説明

加熱ローラおよび加熱装置

【課題】 定着時におけるヒートローラの長手方向の硬度を均一化して、定着性能の向上を図ると共に、ヒートローラの金属導電層に覆われる弾性体層の破断を防止して、長寿命化を図る。
【解決手段】
常温時において、ヒートローラ22の発泡ゴム層22bの外径を、中央部分よりも両端部分が大きくなるよう形成し、ヒートローラ22の中央部分にて、発泡ゴム層22bと金属導電層22dとの間に空間を設ける。この空間部分に滑り止め部材を設けることで、ヒートローラ22の回転時に発泡ゴム層22bの両端部分にかかるせん断力をローラ全体に分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙上に形成されたトナー像の加熱に用いる加熱ローラおよびこの加熱ローラを用いた加熱装置に係る。
【背景技術】
【0002】
従来から一般的な電子写真方式の画像形成装置においては、画像形成部にて用紙上に形成されたトナー像を加熱するとともに加圧することで用紙上に溶融定着させる加熱装置が搭載されている。この加熱装置は、ヒートローラとプレスローラのいずれか一方、もしくは両方を加熱する加熱源が設けられている。この加熱源として、ハロゲンランプや誘導加熱方式のコイルが広く用いられている。
【0003】
これら加熱装置に要求される性能は、エネルギー効率を高める環境負荷の低減とともに、画像形成装置の高速化である。
【0004】
これらの要求を満たすため、用紙の加熱を行うヒートローラの構造に様々な改良が加えてられている。例えば、ヒートローラに弾性体層を設けて、その表面を金属導電層で覆うものである。このタイプのヒートローラは、弾性体層内の空気が熱により膨張するため、弾性体層と金属導電層との間に空間を設けることで、弾性体層の膨張を吸収している(例えば特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが上記のような空間を設ける場合、弾性体層と金属導電層との接着は、ヒートローラの両端部のみとなってしまう。また、ヒートローラが冷えている場合、プレスローラからの加圧による負荷はヒートローラの端部にのみ集中することになるため、弾性体層とヒートローラ軸芯の接着面の両端部に強い負荷がかかることになる。この結果、強度の弱い弾性体層が破断する恐れがあり、ヒートローラの寿命を短くする恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、芯部材と、この芯部材の外周に配置された略円筒形状であり、前記芯部材の軸方向中央部の外径が前記軸方向の両端部の外径と比べて短く構成された弾性体と、前記第1の弾性体の前記外径が短い部分の外表面に設けられ、前記弾性体の表面の静摩擦力よりも大きな静摩擦力を有する滑り止め部材と、前記弾性体の両端部でのみ接着され、前記弾性体の外周に配置された金属層とからなることを特徴とする加熱ローラおよびこの加熱ローラを用いた加熱装置からなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、必要な硬度を維持しつつ、ローラの破壊を防止可能な加熱ローラおよびこの加熱ローラを用いた加熱装置を提供することが可能となる。これにより、本発明の加熱装置は、エネルギー効率が高く、かつ高速化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施態様の定着装置を搭載した画像形成装置を示す概略構成図。
【図2】本発明の実施態様の定着装置を示す概略構成図。
【図3】本発明の実施態様の誘導電流発生コイルを示す概略説明図。
【図4】本発明の実施態様のヒートローラの長手方向断面図。
【図5】本発明の実施態様の発泡ゴム層両端部の斜視図。
【図6】本発明の実施形態の発泡ゴム層両端に設けられた溝部を示す図。
【図7】本発明の実施形態の溝部の寸法を変更した場合の画像不良具合を示す図。
【図8】本発明の他の実施形態のヒートローラの長手方向断面図。
