説明

加工食品

【課題】本発明は、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が引き立てられた加工食品を提供するものである。
【解決手段】セロリ、パセリ、クレソン、小松菜、又はコリアンダーから選択される少なくとも1種以上からなる第1野菜群を酢酸発酵せしめた野菜酢、並びに、畜肉及び/又は魚介類を配合することを特徴とする加工食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が引き立てられた加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
牛、豚、羊、鶏、馬等の畜肉、カツオ、イワシ、ブリ、サバ、サンマ、ヒラメ、カレイ、タコ、イカ、貝類等の魚介類は、旨味を呈するアミノ酸、核酸、ペプチド、脂肪、塩味を呈する無機塩類、甘味を呈する還元糖等からなる肉特有の香味を有する。そして、肉じゃが、生姜焼き、筑前煮、酢豚、タコのマリネ、イカ大根、ブリの照り焼き等の畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味を活かした様々な加工食品が提案されている。
【0003】
しかしながら、食品工業において加工食品の保存性を高めるために、加熱殺菌等を施した場合、揮発性成分の飛散やメイラード反応等の種々の化学反応により、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が感じられなくなってしまうという問題がある。
【0004】
畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味を高める方法として、例えば、特開2003−102420号公報(特許文献1)には、香味野菜、トマト、香辛料及びきのこ類から選ばれる1種又は2種以上を原材料とする野菜エキスを澱粉加工食品に添加する、魚肉の呈味改善剤が記載されている。しかしながら、この方法では、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味を十分に活かすことはできず、消費者の要望を満足できるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−102420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が引き立てられた加工食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の野菜を酢酸発酵せしめた野菜酢と、畜肉及び/又は魚介類とを配合した加工食品は、意外にも、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)セロリ、パセリ、クレソン、小松菜、又はコリアンダーから選択される少なくとも1種以上からなる第1野菜群を酢酸発酵せしめた野菜酢、並びに、畜肉及び/又は魚介類を配合する加工食品、
(2)野菜酢に前記第1野菜群として少なくともセロリを用いる、(1)の加工食品、
(3)前記第1野菜群、並びに、ニンジン、ジャガイモ、コーン、カボチャ、パプリカ、キャベツ、ブロッコリー、ピーマン、アスパラガス、カリフラワー、タマネギ又はトマトから選択される少なくとも1種以上からなる第2野菜群とを酢酸発酵せしめた野菜酢を配合する(1)又は(2)の加工食品、
(4)野菜酢に、前記第1野菜群として少なくともセロリを用い、前記第2野菜群としてニンジン、ジャガイモ、コーン又はカボチャから選択される少なくとも1種以上を用いる、(1)乃至(3)のいずれかに記載の加工食品、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が引き立てられた加工食品を提供することができる。これにより、本発明を酢豚やタコのマリネ等の畜肉及び/又は魚介類を配合した様々な加工食品に応用することで、加工食品業界の更なる需要拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0011】
本発明の畜肉及び/又は魚介類とは、例えば、牛、豚、羊、鶏、馬等の畜肉、カツオ、イワシ、ブリ、サバ、サンマ、ヒラメ、カレイ、タコ、イカ、貝類等の魚介類が挙げられる。加工食品に配合する際の大きさは、特に限定されないが、食べ易い大きさに切断しても良いし、貝類等の場合は可食部分をそのまま用いてもよい。皮や骨が付いていても良く、ぶつ切り、スライス、ミンチ、開き、2枚おろし、3枚おろし等の形態が挙げられる。
【0012】
