説明

加熱方向識別部品および機器

【課題】焼損時の加熱方向を簡単に識別する。
【解決手段】第1の耐熱性を有し、互いに対向した一対の対向壁を有する部品本体筐体110と、その部品本体筐体110に収納された金属薄板120とを備えた加熱方向識別部品100を用いる。金属薄板120と一対の対向壁それぞれとの間には、第1および第2の引張コイルバネ130、140によって各対向壁の損壊で失われる各力が働いていて、その力の双方が保たれているときは収納位置および形状も保たれる。そして、その力の一方が失われたときは他方の力によって形状が変化する。さらに、この金属薄板120には、その変化した形状が、その変化の方向が判別可能な物理的痕跡として残る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、機器が焼損したときにその焼損が機器外からの熱によるのか機器内からの熱によるのかを識別する加熱方向識別部品、および、そのような加熱方向識別部品が搭載された機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動作中の熱暴走による発火等を回避するための安全対策が施されている機器が普及している(例えば、特許文献1参照)。例えばコンピュータ等の中にも、このような安全対策が施されているものがある。しかし、例えば、火災の発生現場における火元付近で機器が焼損しているという様な状況が生じた場合には、その機器に出火原因の疑いが掛かってしまう恐れがある。
【0003】
従来、このような場合には、火災発生現場から回収された機器に対して、専門家が、外観確認、CTスキャナによる断面確認、あるいは解体による内部確認を行い、焼損が機器外からの熱によるのか機器内からの熱によるのかの識別を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−7482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、識別に要する上記のような作業は、専門家にとっても煩雑なものである。さらに、火災発生現場の状況が、例えば機器の内部部品が散乱してしまっている様な状況であると、上記の作業は一層煩雑なものとなってしまう。
【0006】
本件は上記事情に鑑み、焼損時の加熱方向を簡単に識別することができる加熱方向識別部品、および、そのような加熱方向識別部品が搭載された機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する第1の加熱方向識別部品は、一対の対向壁と、支持壁と、痕跡部材と、弾性部材とを備えている。
【0008】
一対の対向壁は、第1の耐熱性を有し、互いに対向したものである。
【0009】
支持壁は、上記第1の耐熱性よりも高い第2の耐熱性を有し、上記一対の対向壁を支持してその一対の対向壁とともに内部空間を形成したものである。
【0010】
痕跡部材は、上記第1の耐熱性よりも高い第3の耐熱性を有し、上記内部空間中央かつ上記対向壁間に配置されたものである。
【0011】
弾性部材は、上記内部空間内において、2つの対向壁と上記痕跡部材に接続されたものである。
【0012】
また、上記目的を達成する第1の機器は、上記第1の加熱方向識別部品と、筐体とを備えている。
【0013】
そして、上記第1の加熱方向識別部品が、上記筐体内の、その筐体の外部からの熱が上記一対の対向壁のうちの一方の対向壁に伝わり、その筐体の内部からの熱が他方の対向壁に伝わる位置に配置されている。
【0014】
また、上記目的を達成する第2の加熱方向識別部品は、一対の対向壁と、支持壁と、痕跡部材と、弾性部材とを備えている。
【0015】
一対の対向壁は、第1の耐熱性を有し、互いに対向したものである。
【0016】
支持壁は、上記第1の耐熱性よりも高い第2の耐熱性を有し、上記一対の対向壁を支持してその一対の対向壁とともに内部空間を形成したものである。
【0017】
弾性部材は、上記一対の対向壁の間に延引あるいは圧縮された状態で配置されて両端それぞれがその一対の対向壁のそれぞれに接続されたものある。
【0018】
痕跡部材は、上記第1の耐熱性よりも高い第3の耐熱性を有し、上記内部空間に一対が設けられ、その一対の各々が上記弾性部材の両端それぞれに交差し、その弾性部材の端部の移動の痕跡を残すものである。
【0019】
また、上記目的を達成する第2の機器は、上記第2の加熱方向識別部品と、筐体とを備えている。
【0020】
そして、上記第2の加熱方向識別部品が、上記筐体内の、その筐体の外部からの熱が上記一対の対向壁のうちの一方の対向壁に伝わり、その筐体の内部からの熱が他方の対向壁に伝わる位置に配置されている。
【発明の効果】
【0021】
本件によれば、焼損時の加熱方向を簡単に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】機器の具体的な実施形態であるノート型のパーソナルコンピュータ(ノートPC)を、そのノートPCが開かれた開状態について示す斜視図である。
【図2】閉状態にあるノートPCを、本体部の裏面側から見た斜視図である。
【図3】図2に示すバッテリパックを、本体部から取り外して見た斜視図である。
【図4】図3に示すバッテリパックの、図3中の切断線A−Aに沿った断面を示す部分断面図である。
【図5】加熱方向識別部品の断面図である。
【図6】焼損発生前後の加熱方向識別部品の内部状態を示す図である。
【図7】加熱方向識別部品の確認孔を示す斜視図である。
【図8】部品筐体の外観寸法を示す図である。
【図9】金属薄板の寸法を示す図である。
【図10】張力と変形量との関係を示すグラフである。
【図11】6mmの伸び分で伸ばされた状態で1N(0.1019kgf)の張力を生ずる引張コイルバネの寸法を示す図である。
【図12】部品筐体における各所寸法を示す図である。
【図13】加熱方向識別部品の第2実施形態における確認孔を示す図である。
【図14】加熱方向識別部品の第3実施形態における、経時劣化により引張コイルバネが解放されていないかどうかを電気的に確認するための接点端子を示す図である。
【図15】加熱方向識別部品の第4実施形態を示す模式的な断面図である。
【図16】加熱方向識別部品の第5実施形態を示す模式的な断面図である。
【図17】加熱方向識別部品の第6実施形態を示す模式的な断面図である。
【図18】加熱方向識別部品の第7実施形態を示す模式的な断面図である。
【図19】加熱方向識別部品の第8実施形態を示す模式的な断面図である。
【図20】加熱方向識別部品の第9実施形態を示す模式的な断面図である。
【図21】加熱方向識別部品の第10実施形態を示す模式的な断面図である。
【図22】第11実施形態におけるノートPCを、そのノートPCが開かれた開状態について示す斜視図である。
【図23】閉状態にあるノートPCを、本体部の裏面側から見た斜視図である。
【図24】図23に示すノートPCの本体部における加熱方向識別部品の周辺の、本体部の裏面に沿った断面を模式的に示す部分断面図である。
【図25】加熱方向識別部品に設けられている確認窓を示す斜視図である。
【図26】焼損発生時の加熱方向識別部品の内部状態を示す図である。
【図27】ピン部材の寸法を示す図である。
【図28】張力と変形量との関係を示すグラフである。
【図29】6.5mmの伸び分で伸ばされた状態で3N(0.30591kgf)の張力を生ずる引張コイルバネの寸法を示す図である。
【図30】部品筐体における各所寸法を示す図である。
【図31】第12実施形態の加熱方向識別部品における、経時劣化により引張コイルバネが外れていないかどうかを電気的に確認するための導電部材を示す図である。
【図32】第13実施形態の加熱方向識別部品において、焼損時にピン部材が変形する様子を示す図である。
【図33】加熱方向識別部品の第14実施形態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本件の加熱方向識別部品および機器の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
まず、第1実施形態について説明する。
【0025】
図1は、機器の具体的な実施形態であるノート型のパーソナルコンピュータ(ノートPC)を、そのノートPCが開かれた開状態について示す斜視図である。
【0026】
このノートPC1は、本体部10と表示部20とを備えている。表示部20と本体部10は、表示部20が本体部10に対し開閉自在となるように相互に連結されている。図1には、表示部20が本体部10に対し開かれた開状態にあるノートPC1の外観図が示されている。
【0027】
本体部10は、各種情報処理を実行する回路基板や、ハードディスクドライブ等が本体筐体11に収納されたものである。そして、本体筐体11上面には、キーボード12、トラックパッド13、左右2つのクリックボタン14、指紋認証のための指紋センサ15が配備されている。また、表示部20は、液晶パネル22が、開状態でその液晶パネル22の画面が前面を向くように表示筐体21に収納されたものである。
【0028】
第1実施形態では、本体筐体11が、本件の機器における筐体の一例に相当する。
【0029】
図2は、閉状態にあるノートPCを、本体部の裏面側から見た斜視図である。
【0030】
この図2に示すように、本体部10の裏面には、このノートPC1に電源供給するバッテリパック30が着脱自在に搭載される。このバッテリパック30は、内部に複数のバッテリが収納されたものであり、バッテリパック30の外面の一部は露出して、本体筐体11の裏面の一部となっている。
【0031】
図3は、図2に示すバッテリパックを、本体部から取り外して見た斜視図である。
【0032】
バッテリパック30は、箱型で1つの面が開口となった下部筐体31を備えている。この下部筐体31の内部に、複数のバッテリが並べられている。そして、この下部筐体31には、本体部10にこのバッテリパック30を固定するための固定爪31aが設けられている。また、バッテリパック30は、この下部筐体31の開口を覆うカバー32を備えている。本体部10にバッテリパック30が搭載された状態では、このカバー32の表面が露出して、本体筐体11の裏面の一部となる。
【0033】
このバッテリパック30のカバー32に、加熱方向識別部品100が組み込まれている。加熱方向識別部品100の、このカバー32の内面の一部となっている側面には、この加熱方向識別部品100の内部を確認するための確認孔101が開けられている。
【0034】
火災現場の火元付近で、このノートPC1のようにバッテリパックが搭載されている機器が焼損している状況では、バッテリパック内のバッテリに出火原因の疑いが掛かってしまう恐れがある。加熱方向識別部品100は、ノートPC1が火災等で焼損した場合に、その焼損が、ノートPC1外からの熱によるのか、ノートPC1内、具体的にはバッテリパック30内のバッテリで発生した熱によるのかを識別するためのものである。
【0035】
このバッテリパック30も、本件の機器の一実施形態に相当する。また、下部筐体31とカバー32とを合わせたものは、本件の機器における筐体の一例に相当する。そして、このバッテリパック30のカバー32に組み込まれた加熱方向識別部品100が、本件の加熱方向識別部品の一実施形態に相当する。
【0036】
図4は、図3に示すバッテリパックの、図3中の切断線A−Aに沿った断面を示す部分断面図である。尚、この図4では、バッテリパック30の断面が、カバー32を図中の下側にして示されている。
【0037】
この図4に示すように、バッテリパック30には、複数のリチウムイオンバッテリ33と、これらのリチウムイオンバッテリ33から上記本体部10への電力供給を制御する制御基板34が収納されている。
【0038】
加熱方向識別部品100は、外観が直方体形状となっており内部空間を有している。バッテリパック30のカバー32には、この加熱方向識別部品100の形状に応じた長方形状の貫通孔が開けられている。そして、加熱方向識別部品100は、そのカバー32に開けられた貫通孔に、着脱可能に嵌め込まれている。
【0039】
また、この貫通孔に嵌め込まれた加熱方向識別部品100の、長手方向に広がる2つの側面のうちの一方は、バッテリパック30外に露出してカバー32の外面、延いては本体筐体11の裏面の一部となっている。また、もう一方の側面は、バッテリパック30内に露出してカバー32の内面の一部となって、このカバー32の内面とともにリチウムイオンバッテリ33側を向いている。
【0040】
また、加熱方向識別部品100における、このカバー32の内面の一部となっている側面には、図3にも示したように、この加熱方向識別部品100の内部を確認するための確認孔101が開けられている。
【0041】
以下、この加熱方向識別部品100の詳細について説明する。
【0042】
図5は、加熱方向識別部品の断面図である。
【0043】
この図5のパート(A)には、図4の断面図中にも示されている加熱方向識別部品100の断面が示されている。また、図5のパート(B)には、加熱方向識別部品100の、パート(A)中の切断線B−Bに沿った断面が示されている。
【0044】
加熱方向識別部品100は、部品本体筐体110と、金属薄板120と、第1引張コイルバネ130と、第2引張コイルバネ140と、第1の熱伝導部材150と、第2の熱伝導部材160と、セラミック部170とを備えている。
【0045】
部品本体筐体110は、四角筒状の筒部材113と、その筒部材113の両端部の開口のうちの一方を塞ぐ第1の蓋壁111と、他方を塞ぐ第2の蓋壁112とを有している。
【0046】
第1実施形態では、第1の蓋壁111および第2の蓋壁112、本体部10の本体筐体11、バッテリパック30の下部筐体31およびカバー32は、いずれも樹脂で形成されている。ただし、第1の蓋壁111および第2の蓋壁112は、本体筐体11と下部筐体31とカバー32とのうちのどの部品を形成している樹脂の耐熱温度よりも高い耐熱温度を有した樹脂で形成されている。一方で、第1の蓋壁111および第2の蓋壁112の樹脂の耐熱温度は、リチウムイオンバッテリ33の熱暴走で発生する熱と、火災によって外部から加えられる熱とのうち、温度が低い方の熱で溶ける温度となっている。これら第1の蓋壁111および第2の蓋壁112の形成に使うことが可能な樹脂の具体例としては、耐熱温度が150°〜200°のエポキシ樹脂等が挙げられる。また、筒部材113は、これら第1の蓋壁111および第2の蓋壁112を形成している樹脂の耐熱温度よりも高い耐熱温度を有したセラミックで形成されている。
【0047】
このように、部品本体筐体110は、セラミック製の筒部材113の両端の開口の一方が樹脂製の第1の蓋壁111で塞がれ、もう一方が、樹脂製の第2の蓋壁112で塞がれたものとなっている。
【0048】
この部品本体筐体110における第1の蓋壁111および第2の蓋壁112が、互いに対向した一対の対向壁の一例に相当する。また、部品本体筐体110における筒部材113が、上記一対の対向壁を支持してこれら一対の対向壁とともに内部空間を形成した支持壁の一例に相当する。
【0049】
金属薄板120は、部品本体筐体110の内部空間に、第1の蓋壁111および第2の蓋壁112に沿って収納された長方形の板である。また、この金属薄板120は、例えばステンレス等の金属製であるので、第1の蓋壁111および第2の蓋壁112を形成する樹脂の耐熱温度よりも高い耐熱温度を有している。この金属薄板120が、上記内部空間中央かつ上記対向壁間に配置された痕跡部材の一例に相当する。
【0050】
ここで、部品本体筐体110における筒部材113は、加熱方向識別部品100がカバー32に組み込まれた状態で、そのカバー32に対して次のような位置関係となる4つの壁を有している。4つの壁のうちの2つは、カバー32の内外面それぞれに沿って広がる壁(カバー面内方向の壁)113aである。また、4つの壁のうちの他の2つは、カバー32の厚み方向に広がる壁(カバー厚方向の壁)113bである。
【0051】
図5のパート(B)に示すように、2つのカバー厚方向の壁113bそれぞれの内面における長手方向の中央には溝113b_1が掘られている。金属薄板120は、上記長方形の2短辺が、各々カバー厚方向の壁113bの溝113b_1に嵌め込まれることで、この部品本体筐体110の内部空間における長手方向中央に収納されている。また、図5のパート(A)に示すように、金属薄板120の2長辺とカバー面内方向の壁113aとの間には隙間が空いている。
【0052】
第1引張コイルバネ130は、一端が第1の蓋壁111の中央に固定され、他端が金属薄板120の表裏面のうち第1の蓋壁111に対向した面の中央に固定されている。そして、第1の蓋壁111と金属薄板120との間に伸ばされた状態で配置されている。
【0053】
ここで、第1引張コイルバネ130の一端と第1の蓋壁111との接合力は、第1の蓋壁111に対する加熱温度が上記の耐熱温度以下のときには、上記のように伸ばされた状態での第1引張コイルバネ130の張力よりも大きい。従って、第1の蓋壁111に対する加熱温度が上記の耐熱温度以下のときには、第1引張コイルバネ130の一端の第1の蓋壁111への固定が維持される。
【0054】
第1の蓋壁111は、この第1の蓋壁111を形成する樹脂の耐熱温度を超えた温度の熱で加熱されると軟化する。そして、このときには、第1引張コイルバネ130の一端と第1の蓋壁111との接合力は、第1の蓋壁111の軟化によって低下して第1引張コイルバネ130の張力を下回る。このため、加熱温度が上記の耐熱温度を超えると、第1引張コイルバネ130の張力によって、第1の蓋壁111における、第1引張コイルバネ130の一端の固定箇所が損壊して、その一端が第1の蓋壁111から外れる。
【0055】
第2引張コイルバネ140は、一端が第2の蓋壁112の中央に固定され、他端が金属薄板120の表裏面のうち第2の蓋壁112に対向した面の中央に固定されている。そして、第2の蓋壁112と金属薄板120との間に、第1引張コイルバネ130の伸び率と同じ伸び率で伸ばされた状態で配置されている。また、この第2引張コイルバネ140の一端の第2の蓋壁112への接合力も、第1引張コイルバネ130の、第1の蓋壁111への接合力と同様の接合力となっている。このため、第2の蓋壁112に対する加熱温度が上記の耐熱温度以下のときには、第2引張コイルバネ140の一端の第2の蓋壁112への固定が維持される。そして、加熱温度が上記の耐熱温度を超えると、第2引張コイルバネ140の張力によって、第2の蓋壁112における、第2引張コイルバネ140の一端の固定箇所が損壊して、その一端が第2の蓋壁112から外れる。
【0056】
第1引張コイルバネ130および第2引張コイルバネ140それぞれが、上記内部空間内において、2つの対向壁と上記痕跡部材に接続された弾性部材の一例に相当する。
【0057】
金属薄板120は、部品本体筐体113の内部空間に、第1の蓋壁111及び第2の蓋壁112それぞれとの間に各引張コイルバネによる張力が働いた状態で収納されている。そして、各引張コイルバネによる張力は、その引張コイルバネの一端が蓋壁から外れると損なわれる。
【0058】
ここで、各引張コイルバネによる張力は、金属薄板120の降伏応力を超えている。第1引張コイルバネ130による張力と、第2引張コイルバネ140による張力とが、互いに逆向きの力となっている。このため、これら2つの張力の両方が保たれている状態では、金属薄板120の形状も保たれる。そして、2つの張力のうちいずれか一方が上記のように損なわれると、他方の張力により、金属薄板120は塑性変形することとなる。
【0059】
第1の熱伝導部材150は、上記のカバー面内方向の壁113aのうち、加熱方向識別部品100がカバー32に組み込まれた状態で、カバー32の外面側となる壁に沿って広がる外面側受熱面151を有している。この外面側受熱面151は、加熱方向識別部品100がカバー32に組み込まれた状態で、カバー32の外面側に露出してその外面の一部となる。第1の熱伝導部材150は、この外面側受熱面151から折れ曲がって第1の蓋壁111に接触した金属製の部材である。この第1の熱伝導部材150は、外面側受熱面151で受けた熱を第1の蓋壁111へと伝達する。
【0060】
