説明

加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置及びその製造方法

【課題】加熱炉の排気口内に設置して、排気口から流出する熱を減少させ、加熱炉内に輻射熱を反射することが可能な加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置を提供する。
【解決手段】加熱炉の排気口12内に設置して、排気口12から流出する熱を減少させると共に、高温になって加熱炉内に輻射熱を反射する加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置10であって、排気口12に挿入される耐熱性の筒体13と、筒体13の外側に設けられ、排気口12と筒体13との隙間を塞いで筒体13を排気口内に固定する充填部材15と、筒体13の内側に挿入され、加熱炉内の排ガスを通過させながら高温になる通気性部材17と、筒体13の側部を貫通し、筒体13の内側に突出した部分は筒体13内の通気性部材17を支持して、通気性部材17の筒体13内での移動を防止する複数の耐熱性の支持部材18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉の排気口内に設置して、排気口から流出する熱を減少させると共に、高温になって加熱炉内に輻射熱を反射する加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス燃焼加熱炉あるいは雰囲気制御加熱炉における最も顕著な熱損失は、高温排ガスによる熱損失である。そこで、炭化ケイ素系の不織布マット(以下、単にマットという)を、炉内の天井に設けられた排気口に熱フィルタとして貼り付け、更に、炉内の天井並びに側壁に熱反射体としても貼り付けて、高温排ガスの顕熱を炉内で回収する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】鈴木謙爾、外3名、「Si−C−(M)−O系繊維不織布マットによるガス燃焼加熱炉の省エネルギー化ならびに高性能化」、工業加熱、社団法人日本工業炉協会、2007年7月15日、第44巻、第4号、p.17−25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マットを炉内の天井や側壁に貼り付けて高温排ガスの顕熱を炉内で回収することは、マットを炉内の天井や側壁に長期間に亘り安定して存在させることにより可能となる。ここで、柔軟体であるマットを、稼動中の加熱炉内の天井や側壁に設置するには、(1)セラミック接着剤を用いて接着する方法、(2)セラミックピン又はセラミックボルト(ネジ)を用いて固定する方法が一般的である。
【0005】
しかし、炉内温度が一般に1000℃以上の高温で、しかも排ガスが高速流転している状況下では、以下の問題がある。セラミック接着剤による接着では、加熱炉の運転中に接着剤層からマットが剥がれて落下する可能性が高い。また、セラミックピン又はセラミックボルトを用いてマットを固定する場合、高速流転する排ガスによる機械的衝撃や炉内の温度変動によりセラミックピン又はセラミックボルトが加熱炉の運転中に抜け落ち易く、これに伴ってマットも落下する可能性が高い。更に、セラミックピン又はセラミックボルトを用いてマットを固定するには、炉内の天井や側壁に、セラミックピン又はセラミックボルトを取付けるための穴加工を施さねばならず、天井や側壁が損傷する可能性も生じる。このため、既設の加熱炉にマットを取付けることについて、各ユ−ザ−は慎重になっている。そして、既設の加熱炉では、炉内構造、排ガス条件(温度、排ガス流量等)が加熱炉毎に異なるため、ひとつの加熱炉でマットの取付けが可能になったとしても、この事例を他の加熱炉に対しても適用できるという保証はない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、既設の加熱炉の排気口内に設置して、排気口から流出する熱を減少させると共に、高温になって加熱炉内に輻射熱を反射することが可能な加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置は、加熱炉の排気口内に設置して、該排気口から流出する熱を減少させると共に、加熱されて前記加熱炉内に輻射熱を反射する加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置であって、
前記排気口に挿入される耐熱性の筒体と、
耐熱性の第1の布材を裁断して作製され、耐熱性無機接着剤が練り込まれた第1の帯部材を前記筒体の外周面に巻き付けて形成され、前記排気口に挿入された前記筒体と該排気口との隙間を塞いで該筒体を該排気口内に固定する充填部材と、
耐熱性の第2の布材を裁断して作製された第2の帯部材を隙間無く巻いた集合体から形成され、前記筒体内に挿入されて該筒体内を通過する前記加熱炉の排ガスにより加熱される通気性部材と、
前記筒体の側部を貫通し、該筒体の内側に突出した部分によって該筒体内の前記通気性部材を支持し、該通気性部材の該筒体内での移動を防止する複数の耐熱性の支持部材とを有している。
【0008】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記筒体内側から該筒体及び該筒体外側にある前記充填部材をそれぞれ貫通し、その先部が前記排気口の内周面に当接する複数の耐熱性の固定部材を有することが好ましい。
ここで、前記固定部材は、高耐熱性酸化物又は高耐熱性非酸化物のいずれか1から構成することができる。
そして、前記固定部材が高耐熱性非酸化物からなる場合、該固定部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記耐熱性無機接着剤は、アルミナ質とすることができる。
【0010】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記支持部材の前記筒体外側に配置された部分は、該筒体外側にある前記充填部材を貫通し、その端部を前記排気口の内周面に当接させることができる。
ここで、前記支持部材は、高耐熱性酸化物又は高耐熱性非酸化物のいずれか1から構成することができる。
そして、前記支持部材が高耐熱性非酸化物からなる場合、該支持部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることが好ましい。
【0011】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記筒体は、高耐熱性酸化物又は高耐熱性非酸化物のいずれか1から構成することができる。
そして、前記筒体が高耐熱性非酸化物からなる場合、該筒体の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記通気性部材には、前記筒体内の排ガス通過方向に沿って形成された直径が1〜50mmの複数の貫通孔又は内径が1〜50mmの複数の貫通中空管が設けられ、該通気性部材の断面積に対する該貫通孔又は該貫通中空管の総断面積の割合は30%以下であることが好ましい。
ここで、前記貫通中空管は、高耐熱性酸化物又は高耐熱性非酸化物のいずれか1から構成することができる。
そして、前記貫通中空管が高耐熱性非酸化物からなる場合、該貫通中空管の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることが好ましい。
更に、前記通気性部材の前記筒体内の排ガス通過方向に沿った厚みは、3〜300mmであることが好ましい。
【0013】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記第1の布材は、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布であることが好ましい。
また、前記第2の布材は、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布であることが好ましい。
【0014】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記第1の布材を内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維又は無機繊維で形成し、前記第2の布材を内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で形成することができる。
また、前記第1の布材を内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維又は無機繊維で形成し、前記第2の布材を無機繊維で形成することもできる。
【0015】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、
Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、
外殻構造は、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記外殻構造の厚さは、0.2μm以上
10μm以下であることが好ましい。
ここで、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QESi、QESiO
QEAl12、及びREAlOのいずれか1又は2以上から構成することが好ましい。
【0016】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記内殻構造は、Ti、
Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成することができる。
また、前記内殻構造は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、
Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、
β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、該結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成することもできる。
更に、前記内殻構造は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成してもよい。
【0017】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記内殻構造は、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在する
Si、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成することが可能である。
また、前記内殻構造は、β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質で構成することも可能である。
【0018】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記無機繊維は、Ti、
Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成することができる。
また、前記無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成することもできる。
更に、前記無機繊維は、β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質で構成してもよい。
そして、前記無機繊維は、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成することも可能である。
【0019】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記第1の布材は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維又は無機繊維で形成され、前記第2の布材は無機繊維で形成され、前記集合体を形成している該第2の布材を構成している無機繊維の外側に第2の外殻構造を設けて、前記集合体を第2の内殻構造と該第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維から形成し、
