説明

加熱処理装置

【課題】常に一定の温度制御と、1850度以上の高温領域における温度制御が可能な加熱処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】処理室と、処理室内に設けられた加熱物支持部材と、加熱物支持部材内に配置された加熱手段と、加熱物支持部材の温度を測定する温度測定手段とを有する加熱処理装置であって、温度測定手段が、処理室の周壁に設けられた加熱物支持部材の放射する赤外線エネルギーを透過可能な透過窓の外部に配置されており、温度測定手段が、加熱物支持部材の放射する赤外線エネルギーを集光する集光部と、赤外線内の2波長の強度比に基づいて温度を算出する算出部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の加熱処理装置10の断面図である。加熱処理室11は、内壁鏡面仕上げにより反射率を高めたアルミニウム製で、流体流動部19に冷却用流体が流動可能にされている水冷アルミ製のチャンバである。この加熱処理室11は、10-2Pa程度以下の真空に排気可能になっているが、大気圧状態において加熱処理を行うことも可能である。
【0003】
熱分解炭素のコーティング層Aによってコーティングされている加熱物支持部材12内には、フィラメントとフィラメント電源とからなる加熱手段13が内蔵されており、加熱物支持部材12の図1上側に加熱処理を受ける基板14が置かれる。上側面に基板14が置かれる加熱物支持部材12には図示のようなセンサ15と熱電対16とが配備されており、これによって、加熱温度が検知されるようになっている。基板14の加熱は、フィラメント電源によりフィラメントに所定電圧を印可し、フィラメントで発生した熱電子を加速して加熱物支持部材12に衝突させ発熱させて行っている。加熱手段13としては、電子衝撃加熱用の熱電子発生手段、赤外線ランプ加熱用の赤外線ランプなどが採用される。
【0004】
加熱物支持部材12の内部は、加熱処理室11とは別系統の真空ポンプ等の排気手段によって、常時10-2Pa程度以下の真空に排気可能になっている。加熱処理装置10の温度制御として、加熱処理室11の側面のポート18からタングステンレニウム(W−Re)熱電対16を進入させ加熱物支持部材12側面の溝に挿入し、加熱物支持部材12の温度測定及び温度制御を行っていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−36370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の加熱処理装置10の温度制御では、加熱物支持部材12の温度制御に熱電対16を用いたが、問題点として、熱電対16は、加熱物支持部材12の溝へ単純に挿入されているため直接的な接地測定ではないこと、加熱物支持部材12側面の温度勾配の非常に急峻な場所を測定しているためキャップ17の温度及び基板14の温度との相関関係を取ることが不可能なことが挙げられる。また、従来の加熱装置10で使用したタングステンレニウム(W−Re)熱電対16は1850度以上の高温で劣化及び破断が生じ温度制御が出来なくなり、装置の加熱プロセスにおける要求温度(1500〜2400度)をカバーすることが出来なかった。そこで、本発明は上記問題点を解決することを目的とするものであり、常に一定の温度制御と1850度以上の高温領域における温度制御が可能な加熱処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、処理室と、処理室内に設けられた加熱物支持部材と、加熱物支持部材内に配置された加熱手段と、加熱物支持部材の温度を測定する温度測定手段とを有する加熱処理装置において、温度測定手段が、処理室の周壁に設けられた加熱物支持部材の放射する赤外線エネルギーを透過可能な透過窓の外部に配置されており、温度測定手段が、加熱物支持部材の放射する赤外線エネルギーを集光する集光部と、赤外線内の2波長の強度比に基づいて温度を算出する算出部とを有するように構成したものである。
【0008】
