説明

加熱溶融押出成型した制御放出性投与剤型

本発明は、ポリマー(C)を含むマトリックス中に包埋させた薬理学的に活性な成分(A)の制御放出を示す、加熱溶融押出成型した医薬投与剤型に関し、前記投与剤型は、少なくとも300Nの破壊強度を示し、長手方向の伸長、長手方向の伸長に対して直角の、横方向の伸長、前側、向かい合う後側、および前記前側と後側との間の周縁を含む楕円形の形状を有し、医薬投与剤型のコアが、加熱溶融押出成型により引き起こされた、投与剤型の長手方向の伸長に対して実質的に直角である形態学的方向性を有し、かつ/または薬理学的に活性な成分(A)の、前側および向かい合う後側を通しての面積当たりの放出が、周縁を通しての放出よりも速い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破壊強度(破砕に対する抵抗力)の増加を示す、加熱溶融押出成型した医薬投与剤型に関する。この医薬投与剤型の特徴は、その中に含有させる薬理学的に活性な化合物の改変された放出プロファイルである。
【背景技術】
【0002】
多くの薬学的に活性な化合物の場合、それらを、錠剤を利用して経口投与するのが好ましい。薬学的に活性な成分を錠剤中にどのように製剤化するかに応じて、その放出パターンを改変することができることが周知である。この点において、制御放出プロファイルもたらす錠剤は、極めて重要である。制御放出性錠剤を用いる場合、いかなる状況下でも、薬学的に活性な成分が、完全かつ瞬時に、無制御に放出すること(「用量ダンピング」)がないように注意しなければならない。これは通常、制御放出性錠剤、特に、抑制放出性錠剤のために使用する投与量が、非抑制放出性錠剤の場合よりもさらに多いからである。用量ダンピングは、活性成分およびその効力に応じて、重大な有害作用を、または死さえ引き起こす恐れがある。
【0003】
制御放出(例えば、抑制放出、遅延放出、徐放出、持続放出等)は、種々の概念、例として、医薬投与剤型を、制御放出性の膜を用いてコーティングすること、薬理学的に活性な化合物をマトリックス中に包埋すること、薬理学的に活性な化合物をイオン交換樹脂に結合させること、薬理学的に活性な化合物の複合体を形成させること等に基づくことができる。この文脈においては、例えば、W.A. Ritschel、Die Tablette, 2.、Auflage、Editio Cantor、Aulendorf、2002年(非特許文献1)を参照することができる。
【0004】
破壊強度(破砕に対する抵抗力)を増加させた医薬投与剤型が、最近になって報告されている。また、このタイプの投与剤型は、その中に含有させる薬理学的に活性な化合物の制御放出もある程度示すことができる。そのような医薬投与剤型の主要な利点は、従来の手段により細かく砕くこと、特に、微粉化すること、例として、乳鉢中で粉砕することまたはハンマーにより砕くことが、不可能であるか、または少なくとも実質的に妨げられることである。
【0005】
一方においては、破壊強度を増加させた医薬投与剤型は、その中に含有させる薬理学的に活性な化合物の薬物乱用を回避するのに有用である。多くの薬学的に活性な化合物は、適切に適用された場合には優れた活性を示すことに加えて、また、乱用の可能性を有する、すなわち、意図される作用以外の作用を引き起こすために、乱用者により使用される恐れもある。例えば、重度から非常に重度の疼痛と闘う際には高い活性を示すアヘン剤が、ナルコーシスまたは陶酔の状況を引き起こすために、乱用者により頻繁に使用される。乱用を可能にするためには、対応する医薬投与剤型、例として、錠剤またはカプセル剤を、乱用者が細かく砕き、例えば、乳鉢中で粉砕し、得られた粉末から、活性な化合物を、好ましくは水性の液体を使用して抽出し、得られた溶液を、場合により脱脂綿またはセルロースの詰め物を通してろ過した後に、非経口、特に、静脈内投与する。この種の投与の追加の現象は、不正な経口投与と比較して、活性な化合物のレベルをさらに加速させて増加させて、乱用者に所望の効果、すなわち、「興奮(kick)」または「急激な高揚感(rush)」をもたらすことである。また、この興奮は、粉末化した医薬投与剤型を、鼻から投与する、すなわち、嗅ぐ場合にも得られる。乱用の可能性を有する活性な化合物を含有する制御放出性医薬投与剤型は、不正に高い分量で経口摂取した場合であっても、乱用者が所望する興奮を引き起こさないことから、また、そのような医薬投与剤型も、乱用するために、細かく砕かれ、抽出される。しかし、破壊強度の増加を示す医薬投与剤型は、従来の手段によっては粉末化することができず、したがって、鼻から投与され得ず、それによって、薬物乱用を回避する。そのような不正使用できない投与剤型の文脈においては、例えば、WO2005/016313(特許文献1)、WO2005/016314(特許文献2)、WO2005/063214(特許文献3)、WO2005/102286(特許文献4)、WO2006/002883(特許文献5)、WO2006/002884(特許文献6)、WO2006/002886(特許文献7)およびWO2006/082097(特許文献8)を参照することができる。
【0006】
他方においては、破壊強度を増加させた医薬投与剤型は、その中に含有させる薬理学的に活性な化合物の(意図的でない)過量投与を回避するのに有用である。過量投与は、回避できなければ、微粉化により抑制作用を減少させることによって引き起こされるであろう。多くの患者、特に、高齢患者は頻繁に、固体の医薬投与剤型、例として、錠剤、ゼラチンカプセル剤等の服用に困難を有することが公知である。高齢患者は、固体の医薬投与剤型で喉を詰まらせ、時には、そのような医薬投与剤型を強く嫌うようになる。この問題に対抗するために、種々の装置が開発されており、それらの装置により、従来の固体の医薬投与剤型を、細かく砕くまたは微粉化することができる(「錠剤粉砕装置」)。そのような装置は、例えば、高齢者福祉施設の介護職員が使用する。次いで、医薬投与剤型は、例えば、錠剤の嚥下に関わる困難を避けて通るために、錠剤等ではなく、むしろ散剤として、介護を受ける人々に投与される。しかし、医薬投与剤型が徐放出性製剤である場合には、医薬投与剤型を、そのような装置を用いて細かく砕くことには問題がある。一般に、細かく砕くことにより、徐放出に関与する医薬投与剤型の内部構造の破壊が生じ、したがって、徐放出性作用がなくなる。したがって、投与後頻繁に、医薬投与剤型中に当初含有させた生理学的に活性な物質全てが、比較的短時間で放出し、それにより、物質のかなり非常に高い血漿濃度が、比較的短い時間枠内で唐突に達される。このように、当初は徐放出性であった製剤が即時放出性製剤になる。しかし、物質の生理学的活性に応じて、この変化は、相当な副作用を引き起こす場合があり、極端な場合には、患者の死にさえ至る恐れがある。しかし、破壊強度を増加させた医薬投与剤型は、錠剤粉砕装置により細かく砕くことができず、したがって、全体として嚥下しなければならず、それによって、任意の(意図的でない)過量投与が回避される。この文脈においては、例えば、WO2006/082099(特許文献9)をさらに参照することができる。
【0007】
制御放出性製剤の放出プロファイルは、多様な要因、例として、医薬投与剤型自体の特性、マトリックスの性質および含有量、放出媒体の性質、活性な化合物の性質および含有量、さらなる薬学的賦形剤の性質および含有量、ならびにこれらの要因の相互関係によって異なる。放出プロファイルの制御が、活性な化合物が包埋されているポリマーマトリックスに依存する場合、放出速度は、医薬投与剤型自体の特性、例えば、医薬投与剤型の幾何学的形状、製造方法、その中に含有させる添加剤および賦形剤等によって異なる。さらに、放出速度は、マトリックスポリマーの特性、例として、分子量、粘度、粒子特性、その他のポリマーとの相互作用、鎖の絡み合い、架橋結合の程度、モノマー単位の化学的性質、マトリックス材料と放出媒体との相互作用(例えば、膨潤およびゲル化)等によっても異なる。その上さらに、放出速度は、活性な化合物の特性、例えば、活性な化合物の用量、粒子サイズ、粒子の形態および放出媒体中での溶解性によっても異なり、また、種々の特性、例として、分子サイズ、分子量、イオン生成性、酸性度、立体障害、双極子の配置、親水性等の関数でもある。さらに、放出速度は、所与のマトリックス材料と所与の活性な化合物との個々の相互作用によっても異なる(Ning Wuら、Journal of Controlled Release 102 (2005) 569〜81頁(非特許文献2);V.S. Manthenaら、Am J Drug Deliv. 2004年、2(1) 43〜57頁(非特許文献3)を参照)。
【0008】
破壊強度の増加を示さない従来の医薬投与剤型の放出プロファイルは通常、特定の限度内で、通常、薬学的賦形剤、例として、マトリックス形成ポリマーの含有量および/または性質を変化させることによって調節することができる。
【0009】
場合によってはまた、体内における薬物の放出は、破壊強度の増加を示さない従来の投与剤型の、体積に対する表面積の比により制御することができることも報告されている。例えば、US5,427,798(特許文献10)は、ブプロピオン塩酸塩を含有し、50、100および150mgの薬物含有量の錠剤の場合、3:1〜25:1cm−1の、錠剤の体積に対する表面積を有するフィルムコーティング錠を開示している。同様に、US4,940,556(特許文献11)およびUS5,198,226(特許文献12)も、ジヒドロピリジンカルシウムチャネル遮断薬を含有し、0.85〜1.0の範囲の、面積半径の外周半径に対する比を有する回転楕円体を開示している。
【0010】
しかし、破壊強度の増加を示す医薬投与剤型に関しては、薬学的賦形剤の含有量、性質、および/または表面積の体積に対する比を変化させるとまた、機械的特性にも影響が及ぶ。これは、医薬投与剤型の破壊強度の増加は典型的には、医薬投与剤型の製造時に特定の方法により加工される特定のポリマーの存在に依存するからである。また、前記ポリマーは、薬理学的に活性な化合物を包埋するマトリックスとしても働くようである。その結果、医薬投与剤型の破壊強度に不可欠であるポリマーマトリックスは、制御放出マトリックスとしても同時に働き、したがって、ポリマーの含有量、性質および/または空間的な分布を変化させることにより、両方、すなわち、放出プロファイルの変化および医薬投与剤型の機械的特性の変化が引き起こされる。
【0011】
薬理学的に活性な化合物の用量、したがってまた、医薬投与剤型の総重量がかなり高い場合には、特定の問題が発生する。特に、破壊強度の増加を維持すべきである場合には、薬理学的に活性な化合物および薬学的賦形剤の含有量および性質によっては、ポリマーの抑制作用が非常に強力なので、医薬投与剤型を特定の投与計画、例えば、1日2回に適応させることができないことがある。
【0012】
一方においては、薬物の放出を加速させる目的で抑制性ポリマーの含有量を減少させると、医薬投与剤型の機械的特性に実質的に影響が及び、最悪の事態では、医薬投与剤型の特異的かつ独特の機械的特性(破壊強度)が完全に減少するであろう。さらに、マトリックスポリマーの含有量を特定の限度を上回って減少させると、その他の所望の特性、例として、保存安定性の悪化を、またはそれらの喪失さえも引き起こす恐れがある。芳しくない保存安定性の結果、例えば、長時間にわたる放出プロファイルの変化が生じる。
【0013】
他方においては、抑制性ポリマーの抑制作用を弱める目的で非抑制性の薬学的賦形剤(補助剤)を添加すると、投与剤型の総重量が増加するであろう。高用量の医薬投与剤型はいずれにしても、かなり高い総重量を有することから、総重量をさらに増加させることは、不都合であり、患者の服薬遵守(例えば、嚥下可能であること)を損なう恐れもあるであろう。
【0014】
さらに、例えば、経口投与剤型ための医薬製剤またはその製造様式が、臨床試験の間に、例えば、使用成分もしくは薬学的賦形剤の相対的な量に関して、または製造の間に使用する反応条件および反応物に関して改変を経る場合もあるであろう。頻繁に、そのような改変は、薬学的に活性な成分の放出プロファイルに少なくともある程度は影響を及ぼす。こうした影響は、特定の製剤について、最適化した放出プロファイルであって、承認が得られているプロファイルがすでに存在しており、そうしたプロファイルを、改変した製剤では再現することができない場合には、特に喜ばしくない。そのような場合には、臨床試験を、中断するかまたは最初から開始しなければならない。新しい薬物製剤を臨床試験に達するまで育て、その臨床試験を終わらせるのに必要となる莫大な出費を考えると、上記のシナリオが、むしろ不満足であることが本当に証明されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO2005/016313
【特許文献2】WO2005/016314
【特許文献3】WO2005/063214
【特許文献4】WO2005/102286
【特許文献5】WO2006/002883
【特許文献6】WO2006/002884
【特許文献7】WO2006/002886
【特許文献8】WO2006/082097
【特許文献9】WO2006/082099
【特許文献10】US5,427,798
【特許文献11】US4,940,556
【特許文献12】US5,198,226
【特許文献13】WO2004/043967
【特許文献14】WO2005/066183
【特許文献15】US−2003/0064099A1
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】W.A. Ritschel、Die Tablette, 2.、Auflage、Editio Cantor、Aulendorf、2002年
【非特許文献2】Ning Wuら、Journal of Controlled Release 102 (2005) 569〜81頁
【非特許文献3】V.S. Manthenaら、Am J Drug Deliv. 2004年、2(1) 43〜57頁
【非特許文献4】MM Crowleyら、Drug Dev Ind Pharm 2007年、33(9)、909〜26頁
【非特許文献5】MA Repkaら、Drug Dev Ind Pharm 2007年、33(10)、1043〜57頁
【非特許文献6】Eudragit(登録商標)Application Guidelines、10th edition、2007年7月、Roehm GmbH、Darmstadt
【非特許文献7】S.L. Dexheimer、Terahertz Spectroscopy: Principles and Applications (Optical Science and Engineering Series)、CRC; 1 edition 2007年
【非特許文献8】R.E. Milesら、Terahertz Frequency Detection and Identification of Materials and Objects (NATO Science for Peace and Security Series B: Physics and Biophysics)、Springer; 1 edition 2007年
【非特許文献9】Y.-S. Leeら、Principles of Terahertz Science and Technology (Lecture Notes in Physics)、Springer; 1 edition 2008年
【非特許文献10】K.H. Bauer、Lehrbuch der Pharmazeutischen Technologie、6th edition, WVG Stuttgart、1999年
【非特許文献11】欧州薬局方
【非特許文献12】ATC指標(ATC Index)(「Gelbe Liste」)(好ましい版:2007年版または2008年版)。
【非特許文献13】Willi Cawello (ed.) Parameters for Compartment-free Pharmacokinetics、Shaker Verlag Aachen (1999)
【非特許文献14】「Note for Guidance on the Investigation of Bioavailability and Bioequivalence」、EMEA、London、2001年7月26日 (CPMP/EWP/QWP/1401/98)
【非特許文献15】「Guidance for Industry - Bioavailability and Bioequivalence - Studies for Orally Administered Drug Products - General Considerations」、FDA、BP、Announced in the Federal Register: Volume 68、Number 53/2003年3月19日
【非特許文献16】「Guidance for Industry - Statistical Approaches to Establishing Bioequivalence」、FDA、BP、2001年1月
【非特許文献17】、「Pharmazeutische Biologie - Drogen und ihre Inhaltsstoffe」、Prof. Dr. Hildebert Wagner、2nd. revised edition、Gustav Fischer Verlag、Stuttgart-New York、1982年、82頁以下
【非特許文献18】「Pharmazeutische Biologie - Drogen und ihre Inhaltsstoffe」、Prof. Dr. Hildebert Wagner、2nd, revised edition、Gustav Fischer Verlag、Stuttgart、New York、1982年
【非特許文献19】W.A. Ritschel, Die Tablette、2. Auflage、Editio Cantor Verlag Aulendorf、2002年
【非特許文献20】H Liebermannら、Pharmaceutical dosage forms: Tablets、Vol. 2, Informa Healthcare; 2 edition、1990年
【非特許文献21】Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、Informa Healthcare; 1 edition
【非特許文献22】P.A. Proeschelら、J Dent Res、2002年、81(7)、464〜468頁
【非特許文献23】欧州薬局方5.0、2.9.8または6.0、2.09.08「Resistance to Crushing of Tablets」
【非特許文献24】米国薬局方
【非特許文献25】「Coated Pharmaceutical dosage forms - Fundamentals, Manufacturing Techniques, Biopharmaceutical Aspects, Test Methods and Raw Materials」、Kurt H. Bauer、K. Lehmann、Hermann P. Osterwald、Rothgang、Gerhart、1st edition、1998年、Medpharm Scientific Publishers
【非特許文献26】「Munsell Book of Color」、Munsell Color Company Baltimore、Maryland、USA、1966 edition
【非特許文献27】Handbuch der Kunststoff-Extrusionstechnik I (1989) 「Grundlagen」、Chapter 1.2 「Klassifizierung von Extrudern」、4〜6頁
【非特許文献28】D.A. Dean、Pharmaceutical Packaging Technology, TaylorおよびFrancis, 1st ed.
【非特許文献29】F.A. Paineら、Packaging Pharmaceutical and Healthcare Products、Springer、1st ed.
【非特許文献30】O.G. Piringerら、Plastic Packaging: Interactions with Food and Pharmaceuticals、Wiley-VCH、2nd ed
【非特許文献31】Ph Eur.2.9.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、不正使用できないことを減少させることもなく、薬学的賦形剤の性質または量を実質的に変化させることもなく、医薬投与剤型の服薬遵守を損なうこともなく、放出プロファイルを特定の限度内で変化させることができる、不正使用できない医薬投与剤型が求められている。
【0018】
本発明の目的は、先行技術の医薬投与剤型と比較して利点を有する医薬投与剤型を提供することである。
【0019】
この目的を、特許請求の範囲の主題により解決するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、ポリマーを含むマトリックス中に包埋させた薬理学的に活性な成分の制御放出を示す、加熱溶融押出成型した医薬投与剤型に関し、この投与剤型は、少なくとも300N、好ましくは、少なくとも500Nの破壊強度を示し、長手方向の伸長、長手方向の伸長に対して直角の、横方向の伸長、前側、向かい合う後側、および前記前側と後側との間の周縁を含む楕円形の形状を有し、
− 医薬投与剤型のコアが、加熱溶融押出成型により引き起こされた、投与剤型の長手方向の伸長に対して実質的に直角である形態学的方向性を有し、かつ/または
− 薬理学的に活性な成分の、前側および向かい合う後側を通しての放出が、周縁を通しての放出よりも速い。
【0021】
驚くべきことに、投与剤型の放出速度を、投与剤型が形成される押出成型品の形状を改変すること、特に、押出成型品の前面(切断表面)の、押出成型品の筒(円筒)に対する面積比を改変することによって改変することができることを見出すに至った。
【0022】
驚くべきことに、切断表面の面積を増加させると、放出速度が加速する。前記切断表面は、押出成型品の筒(円筒)よりも、薬理学的に活性な成分の速い放出を示すようである。したがって、押出成型品から医薬投与剤型をプレス成型する場合、押出成型品の前面を起源とする医薬投与剤型の表面領域は、押出成型品の筒(円筒)を起源とする表面領域よりも、速い放出を示すようである。この作用は、医薬投与剤型からの薬理学的に活性な成分の放出プロファイルを加速させるようにまたは減速させるようにのいずれかに調節するために、好都合に使用することができる。
【0023】
さらに、驚くべきことに、医薬投与剤型の機械的特性、特に、その破壊強度は、医薬投与剤型の本体内の押出成型方向の相対的な位置によって異なることも見出すに至った。したがって、医薬投与剤型の機械的特性は、押出成型方向を、投与剤型の本体内の適切な方向に向けることによって改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による医薬投与剤型の好ましい実施形態の概略図である。図1Aは側面図であり、図B〜Bは、異なる楕円形の形状を有する代替の投与剤型の横断面の上面図である。
【図2】破壊強度を増加させた、楕円形の加熱溶融押出成型した医薬投与剤型の従来の製造を模式的に示す図である。図2Aは、円状の横断面を有する押出成型されたストランドからの押出成型品の分離を示し、図2Bは、上部パンチおよび下部パンチが装備されている打錠ツールによる押出成型品からの投与剤型の成形を示し、図2Cは、得られた投与剤型を示し、図2Cは側面図であり、図2Cは横断面の上面図である。
【図3】破壊強度を増加させた、楕円形の加熱溶融押出成型した医薬投与剤型の考案の製造を模式的に示す図である。図3Aは、楕円形の横断面を有する押出成型されたストランドからの押出成型品の分離を示し、図3Bは、上部パンチおよび下部パンチが装備されている打錠ツールによる押出成型品からの投与剤型の成形を示し、図3Cは、得られた投与剤型を示し、図3Cは側面図であり、図3Cは横断面の上面図である。
【図4】2つの凹所を対向する側面上に有する、本発明による投与剤型の好ましい実施形態を模式的に示す図である。図4Aは、上面図および側面図を示し、また、凹所を囲む外周の曲率も示す。図4Bは、上面図および側面図を示し、また、投与剤型の本体に対する押出成型方向も示す。
【図5】三次元テラヘルツ測定の結果を示す図である。図5Aは、テラヘルツパルス画像法による測定の結果(押出成型ストランドの横断面の画像)を示す。図5Bは、テラヘルツパルス画像法による測定の結果(押出成型ストランドの縦断面の画像)を示す。
【図6】717mmの楕円形の錠剤に成形した例1の溶解プロファイルを示すグラフである。
【図7】717mmのH9形状の錠剤に成形した例1の溶解プロファイルを示すグラフである。
【図8】921mmの楕円形の錠剤に成形した例2の溶解プロファイルを示すグラフである。
【図9】921mmのH0形状の錠剤に成形した例2の溶解プロファイルを示すグラフである。
【図10】8.622.6mmのH1形状の錠剤に成形した例2の溶解プロファイルを示すグラフである。
【図11】例1の溶解:円形の押出成型品からのH9フォーマットと、楕円形の押出成型品からの楕円形フォーマットとの比較を示すグラフである。
【図12】例2の溶解:円形の押出成型品からのH0フォーマットと、楕円形の押出成型品からの楕円形フォーマットとの比較を示すグラフである。
【図13】例3の溶解:楕円形の粗押出成型品と、あらかじめ2回折り畳んである押出成型品からの錠剤との比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の態様は、ポリマー(C)を含むマトリックス中に包埋させた薬理学的に活性な成分(A)の制御放出を示す、加熱溶融押出成型した医薬投与剤型に関し、この投与剤型は、好ましくは、経口投与に適応し、長手方向の伸長、長手方向の伸長に対して直角の、横方向の伸長、前側、向かい合う後側、および前記前側と後側との間の周縁を含む楕円形の形状を有し、
− 医薬投与剤型のコアが、加熱溶融押出成型により引き起こされた、投与剤型の長手方向の伸長に対して実質的に直角である形態学的方向性を有し、かつ/または
− 薬理学的に活性な成分(A)の、前側および向かい合う後側を通しての面積当たりの放出が、周縁を通しての放出よりも速い。
【0026】
さらに、本発明による加熱溶融押出成型した医薬投与剤型の好ましい実施形態を、図1に模式的に示す。
【0027】
図1Aは、前側(2a)、後側(2b)、および前側(2a)と後側(2b)との間の周縁(3)を含む医薬投与剤型(1)の好ましい実施形態の透視図である。平面(4)が、医薬投与剤型(1)の本体内に横たわり、横方向の伸長(6)に対して直角である長手方向の伸長(5)を含む。この実施形態を、両凸楕円形の投与剤型とみなすことができる。
【0028】
図1B、1Bおよび1Bは、周縁(3)、長手方向の伸長(5)および横方向の伸長(6)を含む平面(4)の代替の好ましい実施形態の上面図である。図1Bに描写する実施形態によれば、周縁(3)は、長円の形状をとり、長手方向の伸長(5)が長半径であり、横方向の伸長(6)が短半径である。図1Bに描写する実施形態によれば、周縁(3)は、間に長方形を有する2つの半円の形状をとる。図1Bに描写する実施形態によれば、周縁(3)は、丸い角を有する長方形の形状をとる。
【0029】
従来の加熱溶融押出成型した楕円形の医薬投与剤型を製造する場合、薬理学的に活性な成分およびさらなる薬学的賦形剤を含む塊を、金型を通して加熱溶融押出成型する。従来、金型は、円状の形状を有し、円状の横断面を有する押出成型品(円柱)をもたらす。押出成型により、塊中の構成要素が一次元に若干方向付けられ、したがって、得られた押出成型品(押出成型されたストランド)は、形態学的方向性を押出成型方向に有する。形態学的方向性は、適切な解析方法により可視化することができる。
【0030】
次いで、前記押出成型品を、通常押出成型方向に対して実質的に直角の平面で、分離(小分け)、実質的には円柱に切断する。各円柱が、2つの対向する表面、および外周(円筒/筒)を有する。対向する表面は、押出成型品を円柱に分離する(例えば、切断する)過程で生成する。外周は、押出成型プロセスの過程で生成する(押出成型されたストランドの円筒/筒)。それに続いて、前記円柱を、楕円形の投与剤型に、例えば、打錠機によりプレス成型する。幾何学的な理由で、円柱を典型的には、円柱の縦軸がパンチの長手方向の伸長と平行するように、打錠ツール中に置く。
【0031】