前記第2の内殻構造は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質、及び(3)β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質のいずれか1で構成され、
Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、
Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、
前記第2の外殻構造は、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記第2の外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記第2の内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記第2の外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。
ここで、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、一般式QESi、QESiO、REAl12、及び
REAlOのいずれか1又は2以上から構成することが好ましい。
【0020】
前記目的に沿う第2の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の製造方法は、第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の製造方法であって、前記通気性部材は、前記第2の布材を裁断して幅が3〜300mmの前記第2の帯部材を作製する第1工程と、
前記第2の帯部材の一部を芯管の外周面に一定張力下で隙間無く巻き付けて、前記筒体に挿入可能な外径を有する第1の渦巻き物を形成し、該第1の渦巻き物から前記芯管を除去した際に形成される空間部に前記第2の帯部材の他の一部をその中心部から隙間なく巻いて形成した第2の渦巻き物を充填して前記集合体を作製する第2工程と、
前記集合体を、前記材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液中に浸漬し、前記集合体を陰極側にして50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、前記粉末を該集合体を形成している前記第2の帯部材を構成している前記無機繊維の表面に付着させて、処理集合体を得る第3工程と、
前記処理集合体を前記分散溶液中から取り出し、乾燥させて水及び/又は有機溶媒を除去する第4工程と、
乾燥した前記処理集合体を、不活性ガス雰囲気中1300〜1700℃で、0.2〜2時間加熱処理して前記粉末を前記無機繊維に固着させ、該無機繊維を前記第2の内殻構造と前記第2の外殻構を持つ前記複合化無機繊維に変える第5工程とを経て作製される。
【0021】
第2の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の製造方法において、前記第2の布材に化学繊維が含有される場合、あるいは前記第2の布材にサイジング剤が施されている場合、前記第3工程の前に、前記集合体を不活性ガス雰囲気中800〜1200℃で0.5〜5時間加熱処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
第1の本発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置おいては、通気性部材が挿入された筒体を、加熱炉の排気口に挿入するので、排ガスの通過を妨げずに排気口を遮蔽することができ、排気口から流出する熱を減少させることができる。そして、排ガスは、筒体内を通過する際に通気性部材を加熱するため、加熱された通気性部材により加熱炉内に輻射熱を反射することができる。その結果、加熱炉内からの放熱量が減少し、燃料使用量を減少できる。また、排気口に挿入する筒体の外側に設けられた充填部材は、筒体の外周面と排気口の内周面との隙間を塞ぐので、排気口の内寸法に合った外寸法を有する筒体を使用する必要がなくなる。このため、熱遮蔽兼熱輻射反射装置を、既設の加熱炉の排気口に容易に設置することができる。更に、通気性部材は、第2の布材を裁断して作製された第2の帯部材を隙間無く巻いて形成するので、保形性が著しく向上し、取扱いを容易に行うことができる。そして、通気性部材は、排気口に挿入される筒体内に挿入して使用するので、炉内で高速流転する排ガスによる変形の恐れが無くなると共に損傷を著しく低減でき、取付け、取外し、取替えを容易に行うことができる。
【0023】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、筒体の内側から筒体及び筒体の外側の充填部材をそれぞれ貫通し、その先部が排気口の内周面に当接する複数の耐熱性の固定部材を有する場合、筒体の排気口内への固定力を高めることができる。
【0024】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、固定部材が、耐熱性酸化物又は高耐熱性非酸化物のいずれか1からなる場合、固定部材を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
そして、固定部材が高耐熱性非酸化物からなり、固定部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されている場合、加熱炉内で温度変動が発生しても、固定部材を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
【0025】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、耐熱性無機接着剤が、アルミナ質である場合、高温下で安定した接着強度を維持することができ、筒体を排気口内に充填部材を介して確実に固定することができる。
【0026】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、支持部材の筒体外側に配置された部分が、筒体外側にある充填部材を貫通し、その端部を排気口の内周面に当接させている場合、筒体の排気口内への固定を補強することができる。
【0027】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、支持部材が、高耐熱性酸化物又は高耐熱性非酸化物のいずれか1からなる場合、支持部材を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
そして、支持部材が高耐熱性非酸化物からなり、支持部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されている場合、加熱炉内で温度変動が発生しても、支持部材を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
【0028】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、筒体が、高耐熱性酸化物又は高耐熱性非酸化物のいずれか1からなる場合、筒体を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
そして、筒体が高耐熱性非酸化物からなり、筒体の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されている場合、加熱炉内で温度変動が発生しても、筒体を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
【0029】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、通気性部材に、筒体内の排ガス通過方向に沿って形成された直径が1〜50mmの複数の貫通孔又は内径が1〜50mmの複数の貫通中空管が設けられ、通気性部材の断面積に対する貫通孔又は貫通中空管の総断面積の割合が30%以下である場合、輻射熱の反射効率の大幅な低下を防止しながら、通気性部材の厚み方向両側で生じる圧力損失を小さくできる。
ここで、貫通中空管が、高耐熱性酸化物又は高耐熱性非酸化物のいずれか1からなる場合、貫通中空管を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
そして、貫通中空管が高耐熱性非酸化物からなって、貫通中空管の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されている場合、加熱炉内で温度変動が発生しても、貫通中空管を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
【0030】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、通気性部材の筒体内の排ガスの通過方向に沿った厚みが、3〜300mmである場合、通気性部材の寿命を調整することができ、加熱炉内への輻射熱の反射を安定して行うことができる。
【0031】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、第1の布材が、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布である場合、第1の帯部材に耐熱性無機接着剤を容易に練り込むことができると共に、第1の帯部材を筒体の外周面に巻き付ける回数を変えることで充填部材の厚みを容易に調整できる。
また、第2の布材が、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布である場合、第2の帯部材を巻き取る回数を変えることで、筒体内に挿入するのに最適な寸法の通気性部材を容易に形成できる。
【0032】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、(1)第1の布材が、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維又は無機繊維で形成され、第2の布材が内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で形成されている場合、及び(2)第1の布材が、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維又は無機繊維で形成され、第2の布材が無機繊維で形成されている場合、使用環境に応じて、充填部材の寿命及びコストを、通気性部材の輻射熱反射効率、寿命、及びコストをそれぞれ調整することができる。
【0033】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、
Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、外殻構造が、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成される場合、目的に応じて外殻構造の組成を選択することで、内殻構造の劣化を防止することができる。また、外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値が、内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さが、0.2μm以上10μm以下である場合、複合化無機繊維に温度変動が生じても、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。
ここで、固溶体酸化物が、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、一般式QESi、QESiO、REAl12
及びREAlOのいずれか1又は2以上からなる場合、固溶体酸化物の耐熱性及び耐食性を高めることができる。
