説明

加湿装置および加湿機能付空気清浄装置

【課題】乾燥した室内空気を加湿する加湿装置において、高い加湿性能が得られる加湿装置を提供することを目的とする。また、加湿装置の低消費電力化を目的とする。
【解決手段】空気の吸込口21と吹出口11を有する本体12と、この吸込口21と吹出口11を連通する風路13内に、加湿フィルタ14と、加湿フィルタ14を配置するためのトレイ15と、加湿フィルタ14に水を供給するためのタンク16と、空気を送るファン・モータ17とを備えた加湿装置であって、加湿フィルタ14に、複数のフィラメントを束ねた糸で構成される吸水経路を付与し、前記吸水経路を直線経路よりも長くすることにより、加湿フィルタ14の保水量を多く保つことができ、加湿フィルタ14からの放湿速度が速くなっても水供給が不足することがなく、高い加湿性能を得ることができる。これにより、加湿装置の低消費電力化を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥した室内空気を加湿する加湿装置および加湿機能付空気清浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加湿装置には、繊維径3〜15μmの繊維を20〜80質量%含有する吸水性シートを成形して加湿フィルタとするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その加湿フィルタについて図7を参照しながら説明する。
【0004】
図7(a)に示すように、加湿フィルタ101は吸水性シートとしての不織布102からなり、コルゲート構造を構成単位とし、水が充填された貯水部103から自然吸水する。前記不織布102が、繊維径3〜15μmの繊維を20〜80質量%含有し、少なくとも一部が熱溶着していることにより、加湿性能に優れ、耐久性を有する加湿フィルタ101を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−156006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の加湿装置においては、加湿フィルタは不織布を吸水性シートとしたコルゲート構造体であり、図7(b)に示すように、垂直方向に複数の直線の吸水経路が存在するために、複数の直線の吸水経路間を結ぶ経路に吸水されにくく、加湿フィルタが局所的にしか機能しないこととなり、たとえば、多量の加湿を行ったときに、吸水量が追いつかず、より高い加湿性能を得ることが求められていた。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、加湿フィルタ内に垂直方向の直線の吸水経路を有しないことにより、高い加湿性能が得られる加湿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために、本発明は、空気の吸込口と吹出口を有する本体と、この吸込口と吹出口を連通する風路内に、空気を加湿するための加湿フィルタと、前記加湿フィルタを配置するためのトレイと、前記加湿フィルタに水を供給するための水供給手段と、前記加湿フィルタに空気を送る送風手段とを備えた加湿装置であって、前記加湿フィルタに、複数のフィラメントを束ねた糸で構成される吸水経路を付与し、垂直方向において、前記吸水経路が直線経路よりも長いことを特徴としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空気の吸込口と吹出口を有する本体と、この吸込口と吹出口を連通する風路内に、空気を加湿するための加湿フィルタと、前記加湿フィルタを配置するためのトレイと、前記加湿フィルタに水を供給するための水供給手段と、前記加湿フィルタに空気を送る送風手段とを備えた加湿装置であって、前記加湿フィルタに、複数のフィラメントを束ねた糸で構成される吸水経路を付与し、垂直方向において、前記吸水経路が直線経路よりも長いことにより、加湿フィルタにおける水供給と放湿がバランスよく行われ、高い加湿効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1の加湿装置を示す概略断面図
【図2】(a)同加湿装置における開口が略円形を構成する編地を示す概略図、(b)同開口が六角形を構成する編地を示す概略図
【図3】(a)同加湿装置における編地の円形の開口を示す概略図、(b)同ひし形の開口を示す概略図、(c)同長方形の開口を示す概略図、(d)同三角形の開口を示す概略図、(e)同六角形の開口を示す概略図、(f)同平行六辺形の開口を示す概略図
【図4】本発明の実施の形態2の加湿装置における編地を示す概略斜視図
【図5】本発明の実施の形態3の加湿機能付空気清浄装置を示す概略断面図
【図6】本実施例の吸水経路と吸水速度・放湿速度との関係を示すグラフ
