説明

加湿器の吹出構造

【課題】 床面等の水濡れがなく、室内空間の広範囲を加湿できる吹出構造を備えた加湿器に関する。
【解決手段】 枠体1内にはタンク2から水が送られる水槽3と、水槽3から水の供給を受けて加湿空気を発生する加湿空気発生手段4と、発生した加湿空気が供給される加湿室5と、送風機6からの風によって加湿室5から加湿空気が送られる加湿案内筒7を備え、加湿案内筒7の上部の開口部8にキャップ9を設置する。キャップ9は加湿空気の吹出口9aから上方に突出する筒状のノズル10を設け、ノズル10の入口側では上板10aと下板10bの傾斜角度を一致させて平行に配置し、上板10aは途中で傾斜角度を変更してノズル10の出口側では上板10aが下板10bに接近するように傾斜角度を設定し、ノズル10に送られた加湿空気が上板10aと下板10bとによって誘導され、ノズル10の出口の延長上で交差する角度に吹出す加湿空気流を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は加湿空気発生手段により発生させた加湿空気を放出させて室内空間の加湿を行なう加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加湿器は枠体内に着脱自在なタンクと、このタンク内の水が送られる水槽があり、水槽内の水を加湿空気発生手段である超音波振動子によって霧化させて水槽上部にある加湿室に霧状の加湿空気を発生させている。また、枠体内の下部には加湿室に空気を送る送風機を備え、この送風機で送られる空気は枠体の下部に設けられた送風経路を通り、加湿室とこの送風経路とを連絡する空気口を通過して加湿室へと送られる。加湿空気発生手段によって発生した加湿空気は加湿室で送風機からの風によって加湿室上方の加湿案内筒に導かれて、加湿案内筒の上面開口部を塞ぐキャップに設けた吹出口より室内空間に放出される。
【0003】
吹出口から室内空間に放出される加湿空気は粒子径の細かい水滴となっており、この水滴が水蒸気となって室内空間に拡散することで加湿しているが、キャップの吹出口から放出される加湿空気は横に広がりやすく、枠体周囲で水蒸気となってしまうため、加湿空気が遠くまで届きにくかった。そこで、キャップの上面に吹出口から斜め上方に向けて筒状のノズルを形成して、ノズル先端の出口から加湿空気を吹出すようにしたものがあり、加湿空気が遠くまで届くようにして、室内空間の全体に加湿空気を拡散できるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0004】
また、加湿器のキャップに吹出口と芳香材容器を併設し、芳香材の香りや成分を放出させるようにしたものがある。吹出口から吹出す加湿空気を芳香材容器の容器開口部の上方に向けると、加湿空気と一緒に芳香材の香りや成分を拡散させることができるが、芳香材の気化作用が強くなりすぎることがあり、また、芳香材容器に加湿空気が流入して芳香材が薄められたり、芳香材容器から溢れさせたりするなどの問題点がある。このため、芳香材容器の容器開口部を吹出口から吹出す加湿空気とは反対方向を向くように配置し、容器開口部の開口面積を大きく設けることで、芳香材容器の容器開口部から放出される芳香材の成分や香りが吹出口から吹出す加湿空気と混ざらないようにして、室内空間に拡散させるようにしたものがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−12434号公報。
【特許文献2】特開2010−175172号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吹出口から放出される加湿空気中には粒子径の大きい水滴が混じることがあり、粒子径の大きい水滴は吹出口から放出されてもすぐに失速して水滴のまま落下してしまい、加湿器の枠体表面や枠体付近の床面を濡らしてしまうことがある。加湿空気を枠体や床面に落下させることなく最適な角度で吹出すことができるようにするため、従来はノズルの形状が大きく長く伸ばされたものとなっている。
