説明

加熱膨張性不織布

【課題】本発明の課題は、より軽量で、特に高い曲げ強度を有する樹脂繊維複合材料に利用可能な、加熱膨張性不織布を提供することである。
【解決手段】ガラス繊維および有機繊維を主成分とし、湿式法で抄造される加熱膨張性不織布あって、該加熱膨張性不織布が、芯層および芯層の一方の面または両方の面に設けられた表面層から構成されており、表面層に含有するバインダー繊維の繊度が、芯層に含有するバインダー繊維の繊度の150%以上300%以下であり、さらに該芯層中に加熱膨張性マイクロカプセルを含有することを特徴とする加熱膨張性不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造材などに利用可能な樹脂繊維複合材料を得るための加熱膨張性不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シート中に空隙が多い低密度の不織布は、軽量で、加工性が良好であり、樹脂を含浸、補強するなどの方法により樹脂繊維複合材料とし、軽量で強度のある構造材への応用が試みられている。
【0003】
不織布の製造方法は、大きく乾式法と湿式法に分類される。乾式法で製造される不織布は、低密度のものが得やすいが、繊維の種類や繊維長が限定されることが多いため、機能のバリエーションが制限されてしまうデメリットがある。一方、湿式法では様々な繊維を用いることができ、かつ生産性が高いメリットがあるが、得られた不織布は高密度になりやすいという特徴がある。
【0004】
これを解決する手段として、湿式法にて捲縮繊維を配合し、嵩高くするという方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、捲縮繊維のみの効果では、密度が0.5g/cm程度であり、低密度不織布としては不十分である。
【0005】
さらに、より低密度な不織布を得る目的で、繊維を加熱膨張性物質と共に抄造して加熱膨張性物質を含有する不織布を作製し、さらに、加熱により該加熱膨張性物質を膨張させて低密度不織布を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、上記捲縮繊維を配合する方法に比べて高い膨張性が得られるものの、より低密度な不織布を得ようとすると、加熱膨張性物質の膨張を阻害しないように、不織布を構成する繊維の接着を弱くする必要があり、不織布および樹脂繊維複合材料の強度が低くなるなどの問題がある。また、不織布を構成する繊維の接着を弱くせずに、より低密度な不織布を得ようとすると、より大量の加熱膨張性物質を含有させる必要が生じる。より大量の加熱膨張性物質を含有させると、不織布全体に占める繊維の割合が低下するため、不織布および樹脂繊維複合材料の強度が低くなるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−273096号公報
【特許文献2】特開2006−342437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、より軽量で、特に高い曲げ強度を有する樹脂繊維複合材料に利用可能な、加熱膨張性不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者はこれらの課題を解決すべく検討した結果、下記の発明により上記の課題が解決されることを見出した。
【0009】
ガラス繊維および有機繊維を主成分として構成され、湿式法で抄造される加熱膨張性不織布において、該加熱膨張性不織布が、芯層および芯層の一方の面または両方の面に設けられた表面層から構成されており、表面層に含有するバインダー繊維の繊度が、芯層に含有するバインダー繊維の繊度の150%以上300%以下であり、さらに該芯層中に加熱膨張性マイクロカプセルを含有することを特徴とする加熱膨張性不織布である。
【0010】
バインダー繊維が芯鞘複合型ポリエステル系バインダー繊維であると好ましい。
【0011】
芯層に対する表面層1層あたりの質量比が、5%以上25%以下であるとより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加熱膨張性不織布は、ガラス繊維および有機繊維を主成分として構成され、湿式法で抄造される加熱膨張性不織布において、該加熱膨張性不織布が、芯層および芯層の一方の面または両方の面に設けられた表面層から構成されており、表面層に含有するバインダー繊維の繊度が、芯層に含有するバインダー繊維の繊度の150%以上300%以下であり、さらに該芯層中に加熱膨張性マイクロカプセルを含有する。このような構成の加熱膨張性不織布を用いて樹脂繊維複合材料を作製することにより、より軽量で、特に曲げ強度の高い樹脂繊維複合材料を得ることができる。
【0013】
また、バインダー繊維が芯鞘複合型ポリエステル系バインダー繊維であると、膨張性が良好で、機械的な強度が高い樹脂繊維複合材料を得ることができる。
【0014】