このような温度測定手段を加熱物支持部材温度の観測及び温度制御に用いることにより、非接触で直接温度測定が可能となり且つ温度勾配の無い部分を観測出来ることから、常に一定の温度制御が可能となる。且つ最大の問題であった1850度以上の高温領域における温度制御が可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従った加熱処理装置20によれば、放射赤外線内の2波長の強度比に基づいて温度測定することにより、非接触で且つ加熱物支持部材22や熱受体(キャップ)25の表面状態に影響されることなく、常に安定な状態で直接的にキャップ25の温度及び加熱物支持部材22の温度を測定でき、且つ基板26の温度を精度良く推測することが可能となった。また、温度測定手段24を用いることにより、タングステンレニウム(W−Re)熱電対で温度制御不可能であった1850度以上の高温領域まで(2400度)を信頼性良く測定することが可能となった。
【0010】
さらに、本発明に従った加熱処理装置20を採用することにより、加熱処理室21を排気した際に生じる基板26のズレを防ぐことができ、常に同じ状態で放射光を測定することができ、高い信頼性が得られる。
【0011】
また、本発明に従った加熱処理装置20を採用することにより、個々の基板26のサイズに依存せず熱容量が一定となり、加熱パワーに対して、基板温度が再現性良く制御可能となった。また−設定温度に対する、基板サイズに依存した温度変化がなくなり、基板温度の確認が可能となった。また、熱容量が一定となることによりエミッション電流値の変化が無くなり、昇温過程において再現性のある温度の立ち上がりが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の加熱処理装置の断面図である。
【図2】本発明の加熱処理装置の断面図である。
【図3】本発明の2波長放射温度計の構造図である。
【図4】本発明の加熱処理装置の加熱時間に対する測定温度変化を示す図である。
【図5】本発明の火傷防止手段の説明図である。
【図6】本発明の上部放射温度計による温度測定結果を示す図である。
【図7】本発明に基づく基板加熱処理装置概略図である。
【図8】本発明に基づく基板加熱処理装置概略図である。
【図9】本発明に基づく基板加熱処理装置概略図である。
【図10】従来技術に基づいた加熱物支持部材の加熱特性を示す図である。
【図11】本発明に基づいた加熱物支持部材の加熱特性を示す図である。
【実施例】
【0013】
以下、この発明の第1実施例を図2乃至図6を参照して、説明する。装置概略図を図2に示す。真空排気可能な加熱処理室21内(真空容器)に加熱物支持部材22が配置されており、上記加熱物支持部材22内も真空排気される構造を持ち且つ加熱物支持部材22内には加熱物支持部材22上部を加熱できるフィラメント23a及びフィラメント電源23bからなる加熱手段23が内蔵されている。本実施形態では加熱処理室21の周壁外部に、加熱物支持部材22の上面及び側面が測定可能な温度測定手段24を設置し、キャップ25の温度及び加熱物支持部材22の温度を同時に測定出来る構成にし、温度測定手段24を用いてキャップ25及び加熱物支持部材22の温度を非接触で直接的に測定し、1850度以上の高温領域までの温度制御を可能とする。温度測定精度を高めるため、キャップ25に、加熱物支持部材22の放射エネルギーを透過可能な透過穴を設けることも可能である。
【0014】
加熱手段23は、フィラメント23aとフィラメント電源23bとから構成される。基板26の加熱は、フィラメント電源23bによりフィラメント23aに所定電圧を印可し、フィラメント23aで発生した熱電子を加速して加熱物支持部材22に衝突させ発熱させて行っている。加熱処理室21の周壁に加熱物支持部材22の放射エネルギーを透過可能な透過窓27を配備し、加熱処理室21外に、透過窓27を介して加熱物支持部材22の放射する赤外線エネルギーを集光する集光部と、赤外線内の2波長の強度比に基づいて温度を算出する算出部とを有する温度測定手段24(パイロメータ又は放射温度計)を設けた。
【0015】
図3は、2波長(2色式)で測定可能な集光部31及び算出部36を有する温度測定手段30(パイロメータ)の模式図である。本発明に使用する温度測定手段30であるパイロメータの構造と原理を以下に示す。
【0016】
真空との隔壁窓材には石英ガラスを用い、これを通し真空中の加熱物支持部材22の温度を測定する。800〜2300℃までの高温領域の加熱物支持部材22の温度を測定するため、測定波長は1.55μmと0.9μmの2色を用いる。
【0017】
集光部31(IR-FL2)で集光された赤外線は、グラスファイバ32を通し算出部36(IR-FAQHNL)に入射される。
