加熱流路ユニット、および、液体噴射ヘッド
【課題】液体噴射ヘッドの流路を流れる液体を効率良く加熱することができ、また、汎用性を向上した加熱流路ユニット、および、液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】液体供給源としての自己封止バルブと記録ヘッド内のヘッド流路との間を連通する通液空部４２（連通流路）を基体内部に有し、自己封止バルブと記録ヘッドとの間に着脱可能に装着され、発熱体４６からの熱により連通空部を流れるインクを加熱する加熱流路ユニット７であって、加熱流路ユニットが記録ヘッドに装着されたときに開弁し、加熱流路ユニットが記録ヘッドから取り外されたときに閉弁する開閉弁４０を連通流路内に備えた。
【解決手段】液体供給源としての自己封止バルブと記録ヘッド内のヘッド流路との間を連通する通液空部４２（連通流路）を基体内部に有し、自己封止バルブと記録ヘッドとの間に着脱可能に装着され、発熱体４６からの熱により連通空部を流れるインクを加熱する加熱流路ユニット７であって、加熱流路ユニットが記録ヘッドに装着されたときに開弁し、加熱流路ユニットが記録ヘッドから取り外されたときに閉弁する開閉弁４０を連通流路内に備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに装着する加熱流路ユニット、および、これを装着した液体噴射ヘッドに係り、特に、ヘッド内の流路を流れる液体を加熱してから噴射する液体噴射ヘッドに関する。
【背景技術】
【０００２】
液体噴射ヘッドの代表的なものとして、例えば、記録紙等の記録媒体（吐出対象物）に対して液体状のインクを吐出・着弾させて記録を行うインクジェット式プリンタ（液体噴射装置の一種。以下、プリンタという。）に搭載されるインクジェット式記録ヘッド（以下、記録ヘッドという。）を挙げることができる。この他、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタに用いられる色材、有機ＥＬ（Electro Luminescence）ディスプレイに用いられる有機材料、電極形成に用いられる電極材等、様々な機能性液体の噴射に液体噴射ヘッドが用いられている。
【０００３】
ところで、近年、紫外線などの光のエネルギーの照射によって硬化する光硬化型インクが画像等の印刷の際に用いられることがある。この光硬化型インクは、インク吸収性の乏しい記録媒体に対しても光を当てれば硬化して画像等を記録することができるため、様々な用途に用いられている。しかしながら、この光硬化型インクは、一般のインクよりも粘度が高く、この光硬化型インクを液体噴射ヘッドで噴射するには、粘度を低下させる必要がある。また、光硬化型インクの光硬化感度は温度に依存し、低温下では光硬化感度が低下する一方、高温下では光硬化感度が向上する。このため、加熱手段によって光硬化型インクを加熱してから記録媒体上に噴射するように構成された液体噴射ヘッドが提案されている（例えば、特許文献１又は特許文献２参照）。
【０００４】
【特許文献１】特開平０９−１４１８９２号公報
【特許文献２】特開２００３−０１１３４９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、インクを加熱する機構を有していない既存の液体噴射ヘッドに加熱機能を持たせる場合、液体噴射ヘッドの外表面等に加熱手段を設け、この加熱手段の熱によってヘッド流路を流れるインクを加熱しても、インク温度が上昇し難いという問題があった。この場合、常温のインクを噴射に適した温度（例えば、４０℃）まで加熱するには、より高い温度での加熱が必要となり、消費電力が大きくなるばかりでなく、ヘッドの寿命を低下させてしまう虞があった。
【０００６】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体噴射ヘッドの流路を流れる液体を効率良く加熱することができ、また、汎用性を向上した加熱流路ユニット、および、液体噴射ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明の加熱流路ユニットは、上記目的を達成するために提案されたものであり、液体供給源と液体噴射ヘッドとの間を連通する連通流路を基体内部に有し、
前記液体供給源と前記液体噴射ヘッドとの間に着脱可能に装着される加熱流路ユニットであって、
前記連通流路を流れる液体を加熱する発熱体と、
前記連通流路に設けられた開閉弁と、
を備え、
前記開閉弁は、当該加熱流路ユニットの装着時に開弁して液体の通過を許可する一方、当該加熱流路ユニットの非装着時に閉弁して液体の通過を遮断することを特徴とする。
【０００８】
上記構成によれば、液体供給源と液体噴射ヘッドとの間を連通する連通流路を基体内部に有し、液体供給源と液体噴射ヘッドとの間に着脱可能に装着される加熱流路ユニットであって、連通流路を流れる液体を加熱する発熱体を備える構成としたので、即ち、流路そのもので液体を加熱する構成としたので、液体を効率良く加熱することが可能となり、省電力化、省スペース化を図ることができる。また、液体を効率良く加熱することができるので、加熱流路ユニット自体の発熱温度を抑えることができ、その結果、液体噴射ヘッド本体への熱による悪影響を抑制することが可能となる。そして、液体を加熱する機能を有しない既存の液体噴射ヘッドに着脱可能に装着することができ、汎用性が高い。さらに、連通流路に開閉弁を備えているので、加熱流路ユニットを着脱するときに、連通流路内部の液体が外部に漏れ出すことを防止することができ、汎用性の向上に寄与することが可能となる。
【０００９】
上記構成において、前記連通流路は前記加熱流路ユニット内部に複数の突出部を設置して通液空部が形成されていることが望ましい。
【００１０】
この構成によれば、連通流路は加熱流路ユニット内部に複数の突出部を設置して通液空部が形成されているので、加熱流路ユニットの構造体と液体との接触面積をより大きく確保することができ、これにより、加熱効率をより向上させることが可能となる。
【００１１】
また、この構成において、前記突出部は、前記加熱流路ユニット内部の内壁面から延出すると共に、前記発熱体が埋設された区画壁で構成され、当該区画壁によって前記通液空部が仕切られている構成を採ることができる。
【００１２】
この構成によれば、発熱体が埋設された区画壁で通液空部が仕切られているので、通液空部内の液体をより直接的に加熱することができ、加熱効率をさらに向上させることが可能となる。
【００１３】
そして、上記構成において、前記通液空部が、液体の流れ方向と異なる方向に仕切られている構成を採用することができる。
【００１４】
この構成によれば、通液空部が、区画壁によって液体の流れ方向と異なる方向に仕切られているので、区画壁によって液体の流下勢を抑えると共に、加熱流路ユニットに液体が流入してから流出するまでの流下距離を稼ぐことができ、これにより、液体を効率良く加熱することができる。また、液体を徐々に加熱することができるので、急激な温度上昇による液体への負荷を抑えることができる。
【００１５】
本発明の液体噴射ヘッドは、液体供給源からの液体をヘッド流路に導入し、導入した液体を噴射可能な液体噴射ヘッドであって、
上記各構成の加熱流路ユニットを着脱可能に備えることを特徴とする。
【００１６】
この構成によれば、上記加熱流路ユニットを着脱可能に備えるので、液体を加熱する機能を有さない既存の液体噴射ヘッドにも、設計変更を最小限に留めつつ容易に加熱機能を持たせることが可能となり、高粘度の液体の噴射に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、本実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッド（以下、記録ヘッド）を例に挙げて説明する。
【００１８】
図１及び図２は、本実施形態における記録ヘッド１の構成を説明する図であり、図１は記録ヘッド１の分解斜視図、図２は記録ヘッド１の斜視図である。また、図３は、ヘッドユニット２の要部断面図である。
本実施形態における記録ヘッド１は、ヘッドユニット２、自己封止バルブ４（本発明における液体供給源の一種）、インナーケース５、アウターケース６、及び、加熱流路ユニット７を主な構成要素としている。
