説明

加減速度制御装置、加減速度制御方法

【課題】アクセル操作子にブレーキ操作子の機能を統合する場合の操作性を向上させる。
【解決手段】アクセルペダル8の操作位置Sに応じて車両の加減速度を制御すると共に、増加操作の場合と減少操作の場合とで、操作位置Sに応じた加減速度の制御特性を変化させる。増加操作の場合には、アクセルペダル8の操作位置Sが非操作位置S0から最大操作位置SMAXまで増加するときに、目標加減速度Gが0から予め定められた正側の最大加減速度GMAXまで増加する往路制御特性に従う。減少操作の場合には、アクセルペダル8の操作位置Sが減少操作検知時操作位置Sdから非操作位置S0まで減少するときに、目標加減速度Gが減少操作検知時加減速度Gdから予め定められた負側の最小加減速度GMINまで減少する復路制御特性に従う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加減速度制御装置、加減速度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクセルペダルにブレーキペダルの機能を統合し、アクセルペダルの操作だけで車両を加速させたり減速させたりする技術思想がある。
特許文献1の従来技術では、アクセル開度が所定開度以下の領域では、アクセルペダルを踏み戻すほど車両を減速させ、アクセル開度が所定開度以上の領域では、アクセルペダルを踏み増すほど車両を加速させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−137324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、アクセル開度が所定開度以上になるまで加速制御が行われないので、アクセル開度が0の状態から車両を加速させるには、ある程度までアクセルペダルを踏み込んで、加速制御が開始される位置を探さなければならない。したがって、運転者にとって加速が開始されるアクセル踏み込み開度を探る動作が運転負担となる可能性がある。
本発明の課題は、アクセル操作子にブレーキ操作子の機能を統合する場合の操作性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、アクセル操作子の操作位置に応じて車両の加減速度を制御すると共に、増加操作の場合と減少操作の場合とで、操作位置に応じた加減速度の制御特性を変化させる。
ここで、増加操作とは、アクセル操作子の操作位置を非操作位置から最大操作位置に向けて増加させる操作である。また、減少操作とは、増加操作の後に非操作位置を除く範囲でアクセル操作子の操作位置を非操作位置に向けて減少させる操作である。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る加減速度制御装置によれば、増加操作の場合と減少操作の場合とで、操作位置に応じた加減速度の制御特性を変化させることで、同じ操作位置であっても、減少操作のときには車両を減速させ、増加操作のときには車両を加速させることができる。したがって、増加操作の初期から車両を加速させることもできるので、従来技術のように加速制御が開始される位置を探す必要がなく、操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】加減速度制御装置の概略構成図である。
【図2】ブレーキアクチュエータの概略構成図である。
【図3】加減速度制御処理を示すフローチャートである。
【図4】往路制御特性のマップである。
【図5】勾配係数kaの設定に用いるマップである。
【図6】復路制御特性のマップである。
【図7】特性線L2及びL3の傾きが異なる復路制御特性のマップである。
【図8】勾配係数krの設定に用いるマップである。
【図9】減少操作検知時操作位置Sdが小さいときの復路制御特性のマップである。
【図10】比較例の概念図である。
【図11】本実施形態の動作を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
《構成》
図1は、加減速度制御装置の概略構成図である。
加減速度制御装置は、車輪回転センサ1と、アクセルセンサ2と、加速度センサ3と、シフトセンサ4と、コントローラ5と、駆動力制御装置6と、ブレーキアクチュエータ7と、を備える。
車輪回転センサ1は、各車輪の車輪速度を検出する。この車輪回転センサ1は、例えばセンサロータの磁力線を検出回路によって検出しており、センサロータの回転に伴う磁界の変化を電流信号に変換してコントローラ5へ入力する。コントローラ5は、入力した電流信号から車輪速度を判断する。
【0009】
アクセルセンサ2は、アクセルペダル8の操作位置(踏み込み量)を検出する。このアクセルセンサ2は、例えばポテンショメータであり、アクセルペダル8の操作位置を電圧信号に変換してコントローラ5へ入力する。コントローラ5は、入力した電圧信号からアクセルペダル8の操作位置を判断する。アクセルペダル8は、非操作時の非操作位置S0からストロークエンドとなる最大操作位置SMAXの範囲で可動する。
【0010】
加速度センサ3は、車両の加減速度を検出する。この加速度センサ3は、例えば固定電極に対する可動電極の位置変位を静電容量の変化として検出しており、加減速度と方向に比例した電圧信号に変換してコントローラ5へ入力する。コントローラ5は、入力した電圧信号から加減速度を判断する。
シフトセンサ4は、トランスミッションのシフトポジションを検出する。このシフトセンサ4は、例えば複数のホール素子を備え、夫々のON/OFF信号をコントローラ5へ入力する。コントローラ5は、ON/OFF信号の組み合わせからシフトポジションを判断する。
【0011】
コントローラ5は、例えばマイクロコンピュータからなり、各センサからの検出信号に基づいて後述する加減速度制御処理を実行し、駆動力制御装置6とブレーキアクチュエータ7とを駆動制御する。