【0018】
ここで算出部36に入射した入射光は、Si製温度素子33とInGaAs製温度素子34の両方に分配される(2色式)。InGaAs素子34で1.55μmのピーク波長強度を電圧に、Si製温度素子33で0.9μmのピーク波長強度を電圧に変換する。
【0019】
演算回路35では、予め設定された放射率ε(本実験では0.9に設定)と、2波長の強度比に基づき温度を算出し、温度信号を外部に出力させる。
【0020】
2色式(2波長を検出する)により、入射する赤外線強度そのものを直接温度に変換する場合と比較して、測定する物体(ここでは加熱物支持部材22または、キャップ25)の表面状態によらず、精度良く、信頼性良く温度のモニタが可能である。すなわち、高純度カーボンまたは、高純度カーボンに熱分解カーボンをコーティングして用いている加熱物支持部材22または、キャップ25が、長期繰り返し使用により、表面が荒れたり、コーティングが剥がれたり、それらに基板26からの不純物等が付着することがある。温度測定手段24として短波長式の放射温度計(例えば、チノー(株)製IR-CAS)を用いた場合、放射率εの変化が直接温度に影響するため、表示温度が実際温度と異なり、基板26を所望の温度とは異なって加熱することで、再現性が得られない場合がある。一方、温度測定手段24として2波長式の放射温度計を用いた場合には、長波長側(例えば1.55μm)と短波長側(例えば0.9μm)との赤外線強度比率を演算して、温度を算出しているため、長期使用などにより表面の放射率εが変化しても、実際の温度を表示でき、再現性良い基板の加熱が可能である。
【0021】
また、短波長式放射温度計で、高温領域を測定した場合、レンズ口径がψ20mmと大きいため、加熱物支持部材22または、キャップ25だけではなく、他の領域(例えば、加熱処理室21の壁面)までを含めた測定となり、所望の場所を測定することが困難である。一方、2色式放射温度計は、測定口径をψ2mm〜ψ5mm程度に絞ることが出来、加熱物支持部材22または、キャップ25の所望の場所を測定することが可能である。
【0022】
図2に示すように、加熱処理室21の上面側と側面側に設けた温度測定手段24に制御手段28を接続し、この制御手段28により加熱物支持部材22の温度を800度から2300度の範囲で制御する。加熱物支持部材22の温度が2300度以上になった時前記フィラメント電源23bをオフする。
【0023】
制御手段28は、温度測定手段24から加熱物支持部材22の測定温度値を入力する温調計28aと、温調計28aから入力された測定温度値と設定温度値とを比較しフィラメント電源23bへの電力値を制御するシーケンサー28bと、測定する物体の表面の温度を表示するGOT28c(グラフィックオペレーションターミナル)と、から構成される。
【0024】
温度測定手段24を用いた温度の制御方法を、以下に示す。第1に、予め、設定温度、最大エミッション電流値を、シーケンサー28bに入力する。第2に、制御用高温温度測定手段24(加熱処理室21の上面側に設けたもの)で加熱物支持部材22または、加熱物支持部材22に被せたキャップ25の温度を測定する。第3に、測定値は温調計28aに入力され、シーケンサー28bで入力された設定値と温度を比較し、エミッション電流値を制御するように、シーケンサー28bによりフィラメント電源23bへの電力値がフィードバック制御されヒータ温度が制御される一方、GOT28c(グラフィックオペレーションターミナル)に温度が表示される。第4に、過昇温防止の目的から、加熱物支持部材22側面の温度を測定するモニタ用高温温度測定手段24の温度信号がシーケンサー28bに入力され、過昇温限界の2300℃以下であることを監視している。万が一、設定値を越えた場合、ヒータの保護のため自動的にフィラメント電源23bの出力がオフされる。また、このモニタ用高温温度測定手段24の温度信号によって示される温度も、GOT28c(グラフィックオペレーションターミナル)画面上に表示される。
【0025】
上述した加熱処理装置20の温度制御に加えて、本発明に従えば、図2に示す加熱処理装置20の温度測定手段24の接続不良に起因する、加熱処理装置20の損傷を最小限に抑制することも可能である。ここにいう温度測定手段24の接続不良とは、例えば、図3のグラスファイバ32と算出部36との接続不良などを含むものである。温度測定手段24にこのような接続不良が存在する場合、正確な加熱処理装置20の温度制御が不可能となり、過度の加熱による重大な損傷が加熱処理装置20に発生するおそれがある。より具体的に説明すれば、以下のようになる。