【図9】本発明の他の実施形態のヒートローラの貫通工の寸法を変更した場合の画像不良具合を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下添付図面を例にとって、この発明の実施形態について詳細に説明する。図1はこの発明の実施形態の誘導加熱定着装置である定着装置11を搭載してなる画像形成装置1を示す概略構成図である。画像形成装置1の上面には自動原稿送り装置4により供給される原稿を読取るスキャナ部6を備える。画像形成装置1は、画像形成ユニット10に被定着媒体であるシート紙Pを供給するカセット機構3を備える。
【0010】
カセット機構3は第1及び第2の給紙カセット3a、3bを備える。各給紙カセット3a、3bから、画像形成ユニット10に至る搬送路7には、給紙カセット3a、3bからシート紙を取り出すピックアップローラ7a、7b、分離搬送ローラ7c、7d、搬送ローラ7e及びレジストローラ8が設けられる。画像形成ユニット10の下流には、画像形成ユニット10にてシート紙Pに形成されるトナー像を定着する定着装置11を有する。定着装置11の下流には、排紙ローラ40が設けられ、定着後のシート紙Pを排紙部1bに搬送する排紙搬送路41が設けられる。
【0011】
画像形成ユニット10は、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成ステーション18Y、18M、18C、18Kを有する。各画像形成ステーション18Y、18M、18C、18Kは、矢印q方向に回転される転写ベルト10aに沿って、タンデムに配列される。
【0012】
イエロ(Y)の画像形成ステーション18Yは、矢印r方向に回転する像担持体である感光体ドラム12Yの周囲に、プロセス部材である帯電器13Y、現像装置14Y、転写ローラ15Y、クリーナ16Y、除電器17Yを配置してなっている。またイエロ(Y)の画像形成ステーション18Y上方には、感光体ドラム12Yにレーザビームを照射するレーザ露光装置19が設けられる。
【0013】
マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成ステーション18M、18C、18Kは、イエロ(Y)の画像形成ステーション18Yと同様の構成を有している。
【0014】
画像形成ユニット10においては、プリント操作開始により、イエロ(Y)の画像形成ステーション18Yにあっては、感光体ドラム12Yが矢印r方向に回転し、帯電器13Yにより一様に帯電される。次いで感光体ドラム12Yは、レーザ露光装置19により、スキャナ部6で読取った画像情報に対応する露光々を照射され静電潜像を形成される。この後感光体ドラム12Yは現像装置14Yにてトナー像を形成され、転写ローラ15Y位置で、転写ベルト10a上を矢印q方向に搬送されるシート紙Pにトナー像を転写する。転写終了後、感光体ドラム12Yはクリーナ16Yにより残留トナーをクリーニングされ、除電器17Yにより感光体ドラム12Y表面を除電され、次のプリント可能となる。
【0015】
マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成ステーション18M、18C、18Kは、イエロ(Y)も画像形成ステーション18Yと同様に画像形成操作を行い、シート紙Pにフルカラートナー像を形成する。この後シート紙Pは、誘導加熱定着装置である定着装置11により加熱加圧定着されプリント画像を完成され排紙部1bに排紙される。
【0016】
次に定着装置11について述べる。図2は、定着装置11を示す概略構成図である。定着装置11は、エンドレスの被加熱部材であるヒートローラ22と加圧部材であるプレスローラ23を有する。ヒートローラ22は、駆動モータ25により矢印s方向に駆動する。プレスローラ23は、圧縮バネ24aによりヒートローラ22に加圧接触される。これによりヒートローラ22及びプレスローラ23間に一定幅のニップ26が形成される。プレスローラ23は、ヒートローラ22に従動して矢印t方向に回転する。
【0017】