駆動力制御装置6は、回転駆動源の駆動力を制御する。例えば、回転駆動源がエンジンであれば、スロットルバルブの開度、燃料噴射量、点火時期などを調整することで、エンジン出力(回転数やエンジントルク)を制御する。また、回転駆動源がモータであれば、インバータを介してモータ出力(回転数やモータトルク)を制御する。
【0012】
図2は、ブレーキアクチュエータの概略構成図である。
ブレーキアクチュエータ7は、マスターシリンダ10と各ホイールシリンダ11FL〜11RRとの間に介装してある。
マスターシリンダ10は、運転者のペダル踏力に応じて2系統の液圧を作るタンデム式のもので、プライマリ側をフロント左・リア右のホイールシリンダ11FL・11RRに伝達し、セカンダリ側を右前輪・左後輪のホイールシリンダ11FR・11RLに伝達するダイアゴナルスプリット方式を採用している。
【0013】
各ホイールシリンダ11FL〜11RRは、ディスクロータをブレーキパッドで挟圧して制動力を発生させるディスクブレーキや、ブレーキドラムの内周面にブレーキシューを押圧して制動力を発生させるドラムブレーキに内蔵してある。
ブレーキアクチュエータ7は、アンチスキッド制御(ABS)、トラクション制御(TCS)、スタビリティ制御(VDC:Vehicle Dynamics Control)等に用いられる制動流体圧制御回路を利用したものであり、運転者のブレーキ操作に係らず各ホイールシリンダ11FL〜11RRの液圧を増圧・保持・減圧できる。
プライマリ側は、第1ゲートバルブ12Aと、インレットバルブ13FL(13RR)と、アキュムレータ14と、アウトレットバルブ15FL(15RR)と、第2ゲートバルブ16Aと、ポンプ17と、ダンパー室18と、を備える。
【0014】
第1ゲートバルブ12Aは、マスターシリンダ10及びホイールシリンダ11FL(11RR)間の流路を閉鎖可能なノーマルオープン型のバルブである。インレットバルブ13FL(13RR)は、第1ゲートバルブ12A及びホイールシリンダ11FL(11RR)間の流路を閉鎖可能なノーマルオープン型のバルブである。アキュムレータ14は、ホイールシリンダ11FL(11RR)及びインレットバルブ13FL(13RR)間に連通してある。アウトレットバルブ15FL(15RR)は、ホイールシリンダ11FL(11RR)及びアキュムレータ14間の流路を開放可能なノーマルクローズ型のバルブである。第2ゲートバルブ16Aは、マスターシリンダ10及び第1ゲートバルブ12A間とアキュムレータ14及びアウトレットバルブ15FL(15RR)間とを連通した流路を開放可能なノーマルクローズ型のバルブである。ポンプ17は、アキュムレータ14及びアウトレットバルブ15FL(15RR)間に吸入側を連通し、且つ第1ゲートバルブ12A及びインレットバルブ13FL(13RR)間に吐出側を連通してある。ダンパー室18は、ポンプ17の吐出側に設けてあり、吐出されたブレーキ液の脈動を抑制し、ペダル振動を弱める。
【0015】
また、セカンダリ側も、プライマリ側と同様に、第1ゲートバルブ12Bと、インレットバルブ13FR(13RL)と、アキュムレータ14と、アウトレットバルブ15FR(15RL)と、第2ゲートバルブ16Bと、ポンプ17と、ダンパー室18と、を備えている。
第1ゲートバルブ12A・12Bと、インレットバルブ13FL〜13RRと、アウトレットバルブ15FL〜15RRと、第2ゲートバルブ16A・16Bとは、夫々、2ポート2ポジション切換・シングルソレノイド・スプリングオフセット式の電磁操作弁である。また、第1ゲートバルブ12A・12B及びインレットバルブ13FL〜13RRは、非励磁のノーマル位置で流路を開放し、アウトレットバルブ15FL〜15RR及び第2ゲートバルブ16A・16Bは、非励磁のノーマル位置で流路を閉鎖するように構成してある。
【0016】
また、アキュムレータ14は、シリンダのピストンに圧縮バネを対向させたバネ形のアキュムレータで構成してある。
また、ポンプ17は、負荷圧力に係りなく略一定の吐出量を確保できる歯車ポンプ、ピストンポンプ等、容積形のポンプで構成してある。
上記の構成により、プライマリ側を例に説明すると、第1ゲートバルブ12A、インレットバルブ13FL(13RR)、アウトレットバルブ15FL(15RR)、及び第2ゲートバルブ16Aが全て非励磁のノーマル位置にあるときに、マスターシリンダ10からの液圧がそのままホイールシリンダ11FL(11RR)に伝達され、通常ブレーキとなる。
【0017】
また、ブレーキペダルが非操作状態であっても、インレットバルブ13FL(13RR)、及びアウトレットバルブ15FL(15RR)を非励磁のノーマル位置にしたまま、第1ゲートバルブ12Aを励磁して閉鎖すると共に、第2ゲートバルブ16Aを励磁して開放し、更にポンプ17を駆動することで、マスターシリンダ10の液圧を第2ゲートバルブ16Aを介して吸入し、吐出される液圧をインレットバルブ13FL(13RR)を介してホイールシリンダ11FL(11RR)に伝達し、増圧させることができる。
【0018】
また、第1ゲートバルブ12A、アウトレットバルブ15FL(15RR)、及び第2ゲートバルブ16Aが非励磁のノーマル位置にあるときに、インレットバルブ13FL(13RR)を励磁して閉鎖すると、ホイールシリンダ11FL(11RR)からマスターシリンダ10及びアキュムレータ14への夫々の流路が遮断され、ホイールシリンダ11FL(11RR)の液圧が保持される。
【0019】
さらに、第1ゲートバルブ12A及び第2ゲートバルブ16Aが非励磁のノーマル位置にあるときに、インレットバルブ13FL(13RR)を励磁して閉鎖すると共に、アウトレットバルブ15FL(15RR)を励磁して開放すると、ホイールシリンダ11FL(11RR)の液圧がアキュムレータ14に流入して減圧される。アキュムレータ14に流入した液圧は、ポンプ17によって吸入され、マスターシリンダ10に戻される。
【0020】
セカンダリ側に関しても、通常ブレーキ・増圧・保持・減圧の動作は、上記プライマリ側の動作と同様であるため、その詳細説明は省略する。
