説明

加熱耐性グミキャンディー

【課題】優れた加熱耐性を有するグミキャンディーを提供し、さらにこれを効率よく製造する方法を提供すること。
【解決手段】フェルラ酸および/またはリモネンを架橋促進剤とし、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて得られた架橋性ゼラチンを含むことを特徴とする加熱耐性グミキャンディー。前記加熱耐性グミキャンディーは、フェルラ酸および/またはリモネンをゼラチン水溶液に混合し、該ゼラチン水溶液にポリフェノールオキシダーゼを作用させた架橋性ゼラチン溶液にグミキャンディー原材料を混合した架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースをゲル化させて得られる。また、フェルラ酸および/またはリモネンを、水、ゼラチンおよびグミキャンディー原材料と混合したグミキャンディーベース溶液にポリフェノールオキシダーゼを作用させた架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースをゲル化させて得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱耐性グミキャンディーおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディーは、ゼラチン水溶液に糖質、甘味料、酸味料、増粘剤および香料などのグミキャンディー原材料を混合したグミキャンディーベースを作製し、これを成型・乾燥させることで、前記ベース中のゼラチンのゲル化を利用して、グミキャンディーが製造される。
【0003】
一般的に、ゲル化したゼラチンゲルはゼラチンの種類や濃度により多少異なるが、30℃前後での加熱によって溶解する。この性質は、加工し易い反面、製品となったとき室温で溶解してしまうことがあるため、平均湿度・気温の高い夏場や温暖な地域ではグミキャンディーの粘つきや製品同士の接着といった品質劣化の問題が発生する場合がある。そのため、流通手段や保管方法には注意が必要であり、チルド輸送といったコストの高い流通手段を選択しなければならないこともある。従って、これら問題に対応した加熱耐性の改善および、その技術を用いたグミキャンディーの開発が望まれている。
【0004】
ゼラチンの加熱耐性の改善に関する先行技術はいくつか報告されているが、各々に欠点がある。例えば、トランスグルタミナーゼによる酵素的ゼラチン架橋法(特許文献1、非特許文献1)は、トランスグルタミナーゼの作用するpHがおおよそ5〜9のため、pHが5未満の場合に反応しづらいという制約があり、またトランスグルタミナーゼにより架橋されたゼラチンによるセラチンゲルにおいて、物性や食感において適さない場合がある。例えば、ゼリーやグミキャンディーにおいては、「こし」や「粘り」、場合によっては「チューイング性」の食感が求められるが、ゼラチンにトランスグルタミナーゼを作用させると蒲鉾や肉練り製品のようにコシの無い、いわゆる「さくい」食感となり、所望の食感実現は困難である。また、ポリアミドエポキシ樹脂を架橋剤とするゼラチン架橋法(特許文献2)は、ポリアミドエポキシ樹脂が食品に用いることは出来ない。ポリフェノールとポリフェノールオキシダーゼを用いたゼラチン架橋法(特許文献3)では、ゼラチンとポリフェノールの配合割合(ゼラチン:ポリフェノール)が重量比基準で4:1〜2:3と高濃度のポリフェノールを用いる必要がある。ここではフェノール性水酸基を2つ以上有するポリフェノールやポリフェノールの重合体であるタンニンが有効成分として明示されているが、高濃度ポリフェノールまたは酸化ポリフェノール、およびタンニン類は、それらの苦味が経口摂取の弊害となる。カフェ酸とチロシナーゼを用いたゼラチン架橋法(非特許文献2)も、ポリフェノールと同様に6mM以上という高濃度のカフェ酸を必要とするため、風味面や原材料供給面においての課題が大きい。さらにまたその他にも硫酸セルロースナトリウム、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウムなどの多糖類を添加する方法が知られているが、これらは食感などの物性改変には寄与するものの、加熱耐性を劇的に改善するには至っていない。
【0005】
以上のように、ゼラチンの加熱耐性の改善を行う方法はいくつか提案されているが、味、食感などの品質、安全性、生産性の効率化の面から、工業化に不向きな面が多く、これらを用いた加熱耐性グミキャンディーは製品化されていない。したがってこれらの問題を解決する新しい加熱耐性グミキャンディーの開発法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2619933号公報
