説明

加熱プレート温度測定装置

【課題】加熱プレートの多くの箇所で輻射温度計や熱電対を使用して簡単にその内部の温度を測定出来るようにし、加熱プレートの温度制御や温度分布の管理を高精度に行う。
【解決手段】加熱プレート温度測定装置は、加熱プレート2の内部に放射状に複数の孔7を設け、この孔7の中に移動自在に測温ピース4を配置し、この測温ピース4の温度を測定することにより、加熱プレート2の温度を測定するものである。測温ピース4の温度を測定する手段は、例えば前記孔7を通して測温ピース4の輻射熱を測定する輻射温度計5や、或いは前記孔7を通して測温ピース4に測温接点を設け、同測温ピース4の温度を測定する熱電対14等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の加熱物を載せて高温に加熱する加熱プレートの温度を測定する装置に関し、特に加熱プレートの内部の複数箇所の温度を輻射温度計や熱電対で容易に測定することが出来る加熱プレート温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等の処理プロセスにおいて、その半導体ウェハ等の板状部材(以下「基板」と称する。)を加熱するための加熱手段として、加熱プレートに基板を載せて加熱する形式のヒータが使用されている。例えば、シースヒータを用いて加熱プレートを加熱し、その加熱プレートに載せた基板を加熱する。
【0003】
このような加熱ヒータでは、加熱プレートの温度を測定し、基板の加熱温度を適正に制御する必要がある。このような加熱プレートの温度測定手段として、従来では熱電対が使用されている。シースヒータと共にシース形熱電対を真空チャンバの中に引き込み、その先端の測温点を加熱プレート埋め込み、真空チャンバの外でアダプタを介して補償導線と接続し、前記測温点で温度を測定する。
【0004】
基板を加熱する装置の他の加熱方式として、背面電子衝撃加熱方式がある。この方式を利用した背面電子衝撃加熱装置は、基板を載せる加熱プレートの背面に熱電子を放出するフィラメントを設け、このフィラメントから熱電子を放出すると共に、加熱プレートとフィラメントとの間に高電圧の加速電圧を印加し、熱電子を加熱プレートに衝突させて、この衝撃エネルギーにより加熱プレートを加熱し、その上の基板を加熱する。
【0005】
このような背面電子衝撃加熱装置においては、加熱プレートの背面側でフィラメントから加熱プレートの背面に向けて熱電子が飛翔するので、シース型熱電対の測温接点を加熱プレートの背面側に埋め込むと、電子がシース型熱電対のシースを通じアース側に流れてしまう。これにより、加熱プレートに衝突する電子の量にムラが出て、その温度分布が変わってしまう。
【0006】
従って、高温で且つ、背面電子衝撃加熱装置の様に電子の飛び交う背面側にシース形熱電対を使用して温度測定が出来ない場合は、輻射温度計を使用して非接触で温度の測定を行う。加熱プレートを収納した真空チャンバにビューポートを設け、このビューポートを通して輻射温度計で加熱プレートの上に載った基板の輻射熱により、その温度を非接触で測定する。
【0007】
輻射温度計の場合、基板の温度を測定出来るが、その下にある加熱プレートの温度を測定することは出来ない。加熱プレートより遅れて温度変化が現れる基板の温度しか測定出来ず、加熱プレートの温度を直接測定してその温度制御を行えないため、加熱プレートの異常加熱が起こりやすく、加熱ヒータの損傷の原因となる。
【0008】
また、熱電対と輻射温度計の何れの温度測定手段を使用した場合でも、加熱プレートの多くの箇所で温度を測定することが基板の温度分布を均一にするための必須の条件となる。しかしながら、加熱プレートの多くの箇所で温度測定をするには、それだけ多くの熱電対や輻射温度計を配置しなければならず、温度計の数だけでも相当の数になり、温度測定に要する装備が大掛かりになる。
【0009】
【特許文献1】特開2004−193340号公報
【特許文献2】特開2004−111586号公報
【特許文献3】特開2002−208588号公報
【特許文献4】特開平11−248539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来の加熱プレートによる半導体ウエハー等の基板加熱における温度測定手段が有する課題に鑑み、加熱プレートの多くの箇所で輻射温度計や熱電対を使用して簡単にその内部の温度を測定出来るようにし、加熱プレートの温度制御や温度分布の管理を高精度に行うことが出来ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、前記の目的を達成するため、加熱プレート2の内部に放射状に複数の孔7を設け、この孔7の中に移動自在に測温ピース4を配置し、この測温ピース4の温度を測定することにより、加熱プレート2の温度を測定するようにし、加熱プレート2の各部の温度を容易に測定出来るようにしたものである。