【００１９】
上記ヘッドユニット２は、複数の圧電振動子８を備えたアクチュエータユニット９、共通インク室１０（液体室）からインク供給口１１及び圧力発生室１２を通ってノズル開口１３に至る一連のインク流路を形成する流路ユニット１４、及び、ヘッドケース１５などを備えて概略構成されている。
【００２０】
ヘッドケース１５は中空箱体状のケーシングであり、その内部には、自己封止バルブ４側からのインクを共通インク室１０側に導入するための流路であるケース流路１６と、各アクチュエータユニット９を個別に収容する収容室１７とが形成されている。このヘッドケース１５は、熱硬化性樹脂の一種であるエポキシ樹脂によって成型されており、流路取付面（下面）に流路ユニット１４が固定される。また、流路取付面とは反対側の基端面（上面）には、導入針ユニット１９（図１参照）が取り付けられる。
【００２１】
上記のアクチュエータユニット９は、圧力発生手段としての圧電振動子８と、この圧電振動子８が接合される金属製の固定板２１と、圧電振動子８に配線基板２０からの駆動信号を印加するためのフレキシブルケーブル２２等から構成される。各圧電振動子８は、自由端部が固定板２１の先端面よりも外側に突出した所謂片持ち梁の状態で、ステンレス鋼などの金属製板材からなる固定板２１上に取り付けられている。なお、圧力発生手段としては、上記圧電振動子以外にも、静電アクチュエータ、磁歪素子、発熱素子等を用いることができる。
【００２２】
流路ユニット１４は、振動板２３、流路基板２４、及びノズル基板２５からなる流路ユニット構成部材を積層した状態で接合して一体化することにより作製されている。この流路ユニット１４における圧力発生室１２は、ノズル開口１３の列設方向（ノズル列方向）に対して直交する方向に細長い室として形成されている。また、共通インク室１０は、自己封止バルブ４側からのインクが導入される室である。そして、この共通インク室１０に導入されたインクは、インク供給口１１を通じて各圧力発生室１２に分配供給されるようになっている。
【００２３】
流路ユニット１４の底部に配置されるノズル基板２５は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口１３を、列状に開設した金属製の薄い板材である。本実施形態のノズル基板２５は、ステンレス鋼の板材によって作製され、ノズル開口１３の列（ノズル列（ノズル群の一種））が、記録ヘッド１の走査方向（主走査方向）に複数並べて設けられている。そして、１つのノズル列は、例えば３６０個のノズル開口１３によって構成される。
【００２４】
ヘッドケース１５の基端面（ノズル形成面とは反対側の面）には、導入針ユニット１９が配置される。この導入針ユニット１９は、合成樹脂等によって成型されており、その上面にはフィルタ（図示せず）を介在させた状態でインク導入針２７が複数取り付けられている。また、導入針ユニット１９の上面には、後述する加熱流路ユニット７が着脱可能に装着されるようになっている。そして、加熱流路ユニット７を導入針ユニット１９に装着すると、加熱流路ユニット７内にインク導入針２７が挿入される。また、この導入針ユニット１９の内部には、各インク導入針２７に対応した集束流路（図示せず）が形成されている。この集束流路は、ヘッドケース１５のケース流路１６に連通し、インク導入針２７から導入されたインクをケース流路１６を通じて圧力室側に供給するようになっている。なお、インク導入針２７からケース流路１６、共通インク室１０、及び圧力発生室１２を通りノズル開口１３に至るまでの一連の流路が、本発明におけるヘッド流路に相当し、本実施形態においては、合計８組のヘッド流路が記録ヘッド１内に形成されている。
【００２５】
上記自己封止バルブ４は、上面に形成された流路接続部２９にプリンタ本体側からのインク供給チューブ（図示せず）が接続され、このインク供給チューブからのインクを受け、このインクの供給圧力を調整した上で圧力発生室側に導入する部材である。本実施形態においては、合計４つの自己封止バルブ４が、インナーケース５内に収容されるようになっている。１つの自己封止バルブ４内には２つの流路が形成されており、２種類のインクに対応できるようになっている。また、各自己封止バルブ４の底部には挿入部２８が設けられており、この挿入部２８内には加熱流路ユニット７の接続部４３（図４〜７参照。）が挿入されるようになっている。なお、加熱流路ユニット７を用いない構成においては、導入針ユニット１９のインク導入針２７が挿入部２８に挿入される。
【００２６】
また、各自己封止バルブ４は、内部の圧力変動に応じてバルブを開閉し、ヘッドユニット２側へのインクの供給を制御する自己封止機能を有している。即ち、記録ヘッド１がインクの噴射をしない非記録状態（インクを消費しない状態）では、自己封止バルブ４は、バルブを閉じて記録ヘッド１側にインクを供給しないようにする。一方、記録ヘッド１が記録動作（噴射動作）時にインクを噴射することでインクを消費して自己封止バルブ４内部の圧力調整室の圧力が低下すると、自己封止バルブ４はバルブを開いて記録ヘッド１側にインクを供給するようになっている。
【００２７】
上記インナーケース５は、上下面が開口したスリーブ状の部材であり、インク導入針２７を囲繞する状態でヘッドユニット２の上面側に取り付けられる。インナーケース５の開口部の平面形状は略矩形に形成されており、その内部空間は、加熱流路ユニット７と自己封止バルブ４を収容するための収容空部３０となっている。また、インナーケース５の外側面には、駆動基板２０が取り付けられる。
【００２８】
上記アウターケース６は、インナーケース５の上部開口を被覆可能なベース面３２と、当該ベース面３２における自己封止バルブ列設方向に直交する方向の両辺縁部から下方（ヘッドユニット２側）に延出した側壁部３３とから形成された断面略門型の部材である。側壁部３３は、インナーケース５の側面に固定された駆動基板２０を被覆する基板被覆壁として機能する。ベース面３２には、収容空部３０に収容された自己封止バルブ４の流路接続部２９に対応する部分に、当該流路接続部２９を露出可能な開口部３４が開設されている（図１）。また、ベース面３２におけるバルブ列設方向の両縁部には、スリット３５が形成されている。そして、インナーケース５内に収容された加熱流路ユニット７のリード線３６がスリット３５を通してヘッド外部に引き出されるようになっている（図２）。
【００２９】
さらに、アウターケース６のベース面３２には、サブタンク列設方向の両辺縁部から下方に向けて、インナーケース５の係止爪３７が係止可能な被係止部３８が形成されている。この被係止部３８の先端部は、略Ｕ字状に形成されており、インナーケース５にアウターケース６を取り付けると、この被係止部３８の貫通孔にインナーケース５の係止爪３７が係止して、インナーケース５に対してアウターケース６が固定されるようになっている。
【００３０】
そして、導入針ユニット１９のインク導入針２７を囲繞する状態でインナーケース５をヘッドユニット２に取り付け、インナーケース５の収容空部３０内に加熱流路ユニット７と各自己封止バルブ４を順次収容し、インナーケース５の側面に駆動基板２０を固定する。さらに、各自己封止バルブ４の流路接続部２９を開口部３４から露出させると共にスリット３５からリード線３６を引き出した状態で、アウターケース６をインナーケース５の外側に取り付けて収容空部３０の上部開口やインナーケース５の側面の駆動基板２０をこのアウターケース６によって被覆する。なお、この被覆状態では、駆動基板２０のコネクタ３９が露出し、このコネクタ３９にはプリンタ本体側のケーブルが接続されるようになっている。
【００３１】
次に、加熱流路ユニット７について説明する。
図４〜図７は、加熱流路ユニット７の一実施形態を説明する図であり、図４は加熱流路ユニット７の斜視図、図５は図４におけるＡ−Ａ′断面図、図６は図４におけるＢ−Ｂ′断面図、図７は図４におけるＣ−Ｃ′断面図である。また、図８は、図５における領域Ａの拡大断面図であり、（ａ）はインク導入針２７が挿入されていない状態を、（ｂ）はインク導入針２７が挿入された状態を、それぞれ示している。
【００３２】
