説明

加水分解性有機結合剤用安定剤

本発明は、加水分解性有機結合剤用の安定剤として使用されるトリ有機ホスフィット、トリ有機アミン、複素環式芳香族窒素化合物及びカルボジイミドに関する。該安定剤は、カルボン酸エステル基を含有する重合体結合剤の増粘を防止するのに役立つ。安定化がなければ、これらの結合剤は、湿気を含んだ空気にさらされたときに迅速に濃くなる。本発明の安定化有機結合剤は、船舶用防汚塗料を処方するのに特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年5月11日に出願された米国仮特許出願第60/569941に基づく優先権を主張する。
発明の分野
本発明は、加水分解性有機結合剤用安定剤として使用されるトリ有機ホスフィット、トリ有機アミン、複素環式芳香族窒素化合物及びカルボジイミドに関する。該安定剤は、カルボン酸エステル基を含有する高分子結合剤の増粘を防止するのに役立つ。安定化がなければ、該結合剤は、湿気にさらされると増粘し得る。本発明の安定化有機結合剤は、船舶用防汚塗料を処方するために特に有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
加水分解性基、特に加水分解性カルボン酸エステル基を含有する重合体は、船舶用防汚塗料において優れた自己研磨性能を有することが示されている。これらの塗料が受ける一つの問題は、湿気にさらされること及び添加されたZn化合物との非相溶性による乏しい貯蔵安定性である。いったん湿った空気にさらされると、その粘度は迅速に増加し、濃厚な塊を生じさせる傾向がある。さらに、酸化銅(I)、有機系殺生物剤ブースター、その他の添加剤及び酸性共結合剤、例えば樹脂酸のような様々な塗料添加剤の含水率は、さらに、乏しい貯蔵安定性の一因となる。
【0003】
従来技術には、微量の水及び酸がトリ有機錫防汚塗料において安定性の問題の原因であることが教示されている。プロトン性官能基が、主として、アクリル酸シリル結合剤による安定性の問題の原因であると見なされている。ここで、プロトン性官能基とは、正に分極した反応性プロトンを含有する任意の分子と定義される。例は、微量の酸又は水である。微量の酸とは、ここでは、加水分解された残留単量体、及び/又は重合体の加水分解及び/又は加水分解単量体の重合によって生じた重合体主鎖上の酸側基と定義される。本出願人のスクリーニング試験から、微量の酸が加水分解性カルボン酸シリル基を含有するアクリル酸シリル重合体の安定性を実際に減少させることが確認された。
【0004】
2つの主要な方法を使用して貯蔵中に加水分解に対して結合剤及び防汚塗料組成物が安定化されてきた。一つは、塩基により微量の酸を中和して塩を形成させることを伴う。中和により生じた重合体主鎖上の選択された陽イオン性側基は、ペイント処方物に見出される金属とは架橋しないであろう。また、塩基と加水分解した残留単量体との反応の際に形成された残留塩も酸触媒重合体の加水分解を妨げ得る。モノアミン及び第四アンモニウム化合物は、WO91/14743において、有機シリル官能基を有する結合剤を含有する防汚ペイントの貯蔵安定性を増大させることが記載されている。該化合物は、銅又は亜鉛を含有する防汚剤を使用することによって生ずるペイントのゲル化を抑制する。ジテルペン含有アミンは、米国特許第5116407号において、船舶用ペイントの結合剤及び殺生物剤として使用されている。
【0005】
米国特許第4376181号には、酸化銅(I)及びトリ有機錫含有重合体を含有する防汚ペイントの貯蔵中に観察される粘度上昇を低減させるために、2,6−ジ−t−ブチルフェノールのようなヒンダードフェノールを使用することが開示されている。
【0006】
米国特許第5773508号及び同5439511号には、不飽和酸無水物を含有する防汚ペイントの安定剤としてトリアゾール、チアジアゾール及びベンゾチアゾール誘導体が記載されている。これらの誘導体は、防汚ペイントが銅化合物を含有するときに観察される粘度の増加を妨害する。
【0007】
安定化の別法は、処方物中における任意の水の除去又は結合を包含する。これは、典型的には、モレキュラーシーブ及び乾燥剤で行われる。
【0008】
このような方法の一つは、有機又は無機脱水剤を添加することである。米国特許第6458878号;同6172132号及び6110990号には、無水石膏(CaSO4)、 モレキュラーシーブのような合成ゼオライト、オルトエステル、例えば、オルト蟻酸メチル及びオルト酢酸メチル、オルト硼酸エステル、シリケート、及びイソシアネートの使用が記載されている。
【0009】
米国特許第4187211号には、トリ有機錫防汚ペイントにおいて、粘度増加を抑制するために比較的不活性でかつ水不溶性の脱水剤を使用することが記載されている。米国特許第5342437号;5252123号;5232493号;5185033号;5112397号;及び5098473号には、天然及び合成クレー(例えば、ベントナイト)及び乾燥剤(例えば、モレキュラーシーブ、アルミナ)が亜鉛ピリチオン及び酸化銅(I)を含有するペイント中の水分を除去することによって貯蔵安定性を増大させるのに有効であった。
【0010】
モレキュラーシーブ及び大部分の乾燥剤に伴う問題は、水の結合が可逆的な(平衡な)プロセスであるということである。そのため、水の大部分が結合する間に、若干量が常に高分子結合剤の加水分解のための系に利用できる。
【0011】
アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はシリル樹脂を含有する防汚ペイントを安定化させるために、キレート剤が使用されてきた。欧州特許第1033392号には、β−ジケトン、アセト酢酸のエステル、α−ジオキシム、ビピリジル、オキシム、アルカノールアミン、グリコール、サリチル酸及びそれらの誘導体、及び有機酸のようなキレート剤を使用することが記載されている。これらのキレート剤は、銅防汚剤が該ペイントに添加されたときに観察される粘度増加及び被覆特性の悪化を防止する。
【0012】
乏しい貯蔵安定性の問題に対するこの手法のいずれも非相溶性、揮発性、乏しい効率又はいくつかの他の問題に関する欠点を有する。例えば、トリ有機錫重合体/ペイントのための効果的な安定剤であるヒドロキシルアミン及び酸化トリブチル錫は、アクリル酸シリル重合体用の安定剤としては有効ではないことが分かった。
【0013】
驚くべきことに、いくつかの他の化合物は、加水分解性カルボン酸基を含有する重合体のための効果的な安定剤であることが分かった。これらの新規な安定剤としては、トリ有機ホスフィット、トリ有機アミン、複素環式芳香族窒素化合物、イソシアネート及びカルボジイミドが挙げられる。これらの安定剤は、結合剤及び船舶用防汚塗料のような該結合剤を含有する処方物の両方を安定化させるのに有用である。
【特許文献1】国際公開第91/14743号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5116407号明細書