更に定着装置11の、ヒートローラ22の外側には、ギャップを介して、ヒートローラ22を加熱する誘導電流発生コイル27が対向配置される。更にヒートローラ22の外周には、定着後のシート紙Pの巻きつきを防止する剥離爪31、ヒートローラ22の表面温度を検出する第1のサーミスタ33a、第2のサーミス33b、第3のサーミスタ33c及び、ヒートローラ22の表面温度の異常を検知して、加熱を遮断するためのサーモスタット34が設けられる。尚、シート紙Pがヒートローラに巻きつく恐れが無い場合は、剥離爪31を設けなくても良い。プレスローラ23の外周にはクリーニングローラ24bが設けられる。
【0018】
ヒートローラ22は、芯金22a周囲に厚さ5〜12mmの発泡ゴム(スポンジ)層22b、ニッケル(Ni)からなる厚さ40μmの金属導電層22d、厚さ200μmのソリッドゴム層22e及び、厚さ30μmの離型層22fからなっている。金属導電層2cは、ニッケルに限らず、ステンレス、アルミニウム、あるいはステンレスとアルミニウムの複合材等であっても良い。
【0019】
プレスローラ23は、芯金23a、周囲にシリコンゴム層23bを被覆してなっている。プレスローラ23は、さらに離型層23cを持つ。尚、シリコンゴム層23bに換えて、フッ素ゴム層を用いても良い。ヒートローラ22及びプレスローラ23は、いずれも直径40mmに形成されている。シート紙Pは、このようなヒートローラ22及びプレスローラ23間のニップ26を通過することにより、シート紙P上のトナー像を加熱加圧定着される。
【0020】
尚プレスローラ23も、必要に応じて、誘導電流発生コイルにより加熱される金属導電層を有していたり、或いはハロゲンランプヒータを内蔵する等しても良い。
【0021】
次に誘導電流発生コイル27について述べる。誘導電流発生コイル27は、第1乃至第3の誘導電流発生コイル27a、27b、27cからなっている。第1乃至第3の誘導電流発生コイル27a、27b、27cの磁性体コア28a、28b、28cは、ヒートローラ22とほぼ同軸状となっている。磁性体コア28は、誘導電流発生コイル27による磁束をヒートローラ22に集中させる。磁性体コア28a、28b、28cは、両側に磁気遮蔽材30a、30b、30cが凸設されていて、ヒートローラ22に磁束を更に集中させることが出来る。
【0022】
図3に示すように、第1の誘導電流発生コイル27aは、長さ200mmであり、ヒートローラ22の中央領域を加熱する。第2及び第3の誘導電流発生コイル27b、27cは、第1の誘導電流発生コイル27aの両側に配置される。第2及び第3の誘導電流発生コイル27b、27cは、直列接続され、同じ制御で駆動される。第1乃至第3の誘導電流発生コイル27a、27b、27cにより、ヒートローラ22全長の長さ320mmを加熱する。第1の誘導電流発生コイル27aと、第2及び第3の誘導電流発生コイル27b、27cは、交互に切り替えて出力される。尚、第1の誘導電流発生コイル27aと、第2及び第3の誘導電流発生コイル27b、27cの出力は、同時であっても良い。
【0023】
誘導電流発生コイル27は高周波電流を印加することにより磁束を発生する。この磁束により、磁界の変化を妨げるように、ヒートローラ22に渦電流を発生させる。この渦電流と、ヒートローラ22の抵抗によって金属導電層22dにジュール熱が発生し、ヒートローラ22は加熱される。
【0024】
誘導電流発生コイル27は、例えば銅線材を複数本撚った線径3mmのリッツ線を用いる。銅線の絶縁材は、耐熱性のポリアミドイミドを用いる。電線及び絶縁材はこれに限定されず、線径も任意である。又リッツ線を用いる場合にその構造も任意であり、単に複数の絶縁した銅線を束ねたものであっても良いし、銅線の数や太さも限定されない。誘導電流発生コイル27は、リッツ線を磁性体コア28a、28b、28cに巻きつけてなる。
【0025】
尚、本実施の形態では、誘導電流発生コイルを用いて金属層を誘導加熱させる構成を開示したが、これに限定されず、例えば、ハロゲンランプによって加熱するタイプにも応用可能である。
【0026】