したがって、コントローラ5は、第1ゲートバルブ12A・12Bと、インレットバルブ13FL〜13RRと、アウトレットバルブ15FL〜15RRと、第2ゲートバルブ16A・16Bと、ポンプ17とを駆動制御することによって、各ホイールシリンダ11FL〜11RRの液圧を増圧・保持・減圧する。
【0021】
なお、本実施形態では、ブレーキ系統をフロント左・リア右とフロント右・リア左とで分割するダイアゴナルスプリット方式を採用しているが、これに限定されるものではなく、フロント左右とリア左右とで分割する前後スプリット方式を採用してもよい。
また、本実施形態では、バネ形のアキュムレータ14を採用しているが、これに限定されるものではなく、各ホイールシリンダ11FL〜11RRから抜いたブレーキ液を一時的に貯え、減圧を効率よく行うことができればよいので、重錘形、ガス圧縮直圧形、ピストン形、金属ベローズ形、ダイヤフラム形、ブラダ形、インライン形など、任意のタイプでよい。
【0022】
また、本実施形態では、第1ゲートバルブ12A・12B及びインレットバルブ13FL〜13RRが、非励磁のノーマル位置で流路を開放し、アウトレットバルブ15FL〜15RR及び第2ゲートバルブ16A・16Bが、非励磁のノーマル位置で流路を閉鎖するように構成しているが、これに限定されるものではない。要は、各バルブの開閉を行うことができればよいので、第1ゲートバルブ12A・12B及びインレットバルブ13FL〜13RRが、励磁したオフセット位置で流路を開放し、アウトレットバルブ15FL〜15RR及び第2ゲートバルブ16A・16Bが、励磁したオフセット位置で流路を閉鎖するようにしてもよい。
【0023】
次に、コントローラ5で所定時間(例えば10msec)毎に実行する加減速度制御処理について説明する。
図3は、加減速度制御処理を示すフローチャートである。
先ずステップS101では、切換えフラグfsが0にリセットされているか否かを判定する。この切換えフラグfsは、制御特性の切換え状態を表し、初期設定ではfs=0にリセットしてある。判定結果がfs=0のときには、往路制御特性に従って加減速度制御を実行するためにステップS102に移行する。一方、判定結果がfs=1のときには、復路制御特性に従って加減速度制御を実行するためにステップS117に移行する。
【0024】
ここで、往路制御特性とは、アクセルペダル8の操作位置Sを非操作位置S0から最大操作位置SMAXに向けて増加させる増加操作(踏み増し)時の制御特性である。復路制御特性とは、増加操作の後に非操作位置を除く範囲でアクセルペダル8の操作位置Sを非操作位置S0に向けて減少させる減少操作(踏み戻し)時、並びに減少操作の後に非操作位置S0を超えた範囲でアクセルペダル8の操作位置Sを最大操作位置SMAXに向けて増加させる再増加操作(再踏み込み)時の制御特性である。
【0025】
ステップS102では、アクセルペダル8の操作位置Sが非操作位置S0にあるか否かを判定する。判定結果がS=S0のときには、アクセルペダル8を踏み込んでいない、つまり踏み込む前の状態であると判断してステップS103に移行する。一方、判定結果がS>S0のときには、アクセルペダル8を踏み込んでいると判断してステップS104に移行する。
ステップS103では、目標加減速度Gを算出するための往路制御特性に従ったマップを設定する。
【0026】
図4は、往路制御特性のマップである。
横軸は操作位置Sであり、縦軸は目標加減速度Gである。目標加減速度Gは、便宜上、正値を加速度とし、負値を減速度とする。
往路制御特性では、操作位置Sが非操作位置S0から予め定められた初期位置S1の範囲にあれば、目標加減速度Gが0を維持する。ここで、初期位置S1までの区間は、アクセルペダル8の所謂ロスストロークや遊びに相当し、操作フィーリングによって調整するパラメータである。また、操作位置Sが初期位置S1から最大操作位置SMAXの範囲で増加するときに、目標加減速度Gが0から正側の最大加減速度GMAXの範囲で増加する。ここで、操作位置Sが初期位置S1で目標加減速度Gが0となる座標を点Aとし、操作位置Sが最大操作位置SMAXで目標加減速度Gが最大加減速度GMAXとなる座標を点Bとする。点Aと点Bとを結ぶ直線を特性線L1とする。なお、特性線L1は、線形でなくとも、非線形としてもよい。
【0027】
最大加減速度GMAXは、車両の進行方向に対する路面勾配θに応じて設定する。具体的には、下記に示すように、予め定められた正側の基準値GsMAXに、勾配係数kaを乗じることにより、最大加減速度GMAXを設定する。
MAX=GsMAX×ka
ここで、勾配係数kaの設定について説明する。
車両の進行方向は、シフトセンサ4によって検出し、シフトポジションが例えばDレンジにあれば、前進方向が進行方向であり、シフトポジションが例えばRレンジにあれば、後退方向が進行方向である。また、路面勾配θは、加速度センサ3で検出した加減速度に基づいて判断する。
【0028】
そして、図5のマップを参照し、進行方向に対する路面勾配θに応じて、勾配係数kaを設定する。
図5は、勾配係数kaの設定に用いるマップである。
このマップは、路面勾配θが0のときには勾配係数kaが1となり、路面勾配θが上り勾配であるほど勾配係数kaが1よりも大きくなり、路面勾配θが下り勾配であるほど勾配係数kaが1よりも小さくなるように設定してある。したがって、進行方向に対する路面勾配θが上り方向に大きくなるほど、最大加減速度GMAXは大きくなり(加速度が大きくなり)、進行方向に対する路面勾配が下り方向に大きくなるほど、最大加減速度GMAXは小さくなる(加速度が小さくなる)。
【0029】
このようにして、往路制御特性のマップを設定する。
続くステップS104では、現在の操作位置S(n)が1サンプリング前の操作位置S(n-1)以上であるか否かを判定する。判定結果がS(n)≧S(n-1)のときには、運転者がアクセルペダル8の操作位置Sを増加させている、又は保持していると判断してステップS105に移行する。一方、判定結果がS(n)<S(n-1)のときには、運転者がアクセルペダル8の操作位置Sを減少させていると判断してステップS108に移行する。
【0030】
