説明

加水増粘性を有する低粘度透明組成物

【課題】透明且つ低粘度であり、しかも使用時には増粘して良好な毛髪へ塗布性や濃厚な使用感が得られ、さらには水でのすすぎ流しが容易であり、毛髪に優れたコンディショニング効果を付与できる組成物を提供する。
【解決手段】(a)カチオン界面活性剤と、(b)エステル油、高級脂肪酸、高級アルコールから選ばれる極性油と、(c)低級アルコール及び/又は(d)水と、を含有し、粘度が1000mPa・s未満の透明組成物であって、水と混合することにより増粘する加水増粘性を有することを特徴とする低粘度透明組成物。好適な(a)カチオン性界面活性剤としては下記一般式(1)のものである。


(式中、Rは炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基、nは2又は3、Xはハロゲン、メトサルフェート、又はメトホスフェートである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低粘度透明組成物、特に、使用時に水で希釈することにより白濁増粘して、その外観及び粘度が著しく変化する加水増粘性を有する組成物に関し、さらには毛髪に対して優れたコンディショニング効果を付与することができる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪をシャンプー等で洗髪した後は一般に艶や指どおりが悪くなるため、従来シャンプー後にはリンスやトリートメントなどのヘアコンディショナーが用いられている。その多くは、シャンプー後の濡れた髪に塗布し、その後水ですすぎ流すというリンスオフタイプの製品である。
【0003】
ヘアコンディショナーには、通常、カチオン界面活性剤や油分などがコンディショニング成分として配合されている。カチオン界面活性剤は、毛髪に対して柔軟性や帯電防止性などを付与する効果が高い。また、油分はなめらかさや艶などを付与する効果が高い。ヘアコンディショナーは、通常これら成分を含むO/W乳化組成物として提供されている。
近年では、ヘアダイやパーマ、その他の様々な要因(紫外線、エアコン、ストレス、タバコ等)による毛髪ダメージに対する消費者の意識は向上しており、最近のヘアカラーの普及によって、より高いヘアコンディショニング効果を求めるニーズが益々高まっている。
【0004】
これらニーズに応えるべく、コンディショニング成分を高配合した処方が望まれるが、これらコンディショニング成分をO/W組成物において多量に配合すると製品粘度が高くなってしまうことがある。特に、カチオン界面活性剤と高級アルコール及び油分を含むO/W組成物では、少量の配合でも著しく増粘し、毛髪上でののびが悪くなったり、容器から取り出しにくくなるなどの問題があった。このため、コンディショナー成分の配合量は制限され、その使用感や使用性には限界があった。
また、通常O/W組成物は白濁系であり、ヘアコンディショナーにおいて美観に優れた透明のものは非常に少なかった。
【0005】
特許文献1には、特定の4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤と、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンを含有する透明または半透明の毛髪化粧料が記載されている。
また、特許文献2には、特定の4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤と、シリコーン類とを含有する毛髪化粧料が記載され、毛髪に対して良好な柔軟性、平滑性、静電気抑制性、しっとり感を付与できることが記載されている。
しかしながら、これら特許文献においても、カチオン界面活性剤などを高濃度に配合した透明組成物については検討されていない。
【特許文献1】特開2002−104936号公報
【特許文献2】特開2002−255751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記背景技術に鑑みなされたものであり、その目的は、コンディショナー成分を高配合しても透明且つ低粘度であり、しかも使用時には増粘して良好な毛髪へ塗布性や濃厚な使用感が得られ、さらには水でのすすぎ流しが容易であり、毛髪に優れたコンディショニング効果を付与できる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、コンディショナー成分を含む特定の組成において透明低粘度組成物が得られ、この組成物を水と混合すると白濁増粘し、さらに大量の水で容易にすすぎ流しできることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる低粘度透明組成物は、(a)カチオン界面活性剤と、(b)エステル油、高級脂肪酸、高級アルコールから選ばれる極性油と、(c)低級アルコール及び/又は(d)水と、を含有し、粘度が1000mPa・s未満の透明組成物であって、水と混合することにより増粘する加水増粘性を有することを特徴とする。
【0008】
本発明において、(a)カチオン性界面活性剤が、下記一般式(1)で示されるカチオン界面活性剤であることが好適である。
【化2】