【0034】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、(1)内殻構造が、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、(2)内殻構造が、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、(3)内殻構造が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、及び(4)内殻構造が、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、高温になった際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
【0035】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、(1)無機繊維が、Ti、
Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、(2)無機繊維が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、及び(3)無機繊維が、β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質で構成されている場合、比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、高温になった際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
また、無機繊維が、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成されている場合、高温の酸化雰囲気中で安定して存在できる。
【0036】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、第1の布材が内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維又は無機繊維で形成され、第2の布材を形成する無機繊維の外側に第2の外殻構造を形成し、集合体を第2の内殻構造と第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維から形成し、
第2の内殻構造を、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質、及び(3)β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質のいずれか1で構成し、
Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、
Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、
第2の外殻構造を、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成する場合、目的に応じて外殻構造の組成を選択することで、無機繊維の劣化を防止して、通気性部材の寿命を延長すると共に、輻射熱の反射効率を高位に維持することができる。そして、第2の外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値が、第2の内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、第2の外殻構造の厚さが0.2μm以上10μm以下であるので、複合化無機繊維に温度変動が生じても、第2の外殻構造が第2の内殻構造から剥離することを防止できる。
【0037】
第1の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、固溶体酸化物が、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、
一般式QESi、QESiO、REAl12、及びREAlOのいずれか1又は2以上からなる場合、固溶体酸化物の耐熱性及び耐食性を高めることができる。
【0038】
第2の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の製造方法においては、通気性部材が、集合体を構成している無機繊維の外側に第2の外殻構造を設けて、無機繊維を第2の内殻構造と第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維に変えることで形成されるので、目的に応じて第2の外殻構造の組成を選択することで、第2の内殻構造の劣化を防止することができる。
【0039】
第2の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の製造方法において、固溶体酸化物が、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、
一般式QESi、QESiO、REAl12、及びREAlOのいずれか1又は2以上からなる場合、固溶体酸化物の耐熱性及び耐食性を高めることができる。
【0040】
第2の発明に係る加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の製造方法において、第2の布材に化学繊維が含有される場合、あるいは第2の布材にサイジング剤が施されている場合、第3工程の前に、集合体を不活性ガス雰囲気中800〜1200℃で0.5〜5時間加熱処理するので、集合体を無機化することができ、通気性部材の高温下での安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置の説明図である。
【図2】変形例に係る通気性部材の説明図である。
【図3】第1の変形例に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置の説明図である。
【図4】第2の変形例に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置の説明図である。
【図5】第3の変形例に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置の説明図である。
【図6】実施例1の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の設置状態を示す説明図である。
【図7】実施例1の消費電力削減率及び円盤状物1の温度の時間変化を示す説明図である。
【図8】(A)は実施例1の複合化無機繊維の表面状態を示す電子顕微鏡写真、(B)は実施例2の無機繊維の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例5の円盤状物5、実施例6の円盤状物6をそれぞれ使用した場合の、電気炉内の温度分布の説明図である。
【図10】実施例7で使用する熱放射率測定装置の説明図である。
【図11】実施例7で測定した熱放射率の波長依存性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置10は、加熱炉の、例えば天井部11を垂直に貫通して設けられた断面円形の排気口12内に設置され、排気口12から加熱炉外に流出する排ガスの熱を減少させる、すなわち、排ガス
を濾してその顕熱を取って排ガスの温度を低下させる熱フィルタ作用と共に、排気口12内で取った顕熱で加熱されて加熱炉内に輻射熱を反射する(加熱炉内に向けて輻射熱を放射する)熱レフレクタ作用を有している。
【0043】
そして、熱遮蔽兼熱輻射反射装置10は、先側が加熱炉内に突出するように排気口12に挿入される耐熱性の筒体の一例である円筒体13と、耐熱性の第1の布材を裁断して作製され、耐熱性無機接着剤(例えばアルミナ質)が練り込まれた第1の帯部材14を円筒体13の外周面に巻き付けて形成され、排気口12に挿入された円筒体13と排気口12との隙間を塞いで円筒体13を排気口12内に固定する充填部材15を有している。また、熱遮蔽兼熱輻射反射装置10は、耐熱性の第2の布材を裁断して作製された第2の帯部材16を隙間無く巻いた集合体から形成され、円筒体13の先側に挿入され、円筒体13内に流入して通過する加熱炉の排ガスにより加熱されて高温になる通気性部材17を有している。
【0044】
更に、熱遮蔽兼熱輻射反射装置10は、円筒体13の先側の側部を貫通し、円筒体13の内側に突出する部分で、円筒体13内に挿入された通気性部材17の下端面を支持することによって、通気性部材17が円筒体13内で加熱炉内へ落下することを防止する複数(図1では2本)の耐熱性の支持部材の一例であるセラミックピン18と、円筒体13側部の軸方向中央部の周方向の複数位置において、内側から円筒体13及び円筒体13の外側にある充填部材15をそれぞれ貫通し、その先部が排気口12の内周面に当接する複数(図1では2本)の耐熱性の固定部材の一例であるセラミックボルト19とを有している。以下、詳細に説明する。
【0045】
円筒体13は、高耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は高耐熱性非酸化物(例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン)のいずれか1からなる。これによって、円筒体13の高温下での変形や破損を防止して、長期間に亘って安定して使用することができる。加熱炉内で運転中に温度変動がある場合、円筒体13を高耐熱性非酸化物で形成することで、円筒体13の温度変化に伴う破損を更に防止できる。なお、高耐熱性非酸化物で形成した円筒体13は、高温下の酸化性雰囲気中では、円筒体13の表面が徐々に酸化するので、円筒体の表面には、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱酸化物のスラリーを塗布して被覆層を形成し、円筒体13の表面の酸化を防止する。これによって、円筒体13の高温特性(例えば、強度、熱衝撃抵抗)の低下を防いで、長期間に亘って安定して使用することができる。
【0046】
セラミックピン18(セラミックボルト19も同様)は、高耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は高耐熱性非酸化物(例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン)のいずれか1からなる。これによって、セラミックピン18の高温下での変形や破損を防止して、長期間に亘って安定して使用することができる。加熱炉内で運転中に温度変動がある場合、セラミックピン18を高耐熱性非酸化物で形成することで、セラミックピン18の温度変化に伴う破損を更に防止できる。なお、高耐熱性非酸化物で形成したセラミックピン18は、高温下の酸化性雰囲気中では、セラミックピン18の表面が徐々に酸化するので、セラミックピン18の表面には、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱酸化物のスラリーを塗布して被覆層を形成し、セラミックピン18の表面の酸化を防止する。これによって、セラミックピン18の高温特性(例えば、強度、熱衝撃抵抗)の低下を防いで、長期間に亘って安定して使用することができる。
【0047】
第1の帯部材14の作製に使用する第1の布材は、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布からなる。ここで、第1の帯部材14への耐熱性無機接着剤の練り込みは、例えば、第1の帯部材14の表裏両面にそれぞれ耐熱性無機接着剤を塗り付け、塗り付けた耐熱性無機接着剤をローラで加圧することにより行う。そして、充填部材15は、第1の帯部材14を円筒体13の外周面に巻き付けて形成するので、第1の帯部材14の巻き付け回数を変えることで、充填部材15の厚みを容易に調整でき、円筒体13の外周面から排気口12の内周面まで隙間の距離に対応した最適厚み、すなわち、排気口12内に挿入可能であって、しかも、円筒体13と排気口12の隙間を充填するのに十分な厚みの充填部材15を、簡便に円筒体13の外側に設けることができる。
【0048】