【0012】
すなわち、本発明による加熱プレート温度測定装置は、加熱プレート2の内部に放射状に複数の孔7を設け、この孔7の中に移動自在に測温ピース4を配置し、この測温ピース4の温度を測定することにより、加熱プレート2の温度を測定するものである。測温ピース4の温度を測定する手段は、例えば前記孔7を通して測温ピース4の輻射熱を測定する輻射温度計5や、或いは前記孔7を通して測温ピース4に測温接点を設け、同測温ピース4の温度を測定する熱電対14等である。特に前者の場合は、測温ピース4は輻射率が1.0に近い黒鉛からなるものがよい。
【0013】
この加熱プレート温度測定装置では、測温ピース4が加熱プレート2の内部に埋め込まれているため、この測温ピース4の温度は加熱プレート2の内部の温度と同じになる。従って、輻射温度計5により、孔7を通して測温ピース4の温度を測定することにより、加熱プレート2の内部の温度を測定することができる。
【0014】
そして加熱プレート2の内部に放射状に設けた複数の孔7中に測温ピース4を適宜配置し、この測温ピース4を介して加熱プレート2の内部の温度を測定するため、加熱プレート2の中心から外周側にかけて任意の位置の温度が測定出来る。また、測温ピース4は加熱プレート2に複数設けることができ、さらにこの測温ピース4を孔7に添って移動出来るため、適宜に温度の測定位置を変えることが出来る。これにより、必要に応じて加熱プレート2の任意の位置で温度測定が可能となり、加熱プレート2の温度制御のため最適なデータを得ることが出来る。
【0015】
特に輻射温度計5で測温ピース4の温度を測定する場合に、測温ピース4として輻射率が1.0に近い黒鉛からなるものを使用することにより、加熱プレート2の輻射率に係わらず、正確な温度測定が可能である。また、孔7を加熱プレート2に放射状に設けることにより、孔7を加熱プレート2の側面に開口することが出来るので、加熱プレート2の上面に基板やサセプタを載せても、それらに邪魔されることなく輻射温度計5で温度測定が可能となる。測温ピース4を加熱プレート2の異なる位置に配置して温度を測定することにより、加熱プレート2の温度分布を把握するのに有効である。
【0016】
前述したように、背面電子衝撃加熱ヒータにおいては、加熱プレート2の背面側で熱電子が飛びかっている。このため、シース型熱電対の測温接点を加熱プレート2の背面に接触する構造では、電子がシース型熱電対のシースを通じアース側に流れてしまい、加熱プレート2の温度分布が変わってしまう。本発明による温度測定装置では加熱プレート2の背後にシース型熱電対のような測温手段を配置することが無くなるので、前記のような問題はなくなり、背面電子衝撃加熱ヒータに採用するのに最適な温度測定手段と言える。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した通り、本発明による加熱プレート温度測定装置では、加熱プレート2の上面に基板やサセプタを載せても、それらに邪魔されることなく加熱プレート2の内部の任意の位置の温度測定が可能になる。また、加熱プレート2の材質に係わらず、測温ピース4として輻射率の高い黒鉛等を使用することで、正確な温度測定が可能となる。さらに、測温ピース4を配置する位置により、加熱プレート2の任意の位置の温度を測定出来るので、加熱プレート2の温度分布の測定も可能である。また、本発明による温度測定装置は、背面電子衝撃加熱ヒータにおいて最適な温度測定手段となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明では、加熱プレート2に孔7を設け、これら孔7の中に移動自在に測温ピース4を埋め込み、孔7を通して輻射温度計5または熱電対14で測温ピース4の温度測定するようにした。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0019】
図1は、基板加熱ヒータのうち、特に背面電子衝撃加熱方式のものを示す図である。背面電子衝撃加熱方式の基板加熱ヒータの他、シースヒータを使用した抵抗加熱方式や高周波加熱方式等、他の加熱方式の基板加熱ヒータにも適用が可能である。
