説明

加熱乾燥装置

【課題】塗布膜に乾燥ムラが形成されることを抑えることができる加熱乾燥装置を提供する。
【解決手段】基板を保持するステージユニットと、前記基板温度を調節するヒータユニットと、を備える加熱乾燥装置であって、前記ステージユニットは、超音波を発生させる超音波発生部と、該超音波を受けて振動する振動板部とを有し、前記振動板部は、縦および横方向の長さは、前記基板の縦および横方向の長さより長く、前記ヒータユニットを内蔵しており、前記振動板部を振動させることで、該振動板部の上部に位置する前記基板を該振動板部の表面から所定の高さだけ浮上した状態で保持し、且つその状態において前記ヒータユニットを加温して該振動板部を所定の温度まで加熱することにより、前記基板を加熱乾燥させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された塗布膜を加熱環境下で乾燥させる加熱乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、基板上にレジスト液が塗布されたもの(塗布基板と称す)が使用されている。この塗布基板は、塗布装置により基板上にレジスト液が均一に塗布されることによって塗布膜が形成され、その後、例えば、下記特許文献1に示されるような加熱乾燥装置により塗布膜を乾燥させることにより生産される。
【0003】
この加熱乾燥装置は、チャンバ部に基板が収容された状態で、チャンバ内を加熱させることにより基板上の塗布膜を乾燥させるようになっている。具体的には、基板がチャンバ部に供給されると、基板の裏面に複数のピンやローラーなどを当接させることによって支持される。そして、この支持された状態でチャンバ部内の雰囲気温度をヒータ部にて加熱させると、基板上の塗布膜の溶剤が蒸発し塗布膜が乾燥する。また、このヒータ部は複数枚配置され、各ヒータ部にはヒータ部自身の温度を測定する測温体を有しており、各ヒータ部の温度が均一となるように、測温体による測定結果をフィードバックし、制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−292328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載された加熱乾燥装置では、塗布膜表面に乾燥ムラが発生する虞があるという問題があった。すなわち、ヒータ部によってチャンバ部内の雰囲気温度が加熱されるに伴ってチャンバ部の基板の温度も加熱されるが、複数のピン等によって支持される基板には、部分的な温度差が発生することになる。具体的には、加熱乾燥中、基板は、常に複数のピン等によって支持されているため、基板の裏面にピン等が当接する部分は、ピン等からの熱伝導の影響を受け、ピン等が当接していない部分に比べて温度が高くなる。そのため、温度差による溶剤の蒸発速度に差が生じ、ピン等が接する部分と接しない部分とに含まれる溶剤の濃度に差が生じることになる。したがって、この状態で完全に乾燥させると、ピン等が当接する部分に乾燥ムラが形成されてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、塗布膜に乾燥ムラが形成されることを抑えることができる加熱乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の加熱乾燥装置は、基板を保持するステージユニットと、前記基板温度を調節するヒータユニットと、を備える加熱乾燥装置であって、前記ステージユニットは、超音波を発生させる超音波発生部と、該超音波を受けて振動する振動板部とを有し、前記振動板部は、縦および横方向の長さが前記基板の縦および横方向の長さより長く、前記ヒータユニットを内蔵しており、前記振動板部を振動させることで、該振動板部の上部に位置する前記基板を該振動板部の表面から所定の高さだけ浮上した状態で保持し、且つその状態において前記ヒータユニットで加温して該振動板部を所定の温度まで加熱することにより、前記基板を加熱乾燥させることを特徴としている。
【0008】
上記加熱装置によれば、超音波振動により基板を浮上させるため、基板の裏面に当接することなく加熱乾燥を実施でき、基板裏面へのピン等の当接が起因の基板温度ムラが発生することなく、基板を乾燥させることが可能である。また、ヒータユニットが振動板部に内蔵されることにより、ヒータユニットがステージユニットと一体化して、一つのプレートヒータと見なすことができるため、昇温時の振動板部表面の温度分布を容易に制御でき、したがって、その昇温した振動板部によって加熱される基板を温度ムラ無く乾燥させることが容易となる。また、ヒータユニットとステージユニットとを一体化することで、加熱乾燥装置の構造を簡素化することも可能である。
【0009】
また、前記ステージユニットは、前記基板を側面より支持する基板支持部と、前記基板を搬送させる方向に該基板支持部を走行させる走行軸とを該振動板部側方に有し、前記基板支持部が前記基板を支持した状態で前記走行軸上を移動することにより、前記基板の浮上および加熱乾燥中に該基板を搬送させることを特徴とする構成とすることができる。
【0010】
