説明

加熱殺菌装置

【課題】装置全体をコンパクトにしつつ、熱交換の効率を向上できる加熱殺菌装置を提供すること。
【解決手段】本発明の加熱殺菌装置100は、ヒータ113が設けられた熱処理槽111と、加熱処理前の加熱前クーラントを流入する流入口141aと、加熱処理後の加熱後クーラントを流出する流出口154aと、流入口141aから熱処理槽111に連結する処理前流路140と、熱処理槽111から流出口154aに連結する処理後流路150とを備え、処理前流路140は、熱処理槽111の上部において、略円筒形状の内周壁132aと、内周壁132aと同芯であり内周壁132aより径が大きい外周壁131aとの間に形成された円筒状流路142を有し、処理後流路150は、円筒状流路142の内部において、内周壁132aの周方向に沿って延びて、螺旋形状に形成された螺旋流路153を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱殺菌装置に関し、詳しくは流体を加熱処理することで殺菌する加熱殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、切削及び研削等の金属加工をする加工装置において、潤滑や冷却を目的とした水溶性油剤の流体であるクーラントが用いられている。このクーラントは、クーラント供給装置により加工装置に供給され、この加工装置において潤滑や冷却に用いられた後、再び加工装置からクーラント供給装置に戻される。
このクーラント供給装置は、加工装置から戻されたクーラントを貯留する一次クーラントタンクと、一次クーラントタンクに貯留されたクーラントを濾過する濾過装置と、濾過装置を経たクーラントを貯留する二次クーラントタンクを備え、この二次クーラントタンクに貯留されたクーラントを加工装置に供給する。
【0003】
ところで、このクーラントは、循環して使用していると、加工装置における熱や、外気温の上昇に伴う熱により、細菌が発生し、異臭を発生する場合がある。このような異臭は、作業環境を悪化させることがある。
【0004】
そこで、特許文献1には、入側管路から供給される被処理液を加熱殺菌して出側管路から送出するボイラと、入側管路の間に介設されたタンク内を出側管路が貫通する液型熱交換器とを備える液体の加熱殺菌装置が提案されている。
【0005】
この加熱殺菌装置によれば、被処理液を加熱殺菌することで、異臭の発生原因である細菌を減少できるので作業環境を改善できる。また、出側管路から送出された高温の液体における熱エネルギーは、液型熱交換器のタンク内において、入側管路を流通する低温の被処理液に奪われる。これにより、ボイラに流入する前に、被処理液の温度を上昇させることができるので、ボイラを駆動するための駆動エネルギーを小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−305124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の加熱殺菌装置は、ボイラとは別にタンクを有する液型熱交換器を設けるため設置面積が増大する。また、特許文献1の加熱殺菌装置では、タンクを出側管路が貫通するだけなので、入側管路と出側管路との接触面積が限られるため、ボイラにより加熱された液体から被処理液に奪われる熱エネルギーも限られていた。
【0008】
本発明は、装置全体をコンパクトにしつつ、熱交換の効率を向上できる加熱殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の加熱殺菌装置は、
流体を加熱処理することで殺菌する加熱殺菌装置(例えば、後述の加熱殺菌装置100)であって、熱源(例えば、後述のヒータ113)が設けられた熱処理槽(例えば、後述の熱処理槽111)と、加熱処理前の流体を流入する流入口(例えば、後述の流入口141a)と、加熱処理後の流体を流出する流出口(例えば、後述の流出口154a)と、前記流入口から前記熱処理槽に連結する処理前流路(例えば、後述の処理前流路140)と、前記熱処理槽から前記流出口に連結する処理後流路(例えば、後述の処理後流路150)とを備え、前記処理前流路は、前記熱処理槽の上部において、略円筒形状の内周壁(例えば、後述の内周壁132a)と、前記内周壁と同芯であり前記内周壁より径が大きい外周壁(例えば、後述の外周壁131a)との間に形成された円筒状流路(例えば、後述の円筒状流路142)を有し、前記処理後流路は、前記円筒状流路の内部において、前記内周壁の周方向に沿って延びて、螺旋形状に形成された螺旋流路(例えば、後述の螺旋流路153)を有する。