野菜酢とは、野菜を原料として酢酸発酵させてなる醸造酢のことである。また、「野菜酢」と表記できる醸造酢に関しては、JAS規格により「(1)醸造酢のうち穀類(甘しょ、ジャガイモ、又はカボチャを醸造酢の原料とする場合において、こうじに使用する穀類を除く)及び果実を使用しないものであって、1種類の野菜、その他の農産物又ははちみつをそれぞれ一定重量以上使用しており、かつ、使用した原材料のうち当該野菜、その他の農産物又ははちみつの重量の割合が最も多い場合、または、(2)醸造酢のうち穀類、果実、その他の農産物及びはちみつを使用しないものであって、2種類以上の野菜を使用し、そのうち1種類以上の野菜を一定重量以上使用しており、かつ、使用した原材料のうち野菜の重量の割合が最も多い場合に「醸造酢(○○酢)(野菜酢、当該野菜等)」と記載することができる」と定められている。なお、JAS規格による野菜の配合量の規定は、醸造酢1リットル当たりの使用量として、例えば、ニンジンならば330g以上、ジャガイモならば130g以上等と定められている。
【0013】
本発明の加工食品は、前記畜肉及び/又は魚介類に、セロリ、パセリ、クレソン、小松菜、又はコリアンダーから選択される少なくとも1種以上の第1野菜群を酢酸発酵せしめた野菜酢を配合することを特徴とする。このような本発明の加工食品は、食品工業において必要な加熱殺菌等を施したとしても、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が発揮される。これら野菜酢の中でも、本発明においては、特に、セロリを酢酸発酵せしめた野菜酢を配合すると、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味がより引き立てられ易く好ましい。
【0014】
野菜酢に用いる前記第1野菜群の合計配合量は、ストレート換算で野菜酢中1〜100%が好ましく、10〜60%がより好ましい。配合量が前記範囲より少ないと、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味がより引き立てられず好ましくない。前記範囲より多いと、野菜酢の発酵風味が強くなりすぎ、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味がマスキングされるため、好ましくない。
【0015】
本発明においては、特に、前記第1野菜群のうち少なくともセロリを酢酸発酵せしめた野菜酢を加えると、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味がより得られ易く好ましい。
【0016】
以上に記載した通り、前記第1野菜群を酢酸発酵せしめた野菜酢に、畜肉及び/又は魚介類を配合すると、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が発揮され好ましい。そして、本発明は、更に、ニンジン、カボチャ、ジャガイモ、コーン、パプリカ、キャベツ、ブロッコリー、ピーマン、アスパラガス、カリフラワー、タマネギ又はトマトから選択される少なくとも1種以上からなる第2野菜群を、前記第1野菜群と合わせて酢酸発酵せしめた野菜酢を配合することが好ましく、これにより、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味がより発揮され好ましい。
【0017】
野菜酢に用いる前記第2野菜群の合計配合量は、ストレート換算で野菜酢中1〜100%が好ましく、10〜60%がより好ましい。配合量が前記範囲より少ないと、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味がより引き立てられず好ましくない。前記範囲より多いと、野菜酢の発酵風味が強くなりすぎ、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味がマスキングされるため好ましくない。
【0018】
本発明においては、特に、前記第2野菜群のうち、ニンジン、ジャガイモ、コーン又はカボチャから選択される少なくとも1種以上を用いると、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味がより得られ易く好ましい。
【0019】
野菜酢全体に用いる野菜の合計配合量は、ストレート換算で20〜150%が好ましく、30〜100%がより好ましい。野菜の配合量が前記範囲より少ないと、本発明に用いる野菜酢特有の発酵香味が弱くなり、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が発揮され難く好ましくない。前記範囲より多いと、酢酸発酵に時間を要し、雑菌の増殖等のリスクがあるため好ましくない。
【0020】
本発明に用いる野菜酢の野菜原料としては、本発明の効果を損なわない限り、上記以外の野菜を用いても良い。例えば、レタス、カブ、赤カブ、ほうれん草、モロヘイヤ、シソ、ミツバ、バジル、グリーンピース、白菜、ビーツ、大根、ケール、モロヘイヤ、セリ、キュウリ、シュンギク、チシャ、オクラ、エンドウ、ナス、青梗菜、タアサイ等を用いることができる。
【0021】
酢酸発酵に用いる野菜原料の形態は特に限定されず、生野菜、凍結解凍したもの、ペースト状のもの、ジュース状、レトルト処理を施した缶詰等に加工されたもの等を用いることができる。また、これらの野菜には必要に応じて選別洗浄、剥皮、切断、微細化あるいは破砕、粉砕、搾汁、濃縮、加熱殺菌等の処理を施して野菜搾り汁とする。
【0022】