(式中、Rは炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基、nは2又は3、Xはハロゲン、メトサルフェート、又はメトホスフェートである。)
【0009】
(a)カチオン性界面活性剤は、低粘度透明組成物中15質量%以上であることが好適である。
また、(d)水が低粘度透明組成物中30質量%以下であることが好適である。
また、本発明の低粘度透明組成物において、水で2倍希釈した際の粘度が1000mPa・s以上であり、且つ当初の低粘度透明組成物の2倍以上であることが好適である。
また、本発明の低粘度透明組成物は、ヘアコンディショニング組成物に好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加水増粘性透明組成物は、透明で外観に優れ、また低粘度であるために製造時の取り扱い性や容器からの取り出し性においても優れる。そして、水と混合することで白濁増粘するので、毛髪などへの塗布がしやすく濃厚な使用感が得られる。また、使用時にこのようなテクスチャーの変化を楽しむことができる。さらに、塗布後は容易に水ですすぎ流すことができ、すすぎ流した後の毛髪に柔軟性、帯電防止性、滑らかさ、つや、指どおりのよさ、しっとり感などのコンディショニング効果を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の低粘度透明組成物は、(a)カチオン界面活性剤と、(b)極性油と、(c)低級アルコール及び/又は(d)水とを用いて調製される液状の組成物である。
本発明の低粘度透明組成物は、25℃における粘度が1000mPa・s未満のものである。このような低粘度組成物は、組成物の調整、容器への充填、容器からの取り出しなど、取り扱い性に優れ、ディスペンサー容器やスプレー容器の使用も可能である。
【0012】
低粘度組成物は取り扱い性において優れるものの、例えば毛髪などに使用した場合には濃厚でコクのあるリッチな使用感が得られない。
本発明の低粘度透明組成物は、水と混合することで増粘する。このため、毛髪へ使用する際に水と混合することにより、濃厚な使用感を得ることができる。また、毛髪上での伸びもよく、容易に均一に塗布できる。また、水で増粘すると白濁する。
このように、本発明の低粘度透明組成物は、ユニークな性状変化(転相感)が得られる。
【0013】
また、毛髪に塗布後は、水ですすぎ流すと粘度が著しく低下して、組成物を容易にすすぎ流すことができる。そして、本発明の組成物に含まれるコンディショニング成分の吸着や浸透により、毛髪に対して柔軟性、帯電防止性、滑らかさ、つや、指どおりのよさ、しっとり感などを付与することができる。
このように、本発明の低粘度透明組成物は、水を加えることにより白濁増粘する性質(加水増粘性)を有する。そして、さらに大量の水により低粘度に戻り、すすぎ流すことができる。
【0014】
よって、本発明組成物はリンスオフタイプの製品に特に好適である。
例えば、すすぎ流しタイプのヘアコンディショナーは、通常インバスでシャンプー後の濡れた手により濡れた毛髪に適用される。本発明組成物をすすぎ流しタイプの毛髪リンス組成物として洗髪後に使用した場合には、濡れた手にとることで手についた水により組成物は粘性を帯びる。さらに、毛髪に塗布すると毛髪の水分と混ざりあってさらに増粘する。そして、最後に水ですすぎ流すことで無限希釈され、毛髪からすすぎ流される。もちろん、手のひら上で適量の水で増粘させてから濡れたあるいは乾いた毛髪に塗布することもできる。また、濡れた毛髪に低粘度透明組成物を直接スプレーすれば非常に簡便である。
【0015】
本発明においては、使用時の性状変化が実感できるように、等量程度の水で明確に白濁増粘することが好ましい。具体的には、低粘度透明組成物を等量の水と混合した場合(2倍希釈)に粘度が2倍以上となり、且つ2倍希釈後の粘度が1000mPa・s以上であることを一つの指標とすることができる。好ましくは、2倍希釈後の粘度は4000mPa・s以上である。なお、本発明において粘度は、後述する粘度試験方法により測定したものである。
以下、本発明で用いる成分について説明する。
【0016】
(a)カチオン界面活性剤
カチオン界面活性剤としては、化粧料に通常使用されるものであれば限定されず、1種以上を用いることができる。例えば、アルキル型アンモニウム塩(例えば、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリドなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリドなどのジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩など)や、アルキルピリジニウム塩、ポリ(N,N’−ジメチル−3,5−メチレンピペリジニウム)、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POE−アルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられるが、本発明の効果の点で、下記一般式(1)で表されるエステル型4級アンモニウム塩が特に好適である。
【0017】
【化3】