【0010】
この発明によれば、加熱処理前の流体を流入する流入口から熱源が設けられた熱処理槽に連結する処理前流路と、熱処理槽から加熱処理後の流体を流出する流出口に連結する処理後流路とを備えた。
そして、処理前流路は、熱処理槽の上部において、略円筒形状の内周壁と、この内周壁と同芯であり内周壁より径が大きい外周壁とから形成された円筒状流路を有し、処理後流路は、円筒状流路の内部において、内周壁の周方向に沿って延びる螺旋形状に形成された螺旋流路を有した。
これにより、熱処理槽の上部において、処理前流路の円筒状流路の内部に処理後流路の螺旋流路を有することで、熱処理槽の上部で加熱処理後の流体と加熱処理前の流体とで熱交換できる。よって、熱処理槽と別に熱交換器を設ける必要がない。
【0011】
また、処理後流路の螺旋流路は、処理前流路の円筒状流路の内部において、その内周壁の周方向に沿って延びる螺旋形状に形成したので、処理後流路が単に処理前流路を貫通する場合に比べて、処理後流路と処理前流路との接触面積を広くできる。よって、熱処理槽により加熱された加熱処理後の流体から加熱処理前の流体に奪われる熱エネルギーを増大できる。
したがって、装置全体をコンパクトにしつつ、熱交換の効率を向上できる加熱殺菌装置を提供できる。
【0012】
この場合、前記熱処理槽は、最下部に設けられた、前記熱源及び前記処理前流路から加熱処理前の流体が注入される注入口(例えば、後述の注入口145a)と、前記熱源の上方に、円筒形状であって半径がそれぞれ異なる複数の仕切り板(例えば、後述の仕切り板123a、123b、123c、123d及び123e)が同心に配置された案内部材(例えば、後述の案内部材120)とを備え、前記複数の仕切り板には、連通孔(例えば、後述の連通孔124a、124b、124c、124d及び124e)が上部又は下部交互に形成されることが好ましい。
【0013】
この発明によれば、熱処理槽の最下部に熱源及び処理前流路から加熱処理前の流体が注入される注入口と、この熱源の上方に、円筒形状であって半径がそれぞれ異なる複数の仕切り板が同心に配置された案内部材とを備えた。そして、複数の仕切り板には、連通孔を上部又は下部交互に形成した。
これにより、熱処理槽において、熱源の上方に、案内部材により複数の仕切り板に仕切られた複数の空間を形成できる。この複数の空間は、複数の仕切り板が同心に配置されたことで、複数同心に形成できる。これら複数の円筒状の空間は、仕切り板の上部又は下部交互に形成された連通孔により互いに連通する。
加熱処理前の流体は、熱処理槽の最下部の注入口から注入され、案内部材により、熱源の上方において、互いに連通する複数の円筒状の空間をそれぞれ通過しながら熱処理槽を流通する。
よって、熱処理槽内における流体の対流を防止し、流体に対して十分に熱を伝達できる。
したがって、装置全体をコンパクトにしつつ、熱の伝達及び熱交換の効率を向上できる加熱殺菌装置を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、装置全体をコンパクトにしつつ、熱交換の効率を向上できる加熱殺菌装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るクーラント供給システムの構成を示す図である。
【図2】前記実施形態に係る加熱殺菌部の断面図である。
【図3】前記実施形態に係る加熱部の断面図である。
【図4】前記実施形態に係る処理前流路と往き配管とが接続する部分及び処理後流路と戻り配管とが接続する部分を上方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1を参照してクーラント供給システム1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るクーラント供給システム1の構成を示す図である。
【0017】
本実施形態に係るクーラント供給システム1は、一次クーラントタンク11からのクーラントを供給する一次クーラント供給部10と、使用済みのクーラントを濾過し、濾過したクーラントの供給を行う二次クーラント供給部2と、から構成され、濾過済みのクーラントを工作機械部6に供給する。そして、工作機械部6で使用された使用済みのクーラントは、工作機械60及び一次側ライン20から一次クーラントタンク11に連通するクーラント回収トラフ61を通って一次クーラントタンク11に流入し、再利用される。