充填部材15を構成している第1の帯部材14には、連通した空孔が存在し、空孔内には未硬化の耐熱性無機接着剤が充填されている。そのため、外側に充填部材15が設けられた円筒体13を排気口12内に挿入する際、充填部材15を隙間の形状に合わせて容易に変形させることができ、円筒体13の外周面と排気口12の内周面との隙間を確実に充填することができる。そして、円筒体13が充填部材15を介して排気口12内に挿入された後、第1の帯部材14の空孔内に充填されている耐熱性無機接着剤が硬化すると、充填部材15を隙間の形状に合わせた形で固定することができ、隙間を安定して塞ぐことができる。更に、円筒体13が充填部材15を介して排気口12内に挿入された場合、耐熱性無機接着剤を介して、円筒体13と充填部材15及び充填部材15と排気口12の内周面とが接合され、円筒体13を排気口12内に強固に固定することができる。ここで、円筒体13の側部には複数のセラミックボルト19が設けられているので、セラミックボルト19の先端部で排気口12の内周面を押圧することで、円筒体13の排気口12内への固定を更に強化できる。
【0049】
第2の帯部材16の作製に使用する第2の布材は、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布からなり、第2の帯部材16の幅は3〜300mmである。そして、通気性部材17は、第1の渦巻き物20と、第1の渦巻き物20の中央部に形成される空間部に充填される第2の渦巻き物21とを用いて構成されている。通気性部材17を形成する集合体は、第2の帯部材16の一部を芯管の外周面に一定の張力下で隙間無く巻き付けて、円筒体13に挿入可能な外径を有する第1の渦巻き物20を形成し、この第1の渦巻き物20から芯管を取外すことにより形成される空間部に、その中心部から第2の帯部材16の他の一部を隙間なく巻いて作製した第2の渦巻き物21を充填して構成される。このため、第2の帯部材16の巻取り回数を変えることで、集合体の外径寸法を容易に調整でき、円筒体13内に挿入するのに最適な寸法に作製できる。更に、集合体内には集合体の一方の端面側から他方の端面側に連通する空孔が存在するので、排ガスの通気性も容易に確保できる。
【0050】
3〜300mmの幅の第2の帯部材16を使用することで、通気性部材17の円筒体13内での排ガスの通過方向に沿った厚みを3〜300mmにすることができる。ここで、通気性部材17の厚みが3mm未満では、排ガスの顕熱を濾し取って排ガスの温度を低下させる熱フィルタ作用が弱くなる。また、通気性部材17の厚みが300mmを超えると、通気性部材17の厚み方向両側で生じる圧力損失が大きくなる。このため、通気性部材17の厚みを3〜300mmにした。なお、通気性部材17の寿命は、通気性部材17の厚みが厚いほど長くなるので、通気性部材17の厚みを3〜300mmの範囲内で調整することで、加熱炉内へ輻射熱を一定期間に亘って安定して反射することができる
【0051】
図2に変形例に係る通気性部材22を示す。通気性部材22は、第1の渦巻き物23と、第1の渦巻き物23の中央部に形成される空間部に充填される第2の渦巻き物24とを用いて構成されている。そして、通気性部材22には、円筒体13内の排ガスの通過方向(円筒体13の厚み方向)に沿って内径が1〜50mmの複数(図2では4個)の耐熱性の貫通中空管25が設けられている。これにより、通気性部材22の厚み方向両側で生じる圧力損失を小さくすることができる。また、通気性部材22の断面積に対する貫通中空管25中空部の総断面積の割合は30%以下である。これにより、輻射熱の放射面積(反射面積)の大幅な低下を防止しながら、通気性部材の厚み方向両側で生じる圧力損失を小さくできる。なお、貫通中空管25を設ける代わりに、通気性部材に排ガスの通過方向に沿って直径が1〜50mmの複数の貫通孔を形成してもよい。
【0052】
ここで、貫通中空管25は、高耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は高耐熱性非酸化物(例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン)のいずれか1からなる。これによって、貫通中空管25の高温下での変形や破損を防止して、長期間に亘って安定して使用することができる。加熱炉内で運転中に温度変動がある場合、貫通中空管25を高耐熱性非酸化物で形成することで、貫通中空管25の温度変化に伴う破損を更に防止できる。なお、高耐熱性非酸化物で形成した貫通中空管25は、高温下の酸化性雰囲気中では、貫通中空管25の表面が徐々に酸化するので、貫通中空管25の表面に、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱酸化物のスラリーを塗布して被覆層を形成し、貫通中空管25の表面の酸化を防止する。これによって、貫通中空管25の高温特性(例えば、強度、熱衝撃抵抗)の低下を防いで、長期間に亘って安定して使用することができる。
【0053】
第1及び第2の布材は、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で構成されている。そして、内殻構造は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物、(3)Si、C、及びOを含有する無機物質、(4)粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物、及び(5)β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質のいずれか1から構成されている。内殻構造は、炭化ケイ素系素材であるため、高温下で内殻構造は大きな熱放射率を有する。このため、内殻構造を有する複合化無機繊維で構成された第2の帯状材16から形成された通気性部材17は、高温下で大きな熱放射率を有することになる。
【0054】
一方、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、
Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、外殻構造は、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成されている。そして、外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下である。これによって、複合化無機繊維に温度変動が生じても、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。その結果、複合化無機繊維が高温の酸化雰囲気中に存在しても、内殻構造が酸素と反応すること(内殻構造の酸化)を防止でき、内殻構造の材質変化に伴う特性の低下(例えば、強度低下、熱放射率の低下等)が抑制される。
【0055】
なお、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QESi、QESiO、REAl12、及びREAlOのいずれか1又は2以上からなる場合、固溶体酸化物の耐熱性及び耐食性が高まる。これに伴い、外殻構造の耐熱性及び耐食性が高まった結果として、酸化に伴う内殻構造の材質変化を防止でき、複合化無機繊維の高温酸化雰囲気中での安定性を更に高めることができる。
【0056】
図3に第1の変形例に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置26を示す。
図3に示すように、加熱炉の天井部27に断面四角形の排気口28が設けられている場合、筒体を排気口28に挿入可能な角筒体29とし、角筒体29内に挿入可能な形状の通気性部材30を作製するだけで、熱遮蔽兼熱輻射反射装置26を排気口28に設置することが可能となる。
【0057】
図4に第2の変形例に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置31を示す。
図4に示すように、加熱炉の側壁32に断面円形の排気口33が設けられている場合、筒体を排気口33に挿入可能な円筒体34とするだけで、熱遮蔽兼熱輻射反射装置31を排気口33に設置することが可能となる。なお、円筒体34内に挿入した通気性部材17が炉外側に向けて移動することを防止するため、熱遮蔽兼熱輻射反射装置10のセラミックピン18の代わりに、円筒体34内に挿入した通気性部材17より炉外側となる円筒体34側部の周方向の複数位置(例えば対向する2箇所)に、セラミックピン35を内側から外側に向けて貫通させろことにより、セラミックピン35の円筒体34の内側に突出した部分で、円筒体34内の通気性部材17を支持している。更に、セラミックピン35の円筒体34の外側に配置された部分は、円筒体34の外側にある充填部材15を貫通し、その端部を排気口33の内周面に当接している。
【0058】
図5に第3の変形例に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置36を示す。
図5に示すように、加熱炉の側壁37に断面四角形の排気口38が設けられている場合、筒体を排気口38に挿入可能な角筒体39とし、角筒体39内に挿入可能な形状の通気性部材40を作製するだけで、熱遮蔽兼熱輻射反射装置36を排気口38に設置することが可能となる。なお、角筒体39内に挿入した通気性部材40が炉外側に向けて移動することを防止するため、熱遮蔽兼熱輻射反射装置10のセラミックピン18の代わりに、角筒体39内に挿入した通気性部材40より炉外側となる角筒体39側部の周方向の複数位置(例えば対向する2箇所)に、セラミックピン41を内側から外側に向けて貫通させることにより、セラミックピン41の角筒体39の内側に突出した部分で、角筒体39内の通気性部材40を支持している。更に、セラミックピン41の角筒体39の外側に配置された部分は、角筒体39の外側にある充填部材15を貫通し、その端部を排気口38の内周面に当接している。
【0059】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置10の作用について、説明する。
熱遮蔽兼熱輻射反射装置10を加熱炉の排気口12内に設置することで、排ガスは、熱遮蔽兼熱輻射反射装置10の円筒体13内に挿入されている通気性部材17を通過して外部に排出される。このため、排ガスの通過を妨げずに排気口12を遮蔽して、排ガスの顕熱を通気性部材17で取って排ガスの温度を低下させ(熱遮蔽兼熱輻射反射装置10は熱フィルタ作用を有し)、排気口12から外部に流出する熱を減少させることができる。また、排ガスは通気性部材17を通過する際に、通気性部材17を加熱して高温にする。このため、高温になった通気性部材17で、加熱炉内からの輻射熱を反射し(熱遮蔽兼熱輻射反射装置10は熱レフレクタ作用を有し)、加熱炉内に戻すことができる。その結果、加熱炉内からの放熱量が減少し、燃料使用量を減少できる。
【0060】
また、熱遮蔽兼熱輻射反射装置10においては、加熱炉内からの輻射熱を反射する通気性部材17を円筒体13内に挿入し、更にセラミックピン18で通気性部材17を支持する構成であるため、通気性部材17を円筒体13内へ容易に挿入できると共に、高温の排ガスが通過する円筒体13内で安定して保持することができる。更に、通気性部材17を交換する際に、通気性部材17を円筒体13内から容易に取外すことができる。ここで、円筒体13の排気口12内への取付けは、耐熱性無機接着剤が練り込まれた第1の帯状部材14で構成された充填部材15で円筒体13と排気口12との隙間を塞ぎ、更に円筒体13を内側から外側に向けて貫通するセラミックボルト19の先端部を排気口12の内周面に押圧させることにより行。従って、円筒体13は、種々のタイプの加熱炉の排気口に容易に設置することができる。
【0061】
本発明の第2の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置は、第1の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置10と比較して、第1の布材が複合化無機繊維で、第2の布材が無機繊維で構成されていることが特徴となっている。このため、第2の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置の構成及び作用は、熱遮蔽兼熱輻射反射装置10と同一であるので、詳細な説明は省略し、第2の布材を構成する無機繊維について説明する。
【0062】