一般式(1)において、Rはそれぞれ炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基を表す。脂肪族炭化水素基としては、直鎖又は分岐のアルキル基又はアルケニル基が好適である。アルケニル基は二重結合を少なくとも一つ有するが、二重結合の立体配置(シス、トランス)や位置は特に制限されない。
【0018】
アルキル基及びアルケニル基は、炭素数12〜22の天然または合成の脂肪酸由来であることができ、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸、その他の動植物油脂由来の脂肪酸などが挙げられる。
nは2又は3であり、Xはアンモニウムカチオンの対イオンを形成するものであり、ハロゲン、メトスルフェート、メトホスフェートであることができる。
【0019】
一般式(1)のエステル型4級アンモニウム塩としては、例えば、ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートなどが挙げられる。これらは公知の方法で合成することもできるが、市販品が簡便に利用でき、例えば、DEHYQUART L80(コグニスジャパン(株)、ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート/プロピレングリコール80/20混合物)などある。
【0020】
カチオン界面活性剤は、低粘度透明組成物中15質量%以上、さらには20質量%以上とすることが好適である。カチオン界面活性剤が少なすぎると水添加による増粘性に乏しく、粘度変化が実感しにくい。また、カチオン界面活性剤による柔軟性や帯電防止性などのコンディショニング効果も不十分となる。
一方、カチオン界面活性剤を過剰に配合してもそれに見合う顕著な効果の向上は認められず、かえって加水時の混合性や塗布時ののびに悪影響を及ぼすことがある。また、過剰な界面活性剤の配合は刺激を生じる懸念もある。従って、カチオン界面活性剤は、低粘度透明組成物中80質量%以下、さらには60質量%以下とすることが好適である。
【0021】
(b)極性油
本発明において用いる極性油は、エステル油、高級脂肪酸、高級脂肪族アルコールから選ばれ、化粧料に通常配合可能なものであれば制限されず、1種以上を用いることができる。極性油は、25℃で液状のものを用いることが好ましいが、全体として液状であれば、本発明の効果に影響を及ぼさない限り、固型もしくは半固型の極性油を用いることも可能である。
【0022】
エステル油としては、炭素数3〜22の脂肪酸と炭素数3〜22の脂肪族アルコールのエステルであり、エステル油の総炭素数としては通常12以上である。エステル油を構成する脂肪酸は、カルボキシル基を1つ以上有する、直鎖又は分岐の飽和脂肪酸あるいは不飽和脂肪酸であることができる。エステル油を構成する脂肪族アルコールは、アルコール性水酸基を一つ又は二つ有する、直鎖又は分岐の飽和アルコールあるいは不飽和アルコールであることができる。
【0023】
エステル油の例としては、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、オクタン酸イソセチル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、イソステアリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、オレイン酸オレイル、乳酸イソステアリル、(カプリル/カプリン酸)ヤシ油アルキルなどが挙げられる。特に、乳酸イソステアリル、アジピン酸ジイソブチル、イソノナン酸イソノニル、オレイン酸オレイルが本基材に高配合しても透明性を維持できるという点で好ましい。
【0024】
高級脂肪酸としては、炭素数12〜30の直鎖又は分岐の飽和あるいは不飽和の脂肪酸であることができる。例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。特に、イソステアリン酸、オレイン酸が高配合しても透明性を維持できるという点で好ましい。
【0025】
高級脂肪族アルコールとしては、炭素数12〜30の直鎖又は分岐の飽和あるいは不飽和の脂肪族アルコールであることができる。例えば、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、2−ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セチルアルコール、バチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。特に、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコールが高配合しても透明性を維持できるという点で好ましい。
【0026】
極性油は低粘度透明組成物中2質量%以上、さらには5質量%以上とすることが好適である。極性油が少なすぎると、水添加時の増粘性が十分に得られないことがある。また、極性油によるなめらかさやつやなどのコンディショニング効果も不十分となる。
一方、極性油の配合量が多すぎると、使用感においても油ぎしみが強くなる。また、相対的に他の成分の配合量が少なくなって本発明の効果が十分発揮されないことがある。よって、極性油は低粘度透明組成物中60質量%以下、さらには50質量%以下とすることが好ましい。
なお、本発明の低粘度透明組成物の効果に特に影響を及ぼさない限り、上記極性油とともに他の油分を配合してもよい。
【0027】
(c)低級アルコール
本発明において用いる低級アルコールは、化粧料に通常使用されるものであれば特に制限されず、1種以上を用いることができる。低級アルコールは25℃で液状のものを用いることが好ましいが、本発明の効果に影響を及ぼさない限り、固型もしくは半固型の低級アルコールを用いることも可能である。
【0028】