【0018】
一次クーラント供給部10は、使用済みのクーラントを貯留する一次クーラントタンク11と、一次フィルタ12と、一次ポンプ13と、一次フィルタ12及び一次ポンプ13の動作を制御する一次クーラント制御部14と、から構成される。
【0019】
一次クーラントタンク11は、工作機械60で使用された使用済みのクーラントが貯留されるタンクである。使用済みのクーラントに含まれる加工滓は、一次クーラントタンク11内に沈殿して分離される。
一次フィルタ12は、クーラント回収トラフ61から流入するクーラントに含まれるスラッジや工作機械60から出る加工滓を除去するものであり、除去したスラッジや加工滓はチップコンベアにより一次クーラントタンク11の外に運搬され、加工滓集積部15に集積される。
【0020】
一次ポンプ13は、一次クーラントタンク11から二次クーラントタンク30へクーラントを流通させるポンプである。
一次クーラント制御部14は、一次クーラント供給部10を制御する。具体的には、一次クーラント制御部14は、一次フィルタ12及び一次ポンプ13の始動や停止を制御する。
【0021】
二次クーラント供給部2は、一次クーラント供給部10に連通して一次クーラントタンク11内のクーラントを供給する一次側ライン20と、一次側ライン20から供給されたクーラントが貯留される二次クーラントタンク30と、二次クーラントタンク30から工作機械60それぞれにクーラントを供給する二次ライン40と、二次クーラント供給部2を制御する二次クーラント制御部50と、二次クーラントタンク30に貯留されたクーラントを殺菌する加熱殺菌装置100と、により構成される。
【0022】
一次側ライン20は、一次クーラントタンク11内のクーラントを、一次クーラントタンク11から二次クーラントタンク30に供給するラインである。
この一次側ライン20は、一次クーラントタンク11から二次クーラントタンク30に連通する一次供給管21と、一次供給管21の途中に設けられ、一次クーラントタンク11に貯留されたクーラントの不純物を分離するフィルタ22と、一次供給管21の途中であってフィルタ22の上流側に設けられる上流側開閉バルブ23と、同様にフィルタ22の下流側に設けられる下流側開閉バルブ24と、フィルタ22の排出口からクーラント回収トラフ61にクーラントを流入させる排出流路221と、により構成される。
【0023】
一次供給管21は、一次クーラント供給部10から、上流側開閉バルブ23、フィルタ22、下流側開閉バルブ24及び二次クーラントタンク30をそれぞれ連通する供給管であり、一次ポンプ13により取水されたクーラントが通過する管である。
【0024】
フィルタ22は、本実施形態ではサイクロン式の濾過装置である。このフィルタ22は、二次クーラント制御部50によりその始動又は停止が制御される。フィルタ22は、クーラントに含まれる固形粒子等の不純物を除去するフィルタである。
【0025】
排出流路221は、フィルタ22の排出口から、クーラント回収トラフ61にクーラントを流入させるように形成された排出用の流路である。この流路は、パイプ状の部材又はトラフのような溝状の部材により形成される。この排出流路221には、フィルタ22がクーラントから分離した不純物を高濃度に含む廃液が排出され、クーラント回収トラフ61にこれらの廃液が導出される。排出流路221の出口は、クーラント回収トラフ61の上流側となるように設けられることが好ましい。この上流側とは、クーラント回収トラフ61において、工作機械60からクーラント回収トラフ61に接続する部分近傍か、これよりも遠い位置であることを示す。
この排出流路221の途中には、ドレインバルブ222が設けられており、排出流路221に流れるクーラントの流量を調節する。
【0026】
上流側開閉バルブ23及び下流側開閉バルブ24は、一次供給管21を遮断又は開放するバルブであり、本実施形態では電磁弁が使用され、二次クーラント制御部50により制御される。
【0027】
二次クーラントタンク30は、フィルタ22により不純物が除去されたクーラントが貯留されるタンクである。二次クーラントタンク30には、二次クーラントタンク30内のクーラント量を検知するフロートスイッチ31が設けられる。
