説明

加熱用熱媒体における金属表面処理技術に関する製造法

【課題】加熱機器に利用する熱媒体は、付着防止や剥離性を求める場合、弗素樹脂を基材の表面にコーティングする方法しか無かった。しかし、弗素樹脂は樹脂ゆえの欠点として、衝撃強度や熱衝撃強度さらには耐磨耗性に弱く耐用寿命が短い欠点があった。
【解決手段】基材表面を他の金属と溶融結合させ一次皮膜とし、さらに弗素樹脂の代わりに無機質で一次皮膜を覆う二次皮膜を形成さす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱機器に利用する熱媒体を製造するに辺り、衝撃強度や熱衝撃強度と耐磨耗性に優れ、弗素表面処理並みの剥離性を有し、加温時に遠赤外線を放出する熱媒体を製造する為の、金属表面処理技術に関する製造法である。
【背景技術】
【0002】
従来の表面処理技術では、剥離性を追求する場合は弗素樹脂を金属表面にコーティングする方法しか見当らず、衝撃強度や熱衝撃強度さらには耐磨耗性を求める事は不可能であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
弗素樹脂を金属表面にコーティングする場合は、樹脂ゆえに硬度や耐磨耗性に難点があり解決出来るものでは無い。そこで、この発明は剥離性を有しながら、衝撃強度や熱衝撃強度さらには耐磨耗性を提供する事を課題とする。
【課題を解決する為の手段】
【0004】
上記課題を解決する為には、ブラスト処理を施した基材表面に、衝撃強度や熱衝撃強度に強い金属、タングステンカーバイトやニッケルクローム、ステンレス等の粉体を基材に溶射し、基材と金属を溶融結合をさせて一次皮膜を形成さす。
【0005】
また、耐磨耗性や遠赤外線放射機能を付与する場合は、基材にセラミック粉体を溶射し溶融結合さす。その際に使用するセラミックは、耐磨耗性を求めるには酸化アルミニウム、遠赤外線放射機能を求めるには酸化チタンを用いる。
【0006】
溶射の場合、基材を改質する金属やセラミックスを混合し、同時に基材表面に溶融結合させる事が可能で、複合した機能を持つ一次皮膜を形成さす事ができる。
【0007】
しかるに、酸化アルミニウムや酸化チタン等のセラミックは、溶射処理前後においてセラミック粉体の特質として水分を吸着する性質がある。
【0008】
上記現象は、セラミックス素材が持つ特質で、剥離性を阻害するだけでは無く助長する事につながる。
【0009】
吸水性を抑制さす方法として、一次皮膜の上を覆うように疏水性の物質で、二次皮膜を形成させなければならない。
【0010】
二次皮膜を作る為の疏水性の物質は、石英を母材に少量の微細セラミックと溶媒で構成する焼成剤である。石英を母材とする事は、焼成後に一次皮膜と焼結した際、ガラス化して疏水性を発揮する事が目的である。
【0011】
他の微細セラミックは、硬度や耐磨耗性の向上及び溶着性を向上さす補助材、またこれらを混合し焼成剤にするには、溶媒としてIPAや水などの他に若干の界面活性剤を入れる。この際に使用するセラミック粉体は、できるだけ微細な物ほど焼成後の結合力が強くなる。
【0012】
続いて出来上がった焼成剤をハケかスプレーで一次皮膜全体を覆うように塗布し、自然乾燥の後に急激に気化しない程度の温度で一次焼成を行なう。
【0013】
さらに結合を確かなものとする為、高温による二次焼成を施し、母材である石英が溶けて一次皮膜の表面にガラス化した均一な二次皮膜を形成さす。
【0014】
そうすることで二次皮膜が疏水性を発揮し水分の浸透を防ぎ、吸水性による被接触物の付着を抑制する。またブラスト加工でできる多数のポーラス状の空孔も、凸凹構造により接触面積が少く剥離性を発揮する。ゆえに、弗素樹脂を利用しないでも無機質のみで十分剥離効果を生む金属表面処理ができることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
弗素樹脂は非粘着性や剥離性に優れているが、衝撃強度や熱衝撃強度には弱い。しかし、本発明の様に溶射によるタングステンカーバイト、ニッケルクロームやステンレス等の金属の溶融結合を利用すれば、基材の表面を硬く堅固な皮膜で覆う事ができる。
【0016】
また、同時に溶射する酸化アルミニウムや酸化チタン等のセラミックは、耐磨耗性を向上せしむる事や、基材を加熱する際に遠赤外線放射機能を発揮する。
【0017】
さらに、溶射の前段階で施工するブラスト加工は、溶射における溶融結合を助けるだけで無く、そのポーラス状の空孔や凸凹構造自体が接触面積を少なくし剥離性の向上に寄与する事となる。
【0018】
前記一連の加工を施した後、石英を母材とした焼成剤を一次皮膜上に塗布し、乾燥後2回の焼成を経てできるガラス状の二次皮膜が、吸水性の高いセラミックでできた一次皮膜に水分が浸透するのを防ぎ、ブラスト加工独特の構造であるポーラス状の空孔や凸凹構造が、接触面積の少ない表面を形成する事と相俟って、被接触物に対し剥離効果を発揮するのである。
【実施例1】
【0019】
この発明の実施例を図1、図2、図3に示す。図1は、本発明の製造法を利用して加熱用熱媒体を製造するに辺り、第一工程である基材をブラスト処理をした時点の断面図である。
【0020】
図面で解るようにブラスト処理後の基材1には、無数のポーラス状の空孔2が現れ、接触面積が少なく成った状態3が見受けられる。
【0021】
ブラスト処理後、基材に衝撃強度や熱衝撃強度を付加する金属と、耐磨耗性の向上や加熱時に遠赤外線を放出する機能を付加するセラミックを溶射してできた一次皮膜4である。
【0022】
一次皮膜4に含まれる衝撃強度や熱衝撃強度を付加する金属は、タングステンカーバイトやニッケルクローム又はステンレスであり、耐磨耗性を付加するセラミックは酸化アルミニウム、加熱時に遠赤外線を放出するセラミックは酸化チタン等である。
【0023】
一次皮膜4に含まれるセラミックは、素材の特性として吸水性5がある。吸水性5が有る事は付着性を助長する事につながる。
【0024】
吸水性5を抑制し剥離性を向上さす為に、一次皮膜4上に石英を母材とした焼成剤を塗布し、乾燥した後焼成してできたのが二次皮膜6である。
【0025】
石英を母材とした焼成剤を焼結させると、一次皮膜4上で石英がガラス化して表面を覆う二次皮膜6を形成し疏水性を発揮する。
【0026】
疏水性は水分を仲介して付着する力を抑制し、ブラスト加工による構造上の機能と相乗し、弗素樹脂並みの剥離性を生む事につながる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】 基材表面をブラスト加工した時点の断面図である。
【図2】 基材表面に一次皮膜を形成した時点の断面図である。
【図3】 本発明による処理を施した時点の断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1基材
2ポーラス状の空孔
3接触する面積が少ない
4金属とセラミックと基材が溶融結合した一次皮膜
5セラミックが含浸している為に吸水性がある。
6ガラス化した二次皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体における基材表面処理法として、衝撃強度や熱衝撃強度と耐磨耗性や遠赤外線放射機能の他、無機質による弗素樹脂と同等の剥離性を有する表面改質を可能とする金属表面処理技術に関する製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−104569(P2006−104569A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314778(P2004−314778)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(591209442)
【出願人】(597002520)
【出願人】(595157684)
【Fターム(参考)】