説明

加熱体及び定着装置

【課題】簡単な構成で、必要な部分を限定して効率よく加熱することができる加熱体、及びこの加熱体を備えた定着装置を提供する。
【解決手段】内部が密閉され、減圧される中空の管体31の内周面に絶縁層33を介して電子源32を支持する。管体の断面は扁平な形状とし、前記電子源は内周面に近接して対向する部分に設ける。この電子源を負極性側として中空の管体と電子源との間に電圧を印加し、電子源から管体の内周面に向かって電子を放出して管体を加熱する。管体の内部は、隔壁によって軸線方向に並設された複数の領域に分割し、分割された領域のそれぞれについて設けられた電子源は、独立して電圧の印加が制御される。このような加熱体3は、無端状の定着ベルト1の内周面に当接されるとともに、定着ベルトの外周面が未定着のトナー像Tを担持した記録シートPに圧接され、加熱・加圧してトナー像を記録シート上に圧着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧された状態下で対向する電極間に電圧を印加し、電子源である陰極性側電極(カソード)より放出された電子により陽極性側電極(アノード)を加熱する加熱体、及び該加熱体を用いてトナー像を定着する定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、粉状のトナーを用いる画像形成装置においてトナー像を定着する工程は、トナー像を記録媒体上に静電的に転写した後、加熱部材と加圧部材との間に記録媒体を挟み込み、トナー像を加熱して記録媒体に圧着する方法が広く採用されている。
【0003】
このような定着を行う定着装置において、トナー像を加熱する加熱源としてハロゲンランプが広く用いられている。例えば、円筒状芯金の内部にハロゲンランプを有する定着ロールと、この定着ロールに押圧される加圧ロールとを備えるものとし、回転する定着ロールと加圧ロールとが互いに押圧されるニップ部を形成する。そして、このニップ部に未定着トナー像を担持した記録媒体を送り込んで搬送する。定着ロールは、内部に設けられたハロゲンランプからの放射熱によって加熱され、ニップ部を通過する記録媒体上のトナー像を加熱すると同時に加圧する。
【0004】
上記のようなハロゲンランプを加熱源として用いる場合、加熱開始時にハロゲンランプ自体を加熱する必要があり、このハロゲンランプからの輻射熱又は熱伝導によって定着ロールを加熱するのに時間を要する。このため、装置が起動する時や待機状態から復帰する時、定着ロールのウォーミングアップに時間を要するとともに消費電力が大きくなってしまう。また、ハロゲンランプのON・OFF時に通電電流が過渡的に流れる、いわゆるフリッカー現象が生じる。
【0005】
また、近年では環境問題への対応としてエネルギーの消費を抑制することも求められており、上記ウォーミングアップ時間をできる限り短くするとともに、待機時における消費電力を小さく抑えるために、定着部材のトナー像を加熱する部分を局部的に効率よく加熱することが求められている。
【0006】
このため、ハロゲンランプを加熱源とする替わりに電磁誘導加熱方式を採用した定着装置が、例えば特許文献1に提案されている。この電磁誘導加熱方式は、導電性層を有する加熱部材に誘導コイルによって発生させた磁界を作用させ、導電性層に発生する渦電流により加熱部材を発熱させるものである。このような加熱方式では、加熱部材を短い時間で加熱することができるという特徴を備えている。
【0007】
また、定着装置に使用できる加熱源として、特許文献2及び特許文献3には、電子源である陰極性側の電極(カソード)から放出された電子を陽極性側の電極(アノード)に到達させ、陽極性側の電極で生じる熱を利用する電子式加熱パイプが記載されている。
この加熱パイプは、円筒状の金属パイプの内部を減圧するともに、内部にはこの金属パイプと同一の軸線上に電気的に絶縁された状態で電子源を備えるものである。そして、電子源を負極性側として電子源と金属パイプとの間に電圧を印加し、電子源から電界放出された電子を金属パイプに到達させて、この金属パイプの周面を加熱する。この金属パイプを加熱定着ロールとして用いるものである。
【特許文献1】特開2000−242108号公報
【特許文献2】特開2002−260540号公報
【特許文献3】特開2004−319418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の電磁誘導加熱方式では、加熱される部材は導電性層を有するものとし、励磁コイル、このコイルを保持するボビン、励磁コイルのインピーダンスを調整するための磁性部材、励磁コイルに高周波電流を供給する電源装置等が必要となる。このため、部品点数が多くなり、製造コストが高くなる。
【0009】
また、特許文献2に記載の加熱パイプでは、金属パイプの内側で同一の軸線上に支持された電子源から放射状に金属パイプの全周に電子を放出し、金属パイプの全体を加熱するものとなっている。このため、加熱の開始から温度が上昇するのに時間がかかるとともに、消費電力量が大きくなってしまう。