【0020】
図示していないが、ステンレス鋼等の金属からなるテーブル6の上に真空チャンバが載せて固定されており、この真空チャンバの中に加熱容器1が設置されている。この加熱容器1は、下面が開いた容器状のものであって、シリコンウエハ等の薄形板状の加熱物(基板a)を載せる天板が平坦な加熱プレート2となったものである。より具体的には、加熱容器1は、加熱プレート2が天板となってその上面側が閉じられ、加熱プレート2の周囲の下方には、下面側が開口した円筒形状の周壁13が設けられている。加熱容器1の周壁13の下端部はフランジ状になっている。
【0021】
テーブル6の加熱容器1のフランジ部分を載せる部分には、テーブル6の中心軸の周りに溝が設けられ、この溝に真空シール材8が嵌め込まれている。この溝に嵌め込まれた真空シール材8の上に、前記加熱容器1の周壁13の下端部のフランジ部分が載せられ、固定されている。
【0022】
さらに、この加熱容器1の内部には、テーブル6から支柱14が立設され、この支柱14の上端側に平板状のホルダ12が支持されている。さらにこのホルダ12からフィラメント支持柱17が立設され、このフィラメント支持柱17にフィラメント9が取り付けられている。このフィラメント9は、加熱容器1の中でその加熱プレート2の背後に設けられている。またこのフィラメント9には、フィラメント加熱電源10が接続されている。さらに、このフィラメント9と加熱プレート2との間には、電子加速電源11により加速電圧が印加される。なお加熱プレート2を有する加熱容器1は接地され、フィラメント9に対して正電位に保持される。
【0023】
前記フィラメント支持柱17の中間部には、フィラメント9の下方に位置するようにリフレクタ3が取り付けられている。このリフレクタ3は、フィラメント支持柱17を介してフィラメント9に導通しており、同フィラメント9と同電位のマイナス電位とされる。
【0024】
前記加熱容器1の天板となる加熱プレート2には、孔7が設けられている。図2と図3に示すように、この孔7は加熱プレート2に放射状に設けられ、その側面に開口している。図2と図3に示した例では、加熱プレート2の一方の側面から加熱プレート2の中心を通り、他方の側面に開口する直線状の貫通孔が45゜間隔で4本設けられている。この孔7の断面形状は円に限らず、加熱プレート2の幅方向或いは厚さ方向に幅のある孔であってもよいが、加熱プレート2の厚さ方向に熱抵抗を生じないように断面円形の小孔であるのがよい。
【0025】
この孔7の中には、測温ピース4が埋め込まれている。例えば図4はこの測温ピース4を示す。この測温ピース4は輻射率の高い材質、例えば黒鉛からなる。この測温ピース4の径は孔7の径と同じかそれより若干細くなっており、測温ピース4が孔7の中でその孔壁に完全に接触しているので、加熱プレート2から円滑に熱伝達を受け得る。また、この測温ピース7は孔7の長手方向に移動自在に設けられ、その任意の位置に配置することが出来る。図2は、測温ピース4の配置例を示す。
【0026】
図1〜図3に示すように、前記孔7が開口した加熱プレート2の側方には、輻射温度計5の受光部が配置されている。この輻射温度計5は、前記孔7を通して測温ピース4の輻射熱を受光し、その温度を非接触で測定するものである。図1〜図3に示すように、測温ピース4を加熱プレート2の適宜の位置にそれぞれ配置することにより、複数位置での温度測定が可能であり、加熱プレート2の温度分布を把握するのに有効である。
【0027】
このような背面電子衝撃加熱ヒータでは、フィラメント9と加熱プレート2との間に電子加速電源11により一定の高電圧の加速電圧を印加すると共に、フィラメント加熱電源10によりフィラメント9に通電すると、フィラメント9から熱電子が放出され、この熱電子が前記加速電圧により加速されて加熱プレート2の下面に衝突する。このため、電子衝撃により加熱プレート2が加熱される。加熱プレート2に生じる熱と加熱プレートに照射されるべき熱電子は、フィラメント9の下方に設けられ、フィラメント9と同電位のマイナス電位としたリフレクタ3により反射され、出来る限り熱が不要な個所に拡散するのが防止される。
【0028】
加熱プレート2が予め定められた温度に達すると、フィラメント加熱電源10からフィラメント9に通電する電力が下げられ、加熱プレート2の温度が定められた温度に維持される。そして、予め定められた時間が経過すると、フィラメント9への通電が停止され、加熱プレート2の加熱を停止する。その後、テーブル6の冷却液通路7に通している冷却液によりテーブル6や加熱容器1が冷却され、加熱プレート2が降温される。