無機繊維は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質、(3)β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質、あるいは(4)Al、Si、及びOからなる非晶質の無機物質で構成されている。ここで、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質には、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。また、Si、C、及びOを含有する無機物質には、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。
【0063】
無機繊維が(1)〜(3)の無機物質で構成されている場合、無機繊維は、複合化無機繊維の内殻構造と同一の組成(炭化ケイ素系素材)となるので、この無機繊維から構成された第2の布材から裁断した第2の帯部材を隙間無く巻いた集合体から形成される通気性部材も、第1の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置10の通気性部材17と同様の熱フィルタ作用及び熱レフレクタ作用を有する。なお、無機繊維は炭化ケイ素系素材であるため、高温の酸化雰囲気中では徐々に酸化して材質が変化し、特性低下(例えば、強度低下、熱放射率の低下等)が生じる。このため、熱遮蔽兼熱輻射反射装置を設置する加熱炉内の雰囲気が低酸化性の場合は、無機繊維の酸化速度は遅いので、熱遮蔽兼熱輻射反射装置の通気性部材を長期間に亘って破損することなく、高い輻射熱の反射効率を維持することができる。また、バッチ式の加熱炉等のように、頻繁な通気性部材の状況確認及びメンテナンスが可能な場合は、炉内雰囲気が酸化性であっても、その交換を前提に通気性部材を使用することができる。
【0064】
また、無機繊維が、(4)の無機物質で構成されている場合、複合化無機繊維の内殻構造及び(1)〜(3)の無機繊維と比較して、比熱が大きく、熱放射率が小さくなる。このため、複合化無機繊維、又は(1)〜(3)の無機物質で構成された無機繊維で形成した通気性部材と比較して、(4)の無機物質で構成された無機繊維で形成した通気性部材の熱フィルタ作用及び熱レフレクタ作用は低下する。更に、(4)の無機物質で構成された無機繊維では、高温下において酸化性雰囲気、非酸化性雰囲気を問わず、非晶質の結晶化が進行するため(粒成長が生じるため)無機繊維が脆くなる。従って、通気性部材を形成している無機繊維が(4)の無機物質で構成されている場合、通気性部材を長期間に亘って使用することができない。
【0065】
本発明の第3の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置は、第1の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置10と比較して、第1の布材が無機繊維で、第2の布材が複合化無機繊維で構成されていることが特徴となっている。このため、第3の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置の構成及び作用は、熱遮蔽兼熱輻射反射装置10と同一である。そして、第1の布材を構成する無機繊維は、第2の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置の第2の布材を構成している無機繊維と同一である。このため、第3の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置の詳細な説明は省略する。
【0066】
なお、充填部材を形成する第1の帯部材が(1)〜(3)の無機物質で構成された無機繊維で形成されている場合、熱遮蔽兼熱輻射反射装置を設置する加熱炉内の雰囲気が低酸化性であれば、無機繊維の酸化速度は遅いので、熱遮蔽兼熱輻射反射装置の充填部材を長期間に亘って使用することができる。一方、熱遮蔽兼熱輻射反射装置を設置する加熱炉内の雰囲気が酸化性であれば、使用時間の経過と共に充填部材を形成している無機繊維は徐々に酸化して形態が変化する。このため、円筒体と排気口間のシール性が低下すると共に、円筒体を充填部材を介して排気口の内周面に固定する固定力も低下してくる。従って、バッチ式の加熱炉等のように、頻繁な充填部材の状況確認及びメンテナンスが可能な場合は、炉内雰囲気が酸化性であっても、充填部材の交換を前提に熱遮蔽兼熱輻射反射装置を設置することができる。
また、第1の帯部材が(4)の無機物質で構成された無機繊維で形成されている場合、(4)の無機物質で構成された無機繊維では、高温下において酸化性雰囲気、非酸化性雰囲気を問わず、非晶質の結晶化が進行するため無機繊維が脆くなる。従って、充填部材を形成している無機繊維が(4)の無機物質で構成されている場合、充填部材を長期間に亘って使用することができない。
【0067】
本発明の第4の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置は、第1の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置10と比較して、第1及び第2の布材がそれぞれ無機繊維で構成されていることが特徴となっている。このため、第4の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置の構成及び作用は、熱遮蔽兼熱輻射反射装置10と同一である。そして、第1及び第2の布材を構成する無機繊維は、第2の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置の第2の布材を構成している無機繊維と同一である。このため、第4の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置の詳細な説明は省略する。
【0068】
第1の布材を構成する無機繊維が(1)〜(3)の無機物質で構成され、第2の布材を構成する無機繊維が(4)の無機物質で構成されている場合、熱遮蔽兼熱輻射反射装置を設置する加熱炉内の雰囲気が低酸化性であれば、(1)〜(3)の無機物質で構成された無機繊維の酸化速度は遅いので、熱遮蔽兼熱輻射反射装置の充填部材を長期間に亘って使用することができる。一方、熱遮蔽兼熱輻射反射装置を設置する加熱炉内の雰囲気が酸化性であれば、使用時間の経過と共に充填部材は徐々に酸化して形態が変化する。従って、バッチ式の加熱炉等のように、頻繁な充填部材の状況確認及びメンテナンスが可能な場合は、炉内雰囲気が酸化性であっても、充填部材の交換を前提に熱遮蔽兼熱輻射反射装置を設置することができる。
また、通気性部材が(4)の無機物質で構成された無機繊維で形成されている場合、(4)の無機物質で構成された無機繊維では、高温下において酸化性雰囲気、非酸化性雰囲気を問わず、非晶質の結晶化が進行するため無機繊維が脆くなる。従って、通気性部材を長期間に亘って使用することができない。
【0069】
第1の布材を構成する無機繊維が(4)の無機物質で構成され、第2の布材を構成する無機繊維が(1)〜(3)の無機物質で構成されている場合、(4)の無機物質で構成された無機繊維では、高温下において酸化性雰囲気、非酸化性雰囲気を問わず、非晶質の結晶化が進行するため無機繊維が脆くなる。従って、第1の布材から作製された充填部材を長期間に亘って使用することができない。
また、(1)〜(3)の無機物質で構成された無機繊維では、熱遮蔽兼熱輻射反射装置を設置する加熱炉内の雰囲気が低酸化性の場合は、(1)〜(3)の無機物質で構成された無機繊維の酸化速度は遅いので、第2の布材から作製された通気性部材を長期間に亘って使用することができる。一方、熱遮蔽兼熱輻射反射装置を設置する加熱炉内の雰囲気が酸化性の場合、使用時間の経過と共に通気性部材は徐々に酸化して形態が変化する。従って、バッチ式の加熱炉等のように、頻繁な通気性部材の状況確認及びメンテナンスが可能な場合は、炉内雰囲気が酸化性であっても、通気性部材の交換を前提に熱遮蔽兼熱輻射反射装置を設置することができる。
【0070】
本発明の第5の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置は、第1の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置10と比較して、通気性部材17の代わりに、無機繊維で構成された第2の布材を裁断して作製した第2の帯部材(幅が3〜300mm)の一部を芯管の外周面に巻き付けて円筒体13に挿入可能な外径を有する第1の渦巻き物を形成し、この第1の渦巻き物から芯管を取外すことにより形成される空間部に、その中心部から第2の帯部材の他の一部を隙間なく巻いて作製した第2の渦巻き物を充填(装入)して構成された集合体を形成し、次いで、この集合体を形成している第2の布材を構成している無機繊維の外側に第2の外殻構造を設けて、集合体を第2の内殻構造と第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維から形成するようにした通気性部材を使用することが特徴となっている。
【0071】
ここで、第2の内殻構造は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質、及び(3)β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質のいずれか1で構成されている。なお、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質には、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分を
M2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。また、Si、C、及びOを含有する無機物質には、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。
【0072】
また、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、
Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、第2の外殻構造は、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、第2の外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、第2の内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、第2の外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下である。
【0073】
ここで、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、固溶体酸化物が一般式QESi、QESiO、REAl12、及びREAlOのいずれか1又は2以上からなる場合、固溶体酸化物の耐熱性及び耐食性が高まる。これに伴い、第2の外殻構造の耐熱性及び耐食性が高まった結果として、高温酸化雰囲気中において、第2の内殻構造の酸化に伴う材質変化を防止でき、複合化無機繊維の高温酸化雰囲気中での安定性を更に高めることができる。なお、第5の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置の構成及び作用は第1の実施の形態に係る熱遮蔽兼熱輻射反射装置10の構成及び作用と同一なので説明は省略し、通気性部材の製造方法について詳細に説明する。
【0074】