ステップS105では、検知フラグfdが0にリセットされているか否かを判定する。この検知フラグfdは、減少操作の検知状態を表し、初期設定ではfd=0にリセットしてある。判定結果がfd=0のときには、減少操作は検知していないと判断してステップS106に移行する。一方、判定結果がfd=1のときには、減少操作を検知していると判断してステップS121に移行する。
【0031】
ステップS106では、図4の往路制御特性に従ったマップを参照し、アクセルペダル8の操作位置Sに応じて目標加減速度Gを算出する。
続くステップS107では、目標加減速度Gに基づいて、駆動力制御装置6とブレーキアクチュエータ7とを駆動制御してから、所定のメインプログラムに復帰する。
具体的には、目標加減速度Gが正値であるときには、車両を加速させるために、駆動力制御装置6を介して駆動力を増加させる。一方、目標加減速度Gが負値であるときには、車両を減速させるために、駆動力制御装置6を介して駆動力を制限し、ブレーキアクチュエータ7を介して制動力を増加させる。
【0032】
ステップS108では、検知フラグfdが0にリセットされているか否かを判定する。判定結果がfd=0のときには、減少操作を検知した直後であると判断してステップS109に移行する。一方、判定結果がfd=1であれば、減少操作を検知した直後ではないと判断してステップS111に移行する。
ステップS109では、現在の操作位置S(n)及び目標加減速度G(n)を、夫々、減少操作検知時操作位置Sd及び減少操作検知時目標加減速度Gdとして記憶する。
【0033】
続くステップS110では、検知フラグを1にセットする。
続くステップS111では、操作位置Sが、減少操作検知時操作位置Sdから設定値αだけ減じた値(=Sd−α)よりも小さいか否かを判定する。αはハンチングを避けるための値である。判定結果がS≧Sd−αであるときには、減少操作を検知したものの、意図的な減少操作ではない可能性があると判断してステップS112に移行する。一方、判定結果がS<Sd−αであるときには、意図的な減少操作であると判断してステップS113に移行する。
ステップS112では、1サンプリング前の目標加減速度G(n-1)を、今回の目標加減速度G(n)としてから前記ステップS107に移行する。
ステップS113では、検知フラグfdを0にリセットする。
続くステップS114では、目標加減速度Gを算出するための復路制御特性に従ったマップを設定する。
【0034】
図6は、復路制御特性のマップである。
横軸は操作位置Sであり、縦軸は目標加減速度Gである。目標加減速度Gは、便宜上、正値を加速度とし、負値を減速度とする。
先ず、S≦Sd−αの範囲について説明する。
復路制御特性では、操作位置Sが(Sd−α)から初期位置S1の範囲で減少するときに、目標加減速度Gが正側の値から負側の最小加減速度GMINの範囲で減少する。また、操作位置Sが初期位置S1から非操作位置S0の範囲にあれば、目標加減速度Gが最小加減速度GMINを維持する。目標加減速度Gが正値から負値へと転じる境界では、操作位置Sの変化に対して目標加減速度Gが0を維持する不感帯βを設ける。この不感帯βは、分解能(どの程度のコントロール幅が取れるか)によって決定する。
【0035】
ここで、操作位置Sが(Sd−α)で目標加減速度GがGdとなる座標を点Cとし、操作位置Sが初期位置S1で目標加減速度Gが最小加減速度GMINとなる座標を点Dとする。また、操作位置Sの減少に応じて目標加減速度Gが正値から0になる座標を点Eとし、操作位置Sの減少に応じて目標加減速度Gが0から負値になる座標を点Fとする。点Cと点Eとを結ぶ直線を特性線L2とし、点Fと点Dとを結ぶ直線を特性線L3とする。
【0036】
特性線L2は、操作位置Sが(Sd−α)で目標加減速度Gが減少操作検知時目標加減速度Gdの座標と、操作位置Sが(S1+β)で目標加減速度Gが最小加減速度GMINの座標とを結ぶ直線に沿うように設定してある。また、特性線L3は、操作位置Sが(Sd−α−β)で目標加減速度Gが減少操作検知時目標加減速度Gdの座標と、操作位置Sが初期位置S1で目標加減速度Gが最小加減速度GMINの座標とを結ぶ直線に沿うように設定してある。
【0037】
なお、特性線L2及びL3は、傾きを同一にしなくてもよい。
図7は、特性線L2及びL3の傾きが異なる復路制御特性のマップである。
ここでは、一例として特性線L2の傾きよりも、特性線L3の傾きを大きくしている。すなわち、操作位置Sの変化量が同一である場合、特性線L3に従った領域では、特性線L2に従った領域よりも、目標加減速度Gの変化量が大きくなる。すなわち、加速側ではコントロール性を重視したスローな操作フィーリングを実現し、減速側では軽快さを重視したクイックな操作フィーリングを実現する。
【0038】
さらに、特性線L2及びL3は、線形でなくとも、非線形としてもよい。
最小加減速度GMINは、車両の進行方向に対する路面勾配θに応じて設定する。具体的には、下記に示すように、予め定められた負側の第一基準値Gs1MINに、勾配係数krを乗じることにより、最小加減速度GMINを設定する。
MIN=Gs1MIN×kr
ここで、勾配係数krの設定について説明する。
車両の進行方向は、シフトセンサ4によって検出し、シフトポジションが例えばDレンジにあれば、前進方向が進行方向であり、シフトポジションが例えばRレンジにあれば、後退方向が進行方向である。また、路面勾配θは、加速度センサ3で検出した加減速度に基づいて判断する。
【0039】
そして、図8のマップを参照し、進行方向に対する路面勾配θに応じて、勾配係数krを設定する。
図8は、勾配係数krの設定に用いるマップである。
このマップは、路面勾配θが0のときには勾配係数krが1となり、路面勾配θが上り勾配であるほど勾配係数krが1よりも小さくなり、路面勾配θが下り勾配であるほど勾配係数krが1よりも大きくなるように設定してある。したがって、進行方向に対する路面勾配θが上り方向に大きくなるほど、最小加減速度GMINは大きくなり(減速度が小さくなり)、進行方向に対する路面勾配が下り方向に大きくなるほど、最小加減速度GMINは小さくなる(減速度が大きくなる)。