【0026】
メンテナンス等により、グラスファイバ32を一度取り外したまま、グラスファイバ32を算出部36に接続しないで使用した場合、温度測定手段24の電源が正常であれば、温度測定手段24からは室温レベルの温度信号が制御手段28の温調計28aへと入力され、異常とは認められない。エミッション電圧2.8kV、最大エミッション電流値6.5A、設定温度1900℃の条件で加熱を開始すると、接続が正常であれば、図4に示すように、約3分半後に温度表示が900℃以上を示す。図4は、本発明に従った加熱処理装置20を実装した場合の、加熱時間(分)に対する被測定部位の測定温度変化(℃)を示すものである。本実施例においては、規定温度は900℃に設定されており、当該規定温度に基づいて、以下に説明するようなエラー制御が実行される。
【0027】
グラスファイバ32と算出部36との接続が正常になされていない状況においては、フィラメント23aをフィラメント電源23bからの出力により加熱し、過熱支持部材22を加熱しても、温度測定手段24から出力される温度信号は、800℃未満を維持したままとなる。このような状態のもとでは、加熱処理装置20の温度制御は不可能であり、過度の加熱による重大な損傷が装置20に発生するおそれが生じる。
【0028】
そこで、本実施例では、8分間を越えても温度測定手段24からの温度信号が規定温度900℃以上を表示しない場合、グラスファイバ32と算出部36との接続不良とみなし、フィラメント電源23bからの出力を遮断し、GOT28cにエラーを表示させるように構成し、高温での過度の加熱を防ぎ、装置20の損傷を最小限に抑えることを可能とした。エラー表示は、温度測定手段24から入力された温度信号を受信したシーケンサー28bを介して、GOT28cにおいてなされる。
【0029】
本発明に従えばさらに、図2に示す加熱処理装置20の温度測定手段24の故障に起因する、加熱処理装置20の損傷を最小限に抑制することが可能となる。ここにいう温度測定手段24の故障とは、例えば、温度測定手段24の電源ケーブルが切断された場合などを含むものである。このような故障は、メンテナンスや基板26の出し入れにより、温度測定手段24が取り付けられている蓋の開閉を繰り返すことによって発生することがある。温度測定手段24にこのような故障が存在する場合、加熱処理装置20の温度制御が不可能となり、過度の加熱による重大な損傷が装置20に発生するおそれがある。
【0030】
そこで別の実施例では、温度測定手段24からの温度信号が制御手段28側で検知されないとき、シーケンサー28bを介して、フィラメント電源23bの出力を遮断し、GOT28cにエラーを表示させ、許容範囲を超える高温での加熱を防ぎ、もって加熱処理装置20の損傷を最小限に抑えるように構成した。また、温度測定手段24と制御手段28とを接続している信号ラインが断線した場合にも、温度の電気信号が制御手段28に入力されず、加熱手段23の温度制御が不可能になる。このような場合に、加熱を継続すると加熱処理装置20に重大なダメージをきたす恐れがあるため、温度測定手段24からの電気信号が制御手段28で検知できない場合は、フィラメント電源23bの出力を遮断し、GOT28cにエラーを表示させる。
【0031】
本発明に従えばさらに、図2に示す加熱処理装置20の加熱手段23の機能不全に起因する、加熱処理装置20の損傷を最小限に抑制することが可能となる。ここにいう加熱手段23の機能不全とは、何らかの不具合によって、加熱手段23が実行する加熱温度制御のためのPID制御が十全に機能しないことを含むものである。加熱手段23は、PID制御により温度制御を行っているが、例えばPID制御機能が何らかの不具合により動作しない場合が考えられる。このような状況のもとで加熱を継続すると、加熱処理装置20に重大なダメージをきたす恐れがあるため、さらに別の実施例では、温度測定手段24から入力される温度信号が2100℃を超えており、且つそのような温度信号を3秒間越えて検出した場合、シーケンサー28bを介して、フィラメント電源23bの出力を遮断し、GOT28cにエラーを表示させるように構成した。
【0032】