本実施形態における加熱流路ユニット７は、基体（ケーシング）４１の内部に自己封止バルブ４の各流路にそれぞれ対応した通液空部４２が区画形成された中空箱体状の部材である。基体４１は、熱伝導率が高い材質（例えば、５０Ｗ／ｍｋ以上の熱伝導率を有する材質）で構成されていることが望ましく、本実施形態においては、銅、アルミニウム等の金属によって形成されている。通液空部４２は、自己封止バルブ４の流路とヘッドユニット２（ヘッドケース１５）のケース流路１６との間を連通する連通流路の一部として機能する空部であり、ヘッド流路（ケース流路１６）の内径よりも大きい内寸の室に設定されている。本実施形態においては、各自己封止弁４の流路および各ヘッド流路に対応して合計８つの通液空部４２が基体４１の内部に区画形成されている。
【００３３】
基体４１の上面（自己封止バルブ４側の面）には、通液空部４２に連通する円筒状の接続部４３が突設されている。即ち、本実施形態においては、各通液空部４２に対応して合計８つの接続部４３が基体４１の上面に設けられている。この接続部４３は、自己封止バルブ４の装着時に挿入部２８内に挿入され、自己封止バルブ４側からのインクを通液空部４２に導入するようになっている。一方、基体４１の下面（ヘッドユニット２側の面）には、各インク導入針２７に対応して針挿入部４４と開閉弁４０が合計８組み形成されている。針挿入部４４は、基体４１の下面の一部を通液空部４２側に窪ませて当該通液空部４２と連通する凹部を形成している。また、針挿入部４４の凹部内にはインク導入針２７の側面に弾接してインク漏れを防ぐパッキン４５を配設している。このパッキン４５は、エラストマーなどの弾性材から円筒形状に形成された部材である。このパッキン４５の内部には、インク導入針２７のストレート部分の直径と同程度の内径に設定された挿通空部４５ａと、インク導入針２７のストレート部分の直径よりも小さく設定された縮径開口部４５ｂとが形成されている（図８参照）。
【００３４】
図６，７に示すように、基体４１には、シーズヒータ等の発熱体４６がインサート成型によって埋設されている。本実施形態における基体４１は、合計２つの発熱体４６を有しており、４つの通液空部４２に隣接する壁の内部にそれぞれ埋め込んでいる。また、基体４１の外表面には、発熱体４６と導通する陰陽の両極端子部４７がそれぞれ設けられており（図４）、この極端子部４７にリード線３６が電気的に接続されている。そして、加熱流路ユニット７は、リード線３６を通じて極端子部４７に通電することで発熱体４６を発熱させ、この発熱体４６の熱を基体４１の構造体を通じて通液空部４２内のインクを加熱するように構成されている。即ち、加熱流路ユニット７は、加熱機能を有する流路部材と言うことができる。
【００３５】
また、本実施形態においては、発熱体４６が埋め込まれている壁（縦方向の壁）から対向する壁に向けて突出部の一種である区画壁４８を縦方向の姿勢（面がインクの流下方向に沿う姿勢）で複数延出している。この区画壁４８の横幅の寸法（延出長さ）は通液空部４２の横幅と同一寸法に設定する一方で、区画壁４８の高さの寸法は通液空部４２の高さよりも短く設定している（図６参照）。そして、この区画壁４８によって通液空部４２を複数縦割りに仕切ることで、上下が互いに連通した複数の通液空部（小空部）を区画している。即ち、連通流路には、内部に複数の突出部である区画壁４８を設置して通液空部４２が形成されている。さらに換言すると、連通流路の途中が、区画壁４８によって互いに並行する複数の流路に仕切られている。この区画壁４８は、基体４１と一体に成型することが望ましい。このように通液空部４２に複数の区画壁４８を設けることで、通液空部４２内のインクとの接触面積を増やすことができ、これにより、発熱体４６からの熱をより効率良くインクに伝達することができる。
【００３６】
次に、開閉弁４０について説明する。
図８に示すように、針挿入部４４の上流側（通液空部４２側）には、円筒形状の弁収容部４９（連通流路の一部）が形成されており、この弁収容部４９の内部に開閉弁４０が配設されている。弁収容部４９は、底部に開設された連通口４９ａを通じて針挿入部４４の凹部に連通し、また、側面に開設された流入口４９ｂを通じて通液空部４２と連通している。開閉弁４０は、弁体５０と付勢部材５１とから構成されている。弁体５０は、連通口４９ａの内径よりも大きい直径に設計された円盤状の板材であり、連通口４９ａ側の当接面には弾性部材５２が積層されている。弾性部材５２は、例えばエラストマーやゴム等から作製されている。この弾性部材５２における連通口４９ａの開口周縁部に対応する部分には、当該連通口４９ａの開口を囲繞する平面視リング状の当接部５２ａが突設されている。また、弁体５０は、当接面とは反対側の面から軸部５３を延出しており、この軸部５３を弁収容部４９の天井面に形成された軸受５４に遊嵌した状態で上下動可能に弁収容部内に配設されている。付勢部材５１は、コイルバネ等から構成されている。この付勢部材５１は、弁収容部４９の天井面と弁体５０の押圧板５０ａとの間に配設されており、この弁体５０を連通口４９ａ側に向けて付勢している。
【００３７】
図８（ａ）に示すように、インク導入針２７が加熱流路ユニット７内に挿入されていない状態、即ち、加熱流路ユニット７が記録ヘッド１に装着されていない非装着時（装着されていた加熱流路ユニット７が記録ヘッド１から取り外された状態）では、付勢部材５１からの付勢により弁体５０の弾性部材５２における当接部５２ａが連通口４９ａの開口周縁部（バルブシート）に弾接して閉弁状態（封止状態）となることにより、通液空部内のインクが連通口４９ａを通過して外部に漏出することを遮断するようになっている。
【００３８】
一方、図８（ｂ）に示すように、加熱流路ユニット７を記録ヘッド１（ヘッドユニット２の上面）に装着すると、これに伴ってインク導入針２７が、針挿入部４４及び連通口４９ａを通じて弁収容部内に挿入され、このインク導入針２７の先端部が弁体５０を押し上げて開弁する。この開弁状態に切り替わることにより、インク導入針２７の先端部に開設された導入穴２７ａを通じて、通液空部４２とヘッド流路とが液密状態で連通する。そして、通液空部内のインクが流入口４９ｂ及び導入穴２７ａを通じてヘッド流路内に導入される。即ち、インクの通過が許容される。なお、この開弁状態では、パッキン４５の縮径開口部４５ｂの内周面がインク導入針２７の側面（導入穴２７ａよりも基端側の側面）に弾接するので、針挿入部４４を通じて外部にインクが漏出することが防止される。
【００３９】
図９は、開閉弁の変形例を説明する図であり、（ａ）は閉弁状態、（ｂ）は開弁状態を示す要部断面図である。この変形例では、パッキン４５に開閉弁としての機能を持たせている。即ち、この構成では、パッキン４５の縮径開口部４５ｂの内径を、インク導入針２７が挿入されていない状態で通液空部内のインクがこの縮径開口部４５ｂを通じて外部に漏出しない程度に小さく設定している。そして、図９（ａ）に示すように、インク導入針２７が加熱流路ユニット７内に挿入されていない状態、即ち、加熱流路ユニット７が記録ヘッド１に装着されていない非装着時では、パッキン４５の縮径開口部４５ｂが、パッキン自体の弾性によって閉じた状態、即ち、閉弁状態となることにより、通液空部内のインクが縮径開口部４５ｂを通じて外部に漏出することを遮断する。
【００４０】
一方、図９（ｂ）に示すように、加熱流路ユニット７を記録ヘッド１に装着すると、これに伴ってインク導入針２７が、針挿入部４４内に挿入され、パッキン４５の挿通空部４５ａと縮径開口部４５ｂに挿通される。このとき、インク導入針２７の先端部は、縮径開口部の周縁部の弾性変形により当該縮径開口部４５ｂを押し広げつつ連通口４９ａを通って通液空部４２まで挿入される。即ち、開閉弁が開弁される。この開弁状態に切り替わることにより、インク導入針２７の先端部に開設された導入穴２７ａを通じて、通液空部４２とヘッド流路とが液密状態で連通し、通液空部内のインクが導入穴２７ａを通じてヘッド流路内に導入される。
【００４１】