【0040】
さらに、最小加減速度GMINは、減少操作検知時操作位置Sdに応じて設定する。
図9は、減少操作検知時操作位置Sdが小さいときの復路制御特性のマップである。
すなわち、減少操作検知時操作位置Sdが予め定められた閾値th未満のときには、最小加減速度GMINを、第一基準値Gs1MINよりも大きい(絶対値は小さい)負側の第二基準値Gs2MINに設定する。
【0041】
次に、S>Sd−αの範囲について説明する。
操作位置Sが(Sd−α)から減少操作検知時操作位置Sdの範囲にあれば、目標加減速度Gが減少操作検知時目標加減速度Gdを維持する。また、操作位置Sが減少操作検知時操作位置Sdから最大操作位置SMAXの範囲にあれば、前述した往路制御特性の特性線L1に従う。なお、減少操作検知時操作位置Sdが最大操作位置SMAXであれば、必然的に特性線L1に従う領域が消失する。
このようにして、復路制御特性のマップを設定する。
続くステップS115では、切換えフラグfsを1にセットする。
続くステップS116では、図6の復路制御特性に従ったマップを参照し、アクセルペダル8の操作位置Sに応じて目標加減速度Gを算出してから前記ステップS107に移行する。
【0042】
ステップS117では、操作位置Sが非操作位置S0よりも大きいか否かを判定する。判定結果がS>S0であれば、アクセルペダル8の操作が解除されていないと判断して前記ステップS116に移行する。一方、判定結果がS=S0であれば、アクセルペダル8の操作が解除されたと判断してステップS118に移行する。
続くステップS118では、目標加減速度Gに演算周期毎に予め定められたΔGずつ加算することにより、目標加減速度Gを予め定められた変化速度で0へと復帰させる。
【0043】
続くステップS119では、目標加減速度Gが0に復帰したか否かを判定する。判定結果がG=0のときには、ステップS120に移行する。一方、判定結果がG≠0のときには、そのまま前記ステップS107に移行する。
ステップS120では、切換えフラグfsを0にリセットしてから前記ステップS107に移行する。
【0044】
ステップS121では、操作位置Sが減少操作検知時操作位置Sd以上であるか否かを判定する。判定結果がS≧Sdであれば、減少操作を中止して増加操作に復帰したと判断してステップS122に移行する。一方、判定結果がS<Sdであれば、減少操作の継続も増加操作への復帰もしていないと判断して前記ステップS112に移行する。
ステップS122では、検知フラグfdを0にリセットしてから前記ステップS106に移行する。
【0045】
《作用》
先ず、比較例について説明する。
従来から、アクセルペダル8にブレーキペダルの機能を統合し、アクセルペダル8の操作だけで車両を加速させたり減速させたりする技術思想があり、例えばアクセルペダル8の操作位置(絶対位置)だけで、車両の加減速を切換えるものがある。
図10は、比較例の概念図である。
すなわち、操作位置が小さい領域では、アクセルペダル8を踏み戻すほど車両を減速させることができ、操作位置が大きい領域では、アクセルペダル8を踏み増すほど車両を加速させることができる。しかしながら、操作位置が大きい領域になるまで加速制御が行われないので、操作位置が0の状態から車両を加速させるには、ある程度までアクセルペダル8を踏み込んで、加速制御が開始される位置を探さなければならない。したがって、運転者にとって加速が開始されるアクセル踏み込み開度を探る動作が運転負担となる可能性があった。
【0046】
次に、本実施形態について説明する。
本実施形態は、アクセルペダル8の操作位置Sに応じて車両の加減速度を制御すると共に、増加操作の場合と減少操作の場合とで、操作位置Sに応じた加減速度の制御特性を変化させるものである。
図11は、本実施形態の動作を示す一例である。
先ず、運転者がアクセルペダル8を踏み込んでいないとする。このとき、アクセルペダル8は非操作位置S0にあるので(S102の判定が“Yes”)、アクセルペダル8を非操作位置S0から踏み込んでゆくときの往路制御特性となるマップを設定する(S103)。この往路制御特性では、点A[S1,0]と点B[SMAX,GMAX]とを結ぶ特性線L1を設定する。
【0047】
そして、運転者がアクセルペダル8を踏み込んでゆくとする。このとき、アクセルペダル8の操作位置Sが初期位置S1を超えて増加してゆくときに(S104の判定が“Yes”)、特性線L1に沿って目標加減速度Gを設定する(ステップS106)。この往路制御特性では、目標加減速度Gが常に正値となるので、駆動力制御装置6を介して駆動力を増加させると共に、ブレーキアクチュエータ7を介して制動力を0にすることで(S107)、目標加減速度Gに応じて車両が加速してゆく。
【0048】
進行方向勾配路では、自重によって谷側へ向かうベクトルが車両に作用し、進行方向に対する路面が上り勾配であるほど、車両は加速しにくくなる。逆に、進行方向に対する路面が下り勾配であるほど、車両は加速しやすくなる。したがって、平坦路のときと同じ操作位置Sまで踏み込んでも、上り勾配では運転者の意図した加速度を下回り、下り勾配では運転者の意図した加速度を上回ってしまう。
【0049】
そこで、特性線L1の傾きを決定する点Bの最大加減速度GMAXは、路面勾配θに応じて設定する。すなわち、車両の進行方向と路面勾配を検出し、進行方向に対する路面勾配が上り方向に大きいほど、最大加減速度GMAXを大きくし、逆に進行方向に対する路面勾配が下り方向に大きいほど、最大加減速度GMAXを小さくする。
これにより、上り勾配では、車両が加速しやすくなり、下り勾配では、車両が加速しにくくなる。したがって、アクセルペダル8の踏み込み量を同一としても、上り勾配であっても下り勾配であっても、平坦路のときと同等の加速度を得られる。したがって、平坦路のときと同じ感覚でアクセルペダル8を踏み込んでも、加速度の過不足を抑制し、運転者の意図した加速度を達成することができる。
【0050】