第2の熱伝導部材160は、上記のカバー面内方向の壁113aのうち、加熱方向識別部品100がカバー32に組み込まれた状態で、カバー32の内面側となる壁に沿って広がる内面側受熱面161を有している。この内面側受熱面161は、加熱方向識別部品100がカバー32に組み込まれた状態で、カバー32の内面側に露出してその内面の一部となる。第2の熱伝導部材160は、この内面側受熱面161から折れ曲がって第2の蓋壁112に接触した金属製の部材である。第2の熱伝導部材160は、この内面側受熱面161で受けた熱を第2の蓋壁112へと伝達する。また、図3等にも示す確認孔101は、この第2の熱伝導部材160と上記のカバー面内方向の壁113aのうちの内面側の壁とを貫いている。そして、この確認孔101は、金属薄板120を見通す位置に設けられている。
【0061】
セラミック部170は、第1の熱伝導部材150と第2の熱伝導部材160とが取り付けられた部品本体筐体113の両端を各熱伝導部材の上から覆っている。さらに、このセラミック部170は、この加熱方向識別部品100全体を、外面側受熱面151と内面側受熱面161とが露出した直方体形状に整形する役割も担っている。即ち、セラミック部170は、第1の熱伝導部材150と第2の熱伝導部材160とが取り付けられた部品本体筐体113とその直方体形状との差分を埋めている。
【0062】
このセラミック部170により、加熱方向識別部品100の外表面は、外面側受熱面151と内面側受熱面161とを除いて全てセラミックで覆われる。この構造により、第1の蓋壁111および第2の蓋壁112への、第1の熱伝導部材150および第2の熱伝導部材160それぞれを辿る伝熱ルート以外のルートを通る伝熱が抑制されている。
【0063】
その結果、バッテリパック30外、即ちノートPC1外から加えられた熱は、加熱方向識別部品100においては、外面側受熱面151で受けられ第1の熱伝導部材150の内部のみを通って第1の蓋壁111に伝えられる。また、バッテリパック30内のリチウムイオンバッテリ33で発生した熱等の、ノートPC1内で発生した熱は、内面側受熱面161で受けられ第2の熱伝導部材160の内部のみを通って第2の蓋壁112に伝えられる。
【0064】
また、上述したように加熱方向識別部品100は、バッテリパック30のカバー32に開けられた貫通孔に、着脱可能に嵌め込まれている。
【0065】
そして、加熱方向識別部品100および貫通孔には、外面側受熱面151がカバー32の外面から露出して内面側受熱面161がカバー32の内面から露出する向きには嵌込み可能で、逆向きには嵌込み不可とする嵌合形状が採用されている。この嵌合形状は、ここでは特定せず、また図示も省略するが、次のようなものが挙げられる。
【0066】
例えば、加熱方向識別部品100における、裏返したときに非対称となる位置から突出した1つ以上の突起と、貫通孔の縁に設けられた、上記突起が嵌り込む溝との組み合わせ等が挙げられる。また、加熱方向識別部品100の外形を、単純な直方体形状ではなく、例えば楔形形状や角を切り落とした形状等というように、裏返したときに非対称となる形状としておくこと等も挙げられる。この場合には、貫通孔の形状が、そのような形状に応じたものとなる。このような嵌合形状により、外面側受熱面151をカバー32の内面側に向けて内面側受熱面161をカバー32の外面側に向けた誤った向きでの加熱方向識別部品100の嵌め込みが回避される。この結果、加熱方向識別部品100では、第1の蓋壁111には、必ず、ノートPC1外(バッテリパック30外)からの熱が伝わる。また、第2の蓋壁112には、必ず、ノートPC1内(バッテリパック30内)からの熱が伝わる。
【0067】
そして、上記の金属薄膜120の表裏面のうち、第1の蓋壁111に対向する面には、その面が、ノートPC1外(バッテリパック30外)からの熱が伝わる第1の蓋壁111に対向していることを示す「外」の文字が刻印されている。一方、第2の蓋壁112に対向する面には、その面が、ノートPC1内(バッテリパック30内)からの熱が伝わる第2の蓋壁112に対向していることを示す「内」の文字が刻印されている。
【0068】
以下、ノートPC1が焼損したとき、その焼損が、ノートPC1外(バッテリパック30外)とノートPC1内(バッテリパック30内)とのいずれからの熱によるものかが、加熱方向識別部品100によってどのように識別されるのかについて説明する。
【0069】
図6は、焼損発生前後の加熱方向識別部品の内部状態を示す図である。
【0070】
この図6には、焼損発生前後の加熱方向識別部品100の内部状態が、図5のパート(B)に相当する断面図で示されている。尚、この図6では、図を見易くするために、加熱方向識別部品100における第1の熱伝導部材150、第2の熱伝導部材160、およびセラミック部170の図示が省略されている。
【0071】
図6のパート(A)には、焼損発生前の加熱方向識別部品100の内部状態が示されている。そして、図6のパート(B)には、ノートPC外(バッテリパック外)からの熱による焼損発生後の加熱方向識別部品100の内部状態が示されている。
【0072】
焼損発生前では、金属薄板120と第1の蓋壁111との間には、第1引張コイルバネ130による張力が働いている。また、金属薄板120と第2の蓋壁112との間には、第2引張コイルバネ140によって、第1引張コイルバネ130による張力と打ち消し合う方向の張力が働いている。また、焼損発生前では、第1引張コイルバネ130の一端の第1の蓋壁111への接合力は、この第1引張コイルバネ130による張力よりも大きい。同様に、焼損発生前では、第2引張コイルバネ140の一端と第2の蓋壁112との接合力は、この第2引張コイルバネ140による張力よりも大きい。
【0073】
これにより、金属薄板120の収納位置が、2辺が長手方向中央の溝113b_1に嵌った位置に保たれている。また、上述のように、第1引張コイルバネ130の張力及び第2引張コイルバネ140の張力は、各々が金属薄板120の降伏応力を超えている。しかし、両者が互いに打ち消し合う向きとなっていることにより、金属薄板130の形状も保たれることとなっている。
【0074】
第1の蓋壁111および第2の蓋壁112のうちの一方に、これらの壁を形成する樹脂の耐熱温度を超えた温度の熱が伝えられたとする。図6の例では、焼損がノートPC外(バッテリパック外)からの熱によるものであることから、第1の蓋壁111に熱が伝えられることとなる。
【0075】
すると、第1の蓋壁111が軟化することで、第1引張コイルバネ130の一端と第1の蓋壁111との接合力が低下して、この第1引張コイルバネ130による張力を下回る。その結果、第1の蓋壁111における、第1引張コイルバネ130の一端の固定箇所が、第1引張コイルバネ130の、その低下した接合力よりも大きい張力によって損壊する。そして、その固定箇所の損壊により、図6のパート(B)に示すように、第1引張コイルバネ130の、第1の蓋壁111に固定されていた一端が、その第1の蓋壁111から外れる。第1引張コイルバネ130の一端が第1の蓋壁111から外れると、この第1引張コイルバネ130による張力が失われる。そして、金属薄板120は、第2引張コイルバネ140の張力によって第2の蓋壁112の方に引き寄せられる。このとき、金属薄板120は、2短辺が上記の溝113b_1に嵌っているため、この張力が、第2引張コイルバネ140と金属薄板120との固定部分に集中して働く。上述したようにこの張力は、金属薄板120の降伏応力を超えている。その結果、金属薄板120は、第2の蓋壁112側の面が突出した形状に塑性変形する。また、このときには、金属薄板120は、溝113b_1から外れることとなる。
【0076】
このように、加熱方向識別部品100では、ノートPC1外(バッテリパック30外)からの熱で温度が樹脂の耐熱温度を超えると、金属薄板120が、第2の蓋壁112側の面が突出した形状に塑性変形する。逆に、ノートPC1内(バッテリパック30内)からの熱で温度が樹脂の耐熱温度を超えた場合には、金属薄板120は、第1の蓋壁111側の面が突出した形状に塑性変形する。
【0077】
ここで、上述したように、金属薄板120の表裏面には、各面に「外」あるいは「内」の文字が刻印されている。「外」の文字は、この文字が刻印されている面が、ノートPC1外(バッテリパック30外)からの熱が伝わる第1の蓋壁111に対向していることを示している。一方、「内」の文字は、この文字が刻印されている面が、ノートPC1内(バッテリパック30内)からの熱が伝わる第2の蓋壁111に対向していることを示している。このため、塑性変形した金属薄板120だけが回収された場合であっても、凹んでいるのが第2の蓋壁112側の面であるか第1の蓋壁111側の面であるか、即ち加熱方向識別部品100内部での金属薄板120の変形の方向を判別することができる。
【0078】
ところで、第1実施形態の加熱方向識別部品100では、焼損時には樹脂製の第1の蓋壁111と第2の蓋壁112は、単に軟化するだけでなく焼失してしまう可能性が高い。
【0079】
一方、上記の樹脂よりも耐熱性の高い金属薄板120、金属製の第1及び第2の引張コイルバネ130,140、セラミック製の筒部材113、金属製の第1及び第2の熱伝導部材150,160、及びセラミック部170は、焼損後も燃え残る可能性が高い。図5に示すように、筒部材113の両端の開口は、第1の蓋壁111の第2と蓋壁112を覆う第1の熱伝導部材150と第2の熱伝導部材160でも塞がれている。従って、焼損後には、両端を金属製の伝熱部で塞がれた筒部材113の中で、引張コイルバネが付いた変形した金属薄板120が自由な状態となっている可能性が高い。
【0080】
第1実施形態の加熱方向識別部品100には、図3〜5に示すように、確認孔101が設けられ、部品筐体100の内部が見通せるようになっている。ただし、この確認孔101は、主として、ノートPC1等のメンテナンス時に後述の確認を行うために設けられたものである。一方、焼損後には、燃え残った金属薄板120の汚損状態等により、この確認孔101からは、変形自体は確認できても刻印文字の確認までは困難であることが予測される。
【0081】
このため、焼損後の金属薄板120の変形と刻印文字の目視確認は、基本的には、例えばセラミック製の筒部材113を割って金属薄板120を取り出して洗浄する等といった処理の後に行われることとなる。ただし、焼損後の状態が非常に良く、確認孔101から内部の金属薄板120の変形と刻印文字とが確認できる場合には、この確認孔101から目視確認を行っても良い。また、焼損時に、加熱方向識別部品100が壊れて分解してしまっている場合には、ノートPC1の燃え残りの中、あるいは、火災現場等から、金属薄板120が回収されて、洗浄の後に変形と刻印文字の目視確認が行われる。
【0082】
そして、この加熱方向識別部品100では、焼損後の金属薄板120において「外」、「内」いずれの文字が刻印された面が凹んでいるのかの目視確認により、その焼損が、ノートPC1内外(バッテリパック30内外)いずれからの熱によるのかが識別される。
【0083】
図6の例では、金属薄板120の、「外」の文字が刻印された面が凹んでいることが目視され、焼損が、ノートPC1外(バッテリパック30外)からの熱によるものであることが識別されることとなる。
【0084】
次に、ノートPC1等のメンテナンス時に確認孔101から行われる確認について説明する。
【0085】
図7は、加熱方向識別部品の確認孔を示す斜視図である。
【0086】
この図7に示すように、加熱方向識別部品100の確認孔101からは、内部空間に収納されている金属薄板120が見通せる。上述したように、この加熱方向識別部品100は、変形した金属薄板120の目視確認により、焼損が、ノートPC1内外(バッテリパック30内外)いずれからの熱によるのかが識別される。従って、焼損が起きていない通常の使用時には、金属薄板120の形状が板状に確実に保たれている必要がある。加熱方向識別部品100の確認孔101は、この金属薄板120の形状が板状に保たれていることを、例えばメンテナンス等の際に確認するために設けられている。
【0087】
そして、確認孔101から見えている金属薄板120が、仮に、既に変形してしまっていた場合には、加熱方向識別部品100が新品と交換されることとなる。焼損前に生じる変形としては、例えば第1の蓋壁111や第2の蓋壁112の経時劣化等に起因して、これらの蓋壁における引張コイルバネの固定箇所が損壊したことによる変形が挙げられる。また、金属薄板120と引張コイルバネの固定箇所における経時劣化等に起因して、引張コイルバネが金属薄板120から外れたことによる変形等も挙げられる。
【0088】
以上で、メンテナンス時に確認孔101から行われる確認についての説明を終了する。
【0089】
ここまでに説明したように、この加熱方向識別部品100では、金属薄板120と第1の蓋壁111および第2の蓋壁112のそれぞれとの間に働く張力が保たれているときは、金属薄板120の形状および収納位置が保たれている。そして、第1の蓋壁111および第2の蓋壁112いずれか一方が損壊するとその一方の側の張力が失われ、その結果、金属薄板120が塑性変形する。その塑性変形は、その変形の方向が判別可能な、延いては、焼損時に熱が第1の蓋壁111および第2の蓋壁112いずれに及んだかが判別可能な物理的痕跡として残ることとなる。
【0090】
次に、金属薄板120の上記のような塑性変形を可能とする具体的な張力、および、そのような張力を発揮する引張コイルバネの具体的な寸法について説明する。
【0091】
まず、搭載対象のバッテリパック30の各種寸法およびカバー32の厚み等から、加熱方向識別部品100における部品本体筐体110の外観寸法を決定した。
【0092】
図8は、部品筐体の外観寸法を示す図である。
【0093】
この図8に示すように、部品本体筐体110の外観は、短辺が12mm、長辺が35mm、厚みが5mmの直方体である。金属薄板120は、この部品本体筐体110における長手方向の中央に、部品本体筐体110における両端面の間を仕切って立てられる。
【0094】
この部品本体筐体110の外観寸法等から、金属薄板120の寸法を決定した。
【0095】
図9は、金属薄板の寸法を示す図である。
【0096】
この図9には、金属薄板120が、図8とは向きを90°変えて示されている。
【0097】
まず、この金属薄板120は、短辺が2mm、長辺が10mm、厚みが0.1mmの板である。この金属薄板120の、2つの短辺が図5や図6に示す溝113b_1に嵌りこむ。そして、この嵌り込みの深さは、1mmである。
【0098】
また、この金属薄板120の表裏面それぞれの中央の箇所120bに、図5や図6に示す引張コイルバネの端部が固定される。さらに、表裏面それぞれには、「外」、「内」の各文字が刻印されている。図9では、「内」の文字の刻印が見えている。
【0099】
次に、この金属薄板120の中央の箇所120bに係る、降伏応力を超えた張力を、上記の金属薄板120の寸法等に基づいて計算した。
【0100】
尚、この計算では、金属薄板120の材質を、融点が1400℃のステンレス(SUS304)とした。ステンレス(SUS304)の物性値としては、1990000kg/cmのヤング率を用いた。
【0101】
そして、以下の一連の式を用い、張力を0.1N(0.01kgf)から200N(20.4kgf)まで変化させたときの、各張力に応じて金属薄板120に生じる曲げ応力σと変形量δとを算出した。
【0102】
σ=M×z/I……(1)
δ=P×L/(48×E×I)……(2)
M=P×L/4……(3)
I=b×t/12……(4)
これらの式(1)〜(4)は、単純梁、中心荷重の条件下での、一般的な材料力学公式から求めた式である。「M」は、曲げモーメントを表し、「z」は端から中心までの距離を表し、「I」は断面二次モーメントを表し、「P」は張力を表す。また、「L」は金属薄板120の長辺の長さを表し、「E」はヤング率を表す。また、「b」は金属薄板120の短辺の長さを表し、「t」は金属薄板120の厚みを表す。
【0103】
計算結果を、以下の表1、及び図10に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
この表1には、各張力に対応する変形量と曲げ応力についての計算結果が示されている。
【0106】
図10は、張力と変形量との関係を示すグラフである。
【0107】
この図10に示すグラフG1には、各張力に対応する、表1にも示す変形量が菱形印Pでプロットされている。
【0108】
曲げ応力の値から、0.4N(0.04kgf)以上の張力で曲げ応力が、金属薄板120の降伏応力である2100kg/cmを超えることが分かった。ただし、このときの変形量は0.13mmであり、変形の目視確認には小さ過ぎる。そこで、ここでは、張力として、目視に耐える0.33mmの変形量を生じさせる、図10にも示す1N(0.1019kgf)を採用する。この張力では、曲げ応力は、表1に示すように6118.2kgfとなる。
【0109】
次に、1N(0.1019kgf)の張力を生じる引張コイルバネの寸法を計算した。
【0110】
まず、図8に示す部品本体筐体110の寸法に基づいて、引張コイルバネの直径を2mm、巻線の太さを0.2mm、1N(0.1019kgf)の張力を生じるように伸ばされたときの伸び分を6mmとした。また、引張コイルバネの材質をステンレス鋼線とし、物性値として6900N/mm(kgf/mm)の横弾性係数を用いた。この条件の下、以下の一連の式を用いて、引張コイルバネの有効巻き数Naと、縮んだ状態での引張コイルバネの長さSLを計算した。
【0111】
SL=Na×d+2×(D2−2d)……(5)
k=(P−Pi)/Δ=G×d/(8×Na×D)……(6)
Pi=π×d×τi/(8×D)……(7)
τi=G/(100×(D/d))……(8)
これらの式(5)〜(8)は、初張力が有る密着巻の冷間成形引張コイルバネに関する力学公式から求めた式である。「D2」は引張コイルバネの直径を表し、「d」は巻線の太さを表し、「k」はバネ定数を表し、「Pi」は初張力を表し、「Δ」は引張コイルバネの伸び分を表し、「G」は横弾性係数を表す。また、「D」は引張コイルバネの平均径を表し、「τi」は初応力を表す。
【0112】
計算の結果、6mmの伸び分で伸ばされた状態で1N(0.1019kgf)の張力を生ずるのに要する有効巻き数Na、および引張コイルバネの長さSLとして以下の図11に示す値を得た。
【0113】
図11は、6mmの伸び分で伸ばされた状態で1N(0.1019kgf)の張力を生ずる引張コイルバネの寸法を示す図である。
【0114】
上記の計算の結果、6mmの伸び分で伸ばされた状態で1N(0.1019kgf)の張力を生ずるのに要する有効巻き数Naは15回、引張コイルバネの長さSLは6.2mmとなった。また、この図11には、引張コイルバネにおける図8に示す部品本体筐体110の寸法に基づいた他の寸法も示されている。
【0115】
第1実施形態の加熱方向識別部品100では、図5や図6に示す第1引張コイルバネ130及び第2引張コイルバネ140の双方とも、図11に示す寸法の引張コイルバネが採用されている。そして、第1引張コイルバネ130及び第2引張コイルバネ140の双方とも6mm伸ばされた状態で部品本体筐体110内に配置されている。
【0116】
以上のように求めた値に基づいて、図5や図6に示す部品本体筐体110における各壁の厚み等といった他の寸法を求めた。その結果を、以下の図12に示す。
【0117】
図12は、部品筐体における各所寸法を示す図である。
【0118】
この図12のパート(A)には、図6に示す断面と同じ断面について、部品本体筐体110における各所寸法が示されている。また、図12のパート(B)には、図12のパート(A)中の切断線C−Cに沿った断面について、部品本体筐体110における各所寸法が示されている。
【0119】
この図12のパート(A)に示すように、第1の蓋壁111の厚みおよび第2の蓋壁112の厚みは、双方とも5mmとなった。また、筒部材113のうち、バッテリパック30のカバー32の厚み方向に広がる、カバー厚方向の壁113bの厚みは2mmとなった。また、図12のパート(B)に示すように、筒部材113のうち、カバー32の内外面に沿って広がる、カバー面内方向の壁113aの厚みは1mmとなった。
【0120】
金属薄板120の短辺は、図12のパート(A)に示すように、カバー厚方向の壁113bに設けられた深さ1mmの溝113b_1に嵌め込まれている。また、図12のパート(B)に示すように、金属薄板120の長辺と、カバー面内方向の壁113aとの間には、0.5mmの隙間が設けられている。