【特許文献3】米国特許第4376181号明細書
【特許文献4】米国特許第5773508号明細書
【特許文献5】米国特許第5439511号明細書
【特許文献6】米国特許第6458878号明細書
【特許文献7】米国特許第6172132号明細書
【特許文献8】米国特許第6110990号明細書
【特許文献9】米国特許第4187211号明細書
【特許文献10】米国特許第5342437号明細書
【特許文献11】米国特許第5252123号明細書
【特許文献12】米国特許第5232493号明細書
【特許文献13】米国特許第5185033号明細書
【特許文献14】米国特許第5112397号明細書
【特許文献15】米国特許第5098473号明細書
【特許文献16】欧州特許第1033392号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の概要
【0015】
本発明の目的は、加水分解性カルボン酸エステル基を有する重合体を含有する結合剤組成物用の効果的な安定剤を特定することである。
【0016】
新規な安定剤を使用した船舶用防汚塗料処方物を特定することがさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的は、防汚塗料用の安定化結合剤組成物であって、
(a)1種以上の加水分解性有機結合剤、及び
(b)トリ有機ホスフィット、トリ有機アミン、複素環式芳香族窒素化合物、カルボジイミド及びそれらの混合物よりなる群から選択される0.01〜20重量%の1種以上の安定剤
を含むものである本発明によって達成された。
【0018】
また、これらの目的は、防汚塗料組成物であって、
(a)1種以上の加水分解性有機結合剤と、
(b)トリ有機ホスフィット、トリ有機アミン、複素環式芳香族窒素化合物、カルボジイミド及びそれらの混合物よりなる群から選択される0.01〜20重量%の1種以上の安定剤と、
(c)防汚剤と
を含むものである本発明によっても達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、加水分解性有機結合剤及びそれらが処方された塗料、特に船舶用防汚ペイント及び塗料の粘度増加を抑制するために効果的な安定剤として、トリ有機ホスフィット、トリ有機アミン、複素環式芳香族窒素化合物及びカルボジイミドを開示する。
【0020】
ここで使用するときに、「加水分解性結合剤」とは、共重合体結合剤が加水分解を受けて、−COOH及び−SO3H、−HxPO4のような他の酸官能基(これらに限定されない)を含む酸を形成できることを意味する。この加水分解は、塗料組成物中において一般的な添加剤として見出される金属の存在によって触媒され得る。
【0021】
ここで使用するときに、用語「共重合体」には、2種以上の異なる単量体単位を含む重合体が含まれる。また、本発明は、共重合体の混合物も包含する。
【0022】
好ましくは、該加水分解性結合剤は、アクリル共重合体結合剤である。本発明に有用なアクリル単量体の例としては、 アクリル酸、アクリル酸のエステル、アクリルアミド及びアクリロニトリルが挙げられるが、これらに限定されない。また、アルキルアクリル酸誘導体、特にメタクリル酸誘導体も挙げられる。また、官能性アクリル単量体も挙げられる。有用なアクリル単量体の例としては、 アクリル酸のエステル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシ−n−プロピル、アクリル酸ヒドロキシ−i−プロピル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−メトキシプロピル、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、アクリル酸2−エトキシエチル、エトキシジエチレングリコールアクリレート及びメタクリル酸のエステル、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−メトキシプロピル、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート及びメタクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ−n−プロピル、メタクリル酸ヒドロキシ−i−プロピル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられるがこれらに限定されない。他の有用なエチレン性不飽和単量体としては、ネオペンチルグリコールメチルエーテルプロポキシレートアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルアクリレート、エトキシジエチレングリコールメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−ブトキシエチル、クロトン酸、ジ(エチレングリコール)2−エチルヘキシルエーテルアクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、3,3−ジメチルアクリル酸、アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート、2(5H)フラノン、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メチル−2(5H)フラノン、トランス−3−メトキシアクリル酸メチル、メタクリル酸2−(t−ブチルアミノ)エチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル、チグリン酸及びトランス−2−ヘキセン酸が挙げられる。
【0023】
該アクリル単量体は、1種以上の非アクリルエチレン性不飽和単量体と共重合される。該共重合体の特性は、共単量体の選択及び比率によって調節できる。使用される共単量体の選択によって該共重合体の親水性又は疎水性を調節することが可能である。本発明の共重合体を形成させる際に有用な単量体の例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニルのようなビニルエステル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−プロピル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ−2−メトキシエチルのようなマレイン酸エステル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジ−n−プロピル、フマル酸ジイソプロピルのようなフマル酸エステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン及びアクリロニトリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明のアクリル結合剤は、次式:
【化1】