図5は、火傷防止手段51の説明図である。図5に示された加熱処理装置20の構成については、図2に示した加熱処理装置20のそれと同様であるので、詳細は図2の説明に譲る。加熱処理室21の側面側に設けた温度測定手段52に、火傷する危険性の有無を検知すると共に検知結果に基づき加熱処理室21に接続されたベント手段53に信号を入力する火傷防止手段51を接続した。火傷防止手段51は、温度測定手段52で検出した測定温度値と設定温度値とを比較し比較結果に基づき加熱処理室21に接続されたベント手段53に信号を入力するシーケンサー51aと、測定温度値を表示するGOT(グラフィックオペレーションターミナル)51bとから構成される。
【0033】
温度測定手段52は、0度から500度の範囲で測定可能なパイロメータである。まず、パイロメータの機構について説明する。本実験に用いた火傷防止インターロック用パイロメータは、検出波長8〜14μmで、0から500℃まで測定可能なキーエンス製FT-30である。本パイロメータの温度センサ部は、赤外線吸収膜の下に熱電対が網目状に配置されているサーモパイルを使用することで、応答性を高めている。
【0034】
次に、火傷防止手段51について説明する。500℃以下の低温領域を非接触で測定するために、8〜14Μmμmという長波長側の赤外線を検出している。このため、真空との隔壁となるビューイングポートの窓材は、CaF2を用いている。低温パイロメータ52(加熱処理室21の一方の側面側に設けたもの)で検出された赤外線を温度の電気信号に変換し、シーケンサー51aに入力する。シーケンサー51aは、予め設定されたインターロック温度との比較を行い、火傷する危険性の有無を検知する。測定温度が、設定温度よりも低い場合にのみ、加熱処理室(チャンバ)21のベントがなされる。また、GOT(グラフィックオペレーションターミナル)51bの画面には、低温パイロメータの温度を常時表示させている。
【0035】
図6は、本発明に従った加熱処理装置20を実装した場合の、時間(秒)に対する、加熱物支持部材22又はキャップ25の測定温度(℃)の変化を示している。(1)は、上部温度測定手段24を用いた場合の温度測定結果を示すものである。本実施例においては、加熱物支持部材22に載置されている基板26をキャップ25で覆っているため、測定される温度はキャップ25の温度である。(2)は、側面温度測定手段24を用いた場合の、加熱物支持部材22の温度測定結果を示すものである。Aは、被測定部位を、2000度の高温領域で6分間維持した状態を示している。図6から見て分かるように上部2000度の高温領域でも安定して制御できることが分かる。なお、本実施例においては、加熱物支持部材22に載置されている基板26をキャップ25で覆った場合を説明したが、単に加熱物支持部材22に基板26を載置した状態で図2及び図5記載の加熱処理装置20を実装することも可能である。
【0036】
次に、この発明の第2の実施形態を図7〜図11を参照して説明する。図7において、加熱処理室71内部に配置された加熱物支持部材72、加熱物支持部材72に被せたキャップ73及び加熱物支持部材72上部に設けられた溝76に配置された基板74が示されている。さらに、加熱物支持部材72内には、加熱物支持部材72上部を加熱できる加熱手段75が配置されている。また、加熱処理室71内には、中間フランジ77が設けられている。図8及び図9についても、加熱物支持部材82、92上部に基板搬送トレイ86又は囲い込み板96が設けられている点を除き、同様の構造が示されている。すなわち、図8においては、図7に示される加熱物支持部材72上部に設けられた溝76の代わりに、基板搬送トレイ86が配置されており、図9においては、図7に示される加熱物支持部材72上部に設けられた溝76の代わりに、囲い込み板96が配置されている。なお、第1の実施形態の同一構成部分(図2及び図5記載の温度測定手段、制御手段、火傷防止手段)は説明及び図面への記載を省略する。
【0037】
図7及び図8に示す加熱処理装置70及び80において、加熱物支持部材72上部に設けられた溝76及び基板搬送トレイ86には、処理基板74及び84がそれぞれ嵌め込まれている。また図9に示す加熱処理装置90においては、基板94と同等な厚さで基板94周辺を取り囲むグラファイト製(又はSiC製)の囲い込み板96が加熱物支持部材92上に配置され、囲い込み板96内部に基板94が嵌め込まれている。なお、囲い込み板96の表面は鏡面処理されているが、裏面は熱の吸収効率を効果的に高める処理等が施されていることが望ましい。