押出成型品をプレス成型すると典型的には、投与剤型の外側の形状が変化する。したがって、投与剤型の形状は典型的には、押出成型品の形状とは異なり、押出成型品の形状は、製造プロセスの中間体とみなすことができる。
【0032】
本発明による医薬投与剤型を製造する場合には、加熱溶融押出成型は、好ましくは、楕円形の金型を通して実施して、押出成型品に楕円形の横断面をもたらす。したがって、分離(小分け)すると、2つの向かい合う楕円形の表面、例えば、切断表面を有する切片(押出成型品)が得られる。前記切片を、上部パンチおよび下部パンチを含む打錠ツール中に、楕円形の形状の対向する表面が前記上部および下部のパンチそれぞれに面するように置くと、投与剤型の前側および向かい合う後側は、切片の切断表面から作られ(を起源とし)、一方、投与剤型の周縁は、押出成型品の円筒/筒から作られる(を起源とする)。その結果、押出成型方向は、投与剤型の長手方向の伸長に対して実質的に直角となる。
【0033】
押出成型品から投与剤型をプレス成型すると、押出成型品中の材料の形態学的方向性が変化することを当業者は十分知っている。少なくとも押出成型品の外側の領域において、プレス成型において使用され、最終的な投与剤型の外側の形状を決定する金型/パンチをぴったり満たすために、プレス成型により材料の流れが引き起こされる。しかし、押出成型品のコアを形成する材料は、プレス成型の過程において動かないかまたはわずかに動くに過ぎず、したがって、コアは、その形態学的方向性を実質的に維持する。したがって、投与剤型のコアは、基準点または水準点として働いて、材料の形態学的方向性を、投与剤型の外側の寸法に対して定義する。
【0034】
本明細書の意図するところは、投与剤型のコアは、投与剤型の総体積の最大50%、投与剤型の総体積の、より好ましくは、最大40%、さらにより好ましくは、最大30%、その上より好ましくは、最大20%、特に、最大10%を有する中心体積要素を構成する。したがって、コアにおける材料の形態学的方向性が押出成型方向に対して実質的に直角であるかどうかを決める場合、適切なコア要素を、適切な解析方法、例として、テラヘルツ分光法、または電子顕微鏡法、走査電子顕微鏡法、電気力顕微鏡法(electric force microscopy)、NIR顕微鏡法のような高解像度画像法等により検討すべきである。代替の方法として、固体NMR、光電子分光法およびX線法が挙げられる。
【0035】
さらに、加熱溶融押出成型による従来の楕円形の投与剤型および考案の楕円形の投与剤型の調製の必須の差を、図2および3に模式的に示す。
【0036】
図2は、破壊強度を増加させた、楕円形の加熱溶融押出成型した医薬投与剤型の従来の製造を模式的に示す。
【0037】
図2Aは、押出成型されたストランド(7)、ならびに所望の長さおよび重量に分離、例えば、切断してある円柱状の押出成型品(8)を示す。押出成型方向を、円柱状の押出成型品(8)の筒(円筒)の水平線(9)および前表面のスポット(10)により示す。各スポット(10)は、水平線(9)の終点を表す。水平線(9)およびスポット(10)は、押出成型方向のマーカーとして例証の目的で示すに過ぎず、押出成型方向は、適切な方法により検出することができる。しかし実際には、水平線(9)もスポット(10)もない。押出成型されたストランド(7)および押出成型品(8)は、円状または楕円形の横断面を有する、すなわち、加熱溶融押出成型を、円状または楕円形の金型を通して実施している。
【0038】
図2Bは、上部パンチ(11a)および下部パンチ(11b)が装備されている打錠ツール中の押出成型品(8)を示す。押出成型品(8)を、打錠ツール中に、押出成型品の筒(円筒)が上部パンチ(11a)および下部パンチ(11b)に面するように置く。しかし、スポット(10)を有する押出成型品の前表面は、パンチのうちのいずれにも面しない。
【0039】
図2Cは、得られた従来の錠剤(1)を示し、図2Cは側面図であり、図2Cは横断面の上面図である。平面(4)は、医薬投与剤型(1)の本体内に横たわり、長手方向の伸長(5)を含む。投与剤型のコア(12)は、加熱溶融押出成型により引き起こされた形態学的方向性(水平線(9)により示す)を有し、形態学的方向性は、長手方向の伸長(5)と実質的に平行する。
【0040】
(比較のための)図2に対して、図3は、本発明による加熱溶融押出成型した医薬投与剤型の製造を模式的に示す。
【0041】
図3Aは、押出成型されたストランド(7)、ならびに所望の長さおよび重量に分離、例えば、切断してある楕円形かつ円柱状の押出成型品(8)を示す。押出成型方向を、円柱状の押出成型品(8)の筒(円筒)の水平線(9)および前表面のスポット(10)により示す。各スポット(10)は、水平線(9)の終点を表す。水平線(9)およびスポット(10)は、押出成型方向のマーカーとして例証の目的で示すに過ぎず、押出成型方向は、適切な方法により検出することができる。しかし実際には、水平線(9)もスポット(10)もない。押出成型されたストランド(7)および押出成型品(8)は、楕円形の横断面を有する、すなわち、加熱溶融押出成型を、楕円形の金型を通して実施している。
【0042】
図3Bは、上部パンチ(11a)および下部パンチ(11b)が装備されている打錠ツール中の押出成型品(8)を示す。押出成型品(8)を、打錠ツール中に、スポット(10)を有する楕円形の形状の押出成型品の前表面が上部パンチ(11a)および下部パンチ(11b)に面するように置く。しかし、水平線(9)を有する押出成型品の筒(円筒)は、パンチのうちのいずれにも面しない。
【0043】
図3Cは、得られた本発明による錠剤(1)を示し、図3Cは側面図であり、図3Cは横断面の上面図である。平面(4)は、医薬投与剤型(1)の本体内に横たわり、長手方向の伸長(5)を含む。投与剤型のコア(12)は、加熱溶融押出成型により引き起こされた形態学的方向性(スポット(10)により示す)を有し、形態学的方向性は、長手方向の伸長(5)に対して実質的に直角(垂直)である。
【0044】
本発明の利点は、H形状の錠剤を製造する場合に、特に明らかになる。H形状の錠剤は、H型プランジャー(H型パンチ)により形成され、図4に模式的に示す。両凸の錠剤等の従来の投与剤型と比較して、H形状の錠剤は、破壊強度試験において、異なる破壊挙動を示す。
【0045】
さらにまた、円形の錠剤と比較して、押出成型品の方向性の差は、本発明による投与剤型の利点にも寄与することができるであろう。円形の形状を打剤する間に、圧縮力が典型的には、パンチにより、押出成型品のストランドの横断面上、すなわち、その切断表面上に加えられる。楕円形の形状を打錠する間には、圧縮力は典型的には、押出成型品のストランドの横断面に直交して、すなわち、その筒または円筒上に加えられる。
【0046】
本発明による医薬投与剤型は、加熱溶融押出成型される。
【0047】
加熱溶融押出成型した投与剤型は、活性成分、機能性の賦形剤、および加工助剤の複合混合物である。加熱溶融押出成型は、伝統的な医薬加工技法を上回るいくつかの利点をもたらし、それらの利点として、溶媒が存在しないこと、加工のステップが少ないこと、操作が連続的であること、ならびに固体の分散剤の形成および生物学的利用率の改善が可能であることが挙げられる(MM Crowleyら、Drug Dev Ind Pharm 2007年、33(9)、909〜26頁(非特許文献4);およびMA Repkaら、Drug Dev Ind Pharm 2007年、33(10)、1043〜57頁(非特許文献5)を参照)。
【0048】
加熱溶融押出成型した投与剤型を、押出成型プロセスにより引き起こされた形態学的方向性に起因して、従来の投与剤型、例えば、その他の熱成型した投与剤型と区別することができる。いずれの科学的理論にも縛られる意図はないが、加熱溶融した塊を、押出成型の金型の方向に一次元に加工し、金型を通して最終的に絞ることによって、分子レベルおよび分子を超えたレベルそれぞれにおける形態学的方向性をもたらすプロセスが引き起され、形態学的方向性は、最終的な投与剤型において、すなわち、押出成型品をさらに成形して、最終的な投与剤型をもたらした後でさえも依然として検出することができると考えられる。
【0049】
加熱溶融押出成型の詳細および好ましい実施形態を、本発明による医薬投与剤型を調製するための方法に関連させて記載する。
【0050】
本発明による医薬投与剤型は、楕円形の形状を有する。
【0051】
本明細書の目的では、用語「楕円形」は、好ましくは、長さが高さおよび幅それぞれよりも大きい任意の三次元の本体を指す。本発明による医薬投与剤型は、長手方向の伸長、および長手方向の伸長に対して直角の、横方向の伸長を含む。
【0052】
本発明による医薬投与剤型は、横断面領域、好ましくは、投与剤型の伸長の主要な領域を含み、この領域は、相互に直角(垂直)である、長手方向の伸長と横方向の伸長とを含む。
【0053】
伸長の主要な領域は、好ましくは、医薬投与剤型の最も大きな横断面領域である。
【0054】
長手方向の伸長は、好ましくは、投与剤型の最大の伸長、好ましくは、投与剤型の伸長の主要な領域内の最大の、端から端までの距離である。
【0055】
横方向の伸長は、好ましくは、長手方向の伸長に対して直角の(垂直な)、好ましくは、投与剤型の伸長の主要な領域内の、投与剤型の最大の伸長である。
【0056】
また、投与剤型の楕円形の形状は、長手方向の伸長の横方向の伸長に対する相対的な長さの比として表すこともできる。典型的には、長手方向の伸長は、横方向の伸長よりも長い。
【0057】
好ましくは、長手方向の伸長と横方向の伸長の相対的な長さの比は、少なくとも1.1:1、少なくとも1.2:1、少なくとも1.3:1、少なくとも1.4:1、または少なくとも1.5:1;より好ましくは、少なくとも1.6:1、少なくとも1.7:1、少なくとも1.8:1、少なくとも1.9:1、または少なくとも2.0:1;さらにより好ましくは、少なくとも2.1:1、少なくとも2.2:1、少なくとも2.3:1、少なくとも2.4:1、または少なくとも2.5:1;その上より好ましくは、少なくとも2.6:1、最も好ましくは、少なくとも2.7:1、特に、少なくとも2.8:1である。特に好ましい実施形態では、長手方向の伸長の横方向の伸長に対する相対的な長さの比は、2.6±0.2:1、2.8±0.2:1、または3.0±0.2:1である。
【0058】
好ましくは、本発明による医薬投与剤型は、一体型のコアを含む。この点に関して、一体型は、接合部または継ぎ目を有さない材料から形成または構成され、極めて大きな、分化されていない、強固な全体を構成すると理解されたい。投与剤型が、コーティングを含まない場合、投与剤型の全体が、好ましくは、一体型である。投与剤型が、フィルムコーティングされている場合、好ましくは、コアのみが一体型である。
【0059】
本発明による医薬投与剤型は、前側、向かい合う後側、および前記前側と後側との間の周縁を含む。
【0060】
典型的には、本発明による医薬投与剤型は、錠剤の剤型をとる。医薬投与剤型は、好ましくは、フィルムの剤型はとらない。
【0061】
本発明による医薬投与剤型は、種々の形状をとることができる。上面から眺めると、医薬投与剤型の形状は、任意の楕円形の形状、例として、実質的に長円、長方形等であり得る。好ましくは、側面から眺めると、医薬投与剤型の形状は、実質的に平らな凸の、両凸の、小平面を有する平らな、小平面を有さない平らな、環状の形状等であり得る。
【0062】
特に好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型を、凹所または空洞を少なくとも1つの側面上に、好ましくは、2つの凹所または2つの空洞を、2つの側面、好ましくは、対向する側面上に有する本体として記載することができる。あるいは、前記空洞および凹所をそれぞれ、隆起、くぼみ、谷、へこみ、陥没、向斜、深み等とみなすことができる。
【0063】
図4は、2つの凹所(13)を対向する側面上に有する、そのような本発明による投与剤型の好ましい実施形態を模式的に示す。図4Aは、上面図および側面図を示し、また、凹所(13)を囲む外周(14)の曲率も示す。図4Bは、上面図および側面図を示し、また、投与剤型の本体に対する押出成型方向、すなわち、水平線(9)およびスポット(10)も示す。
【0064】
図4に描写する投与剤型の横断面領域が、Hの形状をとることから、本明細書の目的ではまた、この形状の投与剤型または錠剤は、「H形状」であるとも呼ぶ。区別する目的で、好ましい従来の楕円形の投与剤型は、「両凸」であると呼ぶ。
【0065】
また、図4に描写する形状に少なくとも関連があるまたは類似する一般的な投与剤型の形状を、縦軸および2つの向かい合う長手の端、縦軸に対して垂直な横軸および2つの向かい合う横の端、前側、向かい合う後側、ならびに前記前側と後側との間の周縁を含み、前側および/または後側が基礎領域を含み、前側および/または後側が、前記基礎領域を越えて伸長する少なくとも1つの隆起を含み、前記少なくとも1つの隆起が、少なくとも一方もしくは両方の長手の端のセクションにおよび/もしくはそこに隣接して、ならびに/または少なくとも一方もしくは両方の横の端のセクションにおよび/もしくはそこに隣接して、ならびに/または両方の長手の端と両方の横の端との間に存在すると記載することもできる。投与剤型の前側および/または後側、特に、前側の基礎領域および/または後側の基礎領域は、少なくとも1つのくぼみをさらに含むことができる。
【0066】
本発明の投与剤型は、その横軸よりも実質的に長い縦軸を有するので、楕円形の形状を示す。縦軸は典型的には、両方の対向する長手の端の間の投与剤型の中央部分を通って、1つの横の端から向かい合う横の端まで、特に、その長さが最大になるように伸長している。横軸は典型的には、1つの長手の端から向かい合う長手の端まで、特に、その長さが最大になるように伸長している。横軸は、縦軸に対して垂直に方向付けられる。
【0067】
本発明の投与剤型の前側および/または後側の基礎領域は、必ずしも平らである必要はないが、一実施形態では、変則的または規則的な三次元パターンを示すことがある。しかし、基礎領域はいずれも、隆起またはくぼみの寸法に対して顕著な程度で伸長することはない。
【0068】
本発明の投与剤型の一実施形態の前の基礎領域と後ろの基礎領域との間の平均距離は通常、その横軸の長さよりも短い。最も短い平均距離を有する、投与剤型の向かい合う側面は通常、前の基礎領域および後ろの基礎領域を含む。
【0069】
別の好ましい実施形態によれば、前側および後側がそれぞれ、少なくとも1つの隆起を、両方の長手の端のセクションおよび/もしくはそこに隣接するセクションに少なくとも沿って、かつ/または両方の横の端のセクションおよび/もしくはそこに隣接するセクションに少なくとも沿って含む投与剤型を提供する。この点においては、特定の場合には、前記前側および前記後側が、少なくとも本質的に連続的な隆起を、両方の向かい合う長手の端の少なくとも3分の2においておよび/もしくはそこに隣接して、かつ/または両方の向かい合う横の端の少なくとも3分の2においておよび/もしくはそこに隣接して含むことがさらにより好ましい。
【0070】
隆起は、任意の幾何学的横断面を有し得、例えば、丸い横断面であってもよく、または長方形、三角形もしくは正方形の横断面を有してもよい。隆起は、好ましくは、投与剤型の幅の半分未満、より好ましくは、3分の1未満である幅を有する。隆起の長さは、大いに変化させてよい。個々の隆起の全体的な長さは、隆起の場所に応じて、長手の端または横の端の長さの少なくとも2分の1であることが好ましい。典型的には、隆起の全体的な長さは、その幅よりもはるかに長く、例えば、隆起の幅の数倍、例として、特に、長手方向に方向付ける場合には、その幅の2、3、4、5もしくは6倍超、または特に、横方向に方向付ける場合には、その幅の2、3または4倍超である。また、本発明が意味する隆起は、一連の隣接する隆起の部分も含むものとする。これらの隆起の部分は、上から眺めると、例えば、円、卵形、長方形、正方形、三角形もしくは任意のその他の多角形の形の外周の形を有してもよく、またはこれらの形に近い形を有してもよく、または変則的な形さえ有してもよい。
【0071】
長手の端および/または横の端に位置する隆起は通常、投与剤型の周縁から、顕著な移行帯域または移行段階なしで、すなわち、「ランド(land)」なしで通り過ぎる。そのような実施形態では、縁の部分から隆起の部分への平滑な移行があり、したがって、縁の外側表面と隆起とが、少なくともあるセクションにわたり連続的な表面を形成する。それとは対照的に、長手の端に隣接してまたは横の端に隣接して位置する隆起は、投与剤型の周縁に直接はつながらないが、基礎領域の平面の縁から、基礎領域の一部であると考えることができる部分、特に、小さな部分により分離している。前記小さな部分は、投与剤型技術の分野では、「ランド」として公知である。この小さな領域は通常、隆起自体の幅の平均よりも短い幅を有する。好ましい実施形態では、ランドは、約0.05mm〜約0.5mmの範囲に及び、例えば、約0.1mmである。
【0072】
特に適切な実施形態では、投与剤型の前側および後側の両方の、両方の長手の端および/または両方の横の端において隆起を有する本発明の投与剤型を提供し、これらの隆起が、長手の端および/または横の端の長さの少なくとも2分の1にわたり、より好ましくは、3分の2にわたり、さらにより好ましくは、長手の端および/または横の端の長さ全体にわたり伸長する。別の好ましい実施形態では、隆起は、前側および/または後側の基礎領域、好ましくは、前側および後側を、それぞれの長手の端および横の端においておよび/またはそこに隣接して連続的に囲む。放出プロファイルの改善の観点からの最も望ましい結果は、例えば、隆起を、投与剤型の両方の側面の両方の長手の端に有する本発明の投与剤型を用いて得ることができる。これらの投与剤型の横断面は、H形状を有するまたはH形状に近い形状を有すると記載することができる。表現「H形状」を使用することによって、向かい合う、特に、ある程度平らな、基礎領域を有する投与剤型本体に、対向する隆起を、投与剤型本体の両方の側面上の長手の端において提供することを示すに過ぎないものとする。例えば、1つのH形状の実施形態では、隆起は、向かい合う長手の端に沿った隆起間の横方向の距離と比較して、それらのそれぞれの基礎領域を越えて、ごくわずかに、例えば、最大約1または2mm突き出すことができるに過ぎない。
【0073】
1つの好ましい実施形態では、本発明の投与剤型は、少なくとも1つの隆起を、前側の両方の向かい合う長手の端の主要な部分においてまたはそこに隣接して、特に、そこに隣接して、特に、長手の端の3分の2に少なくとも沿って含む。別の好ましい実施形態では、本発明の投与剤型は、少なくとも1つの隆起を、投与剤型の前側および後側の両方の、両方の向かい合う長手の端の主要な部分においてまたはそこに隣接して、特に、そこに隣接して、特に、長手の端の3分の2に少なくとも沿って含む。別の好ましい実施形態では、本発明の投与剤型は、外周の隆起を、前記投与剤型の前側の外周の端においてまたはそこに隣接して、特に、そこに隣接して含む。別の好ましい実施形態では、本発明の投与剤型は、外周の隆起を、前記投与剤型の前側および後側の両方の外周の端においてまたはそこに隣接して、特に、そこに隣接して含む。
【0074】
本発明の投与剤型の別の適切な実施形態によれば、一方または両方の長手の端が、それらの長さの少なくとも主要な部分にわたり、本質的に真直ぐであり、かつ/または一方または両方の横の端が、それらの長さの主要な部分にわたり、曲がっており、特に、本質的に円状の弧の形で曲がっているものとする。もちろんまた、長手の端が、任意のその他の変則的または規則的な形状を示す、例えば、少なくともあるセクションにわたり波様の端の部分を有することも可能である。また、横の端が、三角形の形状または任意のその他の多角形の形状を示すことも可能である。一般に、長手の端および横の端の両方により、投与剤型の前側および後側の外周が形成される。
【0075】
ほとんどの適用例の場合、投与剤型の長手の長さ、すなわち、縦軸の長さが、30mmを上回らなければ十分である。
【0076】
別の実施形態によれば、本発明の投与剤型は、好ましくは、少なくとも約1mmの、特に、約9mm以下の、より特定すると、約1mm〜約7mmの範囲に及ぶ、またはより特定すると、約2mm〜約6mmの範囲に及ぶ、前側および後側の基礎領域にわたる厚さの平均を有する。
【0077】
本発明の投与剤型の一実施形態によれば、隆起は、前側の基礎領域および/または後側の基礎領域から、約0.5mm〜約2mm、特に、約0.5mm〜約1mmの平均で垂直に伸長する。
【0078】
本発明の投与剤型は、好ましくは、約5mm〜約30mmの範囲、特に、約15mm〜約25mmの範囲、より特定すると、約17mm〜約23mm、さらにより特定すると、約21mmの長手方向の長さを有し;約5mm〜約15mmの範囲、特に、約7mm〜約12mmの範囲、より特定すると、約7mm〜約10mm、さらにより特定すると、7mm、9mmまたは10mmの幅を有し;約1mm〜約6mmの範囲、特に、約1.5mm〜約4mmの範囲、さらにより特定すると、2mm〜約4mm、その上さらに特定すると、約2.5mm〜約3.5mmの基礎領域にわたる厚さを有する。
【0079】
上記に示したように、本発明の投与剤型の前側および/または後側、特に、前側の基礎領域および/または後側の基礎領域は、一実施形態では、少なくとも1つのくぼみをさらに含むことができる。見出されるに至ったように、これにより一般に、放出プロファイルの制御をさらに改善することが可能になる。くぼみは一般に、一実施形態では、投与剤型の表面全体中に備えたまたは包埋させたへこんだ空間を表す。例えば、前側、後側、特に、前側および/もしくは後側の基礎領域、縁、ならびに/または少なくとも1つの隆起に、少なくとも1つのくぼみを備えることができる。
【0080】
くぼみは、上から眺めると、任意の変則的または規則的な形状、例えば、正方形、長方形、三角形、卵形または円の形を有し得る。一実施形態では、くぼみは、円柱、立方体、直平行六面体または半球体の形をとることができる、すなわち、くぼみを形成する壁と開口部とによって、円柱、立方体、直平行六面体または半球体の形に近い形が表現される。上から眺めると、くぼみの輪郭の形状は、本質的に同じ幅および長さの寸法を有する。また、上から眺めると、くぼみの輪郭の形状は、幅の寸法よりも長い長さの寸法を有することも可能であり、例えば、長さの寸法が、幅の寸法の少なくとも2、3または4倍である。したがって、上から眺めると、輪郭の形状は、むしろ細長く、例えば、長方形であってもよく、規則的な輪郭の形、例えば、真直ぐ、波様もしくはジグザグであっても、またはむしろ変則的であってもよい。別の実施形態では、多数のくぼみを、例えば、前側および/または後側上に形成することができる。多くの適用例の場合、上から眺めると、くぼみの輪郭の形状が、例えば、円状、正方形様または若干卵形もしくは若干長方形の形状に見出すことができるような、その幅の寸法と本質的に同一である長さの寸法を有すれば十分であることを見出すに至った。くぼみの前記幅の寸法は、通常、横軸と平行するように決定され、通常、投与剤型の横の長さの2分の1未満、特に、投与剤型の横の長さの3分の1未満である。一実施形態では、幅の寸法は、くぼみの深さと本質的に同一であるか、またくぼみの深さの2または3倍以下である。くぼみの長さの寸法は、通常、縦軸と平行するように決定され、通常、投与剤型の長手の長さの4分3以下の長さ、特に、投与剤型の長手の長さの2分の1の以下の長さ、好ましくは、投与剤型の長手の長さの3分の1以下の長さである。投与剤型中の穴は、本発明が意味するくぼみではない。前記くぼみの輪郭の形状および深さは、所望の放出プロファイルに応じて変化させることができる。通常、取扱い時に投与剤型を通る穴が形成されるのを防止するために、これらのくぼみの深さが投与剤型の厚さに近づき過ぎないように注意を払うべきである。好ましくは、くぼみは、本発明の投与剤型の厚さの半分を超えない深さを有する。ほとんどの適用例の場合、前記くぼみの最大の深さが、本発明の投与剤型の厚さの3分の1を超過しなければすでに十分であることが多い。本発明の投与剤型の厚さの平均は一般に、投与剤型の前側と後側との間、または好ましくは、前側の基礎領域と後側の基礎領域との間の距離として決定する。
【0081】
前側および後側という表現を使用することによって、本発明の投与剤型が、2つの向かい合う側面を有し、側面のそれぞれが、隆起および/またはくぼみを備えることができることを示すものとする。その結果、前側および後側がどちらであるかを選択することは、むしろ恣意的である。したがってまた、前側および後側という表現をそれぞれ、第1の側面および向かい合う第2の側面で置き換えることもできるであろう。
【0082】
本発明の一実施形態では、前側および/または後側、特に、前側の、特に、本質的に平らな基礎領域および/または後側の、特に、本質的に平らな基礎領域が、少なくとも1つの隆起に加えて、少なくとも1つのくぼみを、特に、向かい合う長手および/または横の隆起間に含む投与剤型を提供する。
【0083】
本発明の一実施形態では、前側および後側の両方が、少なくとも1つのくぼみを含むものとする。
【0084】
本発明の投与剤型の前側および後側上のくぼみは、少なくとも1回、少なくとも部分的に分かれていて(off−set)もよく、または少なくとも1回、合同な様式で位置していてもよい。1つの好ましい実施形態では、全ての前側のくぼみおよび全ての後側上のくぼみが、少なくとも部分的に分かれているかまたは合同な様式で位置している。
【0085】
くぼみは通常、本発明の投与剤型の前側および/または後側の基本領域中に位置する。例えば、そのようなくぼみのうちの2つ以上を、相互に隣接させて、例えば、前側および/または後側の長手の端間に位置する列として設けることが可能である。くぼみは、好ましくは、本発明の投与剤型の前側および/もしくは後側の長手の端におけるまたはそこに隣接する、向かい合う、長手に伸長する隆起間に位置する。
【0086】
1つの好ましい実施形態では、本発明の投与剤型、特に、その楕円形の形は、少なくとも1つの隆起を、前側の両方の長手の端の主要な部分においてまたはそこに隣接して、特に、そこに隣接して、特に、長手の端の3分の2に少なくとも沿って含み、少なくとも1つのくぼみを、特に、向かい合う長手の端に沿った隆起間に含む。
【0087】
別の好ましい実施形態では、本発明の投与剤型、特に、その楕円形の形は、少なくとも1つの隆起を、投与剤型の前側および後側の両方の、両方の向かい合う長手の端の主要な部分においてまたはそこに隣接して、特に、そこに隣接して、特に、長手の端の3分の2に少なくとも沿って含み、少なくとも1つのくぼみを、投与剤型の前側および/または後側上に、特に、前側の基礎領域および/または後側の基礎領域上に、特に、前側および/または後側それぞれの上の向かい合う長手の端に沿って位置する隆起間に含む。別の好ましい実施形態では、本発明の投与剤型、特に、その楕円形の形は、外周の隆起を、前記投与剤型の前側および/または後側の外周の端においてまたはそこに隣接して、特に、そこに隣接して含み、少なくとも1つのくぼみを、前側および/または後側上に、特に、前側および/または後側上の外周の隆起により囲まれる基礎領域上に含む。別の好ましい実施形態では、本発明の投与剤型、特に、その楕円形の形は、外周の隆起を、前記投与剤型の前側および後側の両方の外周の端においてまたはそこに隣接して、特に、そこに隣接して含み、少なくとも1つのくぼみを、前側および後側上に、特に、前側の外周の隆起により囲まれる基礎領域上および後側の外周の隆起により囲まれる基礎領域上に含む。
【0088】
直交座標空間において、図4に模式的に示す医薬投与剤型の主要な寸法を、a、bおよびc、ただし、a=a+a+a、b=b+b+b、およびc=c+c+cと定義することができる。図4に描写する医薬投与剤型の好ましい相対的な寸法D1〜D6を、a、bおよびcの相対的な関係として定義することができる。a、aおよびa;b、bおよびb;ならびにc、cおよびcはそれぞれ、
D1:c>a≧b;c>a>b;
D2:c>1.5a;c>2a;c>2.5a;c>3a;
D3:a>a≒a;a>1.1a≒1.1a;a>1.2a≒1.2a;a>1.3a≒1.3a
D4:b≧b≒b;b≧1.1b≒1.1b;b≧1.2b≒1.2b;b≧1.3b≒1.3b
D5:b≦b≒b;b≦0.9b≒0.9b;b≦0.8b≒0.8b;b≦0.7b≒0.7b;および/または
D6:c>c≒c;c>1.1c≒1.1c;c>1.2c≒1.2c;c>1.3c≒1.3c
である。
【0089】
ここで、図4に描写する医薬投与剤型の絶対的な寸法に関する好ましい実施形態D7〜D18を、以下の表に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
ここで、図4に描写する医薬投与剤型の絶対的な寸法に関する好ましい実施形態D19〜D30を、以下の表に示す。
【0092】
【表2】