【0121】
以上、説明したように、第1実施形態の加熱方向識別部品100では、焼損時には、第1の蓋壁111と第2の蓋壁112とのいずれか一方が損壊することで、金属薄板120に、変形の方向が判別可能な塑性変形が物理的痕跡として残る。このため、この塑性変形の方向の目視確認という簡単な方法により、焼損が、ノートPC1内外(バッテリパック30内外)いずれからの熱によるのかが識別されることとなる。
【0122】
また、仮に、加熱方向識別部品100自体が焼損時に壊れて、筒部材113、金属薄板120等が火災現場に散乱してしまっている場合であっても、金属薄板120さえ回収すれば上記の識別が可能である。即ち、この加熱方向識別部品100によれば、火災現場からの部品回収の面でも、簡単に上記の識別を行うことができる。
【0123】
ここで、第1実施形態の加熱方向識別部品100では、上述したように、金属薄板120は、その金属薄板120自身に変形という物理的痕跡が残るものとなっている。これにより、第1実施形態の加熱方向識別部品100では、構造の簡単化が図られている。このことは、本件の加熱方向識別部品に対し、次のような応用形態が好適であることを意味している。
【0124】
この応用形態では、上記弾性部材が、上記一対の対向壁それぞれと上記痕跡部材との間に、次のような力を加えるものとなっている。その力は、各対向壁の損壊で失われる各力である。そして、その力は、その力の双方が保たれているときは上記痕跡部材の収納位置および形状も保たれ、その力の一方が失われたときは他方の力によって該痕跡部材の収納位置および形状のうち少なくとも一方が変化する力である。そして、この応用形態では、上記痕跡部材は、該痕跡部材の収納位置および形状のうち少なくとも一方が変化したときは、該変化の方向が判別可能な物理的痕跡が該痕跡部材自身に残るものとなっている。
【0125】
第1実施形態における第1引張コイルバネ130および第2引張コイルバネ140それぞれは、この応用形態における弾性部材の一例にも相当している。また、第1実施形態における金属薄板120は、この応用形態における痕跡部材の一例にも相当している。
【0126】
また、第1実施形態の加熱方向識別部品100では、金属薄板120の表裏面に、各面に、「内」あるいは「外」の文字が刻印されている。これらの文字は、各面が、ノートPC1外から熱が伝わる第1の蓋壁111と、ノートPC1内から熱が伝わる第2の蓋壁112とのうちのどの壁に向いているかを示している。金属薄板120にこの刻印があることにより、変形の元となった熱がノートPC1内外(バッテリパック30内外)のいずれから及んだのかが一目瞭然となっている。このことは、上記痕跡部材自身に物理的痕跡が残る上述の応用形態に対し、次の応用形態がさらに好適であることを意味している。
【0127】
この応用形態では、上記痕跡部材が、上記一対の対向壁相互間を仕切る方向に広がる板となっている。そして、その板の表裏面の少なくとも一方の面に、その面がその一対の対向壁のうちのいずれの対向壁に向いているかを示すマークが付されている。
【0128】
第1実施形態における金属薄板120は、この応用形態における痕跡部材の一例にも相当している。また、第1実施形態における「外」、「内」それぞれの文字が、この応用形態におけるマークの一例に相当する。
【0129】
また、第1実施形態の加熱方向識別部品100では、部品本体筐体110の内部空間に収納される金属薄板120に、変形という目視で確認し易い物理的痕跡が残る。これにより、焼損時の熱がノートPC1内外(バッテリパック30内外)のいずれから及んだのかの識別が一層容易なものとなっている。このことは、上記痕跡部材自身に物理的痕跡が残る上述の応用形態に対し、次の応用形態がさらに好適であることを意味している。
【0130】
この応用形態では、上記痕跡部材が、上記弾性部材によって上記一対の対向壁それぞれとその痕跡部材との間に働いている各力のうち一方の力が失われたときは他方の力によって、上記一対の対向壁の一方へと変形する。そして、そのように変形することで、その痕跡部材自身に、その変形後の形状が上記物理的痕跡として残る。
【0131】
第1実施形態における金属薄板120は、この応用形態における痕跡部材の一例にも相当している。
【0132】
また、第1実施形態の加熱方向識別部品100では、第1引張コイルバネ130の一端が金属薄板120に固定され、他端が第1の蓋壁111に固定されている。また、第2引張コイルバネ130の一端が金属薄板120に固定され、他端が第2の蓋壁112に固定されている。そして、金属薄板120と第2の蓋壁112との間に働く第2引張コイルバネ130による張力は、金属薄板120と第1の蓋壁111との間に働く第1引張コイルバネ130による張力と打ち消し合う方向の力となっている。そして、第1の蓋壁111と第2の蓋壁112とのいずれか一方が損壊すると、その壁側の引張コイルバネの張力が損なわれ、他方の引張コイルバネの張力により金属薄板120が変形する。加熱方向識別部品100では、2つの引張コイルバネを用いたこのような簡単な構造により、一方の壁が損壊したときの張力の消失と物理的痕跡(金属薄板120の変形)の発生が実現されている。このことは、本件の加熱方向識別部品に対し、次の応用形態が好適であることを意味している。
【0133】
この応用形態は、第1の弾性部材と第2の弾性部材とを備えている。第1の弾性部材は、一端が上記痕跡部材に固定され、他端が上記一対の対向壁のうちの一方の対向壁に固定されている。そして、この第1の弾性部材は、その一方の対向壁とその痕跡部材との間に第1の力を加える。第2の弾性部材は、一端が上記痕跡部材に固定され、他端が上記一対の対向壁のうちの上記一方に対する他方の対向壁に固定されている。そして、この第2の弾性部材は、その他方の対向壁とその痕跡部材との間に、上記第1の力と打ち消し合う方向の第2の力を加える。
【0134】
第1実施形態における第1引張コイルバネ130が、この応用形態における第1の弾性部材の一例に相当する。また、第1実施形態における第2引張コイルバネ140が、この応用形態における第2の弾性部材の一例に相当する。
【0135】
また、第1実施形態の加熱方向識別部品100では、2つの引張コイルバネそれぞれが、金属薄板120と各蓋壁との間に引き伸ばされた状態で配置されている。これにより、蓋壁の損壊時の金属薄板120の変形が、引張コイルバネの収縮という、部品本体筐体110の内部空間内に収まる動作によって引き起こされる。つまり、第1実施形態の加熱方向識別部品100では、部品本体筐体110の内部空間が有効に利用されることとなっている。従って、加熱方向識別部品100の設置の際に加熱方向識別部品100の周囲に動作スペースを設ける必要がないので、加熱方向識別部品100の配置場所の自由度が高い。このことは、第1の弾性部材と第2の弾性部材とを備えた上述の応用形態に対し、次の応用形態がさらに好適であることを意味している。
【0136】
この応用形態では、上記第1の弾性部材が、上記第1の力で上記痕跡部材を上記一方の対向壁側へと引き付けるものとなっている。また、上記第2の弾性部材が、上記第2の力で上記痕跡部材を上記他方の対向壁側へと引き付けるものとなっている。
【0137】
第1実施形態における第1引張コイルバネ130は、この応用形態における第1の弾性部材の一例にも相当している。また、第1実施形態における第2引張コイルバネ140は、この応用形態における第2の弾性部材の一例にも相当している。
【0138】
また、第1実施形態の加熱方向識別部品100には、内部の金属薄板120の形状を確認するための確認孔101が設けられている。これにより、例えば引張コイルバネの経時劣化等により金属薄板120に変形が生じていないか否かがメンテナンス等の際に確認される。また、可能であれば、焼損後に、この確認孔101から金属薄板120の変形が目視確認されることとなる。このことは、本件の加熱方向識別部品に対し、上記支持壁が、上記痕跡部材を見通す位置に窓が設けられたものであるという応用形態が好適であることを意味している。
【0139】
第1実施形態における筒部材113は、この応用形態における支持壁の一例にも相当している。また、第1実施形態における確認孔101が、この応用形態における窓の一例に相当する。
【0140】
尚、第1実施形態における確認孔101は貫通孔であるが、この応用形態における窓は貫通孔に限るものではなく、例えば耐熱性の透明ガラスや透明樹脂や金属製の網等で塞がれたものであっても良い。
【0141】
また、第1実施形態の加熱方向識別部品100には、ノートPC1(バッテリパック30)外からの熱を受ける外面側受熱面151を有し、その外面側受熱面151で受けた熱を第1の蓋壁111へと伝達する第1の熱伝導部材150が備えられている。
【0142】
また、加熱方向識別部品100には、ノートPC1(バッテリパック30)内からの熱を受ける内面側受熱面161を有し、その内面側受熱面161で受けた熱を第2の蓋壁112へと伝達する第2の熱伝導部材160が備えられている。
【0143】
この構造により、加熱方向識別部品100は、長手方向の両端それぞれに位置する第1の蓋壁111や第2の蓋壁112をノートPC1(バッテリパック30)の外側や内側に向けなくても良い。従って、加熱方向識別部品100は、配置場所の自由度が高い。このことは、本件の加熱方向識別部品に対し、次の応用形態が好適であることを意味している。
【0144】
この応用形態は、第1の受熱部と、第1の伝熱部と、第2の受熱部と、第2の伝熱部とを備えている。第1の受熱部は、上記支持壁の外面に沿って、上記一対の対向壁のうち第1の対向壁から第2の対向壁へと向かう方向に延びた、表面で熱を受けるものである。第1の伝熱部は、上記第1の受熱部で受けた熱を上記第1の対向壁に伝達するものである。第2の受熱部は、上記支持壁を挟んで上記第1の受熱部とは逆側に位置する。そして、この第2の受熱部は、その支持壁の外面に沿って上記第2の対向壁から上記第1の対向壁へと向かう方向に延びた、表面で熱を受けるものである。第2の伝熱部は、上記第2の受熱部で受けた熱を上記第2の対向壁に伝達するものである。
【0145】
第1実施形態における第1の熱伝導部材150が、この応用形態における第1の受熱部と第1の伝熱部とを兼ねた一例に相当する。また、第1実施形態における第2の熱伝導部材160が、この応用形態における第2の受熱部と第2の伝熱部とを兼ねた一例に相当する。
【0146】
また、第1実施形態の加熱方向識別部品100は、ノートPC1のバッテリパック30に搭載されている。そして、ノートPC1(バッテリパック30)外からの熱が第1の蓋壁111に伝わり、ノートPC1(バッテリパック30)内のリチウムイオンバッテリ33からの熱が第2の蓋壁112に伝わる。火災現場の火元付近で、バッテリパックが搭載されている機器が焼損している状況では、バッテリパック内のバッテリに出火原因の疑いが掛かる恐れがある。第1実施形態の加熱方向識別部品100によれば、焼損が、ノートPC1外からの熱によるのか、バッテリパック30内のリチウムイオンバッテリ33で発生した熱によるのかを確実に識別することができる。このことは、加熱方向識別部品が筐体内に配置された本件の機器に対し、次の応用形態が好適であることを意味している。
【0147】
この応用形態では、機器の筐体が、バッテリを内蔵したものとなっている。そして、上記加熱方向識別部品が、次のような位置に配置されている。この位置は、上記バッテリ側からの熱が上記一対の対向壁のうちの一方の対向壁に伝わり、上記筐体外から侵入した熱は他方の対向壁に伝わる位置である。
【0148】
第1実施形態における本体筐体11、および、バッテリパック30の下部筐体31とカバー32とを合わせたものは、双方とも、この応用形態における筐体の一例にも相当している。また、第1実施形態の加熱方向識別部品100は、この応用形態における加熱方向識別部品の一例にも相当している。
【0149】
次に、第2実施形態について説明する。
【0150】
この第2実施形態は、加熱方向識別部品がノートPCのバッテリパックのカバーに組み込まれる点については上述の第1実施形態と同様である。そこで、以下では、ノートPCやバッテリパックについての図示および説明を割愛する。また、このことについては、後述の第3〜第10の各実施形態でも同様である。
【0151】
第2実施形態は、加熱方向識別部品における確認孔が、上述の第1実施形態と異なっている。以下では、第2実施形態について、この確認孔に注目して説明する。
【0152】
図13は、加熱方向識別部品の第2実施形態における確認孔を示す図である。
【0153】
尚、この図13では、第1実施形態における確認孔101を示す図12中の要素と同等な要素については、この図12と同じ符号が付されており、以下では、その同等な要素について重複説明を省略する。
【0154】
この図13に示す加熱方向識別部品200では、内部空間に収納されている金属薄板120を見通す確認孔201が蓋201aを備えている。この蓋201aは、例えばメンテナンスあるいは焼損後の確認のとき以外は閉められている。これにより、ゴミや、焼損時の煤の、確認孔201からの侵入が防がれることとなっている。
【0155】
そして、メンテナンスの際には、この蓋201が開けられて、金属薄板120の形状が板状に確実に保たれているか否かが確認される。また、焼損が発生したときにも、可能であれば、蓋201が開けられて確認孔101から金属薄板120の変形についての目視確認が行われる。また、焼損の発生時に確認孔101からのこの目視確認が困難な場合は、加熱方向識別部品100の破壊等により金属薄板120が取り出されて目視確認される。
【0156】
次に、第3実施形態について説明する。
【0157】
この第3実施形態は、加熱方向識別部品が、経時劣化により引張コイルバネが蓋壁から外れていないかどうかを電気的に確認するための導電部材を備えている点が、上述の第1実施形態と異なっている。以下では、第3実施形態について、この導電部材に注目して説明する。
【0158】
図14は、加熱方向識別部品の第3実施形態における、経時劣化により引張コイルバネが外れていないかどうかを電気的に確認するための導電部材を示す図である。
【0159】
この図14には、第3実施形態の加熱方向識別部品300が、図5のパート(A)に示す第1実施形態の加熱方向識別部品100の断面と同等な断面で示されている。尚、この図14では、図5中の要素と同等な要素については図5中の符号と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な要素についての重複説明を省略する。
【0160】
この図14に示す加熱方向識別部品300では、メンテナンス等の際に、経時劣化により引張コイルバネが蓋壁から外れていないかどうかが、第1の導電部材301と第2の導電部材302との間の導通確認により行われる。
【0161】
第1実施形態についての説明で述べたように、金属薄板120、第1引張コイルバネ130、および第2引張コイルバネ140は、いずれもステンレス製であり、導電性を有している。
【0162】
第1の導電部材301は、第1引張コイルバネ130に、第1の蓋壁111に固定されている側で接する第1の接点301aと、この第1の接点301aから加熱方向識別部品300外まで延びた第1の端子301bとを有している。第1の接点301aは、第1引張コイルバネ130が第1の蓋壁111から外れると、この第1引張コイルバネ130から離れる。
【0163】
第2の導電部材302は、第2引張コイルバネ140に、第2の蓋壁112に固定されている側で接する第2の接点302aと、この第2の接点302aから加熱方向識別部品300外まで延びた第2の端子302bとを有している。第2の接点302aは、第2引張コイルバネ140が第2の蓋壁112から外れると、この第2引張コイルバネ140から離れる。
【0164】
第1引張コイルバネ130が第1の蓋壁111に固定され、第2引張コイルバネ140が第2の蓋壁112に固定された状態では、第1の端子301bと第2の端子302bとの間に電気的な導通が確認されることとなる。
【0165】
一方、経時劣化により、第1引張コイルバネ130と第2引張コイルバネ140とのいずれか一方あるいは両方が蓋壁から外れていると、第1の接点301aと第2の接点302aのいずれか一方あるいは両方が引張コイルバネから離れる。その結果、このような場合には、第1の端子301bと第2の端子302bとの間が電気的に非導通となっていることが確認されることとなる。また、経時劣化により、第1引張コイルバネ130と第2引張コイルバネ140とのいずれか一方あるいは両方が金属薄板120から外れることも考えられる。そして、この場合にも、第1の端子301bと第2の端子302bとの間が電気的に非導通となっていることが確認される。
【0166】
つまり、この第3実施形態の加熱方向識別部品300では、第1の端子301bと第2の端子302bとの間に電気的な導通が確認できるか否かで、内部で引張コイルバネが外れているか否かが確認されることとなる。
【0167】
ただし、金属薄板120の変形の方向までは、上記の導通確認では判別することができず、この導通確認は、あくまでもメンテナンス時に加熱方向識別部品300の内部が正常であるか否かを確認するためのものである。
【0168】
また、加熱方向識別部品300には内部を確認するための確認孔は設けられていないため、焼損後の、加熱方向の識別のための金属薄板120の変形の目視確認は、加熱方向識別部品300の破壊等により金属薄板120が取り出されて行われる。
【0169】
この第3実施形態の加熱方向識別部品300によれば、上記のような簡単な導通確認により、加熱方向識別部品300内で経時劣化等により引張コイルバネが外れていないかどうかが確認される。このことは、第1の弾性部材と第2の弾性部材とを備えた上述の応用形態に対し、次の応用形態がさらに好適であることを意味している。
【0170】
この応用形態では、上記痕跡部材、上記第1の弾性部材、および上記第2の弾性部材それぞれが導電性を有している。そして、この応用形態は、第1の導電部材と第2の導電部材とを備えている。第1の導電部材は、第1の接点と、その第1の接点から上記内部空間の外へと延びた第1の端子とを有する、導電性を有したものである。第1の接点は、上記第1の力と上記第2の力の双方が保たれているときは上記第1の弾性部材に接触していてその第1の力が失われるとその第1の弾性部材から離れるものである。また、第2の導電部材は、第2の接点と、その第2の接点から上記内部空間の外へと延びた第2の端子とを有する、導電性を有したものである。第2の接点は、上記第1の力と上記第2の力の双方が保たれているときは上記第2の弾性部材に接触していてその第2の力が失われるとその第2の弾性部材から離れるものである。
【0171】
第3実施形態における第1の導電部材301が、この応用形態における第1の導電部材の一例に相当する。また、第3実施形態における第2の導電部材302が、この応用形態における第2の導電部材の一例に相当する。
【0172】
また、上記の導通確認の方法としては、ここでは特定しないが、次のような方法が挙げられる。
【0173】
例えば、ユーザが、テスタ等の計測機器を用いて第1の端子301bと第2の端子302bとの間の導通確認を行うという方法が挙げられる。
【0174】
また、加熱方向識別部品300についての、次のような搭載構造を用いた導通確認が挙げられる。この搭載構造は、上記の第1の端子301bと第2の端子302bとがノートPC1の内部回路に電気的に接続されているというものである。さらに、ノートPC1には、その内部回路を介して導通確認を実行するプログラムが組み込まれている。そして、電源投入時や、ユーザが所定のキー操作を行ったとき等に、そのプログラムにより自動的に導通確認が実行される。この方法によれば、上記の導通確認が、ノートPC1内でのプログラム動作によって一層簡単に行われることとなる。
【0175】
次に、第4実施形態について説明する。
【0176】
この第4実施形態は、加熱方向識別部品に備えられている引張コイルバネの本数が、上述の第1実施形態と異なっている。以下では、第4実施形態について、この引張コイルバネの本数に注目して説明する。
【0177】
図15は、加熱方向識別部品の第4実施形態を示す模式的な断面図である。
【0178】