を有するCu及び/又はZnアクリル重合体結合剤であることができる。
【0025】
好ましい具体例では、該アクリル重合体は、加水分解性有機シリルエステル基を含有する(メタ)アクリル酸有機シリル重合体である。特に好ましいものは、(メタ)アクリル酸トリアリールシリル含有共重合体である。有用な(メタ)アクリル酸トリアルキルリルとしては、(メタ)アクリル酸トリメチルシリル、(メタ)アクリル酸ジフェニルメチルシリル、(メタ)アクリル酸フェニルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル及び(メタ)アクリル酸トリブチルシリルが挙げられる。
【0026】
本発明のアクリル重合体結合剤は、アクリル単量体と、それらと共重合体できる1種以上のエチレン性不飽和非アクリル単量体とを重合させることによって製造される。特定の単量体が、本発明の三元共重合体又はそれよりも高級の重合体を合成するにあたって、許容できる水浸食性を保持しつつ被膜の耐屈曲性及び亀裂抵抗のような改善された特性を有する重合体を提供するために有用であることが分かった。
【0027】
ランダム共重合体結合剤は、フリーラジカルオレフィン重合開始剤又は触媒の存在下で、斯界に周知でかつ斯界において幅広く使用されている方法を使用した溶液重合、バルク重合、エマルジョン重合及び/又は懸濁重合のような様々な合成手順のうち任意のものを使用して、単量体の混合物を重合させることによって得られ得る。該共重合体から塗料組成物を製造する際には、共重合体を有機溶媒で希釈して都合のよい粘度を有する重合体溶液を得ることが有利である。このためには、溶液重合方法又はバルク重合方法を使用することが望ましい。
【0028】
有用な有機溶媒の例としては、キシレン及びトルエンのような芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン及びヘプタンのような脂肪族炭化水素、酢酸エチル及び酢酸ブチルのようなエステル、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールのようなアルコール、ジオキサン及びテトラヒドロフランのようなエーテル並びにメチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンのようなケトンが挙げられる。該溶媒は、単独で又は組み合わせて使用される。
【0029】
アクリレート共重合体の望ましい分子量は、重量平均分子量で、1,000〜200,000、好ましくは10,000〜150,000の範囲にある。低すぎる又は高すぎる分子量の共重合体は、通常の塗膜を形成させる際に困難性を生じる。高すぎる分子量は、適切に機能しない長くて相互に絡み合った重合体鎖を生じさせ、かつ、単一の被覆操作で薄い被覆を生じさせるように溶媒で薄める必要がある粘稠な溶液を生じさせる。低すぎる分子量の重合体は、一般に、多段階の被覆操作が必要となり、しかも完全性を欠きかつ適切に機能しない被膜を与える。該共重合体の溶液の粘度は、25℃で200〜6,000センチポアズ、一般的には4,000cps以下であることが有利である。これを達成するためには、重合体溶液の固形分を5〜90重量%、望ましくは15〜85重量%の範囲の値に調節することが望ましい。
【0030】
加水分解性有機重合体結合剤(特に(メタ)アクリル酸シリル重合体用の)及び塗料の安定剤として4タイプの重合体が特定されている。これらの化合物は、(1)トリ有機ホスフィット、(2)トリ有機アミン、(3)複素環式芳香族アミン(例えば、ピリジン)及び(4)カルボジイミド(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド)である。
【0031】
本発明のトリ有機ホスフィットは、式(RO)3P(式中、Rは、C2〜C16アルキル、シクロアルキル又はアリール若しくは置換アリール基である。)を有する。安定剤として有用なトリ有機ホスフィットの例としては、亜燐酸トリエチル、亜燐酸トリプロピル、亜燐酸トリブチル、亜燐酸トリフェニル、亜燐酸トリオクチル、亜燐酸トリイソデシル、亜燐酸トリイソプロピルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいトリ有機ホスフィットは、亜燐酸トリエチル、亜燐酸トリプロピル、亜燐酸トリブチルである。
【0032】
本発明のトリ有機アミンは、式 R3N(式中、Rは、C2〜C16アルキル、 シクロアルキル又はアリール若しくは置換アリール基である。)を有する。安定剤として有用なトリ有機アミンの例としては、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリアリルアミン、トリオクチルアミン、トリイソオクチルアミン、トリフェニルアミン及びトリドデシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいトリ有機アミンは、トリプロピルアミン、トリブチルアミン及びトリエチルアミンである。
【0033】
本発明の複素環式芳香族アミンは、窒素原子を含む5〜6員環を含有するアミンである。安定剤として有用な複素環式芳香族アミンの例としては、ピリジン、1,2,4−トリアゾール、1,3,5−トリアジンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい複素環式芳香族アミンは、ビニルピリジン、置換ピリジン及び2−メチルピリジンを含め、ピリジン及びその誘導体である。
【0034】
いかなる特定の理論にも拘泥されないが、トリ有機ホスフィット、トリ有機アミン及び複素環式芳香族アミンは、P:又は N:ルイス塩基として作用し得ると思われる。該トリ有機ホスフィットは、ラジカル捕捉剤及び塩基の両方として作用し得る一方で、トリ有機アミン又は複素環式芳香族窒素化合物は、もっぱら塩基として、すなわち酸捕捉剤として機能し得る。窒素化合物がホスフィットよりも効果的であるように思われる。
【0035】
2重量%の充填量でのピリジンが、試験された他の窒素塩基よりも性能的に優れていることが分かった(例1)。このものは、3重量%のZnオマジン(亜鉛ピリチオン)の存在下(最悪の場合の組成)でさえも、アクリル酸シリル重合体のための非常に効果的な安定剤である。
【0036】
ホスフィットは、高充填量の酸化銅(I)を含有する防汚ペイントを安定化させる際にピリジンよりも効果的であることが分かった。酸化銅(I)は、防汚ペイントにおいて、典型的には30〜65重量%で使用される最も割安な殺生物剤及び顔料である。
【0037】
一つの好ましい具体例では、ホスフィット及び窒素塩基(例えば、ピリジン又はアルキルアミン)のブレンドが安定剤として使用される。このようなブレンドは、溶液に樹脂安定性及びZn又はCu殺生物剤との相溶性を相乗効果的に与えるように作用し得る。このような安定性の改善は、例9において、ピリジンと亜燐酸トリエチルの組み合わせで見られた。別の具体例では、非ピリジンアミン及び嵩高なホスフィット又はヒンダードアミン(熱安定剤又は光安定剤として知られている)を組み合わせて相乗的な安定性を与えることができる。
【0038】
本発明のカルボジイミドは、式R−N=C=N−R(式中、Rは同一又は異なるものであり、そしてC2〜C16アルキル、シクロアルキル又はアリール若しくは置換アリールに等しい。)を有するものである。安定剤として有用なカルボジイミドの例としては、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド;1,3−ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド;1,3−ジ−p−トリルカルボジイミド、1−(3−(ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドメチオジド;1,3−ジ−t−ブチルカルボジイミド;1,3−ジイソプロピルカルボジイミドが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいカルボジイミドは、ジシクロヘキシルカルボジイミドである。
【0039】
カルボジイミドは、脱水剤として作用して加水分解性重合体を安定化させる。硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブ又はクレーのような、現在斯界において使用されている乾燥剤は、水分を物理的に吸収することによって作用する。これは、可逆平衡プロセスである。貯蔵条件(温度及び所要時間)に応じて、物理的に吸収された水が再度系に放出され、加水分解に至り得る。カルボジイミドは水分と化学的に反応する。この水分との化学反応は不可逆であるため、長期間にわたって組成物が高度な安定性を維持するのを可能にする。
【0040】
本発明に有用なカルボジイミドの例は、ジシクロヘキシルカルボジイミドである。水との反応について、その副生成物は、ジシクロヘキシル尿素である。この窒素含有生成物は、その後、結合剤/ペイントの安定性をさらに向上させるのに役立ち得る。
【0041】
本発明の安定剤は、斯界に知られている手段によって重合体結合剤と混合できる。該安定剤の1種以上を、該重合体の固形物を基にして0.01〜20重量%、好ましくは、0.1〜8.0重量%で混合させる。該安定剤は、該結合剤の溶液と混合でき又は最終塗料処方物に直接混合できる。また、これらの安定剤のいくつかは、フリーラジカル重合又は他の好適な方法によって重合体主鎖に又はその上にも取り込まれ得る。該重合体への/該重合体上への取り込みは、塗料組成物からの安定剤の浸出を最小にするのに役立つ。
