説明

加湿器

【課題】電解水で加湿を行えるようにした加湿器において、加湿フィルタの駆動を無理なく行えるようにする。
【解決手段】加湿器1は、筐体10内に、電解水生成部22内の電解水で湿潤状態にされる加湿フィルタ17と、加湿フィルタ17を通過する空気流を生成する送風機16を有する。筐体10内に上下可能に配置されたフィルタ支持体Hは給水タンク収納空間26を開閉するゲート28に連繋機構33で連結される。フィルタ支持体Hに保持された無端ベルト状の加湿フィルタ17と電解水生成用の電極20は、ゲート28が引き下げられれば下降して下端を電解水生成槽21内の水に浸し、ゲート28が引き上げられれば上昇して下端を電解水生成槽21内から外に出す。加湿フィルタ17を移動させる加湿フィルタ駆動モータ78はフィルタ支持体Hに取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
加湿器の一形式として、水槽内の水に下部を浸したベルト状フィルタを回転させ、吸水したベルト状フィルタに空気を通過させることで、加湿空気又は冷風を得るものがある。
その例を特許文献1に見ることができる。
【0003】
また加湿器の中には、加湿するための水を除菌できるようにしたものがある。特許文献2に記載された加湿器はその一例であり、そこでは対をなす電極を水槽に水に浸し、一方をプラス電極、他方をマイナス電極として通電することにより水を電解し、水中の塩素イオンから次亜塩素酸を生成して水の除菌を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−217726号公報(国際特許分類:F24F1/00、F24F6/06)
【特許文献2】特開2006−57995号公報(国際特許分類:F24F6/00)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加湿器は冬場などの乾燥しやすい時期に使用されるのが通例であるが、次亜塩素酸を含む電解水で加湿を行い、加湿と同時に空気の除菌や脱臭を行うようにすれば、時期を問わず生活環境の改善に役立てることができる。本発明は、電解水で加湿を行えるようにした加湿器において、加湿フィルタの駆動を無理なく行えるよう構造に工夫を加え、無用な騒音が生じないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい実施形態によれば、加湿器は、筐体内に、電解水生成部と、前記電解水生成部で生成された電解水で湿潤状態にされる加湿フィルタと、前記加湿フィルタを通過する空気流を生成する送風機を配置し、電解水で加湿された空気を前記筐体外に吹き出すものであり、前記筐体の下部に給水タンク収納空間を形成し、前記給水タンク収納空間の正面は上下可能なゲートによって閉ざされる出入口とし、前記出入口から前記給水タンク収納空間に収納されるトレイを設け、前記トレイは、手前側に給水タンク保持部、奥側に前記電解水生成部の電解水生成槽を有し、前記給水タンク保持部に保持された給水タンクから流れ出した水を前記電解水生成槽で受けるものであり、前記筐体内には、無端ベルト状の前記加湿フィルタを有するフィルタ支持体を上下可能に配置し、前記フィルタ支持体は、電解水生成用の電極を保持すると共に、前記ゲートに連繋機構で連結されて、前記ゲートが閉鎖位置に引き下げられたときは下降して前記加湿フィルタと前記電極のそれぞれ下端を前記電解水生成槽内の水に浸し、前記ゲートが開放位置に引き上げられたときは上昇して前記加湿フィルタと前記電極のそれぞれ下端を前記電解水生成槽内の水から引き上げるものであり、前記加湿フィルタを移動させる加湿フィルタ駆動モータが、前記フィルタ支持体に取り付けられている。
【0007】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記フィルタ支持体はフィルタユニット及びそれを保持するフィルタユニットケースにより構成され、前記加湿フィルタは前記フィルタユニットに垂直方向に延びる形で保持され、前記フィルタユニットは、前記加湿フィルタが巻き掛けられる原動軸と従動軸を有し、前記原動軸は、前記フィルタユニットケースに取り付けられた前記加湿フィルタ駆動モータに歯車で連結されている。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記フィルタ支持体は枠体により構成され、前記加湿フィルタは、前記枠体に上下に間隔を置いて配置された原動軸と従動軸に巻き掛けられ、垂直方向に延びており、前記原動軸は前記加湿フィルタ駆動モータに歯車で連結されている。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記フィルタユニットケースは、前記加湿フィルタを含むフィルタユニットの内部空間から隔てられた加湿フィルタ駆動モータ収納空間を備え、前記加湿フィルタ駆動モータ収納空間に収納された前記加湿フィルタ駆動モータは、出力軸に、前記加湿フィルタ収納空間に露出して前記原動軸側の歯車にかみ合う歯車を固定しているとともに、前記出力軸が突き出す側の端面が、水よけカバーで覆われている。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記フィルタユニットケースと前記筐体の間には、前記フィルタユニットケースに支持されている電気部品に電力供給を行うための給電ケーブルが設けられ、前記給電ケーブルは、前記フィルタユニットケースの側が開放端となった扇状の固定ガイドを通って配線されている。