この図15には、第4実施形態の加熱方向識別部品400が、図5のパート(A)に示す第1実施形態の加熱方向識別部品100の断面と同等な断面で示されている。尚、この図15では、図5中の要素と同等な要素については図5中の符号と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な要素についての重複説明を省略する。
【0179】
この第4実施形態の加熱方向識別部品400では、金属薄板120と第2の蓋壁112との間に、第1の小引張コイルバネ401と、第2の小引張コイルバネ402が並列配置されている。この加熱方向識別部品400では、第1の小引張コイルバネ401の張力および第2の小引張コイルバネ402の張力を合わせた合成張力が、第1実施形態における第2引張コイルバネ140の張力と同等となっている。
【0180】
尚、この第4実施形態では、1本の引張コイルバネと2本の引張コイルバネとが、金属薄板120を挟んで配置された形態を例示したが、引張コイルバネの本数と配置はこの形態に限るものではない。引張コイルバネの本数と配置は、例えば、1本の引張コイルバネの張力と3本以上の引張コイルバネとが、金属薄板120を挟んで配置された形態であっても良い。あるいは、引張コイルバネの本数と配置は、複数本の引張コイルバネと複数本の引張コイルバネとが、金属薄板120を挟んで配置された形態であっても良い。
【0181】
次に、第5実施形態について説明する。
【0182】
この第5実施形態は、加熱方向識別部品に備えられているコイルバネが圧縮コイルバネである点が、上述の第1実施形態と異なっている。以下では、第5実施形態について、この圧縮コイルバネに注目して説明する。
【0183】
図16は、加熱方向識別部品の第5実施形態を示す模式的な断面図である。
【0184】
この図16には、第5実施形態の加熱方向識別部品500が、図5のパート(A)に示す第1実施形態の加熱方向識別部品100の断面と同等な断面で示されている。尚、この図16では、図5中の要素と同等な要素については図5中の符号と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な要素についての重複説明を省略する。
【0185】
この第5実施形態の加熱方向識別部品500では、金属薄板120と第1の蓋壁111との間に第1圧縮コイルバネ501が配置され、金属薄板120と第2の蓋壁112との間に第2圧縮コイルバネ502が配置されている。各圧縮コイルバネは縮まった状態で配置されており、各圧縮コイルバネによる押出し力の方向は互いに打ち消し合う方向となっている。
【0186】
ここで、この第5実施形態の加熱方向識別部品500では、図16では図示が省略されている第1及び第2の熱伝導部材やセラミック部が、第1の蓋壁111や第2の蓋壁112によって支持されている。
【0187】
第1の蓋壁111と第2の蓋壁112とのいずれか一方が熱で軟化して損壊すると、その損壊した方の圧縮コイルバネが蓋壁を破って外に飛び出す。このときには、その蓋壁によって支持されていた熱伝導部材やセラミック部は、蓋壁を破って飛び出した圧縮コイルバネに押されて加熱方向識別部品500から外れる。
【0188】
また、圧縮コイルバネが蓋壁を破って外に飛び出すことで、その圧縮コイルバネの押出し力が失われる。その結果、もう一方の圧縮コイルバネの押出し力により金属薄板120が、損壊した蓋壁の側に凸に変形する。金属薄板120の表裏面には、各面に「外」あるいは「内」の文字が刻印されている。
【0189】
焼損後の確認では、金属薄板120において「外」、「内」いずれの文字が刻印された面が飛び出しているのかの目視確認により、焼損が、ノートPC1内外(バッテリパック30内外)いずれからの熱によるのかが識別されることとなる。
【0190】
次に、第6実施形態について説明する。
【0191】
この第6実施形態は、金属薄板の取り付け状態が、上述の第1実施形態と異なっている。以下では、第6実施形態について、この金属薄板の取り付け状態に注目して説明する。
【0192】
図17は、加熱方向識別部品の第6実施形態を示す模式的な断面図である。
【0193】
この図17には、第6実施形態の加熱方向識別部品600が、図5のパート(A)に示す第1実施形態の加熱方向識別部品100の断面と同等な断面で示されている。尚、この図17では、図5中の要素と同等な要素については図5中の符号と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な要素についての重複説明を省略する。
【0194】
この第5実施形態の加熱方向識別部品600では、2つのカバー厚方向の壁113bの内面に、上述の第1実施形態では設けられているような溝が設けられていない。金属薄板601は、一方の第1短辺が一方のカバー厚方向の壁113bの内面の固定部602に固着されている。金属薄板601のもう一方の第2短辺は自由な状態となっており、固定部602を有するカバー厚方向の壁113bとは反対側のカバー厚方向の壁113bの内面と、その第2短辺との間には隙間が空いている。
【0195】
第1の蓋壁111と第2の蓋壁112とのいずれか一方が熱で軟化して損壊すると、その損壊した方の引張コイルバネが蓋壁から外れることで、その引張コイルバネの張力が失われる。金属薄板601の第1短辺は固着され第2短辺が自由な状態となっているので、金属薄板601は、残った引張コイルバネの張力により損壊した壁とは反対側の壁の側に折り曲げられる。金属薄板601の表裏面には、各面に「外」あるいは「内」の文字が刻印されている。
【0196】
焼損後の確認では、金属薄板601が、「外」、「内」いずれの文字が刻印された面の側に折り曲げられているのかの目視確認により、焼損が、ノートPC1内外(バッテリパック30内外)いずれからの熱によるのかが識別されることとなる。
【0197】
次に、第7実施形態について説明する。
【0198】
この第7実施形態は、「外」の文字と「内」の文字の刻印位置が、上述の第6実施形態と異なっている。以下では、第7実施形態について、この刻印位置に注目して説明する。
【0199】
図18は、加熱方向識別部品の第7実施形態を示す模式的な断面図である。
【0200】
この図18には、第7実施形態の加熱方向識別部品700が、図17に示す第6実施形態の加熱方向識別部品600の断面と同等な断面で示されている。尚、この図18では、図17中の要素と同等な要素については図17中の符号と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な要素についての重複説明を省略する。
【0201】
この第7実施形態の加熱方向識別部品700では、「外」の文字702と「内」の文字703が、金属薄板702の表裏面ではなく、内面側受熱面161上の、確認孔101から見える金属薄板120を挟んだ2箇所に刻印されている。「外」の文字702は、その刻印の箇所が、金属薄板120から見て、ノートPC1外(バッテリパック30外)からの熱が伝わる第1の蓋壁111の方に位置していることを示す。「内」の文字703は、その刻印の箇所が、金属薄板120から見て、ノートPC1内(バッテリパック30内)からの熱が伝わる第2の蓋壁112の方に位置していることを示す。
【0202】
この第7実施形態の加熱方向識別部品700では、金属薄板701は、一方の第1短辺が一方のカバー厚方向の壁113bの内面の固定部602に固着されている。このため、焼損時に引張コイルバネの張力で折り曲げられても、金属薄板701は筒部材の中で自由な状態にはならず、確認孔101から視認可能な位置に留まることとなる。また、金属薄板701が折れ曲がっているときの、その折れ曲がりの方向は、金属薄板701が汚損していても確認孔101から確認することができる。そして、「外」の文字702と「内」の文字703とが、燃え残り時の外面となる内面側受熱面161上に刻印されている。
【0203】
焼損後の確認では、まず、この内面側受熱面161上の汚損が、刻印文字が読める程度に洗浄される。そして、金属薄板120が、確認孔101の両脇の刻印文字のいずれの側に折れ曲がっているのかの確認孔101からの目視確認により、焼損が、ノートPC1内外(バッテリパック30内外)いずれからの熱によるのかが識別されることとなる。
【0204】
このように、加熱方向識別部品700では、収納位置が保たれたまま金属薄板120が変形する。そして、その金属薄板120を挟んだ2箇所に「外」、「内」それぞれの文字が刻印されている。このような構造でも、上記のように、焼損が、ノートPC1内外(バッテリパック30内外)いずれからの熱によるのかが目視確認という簡単な方法で識別される。
【0205】
尚、第7実施形態における「外」および「内」の文字の刻印は、加熱方向識別部品700の最外面である内面側受熱面161上における確認孔101の両脇に配置されている。しかし、これら2つの文字の刻印位置は、加熱方向識別部品の最外面に限るものではなく、例えば筒部材の内面等であって、確認孔101から見える位置であっても良い。
【0206】
ただし、この第7実施形態の加熱方向識別部品700では、「外」および「内」の文字の刻印が最外面における確認孔101の両脇に配置されていることで、焼損後に、金属薄板120を取り出さなくても済むこととなっている。
【0207】
次に、第8実施形態について説明する。
【0208】
この第8実施形態は、物理的痕跡の残し方が、上述の第1実施形態と異なっている。以下では、第8実施形態について、この物理的痕跡の残し方に注目して説明する。
【0209】
図19は、加熱方向識別部品の第8実施形態を示す模式的な断面図である。
【0210】
この図19には、第8実施形態の加熱方向識別部品800が、図5のパート(A)に示す第1実施形態の加熱方向識別部品100の断面と同等な断面で示されている。尚、この図19では、図5中の要素と同等な要素については図5中の符号と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な要素についての重複説明を省略する。
【0211】
この図19のパート(A)には、加熱方向識別部品800の、物理的痕跡が残る前の状態が示されている。図19のパート(B)には、加熱方向識別部品800の、物理的痕跡が残った後の状態が示されている。また、図19のパート(C)には、パート(A)中に円形で示された領域A1内の拡大図が示されている。また、図19のパート(D)には、パート(B)中に円形で示された領域A2内の拡大図が示されている。
【0212】
第8実施形態の加熱方向識別部品800では、引張コイルバネの張力で変形しない程度の強度を持った、長方形状の金属板801が、部品本体筐体110内に収納されている。そして、この金属板801の2つの短辺それぞれが、筒部材113の2つのカバー厚方向の壁113bそれぞれの内面に設けられた支持部802で次のように支持されている。
【0213】
支持部802は、カバー厚方向の壁113bの内面にセラミックで、このカバー厚方向の壁113bと一体的に形成されたものであり、図19のパート(C)に示すように、金属板801を挟む2つの突起802aを備えている。金属板801の各短辺は、各支持部802におけるこれら2つの突起802aの間に嵌め込まれている。一方、金属板801の各長辺と、筒部材113のカバー面内方向の壁113aとの間には隙間が開いている。
【0214】
ここで、各支持部802における2つの突起802aは、金属板801が一方の引張コイルバネの張力で引かれて移動すると破損する程度の強度となっている。
【0215】
このため、いずれか一方の樹脂製の蓋壁が熱で損壊して引張コイルバネの一方が蓋壁から外れると、金属板801がもう一方の引張コイルバネの張力で引かれる。その結果、図19のパート(D)に示すように、2つの突起802aのうち金属板801が引かれた側の突起802aが破損する。このように、加熱方向識別部品800では、熱で損壊した蓋壁とは反対側の蓋壁の側の突起802aが、金属板801の移動によって破損するようになっている。
【0216】
さらに、各カバー面内方向の壁113aの内面には、その内面に設けられている支持部802を挟んで、第1の蓋壁111側に「外」の文字803が刻印され、第2の蓋壁112側に「内」の文字804が刻印されている。
【0217】
焼損後の確認では、まず、加熱方向識別部品800が、部品本体筐体110の2つのカバー面内方向の壁113aそれぞれの内面のうちいずれか一方の内面が見えるように分解される。そして、その内面において、「外」、「内」いずれの文字の刻印側の突起802aが破損せずに残っているかが目視確認される。この目視確認により、熱で損壊した蓋壁がどの蓋壁であるか、つまりは、焼損が、ノートPC1内外(バッテリパック30内外)いずれからの熱によるのかが識別されることとなる。図19の例では、「外」の文字の刻印側の突起802aが破損せずに残っていることが目視確認され、焼損が、ノートPC1外(バッテリパック30外)からの熱によるものであると識別される。
【0218】
このように第8実施形態の加熱方向識別部品800では、内部に収納されている金属板801の移動によって、その金属板801の支持部802に物理的痕跡が残るものとなっている。このため、金属板801が焼損時に仮に紛失してしまったとしても、物理的痕跡は、金属板801よりも大きく紛失し難い筒部材113と一体となった支持部802に残されているので、上述した識別が確実に行われることとなる。このことは、本件の加熱方向識別部品100に対し、次のような応用形態が好適であることを意味している。
【0219】
この応用形態では、上記弾性部材が、上記一対の対向壁それぞれと上記痕跡部材との間に、次のような力を加えるものとなっている。その力は、各対向壁の損壊で失われる各力である。そして、その力は、その力の双方が保たれているときは上記痕跡部材の収納位置および形状も保たれ、その力の一方が失われたときは他方の力によってその痕跡部材の収納位置および形状のうち少なくとも一方が変化する力である。そして、この応用形態では、上記痕跡部材は、その痕跡部材の収納位置および形状のうち少なくとも一方が変化したときは、その変化の方向が判別可能な物理的痕跡を上記支持壁に残すものとなっている。
【0220】
第8実施形態における第1引張コイルバネ130および第2引張コイルバネ140それぞれは、この応用形態における弾性部材の一例にも相当している。また、第8実施形態における金属板801が、この応用形態における痕跡部材の一例に相当する。また、第8実施形態における、上記の支持部802を有した筒部材113が、この応用形態における支持壁の一例に相当する。
【0221】
また、この第8実施形態の加熱方向識別部品800では、筒部材113のカバー面内方向の壁113aの内面における、金属板801を挟んだ位置に、「外」、「内」の文字が刻印されている。つまり、第8実施形態の加熱方向識別部品800では、金属板801よりも大きく紛失し難い筒部材113に「外」、「内」の文字が刻印されているので、焼損後のより確実な目視確認が可能となっている。このことは、痕跡部材が支持壁に物理的痕跡を残す上述の応用形態に対し、次の応用形態がさらに好適であることを意味している。
【0222】
この応用形態の加熱方向識別部品は、上記支持壁が、上記一対の対向壁のうちのいずれの対向壁を、その支持壁のどちら側で支持しているかを示すマークが付されたものとなっている。
【0223】
第8実施形態における筒部材113は、この応用形態における支持壁の一例にも相当している。
【0224】
また、第8実施形態の加熱方向識別部品800では、金属板801が移動したときに、支持部802における突起802aを破損するという簡単な方法で物理的痕跡が残される。このことは、痕跡部材が支持壁に物理的痕跡を残す上述の応用形態に対し、次の応用形態がさらに好適であることを意味している。
【0225】
この応用形態では、上記痕跡部材が、上記弾性部材によって上記一対の対向壁それぞれとその痕跡部材との間に働いている各力のうち一方の力が失われたときは他方の力によって、上記一対の対向壁の一方へと移動するものとなっている。また、この応用形態では、上記支持壁は、上記痕跡部材が移動したときにはその痕跡部材によって上記物理的痕跡としての傷が付けられるものとなっている。
【0226】
第8実施形態における金属板801は、この応用形態における痕跡部材の一例にも相当している。また、第8実施形態における支持部802を有した筒部材113は、この応用形態における支持壁の一例にも相当している。
【0227】
尚、以上に説明した第1〜第8実施形態のうち第4実施形態を除く各実施形態では、いずれもバネが金属薄板(金属板)を挟んで1つずつ配置されている構造を例示した。しかしながら、第4実施形態を除く各実施形態でも、例えば、金属薄板(金属板)の両側のうち少なくとも一方の側にバネを複数配置しても良い。
【0228】
また、以上に説明した第1〜第8実施形態のうち第5実施形態を除く各実施形態では、いずれもバネとして引張コイルバネが用いられている。しかし、第5実施形態を除く各実施形態でも、引張コイルバネを圧縮コイルバネに替えて、これらの実施形態と同等な働きをする構造を得ても良い。さらに、バネの種類は、コイルバネに限るものではなく、例えば板バネ等を用いても良い。
【0229】
次に、第9実施形態について説明する。
【0230】
この第9実施形態は、引張コイルバネに変えてゴムが用いられている点が、上述の第1実施形態と異なっている。以下では、第9実施形態について、このゴムを用いた構造に注目して説明する。
【0231】
図20は、加熱方向識別部品の第9実施形態を示す模式的な断面図である。
【0232】
この図20には、第9実施形態の加熱方向識別部品900が、図5のパート(A)に示す第1実施形態の加熱方向識別部品100の断面と同等な断面で示されている。尚、この図20では、図5中の要素と同等な要素については図5中の符号と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な要素についての重複説明を省略する。
【0233】
この第9実施形態の加熱方向識別部品900では、第1の蓋壁111と金属薄板120との間に耐熱ゴム製の第1ゴム901が伸びた状態で配置されている。また、第2の蓋壁112と金属薄板120との間に耐熱ゴム製の第2ゴム902が伸びた状態で配置されている。そして、いずれか一方の蓋壁が熱で損壊すると、その蓋壁の側のゴムが外れる。そして、金属薄板は、もう一方のゴムによる張力で、図6のパート(B)に示す第1実施形態における金属薄板120と同様に変形することとなる。
【0234】
焼損後の確認では、第1実施形態と同様に、金属薄板120において「外」、「内」いずれの文字が刻印された面が飛び出しているのかの目視確認により、焼損が、ノートPC1内外(バッテリパック30内外)いずれからの熱によるのかが識別される。
【0235】
次に、第10実施形態について説明する。
【0236】
この第10実施形態は、金属薄板への力の掛け方が、上述の第1実施形態と異なっている。以下では、第10実施形態について、この金属薄板への力の掛け方に注目して説明する。
【0237】
図21は、加熱方向識別部品の第10実施形態を示す模式的な断面図である。
【0238】
この図21には、第10実施形態の加熱方向識別部品1000が、図5のパート(A)に示す第1実施形態の加熱方向識別部品100の断面と同等な断面で示されている。尚、この図21では、図5中の要素と同等な要素については図5中の符号と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な要素についての重複説明を省略する。
【0239】
この第10実施形態の加熱方向識別部品1000は、部品本体筐体110の内部空間を、第1の蓋壁111と第の壁112とのそれぞれとで挟まれた2つの空間に仕切る仕切り板として機能する金属薄板1001を備えている。この金属薄板1001は、4辺が全て筒部材113の内面に密着固定されている。そして、この金属薄板1001で仕切られた2つの空間それぞれの内部が減圧され真空状態におかれている。
【0240】
尚、この第10実施形態の加熱方向識別部品1000では、2つの空間の密閉性を保つために、確認孔1002が耐熱性の透明ガラスで塞がれている。また、この加熱方向識別部品1000では、金属薄板1001と筒部材113の内面との密着性を阻害しないように、確認孔1002が金属薄板1001を避けて2箇所に設けられている。
【0241】
また、金属薄板1001の第1の蓋壁111側の面には「外」の文字が刻印され、第2の蓋壁112側の面には「内」の文字が刻印されている。