【特許文献2】特開2002−293875号公報
【特許文献3】特開2007−89579号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A.S.Eissa,S.Bisram,S.A.Khan, J. Agric. Food Chem., 52, 4456(2004)
【非特許文献2】化学と工業, 82(3), 127−132(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、前記の状況を鑑みて、鋭意検討した結果、驚くべきことに、食経験も豊富な化合物であるフェルラ酸やリモネンをゼラチンの架橋促進剤とし、ポリフェノールオキシダーゼを作用させることで、得られるグミキャンディーの加熱耐性が顕著に改善されることを初めて見出した。
【0009】
したがって、本発明は、優れた加熱耐性を有するグミキャンディーを提供し、さらにこれを効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は、
〔1〕フェルラ酸および/またはリモネンを架橋促進剤とし、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて得られた架橋性ゼラチンを含むことを特徴とする加熱耐性グミキャンディー、
〔2〕ポリフェノールオキシダーゼがラッカーゼである前記〔1〕記載の加熱耐性グミキャンディー、
〔3〕架橋促進剤であるフェルラ酸および/またはリモネンをゼラチン水溶液に混合する工程と、
該ゼラチン水溶液にポリフェノールオキシダーゼを作用させ架橋性ゼラチン溶液を得る工程と、
該架橋性ゼラチン溶液にグミキャンディー原材料を混合し架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースを得る工程と、
架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースをゲル化させ加熱耐性グミキャンディーを得る工程と
を含むことを特徴とする前記〔1〕または〔2〕記載の加熱耐性グミキャンディーの製造方法、
〔4〕架橋促進剤であるフェルラ酸および/またはリモネンを、水、ゼラチンおよびグミキャンディー原材料と混合してグミキャンディーベース溶液を得る工程と、
該グミキャンディーベース溶液にポリフェノールオキシダーゼを作用させ架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースを得る工程と、
架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースをゲル化させ加熱耐性グミキャンディーを得る工程と
を含むことを特徴とする前記〔1〕または〔2〕記載の加熱耐性グミキャンディーの製造方法、
〔5〕ポリフェノールオキシダーゼがラッカーゼである前記〔3〕または〔4〕記載の加熱耐性グミキャンディーの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、一般のグミキャンディーに比べて、加熱耐性が顕著に優れたグミキャンディーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の架橋性グミキャンディーは、フェルラ酸および/またはリモネンを架橋促進剤とし、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて得られた架橋性ゼラチンを含むことに特徴がある。
【0014】
前記架橋性ゼラチンとは、架橋促進剤であるフェルラ酸および/またはリモネンの存在下でポリフェノールオキシダーゼをゼラチンに作用させて得られるものをいう。
【0015】
グミキャンディー中の総ゼラチン重量の1〜100%を前記架橋性ゼラチンとすることで、通常のグミキャンディーよりも顕著に加熱耐性が向上した加熱耐性グミキャンディーが得られる。
したがって、通常のグミキャンディーの製造方法に準じて、使用するゼラチンのかわりに前記架橋性ゼラチンとすることで、前記架橋性ゼラチンの割合が増えるほど、得られるグミキャンディーの加熱耐性を大きくすることができる。
【0016】
具体的には、前記架橋性ゼラチンを含有する加熱耐性グミキャンディーベースを調製し、これをゲル化させて加熱耐性グミキャンディーを製造するが、前記加熱耐性グミキャンディーベースは、2つの手法により製造することができる。
即ち、架橋促進剤であるフェルラ酸および/またはリモネンをゼラチン水溶液に混合し、該ゼラチン水溶液にポリフェノールオキシダーゼを作用させて架橋性ゼラチン溶液を得、該架橋性ゼラチン溶液に糖質、油脂、甘味料、酸味料、増粘剤および香料などからなる群より選ばれる1種以上のグミキャンディー原材料を混合し架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースを得る方法(以下、第1の態様という)、