【0028】
フロートスイッチ31は、二次クーラントタンク30内に貯留されるクーラントの液面を検知する。詳細には、二次クーラントタンク30内のクーラントの液面の高さを検知して、その高さを示す信号を二次クーラント制御部50に送信する。液面が上昇又は下降するのに応じて、液面に浮かぶフロート(図示せず)も同様に上昇又は下降し、フロートの位置で液面を検知する。
【0029】
二次ライン40は、工作機械60に二次クーラントタンク30内のクーラントを供給するラインであり、工作機械60に連通する二次供給管41と、二次供給管41の途中に設けられて二次クーラントタンク30内のクーラントを二次ライン40に流通させる二次ポンプ42と、二次供給管41の途中であって、二次ポンプ42と工作機械60の間に設けられる圧力センサ43とにより構成される。
【0030】
二次供給管41は、二次クーラントタンク30と工作機械60とを連通して、二次クーラントタンク30内のクーラントを工作機械60に供給する管である。
【0031】
二次ポンプ42は、二次クーラントタンク30から工作機械60へクーラントを流通させるポンプである。また、二次ポンプ42は、二次クーラント制御部50により始動や停止が制御される。
二次ポンプ42は、本実施形態においては、インバータ44を有しており、二次クーラント制御部50はこのインバータ44に指令信号を送信することで二次ポンプ42を制御する。
【0032】
圧力センサ43は、二次供給管41の途中であって、二次ポンプ42と工作機械60との間に設けられるセンサである。この圧力センサ43は、二次ポンプ42から工作機械60までの二次供給管41の圧力を測定する。また、圧力センサ43が測定した圧力は、常時二次ポンプ42のインバータ44にフィードバックされ、インバータ44を通じて二次クーラント制御部50が当該圧力をモニタするとともに、最適な圧力を維持するように二次ポンプ42の回転数が制御される。
【0033】
二次クーラント制御部50は、二次クーラント供給部2を制御する。具体的には、一次側ライン20では、二次クーラント制御部50は、フィルタ22の始動や停止、回転数等を制御し、上流側開閉バルブ23及び下流側開閉バルブ24及びドレインバルブ222の開閉を制御する。また、二次ライン40では、二次クーラント制御部50は、インバータ44を介して二次ポンプ42の始動や停止、回転数等を制御する。圧力センサ43は、測定した圧力値を二次ポンプ42のインバータ44に送信し、二次ポンプ42のインバータ44を通じて二次クーラント制御部50が間接的に制御する。
また、二次クーラント制御部50は、一次クーラント供給部10の一次クーラント制御部14及び工作機械部6とそれぞれ通信を行い、工作機械60の稼働に合わせて二次ポンプ42、フィルタ22、上流側開閉バルブ23、下流側開閉バルブ24等の動作を制御する。
さらに、二次クーラント制御部50は、加熱殺菌装置100の動作を制御する。
【0034】
加熱殺菌装置100は、クーラントを加熱殺菌する加熱殺菌部101と、加熱殺菌部101を駆動する加熱殺菌部制御装置102と、二次クーラントタンク30から加熱殺菌部101に延びる往き配管103と、往き配管103に設けられ二次クーラントタンク30からクーラントを揚水する殺菌用ポンプ104と、加熱殺菌部101から二次クーラントタンク30に延びる戻り配管105と、から構成される。
【0035】
図2は、前記実施形態に係る加熱殺菌部101の断面図である。
加熱殺菌部101は、最下部に配置され流入されたクーラントを加熱する加熱部110と、加熱部110の内部に設けられ、流入されたクーラントを案内する案内部材120と、加熱部110で加熱された加熱後クーラントと加熱部110で加熱される前の加熱前クーラントとで熱交換させる熱交換部130と、加熱部110で加熱される前の加熱前クーラントが流通する処理前流路140と、加熱部110で加熱された加熱後クーラントが流通する処理後流路150と、から構成される。
【0036】
図3は、前記実施形態に係る加熱部110の断面図である。図2及び図3を参照して、加熱部110について説明する。
加熱部110は、クーラントを加熱殺菌処理する装置である。
加熱部110は、円筒状体の熱処理槽111と、熱処理槽111の外周を覆う加熱部断熱層112と、熱処理槽111を貫通し、熱処理槽111内の下部に設けられクーラントを加熱殺菌する熱源としてのヒータ113と、から構成される。