以上のように、本発明に係る記録ヘッド１は、加熱流路ユニット７を着脱可能に備えているので、設計変更を最小限に留めつつ光硬化型インク等の高粘度のインク（具体的には２５℃において１０ｍＰa・s以上）の噴射に対応することができる。即ち、自己封止バルブ４から導入したインクを加熱流路ユニット７によって加熱することで当該インクの粘度を低下させてからノズル開口１３から噴射するので、一般のインクと同様な噴射特性（噴射量、噴射速度等）を得られることができる。当然ながら、光硬化型インク以外の水系及び溶剤系インクにおける高粘度のインクにも適用可能である。
【００４２】
また、本発明に係る加熱流路ユニット７は、流路そのものでインクを加熱する構成であるので、インクを効率良く加熱することが可能であり、省電力化、省スペース化を図ることができる。また、元々インクを加熱する機能を有しない既存の記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに着脱可能に装着することができ、汎用性が高い。さらに、噴射に適した温度（例えば、４０℃）まで液体を効率良く加熱することができるので、加熱流路ユニット７の発熱温度を抑えることができ、その結果、液体噴射ヘッド本体への熱による悪影響を抑制することが可能となる。
また、加熱流路ユニットが遮光性を有していれば、インクが光硬化タイプである場合に、流路ユニット内でインクが硬化することを抑制することができる。
そして、記録ヘッド１への加熱流路ユニット７の装着時に開弁する一方、非装着時に閉弁する開閉弁４０を連通流路内に備えているので、加熱流路ユニット７を記録ヘッド１に対して着脱するときに、連通流路内部のインクが外部に漏れ出すことを効果的に防止することができ、汎用性の向上に寄与することが可能となる。
【００４３】
ところで、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【００４４】
上記実施形態では、発熱体４６を基体４１内に埋設した構成を例示したが、これには限られず、例えば、発熱体４６を各通液空部４２内に配設するようにしてもよい。即ち、発熱体４６によってインクをより直接的に加熱する構成とすることができる。
【００４５】
また、上記実施形態では、発熱体４６が埋め込まれている壁から向かい合う壁に向けて複数の区画壁４８を延出し、この区画壁４８によって通液空部４２を互いに連通した複数の通液空部に仕切った構成を例示したが、これには限られない。例えば、通液空部４２の内壁面に、針状やフィン状の突出部を複数突設する構成を採用することができる。要は、通液空部４２内のインクとの接触面積をより多く確保することができる構造であることが望ましい。
【００４６】
さらに、発熱体４６を区画壁４８に埋設する構成を採用することも可能である。この構成によれば、発熱体４６が埋設された区画壁４８で通液空部４２が仕切られているので、通液空部内のインクをより直接的に加熱することができ、加熱効率をさらに向上させることが可能となる。
【００４７】
また、上記実施形態では、針挿入部４４側のみに開閉弁４０を設けた構成を例示したが、これには限られない。例えば、加熱流路ユニット７の接続部４３に開閉弁をさらに設ける構成を採用しても良い。この構成を採用することにより、通液空部４２の入口と出口の両方でインクが漏出することを防止することができる。
【００４８】
図１０，１１は、加熱流路ユニット７の第２の実施形態を説明する図であり、図１０は加熱流路ユニット７の縦断面図、図１１は加熱流路ユニット７の横断面図である。
本実施形態においては、突出部の一種である区画壁４８の方向が、上記第１実施形態と異なっている。具体的には、基体４１の天井面と平行となる状態で区画壁４８が基体４１の縦壁から水平方向に複数延出している。この区画壁４８によって、加熱流路ユニット７に流入してくるインクの流下方向が、加熱流路ユニット７の縦方向から横方向に変換される。
【００４９】
図１０に示すように、本実施形態における区画壁４８の延出長さは、通液空部４２の横幅よりも短く設定している。また、基体４１の向かい合う縦壁同士において、区画壁４８が互い違いとなるように区画壁４８を複数段交互に配置している。そして、この区画壁４８によって、通液空部４２をインクの流れ方向とは異なる方向（縦方向）に複数仕切ることにより、互いに連通した複数の連通空部（小空部）が区画され、連通流路が蛇行するように構成されている。
【００５０】
本実施形態の構成によれば、区画壁４８によって通液空部４２がインクの流れ方向とは異なる方向に複数段に仕切られているので、この区画壁４８によってインクの流下勢を抑えると共に、流路が蛇行することにより加熱流路ユニット７にインクが流入してから流出するまでの流下距離を稼ぐことができ、これにより、インクを効率良く加熱することができる。また、インクを徐々に加熱することができるので、急激な温度上昇によるインクへの負荷を抑えることができる。さらに、記録ヘッド１のノズル開口１３からインクや気泡を強制的に排出するクリーニング処理の際に、第１実施形態の場合、加熱流路ユニット７の入り口（接続部４３）側と出口（針接続部４４）側でインクが混じりやすくなる可能性があるが、本実施形態によればこのような不具合を抑制することができる。
【００５１】
なお、上記実施形態においては、プリンタ本体側からのインクを自己封止バルブ４で受けてからヘッド流路に導入する所謂オフキャリッジタイプの構成を例示したが、勿論、オンキャリッジタイプの構成にも本発明を適用可能である。即ち、上記自己封止バルブ４（液体導入部材）に替えてインクを貯留したインクカートリッジ（液体貯留部材）を収容空部３０に収容する構成においても好適である。
【００５２】
また、本発明は、加熱が必要な液体を扱う液体噴射ヘッドであれば、上記記録ヘッド１に限らず、ディスプレイ製造装置、電極製造装置、チップ製造装置、マイクロピペット等に搭載される液体噴射ヘッドにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【００５３】
【図１】記録ヘッドの構成を説明する分解斜視図である。
【図２】記録ヘッドの斜視図である。
【図３】ヘッドユニットの要部断面図である。
【図４】加熱流路ユニットの斜視図である。
【図５】図４におけるＡ−Ａ′断面図である。
【図６】図４におけるＢ−Ｂ′断面図である。
【図７】図４におけるＣ−Ｃ′断面図である。
【図８】開閉弁の構成を説明する要部断面図である。
【図９】開閉弁の変形例を説明する要部断面図である。
【図１０】第２実施形態における加熱流路ユニットの縦断面図である。
【図１１】第２実施形態における加熱流路ユニットの横断面図である。
【符号の説明】
【００５４】
１…記録ヘッド，２…ヘッドユニット，４…自己封止バルブ，７…加熱流路ユニット，１０…共通インク室，１１…インク供給口，１２…圧力発生室，１３…ノズル開口，１４…流路ユニット，１５…ヘッドケース，１９…導入針ユニット，２７…インク導入針，４０…開閉弁，４１…基体，４２…通液空部，４３…接続部，４４…針挿入部，４６…発熱体，４７…極端子部，４８…区画壁，４９…弁収容部，５０…弁体，５１…付勢部材，５２…弾性部材，５３…軸部，５４…軸受
【技術分野】
【０００１】
本発明は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに装着する加熱流路ユニット、および、これを装着した液体噴射ヘッドに係り、特に、ヘッド内の流路を流れる液体を加熱してから噴射する液体噴射ヘッドに関する。
【背景技術】
【０００２】
液体噴射ヘッドの代表的なものとして、例えば、記録紙等の記録媒体（吐出対象物）に対して液体状のインクを吐出・着弾させて記録を行うインクジェット式プリンタ（液体噴射装置の一種。以下、プリンタという。）に搭載されるインクジェット式記録ヘッド（以下、記録ヘッドという。）を挙げることができる。この他、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタに用いられる色材、有機ＥＬ（Electro Luminescence）ディスプレイに用いられる有機材料、電極形成に用いられる電極材等、様々な機能性液体の噴射に液体噴射ヘッドが用いられている。
【０００３】