架橋促進剤であるフェルラ酸および/またはリモネンを、水およびゼラチン、ならびに糖質、油脂、甘味料、酸味料、増粘剤および香料などからなる群より選ばれる1種以上のグミキャンディー原材料と混合してグミキャンディーベース溶液を得て、該グミキャンディーベース溶液にポリフェノールオキシダーゼを作用させ架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースを得る方法(以下、第2の態様という)
が挙げられる。
【0017】
前記第1の態様および第2の態様とは、ポリフェノールオキシダーゼを作用させるタイミングが相違する以外は、実質的に同じ原料、手法が用いられる。そこで、まず、第1の態様について説明する。
【0018】
(第1の態様)
前記架橋性ゼラチンに使用されるフェルラ酸は、植物の二次代謝産物の一つであり、例えば樹木の主成分であるリグニンやリグナンの前駆体となり、天然界に比較的多く存在するフェニルプロパノイド系の成分である。米糠やジャガイモの皮層部に多く含まれている。
リモネンはフェルラ酸同様に植物の二次代謝産物の一つであり、柑橘系の果皮に多く含まれている香り成分である。柑橘系果汁にも含まれており、香料の成分として一般的に使用されることも多い。
すなわち、フェルラ酸およびリモネンのいずれも食経験が豊富であり、安全性の高い成分である。しかしながら、フェルラ酸およびリモネンがゼラチンの架橋促進効果を有することは知られていなかった。
【0019】
本発明で使用するフェルラ酸および/またはリモネンとしては化学合成された化成品であっても天然由来の物であってもよい。また、これらを含有するエキスなどの混合品でもあってもよく、フェルラ酸またはリモネンの濃度にも特に制限はなく、所望の反応が進むものであれば良い。ただし、フェルラ酸またはリモネンの濃度が高いほど、反応効率、風味上の品質面、反応の安定性の面から好ましい。濃度としては、フェルラ酸またはリモネンがそれぞれ0.1重量%以上含有された混合物が原料として望ましい。具体的に、フェルラ酸としては、例えば、高純度のものとしては、フェルラ酸(築野ライスファインケミカルズ社製)、混合物としては、米糠、米糠エキス、穀類、穀類エキスなどが挙げられる。リモネンとしては、例えば、高純度のものとしては、D−リモネン(長岡香料(株)製)、混合物としては、レモンフレーバー、精油、果皮抽出物、果汁濃縮物、果汁などが挙げられる。
【0020】
中でも、架橋促進剤としては、高純度の化合物を用いたほうが品質にばらつきが生じにくく、その反応効率も良い。前述の先行技術にあるトランスグルタミナーゼによる酵素法にくらべ、本発明では架橋促進剤を一定量消費することで反応が停止するため、融点が過剰に上昇したことによる弾力性低下の問題は発生しない。また、ポリフェノールやカフェ酸のように高濃度での添加は必要なく、味への影響はない。
【0021】
架橋促進剤としてフェルラ酸を用いる場合には、フェルラ酸の純品、あるいはフェルラ酸を含有する混合物を適切な溶媒に溶解させてもよい。この際、溶媒が水のみであればフェルラ酸の溶解度が著しく低いために、水と有機溶媒の混合液や、有機溶媒のみにフェルラ酸を溶解させればよい。水と有機溶媒の配合比や、有機溶媒の種類に特に制限はなく、フェルラ酸の効果が発現される程度に溶解すれば良い。望ましくは、エタノールのみか、水とエタノールの混合液を使用することが、安全性やコスト面から望ましい。フェルラ酸混合物をゼラチン水溶液に添加する際も、添加方法に限りはなく、フェルラ酸の効果が発現される程度に溶解すれば良い。また、乳化剤などをさらに添加し、安定性を高めることもできる。
また、架橋促進剤としてリモネンを用いる場合には、リモネンの純品、あるいはリモネンを含有する混合物を適切な溶媒に溶解させてもよい。リモネンの純品は液状であるため、そのままゼラチン水溶液に混合させてもよい。リモネンの純品を希釈してゼラチン水溶液に添加する際は、溶媒が水のみであればリモネンの溶解度が著しく低いために、水と有機溶媒の混合液や、有機溶媒のみにリモネンを溶解させてから添加すればよい。水と有機溶媒の配合比や、有機溶媒の種類に特に制限はなく、リモネンの効果が発現される程度に溶解すれば良い。望ましくは、エタノールのみか、水とエタノールの混合液を使用することが、安全性やコスト面から望ましい。リモネン混合物をゼラチン水溶液に添加する際も、添加方法に限りはなく、リモネンの効果が発現される程度に溶解すれば良い。また、乳化剤などをさらに添加し、安定性を高めることもできる。
【0022】