熱処理槽111は、加熱殺菌処理するクーラントを流通させるタンクである。
加熱部断熱層112は、熱処理槽111内部の熱を保温する断熱材である。
ヒータ113は、クーラントを加熱し所定温度(例えば、70℃以上)を保持する熱源である。ヒータ113は、加熱殺菌部制御装置102(図1参照)によって、加熱時間や加熱温度が制御される。
【0037】
案内部材120は、熱処理槽111内部において、クーラントの対流を防止する部材である。
案内部材120は、円形の板状体である底板121と、底板121をヒータ113の上方で支持する脚部122と、底板121の上面に配置され円筒形状であって半径がそれぞれ異なる仕切り板123a、123b、123c、123d及び123eと、から構成される。
【0038】
仕切り板123a、123b、123c、123d及び123eは、順にその半径が小さくなり、外側から中心に向かって配置される。すなわち、仕切り板123eは、仕切り板123dの内側に配置され、仕切り板123dは、仕切り板123cの内側に配置され、仕切り板123cは、仕切り板123bの内側に配置され、仕切り板123bは、仕切り板123aの内側に配置される。
また、仕切り板123a、123b、123c、123d及び123eには、それぞれ連通孔124a、124b、124c、124d及び124eが形成されている。
【0039】
これにより、熱処理槽111の内壁と仕切り板123aの外周との間には、仕切り空間125aが形成され、仕切り板123aの内周と仕切り板123bの外周との間には、仕切り空間125bが形成され、仕切り板123bの内周と仕切り板123cの外周との間には、仕切り空間125cが形成され、仕切り板123cの内周と仕切り板123dの外周との間には、仕切り空間125dが形成され、仕切り板123dの内周と仕切り板123eの外周との間には、仕切り空間125eが形成され、仕切り板123eの内部には、仕切り空間125fが形成される。
【0040】
連通孔124aは、仕切り板123aの上部に形成され、連通孔124bは、仕切り板123bの下部に形成され、連通孔124cは、仕切り板123cの上部に形成され、連通孔124dは、仕切り板123dの下部に形成され、連通孔124eは、仕切り板123eの上部に形成される。すなわち、連通孔124a、124b、124c、124d及び124eは、上下交互に配置されている。
【0041】
これにより、クーラントは、熱処理槽111の内部を流通する場合、仕切り空間125aから連通孔124aを通って仕切り空間125bを流通し、仕切り空間125bから連通孔124bを通って仕切り空間125cを流通し、仕切り空間125cから連通孔124cを通って仕切り空間125dを流通し、仕切り空間125dから連通孔124dを通って仕切り空間125eを流通し、仕切り空間125eから連通孔124eを通って仕切り空間125fを流通する。
【0042】
図2に戻って、熱交換部130は、加熱後クーラントと加熱前クーラントとで熱交換させる装置である。
熱交換部130は、円筒状体の熱交換部本体131と、熱交換部本体131の内部に設けられた略円柱状体の熱交換部内部体132と、熱交換部本体131の外周を覆う熱交換部断熱層133と、から構成される。
熱交換部本体131は、その内側に外周壁131aを有する。熱交換部内部体132は、その外径が熱交換部本体131の内径より小さく形成されている。熱交換部内部体132は、熱交換部本体131の外周壁131aから所定間隔を空けて配置され、その外周により内周壁132aが形成されている。これにより、外周壁131aと内周壁132aとの間に形成された空間が、後述する処理前流路140の円筒状流路142を形成する。
熱交換部断熱層133は、熱交換部本体131内部の熱を保温する断熱材である。
【0043】
処理前流路140は、加熱前クーラントを加熱部110に供給する流路である。
処理前流路140は、加熱前クーラントが流入する流入路141と、流入路141に下部が接続された円筒状流路142と、円筒状流路142の上部に一端が接続された中央落下流路143と、中央落下流路143の他端に一端が接続された処理前中継流路144と、処理前中継流路144に一端が接続された熱処理槽内流路145と、から構成される。
【0044】