図4は、本実施形態のヒートローラ22を回転軸に平行な面で切った断面図である。金属製の芯金22aの外周には、発泡ゴム層22bが配置されている。この発泡ゴム層22bは、シリコンゴムに発泡剤を添加して所定の発泡率(発泡倍率)で発泡させ、円筒形状になるよう整形される。この円筒形状の発泡ゴム層22bは、中央部の外径が両端部の外径よりも小さくなるよう中央部が削られている。本実施の形態では、中央部の外径を43mm、端部の外径を45mmとした。この発泡ゴム層22bの軸方向長さは400mmとしている。
【0027】
このような段部を有する発泡ゴム層22bは、別の方法でも整形可能である。例えば、上記中央部で第1の外径を有する円筒形状の部材と上記両端部で第1の外径より大きい第2の外径の部材を別々に成型し、接着剤にて芯金22aに接着させる際、中央の部材と端部の部材を接着(図の点線部分)させて構成しても良い。
【0028】
発泡ゴム層22bの外周には、ニッケルより構成される金属導電層22dが配置される。この金属導電層22dは、発泡ゴム層の外径が大きい両端部でのみ、耐熱性接着剤にて接着されている。尚、金属導電層22dは、アルミニウムや金、鉄等、誘導加熱にて発熱効率のよい材料でかつ、薄いベルト状に形成可能な金属であれば、ニッケルに限定されない。
【0029】
金属導電層22dの外側には、フッ素系樹脂からなる離型層22fが形成されている。尚、定着装置にてよりニップ幅を広く設定したい場合は、金属導電層22dと離型層22fの間にソリッドゴム層22eを設けても良い。
【0030】
先に説明したように、発泡ゴム層22bの中央部は両端部に比べて外径が小さく構成されている。したがって、ヒートローラ22が常温(25度)程度の場合は、発泡ゴム層22bは膨張しておらず、金属導電層22dとの間に空隙部29を有する。この空隙部29の発泡ゴム層22bと金属導電層22dとの間の距離は約1mmに設定されている。
【0031】
この空隙部29では、滑り止め用としてシート状のシリコンゲル22cが発泡ゴム層22bに接着されている。このシリコンゲル22cの表面は、発泡ゴム層22bの表面よりも高い摩擦係数を有している。また、発泡ゴム層22bよりも熱膨張率が小さい。このシート状のシリコンゲル22cの厚みは200μmに設定した。ローラ内部の温度が常温(25度程度)の場合は、シリコンゲル22cと金属導電層22dは、接触しない。ローラ内部の温度が常温よりも高く、発泡ゴム層22b、シリコンゲル22cが共に熱膨張した場合、シリコンゲル22cと金属導電層22dは接触する。
【0032】
ヒートローラ22内部の温度が低い場合、プレスローラ23との接触部分であるニップ26では、圧力が加わっており、発泡ゴム層22bとシリコンゲル22cとは密着する。ヒートローラ22が回転した場合、シリコンゲル22c表面の摩擦力が高いため、シリコンゲル22cと金属導電層22dは密着状態で共に回転する。したがって、ヒートローラ22の回転にともなって発生する発泡ゴム層22bのせん断力は、ニップ26のヒートローラ長手方向全長に渡って伝達される。
【0033】
仮にこのシリコンゲル22cを設けない場合は、発泡ゴム層22bと金属導電層22dがニップ部26で接触する。しかし、発泡ゴム層22表面の摩擦係数は低いため、加熱ローラ22を回転した場合に発生する発泡ゴム層22bのせん断力は、金属導電層22dと接着されている両端部にのみ集中することになる。結果、発泡ゴム層22の両端部が破壊される可能性が高まる。
【0034】
ヒートローラ22内部の温度が高い場合、発泡ゴム層22bとシリコンゲル22cは共に熱膨張しており、ニップ26だけでなくローラ全体に渡ってシリコンゲル22cと金属導電層22dは密着している。ヒートローラ22が回転した場合、発泡ゴム層22bのせん断力は、先の低温状態に比べてよりローラ長手方向全長に渡って伝達される。
【0035】
尚、このシリコンゲル22cと発泡ゴム層22bとの接着として、液状のシリコンゲルを用いることも可能である。液状のシリコンゲルの場合、発泡ゴム層22b表面のスポンジセルによる細かな凹凸にシリコンゲルが入り込み、発泡ゴム層22bとシリコンゲル22cが互いにかみ合った状態となる。その結果、発泡ゴム層22bとシリコンゲル22cの結合をより強固にすることが可能となる。勿論、発泡ゴム層22bとシリコンゲル22cの接着は、上記のような液状シリコンゲルに限定されず、耐熱性の接着剤であってもよい。