ところで、近年、紫外線などの光のエネルギーの照射によって硬化する光硬化型インクが画像等の印刷の際に用いられることがある。この光硬化型インクは、インク吸収性の乏しい記録媒体に対しても光を当てれば硬化して画像等を記録することができるため、様々な用途に用いられている。しかしながら、この光硬化型インクは、一般のインクよりも粘度が高く、この光硬化型インクを液体噴射ヘッドで噴射するには、粘度を低下させる必要がある。また、光硬化型インクの光硬化感度は温度に依存し、低温下では光硬化感度が低下する一方、高温下では光硬化感度が向上する。このため、加熱手段によって光硬化型インクを加熱してから記録媒体上に噴射するように構成された液体噴射ヘッドが提案されている（例えば、特許文献１又は特許文献２参照）。
【０００４】
【特許文献１】特開平０９−１４１８９２号公報
【特許文献２】特開２００３−０１１３４９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、インクを加熱する機構を有していない既存の液体噴射ヘッドに加熱機能を持たせる場合、液体噴射ヘッドの外表面等に加熱手段を設け、この加熱手段の熱によってヘッド流路を流れるインクを加熱しても、インク温度が上昇し難いという問題があった。この場合、常温のインクを噴射に適した温度（例えば、４０℃）まで加熱するには、より高い温度での加熱が必要となり、消費電力が大きくなるばかりでなく、ヘッドの寿命を低下させてしまう虞があった。
【０００６】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体噴射ヘッドの流路を流れる液体を効率良く加熱することができ、また、汎用性を向上した加熱流路ユニット、および、液体噴射ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明の加熱流路ユニットは、上記目的を達成するために提案されたものであり、液体供給源と液体噴射ヘッドとの間を連通する連通流路を基体内部に有し、
前記液体供給源と前記液体噴射ヘッドとの間に着脱可能に装着される加熱流路ユニットであって、
前記連通流路を流れる液体を加熱する発熱体と、
前記連通流路に設けられた開閉弁と、
を備え、
前記開閉弁は、当該加熱流路ユニットの装着時に開弁して液体の通過を許可する一方、当該加熱流路ユニットの非装着時に閉弁して液体の通過を遮断することを特徴とする。
【０００８】
上記構成によれば、液体供給源と液体噴射ヘッドとの間を連通する連通流路を基体内部に有し、液体供給源と液体噴射ヘッドとの間に着脱可能に装着される加熱流路ユニットであって、連通流路を流れる液体を加熱する発熱体を備える構成としたので、即ち、流路そのもので液体を加熱する構成としたので、液体を効率良く加熱することが可能となり、省電力化、省スペース化を図ることができる。また、液体を効率良く加熱することができるので、加熱流路ユニット自体の発熱温度を抑えることができ、その結果、液体噴射ヘッド本体への熱による悪影響を抑制することが可能となる。そして、液体を加熱する機能を有しない既存の液体噴射ヘッドに着脱可能に装着することができ、汎用性が高い。さらに、連通流路に開閉弁を備えているので、加熱流路ユニットを着脱するときに、連通流路内部の液体が外部に漏れ出すことを防止することができ、汎用性の向上に寄与することが可能となる。
【０００９】
上記構成において、前記連通流路は前記加熱流路ユニット内部に複数の突出部を設置して通液空部が形成されていることが望ましい。
【００１０】
この構成によれば、連通流路は加熱流路ユニット内部に複数の突出部を設置して通液空部が形成されているので、加熱流路ユニットの構造体と液体との接触面積をより大きく確保することができ、これにより、加熱効率をより向上させることが可能となる。
【００１１】
また、この構成において、前記突出部は、前記加熱流路ユニット内部の内壁面から延出すると共に、前記発熱体が埋設された区画壁で構成され、当該区画壁によって前記通液空部が仕切られている構成を採ることができる。
【００１２】
この構成によれば、発熱体が埋設された区画壁で通液空部が仕切られているので、通液空部内の液体をより直接的に加熱することができ、加熱効率をさらに向上させることが可能となる。
【００１３】
そして、上記構成において、前記通液空部が、液体の流れ方向と異なる方向に仕切られている構成を採用することができる。
【００１４】
この構成によれば、通液空部が、区画壁によって液体の流れ方向と異なる方向に仕切られているので、区画壁によって液体の流下勢を抑えると共に、加熱流路ユニットに液体が流入してから流出するまでの流下距離を稼ぐことができ、これにより、液体を効率良く加熱することができる。また、液体を徐々に加熱することができるので、急激な温度上昇による液体への負荷を抑えることができる。
【００１５】
本発明の液体噴射ヘッドは、液体供給源からの液体をヘッド流路に導入し、導入した液体を噴射可能な液体噴射ヘッドであって、
上記各構成の加熱流路ユニットを着脱可能に備えることを特徴とする。
【００１６】
この構成によれば、上記加熱流路ユニットを着脱可能に備えるので、液体を加熱する機能を有さない既存の液体噴射ヘッドにも、設計変更を最小限に留めつつ容易に加熱機能を持たせることが可能となり、高粘度の液体の噴射に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、本実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッド（以下、記録ヘッド）を例に挙げて説明する。
【００１８】
図１及び図２は、本実施形態における記録ヘッド１の構成を説明する図であり、図１は記録ヘッド１の分解斜視図、図２は記録ヘッド１の斜視図である。また、図３は、ヘッドユニット２の要部断面図である。
本実施形態における記録ヘッド１は、ヘッドユニット２、自己封止バルブ４（本発明における液体供給源の一種）、インナーケース５、アウターケース６、及び、加熱流路ユニット７を主な構成要素としている。
【００１９】
上記ヘッドユニット２は、複数の圧電振動子８を備えたアクチュエータユニット９、共通インク室１０（液体室）からインク供給口１１及び圧力発生室１２を通ってノズル開口１３に至る一連のインク流路を形成する流路ユニット１４、及び、ヘッドケース１５などを備えて概略構成されている。
【００２０】
ヘッドケース１５は中空箱体状のケーシングであり、その内部には、自己封止バルブ４側からのインクを共通インク室１０側に導入するための流路であるケース流路１６と、各アクチュエータユニット９を個別に収容する収容室１７とが形成されている。このヘッドケース１５は、熱硬化性樹脂の一種であるエポキシ樹脂によって成型されており、流路取付面（下面）に流路ユニット１４が固定される。また、流路取付面とは反対側の基端面（上面）には、導入針ユニット１９（図１参照）が取り付けられる。
【００２１】
上記のアクチュエータユニット９は、圧力発生手段としての圧電振動子８と、この圧電振動子８が接合される金属製の固定板２１と、圧電振動子８に配線基板２０からの駆動信号を印加するためのフレキシブルケーブル２２等から構成される。各圧電振動子８は、自由端部が固定板２１の先端面よりも外側に突出した所謂片持ち梁の状態で、ステンレス鋼などの金属製板材からなる固定板２１上に取り付けられている。なお、圧力発生手段としては、上記圧電振動子以外にも、静電アクチュエータ、磁歪素子、発熱素子等を用いることができる。
【００２２】
流路ユニット１４は、振動板２３、流路基板２４、及びノズル基板２５からなる流路ユニット構成部材を積層した状態で接合して一体化することにより作製されている。この流路ユニット１４における圧力発生室１２は、ノズル開口１３の列設方向（ノズル列方向）に対して直交する方向に細長い室として形成されている。また、共通インク室１０は、自己封止バルブ４側からのインクが導入される室である。そして、この共通インク室１０に導入されたインクは、インク供給口１１を通じて各圧力発生室１２に分配供給されるようになっている。
【００２３】
流路ユニット１４の底部に配置されるノズル基板２５は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口１３を、列状に開設した金属製の薄い板材である。本実施形態のノズル基板２５は、ステンレス鋼の板材によって作製され、ノズル開口１３の列（ノズル列（ノズル群の一種））が、記録ヘッド１の走査方向（主走査方向）に複数並べて設けられている。そして、１つのノズル列は、例えば３６０個のノズル開口１３によって構成される。