図4は、前記実施形態に係る処理前流路140と往き配管103とが接続する部分及び処理後流路150と戻り配管105とが接続する部分を上方から視た図である。
図4に示すように、流入路141は、往き配管103が接続される流入口141aを備える。流入路141には、この流入口141aから、殺菌用ポンプ104(図1参照)により二次クーラントタンク30(図1参照)から揚水されたクーラントが流入される。
【0045】
図2に戻って、円筒状流路142は、熱交換部本体131の外周壁131aと内周壁132aとの間に形成された空間であり、略円筒状の立ち上がり部142aとこの立ち上がり部142aの上部に形成された略円形状の天井部142bと、から構成される。
【0046】
中央落下流路143は、円筒状流路142の天井部142bの略中心に一端が接続され、熱交換部内部体132の略中央を貫通して熱交換部130の上部から下部に延びる管状体である。
処理前中継流路144は、中央落下流路143の他端に一端が接続され、熱交換部130の略中心から外周まで略水平に延びる管状体である。処理前中継流路144の他端は、熱交換部130の外周に接続され、通常時には栓がされており、メンテナンス時に開栓される。これにより、処理前流路140は、例えば、清掃時に処理前中継流路144の他端から洗浄水を流入又は流出できる。
【0047】
熱処理槽内流路145は、処理前中継流路144に一端が接続され、加熱部110の熱処理槽111の内周近傍において、熱処理槽111の上部から底部近傍まで延びる管状体である。熱処理槽内流路145は、他端に注入口145aが形成されている。これにより、加熱部110には、熱処理槽111の底部近傍に配置されたこの注入口145aから加熱前クーラントが流入される。
【0048】
処理後流路150は、加熱殺菌された加熱後クーラントを加熱部110から戻り配管105に流入させる流路である。
処理後流路150は、加熱部110により加熱殺菌された加熱後クーラントを下端から流出する中央上昇流路151と、中央上昇流路151の上端に接続された処理後中継流路152と、処理後中継流路152に上端が接続され下方に向かって螺旋状に延びる螺旋流路153と、螺旋流路153の下端と接続された流出路154と、から構成される。
【0049】
中央上昇流路151は、加熱部110の熱処理槽111の上部略中央と接続する注出口151aを備える。中央上昇流路151は、注出口151aから上方に延びる管状体である。中央上昇流路151は、処理前流路140の中央落下流路143の内部に配管されている。
処理後中継流路152は、中央上昇流路151の上端に一端が接続され、熱交換部130の熱交換部本体131の略中心から外周まで略水平に延びてから、螺旋流路153の上端に接続されている。
螺旋流路153は、上端が処理後中継流路152に接続され、円筒状流路142の内部において、内周壁132aの周方向に沿って下方に延びる螺旋形状に形成された管状体である。
【0050】
図4に示すように、流出路154は、戻り配管105が接続される流出口154aを備える。加熱殺菌された加熱後クーラントは、この流出口154aから、戻り配管105に流入し、二次クーラントタンク30に流出される。流出路154の一部は、処理前流路140の流入路141の内部に配管されている。
【0051】
図1に戻って、加熱殺菌部制御装置102は、加熱部110のヒータ113(図2参照)を制御する。具体的には、加熱殺菌部制御装置102は、ヒータ113を制御し、加熱部110の熱処理槽111内のクーラントを所定温度に加熱し、この所定温度を保持させる。この加熱殺菌部制御装置102は、加熱開始及び停止を二次クーラント制御部50により制御される。
往き配管103は、二次クーラントタンク30内のクーラントを、殺菌用ポンプ104により揚水し、加熱殺菌部101に供給する管である。
殺菌用ポンプ104は、作動開始及び停止を二次クーラント制御部50により制御される。
戻り配管105は、加熱殺菌部101において殺菌されたクーラントを、重力により、二次クーラントタンク30に戻す管である。そして、この殺菌されたクーラントが二次クーラント供給部2から工作機械60に供給される。
【0052】
工作機械60は、工作機械制御部601と、開閉バルブ602とを少なくとも有する。
工作機械制御部601は、工作機械60の動作及び開閉バルブ602の動作を制御する。