芯層に対する表面層1層あたりの質量比が、5%以上25%以下であると、より軽量性と曲げ強度の高さのバランスが特に良好な樹脂繊維複合材料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の加熱膨張性不織布について詳細に説明する。本発明の加熱膨張性不織布は、芯層および芯層の一方の面または両方の面に表面層が設けられ、芯層および表面層は、ガラス繊維および有機繊維を主成分とし、湿式法で抄造されてなる不織布である。加熱膨張性不織布を構成するガラス繊維としては、火炎法、遠心法などにより製造されてなるガラス短繊維、マーブルメルト法、ダイレクトメルト法などの方法により製造されてなるガラス長繊維を、湿式抄紙法に適した繊維長に切断したガラスチョップドストランドが挙げられ、特に限定されずに用いることができる。ガラス繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、好ましくは0.5μm以上25μm未満、より好ましくは1.0μm以上20μm未満、さらに好ましくは2.0μm以上15μm未満、特に好ましくは3.0μm以上10μm未満である。平均繊維径が25μm以上であると、不織布の地合いが悪化し、樹脂繊維複合材料の機械的強度が低下する場合がある。また、平均繊維径0.5μm未満であると、ガラス繊維の剛性が低く、樹脂繊維複合材料の機械的強度が低下する場合がある。本発明において、平均繊維径は、繊維を走査型電子顕微鏡で拡大撮影し、任意の100本の繊維径を測定した値の平均値を示す。
【0016】
ガラス繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、好ましくは3mm以上20mm未満、より好ましくは3mm以上15mm未満、さらに好ましくは4mm以上15mm未満、特に好ましくは5mm以上10mm未満である。平均繊維長が3mm未満であると、加熱膨張性不織布および樹脂繊維複合材料の機械的強度が不十分となる場合がある。また、平均繊維長が20mm以上であると、湿式法による抄造時の地合いが悪くなって、厚さが不均一な不織布となる場合がある。本発明において、平均繊維長は、繊維を顕微鏡で拡大撮影し、任意の100本の繊維長を測定した値の平均値を示す。
【0017】
また、有機繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリウレタン、アセチルセルロース、再生セルロース、木材および非木材パルプ、綿、麻、ケナフ、羊毛、絹等が挙げられ、これらの有機繊維は1種のみを用いても良く、2種以上を併用して用いても良い。
【0018】
さらに、本発明の加熱膨張性不織布には、上記のガラス繊維および有機繊維以外の繊維を含有させることができ、具体例としては、ロックウール、カーボン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明の加熱膨張性不織布に含有するガラス繊維以外の繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、好ましくは0.5μm以上25μm未満、より好ましくは1.0μm以上20μm未満、さらに好ましくは2.0μm以上15μm未満、特に好ましくは3.0μm以上10μm未満である。平均繊維径が25μm以上であると、加熱膨張性不織布の地合いが悪化し、剛性が低下する場合がある。また、平均繊維径0.5μm未満であると、樹脂繊維複合材料の機械的強度が低下する場合がある。
【0020】
本発明の加熱膨張性不織布に含有するガラス繊維以外の繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、好ましくは3mm以上20mm未満、より好ましくは3mm以上15mm未満、さらに好ましくは4mm以上15mm未満、特に好ましくは5mm以上10mm未満である。平均繊維長が3mm未満であると、加熱膨張性不織布および樹脂繊維複合材料の機械的強度が不十分となる場合がある。また、平均繊維長が20mm以上であると、湿式抄造時の地合いが悪くなって、厚さが不均一な不織布となる場合がある。
【0021】
本発明の加熱膨張性不織布を構成するガラス繊維の含有率は、特に限定されないが、加熱膨張性不織布を構成する全繊維に対して、好ましくは40質量%以上100質量%以下、より好ましくは45質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは50質量%以上85質量%以下、特に好ましくは60質量%以上80質量%以下である。ガラス繊維の含有率が40質量%未満であると、樹脂繊維複合材料の機械的強度が低下する場合がある。また、本発明の加熱膨張性不織布を構成する有機繊維の含有率は、特に限定されないが、加熱膨張性不織布に含有するガラス繊維以外の繊維に対して、好ましくは20質量%以上100質量%以下、より好ましくは30質量%以上100質量%以下である。さらに好ましくは40質量%以上100質量%以下である。特に好ましくは50質量%以上100質量%以下である。有機繊維の含有率を加熱膨張性不織布に含有するガラス繊維以外の繊維に対して、20質量%以上配合することにより、湿式抄造時の抄造性が良好となり、地合い、厚さの均一性などが良好となる。
【0022】
また、本発明の加熱膨張性不織布は、芯層および表面層に異なるバインダー繊維を含有し、表面層に含有するバインダー繊維の繊度は、芯層に含有するバインダー繊維の繊度の150%以上300%以下である。バインダー繊維は、加熱により接着性を発現する各種有機繊維を用いることができ、バインダー繊維の具体例としては、材質で分類すると、ポリエステル系バインダー繊維、ポリオレフィン系バインダー繊維、ポリエステル−ポリオレフィン複合型バインダー繊維、アセタール化ポリビニルアルコール繊維などが挙げられ、これらは、特に限定されずに用いることができるが、加熱膨張性不織布を構成する繊維との組み合わせを考慮して選択するのが好ましい。また、繊維の構造により分類すると、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型等の複合繊維、或いは単一成分型の繊維等に分類される。不織布の強度および加熱膨張性の点で、芯鞘型のバインダー繊維が優れており、より好ましい。
【0023】