【００２４】
ヘッドケース１５の基端面（ノズル形成面とは反対側の面）には、導入針ユニット１９が配置される。この導入針ユニット１９は、合成樹脂等によって成型されており、その上面にはフィルタ（図示せず）を介在させた状態でインク導入針２７が複数取り付けられている。また、導入針ユニット１９の上面には、後述する加熱流路ユニット７が着脱可能に装着されるようになっている。そして、加熱流路ユニット７を導入針ユニット１９に装着すると、加熱流路ユニット７内にインク導入針２７が挿入される。また、この導入針ユニット１９の内部には、各インク導入針２７に対応した集束流路（図示せず）が形成されている。この集束流路は、ヘッドケース１５のケース流路１６に連通し、インク導入針２７から導入されたインクをケース流路１６を通じて圧力室側に供給するようになっている。なお、インク導入針２７からケース流路１６、共通インク室１０、及び圧力発生室１２を通りノズル開口１３に至るまでの一連の流路が、本発明におけるヘッド流路に相当し、本実施形態においては、合計８組のヘッド流路が記録ヘッド１内に形成されている。
【００２５】
上記自己封止バルブ４は、上面に形成された流路接続部２９にプリンタ本体側からのインク供給チューブ（図示せず）が接続され、このインク供給チューブからのインクを受け、このインクの供給圧力を調整した上で圧力発生室側に導入する部材である。本実施形態においては、合計４つの自己封止バルブ４が、インナーケース５内に収容されるようになっている。１つの自己封止バルブ４内には２つの流路が形成されており、２種類のインクに対応できるようになっている。また、各自己封止バルブ４の底部には挿入部２８が設けられており、この挿入部２８内には加熱流路ユニット７の接続部４３（図４〜７参照。）が挿入されるようになっている。なお、加熱流路ユニット７を用いない構成においては、導入針ユニット１９のインク導入針２７が挿入部２８に挿入される。
【００２６】
また、各自己封止バルブ４は、内部の圧力変動に応じてバルブを開閉し、ヘッドユニット２側へのインクの供給を制御する自己封止機能を有している。即ち、記録ヘッド１がインクの噴射をしない非記録状態（インクを消費しない状態）では、自己封止バルブ４は、バルブを閉じて記録ヘッド１側にインクを供給しないようにする。一方、記録ヘッド１が記録動作（噴射動作）時にインクを噴射することでインクを消費して自己封止バルブ４内部の圧力調整室の圧力が低下すると、自己封止バルブ４はバルブを開いて記録ヘッド１側にインクを供給するようになっている。
【００２７】
上記インナーケース５は、上下面が開口したスリーブ状の部材であり、インク導入針２７を囲繞する状態でヘッドユニット２の上面側に取り付けられる。インナーケース５の開口部の平面形状は略矩形に形成されており、その内部空間は、加熱流路ユニット７と自己封止バルブ４を収容するための収容空部３０となっている。また、インナーケース５の外側面には、駆動基板２０が取り付けられる。
【００２８】
上記アウターケース６は、インナーケース５の上部開口を被覆可能なベース面３２と、当該ベース面３２における自己封止バルブ列設方向に直交する方向の両辺縁部から下方（ヘッドユニット２側）に延出した側壁部３３とから形成された断面略門型の部材である。側壁部３３は、インナーケース５の側面に固定された駆動基板２０を被覆する基板被覆壁として機能する。ベース面３２には、収容空部３０に収容された自己封止バルブ４の流路接続部２９に対応する部分に、当該流路接続部２９を露出可能な開口部３４が開設されている（図１）。また、ベース面３２におけるバルブ列設方向の両縁部には、スリット３５が形成されている。そして、インナーケース５内に収容された加熱流路ユニット７のリード線３６がスリット３５を通してヘッド外部に引き出されるようになっている（図２）。
【００２９】
さらに、アウターケース６のベース面３２には、サブタンク列設方向の両辺縁部から下方に向けて、インナーケース５の係止爪３７が係止可能な被係止部３８が形成されている。この被係止部３８の先端部は、略Ｕ字状に形成されており、インナーケース５にアウターケース６を取り付けると、この被係止部３８の貫通孔にインナーケース５の係止爪３７が係止して、インナーケース５に対してアウターケース６が固定されるようになっている。
【００３０】
そして、導入針ユニット１９のインク導入針２７を囲繞する状態でインナーケース５をヘッドユニット２に取り付け、インナーケース５の収容空部３０内に加熱流路ユニット７と各自己封止バルブ４を順次収容し、インナーケース５の側面に駆動基板２０を固定する。さらに、各自己封止バルブ４の流路接続部２９を開口部３４から露出させると共にスリット３５からリード線３６を引き出した状態で、アウターケース６をインナーケース５の外側に取り付けて収容空部３０の上部開口やインナーケース５の側面の駆動基板２０をこのアウターケース６によって被覆する。なお、この被覆状態では、駆動基板２０のコネクタ３９が露出し、このコネクタ３９にはプリンタ本体側のケーブルが接続されるようになっている。
【００３１】
次に、加熱流路ユニット７について説明する。
図４〜図７は、加熱流路ユニット７の一実施形態を説明する図であり、図４は加熱流路ユニット７の斜視図、図５は図４におけるＡ−Ａ′断面図、図６は図４におけるＢ−Ｂ′断面図、図７は図４におけるＣ−Ｃ′断面図である。また、図８は、図５における領域Ａの拡大断面図であり、（ａ）はインク導入針２７が挿入されていない状態を、（ｂ）はインク導入針２７が挿入された状態を、それぞれ示している。
【００３２】
本実施形態における加熱流路ユニット７は、基体（ケーシング）４１の内部に自己封止バルブ４の各流路にそれぞれ対応した通液空部４２が区画形成された中空箱体状の部材である。基体４１は、熱伝導率が高い材質（例えば、５０Ｗ／ｍｋ以上の熱伝導率を有する材質）で構成されていることが望ましく、本実施形態においては、銅、アルミニウム等の金属によって形成されている。通液空部４２は、自己封止バルブ４の流路とヘッドユニット２（ヘッドケース１５）のケース流路１６との間を連通する連通流路の一部として機能する空部であり、ヘッド流路（ケース流路１６）の内径よりも大きい内寸の室に設定されている。本実施形態においては、各自己封止弁４の流路および各ヘッド流路に対応して合計８つの通液空部４２が基体４１の内部に区画形成されている。
【００３３】
基体４１の上面（自己封止バルブ４側の面）には、通液空部４２に連通する円筒状の接続部４３が突設されている。即ち、本実施形態においては、各通液空部４２に対応して合計８つの接続部４３が基体４１の上面に設けられている。この接続部４３は、自己封止バルブ４の装着時に挿入部２８内に挿入され、自己封止バルブ４側からのインクを通液空部４２に導入するようになっている。一方、基体４１の下面（ヘッドユニット２側の面）には、各インク導入針２７に対応して針挿入部４４と開閉弁４０が合計８組み形成されている。針挿入部４４は、基体４１の下面の一部を通液空部４２側に窪ませて当該通液空部４２と連通する凹部を形成している。また、針挿入部４４の凹部内にはインク導入針２７の側面に弾接してインク漏れを防ぐパッキン４５を配設している。このパッキン４５は、エラストマーなどの弾性材から円筒形状に形成された部材である。このパッキン４５の内部には、インク導入針２７のストレート部分の直径と同程度の内径に設定された挿通空部４５ａと、インク導入針２７のストレート部分の直径よりも小さく設定された縮径開口部４５ｂとが形成されている（図８参照）。
【００３４】
図６，７に示すように、基体４１には、シーズヒータ等の発熱体４６がインサート成型によって埋設されている。本実施形態における基体４１は、合計２つの発熱体４６を有しており、４つの通液空部４２に隣接する壁の内部にそれぞれ埋め込んでいる。また、基体４１の外表面には、発熱体４６と導通する陰陽の両極端子部４７がそれぞれ設けられており（図４）、この極端子部４７にリード線３６が電気的に接続されている。そして、加熱流路ユニット７は、リード線３６を通じて極端子部４７に通電することで発熱体４６を発熱させ、この発熱体４６の熱を基体４１の構造体を通じて通液空部４２内のインクを加熱するように構成されている。即ち、加熱流路ユニット７は、加熱機能を有する流路部材と言うことができる。