野菜酢に用いる酢酸発酵の方法としては、公知の酢酸発酵技術を用いることができる。例えば、静置発酵法、通気発酵法(深部発酵法とも呼ばれる)等の一般的な発酵方法を用いて行えばよい。
【0023】
野菜酢の酢酸発酵に用いる酢酸菌としては、公知の酢酸菌を用いることができる。例えば、アセトバクター(Acetobacter)属に属する酢酸菌が良く、アセトバクター・パスツリアヌス(Acetobacter
pasteurianus)やアセトバクター・アセチ(Acetobacter
aceti)等が好ましい。
【0024】
野菜酢の酢酸発酵に用いる発酵促進物質は、発酵を促進するための成分、例えば、ビタミン(ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン等)、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、または核酸等を含んだものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、カゼイン加水分解物、卵黄、脱脂粉乳、ビタミン類、補酵素類、ミネラル類等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて野菜酢に配合させることが出来る。また、野菜酢に対する発酵促進物質の配合量は、0.01〜1.5%が好ましい。
【0025】
本発明に用いる野菜酢は、酢酸発酵工程において、別途アルコールを配合し酢酸発酵を進行させてもよい。本発明の野菜酢に用いるアルコールの種類は、食用のもの等を用いると良く、その配合量は、酢酸発酵が進行する3〜8%が好ましい。
【0026】
本発明に用いる野菜酢の酸度は、酢酸換算で2〜8%が好ましく、4〜6%がより好ましい。酸度が前記範囲内である野菜酢を配合すると、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味を奏する本発明の加工食品が得られ易い。
【0027】
本発明の加工食品における野菜酢の配合量は、特に限定されないが、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が引き立つように微かな量に抑えることが好ましい。具体的には、加工食品全体に対し酢酸換算で、0.01〜1%が好ましく、0.02〜0.3%がより好ましい。配合量が、前記値より少ないと、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味を奏さない場合がある。配合量が多いと、野菜酢の風味が強くなりすぎ、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味がマスキングされるため好ましくない。
【0028】
本発明の加工食品に用いる畜肉及び/又は魚介類の配合量は、香味を付与できる程度に好みの量を含有すれば良く、生換算で、加工食品全体に対し、3%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。畜肉及び/又は魚介類の配合量が、前記値より少ないと、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が引き立つ加工食品を提供できない。
【0029】
本発明の加工食品は、前記畜肉及び/又は魚介類を配合した加工食品であれば特に限定されず、幅広い加工食品を挙げることができ、例えば、酢の物、和え物、カルパッチョ、パスタソース、ドレッシング、マリネ、煮物等が挙げられる。
【0030】
本発明の加工食品のpHは、特に限定されないが、3.5〜6.5が好ましく、3.5〜5.5がより好ましい。pHが前記範囲より低いと、野菜酢の発酵風味が強くなりすぎ、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味がマスキングされるため好ましくない。pHが前記範囲より高いと、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味を奏さない場合がある。
【0031】
本発明の加工食品は、畜肉及び/又は魚介類、野菜酢以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、タマネギ、ジャガイモ、パプリカ等の野菜、食塩、砂糖、醤油、味噌、食酢、動植物等の調味料、牛乳、大豆、卵等の蛋白質、キサンタンガム、アラビアガム等の増粘多糖類、胡椒、生姜、大蒜等の香辛料、色素等を配合することができる。
【0032】
本発明の加工食品は、設定する保存期間に応じて必要な殺菌加熱処理を施せば良く、具体的には、60〜180℃で行えば良い。加熱温度が前記範囲より低いと、十分に加熱殺菌されず好ましくない場合がある。加熱温度が前記範囲より高いと、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が損なわれてしまう場合がある。また、当該食品の中心部の品温を120℃、4分間以上又はこれと同等以上の効力を有する条件で加熱するいわゆるレトルト処理を施しても、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が発揮されることからレトルト食品に好適である。