本発明で使用するゼラチンとしては、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、牛皮ゼラチン、牛骨ゼラチン、フィッシュゼラチンなどが挙げられるが、特に限定はない。また、原料のゼラチンには、加熱処理前に酸処理やアルカリ処理などの別の処理が施されたものでもよい。
原料のゼラチンのブルーム値は、市販の150〜320のものを用いることができるが、食感や引き裂き性を考慮した場合に、180〜300であることが好ましい。
なお、前記ブルーム値とは、ゼリー強度を示すもので、ゼラチンの6.67重量%水溶液を規定のカップに入れ10±0.1℃の恒温槽で16〜18時間冷却ゼリー化して、ブルーム式ゼリー強度計のプランジャー(直径12.7mm)を4mmだけゼリー中に押し込むのに要する散弾の重さ(g)を測り、この重量をブルーム値として表したものである。
【0023】
前記ゼラチンは予め適当な溶媒と混合し、加熱して溶解させてもよいし、フェルラ酸および/またはリモネンと混合したのち、加熱して溶解させてもよい。前記ゼラチン水溶液の溶媒としては、水、各種緩衝液などが挙げられるが特に限定はない。
前記ゼラチン水溶液中のゼラチンの含有量としては、1〜50重量%が好ましく、前記フェルラ酸の含有量としては、0.0001〜1重量%が好ましく、リモネンの含有量としては、0.0001〜1重量%が好ましい。
【0024】
前記ポリフェノールオキシダーゼとしては、所望の反応が進行するものであれば特に制限はないが、本発明においては、ラッカーゼが入手しやすい上に反応効率も高いため、望ましい。ラッカーゼとしては、精製酵素でもよく、これらの酵素を含む粗タンパク質溶液であってもよい。中でも、安全性の面からは食経験のある素材由来の酵素溶液が良い。例えば、食材由来の粗タンパク質溶液としては、きのこ類の水抽出液や菌糸体発酵液が挙げられる。また、効率面の高さや工業化しやすい点からは、すでに食品添加物として認可されている酵素製剤が用いられる。例えば、食品添加物としては、ラッカーゼY120(天野エンザイム(株)製)が挙げられる。
【0025】
第1の態様において、フェルラ酸および/またはリモネンを混合したゼラチン水溶液を撹拌しながらポリフェノールオキシダーゼを作用させる。
酵素処理時の温度について特に制限は無く、所望の反応が進む温度であればよい。好ましくはゼラチンの溶解温度から考えて40℃〜80℃であり、さらに好ましくは酵素の最適反応温度から50℃〜60℃である。
また、酵素処理時の加熱時間も加熱温度と同様に限られたものではなく、効率的に目的の反応が進行する時間条件とすればよい。特に、加熱時間は加熱温度と酵素活性の兼ね合いによるものであり、加熱温度に応じた加熱時間にすることが望ましい。例えば、50℃付近であれば20時間程度でもよいし、60℃付近であれば10〜30分間程度でもよい。
【0026】
フェルラ酸および/またはリモネンとポリフェノールオキシダーゼを混合したゼラチン水溶液(以下、反応溶液ともいう)中にポリフェノールオキシダーゼを追加で供給する必要は必ずしもなく、所望の反応が進めばそれでよいが、酵素による酸化反応を効率的に進行させゼラチンにおける架橋を促進するために、前記反応溶液中に空気を供給させてもよいし、また、高純度の酸素ガスを供給することによって酸化反応を更に効率的に進めることもできる。前記反応液中への空気や酸素の供給は、所望の反応速度と、コストや加工の手間などの要素を総合的に判断し、適用の有無を判断することができる。
【0027】
また、前記反応溶液のpHは、2.8〜9.0の範囲に調整することが好ましく、酵素の最適pHからpH4.5〜5.5に調製するのがより好ましい。本発明では、前記反応溶液のpHを2.8〜9.0付近の範囲に調整することで安定して架橋性ゼラチン溶液を製造することができる。
【0028】
前記反応後には、水や、場合によっては微量の有機溶剤を含有する架橋性ゼラチン溶液を得ることができる。反応後の架橋性ゼラチン溶液をそのままグミキャンディーの製造に使用することが可能である。あるいは、反応後の架橋性ゼラチン溶液を80℃付近で30分間程度以上の加熱処理に供してポリフェノールオキシダーゼを失活させても良い。これにより、その後に経時的に架橋化反応が進むことを防止できる。
【0029】
次いで、第1の態様では、前記架橋性ゼラチン溶液に糖質、油脂、甘味料、酸味料、増粘剤および香料などからなる群より選ばれる1種以上のグミキャンディー原材料を混合して架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースを得る。
【0030】
前記架橋性ゼラチン溶液中の架橋性ゼラチンの量としては、加熱耐性の観点から、1〜100重量%が好ましい。
【0031】