【図7】(a)従来の加湿装置を示す概略斜視図、(b)同加湿フィルタの詳細を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の請求項1記載の加湿装置は、空気の吸込口と吹出口を有する本体と、この吸込口と吹出口を連通する風路内に、空気を加湿するための加湿フィルタと、前記加湿フィルタを配置するためのトレイと、前記加湿フィルタに水を供給するための水供給手段と、前記加湿フィルタに空気を送る送風手段とを備えた加湿装置であって、前記加湿フィルタに、複数のフィラメントを束ねた糸で構成される吸水経路を付与し、垂直方向において、前記吸水経路が直線経路よりも長いことを特徴とする。これにより、加湿フィルタの保水量を多く保つことができるため、加湿フィルタからの放湿速度が速くなっても水供給が不足することがなく、高い加湿性能を得ることができる。
【0012】
また、加湿フィルタに付与した吸水経路が、垂直方向において、直線経路に対し105%以上150%以下の距離であることを特徴とする。これにより、加湿フィルタの保水量を多く保つことができるため、加湿フィルタからの放湿速度が速くなっても水供給が不足することがなく、高い加湿性能を得ることができる。
【0013】
また、加湿フィルタが複数のフィラメントを束ねた糸からなる編地で構成されるものであっても良い。これにより、糸を1本のフィラメントで構成した場合に比べ、糸内に多数の間隔が生じるために、毛細管現象が起こりやすくなり、加湿フィルタの保水量を多く保つことができる。これにより、加湿フィルタからの放湿速度が速くなっても水供給が不足することがなく、高い加湿性能を得ることができる。また、使用中に一部のフィラメントが断絶しても、機能や形状を大きく劣化させることなく長期的に加湿性能を維持することができる。
【0014】
また、編地が複数の開口を有し、その開口径が3mm以上であっても良い。これにより、供給された水により開口が塞がれることを防ぎ、加湿フィルタに多量の空気を送り加湿を加速させる場合においても、圧力損失を低く保つことができるために、加湿装置の低消費電力化を実現することができる。
【0015】
また、加湿フィルタが編地を積層してなるものであっても良い。これにより、加湿フィルタの保水量を多く保つことができるため、加湿フィルタからの放湿速度が速くなっても水供給が不足することがなく、高い加湿性能を得ることができる。
【0016】
また、積層した複数の編地間が糸によって連結されているものであっても良い。これにより、編地の吸った水が編地間の糸へも伝えられ、加湿フィルタに空気を送った際の、空気と水との接触確率が増大するために、高い加湿性能を得ることができる。また、編地を立体的に保つことができるために、形状の安定性を得ることができる。
【0017】
また、積層した複数の編地において、隣り合う2枚の編地が2mm以上の間隔を保持しながら積層されていても良い。これにより、編地の吸った水が編地間の糸へも伝えられ、加湿フィルタに空気を送った際の、空気と水との接触確率が増大するために、高い加湿性能を得ることができる。また、編地を立体的に保つことができるために、形状の安定性を得ることもできる。
【0018】
また、加湿フィルタの一部が浸水するものであっても良い。これにより、動力を用いることなく、浸水部から加湿フィルタ全体へと自然に水を供給することができるために、加湿装置の低消費電力化を実現することができる。動力を用いて加湿フィルタを稼動させた場合には、より効率的に水を供給することができる。
【0019】
また、加湿フィルタが抗菌性および/または抗カビ性を有するものであっても良い。これにより、加湿フィルタにおける雑菌やカビなどの繁殖を防止することができ、長期間にわたって清潔性を維持することができる。
【0020】
請求項11記載の加湿機能付空気清浄装置は、空気の吸込口と吹出口を有する本体と、この吸込口と吹出口を連通する風路内に、空気を清浄化するための空気浄化フィルタと、空気を加湿するための加湿フィルタと、前記加湿フィルタを配置するためのトレイと、前記加湿フィルタに水を供給するための水供給手段と、前記空気浄化フィルタおよび加湿フィルタに空気を送る送風手段とを備えた加湿機能付空気清浄装置であって、前記加湿フィルタに、複数のフィラメントを束ねた糸で構成される吸水経路を付与したことを特徴とする。これにより、空気の浄化のみならず、空気への湿度付与も同時に行うことができ、より高い空気質を得ることができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1に示す加湿装置は、空気の吸込口(図示しない)と吹出口11を有する本体12と、この吸込口と吹出口11を連通する風路13内に、空気を加湿するための加湿フィルタ14と、加湿フィルタ14を配置するためのトレイ15と、加湿フィルタ14に水を供給するための水供給手段としてのタンク16と、加湿フィルタ14に空気を送る送風手段としてのファン・モータ17とを備えたものである。加湿フィルタ14の下部が、トレイ15内の水に浸かっている。