【0007】
一方、ノズルの先端の出口付近には水滴が付着することがあり、ノズルから水滴が落下することがあるため、ノズルの形状を大きくしてノズル先端の出口がキャップの側方に突出していると、ノズル先端から落下した水滴が枠体表面に付着し、枠体表面を伝って床面に流れ落ちることがあり、枠体表面や枠体付近の床面を濡らしてしまう可能性がある。
【0008】
また、キャップに形状の大きいノズルを備えると、キャップの上面に芳香材容器を設けるスペースがなくなるため、開口面積の大きい芳香材容器を設けることは難しく、芳香材容器を形成するときはノズルのないキャップにするか、芳香材容器の形状が小さくなってしまう問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上記の課題を解決するもので、枠体1内には水を貯えるタンク2と、タンク2から水が送られる水槽3と、水槽3から水の供給を受けて加湿空気を発生する加湿空気発生手段4と、加湿空気発生手段4によって発生した加湿空気が供給される加湿室5と、加湿室5に空気を送り込む送風機6と、送風機6で送り込まれた空気によって加湿室5から加湿空気が送られる加湿案内筒7とを備え、加湿室5から送られてきた加湿空気を加湿案内筒7の上部に設けた開口部8から枠体1外に放出する加湿器において、前記加湿案内筒7の開口部8の上面を覆うキャップ9を設け、該キャップ9の上面には前記加湿案内筒7の加湿空気を室内空間に放出するための吹出口9aを設け、該吹出口9aには加湿空気を斜め上方に誘導するキャップ9の上方に突出する筒状のノズル10を設け、前記ノズル10の入口側では上板10aと下板10bの傾斜角度を一致させて平行に配置すると共に、前記上板10aは途中で傾斜角度を変更して、前記ノズル10の出口側では上板10aが下板10bに接近するように傾斜角度を設定し、前記吹出口9aから前記ノズル10に送られる加湿空気が、前記上板10aと前記下板10bとによって誘導され、前記ノズル10の出口の延長上で交差する角度に吹出す加湿空気流を形成することを特徴とする加湿器の吹出構造である。
【0010】
また、前記加湿案内筒7内には、加湿案内筒7の上下方向に伸びる中心線に沿って上昇する加湿空気が当たる邪魔板7aを配置し、前記邪魔板7aの外側には加湿空気を加湿案内筒7の内壁面に沿って通過させる間隙7bを形成すると共に、前記吹出口9aは前記間隙7bとは対向しない前記キャップ9の中央に設けたことにより、加湿案内筒7内を上昇する加湿空気が邪魔板7aやキャップ9の下面にあたって流れを変えるときに失速し、粒子径の大きい水滴が落下するので、粒子径の小さい軽い水滴だけが吹出口9aまで届いてノズル10から吹出すものとなり加湿空気が遠くまで届くものとなった。
【0011】
また、前記加湿案内筒7の開口部8には前記キャップ9の外側を囲むように筒状部8aを形成し、前記ノズル10の入口側の上板10aの下端を前記キャップ9の吹出口9aより低位置に設けると共に、前記ノズル10の先端の出口を前記筒状部8aより内側に設けることにより、前記ノズル10の先端の出口に付着した水が落下したときに前記加湿案内筒7の開口部8に誘導することができるので、枠体1の表面や床面を水で濡らすことはないものである。
【0012】
また、前記ノズル10の上板10aは入口側の下端を前記キャップ9の吹出口9aより低位置に設けると共に、前記吹出口9aよりも高所で傾斜角度を変更しており、前記上板10aと連続する前記キャップ9の上面に形成される凹部によって芳香材Aを収容する芳香材容器11を構成し、該芳香材容器11内には前記ノズル10の上板10aの傾斜面によって芳香材Aの載置部11aを斜め上向きに形成すると共に、容器開口部11bが斜め上向きに開口していることにより、キャップ9にノズル10と芳香材容器11とを併設することができるものとなった。
【0013】