【0010】
本願発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡単な構成で、必要な部分を限定して効率よく加熱することができる加熱体、及びこの加熱体を備えた定着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願に係る発明の加熱体は、内部が密閉され、減圧される中空管体と、該中空管体の内側で、該中空管体と電気的に絶縁状態で支持された電子源とを有するものとする。そして、前記中空管体の内部は、隔壁によって軸線方向に並設された複数の領域に分割されており、前記電子源は、分割された前記領域のそれぞれについて設けられる。前記中空管体と前記電子源との間には、前記電子源を負極性側として電圧が印加され、前記電子源から前記中空管体の内周面に向かって電子を放出して該中空管体を加熱するものである。
【0012】
前記電子源と前記中空管体との間の電圧の印加は、分割された領域に設けられたそれぞれの電子源について独立して制御することができる。
【0013】
この加熱体は、減圧された中空管体の内部が隔壁により軸線方向に複数の領域に分割され、分割された各々の領域に電子源が絶縁状態で支持されている。これにより、中空管体の分割された各々の領域に備えられた電子源と中空管体との間にバイアス電圧を印加することができる。これにより、電子源から電子を放出して中空管体の内周面へ飛ばすことができ、この電子が有するエネルギーを熱エネルギーとして中空管体を加熱することができる。したがって、部材数の少ない簡単な構成で中空管体の内周面を直接加熱することができ、ウォーミングアップ時間を短縮することができる。
【0014】
そして、分割された領域に設けられた各々の電子源への電圧印加が独立して制御されることにより、中空管体の軸線方向の加熱したい所望の領域のみを限定して加熱することができる。
【0015】
また、この加熱体では、前記電子源が、前記中空管体の内周面における周方向の所定の範囲に絶縁層を介して取り付けられているので、該中空管体の対向する内周面に向かって電子が放出され、中空管体の周方向の範囲を限定して加熱することができる。つまり、電子源が絶縁層を介して取り付けられている範囲では電子が放出されず、中空管体の内周面は、電子源と減圧された空間を介して対向している範囲のみに限定して効率よく加熱される。また、電子源は絶縁層によって簡単な構造で支持することができる。
【0016】
上記中空管体の断面は扁平な形状とし、該中空管体の内周面の互いに近接して対向する部分の一方に絶縁層を介して電子源を取り付けることができる。
このように構成することにより、中空管体の周方向における加熱しようとする範囲で内周面を電子源と近接して対向させることができる。したがって、電子源と対向する中空管体の内周面との間隙が小さくなり、小さい電圧の印加で強い電界を形成することができ、電子源から放出される電子の数が多くなって加熱の効率が向上する。また、加熱範囲で電子源と中空管体との間隙をほぼ一定にすることことができ、加熱範囲は均一に加熱される。
【0017】
前記電子源は、電極の表面に多数の微小突起を有するものを採用することができる。このように微小突起が形成されていることにより、微小突起の先端で強い電界の集中が生じ、電子の放出が低い電圧の印加で生じる。
上記微小突起は、例えば電極にコーティング層を設けるものとし、このコーティング層にカーボンナノチューブを混合しておくことによって形成することができる。ただし、これに限定されるものではなく、他の方法によって微小突起を設けるものであってよい。
【0018】
上記のような加熱体は、未定着のトナー像を担持した記録シートを加熱及び加圧してトナー像を記録シート上に定着する定着装置に用いることができる。特に、周方向に周回が可能に支持された無端状の定着ベルトの内周面にこの加熱体を当接して該定着ベルトを加熱し、この定着ベルトの外周面にトナー像を担持した記録シートを加圧部材によって押圧する定着装置に好適に用いることができる。
上記定着ベルトは、周方向に張力がほとんど導入されない状態で周回駆動されるものや、ローラ等の複数の部材に張架されるものを採用することができる。そして、上記加熱体は、記録シートが圧接される部分で定着ベルトを加熱するものであってもよいし、記録シートが圧接される位置の上流側で加熱するものであってもよい。
【0019】
上記のような定着装置に、本願発明に係る加熱体を用いることにより、簡単な構成で定着ベルトを急速に加熱し、短いウォーミングアップ時間でトナー像を記録シートに定着することができるとともに、効率の良い加熱が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本願発明に係る加熱体では、簡単な構成で、中空管体の限定された範囲を効率よく加熱することができる。また、この加熱体を、トナー像の定着を行うための定着装置に用い、無端状の定着ベルトを短いウォーミングアップ時間で効率よく加熱することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本願に係る発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は本願に係る発明の一実施形態である定着装置の概略断面図である。また、図2は図1中に示すA−A線での断面図である。