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記連繋機構は左右1対のレバーを含み、前記左右1対のレバーは、それぞれ、前記筐体に連結される支点部と、前記ゲートに連結される力点部と、前記フィルタユニットケースにコネクティングロッドを介して連結される作用点部を備えるものであり、前記左右1対のレバーにはそれぞれロータリーダンパーが取り付けられ、前記ロータリーダンパーは、軸端に固定されたピニオンを筐体に固定された円弧状のラックにかみ合わせる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記ラックは、円弧の外周側と内周側にそれぞれ歯形を有する部品であり、左右の前記ロータリーダンパーの一方は前記ラックの外周側の歯形に前記ピニオンをかみ合わせ、他方は前記ラックの内周側の歯形に前記ピニオンをかみ合わせる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記筐体の背面には前記加湿フィルタを通過させる空気を吸い込む吸気口が形成され、前記吸気口には吸気フィルタとそれを外から覆うガードグリルが設けられる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記電極は着脱可能な電極ユニットの形で前記フィルタユニットケースに取り付けられており、前記フィルタユニットケースの上昇時、前記吸気口内のアクセス可能位置に前記電極ユニットのつまみ部が出現する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記ガードグリルが取り外されたとき、前記電極ユニットへの通電が断たれる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記筐体の天面に、電解水で加湿された空気を吹き出す吹出口が形成され、前記吹出口にはルーバーが配置され、前記ルーバーはルーバー駆動モータの出力軸に連結されてスイングするものであり、前記ルーバー駆動モータの出力軸には、前記筐体に固定された保持具に保持されたオーリングが嵌合する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、無端ベルト状の加湿フィルタを有するフィルタ支持体に、加湿フィルタを循環移動させる加湿フィルタ駆動モータが取り付けられているから、フィルタ支持体の上下動を無理なく実現できる。また、加湿フィルタを移動させる動力をフィルタ支持体の外から伝えることとした場合、フィルタ支持体が所定の位置に落ち着いた時点でかみ合いが生じる歯車の組み合わせなどの動力伝達インターフェースが必要になり、歯車がうまくかみ合わなくて異音が発生するといった事態を招きやすい。これに対し本発明では、フィルタ支持体自体に加湿フィルタ駆動モータが取り付けられているので、外部に対する動力伝達インターフェースが不要であり、構造を簡略化できるとともに、歯車のかみ合いなどについては、フィルタ支持体の内部の問題として、異音などを生じないように処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る加湿器の斜視図である。
【図2】図1の加湿器の垂直断面図である。
【図3】図1の加湿器の垂直断面図で、図2と異なる状態を示すものである。
【図4】図1の加湿器の垂直断面図で、図2及び図3と異なる状態を示すものである。
【図5】トレイと、それに取り付けられる給水タンクの斜視図である。
【図6】給水タンクを取り付けたトレイの斜視図である。
【図7】給水タンクを取り付けたトレイを下方から見た斜視図である。
【図8】給水タンク収納空間と、そこに収納されたトレイの一部を示す拡大正面図である。
【図9】トレイの上面図である。
【図10】トレイを上方から見た斜視図である。
【図11】フロートの斜視図である。
【図12】ゲートを上げ、筐体から一方の側板を除去した状態の加湿器の斜視図である。
【図13】フィルタユニットケースの部分斜視図で、加湿フィルタ保持空間の蓋を開いた状態を示すものである。
【図14】フィルタユニットケースの付属機構を示す部分斜視図である。
【図15】加湿フィルタ駆動モータとその付属物の分解斜視図である。
【図16】フィルタユニットケースの中で、加湿フィルタ駆動モータ取付箇所の断面図である。
【図17】筐体内の部分構造を示す斜視図である。
【図18】ゲートとフィルタユニットケースの連繋機構であって、筐体右側面に配置されたものを示す図である。
【図19】ゲートとフィルタユニットケースの連繋機構であって、筐体左側面に配置されたものを示す図である。
【図20】図18の連繋機構が、図18と異なる姿勢をとった状態を示す図である。
【図21】図19の連繋機構が、図19と異なる姿勢をとった状態を示す図である。
【図22】加湿器を背面側から見た斜視図で、吸気フィルタとガードグリルを分解斜視図の形で示したものである。
【図23】ガードグリルを内面側から見た斜視図である。
【図24】加湿器を背面側から見た斜視図で、吸気フィルタとガードグリルを除去した状態を示すものである。
【図25】電極ユニットの斜視図である。
【図26】筐体天面の吹出口の部分断面図である。
【図27】ルーバー駆動モータとその付属部品の斜視図である。
【図28】加湿器のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に基づき本発明の実施形態に係る加湿器の構造と動作を説明する。
【0020】
加湿器1は、略直方体形状の筐体10を備える。筐体10の説明に用いる方位表現については、筐体10の正面に向かって左側が左、右側が右、と定義する。他の構成要素の説明に用いる方位表現もこれにならうものとする。
【0021】
筐体10は、背面に吸気口11(図2及び図22参照)、天面に吹出口12が形成される。吸気口11は横長の小孔の集合からなる。吹出口12には、背面側の縁を支点として開閉する蓋13と、吹出気流の向きを変えるルーバー14(図26参照)が設けられている。
【0022】
筐体10の内部には、吸気口11から吹出口12に至る通風路15が形成され、その中に送風機16が配置されている。送風機16はクロスフローファンとモータの組み合わせからなり、吸気口11から吸い込まれて吹出口12から吹き出される気流を生成する。
【0023】
通風路15の中には、吸気口11と送風機16の間の位置に、加湿フィルタ17が配置される。加湿フィルタ17は無端ベルト状であり、筐体10内に上下可能に配置されたフィルタ支持体Hの内部に垂直に支持されている。本実施形態では、フィルタ支持体Hはフィルタユニットケース18とその中に保持されるフィルタユニット71により構成される。フィルタユニットケース18とフィルタユニット71の構造、加湿フィルタ17の駆動の仕組みやフィルタユニットケース18の上下の仕組みなどについては後で説明する。
【0024】