【実施例】
【0033】
以下に本発明の加工食品を実施例及び比較例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0034】
[試験例1]
〈野菜酢の調製〉
まず、野菜酢の原料として、表1に記載の第1野菜群及び/又は第2野菜群を、ミキサーを用いてそれぞれ粉砕して液状にした後、真空濃縮を行って各野菜濃縮汁を調製した。次に、表1の記載に従って、第1野菜群の濃縮汁6%(ストレート換算30%)、第2野菜群の濃縮汁6%(ストレート換算30%)を配合し、これに清水83%及び95%アルコール5%を加えて、発酵前の原料混合液33種類を調製した。なお、発酵前の原料混合液に、第1野菜群を配合しない場合は第2野菜群に、第2野菜群を配合しない場合は第1野菜群に置き換えた。続いて、発酵前の原料混合液に、通気発酵法を用いて酢酸発酵を行った後、品温10〜30℃で2週間保管して熟成を行い、33種類の野菜酢を得た(調製例1〜33)。なお、得られた野菜酢の酸度は、全て酢酸換算で5%に調整した。
【0035】
〈加工食品の調製〉
33種類の野菜酢を用いてそれぞれ加工食品を調製した。すなわち、茹でた後に4cmにカットしたタコ600g、スライスしたタマネギ300g、茹でた後に4cmにカットした赤パプリカ100gの合計1000gを深型の皿に並べ入れた後、33種類の各野菜酢(酢酸換算5%)50g、酒精酢(酢酸換算5%)100g、砂糖80g、食塩15g、オリーブ油5gを混合した調味液を流し入れ、タコ、タマネギ及び赤パプリカを調味液に和えた。次に、25℃で2時間静置し、33種類の加工食品(タコのマリネ、pH4.2〜4.5)を調製した。なお、加工食品(タコのマリネ)に配合した野菜酢の量は、加工食品全体(1250g)に対し酢酸換算で0.2%であった。
【0036】
野菜酢を清水に置き換えた対照品に対して、33種類の各野菜酢を配合した、実施例1〜29及び比較例1〜4の加工食品(タコのマリネ)の風味を以下の基準で4段階評価した。結果を表1に示す。
【0037】
<評価基準>
A:畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が強く発揮されている。
B:畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が発揮されている。
C:畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味効果がやや発揮されている。
D:畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が発揮されておらず、好ましくない。
【0038】
【表1】

【0039】
畜肉及び/又は魚介類と、セロリ、パセリ、クレソン、小松菜又はコリアンダーから選択される少なくとも1種以上の野菜を酢酸発酵せしめた野菜酢とを配合した場合、得られる加工食品は、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が発揮されていた(実施例1〜5)。特に、セロリを酢酸発酵せしめた野菜酢を用いた場合、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味に優れており好ましかった(実施例1)。
【0040】
前記第1の野菜群と、ニンジン、ジャガイモ、コーン、カボチャ、パプリカ、キャベツ、ブロッコリー、ピーマン、アスパラガス、カリフラワー、タマネギ又はトマトから選択される少なくとも1種以上の野菜とを合わせて酢酸発酵せしめた野菜酢を配合した場合、セロリを酢酸発酵せしめた野菜酢を配合した実施例1と比較して、さらに畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味に優れており、好ましかった(実施例6〜17)。また、表には示していないが、第2野菜群としてニンジン、ジャガイモ、コーン又はカボチャのうちの少なくとも1種以上を用いた野菜酢は、パプリカ、キャベツ、ブロッコリー、ピーマン、アスパラガス、カリフラワー、タマネギ及びトマトと比較して、更に好ましいものであった(実施例6〜9)。また、実施例18〜29の野菜酢を配合した場合は、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が発揮されていた。
【0041】
第1野菜群を用いず、第2野菜群であるニンジン、ジャガイモ、コーン又はカボチャから選択される少なくとも1種以上の野菜を酢酸発酵せしめた野菜酢を配合した場合、得られた加工食品は、野菜が持つ素材本来の香味が、発揮されておらず好ましくなかった(比較例1〜4)。
【0042】
[試験例2]
〈野菜酢の調製〉
第1野菜群であるセロリ、第2野菜群であるニンジン、ジャガイモ、コーン、及びカボチャを用いてそれぞれの野菜酢を調製した。次に、セロリ酢及びニンジン酢を等量ずつブレンドした野菜酢、セロリ酢及びジャガイモ酢を等量ずつブレンドした野菜酢、セロリ酢及びコーン酢を等量ずつブレンドした野菜酢、及び、セロリ酢及びカボチャ酢を等量ずつブレンドした野菜酢の4種の野菜酢を調製した。なお、得られた野菜酢の酸度は、全て酢酸換算で5%に調整した。