【0042】
該安定剤は、斯界に知られている1種以上の安定剤と併用できる。塗料処方物における他の添加剤としては、1種以上の共結合剤及び/又は添加剤、例えば、ロジン又は官能化ロジン(例えば、ロジン酸金属)が挙げられるが、これらに限定されない。追加の添加剤としては、斯界に知られているような顔料、有機染料、乾燥剤、可塑剤、分散剤、充填剤、チキソトロープ剤 、殺生物剤(例えば、Cu2O)及び有機系共殺生物剤が挙げられる。
【0043】
この安定化された結合剤組成物を使用して自己研磨型船舶用防汚ペイントを製造することができる。一般に、自己研磨型船舶用防汚ペイントの浸食速度は、該重合体における加水分解性単量体の量の関数であると見なされる。実際に、海水浸食性アクリル酸シリル共重合体を開示しかつ特許請求している米国特許第4,593,055号には、第5欄第43行(参照)に、該浸食速度の優れた制御が該重合体を化学的に調節することに依存するため、これは、塗膜/水の境界面での重合体鎖に懸垂する所定の箇所で選択的に弱められることが教示されている。これらの弱い結合は海水によって緩やかに浸食され、その重合体は徐々に海水可溶性又は海水膨潤性になる。これは、この加水分解された表面重合体皮膜を、移動海水がこの層を洗い流し、それによって新たな表面を露出させることができるような範囲にまで弱める。
【0044】
本発明の塗料組成物において防汚剤として使用される毒物は、従来から知られている様々な毒物のうち任意のものであることができる。この既知の毒素は、大まかに、無機化合物、金属含有有機化合物及び金属非含有有機化合物に分けられる。
【0045】
無機毒物化合物の例としては、酸化銅(I)、銅粉末、チオシアン酸銅、炭酸銅、塩化銅及び硫酸銅のような銅化合物並びに硫酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸ニッケル及び銅−ニッケル合金のような亜鉛及びニッケル化合物が挙げられる。
【0046】
金属含有有機毒物化合物の例としては、有機銅化合物、有機ニッケル化合物及び有機亜鉛化合物が挙げられる。有機銅化合物の例としては、オキシン銅、ノニルフェノールスルホン酸銅 、ビス(エチレンジアミン)ビス(ドデシルベンゼンスルホン酸)銅、酢酸銅、ナフテン酸銅及び銅ビス(ペンタクロルフェノレート)が挙げられる。有機ニッケル化合物の例としては、酢酸ニッケル及びジメチルジチオカルバミン酸ニッケルが挙げられる。有機亜鉛化合物の例としては、酢酸亜鉛、カルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、亜鉛ピリチオン及びエチレンビス(ジチオカルバミン酸)亜鉛が挙げられる。
【0047】
金属非含有有機毒物化合物の例としては、N−トリハロメチルチオフタルイミド、ジチオカルバミン酸、N−アリールマレイミド、3−(置換アミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、ジチオシアノ化合物、トリアジン化合物などが挙げられる。
【0048】
N−トリハロメチルチオフタルイミド毒物の例としては、N−トリクロルメチルチオフタルイミド及びN−フルオルジクロルメチルチオフタルイミドが挙げられる。ジチオカルバミン毒物の例としては、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド、N−メチルジチオカルバミン酸アンモニウム及びエチレンビス(ジチオカルバミン酸)アンモニウムが挙げられる。
【0049】
アリールマレイミド毒物の例としては、N−(2,4,6−トリクロルフェニル)マレイミド、N−4−トリルマレイミド、N−3−クロルフェニルマレイミド、N−(4−n−ブチルフェニル)マレイミド及びN−アニリノフェニル)マレイミドが挙げられる。
【0050】
3−(置換アミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン毒物の例としては、3−ベンジリデンアミノ−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、3,4−(メチルベンジリデンアミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、3−(2−ヒドロキシベンジリデンアミノ−1,3−チアゾリジン−2,4−チアゾリジン−2,4−ジオン、3−(4−ジクロルベンジリデンアミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン及び3−(2,4−ジクロルベンジリデンアミノ−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンが挙げられる。
【0051】
ジチオシアノ毒物化合物の例としては、ジチオシアノメタン、ジチオシアノエタン及び2,5−ジチオシアノチオフェンが挙げられる。トリアジン化合物の例としては、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジンが挙げられる。
【0052】
金属非含有有機毒物化合物の他の例としては、2,4,5,6−テトラクロルイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロルフェニル尿素、4,5−ジクロル−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N,N−ジメチル−N'−フェニル−(N−フルオルジクロルメチルチオ)スルファミド、テトラメチルチウラムジスルフィド、カルバミン酸3−ヨード−2−プロピルブチル、2−(メトキシカルボニルアミノ)ベンズイミダゾール、2,3,5,6−テトラクロル−4−(メチルスルホニル)ピリジン、4−ブロム−2−(4−クロルフェニル)−5−(トリフルオルメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル、3−ベンゾ[b]−2−チエニル−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン−4−オキシド、ジクロル−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]フルオル−N−(p−トリル)メタンスルフェンアミド、ジクロルフラニド及びジヨードメチル−p−トリルスルホンが挙げられる。
【0053】
前述の毒物から選択できる1種以上の毒物を防汚塗料組成物に使用できる。該毒物は、該塗料組成物の0.1〜80重量%、好ましくは1〜60重量%の量で使用される。低すぎる毒物レベルは、防汚効果を生じさせない一方で、高すぎる毒物レベルは、亀裂及び剥離のような欠陥を発生させやすい塗膜の形成に至り、それによって効果が低くなり得る。
【0054】
本発明の安定化塗料組成物を使用して海水、淡水又は汽水にさらされる構造物を被覆することができる。また、蘚類又は他の生物の集積を防ぐように、これらのものを使用して、緩やかに浸食する塗膜が有用な、高度な湿気にさらされる構造物を被覆することもできる。これらの構造物としては、船舶、ボード、船渠、防波堤及び橋脚が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0055】
実施例
全ての例において、特に示さない限りパーセンテージは重量%である。
【0056】
加速貯蔵安定性試験を、次の手順に従って実施した:(1)小型ペイント缶(1/2〜1パイントの寸法)に液体試験試料を充填し、そして頂部に少なくとも1/4の空間を残す。(2)初期粘度を記録し、そしてこの缶を蓋で適切に閉じる。(3)この缶を55℃のオーブンに置く。(4)粘度を毎週記録し、そしてこのペイントの粘稠性を点検する。(5)該試料が8週間の前に塊又はゲルを生じる場合には、該試験を終了する。(6)
試験を8週間にわたって続行する。(7)スキンニングなし又はゲル化なしの合格/不合格基準に基づき判断する。全ての粘度測定は、ブルックフィールドRVT粘度計を使用して25℃で行った。以下の表におけるアステリスクは、試料がゲル化し、その粘度の測定が可能でなかったことを示していることに留意されたい。これらの条件下で、トリブチル錫共重合体は、8週間後に、55℃で合格する。トリブチル錫共重合体についてのこの粘度上昇は、室温で2年の貯蔵寿命に相当する。
【0057】
例1
ポリ(メタクリル酸ジフェニルメチルシリル−コ−メタクリル酸メチル)の50重量%キシレン溶液を次に挙げる安定剤のそれぞれと混合した。安定剤及び他の添加剤のパーセンテージは、50%の結合剤溶液に加えられた重量に基づく。次いで、この混合された試料をペイントシェーカー上に20分間置き、上記の加速試験を使用して評価した。これらの結果を表1に示している。
1.1 (比較)安定剤を有しない重合体、
1.2 5%亜燐酸トリエチルを有する重合体、
1.3 (比較)5%酸化ビストリブチル錫(TBTO)を有する重合体、
1.4 (比較)5%ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を有する重合体、
1.5 (比較)5%ヒドロキノンを有する重合体、
1.6 (比較)5%イソプロピルアルコールを有する重合体(IPA)、
1.7 (比較)5%酢酸エチルを有する重合体。
【0058】
【表1】