【0242】
この第10実施形態の加熱方向識別部品1000では、いずれか一方の蓋壁が熱で損壊すると、その蓋壁から外気が流入する。このときに、金属薄板1001は、もう一方の蓋壁の側の空間における真空の陰圧により、その蓋壁の側に引かれる。その結果、金属薄板1001は、熱で損壊した蓋壁に対向した面が凹んだ形状に変形することとなる。
【0243】
焼損後の確認では、まず、加熱方向識別部品1000が分解されて、金属薄板1001が取り出される。そして、その金属薄板1001において「外」、「内」いずれの文字が刻印された面が凹んでいるのかの目視確認により、焼損が、ノートPC1内外(バッテリパック30内外)いずれからの熱によるのかが識別されることとなる。
【0244】
この第10実施形態の加熱方向識別部品1000では、上述のバネ等を用いた金属薄板(金属板)の変形や移動のための機構が不要であり、部品点数の削減が図られている。このことは、本件の加熱方向識別部品に対し次の応用形態が好適であることを意味している。
【0245】
この応用形態では、上記痕跡部材が、上記内部空間を、上記一対の対向壁それぞれとその痕跡部材とで挟まれた2つの空間に仕切る板となっている。そして、この応用形態では、上記内部空間内において、上記弾性部材を備えることに替えて、上記2つの空間それぞれの内部気圧が、大気圧とは異なった気圧に保たれている。
【0246】
この第10実施形態における金属薄板1001が、この応用形態における痕跡部材の一例に相当する。また、この第10実施形態において金属薄板1001で仕切られた上記の2つの空間が、この応用形態における2つの空間の一例に相当する。
【0247】
ここで、この第10実施形態の加熱方向識別部品1000では、金属薄板1001で仕切られた2つの空間それぞれの内部気圧が真空に保たれているが、この内部気圧は、真空に限るものではない。この内部気圧は、2つの空間のうちの一方の気密性が破れたときに金属薄膜を変形させる程度に減圧された気圧であっても良く、あるいは逆に、一方の気密性が破れたときに金属薄膜を変形させる程度に加圧された気圧であっても良い。
【0248】
次に、第11実施形態について説明する。
【0249】
この第11実施形態は、ノートPCにおける加熱方向識別部品の搭載位置、および、加熱方向識別部品の内部構造が、上述の第1実施形態と異なっている。以下では、第11実施形態について、加熱方向識別部品が搭載されているノートPCから説明する。
【0250】
図22は、第11実施形態におけるノートPCを、そのノートPCが開かれた開状態について示す斜視図である。
【0251】
尚、この図22では、第1実施形態におけるノートPCを示す図1中の要素と同等な要素については、この図1と同じ符号が付されており、以下では、その同等な要素について重複説明を省略する。
【0252】
このノートPC5は、本体部50と表示部20とを備えている。表示部20と本体部50は、表示部20が本体部50に対し開閉自在となるように相互に連結されている。
【0253】
本体部50は、各種情報処理を実行する回路基板や、ハードディスクドライブ等が本体筐体51に収納されたものである。そして、本体筐体51上面には、キーボード12、トラックパッド13、左右2つのクリックボタン14、指紋認証のための指紋センサ15が配備されている。
【0254】
第11実施形態では、本体筐体51が、本件の機器における筐体の一例に相当する。
【0255】
図23は、閉状態にあるノートPCを、本体部の裏面側から見た斜視図である。
【0256】
この図23に示すように、本体部50の裏面には、このノートPC5に電源供給するバッテリパック60が着脱自在に搭載される。このバッテリパック60は、内部に複数のバッテリが収納されたバッテリ収納部61と、そのバッテリ収納部61を覆うバッテリカバー62を備えている。バッテリカバー62は、バッテリパック60が本体部50に取付けられた状態で、その本体部50の裏面の一部となる。また、バッテリ収納部61は、バッテリパック60が本体部50に取付けられた状態で、本体筐体51の内部に、その本体筐体51の内壁51aから距離を空けて配置される。そして、このバッテリパック60と、本体筐体51の内壁51aとの間の隙間に、加熱方向識別部品1100が組み込まれている。
【0257】
バッテリパック60が本体部50に取付けられた状態では、加熱方向識別部品1100は、バッテリパック60のバッテリカバー62によって隠されている。バッテリパック60が本体部50から外されると加熱方向識別部品1100が露出される。そして、加熱方向識別部品1100におけるバッテリカバー62側の側面には、この加熱方向識別部品1100の内部を確認するための確認窓1101が2箇所に設けられている。
【0258】
火災現場の火元付近で、このノートPC5のようにバッテリパックが搭載されている機器が焼損している状況では、バッテリパック内のバッテリに出火原因の疑いが掛かってしまう恐れがある。加熱方向識別部品1100は、ノートPC5が火災等で焼損した場合に、その焼損が、ノートPC5外からの熱によるのか、ノートPC5内、具体的にはバッテリパック60内のバッテリで発生した熱によるのかを識別するためのものである。この加熱方向識別部品1100が、本件の加熱方向識別部品の一実施形態に相当する。
【0259】
図24は、図23に示すノートPCの本体部における加熱方向識別部品の周辺の、本体部の裏面に沿った断面を模式的に示す部分断面図である。尚、この図24では、バッテリパック60が、図23とは逆に、図中で加熱方向識別部品の上側にして示されている。
【0260】
この図24に示すように、バッテリパック60のバッテリ収納部61には、リチウムイオンバッテリ63と、これらのリチウムイオンバッテリ63から上記本体部50への電力供給を制御する制御基板64が収納されている。そして、上述したように、バッテリパック60と、本体筐体51の内壁51aとの間の隙間に、加熱方向識別部品1100が着脱可能に組み込まれている。そして、上記の隙間に嵌め込まれた加熱方向識別部品1100の、長手方向に広がる4つの側面のうちの一つが、本体筐体51の内壁51aの側を向いている。また、内壁51aの側を向いた面に対向した側面が、バッテリパック60の側を向いている。
【0261】
以下、この加熱方向識別部品1100の詳細について説明する。
【0262】
加熱方向識別部品1100は、部品本体筐体1110と、引張コイルバネ1120と、一対のピン部材1130と、第1の熱伝導部材1140と、第2の熱伝導部材1150と、セラミック部1160とを備えている。尚、この図24では、引張コイルバネ1120が有する後述の舌片1122については、その舌片1122に設けられている長孔1122aが見えるように斜視的に示されている。
【0263】
部品本体筐体1110は、四角筒状の筒部材1113と、その筒部材1113の両端部の開口のうちの一方を塞ぐ第1の蓋壁1111と、他方を塞ぐ第2の蓋壁1112とを有している。
【0264】
第11実施形態では、第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112、本体筐体51、およびバッテリ収納部61は、いずれも樹脂で形成されている。ただし、第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112は、本体筐体51とバッテリ収納部61とのうちのどの部品を形成している樹脂の耐熱温度よりも高い耐熱温度を有した樹脂で形成されている。
【0265】
一方で、第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112の樹脂の耐熱温度は、リチウムイオンバッテリ63の熱暴走で発生する熱と、火災によって外部から加えられる熱とのうち、温度が低い方の熱で溶ける温度となっている。これら第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112の形成に使うことが可能な樹脂の具体例としては、耐熱温度が150°〜200°のエポキシ樹脂等が挙げられる。また、筒部材1113は、これら第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112を形成している樹脂の耐熱温度よりも高い耐熱温度を有したセラミックで形成されている。
【0266】
このように、部品本体筐体1110は、セラミック製の筒部材1113の両端の開口の一方が樹脂製の第1の蓋壁1111で塞がれ、もう一方が、樹脂製の第2の蓋壁1112で塞がれたものとなっている。
【0267】
この部品本体筐体1110における第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112が、互いに対向した一対の対向壁の一例に相当する。また、部品本体筐体1110における筒部材1113が、上記一対の対向壁を支持してこれら一対の対向壁とともに内部空間を形成した支持壁の一例に相当する。
【0268】
引張コイルバネ1120は、バネ本体1121と、各々がバネ本体1121の両端に溶接固定された一対の舌片1122を備えている。バネ本体1121および一対の舌片1122は、いずれも、例えばステンレス等の金属製である。舌片1122は、第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112の対向方向に延びる長方形状を有している。さらに、この舌片1122には、第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112の対向方向に延びた長孔1122aが舌片1122の厚み方向に貫通している。各舌片1122における蓋壁側の縁には、上記の対向方向に突起1122bが延びている。各舌片1122におけるこの突起1122bが、その突起1122bが延びていった先の蓋壁に固定されている。
【0269】
引張コイルバネ1120は、上記の一対の舌片1122を介して、一端が第1の蓋壁1111の中央に接続され、他端が第2の蓋壁1112の中央に接続されている。そして、引張コイルバネ1120は、第1の蓋壁1111と第2の蓋壁1112との間に伸ばされた状態で配置されている。
【0270】
ここで、引張コイルバネ1120の各端(即ち、舌片1122の突起1122b)と各蓋壁との接合力は、蓋壁に対する加熱温度が上記の耐熱温度以下のときには、上記のように伸ばされた状態での引張コイルバネ1120の張力よりも大きい。従って、第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112それぞれに対する加熱温度が上記の耐熱温度以下のときには、引張コイルバネ1120の各端の各蓋壁への固定が維持される。
【0271】
第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112のうちいずれか一方の蓋壁が、その蓋壁を形成する樹脂の耐熱温度を超えた温度の熱で加熱されるとその蓋壁は軟化する。そして、このときには、その蓋壁に固定されている引張コイルバネ1120の一端とその蓋壁との接合力は、蓋壁の軟化によって低下して引張コイルバネ1120の張力を下回る。
【0272】
このため、一方の蓋壁について加熱温度が上記の耐熱温度を超えると、その蓋壁に固定されている引張コイルバネ1120の一端が、引張コイルバネ1120の張力によって蓋壁から外れる。
【0273】
引張コイルバネ1120が、一対の対向壁の間に延引あるいは圧縮された状態で配置されて両端それぞれが各対向壁に接続された弾性部材の一例に相当する。
【0274】
一対のピン部材1130それぞれは、筒部材1113の内壁面から突き出して、引張コイルバネ1120の各端の舌片1122に設けられた長孔1122a内を通ることで、各端と交差している。各ピン部材1130の、筒部材1113側とは反対側の先端は、そのピン部材1130に近い蓋壁の側に折れ曲がっている。また、各ピン部材1130は、長孔1122aの内縁との間に隙間を空けて、この長孔1122a内を通っている。ピン部材1130と、長孔1122aの蓋壁側の内縁との間の隙間については、伸ばされて配置されている引張コイルバネ1120の延引距離よりも狭い隙間となっている。また、各ピン部材1130は、例えばステンレス等の金属製であるので、第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112を形成する樹脂の耐熱温度よりも高い耐熱温度を有している。この一対のピン部材1130が、各々が、弾性部材の両端それぞれに交差した一対の痕跡部材の一例に相当する。
【0275】
第1の熱伝導部材1140は、上記の筒部材1113の4つの側面のうち、加熱方向識別部品1100がノートPC5(図22、23参照)に組み込まれた状態で、内壁51aの側を向く面に沿って広がる外面側受熱面1141を有している。第1の熱伝導部材1140は、この外面側受熱面1141から折れ曲がって第1の蓋壁1111に接触した金属製の部材である。この第1の熱伝導部材1140は、外面側受熱面1141で受けた熱を第1の蓋壁1111へと伝達する。
【0276】
第2の熱伝導部材1150は、上記の筒部材1113の4つの側面のうち、加熱方向識別部品1100がノートPC5に組み込まれた状態で、バッテリパック60の側を向く面に沿って広がる内面側受熱面1151を有している。第2の熱伝導部材1150は、この内面側受熱面1151から折れ曲がって第2の蓋壁1112に接触した金属製の部材である。第2の熱伝導部材1150は、この内面側受熱面1151で受けた熱を第2の蓋壁1112へと伝達する。
【0277】
セラミック部1160は、第1の熱伝導部材1140と第2の熱伝導部材1150とが取り付けられた部品本体筐体1110の両端を各熱伝導部材の上から覆っている。さらに、このセラミック部1160は、この加熱方向識別部品1100全体を、外面側受熱面1141と内面側受熱面1151とが露出した直方体形状に整形する役割も担っている。即ち、セラミック部1160は、第1の熱伝導部材1140と第2の熱伝導部材1150とが取り付けられた部品本体筐体1110とその直方体形状との差分を埋めている。
【0278】
このセラミック部1160により、加熱方向識別部品1100の外表面は、外面側受熱面1141と内面側受熱面1151とを除いて全てセラミックで覆われる。
【0279】
この構造により、第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112への、第1の熱伝導部材1140および第2の熱伝導部材1150それぞれを辿る伝熱ルート以外のルートを通る伝熱が抑制されている。
【0280】
その結果、バッテリパック60外、即ちノートPC5外から加えられた熱は、加熱方向識別部品1100においては、外面側受熱面1141で受けられ第1の熱伝導部材1140の内部のみを通って第1の蓋壁1111に伝えられる。
【0281】
また、バッテリパック60内のリチウムイオンバッテリ63で発生した熱等の、ノートPC5内で発生した熱は、内面側受熱面1151で受けられ第2の熱伝導部材1150の内部のみを通って第2の蓋壁1112に伝えられる。
【0282】
また、図23を参照して説明したように、この加熱方向識別部品1100におけるバッテリカバー62側の側面には、この加熱方向識別部品1100の内部を確認するための確認窓1101が2箇所に設けられている。
【0283】
図25は、加熱方向識別部品に設けられている確認窓を示す斜視図である。
【0284】
この図25に示すように、確認窓1101は、この加熱方向識別部品1100における長手方向の4つの側面のうち、図23にも示すバッテリカバー62で隠される側面に次のように設けられている。即ち、確認窓1101は、この側面における、内部の各ピン部材1130を見通す、この加熱方向識別部品1100の両端部近傍それぞれの位置に設けられている。各確認窓1101は、図24に示す四角筒状の筒部材1113の側壁と、その筒部材1113を覆うセラミック部1160を貫通して設けられている。そして、各確認窓1101は、ノートPC5(図22、23参照)の焼損時に、加熱方向識別部品1100の内部に直接に熱が及ばないように透明耐熱ガラスで塞がれている。また、この加熱方向識別部品1100の外面には、各確認窓1101に隣接する位置に、次のようなマークが付されている。即ちノートPC5外から加えられた熱が伝えられる第1の蓋壁1111に近い確認窓1101に隣接する位置には「外」のマーク1101aが付されている。一方、ノートPC5内で発生した熱が伝えられる第2の蓋壁1112に近い確認窓1101に隣接する位置には「内」のマーク1101bが付されている。
【0285】
以下、ノートPC5が焼損したとき、その焼損が、ノートPC5外とノートPC5内とのいずれからの熱によるものかが、加熱方向識別部品1100によってどのように識別されるのかについて説明する。
【0286】
図26は、焼損発生時の加熱方向識別部品の内部状態を示す図である。
【0287】
上記の引張コイルバネ1120の張力は、詳細については後述するように1本のピン部材1130の降伏応力を超えている。引張コイルバネ1120の両端は、上述したように第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112に固定されている。このため、この固定が保たれている状態では、引張コイルバネ1120の張力は各ピン部材1130には掛からず各蓋壁のみに掛かることとなる。
【0288】
ここで、ノートPC5外またはノートPC5内からの熱で加熱されて、第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112のいずれか一方の蓋壁の温度が、その蓋壁を形成している樹脂の耐熱温度を超えたとする。すると、加熱方向識別部品1100では、上記のようにその加熱された蓋壁から引張コイルバネ1120の一端が外れる。
【0289】
図26の例は、ノートPC5外から加えられた熱が第1の熱伝導部材1140によって第1の蓋壁1111に加えられて、その第1の蓋壁1111から引張コイルバネ1120の一端が外れた例である。
【0290】
このように引張コイルバネ1120の一端が蓋壁から外れると、引張コイルバネ1120が縮むのに併せてその外れた一端が蓋壁から離れる方向に、その引張コイルバネ1120の延引距離以上移動する。第11実施形態では、引張コイルバネ1120の一端の移動の痕跡が、その一端と上記のように交差しているピン部材1130の、以下に説明する変形によりそのピン部材1130自身に残る。
【0291】
ピン部材1130と、引張コイルバネ1120の舌片1122における長孔1122aの蓋壁側の内縁との間の隙間は、上述したように引張コイルバネ1120の延引距離よりも狭い。このため、引張コイルバネ1120の一端がこの延引距離以上移動するとその移動の途中で、長孔1122aの蓋壁側の内縁がピン部材1130に引っ掛かる。その結果、そのピン部材1130には、そのピン部材1130の降伏応力を超えた張力が掛かる。そして、そのピン部材1130は、その張力によって、この加熱方向識別部品1100の中央側に倒れるように塑性変形することとなる。
【0292】
尚、第11実施形態では、上記の弾性部材の端部と痕跡部材との交差の一例として、引張コイルバネ1120の端部の舌片1122に設けられた長孔1122aを、ピン部材1130が内縁との間に隙間を空けて通っている形態を例示した。
【0293】
この形態では、弾性部材の端部が、上記の対向壁(第1および第2の蓋壁1111、112が対向壁の一例に相当)に接続されている状態では弾性部材の端部と、その端部と交差している痕跡部材との間に隙間が空いている。そして、弾性部材の端部が対向壁から外れて移動すると、その端部が、その端部と交差している痕跡部材に引っ掛かる。
【0294】
しかしながら、弾性部材の端部と痕跡部材との交差はこの形態に限るものではなく、以下のような交差の別形態が挙げられる。
【0295】
例えば、弾性部材の端部と痕跡部材との交差の更なる別形態としては、痕跡部材に孔が設けられており、弾性部材の端部がその孔を貫通して対向壁に接続されているという形態が挙げられる。この形態では、弾性部材の端部が、その端部が対向壁から外れたときに痕跡部材に引っ掛かるフック等を有することとなる。
【0296】