フィルタユニットケース18は電極ユニット19を保持する。電極ユニット19は一対の電極20を有する。電極20は下向きに突き出しており、その下端は上面が開口部となった電解水生成槽21の中の水に浸る。電極20と電解水生成槽21が電解水生成部22を構成する。
【0025】
加湿フィルタ17の下端も電解水生成槽21の中の水に浸る。電解水生成槽21の中の水が電解水であれば、加湿フィルタ17は電解水で湿潤状態にされる。ここで送風機16を運転すると、加湿フィルタ17を通過する空気流が電解水で加湿され、また、電解水により空気の除菌と脱臭がなされる。その空気が吹出口12から筐体10の外に吹き出される。以上が加湿器1の基本的な構成である。続いて加湿器1の各部の構造を説明する。
【0026】
筐体10の左右側面には運搬用の手掛部23が形成される。筐体10の天面には、前縁と吹出口12の間のスペースに操作/表示部24が配置される。操作/表示部24には各種スイッチの操作キー25が複数個横一列に並び、使用者は必要な操作キー25を押して指令を入力する。
【0027】
筐体10の内部には、下部に給水タンク収納空間26が形成される。給水タンク収納空間26の正面は出入口27となる。出入口27は上下可能なゲート28によって閉ざされる。ゲート28の中央下部には上下操作用の手掛部29が形成されている。
【0028】
給水タンク収納空間26には、トレイ30に保持された給水タンク31が入れられる。トレイ30は、手前側が給水タンク保持部32、奥に張り出した部分が前述の電解水生成槽21となっている。ところで、加湿フィルタ17の下端と電極20の下端が電解水生成槽21の中の水に浸っていたのでは、トレイ30を給水タンク収納空間26から引き出すことができない。この問題は次のようにして解決される。
【0029】
ゲート28とフィルタユニットケース18は連繋機構33(図12及び図18参照)で連結される。連繋機構33は筐体10内に左右対称的に設けられた一対のレバー34を含む。レバー34はく字形に曲がっており、一端は筐体10に連結される支点部35、他端はゲート28に連結される力点部36、中間の屈曲部はフィルタユニットケース18にコネクティングロッド37を介して連結される作用点部38となる。
【0030】
ゲート28は、給水タンク収納空間26の出入口27を閉ざす閉鎖位置(図2参照)と、出入口27を開放する開放位置(図3参照)の間を昇降する。ゲート28が閉鎖位置に引き下げられたときは、連繋機構33によってフィルタユニットケース18も下降せしめられ、加湿フィルタ17の下端と電極20の下端は図2に示す通り電解水生成槽21の中に入り込む。この状態では、トレイ30を給水タンク収納空間26から引き出すことができない。ゲート28が開放位置に引き上げられると、連繋機構33によってフィルタユニットケース18も上昇せしめられ、加湿フィルタ17の下端と電極20の下端は、図3に示す通り電解水生成槽21の外に出る。これにより、加湿フィルタ17の下端と電極20の下端が電解水生成槽21の縁に引っ掛からなくなり、図4に示すようにトレイ30を給水タンク収納空間26から引き出すことが可能になる。
【0031】
トレイ30は給水タンク収納空間26に収まる正面幅を有し、給水タンク31はトレイ30と同程度の正面幅を有する。給水タンク31は概略直方体形状であり、トレイ30の給水タンク保持部32に上方から挿入される。
【0032】
給水タンク保持部32の前縁に給水タンク31の前縁が合わさるというのが給水タンク31の正しい保持位置である。給水タンク31が常に正しい位置に保持されるようにするため、図5に示す通り、給水タンク保持部32の内面には、電解水生成槽21との境界にあたる箇所に、給水タンク31を電解水生成槽21と逆の方向に誘導するガイド部39が形成されている。ガイド部39は給水タンク31の背面側の角に当たる斜面を備える。
【0033】
給水タンク31を上方から下ろすと、その背面側の角がガイド部39に当たり、給水タンク31はトレイ30の正面側に寄せられる。給水タンク31から手を離すと、図6に示す通り、給水タンク31は給水タンク保持部32の中の所定位置に落ち着く。
【0034】
給水タンク31は上面にハンドル40を有し、下面には給水口41が設けられている。給水口41はねじキャップ42で密閉される。ねじキャップ42には、給水タンク31の内部の水を外部に漏出させる漏出バルブ43が設けられる。漏出バルブ43は、図示しないばねにより、常時閉鎖方向に附勢されている。
【0035】
トレイ30には、給水タンク31内の水を電解水生成槽21に流し出す給水路44が形成される。給水路44の端には、図5に示す通り、ねじキャップ42を受け入れる円形の
凹部45が形成されている。ねじキャップ42が凹部45に受け入れられた状態で、漏出バルブ43は給水路44に面することになる。
【0036】
漏出バルブ43は給水タンク31の内部から外側に突き出したシャフト46を押し込むことにより開放状態となるものであり、シャフト46を押すバルブ開放レバー47が給水路44に設けられている。バルブ開放レバー47はシーソー形式であって、一端は漏出バルブ43に対向する作用点部48となり、他端はトレイ30を給水タンク収納空間26に押し込んだときにフィルタユニットケース18の下に入り込む力点部49となる。作用点部48と力点部49の間には支点部50がある。バルブ開放レバー47は、支点部50の外面に突き出した支点軸(図示せず)を給水路44の内面に形成した軸受穴44a(図10参照)に係合させることにより、支点部50を中心として揺動できるように取り付けられている。
【0037】
バルブ開放レバー47は、支点部50と作用点部48の間に重心があり、放置すれば作用点部48が下がり、力点部49が上がって、図3及び図4に示す状態になる。この状態のトレイ30に給水タンク31を保持させてもバルブ開放レバー47は漏出バルブ43を押さず、水の漏出は生じない。この状態のトレイ30を、ゲート28を引き上げた給水タンク収納空間26に押し込み、ゲート28を引き下げると、降下したフィルタユニットケース18がバルブ開放レバー47の力点部49を押す。すると、図2に示すように作用点部48が持ち上がり、シャフト46を押し上げて、漏出バルブ43を開放状態にする。これにより給水タンク31の内部から水が流れ出し、その水は給水路44を伝って電解水生成槽21に流れ込むことになる。