【0038】
図1に示す従来方式と、本発明が提案した方式により、加熱物支持部材の加熱特性を調査した。図10は、従来の方式に基づいた場合の、加熱物支持部材の加熱特性を示している。図11は、本発明が提案する方式に基づいた場合の、加熱物支持部材の加熱特性を示している。図10及び図11に示す(1)乃至(4)はそれぞれ、時間(秒)に対する加熱物支持部材温度(℃)変化を示すものである。(1)は、基板なしの場合の、加熱物支持部材の設定温度2000度で保存時間6分の加熱を実施した場合の加熱特性を示す。(2)は、1インチSiC基板を配置した場合の、加熱物支持部材の設定温度2000度で保存時間6分の加熱を実施した場合の加熱特性を示す。(3)は、2インチSiC基板を配置した場合の、加熱物支持部材の設定温度2000度で保存時間6分の加熱を実施した場合の加熱特性を示す。(4)は、4インチSiC基板を配置した場合の、加熱物支持部材の設定温度2000度で保存時間6分の加熱を実施した場合の加熱特性を示す。
【0039】
図10及び図11に示す(a)乃至(d)はそれぞれ、時間(秒)に対するエミッション電流(A)の変化を示すものである。(a)は、基板なしの場合の、エミッション電流の変化を示す。(b)は、1インチSiC基板を配置した場合の、エミッション電流の変化を示す。(c)は、2インチSiC基板を配置した場合の、エミッション電流の変化を示す。(d)は、4インチSiC基板を配置した場合の、エミッション電流の変化を示す。
【0040】
図10及び図11から見て分かるように従来方式の場合、個々の基板を設置することにより、エミッション電流値が変化しトレイ内の熱容量が変化し、温度上昇の立ち上がりにも変化が見られた。これに対し本発明が提案する方式では基板サイズに依存せず、個々の異なった基板を配置してもエミッション電流値はほぼ一定で、トレイ内の熱容量が変化せず、且つ温度上昇における立ち上がりが常に一定の値を示すことから本発明の有効性が証明された。
【符号の説明】
【0041】
10 加熱処理装置
11 加熱処理室
12 加熱物支持部材
13 加熱手段
14 基板
15 センサ
16 熱伝対
17 キャップ
18 ポート
19 流体流動部
20 加熱処理装置
21 加熱処理室
22 加熱物支持部材
23a フィラメント
23b フィラメント電源
24 温度測定手段
25 キャップ
26 基板
27 透過窓
28 制御手段
28a 温調計
28b シーケンサー
28c GOT
30 温度測定手段
31 集光部
32 グラスファイバ
33 Si温度素子
34 InGaAs温度素子
35 演算回路
36 算出部
50 加熱処理装置
51 火傷防止手段
51a シーケンサー
51b GOT
52 温度測定手段
53 ベント手段
70 加熱処理装置
71 加熱処理室
72 加熱物支持部材
73 キャップ
74 基板
75 加熱手段
76 溝
77 中間フランジ
80 加熱処理装置
81 加熱処理室
82 加熱物支持部材
83 キャップ
84 基板
85 加熱手段
86 基板搬送トレイ
87 中間フランジ
90 加熱処理装置
91 加熱処理室
92 加熱物支持部材
93 キャップ
94 基板
95 加熱手段
96 囲い込み板
97 中間フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁が鏡面に仕上げされた真空排気可能な水冷されたアルミニウム製真空加熱処理室と、
前記真空加熱処理室を排気可能とする排気手段と、
前記処理室内に配置された基板を加熱する加熱部材と、
該基板を覆う熱受け体と、
該加熱部材と該熱受け体の温度を非接触で測定する温度測定手段と
を有する真空加熱処理装置であって、
前記温度測定手段が、前記処理室の周壁に設けられた前記加熱部材の放射する少なくとも0.9マイクロメートルと1.55マイクロメートルの赤外線エネルギーを透過可能な透過窓の外部に配置されており、
前記温度測定手段が、前記加熱部材と熱受け体の放射する赤外線エネルギーを集光する集光部と、放射率(ε)を設定することができる前記赤外線内の2波長の強度比に基づいて温度を算出する算出部とを有することを特徴とする真空加熱処理装置。
【請求項2】
前記温度測定手段は、800度から2300度の範囲で測定可能な放射温度計又はパイロメータである請求項1記載の真空加熱処理装置。