また、例えば、弾性部材の端部が上記の対向壁に接続されている状態で、弾性部材の端部と、その端部と交差している痕跡部材とが既に接しているという形態が挙げられる。この形態の一例としては、例えば、弾性部材の端部に長孔が設けられており、痕跡部材がその長孔を内縁に接した状態で通っているという形態が挙げられる。また、弾性部材の端部と痕跡部材とが接しているという形態の別例として、弾性部材の端部が対向壁に接続されたフックを有しており、そのフックが痕跡部材に引っ掛かっているという形態も挙げられる。これらの形態では、弾性部材の端部が対向壁から外れると直ちに痕跡部材に荷重が掛かることとなる。
【0297】
また、例えば、弾性部材の端部に痕跡部材が固定された状態で両者が交差しているという形態が挙げられる。この形態でも、弾性部材の端部が対向壁から外れると直ちに痕跡部材に荷重が掛かることとなる。
【0298】
以上に列挙した各形態では、いずれの形態でも、弾性部材の端部が対向壁から外れてその端部が移動すると、その端部と交差している痕跡部材がその端部から力を受けて、例えば塑性変形等といった痕跡を残すこととなる。
【0299】
ここで、第11実施形態の加熱方向識別部品1100では、引張コイルバネ1120の一端が蓋壁から外れてピン部材1130が塑性変形するときには、引張コイルバネ1120の他端が、引張コイルバネ1120が縮むときの勢いで振動する。
【0300】
仮に、引張コイルバネ1120の端部にピン部材1130が固定されていたとすると、引張コイルバネ1120が縮んだときに、上記の他端と交差しているピン部材1130にその他端の振動による荷重が掛かる。そして、その荷重が大きい場合には、その他端と交差しているピン部材1130も変形してしまう恐れがある。
【0301】
しかし、第11実施形態の加熱方向識別部品1100では、ピン部材1130が舌片1122に固定されていないので、上記の他端と交差しているピン部材1130に、舌片1122の振動による荷重が掛かることが抑えられる。このため、引張コイルバネ1120が縮んだ際にも、その他端と交差しているピン部材1130については形状が確実に維持されることとなる。
【0302】
図26の例では、引張コイルバネ1120における第1の蓋壁1111側の一端が外れて、その一端と交差しているピン部材1130が塑性変形している。
【0303】
このように、加熱方向識別部品1100では、ノートPC5外からの熱で温度が樹脂の耐熱温度を超えると、第1の蓋壁1111側のピン部材1130が、中央側に倒れた形状に塑性変形する。逆に、ノートPC5内からの熱で温度が樹脂の耐熱温度を超えた場合には、第2の蓋壁1112側のピン部材1130が、中央側に倒れた形状に塑性変形する。
【0304】
ここで、図25を参照して説明したように、加熱方向識別部品1100には、各ピン部材1130を見通す位置に確認窓1101が設けられており、各確認窓1101に隣接して「外」のマーク1101aおよび「内」のマーク1101bが付されている。各マークは、そのマークが隣接している確認窓1101に近い蓋壁が、ノートPC5内外いずれからの熱が伝わる蓋壁であるかを示している。
【0305】
ノートPCの焼損後の現場からこの加熱方向識別部品1100が回収されると、洗浄等により、確認窓1101に付着している煤等の汚れが除かれる。そして、2つの確認窓1101それぞれから見通せるピン部材1130のうちのどちらが塑性変形しているかによって、焼損が、ノートPC5内外いずれからの熱によるものかが識別される。即ち、「外」のマーク1101aが隣接している確認窓1101から見通せるピン部材1130が塑性変形していた場合、ノートPC5外からの熱による焼損であると識別される。逆に、「内」のマーク1101bが隣接している確認窓1101から見通せるピン部材1130が塑性変形していた場合、ノートPC5内からの熱による焼損であると識別される。
【0306】
図26の例では、「外」のマーク1101aが隣接している確認窓1101から塑性変形したピン部材1130が目視され、焼損が、ノートPC5外からの熱によるものであることが識別されることとなる。
【0307】
以上、説明したように、この加熱方向識別部品1100では、塑性変形したピン部材1130の目視確認により、焼損が、ノートPC5内外いずれからの熱によるのかが識別される。従って、焼損が起きていない通常の使用時には、ピン部材1130の形状が元の形状に確実に保たれている必要がある。加熱方向識別部品1100の確認窓1101は、このピン部材1130の形状が元の形状に保たれていることを、例えばメンテナンス等の際に確認するためにも使われる。
【0308】
そして、仮に、ピン部材1130が1つでも既に変形していた場合には、加熱方向識別部品1100が新品と交換されることとなる。焼損前に生じる変形としては、例えば第1の蓋壁1111や第2の蓋壁1112の経時劣化等に起因して、これらの蓋壁における引張コイルバネの固定箇所が損壊したことによる変形等が挙げられる。
【0309】
ここまでに説明したように、この加熱方向識別部品1100では、引張コイルバネ1120の両端が第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112のそれぞれに固定されているときは、ピン部材1130の形状が保たれている。そして、第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112いずれか一方が損壊するとその一方の蓋壁から引張コイルバネ1120の一端が外れて、その一端と交差しているピン部材1130が塑性変形する。その塑性変形が、焼損時に熱が第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112いずれに及んだかが判別可能な物理的痕跡としてピン部材1130に残ることとなる。
【0310】
次に、ピン部材1130の上記のような塑性変形を可能とする具体的な張力、および、そのような張力を発揮する引張コイルバネの具体的な寸法について説明する。
【0311】
図27は、ピン部材の寸法を示す図である。
【0312】
この図27には、ピン部材1130が、図示の簡単化のために先端の折れ曲がり部分を省略して示されている。
【0313】
先端の折れ曲がり部分を省略したピン部材1130は、底面が一辺0.2mmの正方形で、長さが7mmの四角柱である。このピン部材1130の、先端とは反対側の根本が図24や図26に示す筒部材1113の内壁に埋め込まれている。そして、この埋め込みの深さは、1mmである。さらに、このピン部材1130は、筒部材1113の内壁に埋め込まれた状態で、その内壁面から4.5mmの高さで、図24や図26に示す舌片1122に設けられた長孔1122a内を通過する。その結果、引張コイルバネ1120の一端が蓋壁から外れたときには、その一端と交差しているピン部材1130の、筒部材1113の内壁面から4.5mmの高さの位置に、引張コイルバネ1120の張力が掛かる。
【0314】
次に、このピン部材1130に掛かる、降伏応力を超えた張力を、上記のピン部材1130の寸法等に基づいて計算した。
【0315】
尚、この計算では、ピン部材1130の材質を、融点が1400℃のステンレス(SUS304)とした。ステンレス(SUS304)の物性値としては、1990000kg/cmのヤング率を用いた。
【0316】
そして、以下の一連の式を用い、張力を0.1N(0.01kgf)から200N(20.4kgf)まで変化させたときの、各張力に応じてピン部材1130に生じる曲げ応力σと変形量δとを算出した。
【0317】
σ=M×z/I……(9)
δ=P×L/(3×E×I)……(10)
M=P×L……(11)
I=b/12……(12)
これらの式(9)〜(12)は、片持ち梁、一点集中荷重の条件下での、一般的な材料力学公式から求めた式である。「M」は、曲げモーメントを表し、「z」は図24に示す四角柱の側面から中心までの距離を表し、「I」は断面二次モーメントを表し、「P」は張力を表す。また、「L」はピン部材1130における内壁面からの高さを表し、「E」はヤング率を表す。また、「b」は、図24に示す四角柱の底面の一辺の長さを表す。
【0318】
計算結果を、以下の表2、及び図28に示す。
【0319】
【表2】

【0320】
この表2には、各張力に対応する変形量と曲げ応力についての計算結果が示されている。
【0321】
図28は、張力と変形量との関係を示すグラフである。
【0322】
この図28に示すグラフG1には、各張力に対応する、表2にも示す変形量が菱形印Pでプロットされている。
【0323】
曲げ応力の値から、0.07N(0.007139kgf)以上の張力で曲げ応力が、ピン部材1130の降伏応力である2100kg/cmを超えることが分かった。ただし、このときの変形量は0.08mmであり、変形の目視確認には小さ過ぎる。そこで、ここでは、張力として、目視に耐える3.5mmの変形量を生じさせる、図28にも示す3N(0.30591kgf)を採用する。この張力では、曲げ応力は、表2に示すように103244.625kgfとなる。
【0324】
次に、3N(0.30591kgf)の張力を生じる引張コイルバネの寸法を計算した。
【0325】
まず、引張コイルバネの直径を2mm、巻線の太さを0.25mm、3N(0.30591kgf)の張力を生じるように伸ばされたときの伸び分を6.5mmとした。また、引張コイルバネの材質をステンレス鋼線とし、物性値として6900N/mm(kgf/mm)の横弾性係数を用いた。この条件の下、以下の一連の式を用いて、引張コイルバネの有効巻き数Naと、縮んだ状態での引張コイルバネの長さSLを計算した。
【0326】
SL=Na×d+2×(D2−2d)……(13)
k=(P−Pi)/Δ=G×d/(8×Na×D)……(14)
Pi=π×d×τi/(8×D)……(15)
τi=G/(100×(D/d))……(16)
これらの式(13)〜(16)は、初張力が有る密着巻の冷間成形引張コイルバネに関する力学公式から求めた式である。「D2」は引張コイルバネの直径を表し、「d」は巻線の太さを表し、「k」はバネ定数を表し、「Pi」は初張力を表し、「Δ」は引張コイルバネの伸び分を表し、「G」は横弾性係数を表す。また、「D」は引張コイルバネの平均径を表し、「τi」は初応力を表す。
【0327】
計算の結果、6.5mmの伸び分で伸ばされた状態で3N(0.30591kgf)の張力を生ずるのに要する有効巻き数Na、および引張コイルバネの長さSLとして以下の図29に示す値を得た。
【0328】
図29は、6.5mmの伸び分で伸ばされた状態で3N(0.30591kgf)の張力を生ずる引張コイルバネの寸法を示す図である。
【0329】
上記の計算の結果、6.5mmの伸び分で伸ばされた状態で3N(0.30591kgf)の張力を生ずるのに要する有効巻き数Naは15回、引張コイルバネの長さSLは6.5mmとなった。また、この図29には、引張コイルバネにおける他の寸法も示されている。
【0330】
第11実施形態の加熱方向識別部品1100では、図24や図26に示す引張コイルバネ1120のバネ本体1121として、図29に示す寸法の引張コイルバネが採用されている。そして、この引張コイルバネ1120が6.5mm伸ばされた状態で部品本体筐体1110内に配置されている。
【0331】
以上のように求めた値に基づいて、図24や図26に示す部品本体筐体1110における外形寸法や各壁の厚み等といった各所寸法を求めた。その結果を、以下の図30に示す。
【0332】
図30は、部品筐体における各所寸法を示す図である。
【0333】
この図30のパート(A)には、図24や図26に示す断面と同じ断面について、部品本体筐体1110における各所寸法が示されている。また、図30のパート(B)には、図30のパート(A)中の切断線A−Aに沿った断面について、部品本体筐体1110における各所寸法が示されている。
【0334】
この図30のパート(A)およびパート(B)に示すように、部品本体筐体1110の外形は、短辺が10mm、長辺が21.25mm、厚みが6mmの直方体である。
【0335】
また、第1の蓋壁1111の厚みおよび第2の蓋壁1112の厚みは、双方とも2mmとなった。また、筒部材1113、第1の蓋壁1111、および第2の蓋壁1112で形成される内部空間は、短辺が8mm、長辺が17.25mm、厚みが4mmの直方体形状の空間である。また、各ピン部材1130と各蓋壁との間隔は、2mmである。
【0336】
さらに、6.5mm伸ばされた引張コイルバネ1120におけるバネ本体1121の巻線部分の長さは10.25mmである。バネ本体1121の両端に溶接固定された舌片1122は、短辺が1mm、長辺が3mmの長方形状を有している。そして、舌片1122には、短辺が0.4mm、長辺が2.2mmの長方形状の長孔1122aが、舌片1122の蓋壁側の縁から0.4mm内側の位置設けられている。
【0337】
6.5mm伸ばされた状態の引張コイルバネ1120における、各舌片1122の蓋壁側の縁から延びて1mmだけ蓋壁に埋め込まれている突起1122b間の長さは19.25mmである。そして、この状態の引張コイルバネ1120の舌片1122の長孔1122aにおける蓋壁側の内縁とピン部材1130との間の距離は0.4mmとなっている。
【0338】
以上に説明した第11実施形態の加熱方向識別部品1100では、焼損時には、第1の蓋壁1111と第2の蓋壁1112とのいずれか一方から引張コイルバネ1120の一端が外れる。そして、その一端と交差しているピン部材1130に、塑性変形が物理的痕跡として残る。このため、この塑性変形の目視確認という簡単な方法により、焼損が、ノートPC5内外いずれからの熱によるのかが識別されることとなる。
【0339】
ここで、第11実施形態の加熱方向識別部品1100では、上述したように、引張コイルバネ1120の両端の舌片1122には、第1の蓋壁1111と第2の蓋壁1112との対向方向に延びた長孔1122aが設けられている。そして、ピン部材1130は、筒部材1113の内壁面から突き出して、舌片1122に設けられた長孔1122a内を通っている。
【0340】
この第11実施形態におけるピン部材1130が長孔1122aを内縁との間に隙間を空けて通過することによる、引張コイルバネ1120の端部(即ち、舌片1122)とピン部材1130の交差が、弾性部材の端部と痕跡部材との交差の一例に相当する。
【0341】
尚、弾性部材の端部と痕跡部材との交差は、上記のように痕跡部材(ピン部材1130)が弾性部材の端部(舌片1122)に触れずに交差することに限るものではない。弾性部材の端部と痕跡部材との交差は、弾性部材の端部と痕跡部材とが互いに接触した状態での交差であっても良い。また、弾性部材の端部と痕跡部材との交差は、弾性部材の端部と痕跡部材とが互いに固定された状態での交差であっても良い。
【0342】
ただし、弾性部材の端部と痕跡部材とが互いに接触した状態や固定した状態での交差については、痕跡部材に、以下のような意図しない変形が生じる恐れがある。
【0343】
図22や図23に示すノートPC5が持ち運ばれる際には、その際の振動によって、ノートPC5に組み込まれている加熱方向識別部品1100の内部では、引張コイルバネ1120が振動することが考えられる。また、このような引張コイルバネ1120の振動は、加熱方向識別部品1100単品が持ち運ばれる際等にも生じると考えられる。仮に、ピン部材1130が引張コイルバネ1120の端に固定されているとすると、上記のような引張コイルバネ1120の振動によってピン部材1130が荷重受けることとなる。そして、その荷重が大きい場合にはピン部材1130が変形してしまう恐れがある。
【0344】
第11実施形態の加熱方向識別部品1100では、ピン部材1130が上記の長孔1122a内を通った構造となっているので、ピン部材1130は、引張コイルバネ1120の端(即ち、舌片1122)から自由となっている。そのため、上記のような引張コイルバネ1120の振動が生じたとしても、ピン部材1130がその振動によって変形してしまう等といった事態が回避される。このことは、本件の加熱方向識別部品に対し、次のような応用形態が好適であることを意味している。
【0345】
この応用形態では、上記弾性部材が、上記一対の対向壁の対向方向に延びた長孔が両端それぞれに貫通したものとなっている。そして、この応用形態では、上記痕跡部材が、上記支持壁から突き出して上記長孔内を通っているものとなっている。
【0346】
第11実施形態における引張コイルバネ1120は、この応用形態における弾性部材の一例にも相当している。また、第11実施形態におけるピン部材1130は、この応用形態における痕跡部材の一例にも相当している。
【0347】
また、第11実施形態の加熱方向識別部品1100では、上述したように、ピン部材1130は、そのピン部材1130自身に変形という物理的痕跡が残るものとなっている。これにより、第11実施形態の加熱方向識別部品1100では、構造の簡単化が図られている。
【0348】
このことは、本件の加熱方向識別部品および機器に対し、上記痕跡部材は、上記痕跡をその痕跡部材の変形によりその痕跡部材自身に残すものであるという応用形態が好適であることを意味している。
【0349】
第11実施形態におけるピン部材1130は、この応用形態における痕跡部材の一例にも相当している。
【0350】
また、第11実施形態の加熱方向識別部品1100では、上述したように、自分自身に痕跡を残すピン部材1130を見通す位置に、確認窓1101が、図24に示す筒部材1113の側壁を貫通して設けられている。これにより、第11実施形態の加熱方向識別部品1100では、焼損時のピン部材1130の変形を簡単に目視確認することができる。
【0351】
このことは、本件の加熱方向識別部品および機器に対し、上記支持壁が、上記痕跡を見通す位置に窓が設けられたものであるという応用形態が好適であることを意味している。
【0352】
本実施形態における筒部材1113は、この応用形態における支持壁の一例にも相当している。また、本実施形態における確認窓1101が、この応用形態における確認窓の一例に相当する。
【0353】
また、第11実施形態の加熱方向識別部品1100には、ノートPC5外からの熱を受ける外面側受熱面1141を有し、その外面側受熱面1141で受けた熱を第1の蓋壁1111へと伝達する第1の熱伝導部材1140が備えられている。
【0354】
また、加熱方向識別部品1100には、ノートPC5内からの熱を受ける内面側受熱面1151を有し、その内面側受熱面1151で受けた熱を第2の蓋壁1112へと伝達する第2の熱伝導部材1150が備えられている。
【0355】
この構造により、加熱方向識別部品1100は、長手方向の両端それぞれに位置する第1の蓋壁1111や第2の蓋壁1112をノートPC5の外側や内側に向けなくても良い。従って、加熱方向識別部品1100は、配置場所の自由度が高い。このことは、本件の加熱方向識別部品に対し、次のような応用形態が好適であることを意味している。
【0356】
この応用形態は、第1の受熱部と、第1の伝熱部と、第2の受熱部と、第2の伝熱部とを備えている。第1の受熱部は、上記支持壁の外面に沿って、上記一対の対向壁のうち第1の対向壁から第2の対向壁へと向かう方向に延びた、表面で熱を受けるものである。第1の伝熱部は、上記第1の受熱部で受けた熱を上記第1の対向壁に伝達するものである。第2の受熱部は、上記支持壁を挟んで上記第1の受熱部とは逆側に位置し、その支持壁の外面に沿って上記第2の対向壁から上記第1の対向壁へと向かう方向に延びた、表面で熱を受けるものである。第2の伝熱部は、上記第2の受熱部で受けた熱を上記第2の対向壁に伝達するものである。
【0357】
第11実施形態における第1の熱伝導部材1140が、この応用形態における第1の受熱部と第1の伝熱部とを兼ねた一例に相当する。また、第11実施形態における第2の熱伝導部材1150が、この応用形態における第2の受熱部と第2の伝熱部とを兼ねた一例に相当する。
【0358】
また、第11実施形態の加熱方向識別部品1100の外面には、図25に示すように2つの確認窓1101それぞれに隣接して「内」、「外」のマークが付されている。
【0359】
これらのマークは、各確認窓1101から見通せるピン部材1130に近い蓋壁が、ノートPC5外から熱が伝わる第1の蓋壁1111と、ノートPC5内から熱が伝わる第2の蓋壁1112とのいずれであるかを示している。加熱方向識別部品1100の外面にこのマークが付されていることにより、ピン部材1130の変形の元となった熱がノートPC5内外のいずれから及んだのかが一目瞭然となっている。このことは、本件の加熱方向識別部品に対し、次のような応用形態が好適であることを意味している。