【0029】
このようにして加熱プレート2が加熱制御される時に、前記の輻射温度計5で測温ピース4の温度を測定し、これにより加熱プレート2の温度を把握しながら加熱制御を行う。孔7は加熱プレート2の内部に放射状に複数設けられており、この孔7中に測温ピース4を適宜配置し、加熱プレート2の内部の温度を測定するため、加熱プレート2の中心から外周側にかけて任意の位置の温度が測定出来る。また、測温ピース4は加熱プレート2に複数設けることができ、さらにこの測温ピース4を孔7に添って移動出来るため、適宜に温度の測定位置を変えることが出来る。これにより、必要に応じて加熱プレート2の任意の位置で温度測定が可能となり、加熱プレート2の温度制御のため最適なデータを得ることが出来る。
【0030】
図5は、測温ピース4の温度測定手段として、輻射温度計ではなく、熱電対14を使用した例であり、図2の実施例に対応する図である。図5では熱電対14を模式的に示しているが、熱電対14としてはシース型熱電対が使用される。その先端の測温接点を測温ピース4に取り付け、温度を測定する。それ以外は図1〜図3に示した実施例と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0031】
この実施例では、熱電対14の測温接点を測温ピース4に取り付け、孔7の中に熱電対14を通さなければならないが、加熱プレートを有するか熱容器1がアースに接続されているので、電子が飛翔する加熱プレート2の背後に熱電対14を配線する必要が無い。従って、電子がシース型熱電対のシースを通じアース側に流れてしまうことも無い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による加熱プレート温度測定装置の一実施例を示す概略縦断面図である。
【図2】図1のA−A面断面平面図である。
【図3】本発明による加熱プレート温度測定装置の前記実施例を示す概略斜視図である。
【図4】本発明による加熱プレート温度測定装置の前記実施例に使用する測温ピースの例の斜視図である。
【図5】本発明による加熱プレート温度測定装置の他の実施例を示す図2に対応する位置の断面平面図である。
【符号の説明】
【0033】
2 加熱プレート
7 孔
4 測温ピース
5 輻射温度計
14 熱電対
a 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載せて加熱する加熱プレート(2)の内部の温度を測定する加熱プレート温度測定装置であって、加熱プレート(2)の内部に放射状に複数の孔(7)を設け、この孔(7)の中に移動自在に測温ピース(4)を配置し、この測温ピース(4)の温度を測定することにより、加熱プレート(2)の温度を測定することを特徴とする加熱プレート温度測定装置。
【請求項2】
測温ピース(4)の温度を測定する手段が輻射温度計(5)であることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の加熱プレート温度測定装置。
【請求項3】
測温ピース(4)の温度を測定する手段が熱電対(14)であることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の加熱プレート温度測定装置。
【請求項4】
測温ピース(4)は輻射率が1.0に近い黒鉛からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の加熱プレート温度測定装置。
【請求項5】
測温ピース(4)は加熱プレート(2)の異なる位置に複数配置されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の加熱プレート温度測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−14446(P2009−14446A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175227(P2007−175227)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000183945)助川電気工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】