芯層に含有するバインダー繊維の繊度に対する表面層に含有するバインダー繊維の繊度比は、150%以上300%以下の範囲である。繊度比が該範囲内であると、特に高い樹脂繊維複合材料の曲げ強度が得られ、繊度比が該範囲からはずれると、低い曲げ強度しか得られない。芯層に含有するバインダー繊維の繊度に対する表面層に含有するバインダー繊維の繊度は、160%以上250%以下がより好ましく、170%以上230%以下が特に好ましい。
【0024】
本発明の加熱膨張性不織布の芯層および表面層に含有するバインダー繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、好ましくは3mm以上20mm未満、より好ましくは3mm以上15mm未満、さらに好ましくは4mm以上15mm未満、特に好ましくは5mm以上10mm未満である。平均繊維長が3mm未満であると、加熱膨張性不織布および樹脂繊維複合材料の機械的強度が不十分となる場合がある。また、平均繊維長が20mm以上であると、湿式抄造時の地合いが悪くなって、厚さが不均一な不織布となる場合がある。
【0025】
本発明の加熱膨張性不織布の芯層および表面層に含有するバインダー繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、好ましくは0.5μm以上25μm未満、より好ましくは1.0μm以上20μm未満、さらに好ましくは2.0μm以上15μm未満、特に好ましくは3.0μm以上10μm未満である。平均繊維径が25μm以上であると、加熱膨張性不織布の地合いが悪化し、剛性が低下する場合や、バインダー繊維の接着力が十分得られない場合がある。また、平均繊維径が0.5μm未満であると、加熱膨張性不織布の加熱膨張性が悪化したり、樹脂繊維複合材料の機械的強度が低下したりする場合がある。
【0026】
本発明の加熱膨張性不織布の芯層および表面層に含有するバインダー繊維の含有率は、特に限定されないが、加熱膨張性不織布を構成する芯層および表面層の各層の全繊維に対して、好ましくは5質量%以上25質量%以下、より好ましくは7質量%以上22質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上20質量%以下である。バインダー繊維の含有率が5質量%未満であると、加熱膨張性不織布および樹脂繊維複合材料の機械的強度が低下する場合がある。また、バインダー繊維の含有率が25質量%を超えると、加熱膨張性不織布の膨張性が悪化する場合がある。
【0027】
本発明の加熱膨張性不織布は、加熱することにより、加熱膨張性マイクロカプセルが膨張し、厚さが厚く、低密度な不織布基材となる。適当な厚さに膨張させることにより、軽量性と機械的強度に優れた樹脂繊維複合材料を得ることができる。
【0028】
加熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径は、加熱膨張前で5μm以上200μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上100μm未満である。膨張前の平均粒子径が5μm未満であると、不織布基材が十分に膨張しにくい場合がある。一方、200μmを超えると、不織布中に含有させるのが困難になる場合がある。加熱膨張性マイクロカプセルの膨張後の平均粒子径は10μm以上となるものが好ましく、より好ましくは20μm以上である。膨張後の加熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径が小さ過ぎると、不織布を膨張させるのに必要な加熱膨張性マイクロカプセルの量(数)が多量となる場合がある。なお、上記膨張前の加熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径は、光学顕微鏡或いは電子顕微鏡を用いて50個程度の粒子を観察し、直径を平均した値のことである。また、膨張後の平均粒子径は、不織布中の膨張させた加熱膨張性マイクロカプセルを、光学顕微鏡或いは電子顕微鏡を用いて50個程度の粒子を観察し、直径を平均した値のことである。
【0029】
本発明に用いる加熱膨張性マイクロカプセルとしては、熱可塑性樹脂の軟化点よりも低沸点の内包物を、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂からなるシェルで内包したコアシェル型の加熱膨張性マイクロカプセルが好ましい。内包物としては、例えば、イソブタン、ペンタン、ヘキサン等の沸点が150℃以下の炭化水素類やエーテル類を挙げることができる。また、シェルを形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、(メタ)アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、フッ素樹脂、アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。好ましいものとしては、内包物がイソブタン、ペンタン、ヘキサン等の液状の炭化水素からなり、シェルがアクリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等の熱可塑性樹脂からなる加熱膨張性マイクロカプセルがあり、特に好ましいのはシェルがアクリロニトリル共重合体の加熱膨張性マイクロカプセルである。
【0030】