この定着装置は、無端状の周面を有する定着ベルト1と、この定着ベルト1の外周面に押圧される加圧ロール2と、該加圧ロール2が押圧される位置で定着ベルト1の内周面に当接され、該定着ベルト1を加熱する加熱体3と、無端状となった前記定着ベルトの内側で固定支持され、前記加熱体3を所定の位置に支持して前記加圧ロール2の押圧力に対抗する加圧対抗部材4とを備えている。そして、定着ベルト1と加圧ロール2との間にトナー像Tを担持した記録シートPを送り込み、トナー像Tを加熱及び加圧して記録シート上に圧接するものである。そして、定着ベルト1と加圧ロール2とが圧接されるニップ部の下流側には剥離部材9が設けられ、定着ベルト1に付着した記録シートを剥離して排出するものとなっている。
【0022】
上記定着ベルト1は、ステンレススチール(SUS)の薄膜からなる基層と、その上に積層された表面離型層とから構成されている。
基層としては、例えば、厚さ40〜80μmのSUSを用いることができ、本実施例では厚さ50μmのSUSの薄膜が使用されている。
【0023】
上記表面離型層は、記録シート上に転写された未定着トナー像と直接に接する層であるため、離型性が良くかつ耐久性の良い材料であるポリイミド樹脂やフッ素樹脂を用いることができる。本実施例では、厚さ30μmのPFAが使用されているが、1μm〜30μmの厚さを有していればよい。
また、基層の内周面には、当接されている加熱体3との摺動抵抗を軽減するためにフッ素樹脂をコーティングしてもよい。また、定着ベルト1の内面にシリコーンオイル等の離型剤を潤滑剤として塗布してもよい。
一方、基層と表面離型層との間には、耐熱性、熱伝導性が良いシリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等からなる弾性層を設けてもよい。
【0024】
上記加圧ロール2は、定着ベルト1と対向する位置に支持され、両端部がバネ5によって定着ベルト1側に付勢されるものであり、金属製の円筒状部材2aを芯材とし、該円筒状部材2aの表面には、シリコーンゴム・フッ素ゴムなどの耐熱性を有する弾性層2bと、最表面に表面離型層(図示しない)とを備えている。この加圧ロール2は、モータ10によって回転駆動され、定着ベルト1はこの加圧ロール2との圧接部における摩擦によって従動するものとなっている。本実施例では、加圧ロール2は、定着ベルト1を介して総荷重294N(30kgf)で加熱体3側に付勢されている。
【0025】
前記加圧対抗部材4は、図3に示すように、定着ベルト1の幅方向に軸線を有する棒状部材であり、両端部4aが定着ベルト1の側縁より突き出した形状となっている。この両端部4aが定着装置のフレーム6に固定支持され、定着ベルト1及び加熱体3を介して加圧ロール2から作用する押圧力に抵抗するものとなっている。
また、この加圧対抗部材4の両端部付近であって、定着ベルト1の側縁と対応する位置には、定着ベルトのガイド部材7が固定されている。このガイド部材7の摺擦部7aが、定着ベルト1の側縁付近の内周面に当接され、該定着ベルト1が周回駆動されるときの形状を拘束して、円滑な駆動を可能としている。
【0026】
加圧対抗部材4の材料としては、加圧ロール2から押圧力を受けたときのたわみ量が許容されるレベル以下で、好ましくは1mm以下になる程度の剛性を有している必要がある。例えば、ガラス繊維入りPPS(ポリフェニレンサルファイド)、フェノール、ポリイミド、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂等を用いるのがよい。
【0027】
上記加熱体3は、本願に係る発明の一実施形態であり、図1及び図2に示すように、上記加圧対抗部材4に固定支持され、定着ベルト1の内周面と当接して、直接に定着ベルト1を加熱するものである。この加熱体3は、アルミニウム合金やSUSの金属からなる中空の管体31を備えており、図4に示すように、この管体31は断面が扁平形状で内部に電子源32が固定支持されている。中空の管体31は、断面が扁平であることによって周面が互いに近接した部分31a,31bがあり、この部分がほぼ平坦な面を形成している。この平坦な部分の一方31aの内周面に電子源32が絶縁層33を介して支持され、この部分の外周面は上記加圧対抗部材4に固着されている。そして、対抗する平坦な部分の他方31bの外周面が定着ベルト1と当接し、この部分からの熱伝導によって定着ベルト1を加熱するものとなっている。
【0028】
