツを製した。具体的には、ミキサーに豆腐60部、上新粉35部、タピオカ粉30部、ベーキングパウダー1.5部、オリゴ糖5部、ビーフエキス0.0004部を投入し、常法に則り撹拌混合し生地を製した。次いで、製した生地をドーナツ型に成形し、160℃で片面を3分間ずつ揚げて、本発明の加工食品(ドーナツ)を製した。なお、ビーフエキスの添加量はドーナツ全体に対し0.0003%であった。
【0036】
〔実施例8〕
ビーフエキス0.0004部をビーフ香料0.00008部に変更した以外は実施例7に準じて、本発明の加工食品(ドーナツ)を製した。なお、ビーフ香料の添加量はドーナツ全体に対し0.00006%であった。
【0037】
〔実施例9〕
ビーフエキスを添加したゼリーを製した。具体的には、二重釜に水100部、すりおろしたリンゴ150部、粉ゼラチン5部、ビーフエキス0.001部、ハチミツ10部、低脂肪牛乳100部を投入し、常法に則り90℃で10分間加熱混合した。次いで、ゼリーカップの型に充填し、5℃で60分間冷却して本発明の加工食品(ゼリー)を製した。なお、ビーフエキスの添加量はゼリー全体に対し0.0003%であった。
【0038】
〔実施例10〕
ビーフエキス0.001部をビーフ香料0.0003部に変更した以外は実施例9に準じて、本発明の加工食品(ゼリー)を製した。なお、ビーフ香料の添加量はゼリー全体に対し0.00008%であった。
【0039】
〔試験例2〕
実施例1〜10の畜肉エキス又は畜肉香料を添加した加工食品の本発明の効果について調べた。なお、評価方法及び評価基準は試験例1に従った。
【0040】
【表2】

【0041】
表2の結果、畜肉エキス又は畜肉香料を添加している焼菓子、冷菓、蒸菓子、ドーナツ、ゼリーのいずれの加工食品も、人と犬の双方が美味しく食べることができるものであると理解される(実施例1〜10)。
【0042】
〔試験例3〕
試験例2において、対象を犬30匹から猫30匹に変更した以外は、試験例2に準じて本発明の効果について調べた。なお、評価方法及び評価基準は試験例1に従った。
【0043】
【表3】

【0044】
表3の結果、畜肉エキス又は畜肉香料を添加している焼菓子、冷菓、蒸菓子、ドーナツ、ゼリーのいずれの加工食品も、人と猫の双方が美味しく食べることができるものであると理解される(実施例1〜10)。
【0045】
〔試験例4〕
畜肉エキス又は畜肉香料の畜肉の種類による本発明の効果への影響を調べた。具体的には、エキスは実施例1のビーフエキスをポークエキス又はチキンエキスに、香料は実施例2のビーフ香料をポーク香料又はチキン香料に置き換えた以外は実施例1に準じて、本発明の加工食品(マドレーヌ)を製した。なお、評価方法及び評価基準は試験例1に従った。
【0046】
【表4】

【0047】
表4の結果、畜肉エキス又は畜肉香料を添加している加工食品は、人と犬の双方が美味しく食べることができるものであると理解される(No.1〜6)。特に、ビーフエキス又はビーフ香料を添加した加工食品は、人と犬の双方がより美味しく食べることができるものであり、より好ましいことが理解される(No.1及び4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜肉が配合されていない人と犬又は猫との兼用の加工食品であって、人が畜肉臭を感じない程度の、畜肉エキスを0.00001〜0.1%及び/又は畜肉香料を0.000001〜0.01%添加していることを特徴とする加工食品。
【請求項2】
前記加工食品が焼菓子、冷菓、蒸菓子、ドーナツ、ゼリーのいずれかである請求項1記載の加工食品。


【公開番号】特開2011−155849(P2011−155849A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17616(P2010−17616)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】