前記グミキャンディー原材料である糖質、油脂、酸味料、甘味料、増粘剤および香料の種類としては、グミキャンディー原料として使用されているものであればよく、特に限定はない。また、これらの成分以外にも、得られるグミキャンディーの味、食感などを所望の程度に調整するための成分やグミキャンディーの機能性を高める成分などを使用してもよい。これらのグミキャンディー原材料のグミキャンディーベース中における含有量としては、通常のグミキャンディーの場合と同じ程度であればよく、特に限定はない。
【0032】
前記原料同士の混合に用いる方法は、通常のグミキャンディーベースと同じであればよく、特に限定はない。
【0033】
(第2の態様)
また、前記第2の態様のように、予めグミキャンディーベース溶液を作製し、これにポリフェノールオキシダーゼを作用させて架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースを調製してもよい。
【0034】
この場合、使用する原料やその含有量、原料同士を混合する方法については上記第1の態様の場合と同じであればよく、特に限定はない。
【0035】
なお、第2の態様において、ポリフェノールオキシダーゼを作用させる条件としては、例えば、50℃付近であれば20時間程度でもよいし、60℃付近であれば10〜30分間程度でもよいが、反応効率の観点から、60℃付近で30分間程度の加熱時間が望ましい。また、ポリフェノールオキシダーゼを作用させる前の酸を添加したグミキャンディーベース溶液においては、pH4.5以下になることもあるが、反応が進む限り特に問題は無い。
【0036】
前記ポリフェノールオキシダーゼの反応後に、水や、場合によっては微量の有機溶剤を含有する架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースを得ることができる。
【0037】
得られた架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースを80℃付近で30分間程度以上の加熱条件で酵素を失活させても良い。これにより、その後に経時的に架橋化反応が進むことを防止できる。
【0038】
なお、第1の態様または第2の態様とも、前記酵素処理による工業スケールでの架橋性ゼラチンの反応制御は、実験室スケールで加熱耐性上昇条件を設定し、これをスケールアップすることで可能となる。
【0039】
次に、前記第1の態様または第2の態様のようにして得られた架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースは、ゲル化させることで加熱耐性グミキャンディーを得ることができる。
【0040】
前記ゲル化の方法としては、例えば、架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースを所定の型に充填し、冷却する方法が挙げられるが、ゼラチンが固化すればどのような手法でもよい。
【0041】
次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はかかる実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
(実施例1:架橋性ゼラチンを含む加熱耐性グミキャンディーの作製)
ゼラチン(250ブルーム、ヴァイスハルトインターナショナル(株)製)100gに水140gを添加し、50℃に加熱することでゼラチン水溶液を得た。このゼラチン水溶液100gにフェルラ酸(築野ライスファインケミカルズ社製)200mgを70容量%エタノール水溶液6mlに溶解させたフェルラ酸溶液を全量添加し、リモネンとして香料である「LEMON 65327」(ヴェ・マン・フィス香料(株)製)1mlを添加し、酵素として「ラッカーゼY120」(天野エンザイム(株)製)200mgを水2mlに溶解させた酵素溶液を全量添加・混合した。
次いで、得られた混合溶液中に純粋酸素ガスを注入しながら60℃で撹拌・反応を30分間行い、架橋性ゼラチン溶液を得た。
【0043】
別に、ショ糖72g、ハイフラクトース「ハイフラクトM」(日本コーンスターチ(株)製)66gを加水して混合し、Brix90まで加熱・濃縮して糖液とした。
【0044】
次いで、架橋性ゼラチン溶液100gに、糖液112.2g、クエン酸3g、果汁12.5g、香料0.1重量%添加・混合して、架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースとした。
この架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースをシリコン製バットに充填し、4℃で1時間冷却し、加熱耐性グミキャンディーとした。
【0045】
(実施例2:グミキャンディーベースの酵素処理による加熱耐性グミキャンディーの作製)