低級アルコールとしては、炭素数2〜10の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、1価又は多価の、脂肪族アルコールを用いることができる。例えば、エタノール、2−プロパノール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ソルビトール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、及びこれらの異性体が挙げられる。これらのうち、保湿効果などの点から多価アルコールが好ましく、さらには他の成分との相溶性などの点で2価アルコールが好ましく、中でもジプロピレングリコールが特に好ましい。
なお、本発明の効果を損なわない限り、低級アルコールとともに他のアルコール類を配合してもよい。
【0029】
低級アルコールは低粘度透明組成物中5質量%以上、さらには15質量%以上であることが好適である。低級アルコールが少なすぎると、水混合時の増粘性が十分に得られないことがある。また、低級アルコールによるしっとり感やまとまり感などのコンディショニング効果が不十分となる。
一方、低級アルコールの配合量が多すぎると、相対的に他の成分の配合量が少なくなって本発明の効果が十分発揮されないことがある。あるいは、性状変化のために必要な水量が増えて実使用時に転相感が不十分となることがある。よって、低級アルコールは低粘度透明組成物中65質量%以下、さらには55質量%以下とすることが好ましい。
【0030】
(d)水
本発明の低粘度透明組成物において、低級アルコールの少なくとも一部を水に置換することができる。水の配合によって、性状変化に必要な水の量を調節することができる。ただし、低粘度透明組成物中の水の配合量が多くなりすぎると、透明性や低粘度が損なわれる。
よって、水を配合する場合には、低粘度透明組成物中30質量%以下、さらには20質量%以下とすることが好適である。また、水は低級アルコールと併用することが好ましい。
【0031】
本発明の低粘度透明組成物は、上記成分を混合することにより得られる。例えば、これに限定されるものではないが、カチオン界面活性剤を室温または加温して低級アルコールと均一に混合し、これに極性油を添加して均一に混合し、さらに水を加えて室温に冷却することにより得ることができる。得られた組成物は、ディスペンサー、スプレー、エアゾール容器などに充填して使用することもできる。
【0032】
本発明の低粘度透明組成物には、特に影響のない限り、上記成分に加えて化粧料に通常配合される成分の1種以上を目的に応じて配合することができる。
例えば、油分、ロウ類、界面活性剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、樹脂類、保湿剤、水溶性高分子、防腐剤、香料、色材の他、各種薬効成分、例えば、ビオチン,パントテン酸誘導体等の賦活剤、γ−オリザノール、デキストラン硫酸ナトリウム、ビタミンE誘導体、ニコチン酸誘導体等の血行促進剤、硫黄,チアントール等の抗脂漏剤、レシチン、加水分解タンパク及びその誘導体、グルタミン酸、アルギニン、グリシン、アラニン、セリン、プロリン、ロイシン、イソロイシン等のアミノ酸、ビタミン類、セレシン等の毛髪補修成分などが挙げられる。
【0033】
界面活性剤として、ノニオン界面活性剤を用いると、水で希釈した際の組成物のつやを向上させることができる。このような効果を得るためには、低粘度透明組成物中0.1質%以上、さらには0.5質量%以上の配合することが好適である。
一方、ノニオン界面活性剤の配合量が多すぎると、コンディショニング成分の毛髪等への吸着が阻害されてコンディショニング効果が低下する。よって、ノニオン界面活性剤の配合量は低粘度透明組成物中5質量%以下とすることが好ましい。
【0034】
ノニオン界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレングリセリン、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、イソステアリン酸POE(20)グリセリル、トリイソステアリン酸POE(20)グリセリル、ジグリセリンジイソステアレート、イソステアリン酸グリセリド、オレイン酸モノグリセリド等が挙げられる。
【0035】
本発明の低粘度透明組成物に粉末や色材などの不透明化材や着色剤等を配合した場合、見かけ上外観が不透明となることがある。このような組成物であっても、本発明の特徴である加水増粘性を有し、且つ上記(a)〜(d)成分のみで透明となる場合には、本発明に包含される。
【0036】
本発明の低粘度透明組成物は、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアパックなどの塗布後すすぎ流すタイプのヘアコンディショナーにおいて特に有用であるが、その他の毛髪化粧料、例えば、シャンプーなどの毛髪洗浄料、ヘアカラー、ヘアダイ、染毛料、パーマ剤などにも適用してよい。
また、本発明の低粘度透明組成物は、毛髪化粧料以外の用途、例えば、衣料用柔軟剤などにも適用可能である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%を示す。なお、本発明で用いた試験方法は次の通りである。
【0038】
1.製造直後の性状
製造直後(水希釈前)の試料について、評価した。
(外観)
肉眼観察により、透明、半透明、白濁を判定した。
(粘度)
粘度計(ブルックフィールド型粘度計、芝浦システム(株)、ローターNo.2、25℃、毎分12回転、1分後の粘度)により粘度を測定し、次のように評価した。
○:1000mPa・s未満
×:1000mPa・s以上
【0039】
2.水添加後の性状
カップに試料50gを入れ、これに同量の水を添加してへらで均一に混合し、評価に供した。
(外観)
肉眼観察により、白濁、半透明、透明を判定した。
(粘度)
製造直後と同様に測定し、水添加後粘度について次のように評価した。
◎:製造直後粘度の5倍以上で4000mPa・s以上
○:製造直後粘度の2倍以上で1000mPa・s以上4000mPa・s未満
×:製造直後粘度の2倍以下あるいは1000mPa・s未満
【0040】
3.実使用試験
手のひらに試料5gをとり、同量の水を添加して指で混合した。水添加前後の質感変化(転相感)について、10名のパネルにアンケートを行い、次のように評価した。
◎:変化(転相感)が大きいと回答したパネルが9名以上
○:変化(転相感)が大きいと回答したパネルが6〜8名
×:変化(転相感)が大きいと回答したパネルが5名以下
【0041】
【表1】