また、その他の形態として、前記ステージユニットは、前記振動板部の表面に対して垂直な方向に回転軸を有したローラを該振動板部の両側方に、前記基板を搬送させる方向と平行に並ぶよう複数個ずつ備え、前記ローラが前記基板を挟んだ状態で一方向に回転することで、該基板の浮上および加熱乾燥中に該基板を搬送させることを特徴とする構成とすることもできる。
【0011】
これらの構成によれば、基板の加熱乾燥中に搬送を実施することにより、基板の搬送方向に沿ってヒータの温度ムラや温度勾配があった場合でもその領域を基板全面が同じように通過するため、塗布ムラが生じにくくなる。また、複数枚の基板を同時に搬送しながら乾燥させることもでき、前後の基板の乾燥中に加熱乾燥装置への基板の搬入および加熱乾燥装置からの基板の搬出を行えることから、複数枚の基板の加熱乾燥時にそれら基板の搬入搬出時間を無視することができるため、乾燥タクトを短縮させることが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加熱乾燥装置によれば、塗布膜に乾燥ムラが形成されることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における加熱乾燥装置の側面図である。
【図2】加熱乾燥装置の上面図である。
【図3】加熱乾燥装置の動作フローである。
【図4】他の実施形態における加熱乾燥装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における加熱乾燥装置の側面図である。加熱乾燥装置は、基板1を保持するステージユニット10およびヒータユニット20から構成されている。
【0016】
ステージユニット10は、超音波発生部11および振動板部12を有している。振動板部12は、1枚の振動板12a、または複数の振動板12aが水平方向に組み合わさった構成をとり、振動板部12の表面の縦方向および横方向の長さは、基板1の縦方向および横方向の長さよりも長い。また、各振動板12aの裏面には、ひとつ以上の超音波発生部11が当接しており、図示しない制御装置により超音波発生部11を動作させることで、振動板部12が振動する。振動板部12を振動させることで、振動板部12上部に放射音圧が発せられ、この放射音圧によって、振動板部12上にある物体には上向きの力が加わる。これにより、図示の通り、基板1を振動板部12の上空に一定量dだけ浮上させた状態で保持することが可能である。また、本実施形態では、dは0.1ミリ程度である。
【0017】
ヒータユニット20はひとつ以上のヒータから構成されている。本実施形態では、ヒータユニット20は複数の棒状のヒータであり、振動板部12の側面に均等な間隔を設けて空けられたヒータ挿入穴にそれら棒状のヒータが挿入されている。これにより、振動板部12を一つのプレートヒータと見なすことができ、また、均等な間隔を設けてヒータを挿入していることにより、各ヒータの温度を均一にすることで振動板部12全体の温度を均一に加熱することができる。そして、この加熱された振動板部12により、その上部にある基板1を全面にわたって均一な温度に加熱することが可能である。
【0018】
図2は、本実施形態における加熱乾燥装置の上面図である。本実施形態では振動板部12は、複数枚の振動板12aを一方向に並べて組み合わせることで、その上に基板1を複数枚並べることができる長さを有しており、この長手方向に沿って、ステージユニット10は振動板部12の側方に走行軸14を有している。走行軸14の構成は、本発明ではボールねじ+リニアガイドを採用しているが、ほかにもタイミングベルト、ラックアンドピニオンなどの直動機構を用いても良い。
【0019】
走行軸14には基板支持部13が取付けられており、図示していないモータ等を制御することで走行軸14を駆動させることにより、基板支持部13は走行軸14上を移動する。ここで、基板支持部13が基板1を支持した状態で走行軸14上を移動することにより、走行軸14が駆動する方向に基板1を搬送させることができる。また、本実施形態では、基板1の対角をひとつずつ支持するよう、図示の通り1枚の基板1に対し2個の基板支持部13を設けている。
【0020】
基板支持部13は、ツメ13aとベース13bが連結されたL形の形状を有し、ベース13bは走行軸14と固定されている。また、ツメ13aは、ベース13bとの連結部を軸として、エアシリンダなどでの制御により90度回転する機構を有し、ツメ13aの向きを走行軸の駆動方向と平行な状態と垂直な状態とに切り替えることが可能である。ツメ13aの向きが走行軸14の駆動方向と垂直である場合、ツメ13aとベース13bとが基板1の側面と当接し、基板1の動きを拘束することで基板1を支持、位置決めすることができる。
【0021】
次に、図2に示す基板支持部13を有する加熱乾燥装置の動作フローについて図3をもとに説明する。ここで、動作開始時の基板支持部13は、搬送開始位置にて待機しているものとし、ヒータユニット20は常に加熱状態にあるものとする。
【0022】
まず、基板1が上流工程より搬送開始位置へ搬入される(ステップS1)。基板の搬入方法は、コンベアによるもの、ローダによるものなど、種類は問わない。ここで、基板1が搬入された時点より、基板1の加熱乾燥が開始される。
【0023】
次に、ツメ13aが回転し、向きが走行軸14の駆動方向と垂直になることで、基板1が支持される(ステップS2)。