次に、運転者がアクセルペダル8を踏み戻したとする。このとき、操作位置Sが最大操作位置SMAXよりも手前の位置から減少してゆくと(S104の判定が“No”)、その減少操作を検知した時点の操作位置Sと目標加減速度Gとを夫々記憶し(S109)、検知フラグfdを1にセットする(S110)。
そして、操作位置Sが減少操作検知時操作位置Sdから(Sd−α)までの範囲で減少するときには(S111の判定が“No”)、減少操作検知時目標加減速度Gdを維持する(S112)。これは、減少操作が運転者の意図的なものであるか否かを判定するための猶予区間である。
【0051】
この減少操作検知時目標加減速度Gdを維持している間に、運転者がアクセルペダル8を踏みましたときには(S104の判定が“Yes”でS105の判定が“No”)、再び往路制御特性に戻すか否かを判断する。具体的には、操作位置Sが減少操作検知時操作位置Sd以上であれば、運転者の意図的な増加操作であるため、検知フラグfdを0にリセットし(S121)、再び往路制御特性に従って車両の加減速度を制御する(S106、S107)。
【0052】
そして、操作位置Sが(Sd−α)を下回ったときに(S111の判定が“Yes”)、アクセルペダル8を減少操作検知時操作位置Sdから踏み戻してゆくときの復路制御特性となるマップを設定する(S114)。この復路制御特性では、点C[Sd,Gd]と点Eとを結ぶ特性線L2、並びに点Fと点D[S1,GMIN]とを結ぶ特性線L3を設定する。
【0053】
さらに、切換えフラグfsを1にセットする(S115)。したがって、これ以降は、操作位置Sが増加するか減少するかに関わらず、操作位置Sが非操作位置S0を超えている限り(S101の判定が“No”でS117の判定が“Yes”)、復路制御特性に従って車両の加減速度を制御する(S116、S107)。すなわち、減少操作の後に非操作位置S0を超えた範囲でアクセルペダル8の操作位置Sを最大操作位置SMAXに向けて増加させる再増加操作(再踏み込み)があっても、復路制御特性に従う。
【0054】
先ず、操作位置Sが点Cから点Eの区間にあれば、特性線L2に沿って、目標加減速度Gを設定する(S116)。この特性線L2に沿った区間では、目標加減速度Gが常に正値となるので、駆動力制御装置6を介して駆動力を増減させると共に、ブレーキアクチュエータ7を介して制動力を0にすることで(S107)、目標加減速度Gに応じて車両の加速度が変化してゆく。
【0055】
なお、操作位置Sが減少操作検知時操作位置Sdを超えれば、特性線L1に沿って、目標加減速度Gを設定する(S116)。この特性線L1に沿った区間でも、目標加減速度Gが常に正値となるので、駆動力制御装置6を介して駆動力を増減させることで(S107)、目標加減速度Gに応じて車両の加速度が変化してゆく。
そして、操作位置Sが点Eから点Fの不感帯βにあれば、目標加減速度Gを0に設定する(S116)。すなわち、駆動力制御装置6を介して駆動力を0にすると共に、ブレーキアクチュエータ7を介して制動力を0にする。このとき、車両は惰性によって走行状態を維持する。このように、減速側と加速側との境界に不感帯βを設けているので、運転者は減速側から加速側への切換え位置、及び加速側から減速側への切換え位置を容易に把握することができる。
【0056】
そして、操作位置Sが点Fから点Dの区間にあれば、特性線L3沿って、目標加減速度Gを設定する(S116)。この特性線L3に沿った区間では、目標加減速度Gが常に負値となるので、駆動力制御装置6を介して駆動力を0以下に制限すると共に、ブレーキアクチュエータ7を介して制動力を増減させることで(S107)、目標加減速度Gに応じて車両の減速度が変化してゆく。なお、駆動力を0以下の負値にすれば、回転駆動源を車輪側から駆動して減速作用が生じるので、負側の目標加減速度Gが比較的大きい(絶対値が小さい)ときには、制動力を発生させなくてもよい。
【0057】
進行方向勾配路では、自重によって谷側へ向かうベクトルが車両に作用し、進行方向に対する路面が上り勾配であるほど、車両は減速しやすくなる。逆に、進行方向に対する路面が下り勾配であるほど、車両は減速しにくくなる。したがって、平坦路のときと同じ操作位置Sまで踏み戻しても、上り勾配では運転者の意図した減速度を上回り、下り勾配では運転者の意図した減速度を下回ってしまう。
【0058】
そこで、特性線L3の傾きを決定する点Dの最小加減速度GMINは、路面勾配θに応じて設定する。すなわち、車両の進行方向と路面勾配を検出し、進行方向に対する路面勾配が上り方向に大きいほど、最小加減速度GMINを大きく(減速度を小さく)し、逆に進行方向に対する路面勾配が下り方向に大きいほど、最小加減速度GMINを小さく(減速度を大きく)する。
【0059】
これにより、上り勾配では、車両が減速しにくくなり、下り勾配では、車両が減速しやすくなる。したがって、アクセルペダル8の踏み戻し位置を同一としても、上り勾配であっても下り勾配であっても、平坦路のときと同等の減速度を得られる。したがって、平坦路のときと同じ感覚でアクセルペダル8を踏み戻しても、減速度の過不足を抑制し、運転者の意図した減速度を達成することができる。
さらに、最小加減速度GMINは、減少操作検知時操作位置Sdに応じて設定する。具体的には、減少操作検知時操作位置Sdが予め定められた閾値th未満のときには、最小加減速度GMINを、第一基準値Gs1MINよりも大きい(絶対値は小さい)負側の第二基準値Gs2MINに設定する。
【0060】
すなわち、減少操作検知時操作位置Sdが小さいときには、車両の加速度も低く、小さな減速度でも充分に減速することができる。逆に、加速度が低い状態で、不必要に大きな減速度を発生させると、ピッチ挙動が生じるなどして乗心地に影響を与えてしまう。さらに、比較的高い車速で走行をしている状態では、アクセルペダル8を少し踏み込んでは放す(戻す)ON/OFF操作を繰り返す場合があり、このようなシーンでは、大きな減速度を発生させる必要がない。そこで、減少操作検知時操作位置Sdが閾値th未満のときには、最小加減速度GMINを大きく(減速度を小さく)することで、無駄な減速を抑制することができる。また、ピッチ挙動など発生も抑制することができる。