【0042】
試験例1−1のように、カチオン界面活性剤パーツに水を配合した場合には低粘度透明組成物とすることはできない。
一方、試験例1−2〜1−4のようにカチオン界面活性剤パーツに極性油及び/又は低級アルコールを配合した場合には、多量のカチオン界面活性剤を透明且つ低粘度に配合することができた。しかし、低級アルコールのみの場合(試験例1−4)では水添加によって白濁はするものの、増粘性が不十分であった。
【0043】
これに対して、カチオン界面活性剤とともに極性油と低級アルコールとを含む場合(試験例1−2及び1−3)には、水添加により白濁・増粘し、特に、試験例1−3で増粘性や転相感が高かった。そして、これら組成物は大量の水(例えば、低粘度透明組成物の20倍量以上の水)を加えると粘度は著しく低下した。
【0044】
以上のことから、カチオン界面活性剤−極性油−低級アルコールの系で、低粘度透明組成物が得られ、水を加えることにより外観と粘度が著しく変化する加水増粘性が発揮されることが判明した。
そこで、このような系についてさらに検討を行った。
【0045】
【表2】

【0046】
表2は、前記試験例1−3においてカチオン界面活性剤の量を変えた場合について調べた結果である。
表2からわかるように、カチオン界面活性剤が少なすぎる場合には、低粘度透明組成物とすることはできるものの、水添加後の増粘性や転相感に乏しい。また、コンディショニング効果も不十分となる。
【0047】
従って、カチオン界面活性剤は、低粘度透明組成物中において15質量%以上、さらには20質量%以上であることが好適である。
一方、カチオン界面活性剤を過剰に配合してもカチオン界面活性剤の増量に見合った効果の著しい向上は認められず、経済的でない。また、カチオン界面活性剤が多すぎると、水添加時に一時的に著しい増粘を生じて水との均一な混和がしにくくなったり、均一に混和できても毛髪上でののびが悪かったりすることもある。よって、カチオン界面活性剤の濃度は、低粘度透明組成物中70質量%以下、さらには50質量%以下とすることが好ましい。
【0048】
【表3】