【0023】
図2に示すように、加湿フィルタ14は複数のフィラメントを束ねた糸からなる編地18で構成される。前記編地18において、複数のフィラメントを束ねた糸からなる部分が吸水経路を担っている。吸水経路は、垂直方向において、直線経路に対し105%以上150%以下の距離である。ここでいう吸水経路とは、編地を垂直に配置したときの、下端から上端に向かう最短経路のことを表す。編地18は、(a)や(b)のように開口19を有するものもある。
【0024】
上記構成により、吸水経路が直線経路より長く、吸水が吸水経路のほとんど全てを利用して行われ、加湿フィルタ14の保水量を多く保つことができるため、加湿フィルタ14からの放湿速度が速くなっても水供給が不足することがなく、高い加湿性能を得ることができる。
【0025】
さらに加湿フィルタ14の吸水が無動力で行えることにより、加湿装置の低消費電力化を実現することができる。
【0026】
また、加湿フィルタが、複数のフィラメントを束ねた糸からなる編地で構成されるものであれば、糸を1本のフィラメントで構成した場合に比べ、糸内に多数の間隔が生じるために、毛細管現象が起こりやすくなり、加湿フィルタ14の保水量を多く保つことができるため、加湿フィルタ14からの放湿速度が速くなっても水供給が不足することがなく、高い加湿性能を得ることができる。複数のフィラメントを束ねる方法としては、いわゆるマルチフィラメントを用いたり、短繊維を撚り合わせたり、モノフィラメントを複数本あわせて使用したりすることができる。より速く、より多くの水を供給するためには、多数の細いフィラメントを束ねるのが良い。これにより、表面積を多く確保し、より毛細管現象による吸水の効果を高めることができる。
【0027】
編地18を構成する糸としては、たとえば、ポリエステル(接触角67度)、ナイロン(接触角73度)、アクリル(接触角80度)、ガラス繊維(接触角10度)などを用いることができる。その材質表面において、10度以上90度未満の水の接触角を呈するものは、いわゆる親水性表面である。また、素材の表面にシリケート材料などの親水化剤を塗布あるいは結合させることにより、接触角を10度以上90度未満とすることもできる。これにより、糸表面の水なじみ性が向上し、毛細管現象が起こりやすくなり、加湿フィルタ14の保水量を多く保つことができるため、加湿フィルタ14からの放湿速度が速くなっても水供給が不足することがなく、高い加湿性能を得ることができる。また、汚れが付着した際には、水なじみ性が良いために汚れの除去が容易になる。
【0028】
また、編地が複数の開口を有し、その開口径が3mm以上であっても良い。図3には、編地18の有する開口19の例として(a)円形(b)ひし形(c)長方形(d)三角形(e)六角形(f)平行六辺形を示す。開口19が円形であれば、開口径Rはその直径で表すことができる。開口19が多角形の場合、内接円の描けるものであれば、その内接円の直径を開口径Rと考えるのが良い。開口19が内接円の描けない多角形、たとえば長方形や平行六変形の場合は、内接する楕円の短径を開口径Rと考えるのが良い。編地が有する開口の開口径Rが3mm以上であれば、供給された水により開口19が塞がれることを防ぎ、加湿フィルタ14に多量の空気を送り加湿を加速させる場合においても、圧力損失を低く保つことができるために、加湿装置の低消費電力化を実現することができる。また、汚れが付着した場合にも、開口19が塞がれにくいことにより通風が阻害されず、長期間にわたって加湿性能を維持することができる。
【0029】
加湿フィルタ14が編地から構成されない場合においても、複数のフィラメントを束ねた、たとえば縄状の糸を加湿フィルタ14の周囲に配置して吸水経路を構成すれば、同様の効果を得ることができる。
【0030】
加湿フィルタ14の下部が、トレイ15内の水に浸かっていれば、動力を用いることなく、浸水部から加湿フィルタ14全体へと自然に水を供給することができるために、加湿装置の低消費電力化を実現することができる。このとき、水に含まれる汚れが、水とともに加湿フィルタ14に吸上げられることがあるが、その場合には、編地18を洗浄可能なものにすることによって、付着した汚れを除去することができる。
【0031】
さらに、編地18が抗菌性および/または抗カビ性を有するものであれば、加湿フィルタ14における雑菌やカビなどの繁殖を防止することができ、長期間にわたって清潔性を維持することができる。加湿フィルタ14へ抗菌性を付与する方法としては、たとえば、繊維製造時に抗菌剤を練りこんだり、繊維、糸、または加湿フィルタ14を抗菌剤の水溶液または水分散液に浸漬したりするなどの手段がある。抗菌剤としては、銀・銅・亜鉛などの金属イオンを含むもの、第四級アンモニウム塩類、イミダゾール化合物類、クレゾール、ソルビン酸等の薬剤を含むもの、リゾチーム、セルラーゼ、プロテアーゼなどの酵素を含むもの、カテキン類、竹抽出物、ヒノキ抽出物などの天然成分抽出物を含むものなどがある。また、防カビ効果の高い、有機窒素化合物、硫黄系化合物、有機酸エステル類、ベンザゾール化合物などを含んでも良い。加湿フィルタ14が水中で使用される特性上、水に対する溶解度の低い材料を用いるのがより良い。