【0059】
結論:亜燐酸トリエチル(ID#1.2)は、この試験群おける最良の安定剤として傑出している。
【0060】
例2
次の試料を例1と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表2に示す。
2.1 (比較)安定剤を有しない重合体、
2.2 2%亜燐酸トリブチル(TBP)を有する重合体、
2.3 2%亜燐酸トリフェニルを有する重合体、
2.4 2%亜燐酸トリエチル(TEP)を有する重合体、
2.5 1%亜燐酸トリエチルを有する重合体、
2.6 (比較)5%硼酸トリエチルを有する重合体、
2.7 (比較)5%ジフェニルメチルシロキサンを有する重合体、
2.8 (比較)5%トリフェニルシラノールを有する重合体、
2.9 (比較)5%アセトン酸エチルを有する重合体、
2.10 (比較)5%酸化亜鉛を有する重合体、
2.11 (比較)5%チタンイソプロポキシドを有する重合体、
2.12 (比較)5%亜鉛ピリチオンを有する重合体。
【0061】
【表2】

【0062】
結論:安定剤なしでは、該重合体は55℃で4週間以内にゲル化した。亜燐酸トリブチル及び亜燐酸トリエチルがこの群において2つの最良の安定剤である。
【0063】
例3
次の試料を例1と同一の態様で調製し、そして試験したが、ただし、使用した重合体は、ポリ(メタクリル酸ジフェニルメチルシリル−コ−メタクリル酸メチル)の50重量%キシレン溶液の代わりに、ポリ(メタクリル酸トリフェニルシリル−コ−メタクリル酸メチル)の50重量%キシレン溶液であった点で変更した。結果を表3に示す。
3.1 (比較)安定剤を有しない重合体、
3.2 2%亜燐酸トリブチルを有する重合体、
3.3 2%亜燐酸トリエチルを有する重合体、
3.4 5%トリプロピルアミンを有する重合体、
3.5 (比較)5%亜鉛ピリチオン(ZnPT)を有する重合体。
【0064】
【表3】