【0061】
そして、操作位置Sが非操作位置S0まで復帰したら(S117の判定が“No”)、目標加減速度Gを0に復帰するまで徐々に増加させる(S118)。すなわち、駆動力制御装置6を介して駆動力を0にすると共に、ブレーキアクチュエータ7を介して制動力を徐々に減少させる(S107)。
そして、目標加減速度Gが0まで復帰したら(S119の判定が“Yes”)、切換えフラグfsを0にリセットする(S120)。そして、駆動力制御装置6を介して駆動力を0にすると共に、ブレーキアクチュエータ7を介して制動力を0にする。このとき、車両は惰性によって走行状態を維持する。
【0062】
上記のように、増加操作の場合と減少操作の場合とで、操作位置Sに応じた加減速度の制御特性を変化させることで、同じ操作位置Sであっても、減少操作のときには車両を減速させ、増加操作のときには車両を加速させることができる。したがって、増加操作の初期から車両を加速させることもできるので、比較例のように加速制御が開始される位置を探す必要がなく、操作性が向上する。
また、増加操作のときには、ワンペダル方式ではないコンベンショナルな車両と同様の加速特性を得ることができ、一方の減少操作では、ワンペダル方式に基づく加速特性と減速特性を得ることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、車両を減速させる制動機構として、液圧を伝達媒体にしたハイドリックブレーキを採用しているが、これに限定されるものではなく、伝達媒体にケーブルやリンク、或いは空気圧を利用した他の如何なる制動機構を採用してもよい。また、ディスクロータをブレーキパッドで挟圧したり、ブレーキドラムの内周面にブレーキシューを押圧したりする摩擦ブレーキでなくとも、磁力抵抗によって制動力を発生する電磁ブレーキ、空気抵抗によって制動力を発生する空力ブレーキ、発電によって制動力を発生する回生ブレーキ等、他の如何なる制動機構を採用してもよい。
また、本実施形態では、運転者が足で操作するアクセルペダル8について説明したが、これに限定されるものではなく、運転者が手で操作するアクセルレバーに本実施形態を適用してもよい。
以上より、アクセルペダル8が「アクセル操作子」に対応し、加減速度制御処理が「加減速度制御手段」に対応する。
【0064】
《効果》
(1)本実施形態の加減速度制御装置によれば、増加操作の場合と減少操作の場合とで、操作位置Sに応じた目標加減速度Gの制御特性を変化させている。
このように、増加操作の場合と減少操作の場合とで、操作位置Sに応じた目標加減速度Gの制御特性を変化させることで、同じ操作位置Sであっても、減少操作のときには車両を減速させ、増加操作のときには車両を加速させることができる。したがって、増加操作の初期から車両を加速させることもできるので、従来技術のように加速制御が開始される位置を探す必要がなく、操作性が向上する。
【0065】
(2)本実施形態の加減速度制御装置によれば、増加操作の場合、アクセルペダル8の操作位置Sが非操作位置S0から最大操作位置SMAXまで増加するときに、目標加減速度Gが0から予め定められた正側の最大加減速度GMAXまで増加する往路制御特性に従う。
このように、増加操作のときには、ワンペダル方式ではないコンベンショナルな車両と同様の加速特性を得ることができる。
【0066】
(3)本実施形態の加減速度制御装置によれば、減少操作の場合、アクセルペダル8の操作位置Sが減少操作検知時操作位置Sdから非操作位置S0まで減少するときに、目標加減速度Gが減少操作検知時目標加減速度Gdから予め定められた負側の最小加減速度GMINまで減少する復路制御特性に従う。
このように、減少操作のときには、ワンペダル方式に基づく加速特性と減速特性を得ることができる。
【0067】
(4)本実施形態の加減速度制御装置によれば、再増加操作の場合、アクセルペダル8の操作位置Sが非操作位置S0を超え且つ減少操作検知時操作位置Sdまでの範囲にあれば、復路制御特性に沿って車両の加減速度を増加させる。また、アクセルペダル8の操作位置Sが減少操作検知時操作位置Sdから最大操作位置SMAXまでの範囲にあれば、往路制御特性に沿って車両の加減速度を増加させる。
このように、再増加操作のときにも、ワンペダル方式に基づく加速特性と減速特性を得ることができる。
【0068】
(5)本実施形態の加減速度制御装置によれば、車両の進行方向に対して路面が上り勾配であるほど、最大加減速度GMAXを大きくし、車両の進行方向に対して路面が下り勾配であるほど、最大加減速度GMAXを小さくする。
このように、路面勾配に応じて最大加減速度GMAXを可変とすることで、平坦路のときと同じ感覚でアクセルペダル8を踏み込んでも、加速度の過不足を抑制し、運転者の意図した加速度を達成することができる。
【0069】
(6)本実施形態の加減速度制御装置によれば、車両の進行方向に対して路面が上り勾配であるほど、最小加減速度GMINを大きくし、車両の進行方向に対して路面が下り勾配であるほど、最小加減速度GMINを小さくする。
このように、路面勾配に応じて最大加減速度GMAXを可変とすることで、平坦路のときと同じ感覚でアクセルペダル8を踏み戻しても、減速度の過不足を抑制し、運転者の意図した減速度を達成することができる。
【0070】
(7)本実施形態の加減速度制御装置によれば、減少操作検知時操作位置Sdが小さいほど、最小加減速度GMINを大きくする。
このように、減少操作検知時操作位置Sdに応じて最小加減速度GMINを可変とすることで、無駄な減速を抑制すると共に、ピッチ挙動など発生も抑制することができる。
【0071】
(8)本実施形態の加減速度制御方法によれば、アクセルペダル8の操作位置Sに応じて目標加減速度Gを制御すると共に、増加操作の場合と減少操作の場合とで、操作位置Sに応じた目標加減速度Gの制御特性を変化させる。