【0049】
表3は、カチオン界面活性剤の種類を変えた場合の結果を示している。
表3に示されるように、アルキル型4級アンモニウム塩では、配合量が少ない場合には低粘度透明組成物が得られるが、配合量が多くなると白濁や増粘(あるいは固化)する場合がある(試験例3−2〜3−3及び試験例3−5〜3−6)。
これに対して、前記一般式(1)のエステル型4級アンモニウム塩では、配合量が多くても低粘度透明組成物を得ることができる(試験例3−1及び3−4)。
このようなことから、カチオン界面活性剤として前記一般式(1)で示されるエステル型4級アンモニウム塩が好ましく、特に、組成物中のカチオン界面活性剤濃度が20質量%以上、さらには30質量%以上の場合において好ましく使用される。
【0050】
【表4】

【0051】
表4は、極性油及び低級アルコールの量を変えた場合の結果を示している。
表4からわかるように、極性油が少なすぎると、水を添加した際の増粘性が不十分となることがある。従って、低粘度透明組成物中の極性油は2質量%以上、さらには5質量%以上、特に10質量%以上が好適である。
また、表4より、低級アルコールは低粘度透明組成物中5質量%以上、さらには15質量%以上であることが好適である。
【0052】
【表5】

【0053】
表5は、油分の種類を変えた場合の結果である。
表5に示すように、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコールなどの高極性油では透明低粘度組成物とすることができたが、グリセリド類などの低極性油や、シリコーン油や炭化水素類などの非極性油では白濁してしまい、透明組成物が得られなかった。
【0054】
【表6】

【0055】
表6は、低級アルコールの種類を変えた場合の結果である。
2価アルコール(ジプロピレングリコール)に比べて、グリセリンやエタノールなどでは配合量が多くなると透明性が低下する場合があった(試験例6−2〜6−5)。
また、試験例6−6〜6−7のように、低級アルコールの代わりに水を用いることも可能であった。水を予め配合しておくことにより、増粘に必要な水の量を減量することができる。ただし、水の量が多すぎると白濁や増粘を生じる場合があるので、組成物の透明性と低粘度を維持しながら水を配合するには低級アルコールと併用するのが好ましい。また、水を配合する場合には、低粘度透明組成物中30質量%以下、さらには20質量%以下とすることが好適である。
【0056】
以下に本発明の低粘度透明組成物として、ヘアコンディショナー(リンス、トリートメント、パック等を含むすすぎ流しタイプの毛髪化粧料)を例示する。これら組成物は、粘度100mPa・s以下の低粘度で透明である。そして、水と混合することにより白濁増粘し、毛髪に塗布した場合には非常に伸びがよく均一に塗布することができる。また、塗布後は水で容易にすすぎ流すことができ、すすぎ流し後の毛髪には柔軟性やなめらかさ、しっとり感、つや、指どおり、帯電防止性などを付与することができる。
【0057】
配合例1 ヘアコンディショナー
カチオン界面活性剤パーツ(*1) 30質量%
乳酸イソステアリル 30
ジプロピレングリコール 30
モノイソステアリン酸POE(60)グリセリン 1
水 to 100
【0058】
配合例2 ヘアミスト
カチオン界面活性剤パーツ(*1) 40質量%
2−オクチルドデカノール 30
ジプロピレングリコール 30
モノイソステアリン酸POE(60)グリセリン 1
水 to 100


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カチオン界面活性剤と、(b)エステル油、高級脂肪酸、高級アルコールから選ばれる極性油と、(c)低級アルコール及び/又は(d)水と、を含有し、粘度が1000mPa・s未満の透明組成物であって、水と混合することにより増粘する加水増粘性を有することを特徴とする低粘度透明組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、(a)カチオン性界面活性剤が、下記一般式(1)で示されるカチオン界面活性剤であることを特徴とする低粘度透明組成物。
【化1】

(式中、Rは炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基、nは2又は3、Xはハロゲン、メトサルフェート、又はメトホスフェートである。)
【請求項3】
請求項1又は2記載の組成物において、(a)カチオン性界面活性剤が低粘度透明組成物中15質量%以上であることを特徴とする低粘度透明組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の組成物において、(d)水が低粘度透明組成物中30質量%以下であることを特徴とする低粘度透明組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の組成物において、水で2倍希釈した際の粘度が1000mPa・s以上であり、且つ当初の低粘度透明組成物の粘度の2倍以上であることを特徴とする低粘度透明組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の低粘度透明組成物を用いたヘアコンディショニング組成物。

【公開番号】特開2008−239510(P2008−239510A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78865(P2007−78865)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】