説明

加湿ガス成分測定装置

【課題】水分の影響を大幅に軽減でき、高精度の水素濃度測定が行える加湿ガス成分測定装置を実現すること。
【解決手段】加湿ガス中の水素濃度を測定する加湿ガス成分測定装置であって、測定対象ガスのガス成分を測定するガス成分測定部の前段に、少なくとも気液分離部と露点計と圧力計で構成されたガス導入部が設けられたことを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿ガス成分測定装置に関し、詳しくは、加湿ガス中における水素濃度測定の高精度化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、酸化ガスおよび燃料ガスを反応させることにより発電を行うものであり、ガスを加湿して燃料電池に供給するように構成されている。そこで、たとえば自動車用の燃料電池システムにおいては、加湿用の水分を確保するために、熱交換器やヒートパイプやフィンなどの冷却手段を用いて、燃料電池の排気ガスから水分を回収することが行われている。
【0003】
ところで、加湿ガス中における水素濃度は、燃料電池の性能を決める重要なファクターであり、高精度に測定することが求められていて、たとえば図2に示すような構成の加湿ガス成分測定装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
図2において、加湿ガスの成分測定装置1は、水分除去定量部10と質量分析計20を備え、分析しようとする加湿ガスは水分除去定量部10に導入され、水分を除去された試料ガスは質量分析計20に案内される。たとえば真空ポンプよりなる排気装置18は、水分除去定量部10を水分の凝縮・凍結に最適な圧力に保持しながら、除去された水分を排出する。質量分析計20は分析済みの試料ガスを系内に残留させることなく迅速に排気するための排気装置21を備えている。
【0005】
図3は、図2の水分除去定量部10の一例を示す構成図である。水分除去定量部10は中間部空間11を備え、加湿ガスの流路に沿って共軸対向した上下流一対のオリフィス管(ノズル管とも呼ばれる)12、12’が収納されている。オリフィス管12、12’は半球状の端部を有する薄肉のステンレス円筒管が主として用いられ、それらの端部半球中心軸部にはそれぞれオリフィス(細孔)12a,12a’が設けられている。
【0006】
図3には図示しないが、中間部空間11には図2の排気装置18が接続されていて、分離除去された水分を速やかに系外に排気する。さらに、中間部空間11における水分除去効率が最適となる圧力条件に調整するための真空バルブ17(好ましくは圧力制御機能付きの真空バルブ)と、中間部空間11の圧力を測定する真空計14と、加湿ガスの断熱膨張の前後、すなわち加湿ガス供給上流部のオリフィス管12の管内および中間部空間11の気体温度をそれぞれ測定するための熱電対温度計15、16が設けられている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−150027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、たとえばイオンを磁場中に通したときに受けるローレンツ力による飛行経路の変化を利用した磁場型質量分析計を用いて加湿ガス中の水素を測定する場合には、水蒸気由来のH・、H・が水素検知部に影響するため、精度良く測定することは困難である。
【0009】
加湿ガスから水分を除去する場合であっても、完全に水蒸気を取り除くことは困難であり、水蒸気を測定することで水素濃度の補正をすることは、精度良く測定するためには必要である。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、水分の影響を大幅に軽減でき、高精度の水素濃度測定が行える加湿ガス成分測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような問題を解決するため、請求項1記載の発明は、
加湿ガス中の水素濃度を測定する加湿ガス成分測定装置であって、
測定対象ガスのガス成分を測定するガス成分測定部の前段に、少なくとも気液分離部と露点計と圧力計で構成されたガス導入部が設けられたことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の加湿ガス成分測定装置において、
前記露点計は、鏡面式露点計であることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の加湿ガス成分測定装置において、
前記露点計により測定された露点温度に基づき水蒸気分圧を算出する露点/水蒸気分圧変換手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の加湿ガス成分測定装置において、
前記水蒸気分圧に基づき水蒸気以外の測定対象ガスの総計値を求めるとともに、それらの比率に基づき各成分濃度を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
これらにより、加湿ガス中における水素濃度を高精度に測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例を示す構成図である。図1において、測定対象ガス30はパイプP1を介してガス導入部40を構成する気液分離部41に接続されている。
【0017】
気液分離部41には、パイプP2およびP3を介して流量制御部42が接続されるとともにパイプP2およびP4を介して圧力計45が接続され、さらにパイプP2およびP5を介してガス成分測定部50が接続されている。
【0018】
流量制御部42には、パイプP6を介して鏡面式露点計43が接続されている。
【0019】
鏡面式露点計43には露点/水蒸気分圧変換部44が接続され、露点/水蒸気分圧変換部44の出力端子はガス成分測定結果解析部60に接続されている。
【0020】
ガス成分測定部50は、たとえば4種のガスa〜dをそれぞれ検知するガスa検知部51、ガスb検知部52、ガスc検知部53、ガスd検知部54で構成されていて、これら各検知部51〜54の出力端子はガス成分測定結果解析部60に接続されている。なお、ガス成分測定部50には、測定済みガスを排気するためのパイプP7が接続されている。
【0021】
また、圧力計45の出力端子もガス成分測定結果解析部60に接続されている。