【0036】
ここで、発泡ゴム層22bとシリコンゲル22cの熱膨張率について詳述する。発泡ゴム層22bの熱膨張率がシリコンゲル22cの熱膨張率よりも小さい場合、ヒートローラ22が高温の状態では、シリコンゲル22cの方が、発泡ゴム層22bに比べて大きく膨張する。この膨張差によって、発泡ゴム層22bとシリコンゲル22cとの間に引っ張り力が発生する。この引っ張り力により発泡ゴム層22bとシリコンゲル22cの接着が剥がれる可能性がある。
【0037】
発泡ゴム層22bの熱膨張率がシリコンゲル22cの熱膨張率よりも大きくした場合、シリコンゲル22cの伸びにより引っ張り力は緩和され、接着が剥がれる問題を解決できる。
【0038】
尚、本実施の形態では、シリコンゲル22cを発泡ゴム層22bと金属導電層22dとの密着に用いたが、これに変えて、表面の静摩擦力が発泡ゴム層22bの表面の静摩擦力よりも大きい部材が適用可能である。例えば、シリコンゴムなどで代用可能であり、材料には限定されない。
【0039】
図5は、発泡ゴム層22bの両端部の斜視図である。筒状の発泡ゴム層22bの円筒面には、等間隔に溝部50が配置され、先に説明した空隙部29と外部を繋いでいる。このような溝部50を設けることにより、ヒートローラ22の内部が高温になることで、空隙部29内の空気が膨張してヒートローラ22の硬度が変化する問題を解決することができる。
【0040】
図7は、溝部50の寸法を変えて、加熱したトナー像への影響の有無を纏めたものである。図6に示すように、溝部50の幅をW,深さをHとし、このWとHの値を変更したサンプルを複数準備し、各々のサンプルで用紙上に形成されたトナー像に影響が無いかを目視にて判断している。尚、幅、深さともに0.5mm以下のサンプルは作成が困難であること、また、金属導電層22dとの接着の際に埋まってしまうため、除外とした。
【0041】
「○」は、画像不良なしを示し、「×」は画像不良ありを示す。この結果から、本実施の形態では、溝幅Wおよび溝深さHを共に1.5mmに設定した。
【0042】
図8は、図4のヒートローラの別の実施形態である。尚、同一図番は先に説明した構成と同じであるため、その説明を省略する。
【0043】
この実施形態では、先の溝部50に変えて貫通穴51を設けたものである。この貫通穴51は、空隙部29に面するシリコンゲル22c、発泡ゴム層22b、芯金22aを繋ぐよう構成されている。尚、芯金22aは中空の金属により構成されており、その両端と外部は繋がっており、ヒートローラ22内部が高温の場合、空隙部29内の膨張した空気による圧力を外部に逃がす構造となっている。したがって、空気の膨張によりヒートローラ22表面の硬度が高くなることを防止している。
【0044】
この貫通穴51は、ヒートローラ長手方向断面は略円形である。この貫通穴51は、芯金22a、発泡ゴム層22b、シリコンゲル22cを接着した状態でドリルによる穴あけ工程で作成される。このような工程により、安価に貫通穴51が形成可能である。
【0045】
尚、この貫通穴51は、芯金22a、発泡ゴム層22b、シリコンゲル22cの各製造工程で作成され、その組み立て工程において、貫通穴51の位置を合わせることでも作成可能である。
【0046】
図9は、貫通穴51の穴直径寸法を変えて、加熱したトナー像への影響の有無を纏めたものである。貫通穴51の直径を0.2mmから4.0mmまでの間で複数のサンプルを作成し、各々のサンプルで用紙上に形成されたトナー像に影響が無いかを目視にて判断している。「○」は画像不良なし・定着不良なしを示し、「△」は画像不良あり・定着不良許容範囲であることを示す。「×」は画像不良あり・定着不良ありを示す。この結果から、貫通穴51の直径は1mm以下がよいことが分かる。本実施形態では、貫通穴51の直径を1mmとした。
【0047】