加熱膨張性マイクロカプセルは、ある温度以上に加熱されると、軟化したシェルがコアの気化膨張する圧力によって膨張を開始する。本発明では、この温度を「膨張開始温度」といい、加熱膨張性マイクロカプセルを10℃/分で昇温したときに、加熱膨張性マイクロカプセルの膨張倍率が、最大膨張倍率の15%に達する温度で定義する。本発明が用いる加熱膨張性マイクロカプセルは、膨張開始温度は120℃以上のものが好ましく、130〜200℃のものがより好ましい。膨張開始温度が120℃未満では、加熱膨張性マイクロカプセル自体の耐熱性に劣ることがあり、また、抄造した湿潤状態の不織布基材の乾燥温度を極端に低くする必要があり、乾燥に長時間を要するため好ましくない。一方、膨張開始温度が230℃を超えると、膨張させるための加熱温度が高温となり過ぎ、不織布を構成する成分の劣化を招く可能性がある。
【0031】
加熱膨張性マイクロカプセルは、膨張開始温度が異なるものを2種以上併用することも可能である。この場合、膨張開始温度がより低い加熱膨張性マイクロカプセルのみ膨張するように加熱することにより、最大膨張厚さより薄い中間的な厚さに膨張させることができる。その後、最も膨張開始温度が高い加熱膨張性マイクロカプセルが膨張する温度まで再加熱することにより、最大膨張厚さまで膨張させることができる。
【0032】
また、加熱膨張性マイクロカプセルは、平均粒子径が異なるものを2種以上併用することも可能である。この場合、単一粒子径の加熱膨張性マイクロカプセルを単独で使用する場合より、加熱膨張性マイクロカプセル充填率をアップさせることができ、不織布膨張体の機械的強度を向上させるなどの効果を得ることができる。
【0033】
本発明に係わる不織布基材を構成する繊維、加熱膨張性マイクロカプセルの配合率は、繊維の構成、加熱膨張性マイクロカプセルの粒子径、加熱膨張性によっても異なるが、繊維/加熱膨張性マイクロカプセルの質量比が97/3〜80/20の範囲であることが好ましく、95/5〜85/15の範囲であることがより好ましい。繊維/加熱膨張性マイクロカプセルの質量比が97/3より大きくなると、十分な加熱膨張性が得られない場合がある。また、質量比が80/20より小さくなると、不織布基材を構成する繊維同士の絡み合いが少なくなり、機械的強度が大幅に低下する場合がある。
【0034】
次に、本発明の加熱膨張性不織布の製造方法について説明する。本発明の加熱膨張性不織布は湿式法にて抄造される。湿式抄造装置の具体例としては、円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、傾斜ワイヤー抄紙機などが挙げられ、芯層および表面層は、これらの装置を組み合わせた多層抄造装置を用いて多層抄造を行うことにより得ることができる。また、単層抄造装置を用いて、芯層および表面層の湿潤シートをそれぞれ別に作製し、両者を重ね合わせて乾燥することによっても得ることができる。加熱膨張性マイクロカプセルは、抄造時に繊維と共に添加する方法、或いは、加熱膨張性マイクロカプセルを含有しない不織布基材を湿式法により抄造後、加熱膨張性マイクロカプセルを含む含浸液を含浸させる方法で含有させることができる。
【0035】
抄造された不織布基材に、加熱膨張性マイクロカプセルを含有する含浸液を含浸させる方法は、特に限定されない。含浸装置の具体例としては、ディッピング装置、ロールコーター、カーテンコーター、吸引式サチュレーターなどが挙げられる。
【0036】
加熱膨張性マイクロカプセルを含有させた未膨張の加熱膨潤性不織布は、加熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度未満の温度まで加熱して水だけ蒸発させて乾燥した後、常温まで降温して保管後、加熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上に再加熱して膨張させることができる。また、湿潤状態のまま加熱して、加熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上まで昇温し、乾燥と膨張を同時に行うこともできる。乾燥と膨張を同時に行った方が、加熱膨張性および製造効率が良く経済的である。
【0037】
抄造工程または、加熱膨張性マイクロカプセルを含浸する工程で、湿潤状態の不織布を乾燥させる方法は、特に限定されない。乾燥方法の具体例としては、熱風乾燥、熱ドラム乾燥、赤外線乾燥、誘電乾燥、誘導乾燥などが挙げられる。乾燥装置の具体例としては、上記乾燥を実施できる、熱風ドライヤー、シリンダードライヤー、赤外線ヒーター、マイクロウエーブ加熱装置などが挙げられる。
【0038】
未膨張の加熱膨張性不織布を加熱・膨張させる方法は、特に限定されない。加熱・膨張させる装置の具体例としては、上記乾燥装置と同様のものが使用できる。また、加熱・膨張は、自由膨張させることも、加熱した金型などの中で形状を制限して膨張させることもできる。また、加熱して自由膨張させた加熱膨張性不織布を、熱いまま低温の金型などに入れ、成型することもできる。
【0039】
本発明に係わる不織布基材は、ガラス繊維、その他の各種繊維、加熱膨張性マイクロカプセルの他に、酸化防止剤、耐光安定剤、金属不活性化剤、難燃剤、カーボンブラック、VOC吸着剤、VOC分解剤、消臭剤などの添加剤や着色剤、有機結合剤等を要求に応じて含有させることができる。また、上記の添加剤や着色剤は、例えば、繊維に予めコーティングしておいたり、混合時に配合したり、不織布にスプレーなどで噴霧して添加することによって含有させても良い。
【0040】