【００３５】
また、本実施形態においては、発熱体４６が埋め込まれている壁（縦方向の壁）から対向する壁に向けて突出部の一種である区画壁４８を縦方向の姿勢（面がインクの流下方向に沿う姿勢）で複数延出している。この区画壁４８の横幅の寸法（延出長さ）は通液空部４２の横幅と同一寸法に設定する一方で、区画壁４８の高さの寸法は通液空部４２の高さよりも短く設定している（図６参照）。そして、この区画壁４８によって通液空部４２を複数縦割りに仕切ることで、上下が互いに連通した複数の通液空部（小空部）を区画している。即ち、連通流路には、内部に複数の突出部である区画壁４８を設置して通液空部４２が形成されている。さらに換言すると、連通流路の途中が、区画壁４８によって互いに並行する複数の流路に仕切られている。この区画壁４８は、基体４１と一体に成型することが望ましい。このように通液空部４２に複数の区画壁４８を設けることで、通液空部４２内のインクとの接触面積を増やすことができ、これにより、発熱体４６からの熱をより効率良くインクに伝達することができる。
【００３６】
次に、開閉弁４０について説明する。
図８に示すように、針挿入部４４の上流側（通液空部４２側）には、円筒形状の弁収容部４９（連通流路の一部）が形成されており、この弁収容部４９の内部に開閉弁４０が配設されている。弁収容部４９は、底部に開設された連通口４９ａを通じて針挿入部４４の凹部に連通し、また、側面に開設された流入口４９ｂを通じて通液空部４２と連通している。開閉弁４０は、弁体５０と付勢部材５１とから構成されている。弁体５０は、連通口４９ａの内径よりも大きい直径に設計された円盤状の板材であり、連通口４９ａ側の当接面には弾性部材５２が積層されている。弾性部材５２は、例えばエラストマーやゴム等から作製されている。この弾性部材５２における連通口４９ａの開口周縁部に対応する部分には、当該連通口４９ａの開口を囲繞する平面視リング状の当接部５２ａが突設されている。また、弁体５０は、当接面とは反対側の面から軸部５３を延出しており、この軸部５３を弁収容部４９の天井面に形成された軸受５４に遊嵌した状態で上下動可能に弁収容部内に配設されている。付勢部材５１は、コイルバネ等から構成されている。この付勢部材５１は、弁収容部４９の天井面と弁体５０の押圧板５０ａとの間に配設されており、この弁体５０を連通口４９ａ側に向けて付勢している。
【００３７】
図８（ａ）に示すように、インク導入針２７が加熱流路ユニット７内に挿入されていない状態、即ち、加熱流路ユニット７が記録ヘッド１に装着されていない非装着時（装着されていた加熱流路ユニット７が記録ヘッド１から取り外された状態）では、付勢部材５１からの付勢により弁体５０の弾性部材５２における当接部５２ａが連通口４９ａの開口周縁部（バルブシート）に弾接して閉弁状態（封止状態）となることにより、通液空部内のインクが連通口４９ａを通過して外部に漏出することを遮断するようになっている。
【００３８】
一方、図８（ｂ）に示すように、加熱流路ユニット７を記録ヘッド１（ヘッドユニット２の上面）に装着すると、これに伴ってインク導入針２７が、針挿入部４４及び連通口４９ａを通じて弁収容部内に挿入され、このインク導入針２７の先端部が弁体５０を押し上げて開弁する。この開弁状態に切り替わることにより、インク導入針２７の先端部に開設された導入穴２７ａを通じて、通液空部４２とヘッド流路とが液密状態で連通する。そして、通液空部内のインクが流入口４９ｂ及び導入穴２７ａを通じてヘッド流路内に導入される。即ち、インクの通過が許容される。なお、この開弁状態では、パッキン４５の縮径開口部４５ｂの内周面がインク導入針２７の側面（導入穴２７ａよりも基端側の側面）に弾接するので、針挿入部４４を通じて外部にインクが漏出することが防止される。
【００３９】
図９は、開閉弁の変形例を説明する図であり、（ａ）は閉弁状態、（ｂ）は開弁状態を示す要部断面図である。この変形例では、パッキン４５に開閉弁としての機能を持たせている。即ち、この構成では、パッキン４５の縮径開口部４５ｂの内径を、インク導入針２７が挿入されていない状態で通液空部内のインクがこの縮径開口部４５ｂを通じて外部に漏出しない程度に小さく設定している。そして、図９（ａ）に示すように、インク導入針２７が加熱流路ユニット７内に挿入されていない状態、即ち、加熱流路ユニット７が記録ヘッド１に装着されていない非装着時では、パッキン４５の縮径開口部４５ｂが、パッキン自体の弾性によって閉じた状態、即ち、閉弁状態となることにより、通液空部内のインクが縮径開口部４５ｂを通じて外部に漏出することを遮断する。
【００４０】
一方、図９（ｂ）に示すように、加熱流路ユニット７を記録ヘッド１に装着すると、これに伴ってインク導入針２７が、針挿入部４４内に挿入され、パッキン４５の挿通空部４５ａと縮径開口部４５ｂに挿通される。このとき、インク導入針２７の先端部は、縮径開口部の周縁部の弾性変形により当該縮径開口部４５ｂを押し広げつつ連通口４９ａを通って通液空部４２まで挿入される。即ち、開閉弁が開弁される。この開弁状態に切り替わることにより、インク導入針２７の先端部に開設された導入穴２７ａを通じて、通液空部４２とヘッド流路とが液密状態で連通し、通液空部内のインクが導入穴２７ａを通じてヘッド流路内に導入される。
【００４１】
以上のように、本発明に係る記録ヘッド１は、加熱流路ユニット７を着脱可能に備えているので、設計変更を最小限に留めつつ光硬化型インク等の高粘度のインク（具体的には２５℃において１０ｍＰa・s以上）の噴射に対応することができる。即ち、自己封止バルブ４から導入したインクを加熱流路ユニット７によって加熱することで当該インクの粘度を低下させてからノズル開口１３から噴射するので、一般のインクと同様な噴射特性（噴射量、噴射速度等）を得られることができる。当然ながら、光硬化型インク以外の水系及び溶剤系インクにおける高粘度のインクにも適用可能である。
【００４２】
また、本発明に係る加熱流路ユニット７は、流路そのものでインクを加熱する構成であるので、インクを効率良く加熱することが可能であり、省電力化、省スペース化を図ることができる。また、元々インクを加熱する機能を有しない既存の記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに着脱可能に装着することができ、汎用性が高い。さらに、噴射に適した温度（例えば、４０℃）まで液体を効率良く加熱することができるので、加熱流路ユニット７の発熱温度を抑えることができ、その結果、液体噴射ヘッド本体への熱による悪影響を抑制することが可能となる。
また、加熱流路ユニットが遮光性を有していれば、インクが光硬化タイプである場合に、流路ユニット内でインクが硬化することを抑制することができる。
そして、記録ヘッド１への加熱流路ユニット７の装着時に開弁する一方、非装着時に閉弁する開閉弁４０を連通流路内に備えているので、加熱流路ユニット７を記録ヘッド１に対して着脱するときに、連通流路内部のインクが外部に漏れ出すことを効果的に防止することができ、汎用性の向上に寄与することが可能となる。
【００４３】
ところで、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【００４４】
上記実施形態では、発熱体４６を基体４１内に埋設した構成を例示したが、これには限られず、例えば、発熱体４６を各通液空部４２内に配設するようにしてもよい。即ち、発熱体４６によってインクをより直接的に加熱する構成とすることができる。
【００４５】
また、上記実施形態では、発熱体４６が埋め込まれている壁から向かい合う壁に向けて複数の区画壁４８を延出し、この区画壁４８によって通液空部４２を互いに連通した複数の通液空部に仕切った構成を例示したが、これには限られない。例えば、通液空部４２の内壁面に、針状やフィン状の突出部を複数突設する構成を採用することができる。要は、通液空部４２内のインクとの接触面積をより多く確保することができる構造であることが望ましい。
【００４６】