【0065】
結論:この対照は、8週間後でもゲル化しなかったが、粘度は10倍に増加した。この群における最も優秀なものは、亜燐酸トリエチル、亜燐酸トリブチル及びトリプロピルアミンである。
【0066】
例4
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表4に示す
4.1 (比較)安定剤を有しない重合体、
4.2 2%亜燐酸トリフェニルを有する重合体、
4.3 2%亜燐酸トリブチルを有する重合体、
4.4 2%トリプロピルアミンを有する重合体、
4.5 (比較)2%ピロリジンを有する重合体、
4.6 (比較)2%尿素を有する重合体、
4.7 2%ピリジンを有する重合体。
【0067】
【表4】

【0068】
結論:ピリジンがこの群において最も優秀なものであり、亜燐酸トリブチルがそれに続く。また、亜燐酸トリフェニル、トリプロピルアミン及び尿素も、対照よりも良好な性能を示す。
【0069】
例5
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表5に示す。
5.1 (比較)安定剤を有しない重合体、
5.2 (比較)2%酸化亜鉛を有する重合体、
5.3 (比較)2%IPAを有する重合体、
5.4 2%トリエチルアミンを有する重合体。
【0070】
【表5】

【0071】
結論:対照の初期粘度が795cps(例3)から3707cpsに増大したことに留意されたい(貯蔵中及び取扱中に湿った空気にさらされたことを示す)。この群では、トリエチルアミン混合物が対照を超える改善を示した。
【0072】
例6
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表6に示す。
6.1 (比較)安定剤を有しない重合体、
6.2 1.5%ピリジン及び3%ZnPTを有する重合体、
6.3 1.0%ピリジン及び3%ZnPTを有する重合体、
6.4 0.5%ピリジン及び3%ZnPTを有する重合体、
6.5 0.9%ピリジンを有する重合体、
6.6 1.0%ピリジン及び3%ZINEBを有する重合体、
6.7 1.0%2−ビニルピリジンを有する重合体、
6.8 2%1−メチル−2−ピロリジノンを有する重合体、
6.9 0.9%1−メチル−2−ピロリジノンを有する重合体。
【0073】
【表6】