【0022】
さらに、パイプP1〜P7の外周およびこれらパイプが接続される構成機器にはヒーターが設けられていて、これらヒーターは個別または共通にヒーター温度制御部70により温度制御される。
【0023】
図1の動作を説明する。
測定対象ガス30は、パイプP1を介してガス導入部40の気液分離部41に入力される。気液分離部41に入力されたガスは、パイプP2およびP5を介してガス成分測定部50に入力される。ガス成分測定部50により成分測定されたガスはパイプP7を介して外部に排気される。
【0024】
気液分離部41から出力されるガスの一部は、パイプP2およびP3を介して流量制御部42に入力されて一定流量に制御された後、鏡面式露点計43に入力される。
【0025】
鏡面式露点計43は、入力されたガスの露点x[℃]を測定し、露点x[℃]の測定結果を露点/水蒸気分圧変換部44に入力する。
【0026】
露点/水蒸気分圧変換部44は、露点/水蒸気分圧変換式により水蒸気分圧Px[kPa]を算出し、算出したPxをガス成分測定結果解析部60に入力する。
【0027】
また、気液分離部41から出力されるガスの一部は、パイプP2およびP4を介して圧力計45に入力されて圧力Py[kPa]が測定され、圧力測定結果Pyはガス成分測定結果解析部60に入力される。
【0028】
さらに、気液分離部41から出力されるガスの一部は、パイプP2およびP5を介してガス成分測定部50に入力されて4種のガスa〜dそれぞれに対応した検出電圧値Va、Vb、Vc、Vdが測定され、これらの測定結果はガス成分測定結果解析部60に入力される。
【0029】
ガス成分測定結果解析部60において、以上の各測定値、あらかじめ規定されている相互のガスによる検出電圧値への影響、それらを減じた値の比から、ガスa〜dそれぞれのガス濃度Ca[%]、Cb[%]、Cc[%]、Cd[%]を算出する。
【0030】
例として、ガスa検知部51が水蒸気、ガスb検知部52が水素、ガスc検知部53、ガスd検知部54は水蒸気や水素の影響を受けないものとし、ガスb検知部52はガスa検知部51から影響係数αを乗じたαVaが加算されると仮定した場合、下記のCa、Cb、Cc、Cdのように算出される。
Ca=Px/Py×100
Cb=(1−Px/Py)×100×(Vb−αVa)/(Vb−αVa+Vc+Vd)
Cc=(1−Px/Py)×100×Vc/(Vb−αVa+Vc+Vd)
Cd=(1−Px/Py)×100×Vd/(Vb−αVa+Vc+Vd)
【0031】
ガス導入部40の水蒸気は減じられて各検知部51〜54で測定されるが、現在測定されている水蒸気由来の検出値とそこから水素検知部への影響度は通常と同様に補正可能である。
【0032】
また、一般的な場合には、下記のとおりである。
Ca’=Va/(Va+Vb−αVa+Vc+Vd)×100
Cb’=(Vb−αVa)/(Va+Vb−αVa+Vc+Vd)×100
Cc’=Vc/(Va+Vb−αVa+Vc+Vd)×100
Cd’=Vd/(Va+Vb−αVa+Vc+Vd)×100
【0033】
なお、ガス成分測定部50の対応ガス種は4種に限定されるものではない。
【0034】
測定対象ガス30をガス導入部40へ入力するのにあたり、同じ温度に管理された検知部51〜54に干渉しないドライガスにより希釈することで、ガス成分測定部50に導入されるガスの水蒸気分圧を下げるようにしてもよい。
【0035】
ヒーター温度制御部70は、前述のように、パイプやパイプが接続される構成機器に設けられている各ヒーターを個別に制御しても良いし、共通に制御しても良い。
【0036】
露点/水蒸気分圧変換部44は、以下のような露点/水蒸気分圧変換式に基づき、変換処理を行う。
x[℃]:露点温度(x<100)
ew[Pa]:x[℃]における飽和水蒸気圧
T[K]:絶対温度
Px=ew/1000
ew=e
n=−6096.9385×T−1+21.2409642
−2.711193×10−2×T
+1.673952×10−5×T2
+2.433502×ln(T)
T[K]=x[℃]+273.15
【0037】
このように露点測定精度の高い鏡面式露点計で露点を測定し、それにより算出される水蒸気分圧に基づき水蒸気濃度を規定することで、水蒸気やその他のガス(特に水素)について、濃度の測定精度を高めることができる。
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、水分の影響を大幅に軽減した高精度の水素濃度測定が行える加湿ガス成分測定装置を実現することができ、特に燃料電池の評価装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】従来の加湿ガス成分測定装置の一例を示す構成図である。
【図3】図2の水分除去定量部10の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0040】
30 測定対象ガス
40 ガス導入部
41 気液分離部
42 流量制御部
43 鏡面式露点計
44 露点/水蒸気分圧変換部
45 圧力計
50 ガス成分測定部
60 ガス成分測定結果解析部
70 ヒーター温度制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加湿ガス中の水素濃度を測定する加湿ガス成分測定装置であって、
測定対象ガスのガス成分を測定するガス成分測定部の前段に、少なくとも気液分離部と露点計と圧力計で構成されたガス導入部が設けられたことを特徴とする加湿ガス成分測定装置。
【請求項2】
前記露点計は、鏡面式露点計であることを特徴とする請求項1記載の加湿ガス成分測定装置。
【請求項3】
前記露点計により測定された露点温度に基づき水蒸気分圧を算出する露点/水蒸気分圧変換手段を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の加湿ガス成分測定装置。
【請求項4】
前記水蒸気分圧に基づき水蒸気以外の測定対象ガスの総計値を求めるとともに、それらの比率に基づき各成分濃度を求めることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の加湿ガス成分測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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