上記電子源32は、管体31の周面が平坦な部分の一方に絶縁層33を介して固定支持されており、管体31が定着ベルト1と当接する側の内周面とは、約1mm程度の空隙をおいて対向するものとなっている。そして、図5に示すように、電子源32は金属からなる電極32aの上にコーティング層32bが形成されたものであり、コーティング層32bにはカーボンナノチューブからなるナノスケールの微小突起32cが形成されている。このカーボンナノチューブは、正確にはカーボンナノチューブを含有した煤であって、その成分はカーボンナノチューブ、無定形炭素、グラフェンの小片、カーボンナノチューブ生成のための触媒金属であるニッケルやイットリウム等を含むものである。
【0029】
上記コーティング層32bを形成する方法は以下の通りである。
上記カーボンナノチューブを含む煤をミキサーで粉砕してエタノール液と混合し、懸濁液を作る。この懸濁液をスプレーにより電子源32の電極32aに噴霧し塗布する。その後、粘着テープを塗布面に貼り付け、剥がすことによりカーボンナノチューブの微小突起32cを形成することができる。
なお、コーティング層32bに微小突起32cを形成するために、他の方法を採用することもできる。
【0030】
上記管体31の内部は、減圧されている。そして、上記電子源32と管体31との間には、電源装置8から電子源32を負極性側とするバイアス電圧が印加されている。例えば、電子源32と管体31との間に、電子源32が相対的に負極性となる電圧を印加してもよいし、管体31を電気的に接地し、電子源32に負極性の電位を付与するものであってもよい。
このバイアス電圧の印加により、電子源32から放出された電子が減圧された管体中を正極性側へ移動し、管体31の対向する平坦な部分(加熱面)31bに飛び込む。この電子のエネルギーが管体31の加熱面31bで熱エネルギーとなり、加熱される。
上記減圧された状態は、電子が飛行するのを妨げない程度に残留ガスが除去されている状態であればよく具体的には10-3Pa以下であればよい。
【0031】
本実施の形態では、電子源32と管体の加熱面31bとの間隙を1mmとしているが、この間隙が小さくなるほど電界放出される電子の量が多くなり、急速に加熱することができる。したがって、間隙を調整することにより加熱速度を制御することができる。
また、加熱面31bに対する電子源32の負のバイアス電圧が大きくなるほど、電界放出される電子の量が多くなり、加熱速度が速くなる。したがって、電子源32と管体31との間に印加する電圧を調整することによっても、加熱速度や加熱温度を制御することができる。
【0032】
なお、上記電子源32は、電極内に通電することによって加熱することもできる。これにより熱電子が放出され、管体31の加熱面31bを速やかに加熱することができる。また、電子源が電子引き出し電極つまりグリッドを有するものとし、コールドカソードとして電子を放出するものとすることもできる。
【0033】
また、上記加熱体3は、図4(b)に示すように管体31の内部に隔壁31cが設けられ、軸線方向に管体内部の空間が複数の領域に分割されている。そして、分割されたそれぞれの領域に絶縁層33を介して電子源32が取り付けられている。これらの電子源32に印加するバイアス電圧は、スイッチング素子34によりそれぞれの電子源32に独立に印加することができ、分割した領域毎の発熱を独立して制御することができるものとなっている。これにより、定着装置に送り込まれる記録シートのサイズに応じ、記録シートPが通過する領域で記録シートに熱が奪われ、記録シートが通過する通紙領域とその他の領域つまり非通紙領域とで温度差が生じても、通紙領域の温度を適切に維持するととともに、非通紙領域の過加熱を防止することができる。
【0034】
次に、上記定着装置の動作について説明する。
画像形成部において、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーによるトナー像Tが画像信号に基づいて形成され、図示しない転写装置により記録シートPに転写される。これらのトナーTは、熱可塑性樹脂のバインダに着色顔料を含有させることによって構成されている。
【0035】
一方、トナー像を形成する動作が開始されるのとほぼ同時に、加圧ロール2を駆動するためのモータ10に通電され、加圧ロール2が回転駆動される。そして、これに従動して定着ベルト1が周回移動する。さらに、加熱体3の電子源32と管体31との間には電圧が印加される。これにより、図4中に矢印Bで示すように電子源32から電界放出された電子が管体31の対向する周面に向かって移動し、電子の到達した部分が急速に加熱される。
【0036】
未定着のトナー像Tを担持した記録シートPは、トナー像Tが定着ベルト1に当接されるように重ね合わされ、加圧ロール2が押圧されるニップ部に送り込まれる。ニップ部では加圧ロール2と加熱体3との間で定着ベルト1と記録シートPとが強く圧接される。これとともに加熱体3から定着ベルト1を介してトナー像Tに熱が伝導され、トナーが軟化して記録シート上に圧着される。
【0037】