【0038】
前述の通り、バルブ開放レバー47は支点部50の支点軸で支持されているが、支点軸だけではフィルタユニットケース18から受ける圧力を支えきれないおそれがある。そこで、支点部50を下から支える支持面51を給水路44に形成する。バルブ開放レバー47を上方から圧迫する力の大半は支持面51で受け止められるから、軸受穴44aから支点軸が外れる心配をしなくて済む。
【0039】
図10に示す通り、給水路44の途中には電解質補填物質保持ポケット52が形成されている。電解質補填物質保持ポケット52は、水に電解質を補填する物質、具体的には塩化ナトリウムの錠剤(塩タブレット)を入れておくのに用いられる。
【0040】
通常、水道水には塩素が含まれているが、その量は地域によりまちまちである。給水タンク31への給水毎に、電解質補填物質保持ポケット52に塩タブレットを1粒投入しておけば、水質の如何に関わらず、電解水を安定して生成することができる。また、凹所の形の電解質補填物質保持ポケット52を形成しておくことにより、それ以外の場所に塩タブレットが移動することがなく、電解水生成部22の塩分濃度が不均一になる、漏出バルブ43の開閉が阻害されるなどの不都合な事態を防止できる。
【0041】
給水路44の隣には電解水生成槽21に連通するフロート収納凹部53が形成される。フロート収納凹部53の中に設けられたフロート54が浮き沈みすることにより、電解水生成槽21の中の水位が検知される。
【0042】
フロート54は図11に示す形状のフレーム55を備える。フレーム55は合成樹脂の成型品であって、浮力を生じさせる発泡スチロール製ブロック56を抱きかかえている。
【0043】
フレーム55はそれぞれ両端で当該フレーム55につながった左右一対のビーム57を備え、ビーム57の中間部から外向きに突出する支点軸58をフロート収納凹部53の内面に形成した軸受穴53a(図10参照)に係合させることにより、支点軸58を中心としてシーソー様の動きをするように支持される。このように、両端でフレーム55につながったビーム57の中間部に支点軸58を設けるという構成により、軸受穴53aに支点軸58を係合させるときのビーム57のたわみ量を十分に確保することができる。
【0044】
フレーム55の一側面からブラケット59が延び出す。ブラケット59の先端には磁石60が取り付けられている。フロート54の重心と浮心は支点軸58と磁石60の間の位置に設定されている。このため、フロート収納凹部53の中に水が入っていない状態ではブラケット59の先端が下がり、フロート収納凹部53に電解水生成槽21から水が流れ込めばブラケット59の先端が持ち上がることになる。磁石60が生成する磁界の強さに応じた信号を出力する磁気センサを筐体10の内部に配置しておけば、磁気センサからの信号でフロート54の姿勢を知り、電解水生成槽21内の水位を判定することができる。磁気センサの配置場所は、例えば、トレイ30の外側、フロート収納凹部53の真下あたりに設定することができる。
【0045】
電解水生成槽21の中の水は、時間が経つと汚れてくる。汚れた水は捨て、電解水生成槽21の内部を清潔に保つ必要がある。そこで、トレイ30にトレイ運搬ハンドル61を設ける。トレイ運搬ハンドル61はコ字形の合成樹脂成型品であって、根元部をトレイ30の左側面と右側面に連結している。具体的には、トレイ30の左側面と右側面にそれぞれ支軸62を形成し、この支軸62にトレイ運搬ハンドル61の両端の穴63を係合させている。トレイ運搬ハンドル61はトレイ30に対し一定の角度範囲内で角度を変えることができる。
【0046】
トレイ運搬ハンドル61を握って引き上げると、その時給水タンク保持部32に給水タンク31が保持されていなければ、トレイ30をほぼ水平な状態で持ち上げることができる。これにより、中の水をこぼさないようにしてトレイ30を水の廃棄場所へ運ぶことができる。
【0047】
支軸62は給水タンク保持部32の外側に配置されている。トレイ運搬ハンドル61は、人の手で保持されていないときは、図5に示す姿勢、すなわち給水タンク保持部32の上方から退避して電解水生成槽21の上方に干渉する姿勢をとる。これにより、トレイ運搬ハンドル61に邪魔されることなく給水タンク31を給水タンク保持部32に抜き差しすることができる。
【0048】
一方で、トレイ運搬ハンドル61が電解水生成槽21の上方に干渉する位置にあると、トレイ30を給水タンク収納空間26に押し込んだとき、筐体10内のファンケースにトレイ運搬ハンドルが干渉してしまう。そこで、給水タンク収納空間26の内部にトレイ運搬ハンドル61の根元部が当たるガイド部64を形成する。トレイ30を給水タンク収納空間26に押し込んで行くと、トレイ運搬ハンドル61がガイド部64に当たって持ち上げられ、トレイ運搬ハンドル61は図2に示すように電解水生成槽21の上方から退避する。これにより、トレイ運搬ハンドル61は筐体10内のデッドスペースに収まる形になり、筐体10の小型化が可能になる。
【0049】
満水状態にした給水タンク31はかなりの重量があり、それを載置したトレイ30を給水タンク収納空間26に押し込むのは労力を要する作業となる。その労力を軽減するため、トレイ30には次のような工夫が施されている。
【0050】
トレイ30は滑りの良い合成樹脂で成型される。トレイ30の下面には、手前側に車輪、奥側に接地脚が配置される。車輪65は向きの変わらない固定車輪であって、左右に1個ずつ設けられる。接地脚は、給水タンク収納空間26の床面に接地する第1接地脚66と、筐体10を支持する面に接地する第2接地脚67を含む。第1接地脚66と第2接地脚67は2個ずつ設けられ、第1接地脚66が外側、第2接地脚67が内側になる形で横一列に配置されている。
【0051】
第1接地脚66と第2接地脚67は、一方が接地状態にあるときは他方は浮上状態となる。すなわち第2接地脚67は第1接地脚66よりも下方に突き出しており、トレイ30を床の上に置いたときは、第2接地脚67は接地するが第1接地脚66は接地せず、トレイ30は2個の車輪65と2個の第2接地脚67で4点支持されることになる。一方、給水タンク収納空間26の床面には、図8に示す通り、第2接地脚67の移動ラインとなる箇所に溝68が形成されている。このため、給水タンク収納空間26の中では、第1接地脚66は接地するが第2接地脚67は接地しない。すなわち筐体10の内部ではトレイ30は2個の車輪65と2個の第1接地脚66で4点支持されることになる。