【0032】
(実施の形態2)
図4に示すように、加湿フィルタ14は二枚の編地18を積層してなる。編地18は開口19を有する。これにより、加湿フィルタ14における吸水経路を増大することができ、加湿フィルタ14の保水量を多く保つことができるため、加湿フィルタ14からの放湿速度が速くなっても水供給が不足することがなく、高い加湿性能を得ることができる。積層した複数の編地間隔は図中Aで表す。
【0033】
また、積層した複数の編地間が連結糸20によって連結されていれば、編地の吸った水が編地間の連結糸20へも伝えられ、加湿フィルタ14に空気を送った際の、空気と水との接触確率が増大するために、高い加湿性能を得ることができる。編地の吸った水を編地間へも伝わるようにするには、連結糸20に毛細管現象を付与するのが良い。たとえば、連結糸20の材質表面における水の接触角を10度以上90度未満としたり、複数のフィラメントを束ねた糸を用いたりすることができる。また、編地が連結され、編地を立体的に保つことができるために、形状の安定性を得ることができる。
【0034】
編地間を糸によって連結する方法としては、編地18における任意のポイントを糸によってつないでも良いし、編地18を作成する際にダブルラッセル編機などを用いて、初めから二枚の編地18が連結された形状となる立体編物を得るなどしても良い。
【0035】
積層した複数の編地18において、隣り合う2枚の編地18が2mm以上の間隔を保持しながら積層されていれば、編地18の吸った水が連結糸20へも伝えられ、加湿フィルタ14に空気を送った際の、空気と水との接触確率が増大するために、高い加湿性能を得ることができる。また、編地18を立体的に保つことができるために、形状の安定性を得ることもできる。積層した複数の編地18は、必ずしも等間隔である必要はなく、たとえば、4枚の編地18が積層される場合、間隔は3箇所あるが、それぞれ2mm/4mm/8mmというように異なっていても良い。
【0036】
また、加湿フィルタ14は洗浄可能であっても良い。これにより、加湿フィルタ14に付着した汚れを除去することができるために、長期間にわたって高い加湿性能と清潔性を維持することができる。積層した複数の編地18が糸によって連結されていれば、洗浄作業の際にも加湿フィルタ14の形状を安定に維持しやすく、長期間にわたって清潔に使用することができる。
【0037】
(実施の形態3)
図5に示す加湿機能付空気清浄装置は、空気の吸込口21と吹出口11を有する本体12と、この吸込口21と吹出口11を連通する風路13内に、空気を清浄化するための空気浄化フィルタとしての集塵フィルタ22と脱臭フィルタ23と、空気を加湿するための加湿フィルタ14と、前記加湿フィルタ14を配置するためのトレイ15と、前記加湿フィルタ14に水を供給するための水供給手段としてのタンク(図示しない)と、前記集塵フィルタ22、脱臭フィルタ23および加湿フィルタ14に空気を送る送風手段としてのファン・モータ17とを備えたものである。
【0038】
加湿フィルタ14には、複数のフィラメントを束ねた糸で構成される吸水経路を付与している。吸水経路は、垂直方向において、直線経路に対し105%以上150%以下の距離である。
【0039】
集塵フィルタ22および脱臭フィルタ23の設置位置は、空気清浄の効果が得られればとくに限定されるものではないが、図5のように配置すれば、加湿フィルタ14を通過する空気を事前に浄化しておくことができるため、加湿フィルタ14やファン・モータ17などに汚れが付着することを防ぐことができる。集塵フィルタ22としては、不織布、HEPA、静電ろ過フィルタ、電気集塵フィルタなどを用いることができる。脱臭フィルタ23としては、粒状活性炭やゼオライトなどの吸着剤を基材に貼り付けたり、通気性を有する袋に詰めたり、シート状に加工し成形したものなどを用いることができる。
【実施例】
【0040】
各種編地を入手し、25cm×10cmにカットしたものを試験片とした。このとき、長手方向(25cm)を水平方向、短手方向(10cm)を垂直方向となるようにして、そのときの吸水経路長が直線経路に対し100%から147%であることを確認した。
【0041】
まず、吸水速度を測定した。吸水速度(ml/min)は、JISL1907に定義される「バイレック法」を用いて、浸水後1分間の単位布片あたりの吸水量(g)を測定することによって算出した。
【0042】
次に、図1に示す加湿装置を用いて、空気を通過させたときの放湿速度を測定した。一定のエネルギー入力下では、圧力損失の高い編地において送風量の低下が起こるため、放湿速度は低下する。今回は、20℃30%RHの乾燥空気を、0.6m/secで通風したときの水分気化量を放湿速度(ml/min)として表した。