通気性部材の製造方法は、第2の布材を裁断して幅が3〜300mmの第2の帯部材を作製する第1工程と、第2の帯部材の一部を芯管の外周面に一定張力下で隙間無く巻き付けて、筒体に挿入可能な外径を有する第1の渦巻き物を形成し、第1の渦巻き物から芯管を除去した際に形成される空間部に第2の帯部材の他の一部をその中心部から隙間なく巻いて形成した第2の渦巻き物を充填して集合体を作製する第2工程と、集合体を、材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液中に浸漬し、次いで集合体を陰極側にして50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、粉末を集合体を形成する第2の帯部材を構成する無機繊維の表面に付着させ、処理集合体を得る第3工程とを有している。更に、通気性部材の製造方法は、処理集合体を分散溶液中から取り出し乾燥させて、水及び/又は有機溶媒を除去する第4工程と、乾燥した処理集合体を、不活性ガス雰囲気中1300〜1700℃で、0.2〜2時間加熱処理して粉末を無機繊維に固着させ、無機繊維を第2の内殻構造と第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維に変える第5工程とを有している。以下詳細に説明する。
【0075】
第2の帯部材は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質、及び(3)β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質のいずれか1で構成される無機繊維で構成された第2の布材を裁断して作製される。ここで、第2の布材が織物の場合、厚みは0.2〜10mm、開口率は30%以下である。また、第2の布材が不織布の場合、厚みは1〜10mm、体積空隙率は50〜97%である。そして、第2の帯部材の幅は、作製しようとする通気性部材が挿入される円筒体13の長さに応じて、3〜300mmの範囲で決定する(以上、第1工程)。
【0076】
なお、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質には、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。また、Si、C、及びOを含有する無機物質には、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。
【0077】
第1の渦巻き物の中央部に形成される空間部に第2の渦巻き物を充填して、柱状の集合体を作製する際、第2の布材に化学繊維(例えばレーヨン繊維)が含有される場合、あるいは第2の布材にサイジング剤が施されている場合は、集合体を不活性ガス雰囲気(窒素ガス雰囲気、好ましくはアルゴンガス雰囲気)中で、800〜1200℃の温度で、0.5〜5時間加熱処理する。これによって、化学繊維を完全に分解除去、又は一部を分解除去し残部を炭化させることができ、サイジング剤を完全に除去できる。その結果、集合体は、完全に無機物化する(以上、第2工程)。
【0078】
次いで、集合体を、材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液が貯留された浴槽中に浸漬する。ここで、有機溶媒は、例えば、アセトン、エタノール、又はノルマルヘプタンのいずれか1である。また、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、
Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、材料Aは、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる。なお、耐熱性及び耐食性の高い固溶体酸化物とする場合、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、固溶体酸化物の組成を、一般式QESi、QESiO、REAl12、及びREAlOのいずれか1又は2以上とする。
【0079】
続いて、集合体を陰極側にして、直流安定化電源から50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、粉末を集合体を形成する第2の帯部材を構成する無機繊維の外側に付着させて処理集合体を形成する。ここで、浴槽中には、例えば、C/Cコンポジット製のカソ−ド電極が距離を有して対向配置されており、集合体はアノ−ド電極となる2枚のステンレス製金網に抱き合わされて(挟まれて)、カソ−ド電極間に配置される(以上、第3工程)。
【0080】
処理集合体の形成が完了すると、処理集合体を分散溶液中から取り出し、分散溶液の液切りを行った後、1〜4時間風乾して水及び/又は有機溶媒の大半を飛散除去する。次いで、大気雰囲気中、40〜80℃の温度で3〜10時間熱風乾燥して、残存する水及び/又は有機溶媒を完全に除去する(以上、第4工程)。
【0081】
乾燥が完了した処理集合体を、アルゴンガス等の不活性ガス気流下、又は0.2〜1MPaの微圧力の不活性ガス雰囲気中で、1300〜1700℃の温度で0.2〜2時間加熱処理する。これによって、無機繊維の外側に付着している粉末が焼結して無機繊維に固着し、無機繊維は第2の内殻構造と第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維に変わり(以上、第5工程)、通気性部材が形成される。なお、第2の外殻構造は、材料Aで構成され、第2の内殻構造は、無機繊維が(1)の無機物質で構成されている場合は(1)の無機物質で、無機繊維が(2)の無機物質で構成されている場合は(2)の無機物質で、無機繊維が(3)の無機物質で構成されている場合は(3)の無機物質でそれぞれ構成される。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
先ず、Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された不織布(繊維目付が240g/m、化学繊維の一例であるレ−ヨン繊維を20質量%含有し、幅が500mm、長さが10mのロール巻き)からなる第2の布材を裁断して、幅が20mmの第2の帯部材を作製した(第1工程)。次いで、第2の帯部材の一部が弛まないように一定の張力を加えながら、巻き取り機を用いて帯部材を芯管の外周面に隙間無く巻き付けて、外径58mmの第1の渦巻き物を形成し、第1の渦巻き物から芯管を除去し、芯管を除去した部分に形成される空間部に、第2の帯部材の他の一部から別途作製した第2の渦巻き物を充填して集合体を作製した。そして、集合体を熱処理炉内にセットし、アルゴンガス雰囲気中、800℃で1時間熱処理して、不織布に含有されているレ−ヨン繊維の一部を分解除去して残部を炭化させると共に、不織布に施されているサイジング剤(有機物)を除去した(第2工程)。
【0083】
続いて、熱処理された集合体を、アノ−ド電極となる2枚のステンレス製金網で抱き合わせ、固溶体酸化物の一例であるジルコン(ZrSiO4)の粉末がエタノ−ルと水の混合溶媒中に均一分散した分散溶液を貯留している浴槽中に距離を設けて対向配置したC/Cコンポジット製の2枚のカソ−ド電極の間に配置した。次いで、直流安定化電源より120Vの直流電圧を5分間印加して、電気泳動により、ジルコン粉末を集合体を形成している(不織布を構成する)無機繊維の外側に付着させて、処理集合体を得た(第3工程)。そして、処理集合体を分散溶液中から取り出し、液切り、2時間の風乾、大気雰囲気中40℃で6時間の熱風乾燥を行った後(第4工程)、アルゴンガス雰囲気中0.5MPaの微加圧下において、1500℃で0.5時間熱処理を行って、ジルコン粉末を焼結させると共に無機繊維に固着させて、集合体を形成している無機繊維を、第2の外殻構造(ジルコンの領域)と第2の内殻構造(Si、C、O、及びZrを含有する領域)を持つ複合化無機繊維に変えて(第5工程)、直径58mm、厚さ20mmの通気性部材(以下、円盤状物1という)を作製した。
【0084】
また、Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された織物(厚みが0.25mm、幅が40mmの平織物)からなる第1の布材を裁断して、第1の帯部材を作製した。そして、第1の帯部材の一部にアルミナ質の耐熱性無機接着剤を練り込んだ後、外径が68mm、内径が58mm、長さが80mmのアルミナ製の円筒体(アルミナ管)の外周面に、耐熱性無機接着剤が練り込まれた第1の帯部材を巻き付けて、外径が70mmの充填部材を形成した。そして、図6に示す電気炉の天井部の中央に形成された内径70mmの排気口の入り口側から、外径70mmの充填部材が取付けられたアルミナ製の円筒体をその基側から挿入し、アルミナ製の円筒体の軸方向中央より基側の側部位置(周方向0度位置及び180度位置)に予め作製しておいた対向するボルト孔に、外径7mm、長さ12mmのアルミナ製のボルトをねじ込み、円筒体の内側から円筒体及び充填部材をそれぞれ貫通させて、その先部を排気口の内周面に当接させて押圧した。次いで、円盤状物1をアルミナ製の円筒体の炉内側の開口から挿入し、アルミナ製の円筒体の先側の側部位置(周方向0度位置及び180度位置)に予め作製しておいた対向する孔に、円筒体の外側から外径7mm、長さ30mmのアルミナ製のピンを差込む。これによって、熱遮蔽兼熱輻射反射装置の作製及び電気炉の排気口内への設置(取付け)が完了する。
【0085】
続いて、電気炉の排気口内に設置した熱遮蔽兼熱輻射反射装置の熱フィルタ作用及び熱レフレクタ作用を確認するため、電気炉を常時1300℃に保持(電気炉中央部の温度で制御)し、電気炉の炉床中央部に形成した空気送入口より、0.8リットル/分の流量で空気を200時間電気炉内に流通させ、そのときの電気炉の消費電力W1の削減率を調べた。ここで、消費電力W1の削減率は、電気炉の排気口内に円盤状物1を設置しない状態で、炉床中央部の空気送入口より0.8リットル/分の流量で空気を電気炉内に流通させながら、電気炉を常時1300℃一定に保持する際に必要な消費電力量をW0とした場合、100×(W0−W1)/W0により求めた。その結果を図7に示す。なお、図7には、電気炉中央部に配置した熱電対で測定した温度(設定温度)、円盤状物1の炉内側表面に取付けた熱電対で測定した円盤状物下の温度、及び円盤状物1の炉外側表面に取付けた熱電対で測定した円盤状物上の温度も合わせて記載している。また、別の電気炉内に円盤状物1を配置し、1300℃の空気中で340時間連続加熱し、円盤状物1の高温酸化による劣化の有無を観察した。
【0086】
図7に示すように、円盤状物1を設置した場合は、設置しない場合に比べ消費電力削減率は35%と高い値を示し、この削減率は200時間中一定で、円盤状物1が優れた熱レフレクタ作用(輻射熱反射特性)を有することが確認でき、電気炉運転の省エネルギーに大きく寄与すること、結果的にはCOの発生低減に大きく寄与することが示唆された。また、円盤状物下の温度(炉内側表面温度)が1250℃であるのに対して、円盤状物上の温度(炉外側表面温度)は630℃であり、円盤状物1の上下で620℃もの温度差が発生しており、この温度差は200時間に亘って常時一定であった。このことから、円盤状物1が優れた熱フィルタ作用(熱遮蔽特性)を持つことが確認できた。
【0087】
大気中、1300℃での円盤状物1の耐久試験(高温酸化抵抗性試験)において、耐久試験開始から150時間及び340時間を経過した時点における円盤状物1を形成する複合化無機繊維を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を図8(A)に示す。図8(A)に示すように、高温酸化による複合化無機繊維の劣化は全く認められず、この円盤状物1が1300℃の高温でも、長期に亘って一定した性能を保持し得るものであることが確認できた。
【0088】
(実施例2)
Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された第2の不織布(繊維目付が240g/m、レ−ヨン繊維を20質量%含有し、厚さ5mm、体積空隙率95%)を裁断して、幅が20mmの第2の帯部材を作製した。次いで、第2の帯部材が弛まないように一定の張力を加えながら、巻き取り機を用いて第2の帯部材を中心部から外側まで(芯管を使用しないで)隙間無く巻き付けて、外径58mm、厚さが20mmの円盤状物2を作製した。そして、実施例1の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の円盤状物1をアルミナ製の円筒体から取外し、作製した円盤状物2を挿入して、実施例1と同様に、電気炉を常時1300℃に保持し、電気炉の炉床の空気送入口より、0.8リットル/分の流量で空気を200時間電気炉内に流通させ、そのときの電気炉の消費電力の削減率を調べた。また、円盤状物2の上下にそれぞれ熱電対を取付け、円盤状物上下の温度を測定した。