【0093】
医薬投与剤型は、好ましくは、経口投与に適応する、すなわち、嚥下可能であるべきである。したがって、明らかに有害である不可解な幾何学的な形は、本発明による医薬投与剤型とはみなし得ない。
【0094】
好ましい実施形態によれば、医薬投与剤型を、特定の縦横比により特徴付ける。本明細書の目的では、縦横比を、投与剤型の主要な方向の伸長の、前記主要な方向の伸長に対して直角の医薬投与剤型の最大の伸長の比、例えば、最大の長さの、最大の高さに対する比(および最大の長さの、最大の幅に対する比)と定義する。
【0095】
好ましくは、前記縦横比は、2.4±1.3:1、より好ましくは、2.4±1.0:1、さらにより好ましくは、2.4±0.8:1、その上より好ましくは、2.4±0.6:1、最も好ましくは、2.4±0.4:1、特に、2.4±0.2:1の範囲に収まる。
【0096】
好ましい実施形態によれば、医薬投与剤型を、特定の長さ対高さ対幅の比により特徴付ける。ただし、長さ>高さ≧幅である。本明細書の目的では、この実施形態においては、長さは、投与剤型の長手方向の伸長に対応し、高さは、長さに対して直角の医薬投与剤型の最大の伸長に対応し、幅は、長さに対して直角かつ幅に対して直角の横方向の伸長に対応する(直交座標空間)。好ましくは、長さ対高さ対幅の比は、4.7±2.0:2.0±1.0:1、より好ましくは、4.7±1.6:2.0±0.8:1、さらにより好ましくは、4.7±1.2:2.0±0.6:1、その上より好ましくは、4.7±0.8:2.0±0.4:1、最も好ましくは、4.7±0.6:2.0±0.3:1、特に、4.7±0.4:2.0±0.2:1の範囲に収まる。
【0097】
好ましくは、医薬投与剤型の表面の一部は凸である、すなわち、曲がり出ているかまたは外側に隆起しており、その表面の別の部分は凹である、すなわち、曲がり入っているかまたは内側にへこんでいる。本明細書の目的では、曲率半径は、重要な意味をもたない。
【0098】
好ましくは、医薬投与剤型の表面全体を、凹部分、凸部分および平面部分に分けることができる。典型的には、凹部分、凸部分および平面部分の和が、投与剤型の表面全体に対応する。しかし、少なくとも理論的には、所与の部分が、同時に凸かつ凹であり得る(鞍)。これらの状況下では、凹部分、凸部分および平面部分の和が、投与剤型の表面全体を上回る。
【0099】
好ましい実施形態では、投与剤型の表面の凸部分は、凹部分、凸部分および平面部分の和に対して、最大95%、より好ましくは、最大90%または最大85%、さらにより好ましくは、最大80%または最大75%、その上より好ましくは、最大70%または最大65%、最も好ましくは、最大60%または最大55%、特に、最大50%または最大45%である。
【0100】
別の好ましい実施形態では、投与剤型の表面の凹部分は、凹部分、凸部分および平面部分の和に対して、少なくとも5%、より好ましくは、少なくとも10%または少なくとも15%、さらにより好ましくは、少なくとも20%または少なくとも25%、その上より好ましくは、少なくとも30%または少なくとも35%、最も好ましくは、少なくとも40%または少なくとも45%、特に、少なくとも50%または少なくとも55%である。
【0101】
本発明による医薬投与剤型の好ましい実施形態では、投与剤型の伸長の主要な領域に対して直角の投与剤型の最大の伸長が、伸長の前記主要な領域と平行する投与剤型の塊の中心から隔たっている。本明細書の目的では、投与剤型の伸長の主要な領域は、好ましくは、投与剤型の本体の切断部に沿って備えることができる最も大きな平原領域である。好ましくは、投与剤型の伸長の主要な領域に対して直角の、投与剤型の最大の伸長から、投与剤型の塊の中心までの最も短い距離は、少なくとも0.5mm、より好ましくは、少なくとも1.0mm、さらにより好ましくは、少なくとも1.5mm、その上より好ましくは、少なくとも2.0mm、最も好ましくは、少なくとも2.5mm、特に、少なくとも3.0mmである。
【0102】
好ましい実施形態では、長手方向の伸長に対して直角であり、投与剤型の塊の中心を含有する医薬投与剤型の横断面領域は、その領域の少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも60%、特に、少なくとも75%が、塊の中心から、少なくとも0.2mm、少なくとも0.3mm、少なくとも0.4mmまたは少なくとも0.5mm、より好ましくは、少なくとも0.6mm、少なくとも0.7mm、少なくとも0.8mmまたは少なくとも0.9mm、さらにより好ましくは、少なくとも1.0mm、少なくとも1.1mm、少なくとも1.2mmまたは少なくとも1.3mm、その上より好ましくは、少なくとも1.4mm、少なくとも1.5mm、少なくとも1.6mmまたは少なくとも1.7mm、最も好ましくは、少なくとも1.8mm、少なくとも1.9mm、少なくとも2.0mmまたは少なくとも2.1mm、特に、少なくとも2.2mm、少なくとも2.3mm、少なくとも2.4mmまたは少なくとも2.5mm隔たっているような形状を有する。好ましくは、前記横断面領域は、塊の中心を含有する。
【0103】
本発明による医薬投与剤型の好ましい実施形態では、投与剤型内のありとあらゆる幾何学的な点の、投与剤型の表面までの最も短い距離は、最大10mm、最大9mm、最大8mmまたは最大7.5mm;より好ましくは、最大7.0mm、最大6.5mmまたは最大6.0mm;さらにより好ましくは、最大5.8mm、最大5.6mm、最大5.4mm、最大5.2mmまたは最大5.0mm;その上より好ましくは、最大4.8mm、最大4.6mm、最大4.4mm、最大4.2mmまたは最大4.0mm;その上より好ましくは、最大3.8mm、最大3.6mm、最大3.4mm、最大3.2mmまたは最大3.0mm;最も好ましくは、最大2.8mm、最大2.6mm、最大2.4mm、最大2.2mmまたは最大2.0mm;特に、最大1.8mm、最大1.6mm、最大1.4mm、最大1.2mmまたは最大1.0mmである。
【0104】
好ましい実施形態では、医薬投与剤型の塊の中心は、投与剤型の伸長の主要な領域内に横たわる。好ましくは、医薬投与剤型は、その伸長の主要な領域について対称である。
【0105】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型の表面S[mm]の重量W[mg]に対する比S/Wは、少なくとも0.50mm/mgである。好ましくは、S/Wは、少なくとも0.51、少なくとも0.52、少なくとも0.53、少なくとも0.54または少なくとも0.55;より好ましくは、少なくとも0.56、少なくとも0.57、少なくとも0.58、少なくとも0.59または少なくとも0.60;さらにより好ましくは、少なくとも0.61、少なくとも0.62、少なくとも0.63、少なくとも0.64または少なくとも0.65;その上より好ましくは、少なくとも0.66、少なくとも0.67、少なくとも0.68、少なくとも0.69または少なくとも0.70;最も好ましくは、少なくとも0.705、少なくとも0.710、少なくとも0.715、少なくとも0.720、少なくとも0.725、少なくとも0.730、少なくとも0.735、少なくとも0.740、少なくとも0.745または少なくとも0.750;特に、少なくとも0.755、少なくとも0.760、少なくとも0.765、少なくとも0.770、少なくとも0.775、少なくとも0.780、少なくとも0.785、少なくとも0.790、少なくとも0.795または少なくとも0.80mm/mgである。別の好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型の表面S[mm]の重量W[mg]に対する比S/Wは、少なくとも0.80mm/mgである。好ましくは、S/Wは、少なくとも0.81、少なくとも0.82、少なくとも0.83、少なくとも0.84または少なくとも0.85;より好ましくは、少なくとも0.86、少なくとも0.87、少なくとも0.88、少なくとも0.89または少なくとも0.90;さらにより好ましくは、少なくとも0.91、少なくとも0.92、少なくとも0.93、少なくとも0.94または少なくとも0.95;その上より好ましくは、少なくとも0.96、少なくとも0.97、少なくとも0.98、少なくとも0.99または少なくとも1.00;最も好ましくは、少なくとも1.05、少なくとも1.10、少なくとも1.15、少なくとも1.20、少なくとも1.25、少なくとも1.30、少なくとも1.35、少なくとも1.40、少なくとも1.45または少なくとも1.50;特に、少なくとも1.55、少なくとも1.60、少なくとも1.65、少なくとも1.70または少なくとも1.75mm/mgである。
【0106】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、以下の式により定義する総表面Sを有する。
S≧A・W2/3
式中、Aは、少なくとも4.5である、すなわち、S≧4.5・W2/3である。
【0107】
例えば、本発明による医薬投与剤型が、623mgの総重量を有する場合、その総表面Sは、好ましくは、少なくとも328mm(4.5・6232/3)であり、本発明による医薬投与剤型が、983mgの総重量を有する場合、その総表面Sは、好ましくは、少なくとも445mm(4.5・9832/3)である。
【0108】
医薬投与剤型の総表面を測定するための方法は、当業者に公知である。例えば、総表面を、単純な幾何学的考察に基づいて、医薬投与剤型の三次元の伸長から計算することができる(例えば、Eudragit(登録商標)Application Guidelines、10th edition、2007年7月、Roehm GmbH、Darmstadt(非特許文献6)を参照)。
【0109】
また、近似的には頭の中で、医薬投与剤型を、複数の同一の適切なサイズの立方体の体積要素(ボクセル)に分けることができ、総表面を、表面に位置する正方形の面積要素(ピクセル)を数えることにより決定することができる。
【0110】
好ましくは、医薬投与剤型の総表面を測定する場合、薬理学的に活性な化合物(A)の微細構造、ならびにポリマーおよび薬学的賦形剤を含めた、投与剤型のその他の構成要素全ての微細構造、例えば、それらの多孔率は考慮に入れない。本明細書の目的では、医薬投与剤型の「表面」という用語は、好ましくは、眼に見える表面(外側の寸法、輪郭)を指す。換言すると、医薬投与剤型の表面を決定する目的では、表面構造を、好ましくは、完璧に平滑であるとみなす。
【0111】
本発明による医薬投与剤型の好ましい実施形態では、Aは、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9または6.0;より好ましくは、6.05、6.1、6.15、6.2、6.25、6.3、6.35、6.4、6.45、6.5、6.55、6.6、6.65、6.7、6.75、6.8、6.85、6.9、6.95、7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、7.4、7.45または7.5である。
【0112】
本発明による医薬投与剤型の別の好ましい実施形態では、Aは、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9または9.0;より好ましくは、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.1、10.2、10.3、10.4または10.5;最も好ましくは、10.6、10.7、10.8、10.9、11.0、11.1、11.2、11.3、11.4、11.5、11.6、11.7、11.8、11.9または12.0;特に、12.1、12.2、12.3、12.4、12.5、12.6、12.7、12.8、12.9、13.0、13.1、13.2、13.3、13.4または13.5である。
【0113】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型の総表面Sは、以下の要件を満たす。
【0114】
【数1】