開閉バルブ602は、二次クーラント供給部2と工作機械60との間に配置され、二次クーラント供給部2から連通する二次供給管41を遮断又は開放するバルブである。
【0053】
また、工作機械60と一次クーラントタンク11とは、クーラント回収トラフ61により連通する。クーラント回収トラフ61は、工作機械60と一次クーラントタンク11とを連通して、工作機械60で使用された使用済みのクーラントを回収して、一次クーラントタンク11に導出する。また、クーラント回収トラフ61には、フィルタ22の排出流路221がクーラント回収トラフ61の上流側に接続され、フィルタ22の廃液も導入される。
【0054】
図1を参照して、クーラント供給システム1の動作について説明する。
まず、二次クーラント制御部50は、二次クーラントタンク30の液面高さを、フロートスイッチ31から液面高さを示す信号に基づき検知し、液面が所定の高さであれば、上流側開閉バルブ23を開ける。これにより、フィルタ22に一次クーラントタンク11内のクーラントが供給される。
次に、二次クーラント制御部50は、フィルタ22に始動信号を送信してフィルタ22を始動させて濾過を開始させ、下流側開閉バルブ24をオンにして開けた状態にし、フィルタ22を通過したクーラントを二次クーラントタンク30に供給する。次に、二次クーラント制御部50は、工作機械制御部601から工作機械60が稼働を開始する旨の信号を受信すると、工作機械60に連通する二次供給管41に設けられた二次ポンプ42の稼働を開始する。また、工作機械制御部601は、開閉バルブ602を開けた状態とし、当該工作機械60にクーラントの供給を開始する。そして、工作機械制御部601は、工作機械60の潤滑や冷却に用いたクーラントをクーラント回収トラフ61に導出する。クーラント回収トラフ61に導出されたクーラントは、一次クーラントタンク11に戻される。
【0055】
図2を参照して、加熱殺菌装置100により二次クーラントタンク30のクーラントを殺菌する工程について説明する。
まず、二次クーラント制御部50(図1参照)は、殺菌用ポンプ104(図1参照)を動作させ、二次クーラントタンク30(図1参照)内のクーラントを揚水し、往き配管103(図1参照)から加熱殺菌装置100における加熱殺菌部101の処理前流路140に流入させる。二次クーラントタンク30から流入したクーラントは、加熱殺菌されていない加熱前クーラントである。
処理前流路140に流入した加熱前クーラントは、流入路141、円筒状流路142、中央落下流路143、処理前中継流路144、熱処理槽内流路145の順に流通し、加熱部110の熱処理槽111に流入する。
【0056】
次に、熱処理槽111に流入した加熱前クーラントは、仕切り空間125a、仕切り空間125b、仕切り空間125c、仕切り空間125d、仕切り空間125e、仕切り空間125fの順で流通する間に、ヒータ113によって確実に加熱され、加熱後クーラントとなる。このように、加熱前クーラントは、加熱されることで、殺菌され加熱後クーラントとなる。
この加熱後クーラントは、熱処理槽111の上部略中央から処理後流路150に流入する。
処理後流路150に流入した加熱後クーラントは、処理前流路140の内部に配管された中央上昇流路151及び螺旋流路153を通過して流出路154に流入する。そして、この流出路154に流入した加熱後クーラントは、戻り配管105(図1参照)に流入し、二次クーラントタンク30に流出される。このように、加熱後クーラントは、処理前流路140の内部に配管された中央上昇流路151及び螺旋流路153を通過することで、処理前流路140を流通する加熱前クーラントと熱交換できる。
【0057】
本実施形態によれば、以下のような作用効果がある。
本実施形態によれば、加熱処理前の加熱前クーラントを流入する流入口141aとヒータ113が設けられた熱処理槽111とを連結する処理前流路140と、熱処理槽111と加熱処理後の加熱後クーラントを流出する流出口154aとを連結する処理後流路150と、を備えた。
そして、処理前流路140は、熱処理槽111の上部において、略円筒形状の内周壁132aと、この内周壁132aと同芯であり内周壁132aより径が大きい外周壁131aとから形成された円筒状流路142を有し、処理後流路150は、円筒状流路142の内部において、内周壁132aの周方向に沿って延びる螺旋形状に形成された螺旋流路153を有した。