【0052】
図2に示す通り、給水タンク収納空間26の床面は出入口27に近い箇所が手前側に下がる斜面となっている。このため、給水タンク収納空間26の前に置いたトレイ30の第1接地脚66を、容易に給水タンク収納空間26の床面に乗り上げさせることができる。その後トレイ30を背面側に押し、第1接地脚66を給水タンク収納空間26の床面の上で滑らせるとともに、車輪65も第1接地脚66を給水タンク収納空間26の床面の上に乗り上げさせる。これにより、トレイ30と給水タンク31は給水タンク収納空間26に収納される。
【0053】
なお、給水タンク収納空間26の床面には車輪65が位置すべき箇所に浅い窪み69が形成されており(図4及び図12参照)、トレイ30を給水タンク収納空間26に最後まで押し込むと、車輪65が窪み69にはまり込む。これにより、トレイ30が給水タンク収納空間26の中で動き回ることが阻止される。
【0054】
第2接地脚67の接地面の摩擦係数は、第1接地脚66の接地面の摩擦係数よりも高くされる。すなわち、第1接地脚66は素材である滑りやすい合成樹脂がそのまま接地面となっているが、第2接地脚67の接地面には摩擦係数増大処理が施されている。具体的には、ゴム製パッド70が第2接地脚67の接地面に貼り付けられている。
【0055】
トレイ30を給水タンク収納空間26から引き出すと、摩擦係数の高い第2接地脚67が接地し、トレイ30は簡単には位置ずれしなくなる。このため、給水タンク31をトレイ30から取り外したり、トレイ30に取り付けたりする作業を安定して行うことができる。
【0056】
ゴム製パッド70の貼り付けだけが摩擦係数増大処理の全てではない。四角錐状の突起の集合からなるローレット模様を接地面に形成して摩擦係数増大を図るといった手法も採用可能である。
【0057】
続いて、フィルタユニットケース18の周辺の構造を説明する。フィルタユニットケース18は前後方向に偏平で、内部にフィルタユニット71を保持している。フィルタユニット71には、それぞれ左右方向に延びる水平な原動軸72と従動軸73が上下に間隔を置いて配置されている。無端ベルト状の加湿フィルタ17は、垂直方向に延びる形で、原動軸72と従動軸73に巻き掛けられ、保持される。加湿フィルタ17は吸水性と通風性を兼ね備えている必要があり、合成繊維からなる糸を網状に編んだものなどが用いられる。加湿フィルタ17をスリップを生じることなく移動させるため、原動軸72と従動軸73には外面に軸線方向の凹凸を有する合成樹脂成型品のシャフトが用いられる。
【0058】
フィルタユニットケース18の背面側と正面側には、図13に示す通り(図13はフィルタユニットケース18を背面側から見た斜視図である)、加湿フィルタ17に空気を通すための通風口74、75が形成される。通風口74は上方の一部が横長の小孔の集合からなる。通風口75は全体が横長の小孔の集合からなる。
【0059】
フィルタユニットケース18の右上隅には、フィルタユニット71の内部空間から隔壁76で隔てられる形で、加湿フィルタ駆動モータ収納空間77が設けられている(図16参照)。加湿フィルタ駆動モータ収納空間77に加湿フィルタ駆動モータ78が収納され、図示しないビスでフィルタユニットケース18に固定されている。
【0060】
加湿フィルタ駆動モータ78は減速機構を内蔵しており、一方の端面から突き出した出力軸79を減速回転させる。出力軸79には歯車80が固定される。歯車80は、図13に示す通り、フィルタユニット71の内部空間に露出しており、原動軸72に固定された歯車81がこれにかみ合う。加湿フィルタ駆動モータ78を駆動して歯車80を回転させると、その回転が歯車81を介して原動軸72に伝達され、加湿フィルタ17は移動する。
【0061】
このように、無端ベルト状の加湿フィルタ17を保持するフィルタユニットケース18自体に、加湿フィルタ17を移動させる加湿フィルタ駆動モータ78が取り付けられているから、フィルタユニットケース18の上下動を無理なく実現できる。加湿フィルタ17を移動させる動力をフィルタユニットケース18の外から伝えるのでないから、外部との間の動力伝達インターフェースが不要であり、構造を簡略化できる。そして、フィルタユニットケース18の内部で歯車80、81をしっかりとかみ合わせ、かみ合い不良による異音が生じないようにすることができる。
【0062】
加湿フィルタ17は、古くなれば交換の必要が生じる。そのため、フィルタユニット71は、フィルタユニットケース18の上部開口から抜き差しできるようになっている。
【0063】
フィルタユニットケース18の上部開口からフィルタユニット71を取り出すとき、加湿フィルタ17を濡らした水が加湿フィルタ駆動モータ78にかかることがある。その水が加湿フィルタ駆動モータ78の内部に浸入すると、漏電の危険が生じる。そこで、加湿フィルタ駆動モータ78の、出力軸79が突き出す側の端面を水よけカバー82(図15参照)で覆う。水よけカバー82は合成樹脂の成型品であり、加湿フィルタ駆動モータ78をフィルタユニットケース18に取り付けるのと同じビスで固定される。水よけカバー82で覆われることにより、加湿フィルタ駆動モータ78には水がかからず、漏電の危険は回避される。
【0064】
フィルタユニットケース18は、電極ユニット19と加湿フィルタ駆動モータ78という、電力を消費する電気部品を保持しているので、筐体10の側からフィルタユニットケース18に対し、電力供給を行わねばならない。電力供給は図17に示す給電ケーブル83を通じて行われる。給電ケーブル83は次のように配線される。すなわち筐体10の内部の固定部材84に、フィルタユニットケース18の側が開放端となった扇形の固定ガイド85が形成され、給電ケーブル83はこの固定ガイド85の中を通ってフィルタユニットケース18に導かれている。この構成により、給電ケーブル83は固定ガイド85の中でのみ動き、給電ケーブル83の屈曲やねじれは最小限にとどめられる。
【0065】