式中、
AおよびWは、上記に従って定義し、
Bは、最大20、より好ましくは、最大19、さらにより好ましくは、最大18、その上より好ましくは、最大17、最も好ましくは、最大16、特に、最大15である。
【0115】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型の総表面Sは、少なくとも50mm、少なくとも75mm、少なくとも100mm、少なくとも125mm、少なくとも150mm、少なくとも175mmまたは少なくとも200mm;より好ましくは、少なくとも225mm、少なくとも250mm、少なくとも275mm、少なくとも300mm、少なくとも325mm、少なくとも350mm、少なくとも375mmまたは少なくとも400mm;さらにより好ましくは、少なくとも425mm、少なくとも450mm、少なくとも475mm、少なくとも500mm、少なくとも525mm;少なくとも550mm、少なくとも575mmまたは少なくとも600mm;その上より好ましくは、少なくとも625mm、少なくとも650mm、少なくとも675mm、少なくとも700mm、少なくとも725mm、少なくとも750mm、少なくとも775mmまたは少なくとも800mm;最も好ましくは、少なくとも825mm、少なくとも850mm、少なくとも875mm、少なくとも900mm、少なくとも925mm、少なくとも950mm、少なくとも975mmまたは少なくとも1000mm;特に、少なくとも1025mm、少なくとも1050mm、少なくとも1075mm、少なくとも1100mm、少なくとも1125mm、少なくとも1150mm、少なくとも1175mmまたは少なくとも1200mmである。
【0116】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型の総表面Sは、最大1500mm、より好ましくは、最大1400mm、さらにより好ましくは、最大1300mm、その上より好ましくは、最大1200mm、最も好ましくは、最大1100mm、特に、最大1000mmである。
【0117】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型の外側表面の少なくとも35%が、押出成型品の切断表面を起源とし、一方、残りは、押出成型品の筒(円筒)を起源とする。好ましくは、本発明による医薬投与剤型の外側表面の少なくとも40%または少なくとも45%、より好ましくは、少なくとも50%または少なくとも55%、さらにより好ましくは、少なくとも60%または少なくとも65%、その上より好ましくは、少なくとも70%または少なくとも72.5%、最も好ましくは、少なくとも75%または少なくとも77.5%、特に、少なくとも80%または少なくとも82.5%が、押出成型品の切断表面を起源とする。
【0118】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型を、いわゆるH型プランジャーにより、製造、特に、成形する。そのようなH型プランジャーにより入手可能な投与剤型の輪郭を、図4に模式的に示す。適切なサイズおよび形状のH型プランジャーが市販されている。典型的には、所与のH型プランジャーにより入手可能である投与剤型の体積および表面を、H型プランジャーの製造元により通常提供される式を用いて計算することができる。
【0119】
例えば、Notter GmbH、ドイツは、94.3+171.6h[mm]の体積および382+52.3h[mm]の表面(ただし、hは、投与剤型の高さである(図4中の距離bに対応する))を形成するH型プランジャーを提供している。したがって、例えば、1.000mg/mmの全体的な密度を有する650mgのぎっしり詰まった組成物を、そのようなH型プランジャーを用いて成形すると、h=(650−94.3)/171.6=3.24mmの高さを有する投与剤型が得られる。したがって、前記投与剤型は、382+52.3・3.24=551mmの表面を有する。A=4.5の場合、551mm≧4.5 6502/3(=337.6mm)の要件が満たされる。Aが約7.3である場合にも、551mm≧7.3 6502/3(=547mm)の要件が依然として満たされるが、Aが7.4である場合、要件551mm≧7.4 6502/3(=555mm)は満たされない。
【0120】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、少なくとも50mg、少なくとも75mg、少なくとも100mg、少なくとも125mgまたは少なくとも150mg;より好ましくは、少なくとも175mg、少なくとも200mg、少なくとも225mg、少なくとも250mgまたは少なくとも275mg;さらにより好ましくは、少なくとも300mg、少なくとも325mg、少なくとも350mg、少なくとも375mgまたは少なくとも400mg;その上より好ましくは、少なくとも425mg、少なくとも450mg、少なくとも475mg、少なくとも500mgまたは少なくとも525mg;最も好ましくは、少なくとも550mg、少なくとも575mg、少なくとも600mg、少なくとも625mgまたは少なくとも650mg;特に、少なくとも675mg、少なくとも700mg、少なくとも725mg、少なくとも750mgまたは少なくとも775mgの総重量Wを有する。好ましくは、本発明による医薬投与剤型の総重量は、0.01g〜1.5g、より好ましくは、0.05g〜1.2g、さらにより好ましくは、0.1g〜1.0g、最も好ましくは、0.2g〜0.9g、特に、0.25g〜0.8gの範囲に収まる。
【0121】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型のコアは、投与剤型の長手方向の伸長に対して実質的に直角である、加熱溶融押出成型により引き起こされた形態学的方向性を有する。
【0122】
この点に関しては、「実質的に」は、角度が90.0°から若干逸脱する場合があることを意味する。好ましくは、角度は、90±30°、より好ましくは、90±25°、さらにより好ましくは、90±20°、その上より好ましくは、90±15°、最も好ましくは、90±10°、特に、90±5°の範囲に収まる。
【0123】
加熱溶融押出成型により引き起こされた形態学的方向性を決定するための解析方法、例として、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法等が、当業者に公知である。別の適切な方法が、三次元テラヘルツ分光法、例えば、テラヘルツ時間領域分光法(THz−TDS)である(例えば、S.L. Dexheimer、Terahertz Spectroscopy: Principles and Applications (Optical Science and Engineering Series)、CRC; 1 edition 2007年(非特許文献7);R.E. Milesら、Terahertz Frequency Detection and Identification of Materials and Objects (NATO Science for Peace and Security Series B: Physics and Biophysics)、Springer; 1 edition 2007年(非特許文献8);およびY.-S. Leeら、Principles of Terahertz Science and Technology (Lecture Notes in Physics)、Springer; 1 edition 2008年(非特許文献9)を参照)。
【0124】
図5Aは、押出成型品の形態学的方向性をテラヘルツ分光法により可視化することができる様子を示す。図5Bは、前記押出成型品を、例えば、異なる外側の形状を有する錠剤にプレス成型した後でも、前記形態学的方向性を依然として可視化することができることを示す。
【0125】
好ましくは、本発明による医薬投与剤型のコアは、投与剤型の長手方向の伸長に対して実質的に直角(垂直)であるのみならず、さらに、投与剤型の横方向の伸長に対しても実質的に直角(垂直)である、加熱溶融押出成型により引き起こされた形態学的方向性を有する。
【0126】
この点に関してもまた、「実質的に」は、角度が90.0°から若干逸脱する場合があることを意味する。好ましくは、角度は、90±30°、より好ましくは、90±25°、さらにより好ましくは、90±20°、その上より好ましくは、90±15°、最も好ましくは、90±10°、特に、90±5°の範囲に収まる。
【0127】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、少なくとも0.80または少なくとも0.85g/cm、より好ましくは、少なくとも0.90または少なくとも0.95g/cm、さらにより好ましくは、少なくとも1.00、少なくとも1.05または少なくとも1.10g/cm、最も好ましくは、0.80〜1.35g/cmの範囲、特に、0.95〜1.25g/cmの範囲の全体的な密度を有する。
【0128】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、1.00±0.30g/cm、より好ましくは、1.00±0.25g/cm、さらにより好ましくは、1.00±0.20g/cm、その上より好ましくは、1.00±0.15g/cm、最も好ましくは、1.00±0.10g/cm、特に、1.00±0.05g/cmの範囲に収まる全体的な密度を有する。別の好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、1.10±0.30g/cm、より好ましくは、1.10±0.25g/cm、さらにより好ましくは、1.10±0.20g/cm、その上より好ましくは、1.10±0.15g/cm、最も好ましくは、1.10±0.10g/cm、特に、1.10±0.05g/cmの範囲に収まる全体的な密度を有する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、1.20±0.30g/cm、より好ましくは、1.20±0.25g/cm、さらにより好ましくは、1.20±0.20g/cm、その上より好ましくは、1.20±0.15g/cm、最も好ましくは、1.20±0.10g/cm、特に、1.20±0.05g/cm3の範囲に収まる全体的な密度を有する。好ましくは、本発明による医薬投与剤型の全体的な密度は、1.00±0.02g/cm、1.02±0.02g/cm、1.04±0.02g/cm、1.06±0.02g/cm、1.08±0.02g/cm、1.10±0.02g/cm、1.12±0.02g/cm、1.14±0.02g/cm、1.16±0.02g/cm、1.18±0.02g/cm、1.20±0.02g/cm、1.22±0.02g/cm、1.24±0.02g/cm、1.26±0.02g/cm、1.28±0.02g/cm、1.30±0.02g/cm、1.32±0.02g/cm、1.34±0.02g/cm、1.36±0.02g/cm、1.38±0.02g/cmまたは1.40±0.02g/cmである。
【0129】
好ましくは、本発明による医薬投与剤型の特徴は、密度のかなり均一な分布である。好ましくは、それぞれ1.0mmの体積を有する医薬投与剤型の2つのセグメントの密度は、±10%以下、より好ましくは、±7.5%以下、さらにより好ましくは、±5.0%以下、最も好ましくは、±2.5%以下、特に、±1.0%以下である。医薬投与剤型がフィルムコーティングされている場合、それぞれ1.0mmの体積を有する医薬投与剤型の前記2つのセグメントは、好ましくは、コアのセグメントである、すなわち、任意のコーティング材料を含有しない。
【0130】
本発明による医薬投与剤型は、その中に含有させる薬理学的に活性な成分(A)の制御放出を示す。
【0131】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型からの薬理学的に活性な成分(A)の面積当たりの放出は、前側および向かい合う後側を通してが、周縁を通してよりも速い。
【0132】
当業者であれば、本発明による医薬投与剤型の個々の表面を通しての薬理学的に活性な成分(A)の放出速度を測定する方法を知っている。例えば、医薬投与剤型を、放出媒体中で溶解しない不活性な上塗りにより覆うことができる。十分に定義されたサイズおよび形状を有する医薬投与剤型の外側表面の明確に異なる部分のみを、例えば、上塗りを塗布する場合には前記部分を一過性に覆うか、または所望の場所の上塗りを機械的に除去することによってコーティングされていない状態で残す。
【0133】
あるいは、医薬投与剤型の1つの特定の側面のみ(前側、後側、および周縁の一部それぞれ)が放出媒体と接触するように、医薬投与剤型を、適切な装置中にクランプで固定することもできる。
【0134】
放出プロファイルに対する拡散距離効果は、投与剤型の形状に起因するが、調査中の材料の個々の放出特性には起因しないが、これらの効果を回避するために、好ましくは、初期の放出のみ、例えば、10、20、30、45または60分後の放出をモニターする。
【0135】
好ましい実施形態では、本発明による投与剤型は、薬理学的に活性な成分(A)を、人工胃液中のin vitroの条件下では、以下の放出プロファイルに従って放出する。
投与剤型中に最初に含有させる薬理学的に活性な成分(A)の総重量に対して、
0.5時間後に少なくとも5重量%、
1時間後に少なくとも10重量%、
3時間後に少なくとも20重量%、
6時間後に少なくとも35重量%、および
12時間後に少なくとも55重量%。
【0136】
好ましくは、本発明による医薬投与剤型は、経口投与に適応する。しかしまた、医薬投与剤型を、異なる経路を介して投与することも可能であり、したがって、医薬投与剤型は、経口投与に代わって、頬側投与、舌投与、直腸投与または膣投与に適応し得る。また、インプラントも可能である。
【0137】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、1日1回の投与に適応する。別の好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、1日2回の投与に適応する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、1日3回の投与に適応する。
【0138】
本明細書の目的では、「1日2回」は、個々の投与の間が、等しい時間間隔、すなわち、12時間毎であること、または異なる時間間隔、例えば、8時間と16時間、もしくは10時間と14時間であることを意味する。
【0139】
本明細書の目的では、「1日3回」は、個々の投与の間が、等しい時間間隔、すなわち、8時間毎であること、または異なる時間間隔、例えば、6時間と6時間と12時間、もしくは7時間と7時間と10時間であることを意味する。
【0140】
好ましくは、本発明による医薬投与剤型は、薬理学的に活性な化合物(A)の少なくとも部分的な遅延放出をもたらす。
【0141】
遅延放出は、本発明によれば、好ましくは、治療作用を延長させる目的で、薬理学的に活性な化合物(A)を比較的長い期間にわたり放出して、服用頻度を低下させる放出プロファイルを意味すると理解される。これは、特に、経口投与により達成される。表現「少なくとも部分的な遅延放出」は、本発明によれば、その中に含有させる薬理学的に活性な化合物(A)の放出の改変を確実にする任意の医薬投与剤型を網羅する。医薬投与剤型は、好ましくは、コーティングされている医薬投与剤型またはコーティングされていない医薬投与剤型を含み、これらの医薬投与剤型を、放出速度または放出場所を意図的に変化させるために、特定の補助物質を用いて、特定のプロセスによりまたはこれら2つの可能な選択肢を組み合わせることにより生成する。
【0142】
本発明による医薬投与剤型の場合、放出時間プロファイルを、例えば、以下のように改変することができる:延期型放出(extented release)、段階型放出(repaet action release)、徐放出および持続放出。
【0143】
本明細書の目的では、「延期型放出」は、好ましくは、活性な化合物の放出が、限定された時間だけずれて遅延し、その後は、放出は妨げられない製品を意味する。本明細書の目的では、「段階型放出」は、好ましくは、最初に、活性な化合物の最初の部分が放出し、それに続いて、活性な化合物の少なくとも1つのさらなる部分の放出が続く製品を意味する。本明細書の目的では、「徐放出」は、好ましくは、治療活性を維持するために、毒性効果を低下させるために、またはいくつかのその他の治療目的で、投与後のこの製剤からの活性な化合物の放出速度を低下させてある製品を意味する。本明細書の目的では、「持続放出」は、好ましくは、医薬が身体中に長い期間にわたり間断なく放出する、したがって、投与頻度が低下するように、医薬を製剤化する方法を意味する。さらなる詳述については、例えば、K.H. Bauer、Lehrbuch der Pharmazeutischen Technologie、6th edition, WVG Stuttgart、1999年(非特許文献10);および欧州薬局方(非特許文献11)を参照することができる。
【0144】
本発明による医薬投与剤型は、1つまたは複数の薬理学的に活性な化合物(A)を、さらなる遅延放出性剤型中に少なくとも部分的に含むことができ、遅延放出は、当業者に公知の従来の材料およびプロセスを用いて、例えば、遅延放出性マトリックス中に物質を包埋するか、または1つもしくは複数の遅延放出性コーティングを塗布することによって達成することができる。しかし、遅延放出性材料の添加が必要な破壊強度を損なうことがないように、物質の放出を制御しなければならない。本発明による医薬投与剤型からの制御放出は、好ましくは、マトリックス中に物質を包埋することによって達成する。構成成分(C)は、そのようなマトリックスとして働くことができる。マトリックス材料として作用する補助物質が、放出を制御する。マトリックス材料は、例えば、親水性のゲル形成材料であっても、または疎水性材料であってもよく、前者からは、放出が主として拡散により進み、後者からは、放出が主としてマトリックス中のポアからの拡散により進む。
【0145】
好ましくは、生理学的条件下では、本発明による医薬投与剤型は、30分後には0.1〜75%の、240分後には0.5〜95%の、480分後には1.0〜100%の、および720分後には2.5〜100%の薬理学的に活性な化合物(A)を放出している。ここで、さらに好ましい放出プロファイルR〜Rを、以下の表に要約する[全てのデータを、放出した薬理学的に活性な化合物(A)の重量%で示す]。
【0146】
【表3】