【0360】
この応用形態では、この加熱方向識別部品が、機器の筐体内における、その筐体外から侵入した熱は上記一対の対向壁のうちの第1の対向壁に伝わり、その筐体内で発生した熱は第2の対向壁に伝わる位置に配置される。そして、この応用形態は、上記痕跡について、上記第1の対向壁側の痕跡であるか上記第2の対向壁側の痕跡であるかを識別するマークを有している。
【0361】
第11実施形態における第1の蓋壁1111が、この応用形態における第1の対向壁の一例に相当している。また、第11実施形態における第2の蓋壁1112が、この応用形態における第2の対向壁の一例に相当している。そして、第11実施形態の加熱方向識別部品1100の外面に付されている、図25に示す「外」のマーク1101aおよび「内」のマーク1101bそれぞれが、この応用形態におけるマークの一例に相当する。
【0362】
また、第11実施形態の加熱方向識別部品1100では、上述したようにノートPC5外からの熱が第1の蓋壁1111に伝わり、ノートPC5内のリチウムイオンバッテリ63で発生した熱が第2の蓋壁1112に伝わる。火災現場の火元付近で、バッテリパックが搭載されている機器が焼損している状況では、バッテリパック内のバッテリに出火原因の疑いが掛かる恐れがある。第11実施形態の加熱方向識別部品1100によれば、焼損が、ノートPC5外からの熱によるのか、バッテリパック60内のリチウムイオンバッテリ63で発生した熱によるのかを確実に識別することができる。このことは、本件の加熱方向識別部品が筐体内に配置された本件の機器に対し、次のような応用形態が好適であることを意味している。
【0363】
この応用形態では、上記筐体が、バッテリを内蔵したものとなっている。また、この応用形態では、上記加熱方向識別部品が、上記バッテリ側からの熱が上記第1の対向壁に伝わり、上記筐体外から侵入した熱は上記第2の対向壁に伝わる位置に配置される。
【0364】
第11実施形態における本体筐体51は、この応用形態における筐体の一例にも相当している。そして、第11実施形態の加熱方向識別部品1100は、この応用形態における加熱方向識別部品の一例にも相当している。
【0365】
次に、第12実施形態について説明する。
【0366】
この第12実施形態は、加熱方向識別部品が、経時劣化により引張コイルバネが蓋壁から外れていないかどうかを電気的に確認するための導電部材を備えている点が、上述の第11実施形態と異なっている。以下では、第12実施形態について、この導電部材に注目して説明する。
【0367】
図31は、第12実施形態の加熱方向識別部品における、経時劣化により引張コイルバネが外れていないかどうかを電気的に確認するための導電部材を示す図である。
【0368】
この図31には、第12実施形態の加熱方向識別部品1200が、図24に示す第11実施形態の加熱方向識別部品1100の断面と同等な断面で示されている。尚、この図31では、図24中の要素と同等な要素については図24中の符号と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な要素についての重複説明を省略する。
【0369】
この図31に示す加熱方向識別部品1200では、メンテナンス等の際に、経時劣化により引張コイルバネが蓋壁から外れていないかどうかが、第1の導電部材1201と第2の導電部材1202との間の導通確認により行われる。
【0370】
第11実施形態についての説明で述べたように、引張コイルバネ1120を構成するバネ本体および舌片1122は、いずれもステンレス等の金属製であり、導電性を有している。
【0371】
第1の導電部材1201は、引張コイルバネ1120における、第1の蓋壁1111に固定されている舌片1122の突起1122bに接する第1の接点1201aを有している。また、第1の導電部材1201は、この第1の接点1201aから加熱方向識別部品1200外まで延びた第1の端子1201bとを有している。第1の接点1201aは、引張コイルバネ1120の舌片1122が第1の蓋壁1111から外れると、この舌片1122の突起1122bから離れる。
【0372】
第2の導電部材1202は、引張コイルバネ1120における、第2の蓋壁1112に固定されている舌片1122の突起1122bに接する第2の接点1202aを有している。また、第2の導電部材1202は、この第2の接点1202aから加熱方向識別部品1200外まで延びた第2の端子1202bとを有している。第2の接点1202aは、引張コイルバネ1120の舌片1122が第2の蓋壁1112から外れると、この舌片1122の突起1122bから離れる。
【0373】
引張コイルバネ1120の両端の舌片1122が第1の蓋壁1111および第2の蓋壁1112に固定された状態では、第1の端子1201bと第2の端子1202bとの間に電気的な導通が確認されることとなる。
【0374】
一方、経時劣化により、いずれか一方あるいは両方の舌片1122が蓋壁から外れていると、第1の接点1201aと第2の接点1202aのいずれか一方あるいは両方が舌片1122の突起1122bから離れる。その結果、このような場合には、第1の端子1201bと第2の端子1202bとの間が電気的に非導通となっていることが確認されることとなる。また、経時劣化により、引張コイルバネ1120において、一対の舌片1122のうちのずれか一方あるいは両方がバネ本体1121から外れることも考えられる。そして、この場合にも、第1の端子1201bと第2の端子1202bとの間が電気的に非導通となっていることが確認される。
【0375】
つまり、この第12実施形態の加熱方向識別部品1200では、第1の端子1201bと第2の端子1202bとの間に電気的な導通が確認できるか否かで、内部で引張コイルバネが正常な状態に置かれているか否かが確認されることとなる。
【0376】
ただし、一対のピン部材1130のうちどのピン部材1130が変形したかまでは、上記の導通確認では判別することができず、この導通確認は、あくまでもメンテナンス時に加熱方向識別部品1200の内部が正常であるか否かを確認するためのものである。そして、焼損後のピン部材1130の変形については、第11実施形態と同様に、確認窓1101(図25参照)からの目視確認によって行われる。
【0377】
ここで、確認窓1101からの目視確認によっても、メンテナンス時に加熱方向識別部品1200の内部が正常であるか否かを確認することは可能である。しかし、確認窓1101から目視確認を行うためには、図23に示すバッテリパック60を本体部50から取り外して加熱方向識別部品1200を目視可能に露出させる必要がある。
【0378】
第12実施形態では、導通確認により加熱方向識別部品1200の内部が正常であるか否かを確認できることを利用して、加熱方向識別部品1200についての、次のような搭載構造を用いたメンテナンス方法が採用されている。この搭載構造は、上記の第1の端子1201bと第2の端子1202bとがノートPC5の内部回路に電気的に接続されているというものである。さらに、ノートPC5には、その内部回路を介して導通確認を実行するプログラムが組み込まれている。そして、電源投入時や、ユーザが所定のキー操作を行ったとき等に、そのプログラムにより自動的に導通確認が実行される。この方法によれば、上記の導通確認が、ノートPC5内でのプログラム動作によって一層簡単に行われることとなる。
【0379】
以上に説明した第12実施形態の加熱方向識別部品1200によれば、上記のような簡単な導通確認により、加熱方向識別部品1200内で経時劣化等により引張コイルバネが外れていないかどうかが確認される。このことは、本件の加熱方向識別部品に対し、次のような応用形態が好適であることを意味している。
【0380】
この応用形態では、上記弾性部材が導電性を有したものとなっている。また、この応用形態は、第1の導電部材と第2の導電部材とを備えている。第1の導電部材は、第1の接点と第1の端子とを有する、導電性を有したものである。第1の接点は、上記弾性部材の、上記両端のうちの一方の端部に接触していてその一方の端部が上記対向壁から外れるとその一方の端部から離れるものである。第1の端子は、その第1の接点から上記内部空間の外へと延びたものである。第2の導電部材は、第2の接点と第2の端子とを有する、導電性を有したものである。第2の接点は、上記弾性部材の、上記両端のうちの他方の端部に接触していてその他方の端部が上記対向壁から外れるとその他方の端部から離れるものである。第2の端子は、その第2の接点から上記内部空間の外へと延びたものである。
【0381】
第12実施形態における第1の導電部材1201が、この応用形態における第1の導電部材の一例に相当する。また、第12実施形態における第2の導電部材1202が、この応用形態における第2の導電部材の一例に相当する。
【0382】
次に、第13実施形態について説明する。
【0383】
この第13実施形態は、焼損時におけるピン部材の変形の仕方が、上述の第11実施形態と異なっている。以下では、第13実施形態について、このピン部材の変形の仕方に注目して説明する。
【0384】
図32は、第13実施形態の加熱方向識別部品において、焼損時にピン部材が変形する様子を示す図である。
【0385】
この図32には、第13実施形態の加熱方向識別部品1300が、図24に示す第11実施形態の加熱方向識別部品1100の断面と同等な断面で示されている。尚、この図32では、図24中の要素と同等な要素については図24中の符号と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な要素についての重複説明を省略する。
【0386】
第13実施形態の加熱方向識別部品1300では、ピン部材1301が、四角筒状の筒部材1302の互いに対向する内壁面の一方から他方まで、舌片1122に設けられた長孔1122aを通って延びている。そして、ピン部材1301の両端それぞれが、筒部材1302の内壁面に設けられた窪み1302aに嵌め込まれている。
【0387】
引張コイルバネ1120の一端の舌片1122が蓋壁から外れると、引張コイルバネ1120の張力による塑性変形よって、その外れた一端と交差しているピン部材1301が中央から折れ曲がる。さらに、その折れ曲がったピン部材1301は、両端が窪み1302aから抜けて移動する。一方、引張コイルバネ1120の他端と交差しているピン部材1301については、その形状および位置が維持される。
【0388】
この第13実施形態の加熱方向識別部品1300では、焼損時には、第1の蓋壁1111と第2の蓋壁1112とのいずれか一方から引張コイルバネ1120の一端が外れることで、その一端と交差しているピン部材1130が塑性変形すると共に移動する。即ち、第13実施形態の加熱方向識別部品1300では、焼損時には、ピン部材1130自身の変形および移動という物理的痕跡として残る。そして、その変形および移動が、第11実施形態と同様に、図25に示す確認窓1101から目視確認される。
【0389】
以上に説明した第13実施形態の加熱方向識別部品1300でも、このような目視確認という簡単な方法により、焼損が、ノートPC5内外いずれからの熱によるのかが識別されることとなる。
【0390】
次に、第14実施形態について説明する。
【0391】
この第14実施形態は、物理的痕跡の残し方が、上述の第11実施形態と異なっている。以下では、第14実施形態について、この物理的痕跡の残し方に注目して説明する。
【0392】
図33は、加熱方向識別部品の第14実施形態を示す模式的な断面図である。
【0393】
この図33には、第14実施形態の加熱方向識別部品1400が、図24に示す第11実施形態の加熱方向識別部品1100の断面と同等な断面で示されている。尚、この図33では、図24中の要素と同等な要素については図24中の符号と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な要素についての重複説明を省略する。
【0394】
この図33のパート(A)には、加熱方向識別部品1400の、物理的痕跡が残った後の状態が示されている。また、図33のパート(B)には、パート(A)中に円形で示された領域A1内の拡大図が示されている。また、図33のパート(C)には、パート(A)中に円形で示された領域A2内の拡大図が示されている。また、図33のパート(D)には、加熱方向識別部品1400に設けられている確認窓1403が示されている。
【0395】
第14実施形態の加熱方向識別部品1400では、引張コイルバネ1120の張力で変形しない程度の強度を持ったピン部材1401が、部品本体筐体1110内に収納されている。そして、このピン部材1401の一端が、筒部材1113の内壁面に設けられた支持部1402で次のように支持されている。
【0396】
支持部1402は、筒部材1113の内壁面にセラミックで、この筒部材1113と一体的に形成されたものであり、図33のパート(B)に示すように、ピン部材1401を挟む2つの突起1402aを備えている。ピン部材1401の一端は、各支持部1402におけるこれら2つの突起1402aの間に嵌め込まれている。
【0397】
ここで、各支持部1402における2つの突起1402aは、ピン部材1401が一方の引張コイルバネの張力で引かれて移動すると破損する程度の強度となっている。
【0398】
いずれか一方の樹脂製の蓋壁が熱で損壊して引張コイルバネの一方が蓋壁から外れると、ピン部材1401がもう一方の引張コイルバネの張力で引かれる。すると、図33のパート(C)に示すように、2つの突起1402aのうち、加熱方向識別部品1400の中央側の突起1402aが破損する。このように、加熱方向識別部品1400では、熱で損壊した蓋壁に近いピン部材1401を支持している支持部1402が、そのピン部材1401の移動によって破損するようになっている。つまり、加熱方向識別部品1400では、焼損時に、ピン部材1401が移動して、筒部材1113における支持部1402に移動痕が残る。
【0399】
図33のパート(D)に示すように、加熱方向識別部品1400には、上記の2箇所の支持部1402それぞれを見通す位置に確認窓1403が設けられている。
【0400】
さらに、第1の蓋壁1111側の確認窓1403に隣接して「外」のマーク1403aが付され、第2の蓋壁1112側の確認窓1403に隣接して「内」のマーク1403bが付されている。
【0401】
焼損後の確認では、2つの確認窓1403それぞれから見通せる支持部1402のうちのどちらに上記の移動痕が残っているかが確認される。この目視確認により、熱で損壊した蓋壁がどの蓋壁であるか、つまりは、焼損が、ノートPC5内外いずれからの熱によるのかが識別されることとなる。図33の例では、「外」のマーク1403aに隣接した確認窓1403から移動痕が目視確認され、焼損が、ノートPC5外からの熱によるものであると識別される。
【0402】
このように第14実施形態の加熱方向識別部品1400では、内部に収納されているピン部材1401の移動によって、そのピン部材1401の支持部1402に移動痕が残るものとなっている。そして、その移動痕の目視確認という簡単な方法で、焼損が、ノートPC5内外いずれからの熱によるのかが識別されることとなる。
【0403】
このことは、本件の加熱方向識別部品1100に対し、上記痕跡部材は、上記痕跡をその痕跡部材の移動によりその痕跡部材以外の他者に残すものであるという応用形態が好適であることを意味している。
【0404】
第14実施形態におけるピン部材1401が、この応用形態における痕跡部材の一例に相当する。また、第14実施形態においてピン部材1401の移動痕が残る支持部1402が、この応用形態における「痕跡部材以外の他者」の一例に相当する。
【0405】
尚、この第14実施形態では、確認窓1403は支持部1402を見通す位置に設けられている。しかしながら、確認窓は、この支持部1402を見通す確認窓1403に限られるものではなく、例えばピン部材1401を見通す位置に設けられた確認窓であっても良い。この場合には、2つの確認窓1101それぞれから見通せるピン部材1130のうちのどちらの位置が移動後の位置になっているかが目視確認されることとなる。
【0406】
また、第11から第14までの各実施形態において、加熱方向識別部品の形態として、バネ本体を1つ備えた形態を例示したが、加熱方向識別部品は、このような形態のものに限られるものではない。加熱方向識別部品は、例えば、互いに直列又は並列に接続された複数のバネをバネ本体として備えた形態であっても良い。
【0407】
また、第11から第14までの各実施形態において、弾性部材として引張コイルバネを例示したが、弾性部材は圧縮コイルバネ等であっても良い。この場合、焼損時のピン部材の変形や移動の方向は、第11から第14までの各実施形態で示した変形や移動の方向と逆向きとなる。
【0408】
また、第11から第14までの各実施形態において、弾性部材として引張コイルバネを例示したが、弾性部材はバネ以外の例えばゴム等であっても良い。
【0409】
尚、以上に説明した第1〜第14実施形態では、加熱方向識別部品が搭載された本件の機器の実施形態として、ノートPCおよびバッテリパックを例示したが、本件の機器はこれらに限るものではない。本件の機器は、火災現場で見つかった場合に出火原因の疑いが掛けられる恐れのある機器一般であっても良い。このような機器としては、コンピュータの他にも、一般的な家電製品や、携帯型のガスコンロ等が挙げられる。
【0410】
以下、上述した基本形態を含む種々の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0411】
(付記1)
第1の耐熱性を有し、互いに対向した一対の対向壁と、
前記第1の耐熱性よりも高い第2の耐熱性を有し、前記一対の対向壁を支持して該一対の対向壁とともに内部空間を形成した支持壁と、
前記第1の耐熱性よりも高い第3の耐熱性を有し、前記内部空間中央かつ前記対向壁間に配置された痕跡部材と、
前記内部空間内において、2つの対向壁と前記痕跡部材に接続された弾性部材とを備えたことを特徴とする加熱方向識別部品。
【0412】
(付記2)
前記弾性部材が、前記一対の対向壁それぞれと前記痕跡部材との間に、各対向壁の損壊で失われる各力であって、その力の双方が保たれているときは前記痕跡部材の収納位置および形状も保たれ、その力の一方が失われたときは他方の力によって該痕跡部材の収納位置および形状のうち少なくとも一方が変化する力を加えるものであり、
前記痕跡部材は、該痕跡部材の収納位置および形状のうち少なくとも一方が変化したときは、該変化の方向が判別可能な物理的痕跡が該痕跡部材自身に残るものであることを特徴とする付記1記載の加熱方向識別部品。
【0413】
(付記3)
前記痕跡部材が、前記一対の対向壁相互間を仕切る方向に広がる板であり、該板の表裏面の少なくとも一方の面に、該面が該一対の対向壁のうちのいずれの対向壁に向いているかを示すマークが付されたものであることを特徴とする付記2記載の加熱方向識別部品。
【0414】
(付記4)
前記痕跡部材が、前記弾性部材によって前記一対の対向壁それぞれと該痕跡部材との間に働いている各力のうち一方の力が失われたときは他方の力によって、前記一対の対向壁の一方へと変形することで、該痕跡部材自身に、その変形後の形状が前記物理的痕跡として残るものであることを特徴とする付記2又は3記載の加熱方向識別部品。
【0415】
(付記5)
前記弾性部材が、前記一対の対向壁それぞれと前記痕跡部材との間に、各対向壁の損壊で失われる各力であって、その力の双方が保たれているときは前記痕跡部材の収納位置および形状も保たれ、その力の一方が失われたときは他方の力によって該痕跡部材の収納位置および形状のうち少なくとも一方が変化する力を加えるものであり、
前記痕跡部材は、該痕跡部材の収納位置および形状のうち少なくとも一方が変化したときは、該変化の方向が判別可能な物理的痕跡を前記支持壁に残すものであることを特徴とする付記1記載の加熱方向識別部品。
【0416】
(付記6)
前記支持壁が、前記一対の対向壁のうちのいずれの対向壁を、該支持壁のどちら側で支持しているかを示すマークが付されたものであることを特徴とする付記5記載の加熱方向識別部品。
【0417】