また、前記ノズル10の出口を前記容器開口部11bよりも高所に配置すると共に、加湿空気が前記容器開口部11bとは反対方向に吹出すようにしたことにより、芳香材容器11の容器開口部11bから放出される芳香材の香り成分がノズル10から吹出す加湿空気による影響を受けにくくなり、芳香材の香り成分を適度に拡散させることができるものである。
【0014】
また、前記ノズル10の出口の内側には上板10aから下向きに張出す突部10cを形成したことにより、ノズル10の出口の内側の上板10aに付着する水を突部10cの下端から落下させることができ、ノズル10の出口付近に水が付着したまま残ることがなくなった。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、加湿空気発生手段4で発生した加湿空気を枠体1外に導く加湿案内筒7と、加湿案内筒7の上部に設けた開口部8の上面を覆うキャップ9と、キャップ9には発生した加湿空気を室内空間に放出するための吹出口9aとを設け、吹出口9aには加湿空気を斜め上方に誘導する筒状のノズル10を形成し、ノズル10の先端の出口から加湿空気を吹出す構造としている。そして、ノズル10は入口側の上板10aと下板10bとの傾斜角度を一致させ、上板10aは入口側と出口側で傾斜角度を変更して、出口側の上板10aが下板10bに接近するように設定したものである。
【0016】
この構成により、加湿案内筒7を上昇する加湿空気は吹出口9aからノズル10内に送られ、ノズル10内では上板10aと下板10bに沿って加湿空気の流れが形成され、上板10aに沿って誘導されて途中で角度を変更した加湿空気と、下板10bに沿って誘導される加湿空気とが、ノズル10の出口の延長上で交差する角度に吹出すものとなる。このため、加湿空気は流速を増しながらノズル10の出口から集中して吹出すので、すぐに上向きや下向きの流れとならず遠くまで届いて水蒸気となって拡散するものとなり、室内空間の広範囲に加湿空気を拡散させることができると共に、加湿空気が落下して枠体1や枠体1付近の床面を加湿空気によって濡らすことはなくなった。
【0017】
また、加湿案内筒7内に邪魔板7aを設け、加湿案内筒7の上下方向に伸びる中心線に沿って上昇する加湿空気は邪魔板7aに当たって方向を変え、邪魔板7aの外側の間隙7bを通過して開口部8に向かうものであり、加湿空気が邪魔板7aに当たったときに、粒子径の大きい水滴は流速を落として落下する。また、間隙7bを通過して加湿案内筒7壁面に沿って上昇する加湿空気は、キャップ9の下面に当たって方向を変え、キャップ9の中心に位置する吹出口9aに向かうものであり、粒子径の大きい水滴は流速を落として落下するので、粒子径の大きい水滴が吹出口9aまで届かなくなる。このため、ノズル10の出口から吹出す加湿空気は粒子径の小さい水滴の集まりとなり、確実に遠くまで届いて水蒸気となって室内空間に拡散するので、枠体1や枠体1付近の床面を加湿空気によって濡らすことはなくなった。
【0018】
また、加湿案内筒7の開口部8にはキャップ9の外側を囲むように筒状部8aを配置し、ノズル10の先端を筒状部8aより内側に位置させている。このため、ノズル10の先端に水滴が付着してノズル10から落下しても、この水滴は筒状部8aより内側に落下してキャップ9や筒状部8aを伝って加湿案内筒7の開口部8に誘導されるので、ノズル10の先端から落下する水滴で枠体1表面や枠体1付近の床面を濡らすことはなくなった。
また、ノズル10の上板10aの入口側の端部をキャップ9の吹出口9aよりも低位置に設けることで、加湿案内筒7を上昇する加湿空気は上板10aに沿って誘導されて吹出口9aに向かうので、加湿空気が上板10aに沿って流れる距離が長くなり、加湿空気の流れを制御できるものとなった。
【0019】
また、ノズル10の上板10aは入口側の端部をキャップ9の吹出口9aよりも低位置に設け、キャップ9の吹出口9aよりも高所で傾斜角度を変更しており、キャップ9の上面に形成される凹部によって芳香材容器11を構成し、芳香材容器11内に位置する上板10aの入口側の傾斜面によって芳香材Aの載置面11aを形成している。