【0147】
好ましくは、in vitroの条件下では、医薬投与剤型は、0.5時間後には1.0〜35重量%の、1時間後には5.0〜45重量%の、2時間後には10〜60重量%の、4時間後には少なくとも15重量%の、6時間後には少なくとも20重量%の、8時間後には少なくとも25重量%の、および12時間後には少なくとも30重量%の医薬投与剤型中に当初含有させた薬理学的に活性な化合物(A)を放出している。
【0148】
適切なin vitroの条件は、当業者に公知である。この点に関しては、例えば、欧州薬局方(非特許文献11)および実験のセクションを参照することができる。好ましくは、放出プロファイルを、以下の条件下で測定する:シンカーが装備されているパドル装置、50rpm、37±5℃、900mLの擬似腸液、pH6.8(リン酸緩衝液)。好ましい実施形態では、パドルの回転スピードを、100rpmまで増加させる。
【0149】
好ましくは、本発明による医薬投与剤型の放出プロファイルは、保存に対して安定であり、好ましくは、密封容器中の、高温、例えば、37℃における保存に対して3ヵ月安定である。この点に関して、「安定」は、初期の放出プロファイルを保存後の放出プロファイルと任意の所与の時点で比較した場合、放出プロファイルが、20%以下、より好ましくは、15%以下、さらにより好ましくは、10%以下、その上より好ましくは、7.5%以下、最も好ましくは、5.0%以下、特に、2.5%以下である。
【0150】
本発明による医薬投与剤型は、本明細書の目的ではまた、「構成成分(A)」とも呼ぶ薬理学的に活性な化合物(A)を含有する。薬理学的に活性な成分(A)を、ポリマー(C)を含むマトリックス中に包埋させる。
【0151】
好ましい実施形態では、周囲条件下で、構成成分(A)の純水中への溶解性は、少なくとも1.0g/L、より好ましくは、少なくとも5.0g/L、さらにより好ましくは、少なくとも10g/L、その上より好ましくは、少なくとも25g/L、最も好ましくは、少なくとも50g/L、特に、少なくとも100g/Lである。
【0152】
別の好ましい実施形態では、周囲条件下で、構成成分(A)の純水中への溶解性は、最大1.0g/L、より好ましくは、最大0.5g/L、さらにより好ましくは、最大0.1g/L、その上より好ましくは、最大0.05g/L、最も好ましくは、最大0.01g/L、特に、最大0.005g/Lである。
【0153】
本発明による医薬投与剤型は、薬学的有効量の薬理学的に活性な化合物(A)を含有し、こうした化合物(A)が、この医薬投与剤型を医薬調製物として使用することを正当化し、この医薬投与剤型の活性を引き起こす。本発明による医薬投与剤型をとると原則的にみなすことができる薬理学的に活性な化合物(A)は、任意の公知の薬学的物質であり、これらの物質は、本発明による医薬投与剤型中自体に、それらの誘導体、特に、エステルもしくはエーテルの形態、またはそれぞれの場合の対応する生理学的に許容できる化合物の形態で、特に、それらの対応する塩もしくは溶媒和化合物の形態で、ラセミ体として、あるいは1つまたは複数の立体異性体(鏡像異性体またはジアステレオマー)が強化された形態で存在ことができる。
【0154】
本発明による医薬投与剤型は、いくつかの薬理学的に活性な化合物(A)を単一の医薬投与剤型として投与するのに適している。好ましくは、医薬投与剤型は、1つの特定の薬理学的に活性な化合物(A)のみを含有する。
【0155】
薬理学的に活性な化合物(A)の量は、医薬投与剤型の総量に対して、好ましくは、0.01〜95重量%、より好ましくは、0.5〜80重量%、さらにより好ましくは、1.0〜70重量%、最も好ましくは、5.0〜60重量%、特に、10〜50重量%の範囲に収まる。好ましい実施形態では、薬理学的に活性な化合物(A)の量は、20重量%超である。
【0156】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、向神経作用物質を薬理学的に活性な化合物(A)として含有する。
【0157】
当業者であれば、どの物質が向神経作用を示すかは周知である。心理学的プロセスに影響を及ぼす物質は一般に、向神経作用を示す、すなわち、とりわけ心理学的機能に作用する。したがって、向神経作用を示す物質は、気分に影響を及ぼすことができ、気分を向上させるかまたは低下させるかのいずれかである。記載の目的では、向神経作用を示す物質は、特に、オピオイド、刺激薬、精神安定剤(例えば、バルビツール酸およびベンゾジアゼピン)、ならびにその他の麻薬を含む。向神経作用を示す物質は、好ましくは、特に、不適切に(特に、乱用の意図をもって)投与した場合には、適切な経口投与と比べて、活性な化合物のレベルの増加の加速を引き起こして、乱用者に所望の効果、すなわち、「興奮」または「急激な高揚感」をもたらす物質を含む。また、この興奮は、粉末化した医薬投与剤型を、鼻から投与する、すなわち、嗅ぐ場合にも得られる。向神経作用を示す物質は、好ましくは、乱用に根本的に適しているような機序により、(適切な用量および医薬投与剤型で、適切に投与した場合には)ヒトの精神活動および/または知覚に影響を及ぼす物質である。
【0158】
好ましくは、薬理学的に活性な成分(A)は、オピオイドである。
【0159】
特に、本発明による医薬投与剤型は、好ましくは、オピオイド[A07DA、N01AH、N02A、R05DA、R05FA,];バルビツール酸[N01AF、N01AG、N03AA];ベンゾジアゼピン誘導体[N03AE];アヘン剤依存性を治療するための薬剤[N07BC];抗不安薬[N05B];催眠薬および鎮静薬[N05C];覚醒剤、注意欠陥/多動障害(ADHD)を治療するための薬剤、ならびに向神経性薬[N06B];制吐薬[A04A];ダイエット食品を除く抗肥満調製物[A08A];中枢作用性筋肉弛緩薬[M03B];さらに、解毒薬[V03AB]からなる群から選択される向神経作用物質を含有する。ここで角括弧中に記述した略語は、WHOが薬学的物質を分類するために使用するATC指標(ATC Index)(「Gelbe Liste」)に対応する(好ましい版:2007年版または2008年版)(非特許文献12)。
【0160】
本発明による医薬投与剤型は、好ましくは、オピオイド、バニロイド受容体調節物質、セロトニン/ノルエピネフリン/ドーパミンの調節物質、ギャバ調節物質、NMDAアンタゴニスト、イオンチャネルの遮断薬/調節物質、カンナビノイド、およびその他のNSAIDからなる群から選択される向神経作用物質を含有する。
【0161】
以下のアヘン剤、オピオイド、精神安定剤またはその他の麻薬は、向神経作用を示す物質であり、すなわち、乱用の可能性があり、したがって、本発明による医薬投与剤型中に含有させるのが好ましい:アルフェンタニル、アロバルビタール、アリルプロジン、アルファプロジン、アルプラゾラム、アンフェプラモン、アンフェタミン、アンフェタミニル(amphetaminil)、アモバルビタール、アニレリジン、アポコデイン(apocodeine)、アキソマドール(axomadol)、バルビタール、ベミドン(bemidone)、ベンジルモルフィン(benzylmorphine)、ベジトラミド、ブロマゼパム、ブロチゾラム、ブプレノルフィン、ブトバルビタール、ブトルファノール、カマゼパム、カルフェンタニル、カシン/D−ノルシュードエフェドリン、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロフェダノール、クロナゼパム、クロニタゼン、クロラゼプ酸、クロチアゼパム、クロキサゾラム、コカイン、コデイン、シクロバルビタール、シクロファン、シプレノルフィン(cyprenorphine)、デロラゼパム(delorazepam)、デソモルヒネ、デキストロモルアミド、デキストロプロポキシフェン、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルヒネ、ジアゼパム、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジヒドロモルフォン(dihydromorphone)、ジメノキサドール、ジメフェタモール(dimephetamol)、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチレート(dioxaphetylbutyrate)、ジピパノン、ドロナビノール、エプタゾシン、エスタゾラム、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、ロフラゼブ酸エチル(ethyl loflazepate)、エチルモルヒネ、エトニタゼン、エトルフィン、フェンカムファミン、フェネチリン、フェンピプラミド(fenpipramide)、フェンプロポレクス(fenproporex)、フェンタニル、フルジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ハラゼパム、ハロキサゾラム、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメサドン、ヒドロキシメチルモルフィナン(hydroxymethylmorphinan)、ケタゾラム、ケトベミドン、レバセチルメタドール(LAAM)、レボメタゾン(levomethadone)、レボルファノール、レボフェナシルモルファン(levophenacylmorphane)、レボキセマシン(levoxemacin)、メシル酸リスデキサンフェタミン、ロフェンタニル、ロプラゾラム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、マジンドール、メダゼパム、メフェノレックス、メペリジン、メプロバメート、メタポン(metapon)、メプタジノール、メタゾシン、メチルモルヒネ(methylmorphine)、メタンフェタミン、メサドン、メタカロン、3−メチルフェンタニル(3−methylfentanyl)、4−メチルフェンタニル(4−methylfentanyl)、メチルフェニデート、メチルフェノバルビタール、メチプリロン、メトポン、ミダゾラム、モダフィニル、モルヒネ、ミロフィン、ナビロン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ニメタゼパム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ノルモルヒネ、ノルピパノン(norpipanone)、アヘン、オキサゼパム、オキサゾラム、オキシコドン、オキシモルフォン、ケシ(Papaver somniferum)、パパベレタム、ペルノリン(pernoline)、ペンタゾシン、ペントバルビタール、ペチジン、フェナドキソン、フェノモルファン(phenomorphane)、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、フォルコジン、フェンメトラジン、フェノバルビタール、フェンテルミン、ピナゼパム、ピプラドロール、ピリトラミド、プラゼパム、プロファドール(profadol)、プロヘプタジン(proheptazine)、プロメドール、プロペリジン、プロポキシフェン、レミフェンタニル(remifentanil)、セクブタバルビタール(secbutabarbital)、セコバルビタール、スフェンタニル、タペンタドール(tapentadol)、テマゼパム、テトラゼパム、チリジン(シスおよびトランス)、トラマドール、トリアゾラム、ビニルビタール、N−(1−メチル−2−ピペリジノエチル)−N−(2−ピリジル)プロピオンアミド、(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)フェノール、(1R,2R,4S)−2−(ジメチルアミノ)メチル−4−(p−フルオロベンジルオキシ)−1−(m−メトキシフェニル)シクロヘキサノール、(1R,2R)−3−(2−ジメチルアミノメチル−シクロヘキシル)フェノール、(1S,2S)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)フェノール、(2R,3R)−1−ジメチルアミノ−3(3−メトキシフェニル)−2−メチル−ペンタン−3−オール、(1RS,3RS,6RS)−6−ジメチルアミノメチル−1−(3−メトキシフェニル)−シクロヘキサン−1,3−ジオール、好ましくは、ラセミ体として、3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)フェニル2−(4−イソブチル−フェニル)プロピオネート、3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)フェニル2−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イル)プロピオネート、3−(2−ジメチルアミノメチル−シクロヘキセ−1−エンイル)−フェニル2−(4−イソブチル−フェニル)プロピオネート、3−(2−ジメチルアミノメチル−シクロヘキセ−1−エンイル)−フェニル2−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イル)プロピオネート、(RR−SS)−2−アセトキシ−4−トリフルオロメチル−安息香酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、(RR−SS)−2−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチル−安息香酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、(RR−SS)−4−クロロ−2−ヒドロキシ−安息香酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、(RR−SS)−2−ヒドロキシ−4−メチル−安息香酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、(RR−SS)−2−ヒドロキシ−4−メトキシ−安息香酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、(RR−SS)−2−ヒドロキシ−5−ニトロ−安息香酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、(RR−SS)−2’,4’−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ビフェニル−4−カルボン酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、ならびに対応する立体異性化合物、それぞれの場合のそれらの対応する誘導体、生理学的に許容できる鏡像異性体、立体異性体、ジアステレオマーやラセミ体、およびそれらの生理学的に許容できる誘導体、例えば、エーテル、エステルまたはアミド、およびそれぞれの場合のそれらの生理学的に許容できる化合物、特に、それらの塩や溶媒和化合物、例えば、塩酸塩。
【0162】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、DPI−125、M6G(CE−04−410)、ADL−5859、CR−665、NRP290およびセバコイルジナルブフィンエステルからなる群から選択されるオピオイドを含有する。
【0163】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、オキシモルフォン、ヒドロモルホンおよびモルヒネ、またはそれらの生理学的に許容できる化合物、特に、それらの塩および溶媒和化合物からなる群から選択される1つまたは複数の薬理学的に活性な化合物(A)を含有する。
【0164】
別の好ましい実施形態では、薬理学的に活性な化合物(A)は、タペンタドール、ファクセラドール(faxeladol)およびアキソマドール、またはそれらの生理学的に許容できる化合物、特に、それらの塩および溶媒和化合物からなる群から選択される。
【0165】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、1,1−(3−ジメチルアミノ−3−フェニル−ペンタメチレン)−6−フルオロ−1,3,4,9−テトラヒドロピラノ[3,4−b]インドール、特に、そのヘミクエン酸塩;1,1−[3−ジメチルアミノ−3−(2−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロピラノ[3,4−b]インドール、特に、そのクエン酸塩;および1,1−[3−ジメチルアミノ−3−(2−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロピラノ[3,4−b]−6−フルオロ−インドール、特に、そのヘミクエン酸塩からなる群から選択される1つまたは複数の薬理学的に活性な化合物(A)を含有する。これらの化合物は、例えば、WO2004/043967(特許文献13)またはWO2005/066183(特許文献14)から公知である。対応する記載を、参照文献として本明細書により紹介し、本開示の一部であるみなす。
【0166】
記載の目的では、薬理学的に活性な化合物(A)の血漿濃度から決定することができる薬物動態パラメータを、以下に従って定義する。
【0167】
【表4】

【0168】
上記のパラメータを、それぞれの場合の全ての検討した患者/試験対象についての個々の値の平均値として記述する。
【0169】
いかにして活性成分の薬物動態パラメータを、血漿中の活性成分の測定した濃度から計算することができるかを当業者は知っている。これに関しては、例えば、Willi Cawello (ed.) Parameters for Compartment-free Pharmacokinetics、Shaker Verlag Aachen (1999)(非特許文献13)を参照することができる。
【0170】
好ましい実施形態では、好ましくは、本発明による投与剤型を経口投与した後、in vivoにおいて、ピーク血漿レベルの平均(Cmax)が平均して、tmax4.0±2.5時間後、より好ましくは、tmax4.0±2.0時間後、さらにより好ましくは、tmax4.0±1.5時間後、最も好ましくは、tmax4.0±1.0時間後、特に、tmax4.0±0.5時間後に達成される。別の好ましい実施形態では、好ましくは、本発明による投与剤型を経口投与した後、in vivoにおいて、ピーク血漿レベルの平均(Cmax)が平均して、tmax5.0±2.5時間後、より好ましくは、tmax5.0±2.0時間後、さらにより好ましくは、tmax5.0±1.5時間後、最も好ましくは、tmax5.0±1.0時間後、特に、tmax5.0±0.5時間後に達成される。さらに別の好ましい実施形態では、好ましくは、本発明による投与剤型を経口投与した後、in vivoにおいて、ピーク血漿レベルの平均(Cmax)が平均して、tmax6.0±2.5時間後、より好ましくは、tmax6.0±2.0時間後、さらにより好ましくは、tmax6.0±1.5時間後、最も好ましくは、tmax6.0±1.0時間後、特に、tmax6.0±0.5時間後に達成される。
【0171】
好ましい実施形態では、t1/2の平均値は、好ましくは、本発明による投与剤型を経口投与した後、in vivoにおいて、4.3±2.5時間、より好ましくは、4.3±2.0時間、さらにより好ましくは、4.3±1.5時間、最も好ましくは、4.3±1.0時間、特に、4.3±0.5時間である。別の好ましい実施形態では、t1/2の平均値は、好ましくは、本発明による投与剤型を経口投与した後、in vivoにおいて、好ましくは、5.3±2.5時間、より好ましくは、5.3±2.0時間、さらにより好ましくは、5.3±1.5時間、最も好ましくは、5.3±1.0時間、特に、5.3±0.5時間である。さらに別の好ましい実施形態では、t1/2の平均値は、好ましくは、本発明による投与剤型を経口投与した後、in vivoにおいて、好ましくは、6.3±2.5時間、より好ましくは、6.3±2.0時間、さらにより好ましくは、6.3±1.5時間、最も好ましくは、6.3±1.0時間、特に、6.3±0.5時間である。
【0172】
好ましい実施形態では、薬理学的に活性な化合物(A)は、タペンタドールまたはその生理学的に許容できる塩であり、好ましくは、本発明による投与剤型を経口投与した後、in vivoにおいて、曲線下総面積AUC0−∞の平均値は、825±600ng・h/mL、より好ましくは、825±500ng・h/mL、さらにより好ましくは、825±400ng・h/mL、その上より好ましくは、825±300ng・h/mL、最も好ましくは、825±200ng・h/mL、特に、825±100ng・h/mLである。別の好ましい実施形態では、薬理学的に活性な化合物(A)は、タペンタドールまたはその生理学的に許容できる塩であり、好ましくは、本発明による投与剤型を経口投与した後、in vivoにおいて、曲線下総面積AUC0−∞の平均値は、1100±600ng・h/mL、より好ましくは、1100±500ng・h/mL、さらにより好ましくは、1100±400ng・h/mL、その上より好ましくは、1100±300ng・h/mL、最も好ましくは、1100±200ng・h/mL、特に、1100±100ng・h/mLである。
【0173】
好ましい実施形態では、薬理学的に活性な化合物(A)は、タペンタドールまたはその生理学的に許容できる塩であり、好ましくは、本発明による投与剤型を経口投与した後、in vivoにおいて、Cmaxの平均値は、63±40ng/mL、より好ましくは、63±30ng/mL、さらにより好ましくは、63±20ng/mL、その上より好ましくは、63±15ng/mL、最も好ましくは、63±10ng/mL、特に、63±5ng/mLである。別の好ましい実施形態では、薬理学的に活性な化合物(A)は、タペンタドールまたはその生理学的に許容できる塩であり、好ましくは、本発明による投与剤型を経口投与した後、in vivoにおいて、Cmaxの平均値は、89±40ng/mL、より好ましくは、89±30ng/mL、さらにより好ましくは、89±20ng/mL、その上より好ましくは、89±15ng/mL、最も好ましくは、89±10ng/mL、特に、89±5ng/mLである。
【0174】
特に好ましい実施形態では、薬理学的に活性な化合物(A)は、タペンタドールまたはその生理学的に許容できる塩であり、本発明による医薬投与剤型は、タペンタドールまたはその生理学的に許容できる塩をそれぞれ、200mgおよび250mgの投与量で含有し、以下の薬物動態学的データにより特徴付けられる製剤と生物学的に同等である。
【0175】
【表5】