【0074】
結論:ピリジン及びその誘導体は効果的な安定剤である。これらの結果は、ピリジン安定化重合体が3重量%でZnベースの殺生物剤(ZnPT及びZinebと相溶性があることを示している。
【0075】
例7
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表7に示す。
7.1 (比較)安定剤を有しない重合体、
7.2 2%ジエチルヒドロキシルアミン及び3%ZnPTを有する重合体、
7.3 2%イミダゾール及び3%ZnPTを有する重合体、
7.4 2%1−メチルイミダゾール及び3%ZnPTを有する重合体、
7.5 (比較)2%ジエタノールアミン及び3%ZnPTを有する重合体。
【0076】
【表7】

【0077】
結論:対照の初期粘度が例1の795cpsから5750cpsにまで上昇していることに留意されたい(安定化されていない重合体の乏しい貯蔵安定性を示す)。これらの試験の全ては、安定剤添加剤がZnの不相溶性を克服できることを確実にするために3%ZnPTの存在下で実施した。
【0078】
例8
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表8に示す。
8.1 (比較)安定剤を有しない重合体、
8.2 (比較)0.9%ピリジンを有する重合体、
8.3 (比較)安定化されていない、3%Cu2Oを有する重合体、
8.4 (比較)3%Cu2O及び0.9%ピリジンを有する重合体 、
8.5 (比較)3%ZnPT及び0.9%ピリジンを有する重合体、
8.6 (比較)安定化されていない、2%安息香酸を有する重合体、
8.7 (比較)安定化されていない、2%安息香酸を有する重合体。
【0079】
【表8】

【0080】
結論:安定化されていない重合体(8.1)の初期粘度は、13,000cpsで始まった(3500cpsから増加)(貯蔵中及び取扱中にかなりの湿った空気にさらされたことを示す)。結果として、8週間後に有意な粘度増加はなかった。しかしながら、この出発粘度は許容できない。
【0081】
例9
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表9に示す。
9.1 0.9%ピリジンを有する重合体、
9.2 0.9%ピリジン及び50%Cu2Oを有する重合体、
9.3 2.0%ピリジン及び50%Cu2Oを有する重合体、
9.4 ブリキ缶中の0.9%ピリジン及び3%ZnPTを有する重合体、
9.5 ガラス瓶中の0.9%ピリジン及び3%ZnPTを有する重合体、
9.6 0.9%ピリジン及び3%酸化亜鉛を有する重合体、
9.7 0.9%ピリジンと、50%Cu2Oと、2%TBPとを有する重合体、
9.8 50%Cu2O及び2%TBPを有する重合体、
9.9 50%Cu2O及び2%TEP重合体、
9.10 0.9%ピリジンと、50%Cu2Oと、2%TEPとを有する重合体、
9.11 0.9%ピリジンと、2%TBPと、3%亜鉛オマジンとを有する重合体。
【0082】
【表9】

【0083】
結論:これらの結果は、ピリジン安定化重合体(9.1)が非常に安定であることを明らかに示している。しかし、ピリジン安定化重合体は、ZnPT(9.4及び9.5)とは相溶性があるが、Cu2Oとは相溶性がない。
【0084】
例10
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表10に示す。
10.1 (比較) 50%Cu2Oを有する重合体、
10.2 50%Cu2O及び5%1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド重合体、
10.3 (比較)50%Cu2O及び5%蓚酸ナトリウムを有する重合体、
10.4 (比較)50%Cu2O及び5%酢酸アンモニウムを有する重合体、
10.5 (比較)50%Cu2O及び5%硫酸マグネシウムを有する重合体、
10.6 (比較)50%Cu2O及び5%硫酸ナトリウムを有する重合体、
10.7 (比較)50%Cu2O及び5%塩化カルシウムを有する重合体、
10.8 (比較)50%Cu2O及び5%ドデシル硫酸ナトリウム塩を有する重合体、
10.9 (比較)50%Cu2O及び5%モレキュラーシーブ(顆粒)を有する重合体。
【0085】
【表10】

【0086】
結論:明らかに、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドは、他の候補と比較して、Cu2O含有ペイントのための効果的な安定剤として傑出している。
【0087】
例11
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表11に示す。
11.1 (比較)50%Cu2O及び2%TEPを有する重合体、
11.2 (比較)50%Cu2Oと、3%イソホロンジイソシアネートと、3%酸化亜鉛
とを有する重合体、
11.3 50%Cu2Oと、3%ジシクロヘキシルカルボジイミドと、3%酸化亜鉛とを
有する重合体。
【0088】
【表11】

【0089】
結論:ジシクロヘキシルカルボジイミドの安定化効果が50%Cu2O及び3%酸化亜鉛(11.3)でさらに確認される。
【0090】
例12
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表12に示す。
12.1 (比較)5%イソホロンジイソシアネートを有する重合体、
12.2 5%1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドを有する重合体。
【0091】
【表12】

【0092】
例13
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表13に示す。
13.1 3%1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドと、70%固形分の10%酸化亜
鉛と、50%Cu2Oとを有する重合体。
【0093】
【表13】

【0094】
結論:ジシクロヘキシルカルボジイミドは、最悪の場合の処方である10%酸化亜鉛及び50%Cu2Oと相溶性がある。
【0095】
例14
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表14に示す。
14.1 (比較)50%Cu2O及び5%ジメチグリコキシムを有する重合体、
14.2 (比較)50%Cu2O及び5%ピリジンn−オキシドを有する重合体、
14.3 (比較)50%Cu2O及び5%エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和
物を有する重合体、
14.4 (比較)50%Cu2O及び5%4−t−ブチルカテコールを有する重合体、
14.5 50%Cu2O及び5%1,2,4−トリアゾールを有する重合体、
14.6 50%Cu2O及び5%ベンゾトリアゾールを有する重合体。
【0096】
【表14】