このため、キャップ9上面に形成される芳香材容器11の容器開口部11bは斜め上方を向くので、容器開口部11bの開口面積を大きく設けることができ、芳香材容器11に収納する芳香材Aの形状を大きくしても傾斜した載置面11aによって芳香材Aの設置や取出しが容易に行うことができる。このため、キャップ9にノズル10と芳香材容器11を併設した構造でも、芳香材Aの芳香成分を適度に拡散させることができる芳香材容器11を形成することができるものとなった。
【0020】
また、この発明では、ノズル10の出口から吹出す加湿空気は、芳香材容器11の容器開口部11bよりも高所で、容器開口部11bとは反対方向に向かって吹出すから、加湿空気が芳香材容器11に流入して芳香材Aの成分が薄められたり、加湿空気によって芳香材Aの気化作用が促進されたりすることなく、芳香材Aの芳香成分を適度に拡散させることができるものとなった。
【0021】
また、ノズル10の出口の内側の上板10aに水が付着することがあり、この水が付着したまま残ると、加湿空気の流れを妨げとなったり、ノズル10から吹出す加湿空気によって飛ばされて枠体1の表面や床面に落下したりすることがある。この発明では、ノズル10の出口の内側に上板10aから下向きに張出す突部10cを形成しており、ノズル10の出口の内側の上板10aに付着した水は突部10cの下端から落下するものとなり、ノズル10の出口付近に水が付着したまま残ることがなくなり、加湿空気の流れを妨げたり、水が枠体1や床面に落下して枠体1表面や床面を濡らしたりする心配はなくなった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施例を示す加湿器の要部断面図である。
【図2】この発明の実施例を示す加湿器に使用されるキャップの要部断面図である。
【図3】この発明の実施例を示すキャップの分解斜視図である。
【図4】この発明の他の実施例を示すキャップの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図に示す超音波式加湿器の実施例によってこの発明を説明すると、1は加湿器の枠体、2は枠体1内の上部に配置した水を貯えるタンク、3はタンク2から水が送られる水槽であり、タンク2は枠体1の蓋1aを取外して上部から枠体1内に装着できるようになっている。
【0024】
12は突起部12aを有する前記タンク2を受ける受け皿、13は前記タンク2の着脱自在のタンク蓋、14はタンク蓋13内に取付けた開閉弁であり、水を補給した前記タンク2を受け皿12に転倒設置すると開閉弁14は突起部12aで押し開かれ、押し開かれた開閉弁14からタンク2内の水が受け皿12を経由して前記水槽3に送られる。
【0025】
4は前記水槽3内の水を受けて加湿空気を発生させる超音波振動子で構成した加湿空気発生手段、5は加湿空気発生手段4によって発生した霧状の加湿空気が供給される加湿室、7は加湿空気発生手段4によって発生した加湿空気を前記枠体1外へと導くために加湿室5の上部に設けた加湿案内筒である。
【0026】
6は前記枠体1の下部に設けた送風機、15は前記加湿室5の側部に設けた空気口、16は送風機6によって送られる空気の送風経路であり、送風機6を運転すると送風経路16で発生した風が空気口15から前記加湿室5に送られ、前記加湿発生手段4によって発生した加湿空気は送風機6からの風によって前記加湿案内筒7を通過する。
【0027】
8は前記加湿案内筒7の上方の開口部、9は開口部8を覆うキャップ、9aはキャップ9に設けた加湿空気が放出される吹出口であり、前記加湿案内筒7を通過した加湿空気はキャップ9の吹出口9aから室内空間に放出されることになる。また、キャップ9は中空の円筒状であり、前記加湿案内筒7の開口部8に設置されるとキャップ9の上部が前記枠体1から上方に突き出した形体となっており、キャップ9は前記加湿案内筒7の設置面で回転可能であり、吹出口9aを任意の方向に向けることができる。