【0176】
生物学的同等性を達成するためには、どんな要件を満たさなければならないかを当業者は知っている。この点に関して、例えば、「Note for Guidance on the Investigation of Bioavailability and Bioequivalence」、EMEA、London、2001年7月26日 (CPMP/EWP/QWP/1401/98)(非特許文献14);「Guidance for Industry - Bioavailability and Bioequivalence - Studies for Orally Administered Drug Products - General Considerations」、FDA、BP、Announced in the Federal Register: Volume 68、Number 53/2003年3月19日(非特許文献15);および「Guidance for Industry - Statistical Approaches to Establishing Bioequivalence」、FDA、BP、2001年1月(非特許文献16)を参照することができる。
【0177】
一般に、2つの医薬製品が、薬学的に同等であるかまたは薬学的代用品になり、同じモル用量で投与した後のそれらの生物学的利用率が、それらの作用が有効性および安全性の両方に関して本質的に同じであるような程度まで類似する場合に、それらの医薬製品は生物学的に同等である。好ましくは、統計学的データは、分散分析を使用して90%信頼区間に基づいて解析すべきである。例えば、AUC比に関しては、相対的な生物学的利用率のこの測定についての90%信頼区間は、0.80〜1.25の許容区間内に存在すべきであり、Cmax比に関しては、相対的な生物学的利用率のこの測定についての90%信頼区間は、0.80〜1.25の許容区間内に存在すべきである。
【0178】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、鼻孔および/または咽頭を刺激する物質、すなわち、鼻孔および/または咽頭を介して投与した場合、灼熱痛等、患者にとって非常に不快なので、患者が投与を継続することを望まないかもしくは投与を継続することができない身体反応、または対応する活性な化合物の服用を、例えば、鼻汁もしくはくしゃみを増加させることにより生理学的に相殺する身体的反応のいずれかを引き起こす物質を含有しない。鼻孔および/または咽頭を刺激する物質のさらなる例は、灼熱痛、痒み、くしゃみの衝動、分泌物形成の増加、またはこれらの刺激のうちの少なくとも2つの組合せを引き起こす物質である。従来使用しようとされている対応する物質およびそれらの分量は、当業者に公知である。したがって、鼻孔および/または咽頭を刺激する物質の中には、辛味物質の薬物の1つもしくは複数の構成要素または1つもしくは複数の植物部分に基づくものもある。対応する辛味物質の薬物自体は、当業者に公知であり、例えば、「Pharmazeutische Biologie - Drogen und ihre Inhaltsstoffe」、Prof. Dr. Hildebert Wagner、2nd. revised edition、Gustav Fischer Verlag、Stuttgart-New York、1982年、82頁以下参照(非特許文献17)に記載されている。対応する記載を、参照文献として本明細書により紹介し、本開示の一部であるとみなす。
【0179】
さらに、本発明による医薬投与剤型は、好ましくは、薬理学的に活性な化合物(A)についてのアンタゴニスト、好ましくは、向神経性物質に対するアンタゴニスト、特に、オピオイドに対するアンタゴニストを含有しない。所与の薬理学的に活性な化合物(A)に適しているアンタゴニストは、当業者に公知であり、それら自体として、または対応する誘導体、特に、エステルもしくはエーテルの形態で、またはそれぞれの場合の対応する生理学的に許容できる化合物の形態で、特に、それらの塩もしくは溶媒和化合物の形態で存在することができる。本発明による医薬投与剤型は、好ましくは、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナリド(nalide)、ナルメキソン(nalmexone)、ナロルフィンまたはナルブフィンを含む群のうちから選択されるアンタゴニストを、それぞれの場合、場合により、対応する生理学的に許容できる化合物の形態で、特に、塩基、塩または溶媒和化合物の形態で含有せず、神経遮断薬、例えば、ハロペリドール、プロメタジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、レボメプロマジン、チオリダジン、ペラジン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、ズクロペンチキソール、フルペンチキソール、プロチペンジル、ゾテピン、ベンペリドール、ピパンペロン、メルペロンおよびブロムペリドールを含む群のうちから選択される化合物を含有しない。
【0180】
さらに、本発明による医薬投与剤型は、好ましくは、催吐薬を含有しない。催吐薬は、当業者に公知であり、それら自体として、または対応する誘導体、特に、エステルもしくはエーテルの形態で、またはそれぞれの場合の対応する生理学的に許容できる化合物の形態で、特に、それらの塩もしくは溶媒和化合物の形態で存在することができる。本発明による医薬投与剤型は、好ましくは、トコン(ipecacuanha)(ipecac)の根の1つまたは複数の構成要素に基づいた催吐薬、例えば、構成要素エメチンに基づいた催吐薬を含有しない。これらは、例えば、「Pharmazeutische Biologie - Drogen und ihre Inhaltsstoffe」、Prof. Dr. Hildebert Wagner、2nd, revised edition、Gustav Fischer Verlag、Stuttgart、New York、1982年(非特許文献18)に記載されている。対応する文献の記載を、参照文献として本明細書により紹介し、本開示の一部であるとみなす。また、本発明による医薬投与剤型は、好ましくは、催吐薬としてのアポモルフィンも含有しない。
【0181】
最後にまた、本発明による医薬投与剤型は、好ましくは、苦味物質も含有しない。苦味物質および使用するのに有効な分量を、US−2003/0064099A1(特許文献15)に見出すことができ、その対応する開示は、本出願の開示であるみなすべきであり、参照文献として本明細書により紹介する。苦味物質の例は、芳香油、例として、ハッカ油、ユーカリ油、苦扁桃油、メントール、果実の香気物質、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ由来の香気物質もしくはそれらの混合物、および/または安息香酸デナトニウムである。
【0182】
したがって、本発明による医薬投与剤型は、好ましくは、鼻孔および/または咽頭を刺激する物質も、薬理学的に活性な化合物(A)についてのアンタゴニストも、催吐薬も、苦味物質も含有しない。
【0183】
本発明による医薬投与剤型の特徴は、薬理学的に活性な化合物(A)のかなり均一な分布である。好ましくは、それぞれ1.0mmの体積を有する医薬投与剤型の2つのセグメント中の薬理学的に活性な化合物(A)の含有量は、±10%超、より好ましくは、±7.5%超、さらにより好ましくは、±5.0%以下、最も好ましくは、±2.5%以下、特に、±1.0%以下となる。医薬投与剤型がフィルムコーティングされている場合、それぞれ1.0mmの体積を有する医薬投与剤型の前記2つのセグメントは、好ましくは、コアのセグメントである、すなわち、任意のコーティング材料を含有しない。
【0184】
好ましくは、本発明による医薬投与剤型の全ての構成成分が、医薬投与剤型内にかなり均一に分布する。好ましくは、それぞれ1.0mmの体積を有する医薬投与剤型の2つのセグメント中の各構成成分の含有量は、±10%以下、より好ましくは、±7.5%以下、さらにより好ましくは、±5.0%以下、最も好ましくは、±2.5%以下、特に、±1.0%以下となる。医薬投与剤型がフィルムコーティングされている場合、それぞれ1.0mmの体積を有する医薬投与剤型の前記2つのセグメントは、好ましくは、コアのセグメントである、すなわち、任意のコーティング材料を含有しない。
【0185】
好ましくは、本発明による医薬投与剤型は、本明細書の目的ではまた、「構成成分(C)」とも呼ぶ、少なくとも1つのポリマー(C)を含有する。好ましくは、医薬投与剤型は、少なくとも1つの合成、半合成または天然のポリマー(C)を含有し、こうしたポリマーは、医薬投与剤型の破壊強度(破砕に対する抵抗力)の上昇にかなり寄与する。本明細書の目的では、「半合成の」製品を、天然に存在する物質の化学的操作により生成するに至った。
【0186】
好ましくは、本発明による医薬投与剤型の機械的特性、特に、その破壊強度は、ポリマー(C)の存在に実質的に依存するが、前記特性を達成するためには、ポリマー(C)が単に存在するだけでは十分でない。また、本発明による医薬投与剤型の好都合な特性、特に、その機械的特性は、加熱溶融押出成型による医薬投与剤型の調製のための従来法により、薬理学的に活性な化合物(A)、ポリマー(C)、および場合により、さらなる賦形剤を単に加熱溶融押出成型することによるだけでは自動的に達成することができない。実際に通常、適切な押出成型機を、調製のために選択しなければならず、重要な意味をもつ押出成型のパラメータ、特に、圧力/力、温度および時間を調節しなければならない。したがって、従来の押出成型機を使用する場合であっても、通常、必要とする判断基準を満たすために、プロセスのプロトコールを適応させなければならない。
【0187】
好ましくは、ポリマー(C)は水溶性である。好ましくは、ポリマー(C)は、実質的に分枝していない。
【0188】
ポリマー(C)は、特定の平均分子量を有する、単一のタイプのポリマーを含んでもよく、または異なるポリマー、例として、2、3、4もしくは5つのポリマー、例えば、同じ化学的性質であるが異なる平均分子量のポリマー、異なる化学的性質であるが同じ平均分子量のポリマー、もしくは異なる化学的性質かつ異なる分子量のポリマーの混合物(ブレンド)を含んでもよい。
【0189】
個々のまたは組み合わせたポリマーを、ポリアルキレンオキシド、好ましくは、ポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリ(アルカ)アクリル酸、ポリ(ヒドロキシ脂肪酸)、例えば、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−コ−3−ヒドロキシ吉草酸)(Biopol(登録商標))、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)等;ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド、ポリエチレンコハク酸、ポリラクトン、ポリグリコリド、ポリウレタン、ポリアミド、ポリラクチド、ポリアセタール(例えば、場合により改変側鎖を有する多糖)、ポリラクチド/グリコリド、ポリラクトン、ポリグリコリド、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリエチレングリコールとポリブチレンテレフタレートとのブロックポリマー(Polyactive(登録商標))、ポリ酸無水物(ポリフェプロサン)、それらのコポリマー、それらのブロック−コポリマー、および記述したポリマーのうちの少なくとも2つの混合物、または上記の特徴を有するその他のポリマーを含む群から選択することができる。
【0190】
好ましくは、ポリマー(C)は、例えば、ランダムコポリマー、交互共重合体もしくはブロックコポリマーであり得るポリアルキレンオキシド、より好ましくは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、または前述のうちのいずれかの混合物を含む。
【0191】
好ましくは、少なくとも0.1・10g/モル、少なくとも0.2・10g/モル、少なくとも0.5・10g/モル、少なくとも1.0・10g/モル、少なくとも2.5・10g/モル、少なくとも5.0・10g/モル、少なくとも7.5・10g/モル、または少なくとも10・10g/モル、好ましくは、1.0・10g/モル〜15・10g/モルの重量平均分子量(M)または粘度平均分子量(Mη)を有する高分子量ポリマーが特に好ましい。MまたはMηを決定するための適切な方法が、当業者に公知である。好ましくは、Mηは、レオロジー的測定を使用して決定し、Mは、適切な相上でのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して決定する。
【0192】
好ましくは、ポリマー(C)の分子量の分散度M/Mは、2.5±2.0、より好ましくは、2.5±1.5、さらにより好ましくは、2.5±1.0、その上より好ましくは、2.5±0.8、最も好ましくは、2.5±0.6、特に、2.5±0.4の範囲に収まる。
【0193】
ポリマーは、好ましくは、25℃において、5重量%水溶液中で、モデルRVFブルックフィールド粘度計(スピンドル番号2/回転スピード2rpm)を使用して測定した場合の4,500〜17,600cP、2重量%水溶液上で、記述した粘度計(スピンドル番号1もしくは3/回転スピード10rpm)を使用して測定した場合の400〜4,000cP、または1重量%水溶液上で、記述した粘度計(スピンドル番号2/回転スピード2rpm)を使用して測定した場合の1,650〜10,000cPの粘度を有する。
【0194】
少なくとも0.2・10g/モル、より好ましくは、少なくとも0.3・10g/モル、さらにより好ましくは、少なくとも0.4・10g/モル、その上より好ましくは、少なくとも0.5・10g/モル、最も好ましくは、少なくとも1.0・10g/モルの重量平均分子量(M)または粘度平均分子量(Mη)を有する熱可塑性ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドまたはそれらの(ブロック−)コポリマーが最も好ましく、特に、1.0・10〜15・10g/モルの範囲に収まるのが好ましい。
【0195】
本発明による好ましい実施形態では、ポリマー(C)は、
− 少なくとも0.2・10g/モルの重量平均分子量(M)または粘度平均分子量(Mη)を有するポリアルキレンオキシドを、
− ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリ(ヒドロキシ脂肪酸)、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド、ポリエチレンコハク酸、ポリラクトン、ポリグリコリド、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリラクチド、ポリラクチド/グリコリド、ポリラクトン、ポリグリコリド、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリエチレングリコールとポリブチレンテレフタレートとのブロックポリマー、ポリ酸無水物、ポリアセタール、セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるポリマーであって、好ましくはまた、少なくとも0.2・10g/モルの重量平均分子量(M)または粘度平均分子量(Mη)も有するが必ずしもそうとは限らないポリマー
と組み合わせて含む。セルロースエステルおよびセルロースエーテル、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が特に好ましい。
【0196】
好ましい実施形態では、前記さらなるポリマーは、ポリアルキレンオキシドでも、ポリアルキレングリコールでもない。それにもかかわらず、医薬投与剤型は、ポリアルキレングリコールを、例えば、可塑剤として含有することができるが、この場合には、医薬投与剤型は、好ましくは、ポリマーの三成分混合物、すなわち、構成成分(C)+さらなるポリマー+可塑剤である。
【0197】
特に好ましい実施形態では、前記さらなるポリマーは、親水性のセルロースエステルまたはセルロースエーテルであり、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、好ましくは、100,000±50,000mPas、より好ましくは、100,000±20,000mPasの平均粘度を有する。
【0198】
好ましくは、前記さらなるポリマーの含有量は、ポリアルキレンオキシドの総重量に対して、0.5〜25重量%、より好ましくは、1.0〜20重量%、さらにより好ましくは、2.0〜17.5重量%、その上より好ましくは、3.0〜15重量%、最も好ましくは、4.0〜12.5重量%、特に、5.0〜10重量%に達する。
【0199】
好ましい実施形態では、前記ポリアルキレンオキシドと前記さらなるポリマーとの相対的な重量比は、20:1〜1:20、より好ましくは、10:1〜1:10、さらにより好ましくは、7:1〜1:5、その上より好ましくは、5:1〜1:1、最も好ましくは、4:1〜1.5:1、特に、3:1〜2:1の範囲に収まる。
【0200】
好ましくは、前記さらなるポリマーの含有量は、医薬投与剤型の総重量に対して、0.5〜25重量%、より好ましくは、1.0〜20重量%、さらにより好ましくは、2.0〜22.5重量%、その上より好ましくは、3.0〜20重量%、最も好ましくは、4.0〜17.5重量%、特に、5.0〜15重量%に達する。
【0201】
いずれの理論にも縛られる意図はないが、ポリアルキレンオキシドの分子鎖が、医薬投与剤型の製造の過程で、例えば、押出成型により部分的に損傷してしまい、それによって、平均分子量が減少した場合であっても、さらなるポリマーが、薬理学的に活性な化合物(A)の放出に対する最低限の抑制作用を保証する補助的なマトリックス材料として働くことができると考えられている。さらに、さらなるポリマーは、投与剤型の、特に、その放出プロファイルに関する保存安定性に寄与するようでもある。
【0202】
当業者に公知である生理学的に許容できる疎水性材料を、補助的なマトリックス材料として使用することができる。ポリマー、特に、好ましくは、セルロースエーテル、セルロースエステルおよび/またはアクリル樹脂を、好ましくは、親水性マトリックス材料として使用する。エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸および/またはそれらの誘導体、例として、それらの塩、アミドまたはエステルをマトリックス材料として使用するのが大いに好ましい。また、疎水性材料、例として、疎水性ポリマー、ろう、脂肪、長鎖脂肪酸、脂肪アルコール、または対応するエステルもしくはエーテル、あるいはそれらの混合物から調製したマトリックス材料も好ましい。C12〜C30脂肪酸のモノ−もしくはジグリセリド、ならびに/またはC12〜C30の脂肪アルコールおよび/もしくはろう、あるいはそれらの混合物を疎水性材料として使用するのが特に好ましい。また、上記に記述した親水性材料と疎水性材料との混合物を、マトリックス材料として使用することも可能である。
【0203】
好ましくは、ポリマー(C)の全含有量は、医薬投与剤型の総重量の少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%または少なくとも20重量%、より好ましくは、少なくとも30重量%、さらにより好ましくは、少なくとも40重量%、最も好ましくは、少なくとも50重量%、特に、少なくとも60重量%である。好ましい実施形態では、ポリマー(C)の含有量は、医薬投与剤型の総重量の約20〜約49重量%の範囲に収まる。
【0204】
好ましい実施形態では、ポリマー(C)の全含有量は、25±20重量%、より好ましくは、25±15重量%、最も好ましくは、25±10重量%、特に、25±5重量%の範囲に収まる。別の好ましい実施形態では、ポリマー(C)の全含有量は、35±20重量%、より好ましくは、35±15重量%、最も好ましくは、35±10重量%、特に、35±5重量%の範囲に収まる。さらに別の好ましい実施形態では、ポリマー(C)の全含有量は、45±20重量%、より好ましくは、45±15重量%、最も好ましくは、45±10重量%、特に、45±5重量%の範囲に収まる。さらに別の好ましい実施形態では、ポリマー(C)の全含有量は、55±20重量%、より好ましくは、55±15重量%、最も好ましくは、55±10重量%、特に、55±5重量%の範囲に収まる。さらに好ましい実施形態では、ポリマー(C)の全含有量は、65±20重量%、より好ましくは、65±15重量%、最も好ましくは、65±10重量%、特に、65±5重量%の範囲に収まる。その上さらに好ましい実施形態では、ポリマー(C)の全含有量は、75±20重量%、より好ましくは、75±15重量%、最も好ましくは、75±10重量%、特に、75±5重量%の範囲に収まる。
【0205】
好ましい実施形態では、ポリマー(C)は、本発明による医薬投与剤型中に均一に分布する。好ましくは、ポリマー(C)は、薬理学的に活性な化合物(A)を包埋しているマトリックスを形成する。特に好ましい実施形態では、薬理学的に活性な化合物(A)とポリマー(C)とが、医薬投与剤型中に密接に均一に分布し、したがって、医薬投与剤型は、薬理学的に活性な化合物(A)は存在するが、ポリマー(C)は存在しないセグメント、またはポリマー(C)は存在するが、薬理学的に活性な化合物(A)は存在しないセグメントのいずれをも含有しない。
【0206】
医薬投与剤型がフィルムコーティングされている場合、ポリマー(C)は、好ましくは、医薬投与剤型のコア中に均一に分布する、すなわち、フィルムコーティングは、好ましくは、ポリマー(C)を含有しない。それにもかかわらず、フィルムコーティング自体はもちろん、1つまたは複数のポリマーを含有することができるが、これらのポリマーは、好ましくは、コア中に含有させるポリマー(C)とは異なる。
【0207】
本発明による投与剤型は、典型的には投与剤型の長手方向の伸長に沿って測定すると、少なくとも300Nの破壊強度を示す。
【0208】
医薬投与剤型の「破壊強度」(破砕に対する抵抗力)は、当業者に公知である。この点に関して、例えば、W.A. Ritschel, Die Tablette、2. Auflage、Editio Cantor Verlag Aulendorf、2002年(非特許文献19);H Liebermannら、Pharmaceutical dosage forms: Tablets、Vol. 2, Informa Healthcare; 2 edition、1990年(非特許文献20);およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology、Informa Healthcare; 1 edition(非特許文献21)を参照することができる。
【0209】
本明細書の目的では、破壊強度を、好ましくは、医薬投与剤型を砕くために必要である力の量と定義する(=破壊力)。したがって、本明細書の目的では、投与剤型は、好ましくは、割れる、すなわち、相互に分離している少なくとも2つの独立した部分に砕かれた場合には、所望の破壊強度を示すことにはならない。しかし、別の好ましい実施形態では、医薬投与剤型は、力が、測定の間に測定した最も高い力の25%(閾値)だけ減少した場合に割れたとみなす(以下を参照されたい)。
【0210】
本発明による投与剤型は、それらの破壊強度に起因して、例えば、乳棒と乳鉢、ハンマー、木槌等の従来の手段、または微粉化のためのその他の通常の手段、特に、微粉化の目的で開発された装置(錠剤粉砕装置)を用いて力を加えることによっては微粉化することができないという点で、本発明による投与剤型は、従来の投与剤型とは区別される。この点に関して、「微粉化」は、適切な媒体中に薬理学的に活性な化合物(A)を直ちに放出するであろう小粒子に崩すことを意味する。微粉化を回避することにより、事実上、経口、または非経口、特に、静脈内もしくは鼻からの乱用が排除される。
【0211】
従来の錠剤は典型的には、200Nを十分に下回る破壊強度を任意の伸長方向に有する。従来の円形の錠剤の破壊強度は、以下の実験式に従って推定することができる:破壊強度[Nで示す]=10×錠剤の直径[mmで示す]。したがって、前記実験式に従うと、少なくとも500Nの破壊強度を有する円形の錠剤には、少なくとも50mm(約2インチ)の直径が必要となるであろう。しかし、そのような錠剤は、嚥下できないであろう。上記の実験式は、従来の錠剤ではなく、むしろ特別な錠剤である本発明の医薬投与剤型には適用されない。
【0212】
さらに、実際の平均咀嚼力は約220Nである(例えば、P.A. Proeschelら、J Dent Res、2002年、81(7)、464〜468頁(非特許文献22)を参照、コピーを添付)。このことは、200Nを十分に下回る破壊強度を有する従来の錠剤は、咀嚼すると破砕することができ、一方、本発明による投与剤型は、少なくとも伸長方向Eを除いて、咀嚼しても破砕することができないことを意味する。
【0213】
その上さらに、約9.81m/sの重力加速度を適用すると、300Nは、30kg超の重力に相当する、すなわち、本発明による医薬投与剤型は、30kg超の重量に持ちこたえることができる。
【0214】
医薬投与剤型の破壊強度を測定するための方法は、当業者に公知である。適切な装置が市販されている。
【0215】
例えば、破壊強度(破砕に対する抵抗力)は、欧州薬局方5.0、2.9.8または6.0、2.09.08「Resistance to Crushing of Tablets」(非特許文献23)に従って測定することができる。試験は、定義された条件下で、錠剤を破砕により破壊するのに必要な力によって測定される、錠剤の破砕に対する抵抗力を決定することを意図する。装置は、相互に面する2つのジョーからなり、それらの一方が、他方に向かって動く。ジョーの平らな表面が、動作の方向に対して垂直である。ジョーの破砕表面は、平らであり、錠剤との接触帯域よりも大きい。装置は、1ニュートンの精度を有するシステムを使用して較正する。錠剤を、必要に応じて、形状、ブレークマークおよび銘刻を考慮に入れてジョー間に置く。測定する度に、錠剤を、力を加える方向に関して同じように方向付ける(典型的には長手方向の伸長に沿わせる)。測定は、10個の錠剤に対して実施し、錠剤の断片は全て各決定の前に除去してしまうように注意する。結果を、測定した力の平均値、最小値および最大値で表し、全てを、ニュートンで表す。
【0216】
破壊強度(破壊力)の類似の記載を、米国薬局方(非特許文献24)にも見出すことができる。代わって、破壊強度は、米国薬局方に記載されている方法に従って測定することもでき、破壊強度は、特定の平面において錠剤としての機能の喪失を引き起こす(すなわち、錠剤を割る)のに必要な力であると米国薬局方は記述している。錠剤を一般に、2つの圧盤間に置き、それらの一方が動いて、砕きを引き起こすのに十分な力を錠剤に加える。従来の円形(円状の横断面)の錠剤の場合、負荷が、錠剤の直径を横切って発生し(時には直径負荷と呼ぶ)、砕きは、平面において発生する。錠剤の破壊力は一般に、製剤学の文献では硬度と呼ばれている。しかし、この用語の使用は、誤解を与える。材料科学では、硬度という用語は、表面の、小さなプローブによる貫通または湾入に対する抵抗力を指す。また、破砕強度という用語も、錠剤の、圧縮荷重の適用に対する抵抗力を記載するために頻繁に使用される。この用語は、試験の本当の性質を、硬度が記載するよりも正確にするが、この用語は、錠剤が試験の間に実際に破砕することを暗示するが、そうでないことが多い。
【0217】
代わって、破壊強度(破砕に対する抵抗力)を、WO2006/082099(特許文献9)に従って測定することもでき、この方法は、欧州薬局方(非特許文献)に記載されている方法の改変とみなすことができる。測定のために使用する装置は、好ましくは、「Zwick Z 2.5」材料試験装置であり、Fmax=2.5kNであり、1150mmの最大ドローを有し、この装置は、testControlソフトウエアと併せて、1つの支柱および1つのスピンドルを用いて、100mmの後方のクリアランスおよび0.1mm/分と800mm/分との間で調節できる試験スピードでセットすべきである。測定は、ねじ込み挿入部およびシリンダー(直径10mm)を有する圧力ピストン、力変換器、Fmax.1kN、直径=8mm、ISO7500−1により、10Nからはクラス0.5、2Nからはクラス1を使用して実施する。これらは、DIN55350−18に従う製造元の検査証Mを有し(Zwick総力Fmax=1.45kN)(全ての装置がZwick GmbH & Co.KG、Ulm、ドイツ製である)、注文番号はBTC−FR2.5THである。試験装置の場合、D09、注文番号BTC−LC 0050N。力変換器の場合、P01、注文番号BO 70000、心立て装置の場合、S06。
【0218】
本発明の好ましい実施形態では、破壊強度を、破壊強度試験装置Sotax(登録商標)、タイプHT100(Allschwil、スイス)により測定する。Sotax(登録商標)HT100は、破壊強度を、2つの異なる測定原理、すなわち、一定のスピード(試験用ジョーが、5〜200mm/分に調節できる一定のスピードで動く)、または一定の力(試験用ジョーが、5〜100N/秒に調節できる力を線形に増加させる)に従って測定することができる。原則的に、両方の測定原理が、本発明による投与剤型の破壊強度の測定に適している。好ましくは、破壊強度を、一定のスピード、好ましくは、120mm/分の一定のスピードで測定する。
【0219】
好ましい実施形態では、医薬投与剤型は、少なくとも2つ別個の小片に砕かれた場合に、割れたとみなす。
【0220】
別の好ましい実施形態では、医薬投与剤型は、力が、測定の間に測定した最も高い力の25%(閾値)だけ減少した場合に、割れたとみなす。例えば、測定の間に測定した最も高い力が、144Nである場合、力が、108N(=144Nの75%;25%の減少)未満に減少したとき、錠剤が割れたとみなす。この場合には、それぞれの伸長方向の破壊強度の値は、144Nである。好ましい実施形態では、前記閾値は、30%、より好ましくは、35%、さらにより好ましくは、40%、最も好ましくは、45%、特に、50%である。これらの状況下では、投与剤型は、少なくとも2つ別個の小片に砕かれるには至らなくとも、割れたとみなさなければならない場合がある。例えば、中央で裂けているが、断片化するには至っていない投与剤型を、破壊強度のこの定義に従えば、割れたとみなさなければならない場合がある。したがって、この定義に従って、特定の力における破壊強度試験の不合格は、投与剤型の砕き、または力を上記の閾値未満に低下させる任意のその他の変形、例えば、破裂、亀裂、ひび割れ、切断、ひび等に起因し得る。
【0221】
本発明による医薬投与剤型は、少なくとも300N、好ましくは、少なくとも400N、より好ましくは、少なくとも500N、さらにより好ましくは、少なくとも750N、最も好ましくは、少なくとも1000N、特に、少なくとも1500Nの破壊強度を有する。
【0222】
本発明による医薬投与剤型を、自然に咀嚼する、乳鉢中で粉砕する、たたいて粉にする等により微粉化することが事実上不可能とするために、本発明による医薬投与剤型は、破壊強度(破砕に対する抵抗力)に加えて、広い温度範囲にわたり、場合によりまた、低い温度(例えば、−24℃未満、−40℃未満または液体窒素中)においても、機械的強度、場合によりまた、十分な硬度、耐衝撃性、衝撃弾性、引っ張り強度および/または弾性係数を示す。したがって、好ましくは、低いまたは非常に低い温度においても、例えば、医薬投与剤型を、そのもろさを増加させるために、例えば、−25℃未満、−40℃未満の温度まで、または液体窒素中でさえ最初に冷やす場合にも、本発明による医薬投与剤型のかなり高い破壊強度は維持される。
【0223】
本発明による医薬投与剤型は、高い衝撃強度を示す。
【0224】
例えば、医薬投与剤型の落下衝撃強度は、好ましくは、約0%である。落下衝撃強度は、錠剤を50cmの高さからステンレス鋼製の平板上に落下させた場合に得られる破損率であり、{(割れた錠剤)/(試験した錠剤)}100(%)により定義される。
【0225】
好ましくは、本発明による医薬投与剤型の衝撃強度は、十分に高く、したがって、本発明による医薬投与剤型をハンマーにより細かく砕くことができない。好ましくは、医薬投与剤型は、500gの重量を有するハンマーにより手作業で5回たたいても、細かく砕くことができない。好ましい実施形態では、医薬投与剤型は、室温のみならず、また、+4℃未満(冷蔵庫)、より好ましくは、−33℃未満(低温フリーザー)、最も好ましくは、−77℃未満(ドライアイス)、特に、−190℃未満(液体窒素)においても、この衝撃強度を示す。
【0226】
好ましくは、本発明による医薬投与剤型は、少なくとも1つの伸長方向、好ましくは、伸長方向Eに、少なくとも75N、より好ましくは、少なくとも100N、さらにより好ましくは、少なくとも125N、その上より好ましくは、少なくとも140N、最も好ましくは、少なくとも150N、特に、少なくとも160Nの切削抵抗を示す。好ましくは、切削試験を、DIN EN ISO604に従って、好ましくは、30mm/分の試験スピードで、0.30mmの厚さを有する汎用ガラスクリーニングブレード(universal glass cleaning blade)により実施する。
【0227】
本発明による医薬投与剤型の砕けやすさを、例えば、Pharmatest PTF−E装置(Hainburg、ドイツ)により、例えば、欧州薬局方(Ph.Eur.)(特許文献11)の規格に従って測定することができる。好ましくは、本発明による医薬投与剤型の砕けやすさは、最大0.50%、より好ましくは、最大0.40%、さらにより好ましくは、最大0.30%、その上より好ましくは、最大0.20%、最も好ましくは、最大0.10%、特に、最大0.05%である。
【0228】
好ましくは、本発明による医薬投与剤型は、コーティング、好ましくは、フィルム−コーティングを含有する。適切なコーティング材料が、当業者に公知である。適切なコーティング材料は、例えば、登録商標のOpadry(登録商標)およびEudragit(登録商標)の下に市販されている。
【0229】
適切な材料の例として、セルロースエステルおよびセルロースエーテル、例として、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na−CMC)、エチルセルロース(EC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP);ポリ(メタ)アクリル酸、例として、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、エチルアクリレートメチルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸メチルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸メチルメタクリレートコポリマー;ビニルポリマー、例として、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸フタル酸ビニル(polyvinylacetatephthalate)、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル;および天然のフィルム形成物質、例として、shellackが挙げられる。
【0230】
特に好ましい実施形態では、コーティングは水溶性である。好ましくは、コーティングは、ポリビニルアルコール、例として、部分加水分解ポリビニルアルコールに基づき、さらに、ポリエチレングリコール、例として、マクロゴール3350、および/または色素を含有してもよい。
【0231】
医薬投与剤型のコーティングは、そうした剤型の保存安定性を増加させることができる。
【0232】
コーティングは、胃液に対して耐性を示し、放出環境のpH値の関数として溶解し得る。このコーティングにより、本発明による医薬投与剤型が未溶解状態で胃を通過し、活性な化合物が腸内のみで放出されることを確実にすることが可能になる。胃液に対して耐性を示すコーティングは、好ましくは、5と7.5との間のpH値で溶解する。活性な化合物の遅延放出のためおよび胃液に対して耐性を示すコーティングの塗布のための対応する材料および方法は、例えば、「Coated Pharmaceutical dosage forms - Fundamentals, Manufacturing Techniques, Biopharmaceutical Aspects, Test Methods and Raw Materials」、Kurt H. Bauer、K. Lehmann、Hermann P. Osterwald、Rothgang、Gerhart、1st edition、1998年、Medpharm Scientific Publishers(非特許文献25)から当業者に公知である。
【0233】
薬理学的に活性な化合物(A)およびポリマー(C)に加えて、本発明による医薬投与剤型は、さらなる構成要素、例として、従来の薬学的賦形剤を含有することができる。
【0234】
好ましい実施形態では、医薬投与剤型は、本明細書の目的ではまた、「構成成分(D)」とも呼ぶ、少なくとも1つの天然、半合成または合成のろう(D)を含有する。好ましいろうは、少なくとも50℃、より好ましくは、少なくとも55℃、さらにより好ましくは、少なくとも60℃、最も好ましくは、少なくとも65℃、特に、少なくとも70℃の軟化点を有するろうである。
【0235】
カルナウバロウおよびミツロウが、特に好ましい。カルナウバロウは、大いに好ましい。カルナウバロウは、カルナウバヤシの葉から得られる天然のろうであり、少なくとも80℃の軟化点を有する。ろう構成成分をさらに含有させる場合、その含有量は十分に高く、したがって、医薬投与剤型の所望の機械的特性が達成される。
【0236】
本発明による医薬投与剤型中に含有させることができる補助物質(B)は、本明細書のさらなる目的ではまた、「構成成分(B)」とも呼び、固体の医薬投与剤型の製剤化のために従来からある公知の補助物質である。
【0237】
補助物質(B)の例は、可塑剤、(さらなる)マトリックス材料、抗酸化剤等である。
【0238】
適切な可塑剤として、トリアセチンおよびポリエチレングリコール、好ましくは、低分子量ポリエチレングリコール(例えば、マクロゴール6000)が挙げられる。
【0239】
マトリックス材料は、活性な化合物の放出に影響を及ぼす補助物質、好ましくは、疎水性もしくは親水性のポリマー、好ましくは、親水性ポリマー、大いに好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および/または抗酸化剤である。ポリマー、特に好ましくは、セルロースエーテル、セルロースエステルおよび/またはアクリル樹脂を、好ましくは、親水性マトリックス材料として含有させる。エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸および/またはそれらの誘導体、例として、それらのコポリマー、塩、アミドもしくはエステルを、大いに好ましくは、マトリックス材料として含有させる。
【0240】
適切な抗酸化剤は、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸の塩、モノチオグリセロール、亜リン酸、ビタミンC、ビタミンEおよびその誘導体、安息香酸塩コニフェリル、ノルジヒドログアヤレチン酸、没食子酸エステル、亜硫酸水素ナトリウム、特に好ましくは、ブチルヒドロキシトルエンまたはブチルヒドロキシアニソールおよびα−トコフェロールである。抗酸化剤は、好ましくは、医薬投与剤型の総重量に対して、0.01〜10重量%、好ましくは、0.03〜5重量%の分量で使用する。
【0241】
好ましい実施形態では、本発明による医薬投与剤型は、クエン酸またはその生理学的に許容できる塩を含有する。
【0242】
ここで、本発明による医薬投与剤型の好ましい組成物X〜Xを、以下の表に要約する。
【0243】
【表6】