【0043】
図6に示すグラフは、横軸を吸水経路長、縦第一軸を吸水速度(ml/min)、縦第二軸を放湿速度(ml/min)として各種編地の特性をプロットしたものである。
【0044】
吸水経路長が105%より小さい領域と150%より大きい領域において、吸水速度が放湿速度を上回った。105%より小さい領域では、吸水速度が非常に高く、放湿速度が追いついていないと考えられる。150%より大きい領域では、吸水速度は低いが、放湿速度も低く、ほとんどの空気が水分と接触せずに編地を通過していると考えられる。
【0045】
理論的には、吸水速度と放湿速度が一致する点において、もっとも高い加湿性能が得られるが、本実施例においては、吸水速度は無風時の測定値、放湿速度は通風時の値であることから、これらの一致する点が必ずしも最高性能であるとは言えない。しかし、たとえば、吸水経路長105%以上150%以下の領域においては、吸水速度が低いが、これは、編地を構成する糸の材質表面における水の接触角を小さくしたり、編地を構成する糸の体積を維持しながら表面積の大きいものに変更したりすることによって、圧力損失を低く保ったまま向上することができるものであるために、より高い加湿性能が得られる領域であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明にかかる加湿装置は、加湿フィルタにおける水供給と放湿がバランスよく行われるために、高い加湿効率を得ることを可能とするものであるので、家庭用・業務用加湿装置、加湿機能付空気清浄装置、空気調和装置、冷風扇等として有用である。
【符号の説明】
【0047】
11 吹出口
12 本体
13 風路
14 加湿フィルタ
15 トレイ
16 タンク
17 ファン・モータ
18 編地
19 開口
20 連結糸
21 吸込口
22 集塵フィルタ
23 脱臭フィルタ
101 加湿フィルタ
102 不織布
103 貯水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の吸込口と吹出口を有する本体と、この吸込口と吹出口を連通する風路内に、空気を加湿するための加湿フィルタと、前記加湿フィルタを配置するためのトレイと、前記加湿フィルタに水を供給するための水供給手段と、前記加湿フィルタに空気を送る送風手段とを備えた加湿装置であって、前記加湿フィルタに、複数のフィラメントを束ねた糸で構成される吸水経路を付与し、垂直方向において、前記吸水経路が直線経路よりも長いことを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
加湿フィルタに付与した吸水経路が、垂直方向において、直線経路に対し105%以上150%以下の距離であることを特徴とする請求項1記載の加湿装置。
【請求項3】
加湿フィルタが複数のフィラメントを束ねた糸からなる編地で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の加湿装置。
【請求項4】
編地が複数の開口を有し、その開口径が3mm以上であることを特徴とする請求項3に記載の加湿装置。
【請求項5】
加湿フィルタが編地を積層してなることを特徴とする請求項3または4に記載の加湿装置。
【請求項6】
積層した複数の編地間が糸によって連結されていることを特徴とする請求項5記載の加湿装置。
【請求項7】
積層した複数の編地において、隣り合う2枚の編地が2mm以上の間隔を保持しながら積層されていることを特徴とする請求項5または6に記載の加湿装置。
【請求項8】
加湿フィルタの一部が浸水することを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の加湿装置。
【請求項9】
加湿フィルタが抗菌性および/または抗カビ性を有することを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の加湿装置。
【請求項10】
空気の吸込口と吹出口を有する本体と、この吸込口と吹出口を連通する風路内に、空気を清浄化するための空気浄化フィルタと、空気を加湿するための加湿フィルタと、前記加湿フィルタを配置するためのトレイと、前記加湿フィルタに水を供給するための水供給手段と、前記空気浄化フィルタおよび加湿フィルタに空気を送る送風手段とを備えた加湿機能付空気清浄装置であって、前記加湿フィルタに、複数のフィラメントを束ねた糸で構成される吸水経路を付与したことを特徴とする加湿機能付空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−241993(P2011−241993A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111729(P2010−111729)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】