以上説明したように、これら本実施形態においては、高温使用時にヒートローラ22の硬度を変動させることなく、また、発泡ゴム層の破壊を防ぐことが可能なヒートローラおよびこのヒートローラを用いた加熱装置を提供することが可能となる。
【0048】
尚、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0049】
本実施形態では、画像形成装置の定着装置を例に説明したが、これに限定されない。例えば、用紙上に定着されたトナー像の色を消すような消色装置にも応用できる。
【符号の説明】
【0050】
11…定着装置、22…ヒートローラ、22a…芯金、22b…発泡ゴム層、22c…シリコンゲル、22d…金属導電層、29…空隙部、50…溝部、51…貫通穴
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】特開2008−209946公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部材と、
この芯部材の外周に配置された略円筒形状であり、前記芯部材の軸方向中央部の外径が前記軸方向の両端部の外径と比べて小さく構成された弾性体と、
前記第1の弾性体の前記外径が小さい部分の外表面に設けられ、前記弾性体の表面の静摩擦力よりも大きな静摩擦力を有する滑り止め部材と、
前記弾性体の前記芯部材の軸方向両端部でのみ接着され、前記弾性体の外周に配置された金属層と、
からなることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項2】
前記弾性体の熱膨張率は、前記滑り止め部材の熱膨張率よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の加熱ローラ。
【請求項3】
前記加熱ローラの温度が常温である場合、前記滑り止め部材と前記金属層は接触していないことを特徴とする請求項1記載の加熱ローラ。
【請求項4】
前記弾性体の両端部分には、前記金属層と前記滑り止め部材との間の空間と外部を繋ぐ溝を有していることを特徴とする請求項1乃至3記載の加熱ローラ。
【請求項5】
前記金属層と前記滑り止め部材との間の空間と外部を繋ぐ貫通穴が、前記滑り止め部材、前記弾性体、前記芯部材を通じて設けられていることを特徴とする請求項1乃至3記載の加熱ローラ。
【請求項6】
芯部材と、この芯部材の外周に配置された略円筒形状であり、前記芯部材の軸方向中央部の外径が前記軸方向の両端部の外径と比べて小さく構成された弾性体と、前記第1の弾性体の前記外径が小さい部分の外表面に設けられ、前記弾性体の表面の静摩擦力よりも大きな静摩擦力を有する滑り止め部材と、前記弾性体の前記芯部材の軸方向両端部でのみ接着され、前記弾性体の外周に配置された金属層とからなる加熱ローラと、
この加熱ローラに対向して配置され、前記加熱ローラとの間で媒体に対して圧力を加える加圧部材と、
前記加熱ローラの外周近傍に配置され、前記金属層を加熱する加熱源と、
を有することを特徴とする加熱装置。
【請求項7】
前記弾性体の熱膨張率は、前記滑り止め部材の熱膨張率よりも大きいことを特徴とする請求項6記載の加熱装置。
【請求項8】
前記加熱ローラの温度が常温である場合、前記滑り止め部材と前記金属層は接触していないことを特徴とする請求項6記載の加熱装置。
【請求項9】
前記弾性体の両端部分には、前記金属層と前記滑り止め部材との間の空間と外部を繋ぐ溝を有していることを特徴とする請求項6乃至8記載の加熱装置。
【請求項10】
前記金属層と前記滑り止め部材との間の空間と外部を繋ぐ貫通穴が、前記滑り止め部材、前記弾性体、前記芯部材を通じて設けられていることを特徴とする請求項6乃至8記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−181880(P2010−181880A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20167(P2010−20167)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】