【0244】
本発明による医薬投与剤型は、加熱溶融押出成型し、すなわち、押出成型機を用いて熱成型することによって生成し、好ましくは、任意の観察可能な結果として生じる押出成型品の変色はいずれも生じない。
【0245】
この熱成型に起因する変色の程度を検討するために、医薬投与剤型をなす出発構成成分の混合物の色を、色を与える構成成分、例えば、着色色素または固有に着色された構成成分(例えばα−トコフェロール)等を添加せずに最初に決定する。次いで、この組成物を、本発明に従って熱成型し、押出成型品の冷却を含めた、全ての加工のステップを、不活性ガス雰囲気下で実施する。比較の目的で、同じ組成物を、同じように加工するが、不活性ガス雰囲気を用いないで生成する。出発組成物から本発明に従って生成した医薬投与剤型および比較の目的で生成した医薬投与剤型の色を決定する。決定は、「Munsell Book of Color」、Munsell Color Company Baltimore、Maryland、USA、1966 edition(非特許文献26)により実施する。本発明に従って熱成型した医薬投与剤型の色が、同定番号N9.5の色であるが、最大限でも同定番号5Y9/1の色である場合、熱成型は、「変色なし」であると分類する。医薬投与剤型が、Munsell Book of Colorに従って決定した場合、同定番号5Y9/2以上の色を有する場合、熱成型は、「変色あり」であると分類する。
【0246】
一般に、加熱溶融押出成型は、
i)構成成分(A)、構成成分(C)、場合により、構成成分(B)および/もしくは構成成分(D)を混合するステップと、
ii)押出成型機中で、得られた混合物を少なくとも構成成分(C)の軟化点まで加熱し、こうして加熱した混合物を、力を加えることによって、押出成型機の出口のオリフィスを通して押出成型するステップと、
iii)まだ柔軟な押出成型品を小分けし、前記小分け押出成型品から医薬投与剤型を形成するステップ、または
iv)冷却もしくは場合により再加熱した小分け押出成型品から、医薬投与剤型を形成するステップと
を含む。
【0247】
また、加工のステップi)に記載の構成成分の混合は、押出成型機中で進めてもよい。
【0248】
また、構成成分(A)、構成成分(C)、場合により、構成成分(B)および/または構成成分(D)は、当業者に公知の混合機中で混合してもよい。混合機は、例えば、ロールミキサー、振とう混合機、せん断混合機または強制混合機であってよい。
【0249】
構成成分(C)および/または構成成分(D)には、残りの構成成分とブレンドする前に、好ましくは、本発明に従って、抗酸化剤を加える。これは、2つの構成成分、すなわち、構成成分(C)と抗酸化剤とを混合すること、好ましくは、抗酸化剤を極めて揮発性の溶媒中に溶解または懸濁させ、この溶液または懸濁液を、構成成分(C)および場合により存在する構成成分(D)と均一に混合し、溶媒を、好ましくは、不活性ガス雰囲気下で乾燥することによって除去することにより進めることができる。
【0250】
押出成型機中で少なくとも構成成分(C)の軟化点まで加熱してある、好ましくは、溶融させた混合物を、押出成型機から、少なくとも1つの孔を有する金型を通して押出成型する。
【0251】
本発明に従う方法には、適切な押出成型機、好ましくは、スクリュー押出成型機を使用することが必要となる。2つのスクリューが装備されているスクリュー押出成型機(二軸スクリュー式押出成型機)が、特に好ましい。
【0252】
本発明のさらなる態様は、加熱溶融押出成型した医薬投与剤型を製造するための方法に関し、前記投与剤型は、好ましくは、上記の定義に従い、上記の定義に従って薬理学的に活性な成分(A)の制御放出を示し、成分(A)を、上記の定義に従ってポリマー(C)を含むマトリックス中に包埋し、長手方向の伸長、長手方向の伸長に対して直角の、横方向の伸長、前側、向かい合う後側、および前記前側と後側との間の周縁を含む楕円形の形状を有し、前記方法は、
(a)
− 薬理学的に活性な成分(A)、および
− ポリマー(C)
を含む塊を、楕円形の金型を通して加熱溶融押出成型し、それによって、楕円形の横断面を有する押出成型品を得るステップと、
(b)前記押出成型品を、楕円形の形状の2つの対向する切断表面を有する切片に(好ましくは、押出成型方向に対して実質的に直角の平面で)切断するステップと、
(c)前記切片を、上部パンチおよび下部パンチを含む打錠ツール中に、楕円形の形状の対向する表面が前記上部および下部のパンチそれぞれに面するように置くステップと、
(d)切片から投与剤型をプレス成型するステップと、
(e)場合により、フィルムコーティングを塗布するステップと
を含む。
【0253】
押出成型は、好ましくは、押出成型に起因するストランドの膨張が50%以下であるように実施する、すなわち、例えば、直径6mmの孔を有する金型を使用した場合、押出成型されたストランドは、9mm以下の直径を有するべきである。より好ましくは、ストランドの膨張は、40%以下、さらにより好ましくは、35%以下、最も好ましくは、30%以下、特に、25%以下である。驚くべきことに、押出成型する材料が、押出成型機中で、特定の限度を上回る機械的ストレスに曝されると、顕著なストランドの膨張が発生し、それによって、押出成型されたストランドの特性、特に、その機械的特性に望ましくない不規則性が結果として生じることを見出すに至った。
【0254】
好ましくは、押出成型は、水の非存在下で実施する、すなわち、水を添加しない。しかし、(例えば、大気湿度に起因する)微量の水は、存在してよい。
【0255】
押出成型機は、好ましくは、供給帯域および場合により混合帯域の下流にある第1の帯域から始まる、混合物を少なくとも構成成分(C)の軟化点まで加熱する少なくとも2つの温度帯域を含む。混合物の処理量は、好ましくは、2.0kg〜8.0kg/時間である。
【0256】
溶融させた混合物を、少なくとも構成成分(C)の軟化点まで加熱した後、スクリューにより運び、さらにホモジナイズし、押出成型機の金型から現れる直前に、5バール、好ましくは、少なくとも7.5バール、より好ましくは、少なくとも10バール、さらにより好ましくは、少なくとも12.5バール、その上より好ましくは、少なくとも15バール、最も好ましくは、少なくとも17.5バール、特に、少なくとも20バールの最小圧力を示すように圧縮するかまたはぎっしり詰め、金型を通して、金型が含む孔の数に応じて、押出成型された1つまたは複数のストランドとして押出成型する。
【0257】
好ましい実施形態では、金型頭部の圧力は、25〜85バールの範囲に収まる。金型頭部の圧力はとりわけ、金型の幾何学的形状、温度プロファイルおよび押出成型のスピードにより調節することができる。
【0258】
本発明に従って使用する押出成型機のケーシングを、加熱または冷却することができる。対応する温度制御、すなわち、加熱または冷却を、押出成型しようとする混合物が、構成成分(C)の軟化温度に対応する平均温度(生成物の温度)を少なくとも示し、加工しようとする薬理学的に活性な化合物(A)を損傷する恐れがある温度を越えては上昇しないように整える。好ましくは、押出成型しようとする混合物の温度は、180℃未満、好ましくは、150℃未満であるが、少なくとも構成成分(C)の軟化温度に調節する。典型的な押出成型の温度は、120℃および130℃である。
【0259】
好ましい実施形態では、押出成型機のトルクは、25〜55Nmの範囲に収まる。押出成型機のトルクはとりわけ、金型の幾何学的形状、温度プロファイルおよび押出成型のスピードにより調節することができる。
【0260】
本発明に従う加工のステップ(a)では、塊を、楕円形の金型を通して加熱溶融押出成型し、それによって、楕円形の横断面を有する押出成型品を得る。本発明に従う加工のステップ(b)では、ステップ(a)で得られた前記押出成型品を、楕円形の形状の2つの対向する切断表面を有する切片に切断する。
【0261】
したがって、金型の幾何学的形状が、押出成型品の横断面および切片の横断面をあらかじめ決定し、両方の横断面は、楕円形であり、好ましくは、実質的に同一である。
【0262】
楕円形の横断面は好ましくは、21mmの最大の縦の伸長および10mmの最大の横の伸長を有する。
【0263】
好ましい実施形態では、楕円形の金型の最大の縦の伸長の、最大の横の伸長に対する相対的な比は、少なくとも1.5:1、より好ましくは、少なくとも2.0:1、さらにより好ましくは、少なくとも2.2:1、その上より好ましくは、少なくとも2.3:1、最も好ましくは、少なくとも2.4:1、特に、少なくとも2.5:1である。
【0264】
好ましい楕円形の金型は、以下の縦の伸長および横の伸長A〜Aを有する
【0265】
【表7】