これにより、熱処理槽111の上部において、処理前流路140の円筒状流路142の内部に処理後流路150の螺旋流路153を有することで、熱処理槽111の上部で加熱処理後の加熱後クーラントと加熱処理前の加熱前クーラントとで熱交換できる。よって、熱処理槽と別に熱交換器を設ける必要がない。
【0058】
また、処理後流路150の螺旋流路153は、処理前流路140の円筒状流路142の内部において、その内周壁132aの周方向に沿って延びる螺旋形状に形成したので、処理後流路150が単に処理前流路140を貫通する場合に比べて、処理後流路150と処理前流路140との接触面積を広くできる。よって、熱処理槽111により加熱された加熱処理後の加熱後クーラントから加熱処理前の加熱前クーラントに奪われる熱エネルギーを増大できる。
したがって、装置全体をコンパクトにしつつ、熱交換の効率を向上できる加熱殺菌装置を提供できる。
【0059】
また、熱処理槽111の最下部にヒータ113及び処理前流路140から加熱処理前の加熱前クーラントが注入される注入口145aと、このヒータ113の上方に、円筒形状であって半径がそれぞれ異なる仕切り板123a、123b、123c、123d及び123eが同心に配置された案内部材120とを備えた。そして、仕切り板123a〜123eには、連通孔124a、124b、124c、124d及び124eを上部又は下部交互に形成した。
これにより、熱処理槽111において、ヒータ113の上方に、案内部材120により仕切り板123a〜123eに仕切られた仕切り空間125a、125b、125c、125d、125e、125fを形成できる。仕切り空間125a〜125fは、仕切り板123a〜123eが同心に配置されたことで、複数同心に形成できる。これら仕切り空間125a〜125fは、仕切り板123a〜123eの上部又は下部交互に形成された連通孔124a〜124eにより互いに連通する。
加熱処理前の加熱前クーラントは、熱処理槽111の最下部の注入口145aから注入され、案内部材120より、ヒータ113の上方において、互いに連通する仕切り空間125a〜125fをそれぞれ通過しながら熱処理槽111を流通する。
よって、熱処理槽内における流体の対流を防止し、流体に対して十分に熱を伝達できる。
したがって、装置全体をコンパクトにしつつ、熱の伝達及び熱交換の効率を向上できる加熱殺菌装置を提供できる。
【0060】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
100 加熱殺菌装置
113 ヒータ(熱源)
111 熱処理槽
131a 外周壁
132a 内周壁
140 処理前流路
141a 流入口
142 円筒状流路
150 処理後流路
153 螺旋流路
154a 流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を加熱処理することで殺菌する加熱殺菌装置であって、
熱源が設けられた熱処理槽と、
加熱処理前の流体を流入する流入口と、
加熱処理後の流体を流出する流出口と、
前記流入口から前記熱処理槽に連結する処理前流路と、
前記熱処理槽から前記流出口に連結する処理後流路とを備え、
前記処理前流路は、前記熱処理槽の上部において、略円筒形状の内周壁と、前記内周壁と同芯であり前記内周壁より径が大きい外周壁との間に形成された円筒状流路を有し、
前記処理後流路は、前記円筒状流路の内部において、前記内周壁の周方向に沿って延びる螺旋形状に形成された螺旋流路を有する加熱殺菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱殺菌装置であって、
前記熱処理槽は、
最下部に設けられた、前記熱源及び前記処理前流路から加熱処理前の流体が注入される注入口と、
前記熱源の上方に、円筒形状であって半径がそれぞれ異なる複数の仕切り板が同心に配置された案内部材とを備え、
前記複数の仕切り板には、連通孔が上部又は下部交互に形成された加熱殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−224191(P2011−224191A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97655(P2010−97655)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】