フィルタユニット71の上部はフィルタユニットケース18の天面から露出する。フィルタユニットケース18の天面を覆う蓋86がフィルタユニット71を隠す。蓋86は正面側を支点として開閉するものであり、筐体10の外形の一部分を構成する。
【0066】
ゲート28を引き下げてフィルタユニットケース18を降下させるとき、フィルタユニットケース18が急激に降下すると、着地した時の衝撃が大きく、部品の破損の危険が生じる他、衝撃音も使用者を驚かす。そこで、フィルタユニットケース18が急激に降下することのないよう、連繋機構33の中に緩衝の仕組みを設ける。
【0067】
緩衝機構は、左右のレバー34にそれぞれ取り付けられたロータリーダンパー87(図18参照)によって実現される。ロータリーダンパー87の軸端にはピニオン88を固定し、このピニオン88を、筐体10の内部に固定された円弧状のラック89にかみ合わせる。ラック89の円弧の中心はレバー34の支点部35に一致しており、このためピニオン88はラック89に沿って移動することが可能である。
【0068】
ゲート28を引き上げるとレバー34が回動し、ピニオン88はラック89を下から上へと転がる。この時の回転では、ロータリーダンパー87は大きな回転抵抗を示さないので、ゲート28とフィルタユニットケース18を軽い力で引き上げることができる。
【0069】
引き上げたゲート28を引き下げると、レバー34は逆方向に回動し、ピニオン88はラック89を上から下へと転がることになるが、この時の回転に対してはロータリーダンパー87は大きな回転抵抗を示す。このため、ゲート28とフィルタユニットケース18の降下は緩慢なものとなり、降りきったところで大きな衝撃が生じるといったことはない。
【0070】
ゲート28とフィルタユニットケース18が上昇するとき、筐体10の右側のレバー34は図18において時計方向に回転し、筐体10の左側のレバー34は図19において反時計方向に回転する。ゲート28とフィルタユニットケース18が下降するときは、筐体10の右側のレバー34は図20において反時計方向に回転し、筐体10の左側のレバー34は図21において時計方向に回転する。ラック89が、円弧の例えば外周側にのみ歯形を有するものであったとすると、右側のレバー34に配置されたロータリーダンパー87はピニオン88が反時計方向に回転するときに大きな回転抵抗を示し、左側のレバー34に配置されたロータリーダンパー87はピニオン88が時計方向に回転するときに大きな回転抵抗を示すものでなければならない。つまり2種類のロータリーダンパー87が必要ということになり、コスト高になってしまう。この問題に対処するため、次のようにした。
【0071】
すなわち、ラック89は円弧の外周側と内周側の両方に歯形を有するものとし、左側のロータリーダンパー87は図19に示す通り外周側の歯形にピニオン88をかみ合わせ、右側のロータリーダンパー87は図18に示す通り内周側の歯形にピニオン88をかみ合わせた。これにより、左側のロータリーダンパー87でも右側のロータリーダンパー87でも、ゲート28とフィルタユニットケース18が降下するときの回転方向は時計回りとなり、この方向の回転にのみ大きな回転抵抗を示せば良いことになる。これは、ロータリーダンパー87として1種類の部品を用意しておけば良いということを意味し、コスト的に有利となる上、取り付け間違いも生じない。ラック89も左右で同じ部品を使用できるから、これまたコスト的に有利であり、取り付け間違いのおそれもない。
【0072】
筐体10の背面の吸気口11は吸気フィルタ90(図22参照)で覆われる。吸気フィルタ90は矩形の格子状枠にポリプロピレンネットを張ったものであり、吸気口11に吸い込まれる空気から繊維等の塵埃を捕集する。吸気フィルタ90は吸気口11の上下に3個ずつ形成された保持部91により保持される。
【0073】
吸気口11を吸気フィルタ90で覆った後、さらにその外側を矩形のガードグリル92で覆う。ガードグリル92は横長の小孔の集合からなる通気口93を有し、筐体10の外形の一部を構成する。
【0074】
図23に示す通り、ガードグリル92の下縁には3個の係合突起94が形成されており、筐体10に対面する側の面(以下これを「内面」と称する)の上部には左右一対の弾性フック95が形成されている。これに対応して筐体10には、図22に示す通り、係合突起94を係合させる係合凹部96と、弾性フック95を係合させるフック受け97が形成されている。係合突起94を係合凹部96に係合させ、弾性フック95をフック受け97に係合させれば、ガードグリル92は筐体10に取り付けられ、筐体10の外形の一部を構成することになる。
【0075】
ガードグリル92の内面には、右側の弾性フック95の下に、磁石98が取り付けられている。磁石98は筐体10に形成された凹部99(図22参照)の奥に配置された近接スイッチ(図示せず)に磁力を及ぼす。近接スイッチが磁石を検知して、ガードグリル92が取り付けられたと判定されれば、給電ケーブル83を通じてフィルタユニットケース18に電力を供給することが可能になる。ガードグリル92が取り外されると近接スイッチは磁石98を検知しなくなり、フィルタユニットケース18に電力を供給することができなくなる。
【0076】
電極ユニット19は図25に示す構造を備える。19aは合成樹脂の成型品からなるベースで、その下端に板状の電極20が2枚、間隔を置いて取り付けられている。ベース19aの上部にはつまみ部19bが形成されている。電極20は消耗品なので、定期的に電極ユニット19を交換しなければならない。使用者自身が電極ユニット19を容易に交換できるようにするため、加湿器1は次のように構成されている。
【0077】
吸気口11の中に、矩形の凹部100が形成される(図24参照)。凹部100は、電極ユニット19をある程度のゆとりをもって受け入れられるだけの面積を有する。凹部100の底部は開口部101となっており、フィルタユニットケース18には、開口部101の下に張り出す形の電極ユニット取付部102が形成されている(図2参照)。電極ユニット取付部102は、上方から差し込まれた電極ユニット19を適宜の弾性係合手段で保持する。また、図示はしないが、電極ユニット取付部102と電極ユニット19の間にはプラグとソケットのような電力供給手段が設けられている。