本発明の加熱膨張性不織布およびこれを加熱・膨張させて得られる不織布膨張体は、構造材用として、そのままの形態で用いることも、樹脂などを含浸して樹脂繊維複合材料として用いることもできる。加熱膨張性不織布に含浸する樹脂の具体例としては、ポリビニルアルコール、セルロースエーテル類などの水溶性樹脂、アクリル系エマルジョン、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンラテックス、ウレタン樹脂エマルジョンなど合成樹脂ラテックス、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンなどの有機溶剤溶解性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの熱架橋性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの活性エネルギー線硬化樹脂などが挙げられ、特に限定されるものではない。
【0041】
本発明に係わる樹脂繊維複合材料の製造方法は、本発明の加熱膨張性不織布の加熱膨張物に、樹脂を含浸させ、樹脂を硬化させる方法、或いは、本発明の加熱膨張性不織布に樹脂を含浸させてから加熱を行い、加熱膨張性不織布の膨張と樹脂の硬化を同時に行う方法等が挙げられ特に限定されるものではない。
【0042】
また、本発明の加熱膨張性不織布に含浸する樹脂が固形の場合には、加熱膨張性不織布に含浸できるように液状の含浸液に加工してから含浸を行う。加工の方法については、溶解に溶解する方法、分散媒中に分散する方法、加熱して融解する方法など、特に限定されずに用いることができる。含浸後の硬化の方法は、加熱して溶媒および/または分散媒を蒸発させる方法、加熱重合させる方法、活性エネルギー線で硬化させる方法など特に限定されず、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0043】
樹脂、または、樹脂の含浸液を含浸させる方法は、特に限定されない。含浸装置の具体例としては、ディッピング装置、ロールコーター、スプレーコーター、カーテンコーター、吸引式サチュレーターなどが挙げられる。
【0044】
加熱膨張性不織布に対する樹脂の含浸量は、特に限定されないが、好ましくは不織布基材の質量に対して30質量%以上1000質量%以下、より好ましくは50質量%以上800質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上500質量%以下、特に好ましくは100質量%以上300質量%以下である。樹脂の含浸量が30質量%未満であると、十分な機械的強度が得られない場合がある。また、樹脂の含浸量が1000質量%を超えると、不織布基材による樹脂に対する補強効果が小さくなり、樹脂繊維複合材料の質量に対する機械的強度が小さくなり、十分な軽量性が得られない場合がある。
【実施例】
【0045】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数、百分率は、特にことわりのない限り、質量基準である。
【0046】
(実施例1)
水100000部にガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度0.6デシテックス、平均繊維長5mm)30部、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部および熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬(株)製、商品名:マツモトマイクロスフェアー(登録商標)FN−105D、膨張開始温度120〜135℃)20部を投入し、5分間撹拌して分散した。これに、カチオン性エポキシ樹脂(荒川化学工業(株)、商品名:アラフィックス(登録商標)255LOX、固形分濃度25%)8部を加え、さらに5分間撹拌した。次いで、この液を抄造機に投入、脱水し、目付量174g/mの芯層の湿紙シートを作製した。次に、水100000部にガラス繊維(平均繊維径6.0μm、平均繊維長6mm)140部、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度0.6デシテックス、平均繊維長5mm)30部、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を投入し、5分間撹拌して分散した。これに、カチオン性エポキシ樹脂(荒川化学工業(株)、商品名:アラフィックス(登録商標)255LOX、固形分濃度25%)8部を加え、さらに5分間撹拌した。次いで、この液を抄造機に投入、脱水し、目付量26g/mの表面層の湿紙シートを作製し、芯層の湿紙シートと重ね合わせた。重ね合わせた湿紙シートを115℃のシリンダードライヤーで乾燥し、目付量200g/mの実施例1の加熱膨張性不織布を作製した。
【0047】
(実施例2)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度2.2デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で実施例2の加熱膨張性不織布を作製した。
【0048】
(実施例3)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(ユニチカトレーディング(株)製、商品名:メルティ(登録商標)4080、繊度1.5デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて芯層の湿紙シートを作製し、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(ユニチカトレーディング(株)製、商品名:メルティ(登録商標)4080、繊度4.4デシテックス、平均繊維長5mm、全融タイプ)30部を用いて表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で実施例3の加熱膨張性不織布を作製した。