【0028】
超音波式加湿器は加湿発生手段4によって発生する加湿空気は粒子径の細かい水滴となっており、室内空間に放出された加湿空気の水滴が水蒸気となって拡散することで室内空間の加湿が行われている。
加湿空気の吹出角度を水平方向に近づけると水滴は下向きに放出されやすくなり、水蒸気となる前に床面に落下しやすくなる。一方、吹出角度を垂直方向に近づけると水滴は上向きに放出されやすくなり、加湿空気が届く範囲が狭くなってしまう。このため、加湿空気が水滴のまま落下することなく遠くまで届かせるためには、加湿空気の吹出角度を床面に対して40〜60度の範囲になるように設定したい。
しかし、キャップ9の吹出口9aから放出される加湿空気は上方に向かいやすく、加湿空気が室内空間の広範囲に届きにくいものとなっていた。また、粒子径の細かい水滴は水蒸気となって拡散することができるが、粒子径の大きい水滴はそのまま落下し、枠体1表面や枠体1付近の床面を濡らしてしまう問題点があった。
【0029】
このための対策として、10はキャップ9の上面の吹出口9aから連続して形成された筒状のノズルであり、ノズル10は吹出口9aから放出される加湿空気の吹出角度が斜め上方を向くように所定角度傾斜している。10aは吹出口9aの一方の開口端から傾斜して伸びるノズル10の上板、10bは吹出口9aの他側の開口端から傾斜して伸びるノズル10の下板、10dは上板10aと下板10bの両側に配置された側壁である。加湿案内筒7を上昇してきた加湿空気はキャップ9の吹出口9aを通過してノズル10に流入し、ノズル10の上板10aと下板10bに沿って流れてノズル10の先端の出口から所定の角度で吹出すものである。
【0030】
この発明は、ノズル10の入口側では上板10aと下板10bの傾斜角度を一致させて、上板10aと下板10bとを平行に配置している。また、上板10aはく字状に形成して傾斜角度を途中で変更しており、ノズル10の出口側では上板10aが下板10bに接近するように設定している。このため、ノズル10は入口側の開口幅よりも出口側の開口幅の方が狭くなっており、ノズル10内に流入した加湿空気は流速を増しながらノズル10の先端の出口に向かうものとなり、入口側よりも流速を増した加湿空気がノズル10の出口から吹出すものとなる。
【0031】
また、ノズル10の上板10aに沿って流れる加湿空気は途中で角度を変更するので、上板10aに沿って流れる加湿空気と下板10bに沿って流れる加湿空気とが接近するようにノズル10の出口に向かっており、上板10aに沿って流れる加湿空気と下板10bに沿って流れる加湿空気とがノズル10の出口の延長上で交差する角度で吹出すものとなる。
【0032】
この構成により、上板10aに沿って吹出す加湿空気の下側に、下板10bに沿って吹出す上向きの加湿空気の流れが形成され、下板10bに沿って吹出す加湿空気が上板10aに沿って吹き出す加湿空気を上方に押し上げるので、ノズル10の出口から吹出した加湿空気はすぐに上向きや下向きの流れになることはなく、最適な角度で吹出すことができるものとなった。
【0033】
このため、加湿空気の粒子径の細かい水滴は届く距離が長く伸び、室内空間の広範囲に加湿空気が拡散して加湿を行うことができ、一方、粒子径の大きい水滴もすぐに落下することがなくなり、床面に落下する前に水蒸気となることができ、枠体1の表面や枠体1付近の床面を濡らす心配はなくなった。
【0034】
また、加湿器には加湿空気の発生量を調整可能とするボリュームを備えたものがあり、放出された加湿空気がすぐに拡散してしまうと、加湿空気の発生量を少なくしたときに加湿空気が放出されているか否かが、確認できなくなってしまうことがあったが、この発明では加湿空気がノズル10の出口で集中して密度の濃い霧となるので、加湿空気の発生量を少なくしたときでも、加湿空気を目視で確認することができるものとなった。