【0078】
電極ユニット取付部102に取り付けられた電極ユニット19は、図2のようにフィルタユニットケース18が降下しているときは、それに手を届かせることができない。図3に示すようにフィルタユニットケース18が上昇すると、電極ユニット19のつまみ部19bが開口部101から頭を出す。すなわち、吸気口11内のアクセス可能位置に電極ユニット19のつまみ部19bが姿を現すことになる。ガードグリル92と吸気フィルタ90を取り外せば、つまみ部19bに指をかけて図24に示す位置まで電極ユニット19を引き上げ、新しい電極ユニット19に交換することができる。
【0079】
前述の通り、ガードグリル92を取り外せばその時点で電極ユニット19への通電が断たれる。このため、特にスイッチを操作して通電を断つまでもなく、電極ユニット19を安全に交換することができる。
【0080】
吹出口12に設けたルーバー14は、ルーバー駆動モータ103によってスイングせしめられ、自動的に吹出方向を変える。加湿フィルタ駆動モータ78と同じく、ルーバー駆動モータ103も減速機構を内蔵していて、一方の端面から突き出した出力軸104を減速回転させる。ルーバー14は出力軸104に連結されてスイングする。
【0081】
出力軸104には、回転方向に若干の遊びがある。そのため、ルーバー14のスイング動作中にがたつきが発生する。この問題を解決するため、次のようにした。すなわち出力軸104の外側にオーリング105を嵌合し、このオーリング105を保持具106で保持させた。保持具106は、ルーバー駆動モータ103を筐体10に取り付けるのと同じビスで筐体10に固定される。
【0082】
上記のように構成したことにより、出力軸104にはオーリング105を通じて適度の摩擦が与えられ、ルーバー14がスイング動作中にがたつかなくなる。オーリング105は一般的な部品であって入手しやすくコストも安い上、耐久性に優れているので交換ということをあまり気に掛ける必要がない。
【0083】
加湿器1の制御システムは図28に示す構成となっている。加湿器1の制御を司る制御部110はマイクロコンピュータを中核として構成され、様々な構成要素から出力信号を受け取り、また様々な構成要素に対し制御信号を出力する。
【0084】
制御部110に信号を出力する構成要素には、操作/表示部24の他、フロート54の動きを検知する磁気センサ111と、ガードグリル92に取り付けた磁石98を検知する近接スイッチ112、外部の温度を検知する温度センサ113、及び外部の湿度を検知する湿度センサ114が含まれる。温度センサ113と湿度センサ114は通風路15の一角に設けられている。
【0085】
制御部110から制御信号を受けて動作を行う構成要素には、送風機16、電極ユニット19、加湿フィルタ駆動モータ78、ルーバー駆動モータ103の他、操作/表示部24の中に設けられる表示部115が含まれる。表示部115は7セグメントディスプレイにより構成される。
【0086】
続いて加湿器1の動作を説明する。給水タンク31の中に水があるかぎり、電解水生成槽21の内部の水位は一定に保たれているが、給水タンク31が空になると、電解水生成槽21の内部の水位が下がってくる。水位が下がるにつれフロート54の姿勢が変って行き、ある時点で磁石60の磁界が磁気センサ111を動作させるに至る。磁気センサ111からの出力信号を受け取った制御部110は、表示部114に、給水タンク31への水補給が必要になった旨の表示を出す。送風機16、電極ユニット19、加湿フィルタ駆動モータ78、ルーバー駆動モータ103などが稼働中であれば、制御部110はそれらの動きを止める。
【0087】
水補給を求める表示を見た使用者は、ゲート28を上げてトレイ30を引き出す。そしてトレイ30から給水タンク31を引き抜き、それに水を補給して、トレイ30に再セットする。電解質補填物質保持ポケット52の中の塩タブレットが溶けてなくなっていれば、新しい塩タブレットを入れておく。
【0088】
トレイ30を給水タンク収納空間26に入れ、ゲート28を下ろすと、フィルタユニットケース18が降下し、給水タンク31から電解水生成槽21への給水が開始される。この水は加湿フィルタ17の下端と電極20の下端を浸す。操作/表示部24の中の所定の操作キー25を押すと、電極20に所定の電圧(例えば10V)が印加され、電極20が浸っている水が電気分解されて電解水となる。
【0089】
電圧の印加は、1対の電極20が断続的に(例えば1時間毎に3〜10分程度)交互に逆極性となるように行われる。水中に塩素が含まれているとき、次のような電気化学反応が生じる。
<陽極側>
4HO−4e→4H+O↑+2H
2Cl→Cl+2e
O+Cl←→HClO+H+Cl
<陰極側>
4HO+4e→2H↑+4OH
<電極間>
+OH→H
上記反応により、除菌作用と脱臭作用のある次亜塩素酸(HClO)や活性酸素を含む電解水が生まれる。
【0090】
蓋13を開け、送風機16、加湿フィルタ駆動モータ78、及びルーバー駆動モータ103を運転すると、加湿フィルタ17が電解水で濡らされては引き上げられる。吸気口11から吸い込まれた室内空気は加湿フィルタ17を濡らした電解水で加湿され、また除菌及び脱臭がなされ、吹出口12から吹き出される。このようにして、室内空気に対し、加湿・除菌・脱臭が同時に行われる。
【0091】
本発明の実施形態として、空気清浄機として設計されていない加湿器1を提示したが、空気清浄を本旨とする空気清浄機で本発明を実施することに何の不都合もない。
【0092】
また上記実施形態では、フィルタユニット71とそれを保持するフィルタユニットケース18をもってフィルタ支持体Hを構成したが、フィルタユニット71とフィルタユニットケース18の機能を兼ね備えた1個の枠体によりフィルタ支持体Hを構成することも可能である。
【0093】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は加湿器に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 加湿器
10 筐体
11 吸気口
12 吹出口
14 ルーバー
16 送風機
H フィルタ支持体
17 加湿フィルタ
18 フィルタユニットケース