【0049】
(実施例4)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維((株)クラレ製、商品名:EP101、繊度1.4デシテックス、平均繊維長5mm、単一成分型)30部を用いて芯層の湿紙シートを作製し、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維((株)クラレ製、商品名:EP201、繊度2.4デシテックス、平均繊維長5mm、単一成分型)30部を用いて表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で実施例4の加熱膨張性不織布を作製した。
【0050】
(実施例5)
水100000部にガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度0.6デシテックス、平均繊維長5mm)30部、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部および熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬(株)製、商品名:マツモトマイクロスフェアー(登録商標)FN−105D、膨張開始温度120〜135℃)20部を投入し、5分間撹拌して分散した。これに、カチオン性エポキシ樹脂(荒川化学工業(株)、商品名:アラフィックス(登録商標)255LOX、固形分濃度25%)8部を加え、さらに5分間撹拌した。次いで、この液を抄造機に投入、脱水し、目付量154g/mの芯層の湿紙シートを作製した。次に、水100000部にガラス繊維(平均繊維径6.0μm、平均繊維長6mm)140部、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度0.6デシテックス、平均繊維長5mm)30部、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を投入し、5分間撹拌して分散した。これに、カチオン性エポキシ樹脂(荒川化学工業(株)、商品名:アラフィックス(登録商標)255LOX、固形分濃度25%)8部を加え、さらに5分間撹拌した。次いで、この液を抄造機に投入、脱水し、目付量23g/mの表面層の湿紙シートを2枚作製した。続いて、2枚の表面層の湿紙シートの間に、芯層の湿紙シートが挟まれるように重ね合わせ、重ね合わせた湿紙シートを115℃のシリンダードライヤーで乾燥し、目付量200g/mの実施例5の加熱膨張性不織布を作製した。
【0051】
(実施例6)
水100000部にガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度0.6デシテックス、平均繊維長5mm)30部、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部、および熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬(株)製、商品名:マツモトマイクロスフェアー(登録商標)FN−105D、膨張開始温度120〜135℃)20部を投入し、5分間撹拌して分散した。これに、カチオン性エポキシ樹脂(荒川化学工業(株)、商品名:アラフィックス(登録商標)255LOX、固形分濃度25%)8部を加え、さらに5分間撹拌した。次いで、この液を抄造機に投入、脱水し、目付量190.5g/mの芯層の湿紙シートを作製した。次に、水100000部にガラス繊維(平均繊維径6.0μm、平均繊維長6mm)140部、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度0.6デシテックス、平均繊維長5mm)30部、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度2.2デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を投入し、5分間撹拌して分散した。これに、カチオン性エポキシ樹脂(荒川化学工業(株)、商品名:アラフィックス(登録商標)255LOX、固形分濃度25%)8部を加え、さらに5分間撹拌した。次いで、この液を抄造機に投入、脱水し、目付量9.5g/mの表面層の湿紙シートを作製し、芯層の湿紙シートと重ね合わせた。重ね合わせた湿紙シートを115℃のシリンダードライヤーで乾燥し、目付量200g/mの実施例6の加熱膨張性不織布を作製した。
【0052】
(実施例7)
実施例6で、目付量190.5g/mの芯層の湿紙シートを作製する代わりに、目付量160g/mの芯層の湿紙シートを作製し、目付量9.5g/mの芯層の湿紙シートを作製する代わりに、目付量40g/mの表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例6と同一条件で実施例7の加熱膨張性不織布を作製した。
【0053】
(実施例8)
実施例6で、目付量190.5g/mの芯層の湿紙シートを作製する代わりに、目付量193g/mの芯層の湿紙シートを作製し、目付量9.5g/mの芯層の湿紙シートを作製する代わりに、目付量7g/mの表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例6と同一条件で実施例8の加熱膨張性不織布を作製した。
【0054】
(実施例9)
実施例6で、目付量190.5g/mの芯層の湿紙シートを作製する代わりに、目付量156g/mの芯層の湿紙シートを作製し、目付量9.5g/mの芯層の湿紙シートを作製する代わりに、目付量44g/mの表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例6と同一条件で実施例9の加熱膨張性不織布を作製した。