【0043】
〈加工食品の調製〉
上記酢酸発酵後にブレンドした4種の野菜酢を用いて、試験例1と同様に、加工食品(タコのマリネ)を調製した。結果を表2に示す。得られた実施例30〜33の加工食品(タコのマリネ)は、それぞれ実施例6〜9と同様の原料を個別に酢酸発酵させただけの違いにも拘らず、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が相対的に劣っていた。
【0044】
[表2]

【0045】
[試験例3]
本発明の加工食品における野菜酢の配合量が、本発明の効果に及ぼす影響を調べるため、実施例6に準じて、加工食品の調製に用いる野菜酢及び酒精酢の配合量を下記表3の通りに変更し加工食品(タコのマリネ)を調製した。更に、試験例1と同様の評価基準に従い、本発明の効果を確認した。
【0046】
[表3]

【0047】
その結果、全ての試験例において、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が発揮されていたが、No.1及び4と比較して、No.2及び3の試験例ではより高い本発明の効果が得られた。すなわち、野菜酢の配合量は、加工食品全体に対し酢酸換算で、0.01〜1%が好ましく、0.02〜0.3%がより好ましいことが理解できる。
【0048】
[試験例4]
野菜酢に用いる第1野菜群の配合量と、第2野菜群の配合量が、本発明の効果に及ぼす影響を調べるため、実施例6に準じて、野菜酢に配合するセロリ及びニンジンの配合量を下記表4の通りに変更し加工食品(タコのマリネ)を調製した。更に、試験例1と同様の評価基準に従い、本発明の効果を確認した。
【0049】
[表4]

【0050】
その結果、全ての試験例において、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が発揮されていたが、No.5及び8と比較して、No.6及び7の試験例ではより高い本発明の効果が得られた。すなわち、野菜酢に用いる前記第1又は第2野菜群の配合量は、それぞれストレート換算で野菜酢中1〜100%が好ましく、10〜60%がより好ましいことが理解できる。
【0051】
[実施例34]
実施例6の加工食品(タコのマリネ)において、調製例6の野菜酢(セロリ、ニンジン)の野菜をセロリ濃縮汁6%(ストレート換算30%)、ジャガイモ濃縮汁3%(ストレート換算15%)、ブロッコリー濃縮汁3%(ストレート換算15%)に置き換えた以外は実施例6に準じて加工食品(タコのマリネ)を調製した。喫食したところ、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が発揮されており好ましかった。
【0052】
[実施例35]
実施例6の加工食品(タコのマリネ)において、調製例6の野菜酢(セロリ、ニンジン)の野菜をセロリ濃縮汁3%(ストレート換算15%)、クレソン濃縮汁3%(ストレート換算15%)、ジャガイモ濃縮汁6%(ストレート換算30%)に置き換えた以外は実施例6に準じて加工食品(タコのマリネ)を調製した。喫食したところ、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味が発揮されており好ましかった。
【0053】
[実施例36]
300g容レトルトパウチに、砂糖25g、醤油20g、実施例6の野菜酢(酢酸換算5%)10g、食塩2g、サラダ油2g、ゴマ油1g及び清水60gを混合したものを用意する。次に、鍋に、半月状にカットした大根60g、手羽先60gを充填後、開口部を密閉シールした。シール後、レトルト処理(120℃、20分間)を施し、本発明の加工食品(大根と手羽先の煮物、pH6.2)を調製した。得られた加工食品は、畜肉及び/又は魚介類が持つ素材本来の香味に優れ好ましかった。なお、加工食品(大根と手羽先の煮物)に配合した野菜酢の配合量は、加工食品全体(240g)に対し酢酸換算で0.2%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セロリ、パセリ、クレソン、小松菜、又はコリアンダーから選択される少なくとも1種以上からなる第1野菜群を酢酸発酵せしめた野菜酢、並びに、畜肉及び/又は魚介類を配合することを特徴とする加工食品。
【請求項2】
野菜酢に前記第1野菜群として少なくともセロリを用いる、請求項1記載の加工食品。
【請求項3】
前記第1野菜群、並びに、ニンジン、ジャガイモ、コーン、カボチャ、パプリカ、キャベツ、ブロッコリー、ピーマン、アスパラガス、カリフラワー、タマネギ又はトマトから選択される少なくとも1種以上からなる第2野菜群とを酢酸発酵せしめた野菜酢を配合する請求項1又は2記載の加工食品。
【請求項4】
野菜酢に、前記第1野菜群として少なくともセロリを用い、前記第2野菜群としてニンジン、ジャガイモ、コーン又はカボチャから選択される少なくとも1種以上を用いる、請求項1乃至3のいずれかに記載の加工食品。