19 電極ユニット
19b つまみ部
20 電極
21 電解水生成槽
22 電解水生成部
26 給水タンク収納空間
27 出入口
28 ゲート
30 トレイ
31 給水タンク
33 連繋機構
34 レバー
35 支点部
36 力点部
37 コネクティングロッド
38 作用点部
71 フィルタユニット
72 原動軸
73 従動軸
77 加湿フィルタ駆動モータ収納空間
78 加湿フィルタ駆動モータ
79 出力軸
80 歯車
81 歯車
82 水よけカバー
83 給電ケーブル
85 固定ガイド
87 ロータリーダンパー
88 ピニオン
89 ラック
90 吸気フィルタ
92 ガードグリル
103 ルーバー駆動モータ
104 出力軸
105 オーリング
106 保持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、電解水生成部と、前記電解水生成部で生成された電解水で湿潤状態にされる加湿フィルタと、前記加湿フィルタを通過する空気流を生成する送風機を配置し、電解水で加湿された空気を前記筐体外に吹き出す加湿器において、
前記筐体の下部に給水タンク収納空間を形成し、前記給水タンク収納空間の正面は上下可能なゲートによって閉ざされる出入口とし、前記出入口から前記給水タンク収納空間に収納されるトレイを設け、前記トレイは、手前側に給水タンク保持部、奥側に前記電解水生成部の電解水生成槽を有し、前記給水タンク保持部に保持された給水タンクから流れ出した水を前記電解水生成槽で受けるものであり、
前記筐体内には、無端ベルト状の前記加湿フィルタを有するフィルタ支持体を上下可能に配置し、前記フィルタ支持体は、電解水生成用の電極を保持すると共に、前記ゲートに連繋機構で連結されて、前記ゲートが閉鎖位置に引き下げられたときは下降して前記加湿フィルタと前記電極のそれぞれ下端を前記電解水生成槽内の水に浸し、前記ゲートが開放位置に引き上げられたときは上昇して前記加湿フィルタと前記電極のそれぞれ下端を前記電解水生成槽内の水から引き上げるものであり、
前記加湿フィルタを移動させる加湿フィルタ駆動モータが、前記フィルタ支持体に取り付けられていることを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記フィルタ支持体はフィルタユニット及びそれを保持するフィルタユニットケースにより構成され、前記加湿フィルタは前記フィルタユニットに垂直方向に延びる形で保持され、前記フィルタユニットは、前記加湿フィルタが巻き掛けられる原動軸と従動軸を有し、前記原動軸は、前記フィルタユニットケースに取り付けられた前記加湿フィルタ駆動モータに歯車で連結されていることを特徴とする請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記フィルタ支持体は枠体により構成され、前記加湿フィルタは、前記枠体に上下に間隔を置いて配置された原動軸と従動軸に巻き掛けられ、垂直方向に延びており、前記原動軸は前記加湿フィルタ駆動モータに歯車で連結されていることを特徴とする請求項1に記載の加湿器。
【請求項4】
前記フィルタユニットケースは、前記加湿フィルタを含むフィルタユニットの内部空間から隔てられた加湿フィルタ駆動モータ収納空間を備え、前記加湿フィルタ駆動モータ収納空間に収納された前記加湿フィルタ駆動モータは、出力軸に、前記加湿フィルタ収納空間に露出して前記原動軸側の歯車にかみ合う歯車を固定しているとともに、前記出力軸が突き出す側の端面が、水よけカバーで覆われていることを特徴とする請求項2に記載の加湿器。
【請求項5】
前記フィルタユニットケースと前記筐体の間には、前記フィルタユニットケースに支持されている電気部品に電力供給を行うための給電ケーブルが設けられ、前記給電ケーブルは、前記フィルタユニットケースの側が開放端となった扇状の固定ガイドを通って配線されていることを特徴とする請求項2に記載の加湿器。
【請求項6】
前記連繋機構は左右1対のレバーを含み、前記左右1対のレバーは、それぞれ、前記筐体に連結される支点部と、前記ゲートに連結される力点部と、前記フィルタユニットケースにコネクティングロッドを介して連結される作用点部を備えるものであり、
前記左右1対のレバーにはそれぞれロータリーダンパーが取り付けられ、前記ロータリーダンパーは、軸端に固定されたピニオンを筐体に固定された円弧状のラックにかみ合わせることを特徴とする請求項2に記載の加湿器。
【請求項7】
前記ラックは、円弧の外周側と内周側にそれぞれ歯形を有する部品であり、左右の前記ロータリーダンパーの一方は前記ラックの外周側の歯形に前記ピニオンをかみ合わせ、他方は前記ラックの内周側の歯形に前記ピニオンをかみ合わせることを特徴とする請求項6に記載の加湿器。
【請求項8】
前記筐体の背面には前記加湿フィルタを通過させる空気を吸い込む吸気口が形成され、前記吸気口には吸気フィルタとそれを外から覆うガードグリルが設けられることを特徴とする請求項2に記載の加湿器。
【請求項9】
前記電極は着脱可能な電極ユニットの形で前記フィルタユニットケースに取り付けられており、前記フィルタユニットケースの上昇時、前記吸気口内のアクセス可能位置に前記電極ユニットのつまみ部が出現することを特徴とする請求項8に記載の加湿器。
【請求項10】
前記ガードグリルが取り外されたとき、前記電極ユニットへの通電が断たれることを特徴とする請求項9に記載の加湿器。
【請求項11】
前記筐体の天面に、電解水で加湿された空気を吹き出す吹出口が形成され、前記吹出口にはルーバーが配置され、前記ルーバーはルーバー駆動モータの出力軸に連結されてスイングするものであり、前記ルーバー駆動モータの出力軸には、前記筐体に固定された保持具に保持されたオーリングが嵌合することを特徴とする請求項2に記載の加湿器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2012−52699(P2012−52699A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193655(P2010−193655)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】