ゼラチン(250ブルーム、ヴァイスハルトインターナショナル(株)製)100gに水140gを添加し、50℃に加熱することでゼラチン水溶液を得た。
別に、ショ糖72g、ハイフラクトース「ハイフラクトM」(日本コーンスターチ(株)製)66gを加水して混合し、Brix90まで加熱・濃縮して糖液とした。
【0046】
ゼラチン水溶液100g、糖液112.2g、クエン酸3g、果汁12.5gを混合した。これにフェルラ酸(築野ライスファインケミカルズ社製)200mgを70容量%エタノール水溶液6mlに溶解させたフェルラ酸溶液を全量添加し、リモネンとして香料である「LEMON 65327」(ヴェ・マン・フィス香料(株)製)1mlを添加し、酵素として「ラッカーゼY120」(天野エンザイム(株)製)200mgを水2mlに溶解させた酵素溶液を全量添加・混合してグミキャンディーベース溶液を得た。
【0047】
得られたグミキャンディーベース溶液に純粋酸素ガスを注入しながら60℃で撹拌・反応を30分間行った後、リモネンとは別の香料を0.1%(v/w)となるように添加して、架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースとした。
得られた架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースをシリコン製バットに充填し、4℃で1時間冷却し、加熱耐性グミキャンディーとした。
【0048】
(実施例3:加熱耐性グミキャンディーの加熱耐性試験)
実施例1および2で得られた加熱耐性グミキャンディーを室温に戻し、ステンレスバットの上に置いた。これを80℃のインキュベーターに静置し、グミキャンディーの溶解が確認されるまで経時的に観察した。なお、実施例1または実施例2に対するコントロールとして、フェルラ酸およびリモネンを添加しない以外は、実施例1または2と同様にして得られたグミキャンディーを用意した。
【0049】
その結果、実施例1のコントロールのグミキャンディーは、10分程度で溶解が確認されたのに対して、実施例1の加熱耐性グミキャンディーは30分程度で溶解が確認された。
また、実施例2のコントロールのグミキャンディーは、10分程度で溶解が確認されたのに対して、実施例2の加熱耐性グミキャンディーは80分程度で溶解が確認された。
したがって、実施例1、2で得られた加熱耐性グミキャンディーは、通常のグミキャンディーに比べて、加熱耐性が顕著に向上していることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルラ酸および/またはリモネンを架橋促進剤とし、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて得られた架橋性ゼラチンを含むことを特徴とする加熱耐性グミキャンディー。
【請求項2】
ポリフェノールオキシダーゼがラッカーゼである請求項1記載の加熱耐性グミキャンディー。
【請求項3】
架橋促進剤であるフェルラ酸および/またはリモネンをゼラチン水溶液に混合する工程と、
該ゼラチン水溶液にポリフェノールオキシダーゼを作用させ架橋性ゼラチン溶液を得る工程と、
該架橋性ゼラチン溶液にグミキャンディー原材料を混合し架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースを得る工程と、
架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースをゲル化させ加熱耐性グミキャンディーを得る工程と
を含むことを特徴とする請求項1または2記載の加熱耐性グミキャンディーの製造方法。
【請求項4】
架橋促進剤であるフェルラ酸および/またはリモネンを、水、ゼラチンおよびグミキャンディー原材料と混合してグミキャンディーベース溶液を得る工程と、
該グミキャンディーベース溶液にポリフェノールオキシダーゼを作用させて架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースを得る工程と、
該架橋性ゼラチン含有グミキャンディーベースをゲル化させ加熱耐性グミキャンディーを得る工程と
を含むことを特徴とする請求項1または2記載の加熱耐性グミキャンディーの製造方法。
【請求項5】
ポリフェノールオキシダーゼがラッカーゼである請求項3または4記載の加熱耐性グミキャンディーの製造方法。

【公開番号】特開2012−175908(P2012−175908A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39233(P2011−39233)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】