【0035】
図1の実施例において、7aは加湿案内筒7内の中心位置に設けた円板状の邪魔板であり、邪魔板7aの外径寸法を加湿案内筒7の内径寸法よりも小さく設けている。7bは邪魔板7aの外側の加湿案内筒7の内壁面との間に形成した間隙であり、加湿空気発生手段4によって発生する加湿空気は加湿案内筒7内を上昇するが、加湿案内筒7の上下方向に伸びる中心線に沿って上昇する加湿空気は邪魔板7aの下面に衝突して流れを変え、間隙7bを通過して加湿案内筒7の内壁面に沿って上昇する。
【0036】
一方、キャップ9の吹出口9aはキャップ9の中心位置に配置し、吹出口9aの開口の大きさを邪魔板7aより小さくして間隙7bとは対向しないように設けている。このため、間隙7bを通過して加湿案内筒7の内壁面に沿って上昇する加湿空気は、キャップ9の下面で流れを変えてから吹出口9aに向かうものとなる。
【0037】
加湿案内筒7内を上昇する加湿空気に含まれる粒子径の大きい水滴は、邪魔板7aやキャップ9の下面に衝突して流れを変更することで粒子径が細かくなり、また、粒子径の大きい水滴のまま途中で失速して落下する。このため、吹出口9aには粒子径の小さい軽い水滴だけが届くものとなり、ノズル10から吹出す加湿空気には粒子径の大きい水滴が混じることがなくなるから、加湿空気が遠くまで届きやすくなって室内空間の広範囲を加湿することができると共に、水滴のまま落下する加湿空気はほとんどなくなり、枠体1や枠体1周囲の床面を濡らしてしまうことがなくなった。
【0038】
また、この発明の実施例において、8aは開口部8の上部に立設した筒状部であり、開口部8の上に載置されたキャップ9の外側を囲むように筒状部8aが配置されている。一方、ノズル10の先端の出口が筒状部8aの内側に位置するように、ノズル10の長さを設定している。実施例では吹出口9aをキャップ9の中央に設けて、ノズル10はキャップ9の中央からキャップ9の側面付近まで伸ばされている。
【0039】
また、ノズル10の入口側の上板10aの端部がキャップ9の吹出口9aよりも低く位置するように形成しており、加湿案内筒7内を上昇する加湿空気が、吹出口9aより下方の上板10aに沿って流れを変更しながら吹出口9aに誘導される構成としている。このため、ノズル10の先端位置を筒状部8aより内側に設けて、キャップ9の上面からノズル10の先端までの距離が短くなったときでも、加湿空気が上板10aに沿って流れる距離は長くすることができ、ノズル10によって加湿空気の流れを確実に制御することができるものとなっている。
【0040】
加湿空気が吹出すノズル10の先端の出口付近には水滴が付着し、付着した水滴はノズル10から落下することがあるが、落下した水滴は必ず筒状部8aより内側の開口部8もしくはキャップ9の上面に付着するものとなり、水滴は筒状部8aの内側に流れて開口部8から加湿案内筒7内に戻るので、枠体1の表面に水滴が落下して付着することがなくなり、枠体1の表面や枠体1の周囲の床面を加湿空気で濡らすことがなくなった。
【0041】
また、ノズル10の入口側の上板10aを吹出口9aより低位置に設けたときに、キャップ9の上面には吹出口9aより下方に伸びる傾斜面と連続する凹部が形成される。11はキャップ9の上面に形成される凹部によって構成する芳香材容器、11aは芳香材容器11の一部を構成するノズル10の上板10aの傾斜面によって形成した載置部、11bは芳香材容器11の容器開口部、11cは容器開口部11bに開閉自在に装着した開閉蓋である。
【0042】
Aは芳香材容器11内に収納される芳香材であり、実施例ではアロマオイルなどをスポンジなどの含浸材に染み込ませたものや、固形のものを使用しており、容器開口部11bの開閉蓋11cを開いて芳香材Aを載置部11の上に設置するものである。開閉蓋11cを閉じているときは芳香材Aの香りや芳香成分は放出されないものであり、一方、開閉蓋11cを大きく開いたときは、容器開口部11bからの芳香成分の放出量が多くなり、開閉蓋11cを小さく開いたときは、芳香成分の放出量が少なくなり、開閉蓋11cの開閉によって芳香材Aの香りと芳香成分の放出量を調整することができる。