【0089】
その結果、円盤状物2の場合でも、電気炉の使用の初期段階(加熱を開始してから約100時間程度)では、消費電力削減率は、実施例1とほぼ同等の値を示し、円盤状物2が優れた熱レフレクタ作用(輻射熱反射特性)を有することが確認できた。また、円盤状物2の上下の温度差が示す熱遮蔽効果も、実施例1とほぼ同等の結果を示した。一方、実施例1の円盤状物1と同様の方法で行った円盤状物2の大気中、1300℃での耐久試験では、図8(B)に示すように、円盤状物2を形成している不織布を構成するSi、C、OおよびZrの無機物質で形成された無機繊維は、150時間を経過した時点で既に無機繊維が著しく損傷を受けて劣化していることが認められた。従って、円盤状物2をこの温度で実用に供するためには、比較的短期間で取替えながら使用する必要がある。
【0090】
(実施例3)
Si、C、及びOを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された平織物(繊維目付が289g/m、厚さ0.33mm)を裁断して、幅が20mmの帯部材を作製した。次いで、帯部材が弛まないように一定の張力を加えながら、巻き取り機を用いて帯部材を中心部から外側まで(芯管を使用しないで)隙間無く巻き付けて、外径58mm、厚さが20mmの円盤状物3を作製した。そして、実施例1の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の円盤状物1をアルミナ製の円筒体から取外し、作製した円盤状物3を挿入して、実施例1と同様に、電気炉を常時1300℃に保持し、電気炉の炉床の空気送入口より、0.8リットル/分の流量で空気を200時間電気炉内に流通させ、そのときの電気炉の消費電力の削減率を調べた。また、円盤状物3の上下にそれぞれ熱電対を取付け、円盤状物上下の温度を測定した。
【0091】
その結果、円盤状物3の場合でも、電気炉の使用の初期段階(加熱を開始してから約100時間程度)では、消費電力削減率は、実施例1とほぼ同等の値を示し、円盤状物3が優れた熱レフレクタ作用(輻射熱反射特性)を有することが確認できた。また、円盤状物3の上下の温度差が示す熱遮蔽効果も、実施例1とほぼ同等の結果を示した。一方、実施例1の円盤状物1と同様の方法で行った円盤状物3の大気中、1300℃での耐久試験では、円盤状物2の場合と同様、円盤状物3を形成している平織物を構成するSi、C、及びOの非晶質無機物質で形成された無機繊維は、150時間を経過した時点で既に無機繊維が著しく損傷を受けて劣化していることが認められた。従って、円盤状物3をこの温度で実用に供するためには、比較的短期間で取替えながら使用する必要がある。
【0092】
(実施例4)
実施例1で使用した不織布を裁断して、幅が50mmの帯部材を作製し、実施例1と同様の方法で円盤状物4を作製した。次いで、内径5mm、外径7mm、長さ50mmのアルミナ製の貫通中空管10本が、円盤状物4の表裏面上に均等に配置されるように、アルミナ製の短管を円盤状物4の軸方向に貫通させた。その結果、円盤状物4の開口率は7.4%となった。そして、実施例1の円盤状物1をアルミナ製の円筒体から取外し、作製した円盤状物4を挿入して、実施例1と同様に、電気炉を常時1300℃に保持し、電気炉の炉床の空気送入口より、0.8リットル/分の流量で空気を200時間電気炉内に流通させ、そのときの電気炉の消費電力の削減率を求めて省エネルギ−効果を調べた。また、円盤状物4の上下にそれぞれ熱電対を取付けて円盤状物4の上下面の温度を測定し、円盤状物4の熱遮蔽効果を調べた。
【0093】
円盤状物4では、開口率が7.4%のため、加熱された空気による圧力損失が殆ど無く、高温空気が円盤状物4を素通りすると思われたが、消費電力削減率及び熱遮蔽効果は、いずれも実施例1(開口率が0%の円盤状物1)とほぼ同一の優れた結果を示した。その結果、円盤状物に複数の孔を開けて、円盤状物の厚み方向両側での熱風による圧損を無くす工夫を施しても、性能発現、すなわち、熱レフレクタ作用(輻射熱反射特性)及び熱フィルタ作用(熱遮蔽特性)には全く影響を及ぼさないことがわかった。
【0094】
(実施例5)
実施例1で使用した不織布を裁断して、幅が5mmの第2の帯部材を作製し、実施例1と同様の方法で直径58mm、厚さ5mmの円盤状物5を作製した。そして、実施例1の円盤状物1をアルミナ製の円筒体から取外し、作製した円盤状物5を挿入して、実施例1と同様に、電気炉を常時1300℃に保持した状態で、電気炉内の中心(温度制御点)と円盤状物5の炉内側端面の中心とを結ぶ直線に沿った温度分布、円盤状物5の炉内側端面の中央部温度、及び円盤状物5の炉外側端面の中央部温度を測定すると共に、円盤状物5の炉内側端面の中央部温度と炉外側端面の中央部温度との温度差(熱遮蔽効果)を調べた。その結果を、図9に示す。
【0095】
図9に示すように、円盤状物5を使用すると、電気炉内の中心を1300℃に温度制御した場合、円盤状物5の炉内側端面の中央部でも1285℃と高い温度が保たれており、円盤状物5を装着するだけで所望の温度を電気炉内に広域に亘って保持できる、すなわち炉均熱部を著しく広範に広げることができると確認できた。また、この円盤状物5の炉外側端面の中央部温度は630℃で、円盤状物5の両側で655℃に及ぶ熱遮蔽効果が確認できた。
【0096】
(実施例6)
Al、Si、及びOを含有する非晶質無機物質(Alが約30%、SiOが約70%)で形成された無機繊維(Al−Si−O系無機繊維)で構成された不織布(厚さ5mm、体積空隙率80%)を裁断して、幅が5mmの第2の帯部材を作製した。次いで、第2の帯部材が弛まないように一定の張力を加えながら、巻き取り機を用いて第2の帯部材を中心部から外側まで(芯管を使用しないで)隙間無く巻き付けて、外径58mm、厚さが5mmの円盤状物6を作製した。そして、実施例1の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の円盤状物1をアルミナ製の円筒体から取外し、作製した円盤状物6を挿入して、実施例1と同様に、電気炉を常時1300℃に保持し、電気炉内の中心(温度制御点)から円盤状物6の炉内側端面までの温度分布、円盤状物6の炉内側端面の近傍温度(円盤状物6の装着直下の温度)と円盤状物6の炉外側端面の近傍温度(円盤状物6の装着直上の温度)の温度差(熱遮蔽効果)を調べた。その結果を、図9に示す。
【0097】
図9に示すように、円盤状物6を使用する場合、温度分布は、電気炉内の中心と円盤状物6の炉内側端面の中心とを結ぶ直線に沿って、電気炉の中心部から6cm程度の部位から温度が低下し始め、電気炉の中心部から10cm程度の部位(円盤状物6の炉内側端面から炉内側に2.5cm程度入った部位)から急激に温度が低下し、円盤状物6の炉内側端面の中央部温度は1150℃まで低下した。しかしながら、この円盤状物6の炉外側端面の中央部温度は535℃であり、円盤状物6の厚み方向の両側で615℃に及ぶ熱遮蔽効果が確認できた。
【0098】
(実施例7)
実施例5の円盤状物5、実施例6の円盤状物6から、縦15mm、横15mm、厚さ5mmの平板状の試験片をそれぞれ切り出し、図10に示す測定装置を用いて各試験片の熱放射率を測定した。熱放射率の測定は、電気炉内に設けた試料ホルダーに、試験片の縦15mm、横15mmの一面が露出するようにセットし、試験片温度を800〜1000℃の範囲に加熱して、電気炉の外部に設けた光学系を用いて一定強度の光(0.7〜5μmの波長範囲の赤外線)を試験片の露出した面に照射し、試験片の露出した面で反射した反射光の強度(放射強度)を測定した。その結果を図11に示す。
【0099】
ここで、試験片を構成する不織布は、体積空隙率が95%で、直径が10μmの無機繊維から形成されているため、試験片で反射された光の大部分は散逸する。このため、炭化ケイ素の試験片を用いて測定した値をバックグラウンドとした装置係数を用いて、測定された放射強度の補正を行い、波長毎の単色放射率を算出した。なお、光学系は、試験片への光照射及び試験片からの反射光強度を測定する集束レンズを備えたフーリエ変換赤外分光器(FT−IR)と、試験片への外乱光の入射及びフーリエ変換赤外分光器への外乱光の入射を防止するピンホールスリットと、照射光及び反射光の進路を変えるミラー(反射面が金蒸着膜)と、試験片への照射光及び試験片からの反射光を集光する集光レンズとを有している。
【0100】
図11に示すように、800〜1000℃の温度範囲では、円盤状物5から作製した試験片複合化無機繊維の不織布)の熱放射率は約90%であり、円盤状物6から作製した試験片(Al−Si−O系無機繊維の不織布)の熱放射率(15〜40%)に比べ、著しく高い熱放射率を示すことがわかった。このことは、実施例1、4、5に示した複合化無機繊維の不織布からなる円盤状物1、4、5の高い消費電力削減率や優れた熱遮蔽効果は、円盤状物1、4、5が持つ高い熱放射率、言い換えると高輻射熱反射特性によるものであることを明示している。一方、Al−Si−O系無機繊維の不織布からなる円盤状物6は、図9に示すように、複合化無機繊維の不織布からなる円盤状物5に比べると性能は劣るものの、800〜1000℃の範囲で0.15〜0.4の熱放射率を示し、これにより、円盤状物6がそれなりの熱遮蔽効果を持つことが裏付けられた。
【0101】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
【符号の説明】
【0102】
10:熱遮蔽兼熱輻射反射装置、11:天井部、12:排気口、13:円筒体、14:第1の帯部材、15:充填部材、16:第2の帯部材、17:通気性部材、18:セラミックピン、19:セラミックボルト、20:第1の渦巻き物、21:第2の渦巻き物、22:通気性部材、23:第1の渦巻き物、24:第2の渦巻き物、25:貫通孔、26:熱遮蔽兼熱輻射反射装置、27:天井部、28:排気口、29:角筒体、30:通気性部材、31:熱遮蔽兼熱輻射反射装置、32:側壁、33:排気口、34:円筒体、35:セラミックピン、36:熱遮蔽兼熱輻射反射装置、37:側壁、38:排気口、39:角筒体、40:通気性部材、41:セラミックピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉の排気口内に設置して、該排気口から流出する熱を減少させると共に、加熱されて前記加熱炉内に輻射熱を反射する加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置であって、
前記排気口に挿入される耐熱性の筒体と、
耐熱性の第1の布材を裁断して作製され、耐熱性無機接着剤が練り込まれた第1の帯部材を前記筒体の外周面に巻き付けて形成され、前記排気口に挿入された前記筒体と該排気口との隙間を塞いで該筒体を該排気口内に固定する充填部材と、
耐熱性の第2の布材を裁断して作製された第2の帯部材を隙間無く巻いた集合体から形成され、前記筒体内に挿入されて該筒体内を通過する前記加熱炉の排ガスにより加熱される通気性部材と、
前記筒体の側部を貫通し、該筒体の内側に突出した部分によって該筒体内の前記通気性部材を支持し、該通気性部材の該筒体内での移動を防止する複数の耐熱性の支持部材とを有することを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項2】
請求項1記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記筒体内側から該筒体及び該筒体外側にある前記充填部材をそれぞれ貫通し、その先部が前記排気口の内周面に当接する複数の耐熱性の固定部材を有することを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項3】
請求項2記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記固定部材は、高耐熱性酸化物又は高耐熱性非酸化物のいずれか1からなることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項4】