【0024】
次に、ツメ13a、ベース13bを含む基板支持部13が走行軸14上の移動を開始し、基板1の搬送が開始する(ステップS3)。この時点より、基板1が搬送終了位置に到達するまで、基板支持部13による基板1の搬送動作が続けられる。
【0025】
基板1の加熱乾燥および搬送が続けられ、基板1が搬送終了位置に到達し、基板支持部13による搬送が完了すると(ステップS4)、ツメ13aが回転し、向きが走行軸14の駆動方向と平行になる(ステップS5)。これにより、基板支持部13による基板1の支持が解除される。ここで、この後に基板支持部13が上昇し、基板1との干渉をさらに避ける動きを入れても良い。この際、前述のステップS2の前に基板支持部13の下降動作が追加される。
【0026】
次に、基板支持部13が搬送開始位置まで移動し、次の基板の搬送への待機状態となる(ステップS6)。
【0027】
最後に、加熱乾燥装置から基板1が搬出されることで加熱乾燥工程が終了し、次工程へと基板1が渡される(ステップS7)。ここで、基板搬入時と同様、搬出方法の種類は問わない。
【0028】
以上説明した加熱乾燥装置によれば、塗布膜に乾燥ムラが形成されることなく基板を加熱乾燥させることができ、また、基板の搬送と加熱乾燥を同時に実施することが可能である。
【0029】
図4は、他の実施形態における加熱乾燥装置の上面図である。この実施形態では、前記の基板支持部13、走行軸14のかわりに複数個のローラ15を振動板部12の側方に有する。各ローラ15は、すべて同一形状であり、円柱状の形状を有し、それらの上面および底面の両円形面の中心をローラ回転軸16が通っている。各ローラ回転軸16は振動板部12の表面と垂直に立てられており、振動板部12の各側方にて基板1の搬送方向と平行に配列されている。また、各ローラ15は、それらの底面が振動板部12の表面より上方、且つ基板1の裏面より下方に、また、上面が基板1の表面より上方にあるように配置されている。
【0030】
各ローラの円形面の半径をr、基板1の搬送方向と垂直な方向の幅をXとすると、この実施形態にて、振動板部12をはさんで正対する2つのローラ15の中心間距離を(2r+X)よりやや短くすることで、この2つのローラ15で基板1をはさむことができる。また、図示していないモータ等を制御し、例えばローラ15が基板1をはさんだ状態にて図中で上の方に配列された各ローラ15を左回り、下の方に配列された各ローラ15を右回りに、全ローラ一定の回転速度で回転させることで、基板1を図中で右に示す方向に送ることができる。
【0031】
以上のような構成とすることで、前述の実施形態と同様に、塗布膜に乾燥ムラが形成されることなく基板を加熱乾燥させることができ、また、基板の搬送と加熱乾燥を同時に実施することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 基板
10 ステージユニット部
11 超音波発生部
12 振動板部
12a 振動板
13 基板支持部
13a ツメ
13b ベース
14 走行軸
15 ローラ
16 ローラ回転軸
20 ヒータユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持するステージユニットと、
前記基板を加熱するヒータユニットと、
を備える加熱乾燥装置であって、
前記ステージユニットは、超音波を発生させる超音波発生部と、該超音波を受けて振動する振動板部とを有し、
前記振動板部は、縦および横方向の長さが前記基板の縦および横方向の長さより長く、前記ヒータユニットを内蔵しており、
前記振動板部を振動させることで、該振動板部の上部に位置する前記基板を該振動板部の表面から所定の高さだけ浮上した状態で保持し、且つその状態において前記ヒータユニットで加温して該振動板部を所定の温度まで加熱することにより、該振動板上の前記基板を加熱乾燥させることを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項2】
前記ステージユニットは、前記基板を側面より支持する基板支持部と、前記基板を搬送させる方向に該基板支持部を走行させる走行軸とを該振動板部側方に有し、前記基板支持部が前記基板を支持した状態で前記走行軸上を移動することにより、前記基板の浮上および加熱乾燥中に該基板を搬送させることを特徴とする、請求項1に記載の加熱乾燥装置。
【請求項3】
前記ステージユニットは、前記振動板部の表面に対して垂直な方向に回転軸を有したローラを該振動板部の両側方に、前記基板を搬送させる方向と平行に並ぶよう複数個ずつ備え、前記ローラが前記基板を挟んだ状態で一方向に回転することで、該基板の浮上および加熱乾燥中に該基板を搬送させることを特徴とする、請求項1に記載の加熱乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−57854(P2012−57854A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200911(P2010−200911)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】