芳香材Aを液体のまま使用しないから、芳香材容器11からの芳香材Aの流出や、加湿案内筒7内への流入の心配がない。また、芳香材Aの交換や芳香材容器11の洗浄も容易に行うことができる。
【0043】
この構成では、芳香材容器11の載置部11aがキャップ9の上面より高所に位置するので、キャップ9の上面には傾斜した容器開口部11bが形成されるものとなり、芳香材容器11の大きさに対して、キャップ9の上面の容器開口部11bの開口面積を大きく設けることができる。このため、ノズル10と併設するために芳香材容器11の形状が大きくできないときでも、容器開口部11bの開口面積は確保できるものとなり、芳香材Aの香りと芳香成分が放出しやすいものとなった。
【0044】
また、芳香材Aの芳香成分や香りの放出を長く持続させるためには、芳香材容器11に収納される芳香材Aはできるだけ大きいものがよいが、含浸材や固形の芳香材Aを芳香材容器11の大きさにあわせて隙間なく設置すると、芳香材Aの設置や取り出しが行ないにくくなることがあるが、この発明では芳香材容器11の載置部11aが傾斜しているので、載置部11aの傾斜に沿って芳香材Aの設置や取り出しを行なうことができ、芳香材Aの形状を大きくしても設置や取出しが容易にできるものとなる。
【0045】
また、ノズル10の先端の出口が芳香材容器11の容器開口部11bよりも高所に位置すると共に、ノズル10の出口は芳香材容器11とは反対方向を向いているから、ノズル10の出口から吹出す加湿空気が芳香材容器11の容器開口部11bに向かわないようにすることができ、芳香材Aの芳香成分はノズル10から吹出す加湿空気の影響を受けることなく容器開口部11bから放出されて室内空間に拡散するものとなっている。
【0046】
このようにすると、芳香材容器11に加湿空気が流入して加湿空気によって芳香材Aの芳香成分が薄められたり、芳香材容器11に加湿空気の水分が溜まったりすることがなくなり、芳香材Aの芳香成分を長く持続できるものとなる。また、芳香材容器11の容器開口部11bから放出される芳香成分がノズル10から吹出す加湿空気と直接混じることがないから、芳香材Aの香りが加湿空気と一緒に室内空間に拡散されることはなく、芳香材Aの適度な芳香成分と香りが拡散するものとなった。
【0047】
また、加湿空気がノズル10内を流れるときに、ノズル10の出口の内側の上板10aに水滴が付着することがある。この水が上板10aに付着したまま残り、ノズル10の出口の内側に徐々に水が溜まってしまうと、加湿空気の流れを妨げたり、水がノズル10の出口から吹き飛ばされたりして、枠体1の表面や床面を濡らしてしまうことがある。
【0048】
図4に示す実施例において、10cは上板10aから下方に張出すように形成した突部であり、突部10cはノズル10の出口の内側にく字状の傾斜面を形成している。加湿空気がノズル10内を流れるときに、ノズル10の出口の内側の上板10aに水滴が付着することがあるが、この水滴は突部10cを流れて突部10cの下端に集まり、突部10cの下端から落下させることができるので、ノズル10の出口の内側に水が溜まることはなくなった。このため、ノズル10から吹出す加湿空気の流れを妨げたり、ノズル10の出口から水が吹き飛ばされたりすることはなくなり、枠体1表面や床面を濡らしたりする心配はなくなった。
【符号の説明】
【0049】
A 芳香材
1 枠体
2 タンク
3 水槽
4 加湿空気発生手段
5 加湿室
6 送風機
7 加湿案内筒
7a 邪魔板
7b 間隙
8 開口部
8a 筒状部
9 キャップ
9a 吹出口
10 ノズル
10a 上板
10b 下板
10c 突部
11 芳香材容器
11a 載置部