このように、増加操作の場合と減少操作の場合とで、操作位置Sに応じた目標加減速度Gの制御特性を変化させることで、同じ操作位置Sであっても、減少操作のときには車両を減速させ、増加操作のときには車両を加速させることができる。したがって、増加操作の初期から車両を加速させることもできるので、従来技術のように加速制御が開始される位置を探す必要がなく、操作性が向上する。
【0072】
《変形例》
本実施形態では、減少操作の際に、操作位置Sが非操作位置S0まで戻されたときに、目標加減速度Gを徐々に0に戻しているが、これに限定されるものではない。例えば、操作位置Sが非操作位置S0まで戻された後も、最小加減速度GMINを維持し、その後の増加操作を検知したときに、目標加減速度Gを0まで戻し、操作位置Sが初期位置S1を超えた時点から目標加減速度Gを正側に増加させてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 車輪回転センサ
2 アクセルセンサ
3 加速度センサ
4 シフトセンサ
5 コントローラ
6 駆動力制御装置
7 ブレーキアクチュエータ
8 アクセルペダル
10 マスターシリンダ
11FL〜11RR 各ホイールシリンダ
12A・12B ゲートバルブ
13FL〜13RR インレットバルブ
14 アキュムレータ
15FL〜15RR アウトレットバルブ
16A・16B ゲートバルブ
17 ポンプ
18 ダンパー室
fd 検知フラグ
fs 切換えフラグ
Gd 減少操作検知時目標加減速度
MAX 最大加減速度
MIN 最小加減速度
Gs1MIN 第一基準値
Gs2MIN 第二基準値
GsMAX 基準値
ka 勾配係数
kr 勾配係数
S 操作位置
0 非操作位置
1 初期位置
Sd 減少操作検知時操作位置
MAX 最大操作位置
th 閾値
α 設定値
β 不感帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非操作位置から最大操作位置までの範囲で運転者が操作可能なアクセル操作子と、
前記アクセル操作子の操作位置に応じて車両の加減速度を制御する加減速度制御手段と、を備え、
前記アクセル操作子の操作位置を前記非操作位置から前記最大操作位置に向けて増加させる操作を増加操作と定義し、前記増加操作の後に前記非操作位置を除く範囲で前記アクセル操作子の操作位置を前記非操作位置に向けて減少させる操作を減少操作と定義し、
前記加減速度制御手段は、
前記増加操作の場合と前記減少操作の場合とで、前記操作位置に応じた前記加減速度の制御特性を変化させることを特徴とする加減速度制御装置。
【請求項2】
加減速度の正値を加速度と定義し、負値を減速度と定義し、
前記加減速度制御手段は、
前記増加操作を検知した場合、
前記アクセル操作子の操作位置が前記非操作位置から前記最大操作位置まで増加するときに、車両の加減速度が0から予め定められた正側の最大加減速度まで増加する特性である往路制御特性に従うことを特徴とする請求項1に記載の加減速度制御装置。
【請求項3】
加減速度の正値を加速度と定義し、負値を減速度と定義し、
前記減少操作を検知した時点の前記操作位置及び前記加減速度を、夫々、減少操作検知時操作位置及び減少操作検知時加減速度とし、
前記加減速度制御手段は、
前記減少操作を検知した場合、
前記アクセル操作子の操作位置が前記減少操作検知時操作位置から前記非操作位置まで減少するときに、車両の加減速度が前記減少操作検知時加減速度から予め定められた負側の最小加減速度まで減少する特性である復路制御特性に従うことを特徴とする請求項1又は2に記載の加減速度制御装置。
【請求項4】
前記減少操作の後に前記非操作位置を除く範囲で前記アクセル操作子の操作位置を前記最大操作位置に向けて増加させる操作を再増加操作と定義し、
前記加減速度制御手段は、
前記再増加操作を検知した場合、
前記アクセル操作子の操作位置が前記非操作位置を超え且つ前記減少操作検知時操作位置までの範囲にあれば、前記復路制御特性に沿って車両の加減速度を増加させ、
前記アクセル操作子の操作位置が前記減少操作検知時操作位置から前記最大操作位置までの範囲にあれば、前記往路制御特性に沿って車両の加減速度を増加させることを特徴とする請求項3に記載の加減速度制御装置。
【請求項5】
前記加減速度制御手段は、
車両の進行方向に対して路面が上り勾配であるほど、前記最大加減速度を大きくし、
車両の進行方向に対して路面が下り勾配であるほど、前記最大加減速度を小さくすることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の加減速度制御装置。
【請求項6】
前記加減速度制御手段は、
車両の進行方向に対して路面が上り勾配であるほど、前記最小加減速度を大きくし、
車両の進行方向に対して路面が下り勾配であるほど、前記最小加減速度を小さくすることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の加減速度制御装置。
【請求項7】
前記加減速度制御手段は、
前記減少操作検知時操作位置が小さいほど、前記最小加減速度を大きくすることを特徴とする請求項3〜6の何れか一項に記載の加減速度制御装置。
【請求項8】
アクセル操作子を非操作位置から最大操作位置までの範囲で操作可能とし、
前記アクセル操作子の操作位置を前記非操作位置から前記最大操作位置に向けて増加させる操作を増加操作とし、前記増加操作の後に前記非操作位置を除く範囲で前記アクセル操作子の操作位置を前記非操作位置に向けて減少させる操作を減少操作とし、
前記アクセル操作子の操作位置に応じて車両の加減速度を制御すると共に、前記増加操作の場合と前記減少操作の場合とで、前記操作位置に応じた前記加減速度の制御特性を変化させることを特徴とする加減速度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−10426(P2013−10426A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144466(P2011−144466)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】