上記加熱体3は、断面が扁平な形状をしているので、ニップ部では平坦な面の広い範囲で定着ベルト1と圧接され、トナー像Tがこの範囲で加熱・加圧される。したがって、トナー像は十分に加熱され、良好な定着が行われる。そして、管体31の周面が平坦となった範囲で電子源32と管体31の内周面とがほぼ同じ間隔で対向し、この範囲がほぼ均一に加熱されるので、トナー像を加熱する温度が適切に制御され、光沢ムラやオフセット等のない良好な定着が行われる。また、管体31の周方向における定着ベルト1と当接する範囲に限定して加熱することができ、効率の良い加熱が実現される。
【0038】
さらに、管体31の内部空間が軸線方向に分割されていることにより、小サイズの記録シートを使用したときに、記録シートの通過領域のみを加熱する時間を設定して、この領域を定着に適切な温度に維持するともに、記録シートが通過しない領域の過加熱を防止することが可能となる。
【0039】
一方、加熱体3に内蔵される電子源32は、管体31の内周面と広い範囲で近接・対向しており、低い電圧でも多くの電子を放出して管体31の広い範囲を急速に加熱することができる。
さらに、電子源32の電極32aが有するコーティング層32bには、微小突起32cが設けられ、この先端サイズはナノスケールである。このため、微小突起32cの先端部おいて強い電界集中が起こり、低い電圧の印加で電子放出が生じる。これにより、高効率の加熱を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本願に係る発明の一実施形態である定着装置の概略断面図である。
【図2】図1に示す定着装置のA−A線における断面図である。
【図3】図1に示す定着装置で用いられる加圧対抗部材、加熱体及び定着ベルトのガイド部材を示す分解斜視図である
【図4】本願に係る発明の一実施形態であって、図1に示す定着装置で用いられる加熱体の断面図である。
【図5】図4に示す加熱体で用いられる電子源の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1:定着ベルト、 2:加圧ロール、 3:加熱体、
4:加圧対抗部材、 4a:加圧抵抗部材の端部、 5:加圧ロールを押圧するバネ、
6:定着装置のフレーム、 7:ガイド部材、 7a:摺擦部、 8:電源装置、 9:剥離部材、 10:モータ、
31:加熱体の管体、 31a:管体の加圧抵抗部材に固着される平坦な部分、 31b:管体の定着ベルトに摺擦される平坦な部分(加熱面)、 31c:隔壁、 32:電子源、 32a:電子源の電極、 32b:コーティング層、 32c:微小突起、 33:絶縁層、 34:スイッチング素子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が密閉され、減圧される中空管体と、
該中空管体の内側で、該中空管体と電気的に絶縁状態で支持された電子源とを有し、
前記中空管体の内部は、隔壁によって軸線方向に並設された複数の領域に分割されており、
前記電子源は、分割された前記領域のそれぞれについて設けられ、
前記電子源を負極性側として前記中空管体と前記電子源との間に電圧を印加し、
前記電子源から前記中空管体の内周面に向かって電子を放出して該中空管体を加熱することを特徴とする加熱体。
【請求項2】
前記電子源と前記中空管体との間の電圧の印加は、分割された領域に設けられたそれぞれの電子源について独立して制御されるものであることを特徴とする請求項1に記載の加熱体。
【請求項3】
前記電子源は、前記中空管体の内周面における周方向の所定の範囲に絶縁層を介して取り付けられ、該中空管体の対向する内周面に向かって電子を放出するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加熱体。
【請求項4】
前記中空管体の断面が扁平な形状であり、
該中空管体の内周面の互いに近接して対向する部分の一方に絶縁層を介して電子源が取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の加熱体。
【請求項5】
前記電子源は、電極の表面に多数の微小突起を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の加熱体。
【請求項6】
周方向に周回が可能に支持された無端状の定着ベルトと、
該定着ベルトの内周面に当接され、該定着ベルトを加熱する加熱体と、
前記定着ベルトの外周面に押圧される加圧部材とを有し、
前記定着ベルトと前記加圧部材との間に、トナー像を担持した記録シートを通過させ、加熱及び加圧して前記トナー像を前記記録シート上に定着する定着装置であって、
前記加熱体が、請求項1から請求項5までのいずれかに記載の加熱体であることを特徴とする定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−280752(P2007−280752A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104999(P2006−104999)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】