【0097】
結論:トリアゾールも効果的な安定剤である。
【0098】
例15
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表15に示す。
15.1 50%Cu2Oと、5%1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドと、5%Zn PTとを有する重合体、
15.2 50%Cu2Oと、3%1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドと、5%Zn PTとを有する重合体、
15.3 50%Cu2Oと、5%1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドと、5%Zn PTと、10%酸化亜鉛とを有する重合体。
【0099】
【表15】

【0100】
結論:ジシクロヘキシルカルボジイミドは、Cu2O、ZnPT及びZnOの存在下で効果的に機能する。
【0101】
例16
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表16に示す。
16.1 3%1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドと、5%Sea Nine211 (ローム・アンド・ハース社製)とを有する重合体。
【0102】
【表16】

【0103】
結論:ジシクロヘキシルカルボジイミド安定化結合剤はSeaNine 211と相溶性がある。
【0104】
例17
次の試料を例3と同一の態様で調製し、そして試験した。結果を表17に示す。
17.1 50%Cu2Oと、10%酸化亜鉛と、3%ベンゾトリアゾールとを有する重合 体、
17.2 50%Cu2Oと、10%酸化亜鉛と、3%1,3−ビス(トリメチルシリル) カルボジイミドとを有する重合体、
17.3 (比較)50%Cu2Oと、10%酸化亜鉛と、3%1,3−ビス(トリメチル シリル)カルボジイミド:HClとを有する重合体、
17.4 50%Cu2Oと、10%酸化亜鉛と、3%ジイソプロピルカルボジイミドとを 有する重合体、
17.5 50%Cu2Oと、10%酸化亜鉛と、3%ジイソプロピルカルボジイミドと、 3%亜鉛オマジンとを有する重合体、
17.6 50%Cu2Oと、10%酸化亜鉛と、3%N−(3−ジメチルアミノプロピル )−N’−エチルカルボジイミドとを有する重合体、
17.7 50%Cu2Oと、10%酸化亜鉛と、3%1,3−ジシクロヘキシルカルボジ イミドとを有する重合体。
【0105】
【表17】

【0106】
結論:1,3−ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド及びジイソプロピルカルボジイミドは、ジシクロヘキシルカルボジイミドと同程度に効果的である。
【0107】
例18
次の試料を例1と同一の態様で調製し、そして試験したが、ただし、加速安定性試験は60℃で実施した。結果を表18に示す。
19.1 3%1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドを含有する重合体。
【0108】
【表18】

【0109】
結論:ジシクロヘキシルカルボジイミドの安定化効果は、さらに高温でも確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防汚塗料用の安定化結合剤組成物であって、
(a)1種以上の加水分解性有機結合剤、及び
(b)トリ有機ホスフィット、トリ有機アミン、複素環式芳香族窒素化合物及びカルボジイミドよりなる群から選択される、0.01〜20重量%(前記結合剤の固形物に基づく)の1種以上の安定剤
を含む安定化結合剤組成物。
【請求項2】
前記結合剤が(メタ)アクリル共重合体結合剤である、請求項1に記載の安定化結合剤組成物。
【請求項3】
前記アクリル共重合体結合剤がアクリル酸シリル結合剤である、請求項2に記載の安定化結合剤組成物。
【請求項4】
前記トリ有機ホスフィットが、亜燐酸トリエチル、亜燐酸トリプロピル、亜燐酸トリブチル及びそれらの混合物を含む、請求項1に記載の安定化結合剤組成物。
【請求項5】
前記トリ有機アミンがトリプロピルアミンを含む、請求項1に記載の安定化結合剤組成物。
【請求項6】
前記複素環式芳香族窒素化合物がピリジン及びピリジン誘導体を含む、請求項1に記載の安定化結合剤組成物。
【請求項7】
カルボジイミドがジシクロヘキシルカルボジイミドを含む、請求項1に記載の安定化結合剤組成物。
【請求項8】
前記安定剤が、前記結合剤の固形物を基にして0.1〜8.0重量%を占める、請求項1に記載の安定化結合剤組成物。
【請求項9】
少なくとも1種のトリ有機ホスフィットと、少なくとも1種のトリ有機アミン及び/又は複素環式芳香族窒素化合物とを含む、請求項1に記載の安定化結合剤組成物。
【請求項10】
防汚塗料組成物であって、
(a)1種以上の加水分解性有機結合剤と、
(b)トリ有機ホスフィット、トリ有機アミン、複素環式芳香族窒素化合物及びカルボジイミドよりなる群から選択される、0.01〜20重量%(前記結合剤の固形物に基づく)の1種以上の安定剤と、
(c)防汚剤と
を含む、防汚塗料組成物。
【請求項11】
前記防汚剤が酸化銅(I)及び有機系殺生物剤ブースターを含む、請求項10に記載の防汚塗料組成物。
【請求項12】
共結合剤、顔料、有機染料、充填剤、乾燥剤、チキソトロープ剤 、可塑剤、分散剤、殺生物剤、共殺生物剤及び有機系殺生物剤ブースターよりなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含む、請求項10に記載の防汚塗料組成物。

【公表番号】特表2007−537333(P2007−537333A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513222(P2007−513222)
【出願日】平成17年5月5日(2005.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/015724
【国際公開番号】WO2005/110440
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】