請求項3記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記固定部材が高耐熱性非酸化物からなる場合、該固定部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記耐熱性無機接着剤は、アルミナ質であることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記支持部材の前記筒体外側に配置された部分は、該筒体外側にある前記充填部材を貫通し、その端部を前記排気口の内周面に当接させていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項の記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記支持部材は、高耐熱性酸化物又は高耐熱性非酸化物のいずれか1からなることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項8】
請求項7記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記支持部材が高耐熱性非酸化物からなる場合、該支持部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記筒体は、高耐熱性酸化物又は高耐熱性非酸化物のいずれか1からなることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項10】
請求項9記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記筒体が高耐熱性非酸化物からなる場合、該筒体の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記通気性部材には、前記筒体内の排ガス通過方向に沿って形成された直径が1〜50mmの複数の貫通孔又は内径が1〜50mmの複数の貫通中空管が設けられ、該通気性部材の断面積に対する該貫通孔又は該貫通中空管の総断面積の割合は30%以下であることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項12】
請求項11記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記貫通中空管は、高耐熱性酸化物又は高耐熱性非酸化物のいずれか1からなることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項13】
請求項12記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記貫通中空管が高耐熱性非酸化物からなる場合、該貫通中空管の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記通気性部材の前記筒体内の排ガス通過方向に沿った厚みは、3〜300mmであることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記第1の布材は、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布であることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記第2の布材は、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布であることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記第1の布材は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維又は無機繊維で形成され、前記第2の布材は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で形成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記第1の布材は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維又は無機繊維で形成され、前記第2の布材は無機繊維で形成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項19】
請求項17又は18記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、
Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、
前記外殻構造は、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項20】
請求項19記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QESi、QESiO、REAl12
及びREAlOのいずれか1又は2以上からなることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項21】
請求項19又は20記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記内殻構造は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項22】
請求項19又は20記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記内殻構造は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、該結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項23】
請求項19又は20記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記内殻構造は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項24】
請求項19又は20記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記内殻構造は、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項25】
請求項19又は20記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記内殻構造は、β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項26】
請求項17又は18記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記無機繊維は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項27】
請求項17又は18記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項28】
請求項17又は18記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記無機繊維は、β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項29】
請求項17又は18記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記無機繊維は、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項30】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記第1の布材は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維又は無機繊維で形成され、前記第2の布材は無機繊維で形成され、前記集合体を形成している該第2の布材を構成している無機繊維の外側に第2の外殻構造を設けて、前記集合体を第2の内殻構造と該第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維から形成し、
前記第2の内殻構造は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質、及び(3)β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質のいずれか1で構成され、
Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、
Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、
前記第2の外殻構造は、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記第2の外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記第2の内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記第2の外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項31】
請求項30記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置において、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、一般式QESi、QESiO、REAl12、及びREAlOのいずれか1又は2以上からなることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項32】
請求項30又は31記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の製造方法であって、前記通気性部材は、前記第2の布材を裁断して幅が3〜300mmの前記第2の帯部材を作製する第1工程と、
前記第2の帯部材の一部を芯管の外周面に一定張力下で隙間無く巻き付けて、前記筒体に挿入可能な外径を有する第1の渦巻き物を形成し、該第1の渦巻き物から前記芯管を除去した際に形成される空間部に前記第2の帯部材の他の一部をその中心部から隙間なく巻いて形成した第2の渦巻き物を充填して前記集合体を作製する第2工程と、
前記集合体を、前記材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液中に浸漬し、前記集合体を陰極側にして50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、前記粉末を該集合体を形成している前記第2の帯部材を構成している前記無機繊維の外側に付着させて、処理集合体を得る第3工程と、
前記処理集合体を前記分散溶液中から取り出し、乾燥させて水及び/又は有機溶媒を除去する第4工程と、
乾燥した前記処理集合体を、不活性ガス雰囲気中1300〜1700℃で、0.2〜2時間加熱処理して前記粉末を前記無機繊維に固着させ、該無機繊維を前記第2の内殻構造と前記第2の外殻構造を持つ前記複合化無機繊維に変える第5工程とを経て作製されることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の製造方法。
【請求項33】
請求項32記載の加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の製造方法において、前記第2の布材に化学繊維が含有される場合、あるいは前記第2の布材にサイジング剤が施されている場合、前記第3工程の前に、前記集合体を不活性ガス雰囲気中800〜1200℃で0.5〜5時間加熱処理することを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−220601(P2011−220601A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89754(P2010−89754)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(594081397)株式会社超高温材料研究センター (15)
【Fターム(参考)】