11b 容器開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体(1)内には水を貯えるタンク(2)と、タンク(2)から水が送られる水槽(3)と、水槽(3)から水の供給を受けて加湿空気を発生する加湿空気発生手段(4)と、加湿空気発生手段(4)によって発生した加湿空気が供給される加湿室(5)と、加湿室(5)に空気を送り込む送風機(6)と、送風機(6)で送り込まれた空気によって加湿室(5)から加湿空気が送られる加湿案内筒(7)とを備え、加湿室(5)から送られてきた加湿空気を加湿案内筒(7)の上部に設けた開口部(8)から枠体(1)外に放出する加湿器において、
前記加湿案内筒(7)の開口部(8)の上面を覆うキャップ(9)を設け、
該キャップ(9)の上面には前記加湿案内筒(7)の加湿空気を室内空間に放出するための吹出口(9a)を設け、該吹出口(9a)には加湿空気を斜め上方に誘導するキャップ(9)の上方に突出する筒状のノズル(10)を設け、
前記ノズル(10)の入口側では上板(10a)と下板(10b)の傾斜角度を一致させて平行に配置すると共に、前記上板(10a)は途中で傾斜角度を変更して、前記ノズル(10)の出口側では上板(10a)が下板(10b)に接近するように傾斜角度を設定し、
前記吹出口(9a)から前記ノズル(10)に送られる加湿空気が、前記上板(10a)と前記下板(10b)とによって誘導され、前記ノズル(10)の出口の延長上で交差する角度に吹出す加湿空気流を形成することを特徴とする加湿器の吹出構造。
【請求項2】
前記加湿案内筒(7)内には、加湿案内筒(7)の上下方向に伸びる中心線に沿って上昇する加湿空気が当たる邪魔板(7a)を配置し、前記邪魔板(7a)の外側には加湿空気を加湿案内筒(7)の内壁面に沿って通過させる間隙(7b)を形成すると共に、
前記吹出口(9a)は前記間隙(7b)とは対向しない前記キャップ(9)の中央に設けたことを特徴とする請求項1記載の加湿器の吹出構造。
【請求項3】
前記加湿案内筒(7)の開口部(8)には前記キャップ(9)の外側を囲むように筒状部(8a)を形成し、
前記ノズル(10)の入口側の上板(10a)の下端を前記キャップ(9)の吹出口(9a)より低位置に設けると共に、前記ノズル(10)の先端の出口を前記筒状部(8a)より内側に設けることを特徴とする請求項1または2に記載の加湿器の吹出構造。
【請求項4】
前記ノズル(10)の上板(10a)は入口側の下端を前記キャップ(9)の吹出口(9a)より低位置に設けると共に、前記吹出口(9a)よりも高所で傾斜角度を変更しており、
前記上板(10a)と連続する前記キャップ(9)の上面に形成される凹部によって芳香材(A)を収容する芳香材容器(11)を構成し、該芳香材容器(11)内には前記ノズル(10)の上板(10a)の傾斜面によって芳香材(A)の載置部(11a)を斜め上向きに形成すると共に、容器開口部(11b)が斜め上向きに開口していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の加湿器の吹出構造。
【請求項5】
前記ノズル(10)の出口を前記容器開口部(11b)よりも高所に配置すると共に、加湿空気が前記容器開口部(11b)とは反対方向に吹出すようにしたことを特徴とする請求項4に記載の加湿器の吹出構造。
【請求項6】
前記ノズル(10)の出口の内側には上板(10a)から下向きに張出す突部(10c)を形成したことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の加湿器の吹出構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−233621(P2012−233621A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101536(P2011−101536)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)
【Fターム(参考)】