さらに、発熱体４６を区画壁４８に埋設する構成を採用することも可能である。この構成によれば、発熱体４６が埋設された区画壁４８で通液空部４２が仕切られているので、通液空部内のインクをより直接的に加熱することができ、加熱効率をさらに向上させることが可能となる。
【００４７】
また、上記実施形態では、針挿入部４４側のみに開閉弁４０を設けた構成を例示したが、これには限られない。例えば、加熱流路ユニット７の接続部４３に開閉弁をさらに設ける構成を採用しても良い。この構成を採用することにより、通液空部４２の入口と出口の両方でインクが漏出することを防止することができる。
【００４８】
図１０，１１は、加熱流路ユニット７の第２の実施形態を説明する図であり、図１０は加熱流路ユニット７の縦断面図、図１１は加熱流路ユニット７の横断面図である。
本実施形態においては、突出部の一種である区画壁４８の方向が、上記第１実施形態と異なっている。具体的には、基体４１の天井面と平行となる状態で区画壁４８が基体４１の縦壁から水平方向に複数延出している。この区画壁４８によって、加熱流路ユニット７に流入してくるインクの流下方向が、加熱流路ユニット７の縦方向から横方向に変換される。
【００４９】
図１０に示すように、本実施形態における区画壁４８の延出長さは、通液空部４２の横幅よりも短く設定している。また、基体４１の向かい合う縦壁同士において、区画壁４８が互い違いとなるように区画壁４８を複数段交互に配置している。そして、この区画壁４８によって、通液空部４２をインクの流れ方向とは異なる方向（縦方向）に複数仕切ることにより、互いに連通した複数の連通空部（小空部）が区画され、連通流路が蛇行するように構成されている。
【００５０】
本実施形態の構成によれば、区画壁４８によって通液空部４２がインクの流れ方向とは異なる方向に複数段に仕切られているので、この区画壁４８によってインクの流下勢を抑えると共に、流路が蛇行することにより加熱流路ユニット７にインクが流入してから流出するまでの流下距離を稼ぐことができ、これにより、インクを効率良く加熱することができる。また、インクを徐々に加熱することができるので、急激な温度上昇によるインクへの負荷を抑えることができる。さらに、記録ヘッド１のノズル開口１３からインクや気泡を強制的に排出するクリーニング処理の際に、第１実施形態の場合、加熱流路ユニット７の入り口（接続部４３）側と出口（針接続部４４）側でインクが混じりやすくなる可能性があるが、本実施形態によればこのような不具合を抑制することができる。
【００５１】
なお、上記実施形態においては、プリンタ本体側からのインクを自己封止バルブ４で受けてからヘッド流路に導入する所謂オフキャリッジタイプの構成を例示したが、勿論、オンキャリッジタイプの構成にも本発明を適用可能である。即ち、上記自己封止バルブ４（液体導入部材）に替えてインクを貯留したインクカートリッジ（液体貯留部材）を収容空部３０に収容する構成においても好適である。
【００５２】
また、本発明は、加熱が必要な液体を扱う液体噴射ヘッドであれば、上記記録ヘッド１に限らず、ディスプレイ製造装置、電極製造装置、チップ製造装置、マイクロピペット等に搭載される液体噴射ヘッドにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【００５３】
【図１】記録ヘッドの構成を説明する分解斜視図である。
【図２】記録ヘッドの斜視図である。
【図３】ヘッドユニットの要部断面図である。
【図４】加熱流路ユニットの斜視図である。
【図５】図４におけるＡ−Ａ′断面図である。
【図６】図４におけるＢ−Ｂ′断面図である。
【図７】図４におけるＣ−Ｃ′断面図である。
【図８】開閉弁の構成を説明する要部断面図である。
【図９】開閉弁の変形例を説明する要部断面図である。
【図１０】第２実施形態における加熱流路ユニットの縦断面図である。
【図１１】第２実施形態における加熱流路ユニットの横断面図である。
【符号の説明】
【００５４】
１…記録ヘッド，２…ヘッドユニット，４…自己封止バルブ，７…加熱流路ユニット，１０…共通インク室，１１…インク供給口，１２…圧力発生室，１３…ノズル開口，１４…流路ユニット，１５…ヘッドケース，１９…導入針ユニット，２７…インク導入針，４０…開閉弁，４１…基体，４２…通液空部，４３…接続部，４４…針挿入部，４６…発熱体，４７…極端子部，４８…区画壁，４９…弁収容部，５０…弁体，５１…付勢部材，５２…弾性部材，５３…軸部，５４…軸受
【特許請求の範囲】
【請求項１】
液体供給源と液体噴射ヘッドとの間を連通する連通流路を基体内部に有し、
前記液体供給源と前記液体噴射ヘッドとの間に着脱可能に装着される加熱流路ユニットであって、
前記連通流路を流れる液体を加熱する発熱体と、
前記連通流路に設けられた開閉弁と、
を備え、
前記開閉弁は、当該加熱流路ユニットの装着時に開弁して液体の通過を許可する一方、当該加熱流路ユニットの非装着時に閉弁して液体の通過を遮断することを特徴とする加熱流路ユニット。
【請求項２】
前記連通流路は前記加熱流路ユニット内部に複数の突出部を設置して通液空部が形成されていることを特徴とする請求項１に記載の加熱流路ユニット。
【請求項３】
前記突出部は、前記加熱流路ユニット内部の内壁面から延出すると共に、前記発熱体が埋設された区画壁で構成され、当該区画壁によって前記通液空部が仕切られていることを特徴とする請求項２に記載の加熱流路ユニット。
【請求項４】
前記通液空部が、液体の流れ方向と異なる方向に区画されていることを特徴とする請求項３に記載の加熱流路ユニット。
【請求項５】
液体供給源からの液体をヘッド流路に導入し、導入した液体を噴射可能な液体噴射ヘッドであって、
請求項１から請求項４の何れか一項に記載の加熱流路ユニットを着脱可能に備えることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項１】
液体供給源と液体噴射ヘッドとの間を連通する連通流路を基体内部に有し、
前記液体供給源と前記液体噴射ヘッドとの間に着脱可能に装着される加熱流路ユニットであって、
前記連通流路を流れる液体を加熱する発熱体と、
前記連通流路に設けられた開閉弁と、
を備え、
前記開閉弁は、当該加熱流路ユニットの装着時に開弁して液体の通過を許可する一方、当該加熱流路ユニットの非装着時に閉弁して液体の通過を遮断することを特徴とする加熱流路ユニット。
【請求項２】
前記連通流路は前記加熱流路ユニット内部に複数の突出部を設置して通液空部が形成されていることを特徴とする請求項１に記載の加熱流路ユニット。
【請求項３】
前記突出部は、前記加熱流路ユニット内部の内壁面から延出すると共に、前記発熱体が埋設された区画壁で構成され、当該区画壁によって前記通液空部が仕切られていることを特徴とする請求項２に記載の加熱流路ユニット。
【請求項４】
前記通液空部が、液体の流れ方向と異なる方向に区画されていることを特徴とする請求項３に記載の加熱流路ユニット。
【請求項５】
液体供給源からの液体をヘッド流路に導入し、導入した液体を噴射可能な液体噴射ヘッドであって、
請求項１から請求項４の何れか一項に記載の加熱流路ユニットを着脱可能に備えることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【公開番号】特開２００９−８３４７１（Ｐ２００９−８３４７１Ａ）
【公開日】平成２１年４月２３日（２００９．４．２３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−１９３０１７（Ｐ２００８−１９３０１７）
【出願日】平成２０年７月２８日（２００８．７．２８）
【出願人】（０００００２３６９）セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年４月２３日（２００９．４．２３）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年７月２８日（２００８．７．２８）
【出願人】（０００００２３６９）セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Ｆターム（参考）】
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