【請求項3】
前記加熱部材は、フィラメントとフィラメント電源とからなり、
前記フィラメントで発生した熱電子を加速して衝突させることにより、加熱部材を発熱させることを特徴とする請求項1又は2記載の真空加熱処理装置。
【請求項4】
前記処理室の上面側と側面側に設けられた前記温度測定手段が、制御手段に接続しており、
前記制御手段が、前記加熱部材の温度を800度から2300度の範囲で制御すると共に前記加熱部材の温度が設定温度以上になった時、前記フィラメント電源をオフすることを特徴とした請求項3記載の真空加熱処理装置。
【請求項5】
前記制御手段が、
前記加熱部材または熱受け体の測定温度値を前記温度測定手段から入力する温調計と、
前記温調計から入力される測定温度値と設定温度値とを比較し前記フィラメント電源への電力値を制御するシーケンサーと、
前記シーケンサーに接続しており、前記フィラメント温度を表示するグラフィックオペレーションターミナルと、からなることを特徴とする請求項4記載の真空加熱処理装置。
【請求項6】
前記温度測定手段が、制御手段に接続しており、
前記制御手段が、
前記温度測定手段からの測定温度信号を入力する温調計と、
前記温調計からの入力に基づいて前記加熱部材を制御するシーケンサーと、
前記シーケンサーに接続するグラフィックオペレーションターミナルとからなり、
前記シーケンサーが、入力された前記測定温度値が規定時間経過後も規定温度に達しない場合に、前記加熱部材を停止させるとともに、前記グラフィックオペレーションターミナルにエラーを表示させることを特徴とする、請求項1記載の真空加熱処理装置。
【請求項7】
前記温度測定手段が、制御手段に接続しており、
前記制御手段が、
前記温度測定手段からの測定温度信号を入力する温調計と、
前記温調計からの入力に基づいて前記加熱部材を制御するシーケンサーと、
前記シーケンサーに接続するグラフィックオペレーションターミナルとからなり、
前記シーケンサーが、前記温調計からの測定温度値入力が検出されない場合に、前記加熱部材を停止させるとともに、前記グラフィックオペレーションターミナルにエラーを表示させることを特徴とする、請求項1記載の真空加熱処理装置。
【請求項8】
前記温度測定手段が、制御手段に接続しており、
前記制御手段が、
前記温度測定手段からの測定温度信号を入力する温調計と、
前記温調計からの入力に基づいて前記加熱部材を制御するシーケンサーと、
前記シーケンサーに接続するグラフィックオペレーションターミナルとからなり、
前記シーケンサーが、前記温度測定手段からの前記測定温度信号が規定温度に到達し且つその状態が規定時間を越えて継続する場合に、前記加熱部材を停止させるとともに、前記グラフィックオペレーションターミナルにエラーを表示させることを特徴とする、請求項1記載の真空加熱装置。
【請求項9】
前記処理室の側面側に設けた前記温度測定手段が、火傷防止手段に接続しており、
前記火傷防止手段が、
火傷する危険性の有無を検知する手段と、
前記検知結果に基づき前記処理室に接続されたベント手段に信号を入力する
手段とを有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の真空加熱処理装置。
【請求項10】
前記温度測定手段は、0度から500度の範囲で測定可能な放射温度計である請求項9記載の真空加熱処理装置。
【請求項11】
前記火傷防止手段が、
前記温度測定手段から入力した測定温度値と設定温度値とを比較し比較結果に基づき前記処理室に接続されたベント手段に信号を入力するシーケンサーと、
前記シーケンサーに接続しており、前記測定温度値を表示するグラフィックオペレーションターミナルとからなることを特徴とする請求項10記載の真空加熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−96768(P2010−96768A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297691(P2009−297691)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【分割の表示】特願2009−515017(P2009−515017)の分割
【原出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】