【0266】
好ましくは、楕円形の金型は、長円の形状または長方形の形状を有し、好ましくは、長方形の丸い端をもち、例えば、

である。
【0267】
好ましくは、金型の寸法は、最終的な楕円形の投与剤型の対応する寸法よりも約2mm小さい。
【0268】
溶融させた混合物を押出成型し、場合により、押出成型された1つまたは複数のストランドを冷却した後に、押出成型品を、好ましくは小分けする。小分けは、好ましくは、押出成型品を、旋回する(revolving)もしくは回転する(rotating)ナイフ、水ジェットカッター、ワイヤー、刃によってかまたはレーザーカッターを用いて切断することにより実施することができる。
【0269】
小分け、例えば、切断は、楕円形の形状の2つの対向する切断表面および筒(円筒)を有する、十分に定義された長さおよび重量の切片をもたらす。典型的には、単一の投与剤型を、好ましくは、単一の切片から形成すると、各切片が、所望の投与量の薬学的に活性な成分(A)および所望の量のポリマー(C)、ならびに場合により存在するさらなる賦形剤をすでに含有し、さらなる賦形剤もまた、最終的な投与剤型中に含有されることを意図する。
【0270】
好ましい実施形態では、小分けは、押出成型方向に対して実質的に直角の平面で実施する。しかしまた、小分けの平面が、例えば、押出成型方向に対するある角度を含むことも可能である。小分け、例えば、切断は、十分に定義されたサイズ、特に、十分に定義された体積および表面積の切片をもたらす。表面積は、楕円形の形状の2つの対向する切断表面と筒(円筒)の領域との和である。
【0271】
好ましい実施形態では、ステップ(b)で得られた切片の総表面の少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも55%、さらにより好ましくは、少なくとも60%、その上より好ましくは、少なくとも65%、最も好ましくは、少なくとも70%、特に、少なくとも75%が、2つの対向する切断表面により形成される。
【0272】
好ましい実施形態では、切片(押出成型品)の2つの切断表面Sの領域の、筒(円筒)の領域に対する相対的な比は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4または0.5;より好ましくは、少なくとも0.6、0.7、0.8、0.9または1.0;さらにより好ましくは、少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4または1.5;その上より好ましくは、少なくとも1.6、1.7、1.8、1.9または2.0;最も好ましくは、少なくとも2.1、2.2、2.3、2.4または2.5;、特に、少なくとも2.6、2.7、2.8、2.9または3.0である。別の好ましい実施形態では、切片(押出成型品)の2つの切断表面Sの領域の、筒(円筒)の領域に対する相対的な比は、少なくとも3.1、3.2、3.3、3.4または3.5;より好ましくは、少なくとも3.6、3.7、3.8、3.9または4.0;さらにより好ましくは、少なくとも4.1、4.2、4.3、4.4または4.5;その上より好ましくは、少なくとも4.6、4.7、4.8、4.9または5.0;最も好ましくは、少なくとも5.1、5.2、5.3、5.4または5.5;特に、少なくとも5.6、5.7、5.8、5.9または6.0である。
【0273】
当業者であれば、押出成型する塊の組成、押出成型の金型のサイズ、および押出成型されたストランドから小分けした切片の長さが、(場合により加えるコーティングを除く)投与剤型の総重量、投与剤型の薬物含有量およびその放出プロファイルを決定することを認識する。前記放出プロファイルは、投与剤型の上部側面および後部側面を本質的に提供する切片の対向する切断表面と、投与剤型の周縁を本質的に提供する切片の筒(円筒)との異なる放出特性に基づく。
【0274】
不活性ガス雰囲気は、場合により小分けした押出成型品の中間のもしくは最終的な保存にも、本発明による医薬投与剤型の最終的な成形にも必要でない。
【0275】
小分け押出成型品は、医薬投与剤型に最終的な形状を与えるために、従来法を用いてペレット化しても、または錠剤にプレス成型してもよい。しかし、押出成型されたストランドを小分けせず、外側のスリーブ中に対向する凹所を含む二重反転カレンダーロールを用いて、押出成型されたストランドから、最終的な形状、好ましくは、錠剤を形成すること、および従来法により、押出成型されたストランドを小分けすることも可能である。
【0276】
場合により小分けした押出成型品から、最終的な形状を直ちには形成しないが、代わりに冷却して保存する場合には、保存期間後、不活性ガス雰囲気、好ましくは、窒素雰囲気を、提供すべきであり、医薬投与剤型を得るための可塑化および最終的な成形の前の、保存されていた押出成型品を加熱する間は維持しなければならない。
【0277】
押出成型機中における、少なくとも可塑化した混合物上への力の適用を、押出成型機中の伝達装置の回転スピードおよび伝達装置の幾何学的形状を制御すること、ならびに出口のオリフィスを、可塑化した混合物を押出成型するのに必要な圧力が、押出成型機中に、好ましくは、押出成型の直前に蓄積するような大きさにすることによって調節する。それぞれの特定の組成物について、少なくとも300N、好ましくは、少なくとも400N、より好ましくは、少なくとも500Nの破砕に対する抵抗力を有する医薬投与剤型をもたらすのに必要である押出成型のパラメータを、簡便な予備試験により確立することができる。
【0278】
例えば、加熱溶融押出成型を、二軸スクリュー式押出成型機Micro27GL40D型(Leistritz, Nuernberg、ドイツ)、スクリュー直径27mmにより実施することができる。偏心端を有するスクリューを使用することができる。加熱可能な金型を使用することができる。押出成型のプロセス全体を、窒素雰囲気下で実施すべきである。押出成型のパラメータを、例えば、以下の値に調節することができる:スクリューの回転スピード:100Upm;送達速度:4kg/時間;生成物の温度:125℃;および筒の温度:120℃。
【0279】
代わって、加熱溶融押出成型を、遊星ギア押出成型機により実施することもできる。遊星ギア押出成型機は、公知であり、Handbuch der Kunststoff-Extrusionstechnik I (1989) 「Grundlagen」、Chapter 1.2 「Klassifizierung von Extrudern」、4〜6頁(非特許文献27)にとりわけ詳細に記載されている。適切な遊星ギア押出成型機は、例えば、4つの遊星スピンドルおよび押出成型の金型を有する押出成型機BCG10型(LBB Bohle、Ennigerloh、ドイツ)である。3.0kg/時間の重量注入が適切である。押出成型は、例えば、28.6rmpの回転スピードおよび約88℃の生成物の温度において実施することができる。
【0280】
本発明による医薬投与剤型の成形は、特に重要である。医薬投与剤型の最終的な形状は、混合物を熱および力を加えることによって硬化させる間に、またはそれに続くステップにおいてのいずれかで得ることができる。両方の場合、全ての構成成分の混合物は、好ましくは、可塑化された状況にある、すなわち好ましくは、成形を、少なくとも構成成分(C)の軟化点を越えた温度で実施する。
【0281】
成形は、例えば、適切な形状の金型およびプランジャー(パンチ)を含む打錠機により実施することができる。
【0282】
好ましい実施形態では、プランジャーは、H型プランジャーであり、したがって、医薬投与剤型の横断面は、Hの形をとる。
【0283】
別の好ましい実施形態では、プランジャーは、周縁を有する両凸楕円形の錠剤をもたらす従来の楕円形のプランジャーである。
【0284】
本発明による医薬投与剤型の調製のための方法は、好ましくは、連続的に実施する。好ましくは、この方法は、構成成分(A)および構成成分(C)を含む均一な混合物の押出成型を含む。得られた中間体、例えば、押出成型により得られたストランドが一様な特性を示すことが特に好都合である。一様な密度、活性な化合物の一様な分布、一様な機械的特性、一様な多孔率、表面の一様な外観等が特に望ましい。これらの状況下でのみ、薬理学的特性の一様性、例として、放出プロファイルの安定性を保証することができ、不良品の量を低く保つことができる。驚くべきことに、上記の特性を、二軸スクリュー式押出成型機および遊星ギア押出成型機により得ることができ、二軸スクリュー式押出成型機が特に好ましいことを見出すに至った。
【0285】
驚くべきことに、本発明に従う方法は、光学的欠陥、および円状の横断面を有する円柱状の押出成型ストランドから、押出成型品をH型プランジャーによりプレス成型して製造した加熱溶融押出成型錠剤において観察された構造上の弱点を克服することを見出すに至った。
【0286】
驚くべきことに、結果として生じる、本発明による楕円形の横断面を有する押出成型品は、打錠パンチをより完璧に満たすことができ、したがって、観察された課題を解決することを見出した。
【0287】
さらに、楕円形の金型を使用する場合、押出成型が滑らかであり、パラメータの改変がいらない可能性があることも見出した。楕円形の形状の押出成型の金型を使用することによって、より低い溶融温度およびより低い背圧が生じる。このことは、ポリマーをより保護するプロセスを示す。
【0288】
したがって、塊を、楕円形の形状の金型を通して加熱溶融押出成型すると、「標準的な」(両凸)楕円形の形状に比しても、H形状に比しても、打錠により、優れた品質が生じる。楕円形の押出成型品からの錠剤の場合、破砕に対する抵抗力(破壊強度)は、少なくとも同等であるかまたはより高く、この変形させたH形状の投与剤型は、有意により少ない欠陥を示す。
【0289】
その上さらに、驚くべきことに、楕円形の形状の押出成型品から形成した錠剤の場合、円状の横断面を有する円柱状の押出成型品に由来する錠剤と比較して、溶解がスピードアップすることも見出すに至った。
【0290】
要約すると、楕円形の形状の金型を通しての押出成型は、押出成型品から、楕円形の形状の錠剤を形成しようとする場合に好都合である。特に、楕円形のH形状の錠剤の典型的な欠陥を、克服することができる。
【0291】
本発明のさらなる態様は、上記のプロセスにより入手可能な加熱溶融押出成型した医薬投与剤型に関する。
【0292】
本発明のさらなる態様は、本発明による医薬投与剤型および脱酸素剤を含有する包装に関する。適切な包装として、ブリスター包装、およびボトル、例として、ガラス製ボトルまたは熱可塑性ポリマーから作られたボトルが挙げられる。
【0293】
脱酸素剤、および医薬品包装におけるそれらの適用は、当業者に公知である。好ましい実施形態では、脱酸素剤は、金属触媒易酸化性有機ポリマーおよび抗酸化剤からなる群から選択される。驚くべきことに、包装内の雰囲気の酸素含有量を低く保った場合に、医薬投与剤型の保存安定性を増加させることができることを見出すに至った。医薬投与剤型を包装するための方法および適切な脱酸素剤の適用は、当業者に公知である。この点に関しては、例えば、D.A. Dean、Pharmaceutical Packaging Technology, TaylorおよびFrancis, 1st ed.(非特許文献28);F.A. Paineら、Packaging Pharmaceutical and Healthcare Products、Springer、1st ed.(非特許文献29);ならびにO.G. Piringerら、Plastic Packaging: Interactions with Food and Pharmaceuticals、Wiley-VCH、2nd ed(非特許文献30)を参照することができる。
【0294】
本発明による医薬投与剤型は、種々の誤用、特に、
− 偶発的な誤用(例えば、意図的でない誤用)、
− 娯楽目的の誤用、および
− 常習的な薬物の誤用
を回避するのに適切である。
【0295】
本発明のさらなる態様は、上記したように、疼痛治療のための医薬投与剤型を製造するためのオピオイドの使用に関する。
【0296】
本発明のさらなる態様は、上記したように、中に含有させた薬理学的に活性な化合物(A)の乱用を回避または妨害するための医薬投与剤型の使用に関する。
【0297】
本発明のさらなる態様は、上記したように、中に含有させた薬理学的に活性な化合物(A)の意図的でない過量投与を回避または妨害するための医薬投与剤型の使用に関する。
【0298】
この点に関してまた、本発明は、障害の予防および/または治療のための本発明による医薬投与剤型を製造するための、上記の薬理学的に活性な化合物(A)および/または上記の合成もしくは天然のポリマー(C)の使用にも関し、それによって、薬理学的に活性な化合物(A)の、特に、医薬投与剤型を機械的作用により細かく砕くことに起因する過量投与を予防する。
【0299】
さらに、本発明は、本発明による医薬投与剤型を投与するステップを含む、障害を予防および/または治療するための方法にも関し、それによって、薬理学的に活性な化合物(A)の、特に、医薬投与剤型を機械的作用により細かく砕くことに起因する過量投与を予防する。好ましくは、機械的作用は、咀嚼、乳鉢中での粉砕、たたいて粉にすること、および従来の医薬投与剤型を微粉化するための装置の使用からなる群から選択される。
【実施例】
【0300】
以下に、本発明を、例を参照して説明する。これらの説明は、単に例を示す目的で示すに過ぎず、本発明の一般概念および範囲を制限しない。
【0301】
例1
測定寸法515mmおよび718mmを有する、楕円形の形状の押出成型の金型を検討した。
【0302】
粉末ブレンドを調製した。ここで、組成を、以下の表に示す。
【0303】
【表8】

【0304】
上記の粉末ブレンドは、以下の従属例の基礎となった。
【0305】
【表9】

【0306】
検討した従属例により、押出成型の金型の、錠剤特性に対する影響を比較することが可能になる。
【0307】
例2
粉末ブレンドを調製した。ここで、組成を、以下の表に示す。
【0308】
【表10】

【0309】
上記の粉末ブレンドは、以下の従属例の基礎となった。
【0310】
【表11】

【0311】
検討した従属例により、押出成型の金型の、錠剤特性に対する影響を比較することが可能になる。
【0312】
製造方法
a)押出成型
押出成型を、Leistritz(登録商標)PH27micro二軸スクリュー式押出成型機上で、処理量を3.5kg/時間に低下させて実施した。個々の加熱帯域の温度を、30℃〜135℃の値に調節した。
【0313】
b)切断
切断を、円形の押出成型品については、Schlicht(登録商標)CC250切断機を使用して、および楕円形の形状の押出成型品については、パン用スライサーを手動で使用して行った。手作業の切断の結果、これらに限定されないが、はるかにより多くの表面の欠陥を含めて、押出成型品の極めて劣った品質を得た。
【0314】
錠剤の形成
錠剤の形成を、Korsch(登録商標)EK0上で、717mmのH9フォーマットについて実施した。その他の錠剤は全て、Kilian(登録商標)S250上で成形した。
【0315】
解析方法
a)寸法
寸法を、手動ノギスを使用して測定した。
【0316】
b)破砕に対する抵抗力
破砕に対する抵抗力を、平ブラケットを有するSotax(登録商標)HT100上で測定した。錠剤の方向性は縦であった。
【0317】
c)溶解
溶解を、Ph Eur.2.9.3(非特許文献31)に従って、シンカーを有するパドル装置中の擬似腸液(900ml、pH6.6、KHPO+NaOH)中、回転スピード50rpm、37℃で測定した。それぞれの試料について、6回測定した(n=6)。放出を、UV分光法により271nmでモニターした。
【0318】
結果
a)押出成型−例1
押出成型は、いずれの予想外の課題も伴うことなく、可能であった。ぴったり同一の押出成型機の設定を使用したので、目覚しい観察結果を得ることができる。
【0319】
【表12】

【0320】
上記のデータは、円形の金型を通過した押出成型品の溶融温度は、楕円形の形状の金型を用いて生成した押出成型品の温度よりも有意に高いことを示している。ストランドの外観は、視覚的に同一であったが、楕円形の形状を使用することにより、溶融温度の低下が生じ、したがって、材料にとってはより穏やかとなる。背圧は、最低限であることを観察し、楕円形の形状の金型の場合は、円形の金型の場合よりも低かった。
【0321】
a)押出成型−例2
押出成型は、いずれの予想外の課題も伴うことなく、可能であった。ぴったり同一の押出成型機の設定を使用したので、目覚しい観察結果を得ることができる。
【0322】
【表13】

【0323】
ここでも、上記のデータは、円形の金型を通過した押出成型品の溶融温度は、楕円形の形状の金型を用いて生成した押出成型品の溶融温度よりも有意に高いことを示している。ストランドの外観は、視覚的に同一であったが、楕円形の形状を使用することにより、溶融温度の低下が生じ、したがって、材料にとってはより穏やかとなる。背圧は、楕円形の形状の金型の場合、円形の金型の場合よりも約20%低いことを観察した。
【0324】
b)錠剤の形成:寸法、外観および破砕に対する抵抗力
【0325】
【表14】

【0326】
破砕に対する抵抗力試験を、装置の範囲の上限で実施するので、平均値のみが参考になる。
【0327】
結果は、従属例1〜5が従属例1〜3を上回って優れていること示している。後者の場合、錠剤の22%がへそを示し、一方、前者の場合、へそは全く存在しなかった。この知見は、錠剤のより良好な形成を暗示しており、長さの測定により支持されている。すなわち、1〜5は、パンチから、より完全に形成され、その結果、顕著により長い錠剤が生じる。破砕に対する抵抗力は、1〜5の場合、若干より高い。両方のバッチの変形させた錠剤が、類似の外観を示す。
【0328】
【表15】

【0329】
破砕に対する抵抗力試験を、装置の範囲の上限で実施するので、平均値のみが参考になる。
【0330】
上記の表に示した結果は、従属例1〜6が従属例1〜4を上回って優れていること示している。両方のバッチにおいて、錠剤にはへそがないが、従属例1〜6は、より正確に形成される。ここでも、このことは、長さの測定からの結論である。すなわち、1〜6は、パンチから、より完全に形成され、その結果、顕著により長い錠剤が生じる。破砕に対する抵抗力における優位性を示すことができないにしても、この試験の後で撮影した錠剤の写真は、従属例1〜6の利点を暗示している。1〜4のほとんどの錠剤が、谷のセクションにおいて特徴的な穴を示し、これは、H形状から引き離すときに生じることが以前から認められており、一方、1〜6では、単一の錠剤のみが穴を示すが、谷の領域以外においてである。この知見は、従属例1〜6では、内在する強度が増加していることを示している。
【0331】
【表16】

【0332】
破砕に対する抵抗力試験を、装置の範囲の上限で実施するので、平均値のみが参考になる。
【0333】
上記のデータは、従属例2〜6には、より多くのへそがあることを示している。これは、手作業の切断の加工品である可能性があり、過大評価すべきでない。ここでも以前に言及したように、長さの測定は、楕円形の形状の押出成型品が、パンチをより完全に満たすことを示している。破砕に対する抵抗力は、きわめて類似するが、約1000N未満の値は、従属例2〜6についてのみ測定され、おそらく外観上の欠陥に関連し得る。試験後の錠剤の外観は、きわめて類似する。
【0334】
【表17】

【0335】
破砕に対する抵抗力試験を、装置の範囲の上限で実施するので、平均値のみが参考になる。
【0336】
上記の表から見ることができるように、従属例2〜7は、より多くの光学的欠陥を有し、ここでも、楕円形の形状の押出成型品は、打錠パンチをより完全に満たす。破砕に対する抵抗力は、円形の押出成型品からの錠剤の抵抗力よりも約60%高い。ここでも、試験後の錠剤の写真は、楕円形の形状の押出成型品の利点を示している。
【0337】
【表18】

【0338】
破砕に対する抵抗力試験を、装置の範囲の上限で実施するので、平均値のみが参考になる。
【0339】
事実上、H0形状の錠剤とH1形状の錠剤との間に定性的な差はない。へそを示す錠剤の量は、以前よりも、従属例2〜5と従属例2〜8との間でより類似する。しかし、このことは、手作業で切断した押出成型品の正確さのより低い品質に起因して過大評価すべきでない。
【0340】
in vitroの溶解実験の結果を、図6〜10に示す。
図6:717mmの楕円形の錠剤に成形した例1の溶解プロファイル、平均、n=3
図7:717mmのH9形状の錠剤に成形した例1の溶解プロファイル、平均、n=3
図8:921mmの楕円形の錠剤に成形した例2の溶解プロファイル、平均、n=3
図9:921mmのH0形状の錠剤に成形した例2の溶解プロファイル、平均、n=3
図10:8.622.6mmのH1形状の錠剤に成形した例2の溶解プロファイル、平均、n=3
【0341】
生成した錠剤の全ての溶解プロファイルが、錠剤のフォーマットにかかわりなく、楕円形の形状の押出成型品から形成した楕円形の錠剤は、円柱状の押出成型品から形成した楕円形の錠剤と比較して加速することを示している。
【0342】
この溶解の加速の程度を、図11および12により示す。楕円形の形状の押出成型の金型を使用することによって、溶解の加速が、非H形状の楕円形の錠剤について達成され、その加速は、円柱状の金型を用いて作った押出成型品から作った、H形状の錠剤用パンチを使用した錠剤の加速と同等である。
図11:例1の溶解:円形の押出成型品からのH9フォーマットと、楕円形の押出成型品からの楕円形フォーマットとの比較、平均、n=3
図12:例2の溶解:円形の押出成型品からのH0フォーマットと、楕円形の押出成型品からの楕円形フォーマットとの比較、平均、n=3
【0343】
溶解データから、楕円形の形状の押出成型品から形成した楕円形の錠剤についての溶解が、円柱状の押出成型品に由来する錠剤と比較してスピードアップすることが明らかである。この加速は、(従来の)両凸楕円形の錠剤を用いて、十分に速い溶解を達成することが明らかに可能となる程度である、すなわち、溶解速度に関する限りは、H形状のフォーマットをとる楕円形の錠剤を提供する必要性がない。
【0344】
この知見は、予想外であり、選んだ押出成型の金型に依存する押出成型品内部のいくつかの構造上の変化を示しているか、または押出成型品自体の非等尺性の挙動を暗示している。
【0345】
さらに、押出成型品から、楕円形の形状の錠剤を形成しようとする場合にも、楕円形の形状の金型を通す押出成型は好都合である。破砕に対する抵抗力試験の間の破裂は、所望の破壊力で発生しない。光学的欠陥(「へそ」)を、低下させることができるか、または完全に排除することさえできるであろう。逸脱する溶解挙動は、押出成型品中のいくつかの構造上の変化を暗示している。
【0346】
例3
粉末ブレンドを調製した。ここで、組成を、以下の表に示す。
【0347】
【表19】

【0348】
上記の粉末ブレンドは、以下の従属例の基礎となった。
【0349】
【表20】

【0350】
例2と同様に、押出成型を、7×18mmの楕円形の形状の金型を使用して実施した。従属例3〜1では、押出成型した粗切片を、さらなる改変を行うことなく検討した。従属例3〜2では、押出成型した粗切片を、2回折り畳み、その後、9mmの直径および7.2mmの曲率半径を有する錠剤にプレス成型した。
【0351】
トラマドールHClの放出プロファイルを、例2と同様に測定した。結果を、図13に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー(C)を含むマトリックス中に包埋させた薬理学的に活性な成分(A)の制御放出を示す、加熱溶融押出成型した医薬投与剤型であって、前記投与剤型が、長手方向の伸長、長手方向の伸長に対して直角の、横方向の伸長、前側、向かい合う後側、および前記前側と後側との間の周縁を含む楕円形の形状を有し、
− 医薬投与剤型のコアが、加熱溶融押出成型により引き起こされた、投与剤型の長手方向の伸長に対して実質的に直角である形態学的方向性を有し、かつ/または
− 薬理学的に活性な成分(A)の、前側および向かい合う後側を通しての面積当たりの放出が、周縁を通しての放出よりも速い
投与剤型。
【請求項2】
加熱溶融押出成型により引き起こされた形態学的方向性が、投与剤型の横方向の伸長に対して実質的に直角である、請求項1に記載の投与剤型。
【請求項3】
一体型のコアを含む、請求項1または2のいずれか一つに記載の投与剤型。
【請求項4】
薬理学的に活性な成分(A)が、オピオイドである、請求項1〜3のいずれか一つに記載の投与剤型。
【請求項5】
ポリマー(C)が、少なくとも200,000g/モルの重量平均分子量を有するポリアルキレンオキシドである、請求項1〜4のいずれか一つに記載の投与剤型。
【請求項6】
ポリマー(C)の含有量が、投与剤型の総重量に対して少なくとも30重量%である、請求項1〜5のいずれか一つに記載の投与剤型。
【請求項7】
長手方向の伸長と横方向の伸長の相対的な長さの比が、少なくとも1.1:1である、請求項1〜6のいずれか一つに記載の投与剤型。
【請求項8】
フィルムコーティングを含む、請求項1〜8のいずれか一つに記載の投与剤型。
【請求項9】
人工胃液中のin vitroの条件下では、薬理学的に活性な成分(A)を以下の放出プロファイル:
投与剤型中に最初に含有させる薬理学的に活性な成分(A)の総重量に対して、
0.5時間後に少なくとも5重量%、
1時間後に少なくとも10重量%、
3時間後に少なくとも20重量%、
6時間後に少なくとも35重量%、および
12時間後に少なくとも55重量%。
に従って放出する、請求項1〜8のいずれか一つに記載の投与剤型
【請求項10】
ポリマー(C)を含むマトリックス中に包埋させた薬理学的に活性な成分(A)の制御放出を示す、加熱溶融押出成型した医薬投与剤型を製造するための方法あって、前記投与剤型が、少なくとも300Nの破壊強度を示し、長手方向の伸長、長手方向の伸長に対して直角の、横方向の伸長、前側、向かい合う後側、および前記前側と後側との間の周縁を含む楕円形の形状をし、前記方法が、
(a)
− 薬理学的に活性な成分(A)、および
− ポリマー(C)
を含む塊を、
楕円形の金型を通して加熱溶融押出成型し、それによって、楕円形の横断面を有する押出成型品を得るステップと、
(b)前記押出成型品を、楕円形の形状の2つの対向する切断表面を有する切片に切断するステップと、
(c)前記切片を、上部パンチおよび下部パンチを含む打錠ツール中に、楕円形の形状の対向する表面が前記上部および下部のパンチそれぞれに面するように置くステップと、
(d)切片から投与剤型をプレス成型するステップと、
(e)場合により、フィルムコーティングを塗布するステップと
を含む方法。
【請求項11】
請求項1〜9に記載のいずれか一つに記載の投与剤型を製造するためのものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(a)を、w型二軸スクリュー式押出成型機により実施する、請求項10または11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)で得られた切片の総表面の少なくとも50%が、2つの対向する切断表面により形成される、請求項10〜12に記載のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
請求項10〜13に記載のいずれか一つに記載の方法により得ることができる、加熱溶融押出成型した医薬投与剤型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−533584(P2012−533584A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520950(P2012−520950)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004459
【国際公開番号】WO2011/009602
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(390035404)グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (127)
【Fターム(参考)】