(付記7)
前記痕跡部材が、前記弾性部材によって前記一対の対向壁それぞれと該痕跡部材との間に働いている各力のうち一方の力が失われたときは他方の力によって、前記一対の対向壁の一方へと移動するものであり、
前記支持壁は、前記痕跡部材が移動したときには該痕跡部材によって前記物理的痕跡としての傷が付けられるものであることを特徴とする付記5又は6記載の加熱方向識別部品。
【0418】
(付記8)
一端が前記痕跡部材に固定され、他端が前記一対の対向壁のうちの一方の対向壁に固定されて、該一方の対向壁と該痕跡部材との間に第1の力を加える第1の弾性部材と、
一端が前記痕跡部材に固定され、他端が前記一対の対向壁のうちの前記一方に対する他方の対向壁に固定されて、該他方の対向壁と該痕跡部材との間に、前記第1の力と打ち消し合う方向の第2の力を加える第2の弾性部材とを備えたことを特徴とする付記1から7のうちいずれか1項記載の加熱方向識別部品。
【0419】
(付記9)
前記第1の弾性部材が、前記第1の力で前記痕跡部材を前記一方の対向壁側へと引き付けるものであり、
前記第2の弾性部材が、前記第2の力で前記痕跡部材を前記他方の対向壁側へと引き付けるものであることを特徴とする付記8記載の加熱方向識別部品。
【0420】
(付記10)
前記痕跡部材、前記第1の弾性部材、および前記第2の弾性部材それぞれが導電性を有したものであり、
前記第1の力と前記第2の力の双方が保たれているときは前記第1の弾性部材に接触していて該第1の力が失われると該第1の弾性部材から離れる第1の接点と、該第1の接点から前記内部空間の外へと延びた第1の端子とを有する、導電性を有した第1の導電部材と、
前記第1の力と前記第2の力の双方が保たれているときは前記第2の弾性部材に接触していて該第2の力が失われると該第2の弾性部材から離れる第2の接点と、該第2の接点から前記内部空間の外へと延びた第2の端子とを有する、導電性を有した第2の導電部材とを備えたことを特徴とする付記8又は9記載の加熱方向識別部品。
【0421】
(付記11)
前記痕跡部材が、前記内部空間を、前記一対の対向壁それぞれと該痕跡部材とで挟まれた2つの空間に仕切る板であり、
前記内部空間内において、前記弾性部材を備えることに替えて、前記2つの空間それぞれの内部気圧が、大気圧とは異なった気圧に保たれていることを特徴とする付記1から4のうちいずれか1項記載の加熱方向識別部品。
【0422】
(付記12)
前記支持壁が、前記痕跡部材を見通す位置に窓が設けられたものであることを特徴とする付記1から11のうちいずれか1項記載の加熱方向識別部品。
【0423】
(付記13)
前記支持壁の外面に沿って、前記一対の対向壁のうち第1の対向壁から第2の対向壁へと向かう方向に延びた、表面で熱を受ける第1の受熱部と、
前記第1の受熱部で受けた熱を前記第1の対向壁に伝達する第1の伝熱部と、
前記支持壁を挟んで前記第1の受熱部とは逆側に位置し、該支持壁の外面に沿って前記第2の対向壁から前記第1の対向壁へと向かう方向に延びた、表面で熱を受ける第2の受熱部と、
前記第2の受熱部で受けた熱を前記第2の対向壁に伝達する第2の伝熱部とを備えたことを特徴とする付記1から12のうちいずれか1項記載の加熱方向識別部品。
【0424】
(付記14)
第1の耐熱性を有し、互いに対向した一対の対向壁と、
前記第1の耐熱性よりも高い第2の耐熱性を有し、前記一対の対向壁を支持して該一対の対向壁とともに内部空間を形成した支持壁と、
前記第1の耐熱性よりも高い第3の耐熱性を有し、前記内部空間中央かつ前記対向壁間に配置された痕跡部材と、
前記内部空間内において、2つの対向壁と前記痕跡部材に接続された弾性部材とを備えた加熱方向識別部品;および、
筐体とを備え、
前記加熱方向識別部品が、前記筐体内における、該筐体内で発生した熱は前記一対の対向壁のうちの一方の対向壁に伝わり、該筐体外から侵入した熱は他方の対向壁に伝わる位置に配置されたものであることを特徴とする機器。
【0425】
(付記15)
前記筐体が、バッテリを内蔵したものであり、
前記加熱方向識別部品が、前記バッテリ側からの熱が前記一対の対向壁のうちの一方の対向壁に伝わり、前記筐体外から侵入した熱は他方の対向壁に伝わる位置に配置されたものであることを特徴とする付記14記載の機器。
【0426】
(付記16)
第1の耐熱性を有し、互いに対向した一対の対向壁と、
前記第1の耐熱性よりも高い第2の耐熱性を有し、前記一対の対向壁を支持して該一対の対向壁とともに内部空間を形成した支持壁と、
前記一対の対向壁の間に延引あるいは圧縮された状態で配置されて両端それぞれが該一対の対向壁のそれぞれに接続された弾性部材と、
前記第1の耐熱性よりも高い第3の耐熱性を有し、前記内部空間に一対が設けられ、該一対の各々が前記弾性部材の両端それぞれに交差し、該弾性部材の端部の移動の痕跡を残す痕跡部材と、
を備えたことを特徴とする加熱方向識別部品。
【0427】
(付記17)
前記弾性部材が、前記一対の対向壁の対向方向に延びた長孔が両端それぞれに貫通したものであり、
前記痕跡部材が、前記支持壁から突き出して前記長孔内を通っているものであることを特徴とする付記16記載の加熱方向識別部品。
【0428】
(付記18)
前記痕跡部材は、前記痕跡を該痕跡部材の変形により該痕跡部材自身に残すものであることを特徴とする付記16又は17記載の加熱方向識別部品。
【0429】
(付記19)
前記痕跡部材は、前記痕跡を該痕跡部材の移動により該痕跡部材以外の他者に残すものであることを特徴とする付記16又は17記載の加熱方向識別部品。
【0430】
(付記20)
前記支持壁が、前記痕跡を見通す位置に窓が設けられたものであることを特徴とする付記16から19のうちいずれか1項記載の加熱方向識別部品。
【0431】
(付記21)
前記弾性部材が導電性を有したものであり、
前記弾性部材の、前記両端のうちの一方の端部に接触していて該一方の端部が前記対向壁から外れると該一方の端部から離れる第1の接点と、該第1の接点から前記内部空間の外へと延びた第1の端子とを有する、導電性を有した第1の導電部材と、
前記弾性部材の、前記両端のうちの他方の端部に接触していて該他方の端部が前記対向壁から外れると該他方の端部から離れる第2の接点と、該第2の接点から前記内部空間の外へと延びた第2の端子とを有する、導電性を有した第2の導電部材と、
を備えたことを特徴とする付記16から20のうちいずれか1項記載の加熱方向識別部品。
【0432】
(付記22)
前記支持壁の外面に沿って、前記一対の対向壁のうち第1の対向壁から第2の対向壁へと向かう方向に延びた、表面で熱を受ける第1の受熱部と、
前記第1の受熱部で受けた熱を前記第1の対向壁に伝達する第1の伝熱部と、
前記支持壁を挟んで前記第1の受熱部とは逆側に位置し、該支持壁の外面に沿って前記第2の対向壁から前記第1の対向壁へと向かう方向に延びた、表面で熱を受ける第2の受熱部と、
前記第2の受熱部で受けた熱を前記第2の対向壁に伝達する第2の伝熱部とを備えたことを特徴とする付記16から21のうちいずれか1項記載の加熱方向識別部品。
【0433】
(付記23)
当該加熱方向識別部品が、機器の筐体内における、該筐体外から侵入した熱は前記一対の対向壁のうちの第1の対向壁に伝わり、該筐体内で発生した熱は第2の対向壁に伝わる位置に配置されるものであって、
前記痕跡について、前記第1の対向壁側の痕跡であるか前記第2の対向壁側の痕跡であるかを識別するマークを有することを特徴とする付記16から22のうちいずれか1項記載の加熱方向識別部品。
【0434】
(付記24)
第1の耐熱性を有し、互いに対向した一対の対向壁と、
前記第1の耐熱性よりも高い第2の耐熱性を有し、前記一対の対向壁を支持して該一対の対向壁とともに内部空間を形成した支持壁と、
前記一対の対向壁の間に延引あるいは圧縮された状態で配置されて両端それぞれが該一対の対向壁のそれぞれに接続された弾性部材と、
前記第1の耐熱性よりも高い第3の耐熱性を有し、前記内部空間に一対が設けられ、該一対の各々が前記弾性部材の両端それぞれに交差し、該弾性部材の端部の移動の痕跡を残す痕跡部材と、
を備えたことを特徴とする加熱方向識別部品;および、
筐体を備え、
前記加熱方向識別部品が、前記筐体内における、該筐体内で発生した熱は前記一対の対向壁のうちの第1の対向壁に伝わり、該筐体外から侵入した熱は第2の対向壁に伝わる位置に配置されたものであることを特徴とする機器。
【0435】
(付記25)
前記筐体が、バッテリを内蔵したものであり、
前記加熱方向識別部品が、前記バッテリ側からの熱が前記第1の対向壁に伝わり、前記筐体外から侵入した熱は前記第2の対向壁に伝わる位置に配置されたものであることを特徴とする付記24記載の機器。
【0436】
(付記26)
前記弾性部材が、前記一対の対向壁の対向方向に延びた長孔が両端それぞれに貫通したものであり、
前記痕跡部材が、前記支持壁から突き出して前記長孔内を通っているものであることを特徴とする付記24又は25記載の機器。
【0437】
(付記27)
前記痕跡部材は、前記痕跡を該痕跡部材の変形により該痕跡部材自身に残すものであることを特徴とする付記24から26のうちいずれか1項記載の機器。
【0438】
(付記28)
前記痕跡部材は、前記痕跡を該痕跡部材の移動により該痕跡部材以外の他者に残すものであることを特徴とする付記24から26のうちいずれか1項記載の機器。
【0439】
(付記29)
前記支持壁が、前記痕跡を見通す位置に窓が設けられたものであることを特徴とする付記24から28のうちいずれか1項記載の機器。
【0440】
(付記30)
前記弾性部材が導電性を有したものであり、
前記弾性部材の、前記両端のうちの一方の端部に接触していて該一方の端部が前記対向壁から外れると該一方の端部から離れる第1の接点と、該第1の接点から前記内部空間の外へと延びた第1の端子とを有する、導電性を有した第1の導電部材と、
前記弾性部材の、前記両端のうちの他方の端部に接触していて該他方の端部が前記対向壁から外れると該他方の端部から離れる第2の接点と、該第2の接点から前記内部空間の外へと延びた第2の端子とを有する、導電性を有した第2の導電部材と、
を備えたことを特徴とする付記24から29のうちいずれか1項記載の機器。
【0441】
(付記31)
前記支持壁の外面に沿って、前記一対の対向壁のうち第1の対向壁から第2の対向壁へと向かう方向に延びた、表面で熱を受ける第1の受熱部と、
前記第1の受熱部で受けた熱を前記第1の対向壁に伝達する第1の伝熱部と、
前記支持壁を挟んで前記第1の受熱部とは逆側に位置し、該支持壁の外面に沿って前記第2の対向壁から前記第1の対向壁へと向かう方向に延びた、表面で熱を受ける第2の受熱部と、
前記第2の受熱部で受けた熱を前記第2の対向壁に伝達する第2の伝熱部とを備えたことを特徴とする付記24から30のうちいずれか1項記載の機器。
【0442】
(付記32)
前記加熱方向識別部品が、前記痕跡について、前記第1の対向壁側の痕跡であるか前記第2の対向壁側の痕跡であるかを識別するマークを有することを特徴とする付記24から31のうちいずれか1項記載の機器。
【符号の説明】
【0443】
1,5 ノートPC
10,50 本体部
11,51 本体筐体
12 キーボード
13 トラックパッド
14 クリックボタン
15 指紋センサ
20 表示部
21 表示筐体
22 液晶パネル
30,60 バッテリパック
31 下部筐体
31a 固定爪
32 カバー
33,63 リチウムイオンバッテリ
34,64 制御基板
51a 内壁
61 バッテリ収納部
62 バッテリカバー
100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000,1100,1200,1300,1400 加熱方向識別部品
101,201,1002,1101,1402 確認孔
110,1110 部品筐体
111,1111 第1の蓋壁
112,1112 第2の蓋壁
113,1113,1302 筒部材
113a カバー面内方向の壁
113b カバー厚方向の壁
113b_1 溝
120,601,701,1001 金属薄板
120a 端部
120b 中央の箇所
130 第1引張コイルバネ
140 第2引張コイルバネ
150,1140 第1の伝熱部
151,1141 外面側受熱面
160,1150 第2の伝熱部
161,1151 内面側受熱面
170,1160 セラミック部
201a 蓋
301,1201 第1の導電部材
301a,1201a 第1の接点
301b,1201b 第1の端子
302,1202 第2の導電部材
302a,1202a 第2の接点
302b,1202b 第2の端子
401 第1の小引張コイルバネ
402 第2の小引張コイルバネ
501 第1圧縮コイルバネ
502 第2圧縮コイルバネ
602 固定部
702,803 「外」の文字
703,804 「内」の文字
801 金属板
802 支持部
802a 突起
901 第1ゴム
902 第2ゴム
1101,1403 確認窓
1101a,1101b,1403a,1403b マーク
1120 引張コイルバネ
1121 バネ本体
1122 舌片
1122a 長孔
1122b 突起
1130,1301,1401 ピン部材
1302a 窪み
1402 支持部
1402a 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の耐熱性を有し、互いに対向した一対の対向壁と、
前記第1の耐熱性よりも高い第2の耐熱性を有し、前記一対の対向壁を支持して該一対の対向壁とともに内部空間を形成した支持壁と、
前記第1の耐熱性よりも高い第3の耐熱性を有し、前記内部空間中央かつ前記対向壁間に配置された痕跡部材と、
前記内部空間内において、2つの対向壁と前記痕跡部材に接続された弾性部材とを備えたことを特徴とする加熱方向識別部品。
【請求項2】
前記弾性部材が、前記一対の対向壁それぞれと前記痕跡部材との間に、各対向壁の損壊で失われる各力であって、その力の双方が保たれているときは前記痕跡部材の収納位置および形状も保たれ、その力の一方が失われたときは他方の力によって該痕跡部材の収納位置および形状のうち少なくとも一方が変化する力を加えるものであり、
前記痕跡部材は、該痕跡部材の収納位置および形状のうち少なくとも一方が変化したときは、該変化の方向が判別可能な物理的痕跡が該痕跡部材自身に残るものであることを特徴とする請求項1記載の加熱方向識別部品。
【請求項3】
前記痕跡部材が、前記一対の対向壁相互間を仕切る方向に広がる板であり、該板の表裏面の少なくとも一方の面に、該面が該一対の対向壁のうちのいずれの対向壁に向いているかを示すマークが付されたものであることを特徴とする請求項2記載の加熱方向識別部品。
【請求項4】
前記痕跡部材が、前記弾性部材によって前記一対の対向壁それぞれと該痕跡部材との間に働いている各力のうち一方の力が失われたときは他方の力によって、前記一対の対向壁の一方へと変形することで、該痕跡部材自身に、その変形後の形状が前記物理的痕跡として残るものであることを特徴とする請求項2又は3記載の加熱方向識別部品。
【請求項5】
第1の耐熱性を有し、互いに対向した一対の対向壁と、
前記第1の耐熱性よりも高い第2の耐熱性を有し、前記一対の対向壁を支持して該一対の対向壁とともに内部空間を形成した支持壁と、
前記第1の耐熱性よりも高い第3の耐熱性を有し、前記内部空間中央かつ前記対向壁間に配置された痕跡部材と、
前記内部空間内において、2つの対向壁と前記痕跡部材に接続された弾性部材とを備えた加熱方向識別部品;および、
筐体とを備え、
前記加熱方向識別部品が、前記筐体内における、該筐体内で発生した熱は前記一対の対向壁のうちの一方の対向壁に伝わり、該筐体外から侵入した熱は他方の対向壁に伝わる位置に配置されたものであることを特徴とする機器。
【請求項6】
第1の耐熱性を有し、互いに対向した一対の対向壁と、
前記第1の耐熱性よりも高い第2の耐熱性を有し、前記一対の対向壁を支持して該一対の対向壁とともに内部空間を形成した支持壁と、
前記一対の対向壁の間に延引あるいは圧縮された状態で配置されて両端それぞれが該一対の対向壁のそれぞれに接続された弾性部材と、
前記第1の耐熱性よりも高い第3の耐熱性を有し、前記内部空間に一対が設けられ、該一対の各々が前記弾性部材の両端それぞれに交差し、該弾性部材の端部の移動の痕跡を残す痕跡部材と、
を備えたことを特徴とする加熱方向識別部品。
【請求項7】
前記弾性部材が、前記一対の対向壁の対向方向に延びた長孔が両端それぞれに貫通したものであり、
前記痕跡部材が、前記支持壁から突き出して前記長孔内を通っているものであることを特徴とする請求項6記載の加熱方向識別部品。
【請求項8】
前記痕跡部材は、前記痕跡を該痕跡部材の変形により該痕跡部材自身に残すものであることを特徴とする請求項6又は7記載の加熱方向識別部品。
【請求項9】
前記痕跡部材は、前記痕跡を該痕跡部材の移動により該痕跡部材以外の他者に残すものであることを特徴とする請求項6又は7記載の加熱方向識別部品。
【請求項10】
前記支持壁が、前記痕跡を見通す位置に窓が設けられたものであることを特徴とする請求項6から9のうちいずれか1項記載の加熱方向識別部品。
【請求項11】
前記弾性部材が導電性を有したものであり、
前記弾性部材の、前記両端のうちの一方の端部に接触していて該一方の端部が前記対向壁から外れると該一方の端部から離れる第1の接点と、該第1の接点から前記内部空間の外へと延びた第1の端子とを有する、導電性を有した第1の導電部材と、
前記弾性部材の、前記両端のうちの他方の端部に接触していて該他方の端部が前記対向壁から外れると該他方の端部から離れる第2の接点と、該第2の接点から前記内部空間の外へと延びた第2の端子とを有する、導電性を有した第2の導電部材と、
を備えたことを特徴とする請求項6から10のうちいずれか1項記載の加熱方向識別部品。
【請求項12】
前記支持壁の外面に沿って、前記一対の対向壁のうち第1の対向壁から第2の対向壁へと向かう方向に延びた、表面で熱を受ける第1の受熱部と、
前記第1の受熱部で受けた熱を前記第1の対向壁に伝達する第1の伝熱部と、
前記支持壁を挟んで前記第1の受熱部とは逆側に位置し、該支持壁の外面に沿って前記第2の対向壁から前記第1の対向壁へと向かう方向に延びた、表面で熱を受ける第2の受熱部と、
前記第2の受熱部で受けた熱を前記第2の対向壁に伝達する第2の伝熱部とを備えたことを特徴とする請求項6から11のうちいずれか1項記載の加熱方向識別部品。
【請求項13】
当該加熱方向識別部品が、機器の筐体内における、該筐体外から侵入した熱は前記一対の対向壁のうちの第1の対向壁に伝わり、該筐体内で発生した熱は第2の対向壁に伝わる位置に配置されるものであって、
前記痕跡について、前記第1の対向壁側の痕跡であるか前記第2の対向壁側の痕跡であるかを識別するマークを有することを特徴とする請求項6から12のうちいずれか1項記載の加熱方向識別部品。
【請求項14】
第1の耐熱性を有し、互いに対向した一対の対向壁と、
前記第1の耐熱性よりも高い第2の耐熱性を有し、前記一対の対向壁を支持して該一対の対向壁とともに内部空間を形成した支持壁と、
前記一対の対向壁の間に延引あるいは圧縮された状態で配置されて両端それぞれが該一対の対向壁のそれぞれに接続された弾性部材と、
前記第1の耐熱性よりも高い第3の耐熱性を有し、前記内部空間に一対が設けられ、該一対の各々が前記弾性部材の両端それぞれに交差し、該弾性部材の端部の移動の痕跡を残す痕跡部材と、
を備えたことを特徴とする加熱方向識別部品;および、
筐体を備え、
前記加熱方向識別部品が、前記筐体内における、該筐体内で発生した熱は前記一対の対向壁のうちの第1の対向壁に伝わり、該筐体外から侵入した熱は第2の対向壁に伝わる位置に配置されたものであることを特徴とする機器。
【請求項15】
前記筐体が、バッテリを内蔵したものであり、
前記加熱方向識別部品が、前記バッテリ側からの熱が前記第1の対向壁に伝わり、前記筐体外から侵入した熱は前記第2の対向壁に伝わる位置に配置されたものであることを特徴とする請求項14記載の機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−108089(P2012−108089A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64210(P2011−64210)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】