【0055】
(比較例1)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(ユニチカトレーディング(株)製、商品名:メルティ(登録商標)4080、繊度4.0デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で比較例1の加熱膨張性不織布を作製した。
【0056】
(比較例2)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(ユニチカトレーディング(株)製、商品名:メルティ(登録商標)4080、繊度4.0デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて芯層の湿紙シートを作製し、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で比較例2の加熱膨張性不織布を作製した。
【0057】
(比較例3)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて芯層の湿紙シートを作製し、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度2.2デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で比較例3の加熱膨張性不織布を作製した。
【0058】
(比較例4)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度2.2デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて芯層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で比較例4の加熱膨張性不織布を作製した。
【0059】
(比較例5)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて芯層の湿紙シートを作製し、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で比較例5の加熱膨張性不織布を作製した。
【0060】
(比較例6)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度2.2デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて芯層の湿紙シートを作製し、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で比較例6の加熱膨張性不織布を作製した。
【0061】
(比較例7)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で比較例7の加熱膨張性不織布を作製した。
【0062】
(比較例8)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて芯層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で比較例8の加熱膨張性不織布を作製した。
【0063】
(比較例9)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度2.2デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて芯層の湿紙シートを作製し、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度2.2デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いて表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で比較例9の加熱膨張性不織布を作製した。
【0064】
(比較例10)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維((株)クラレ製、商品名:EP201、繊度2.4デシテックス、平均繊維長5mm、単一成分型)30部を用いて芯層の湿紙シートを作製し、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維((株)クラレ製、商品名:EP101、繊度1.4デシテックス、平均繊維長5mm、単一成分型)30部を用いて表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で比較例10の加熱膨張性不織布を作製した。
【0065】
(比較例11)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維((株)クラレ製、商品名:EP101、繊度1.4デシテックス、平均繊維長5mm、単一成分型)30部を用いて芯層の湿紙シートを作製し、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維((株)クラレ製、商品名:EP101、繊度1.4デシテックス、平均繊維長5mm、単一成分型)30部を用いて表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で比較例11の加熱膨張性不織布を作製した。
【0066】
(比較例12)
実施例1で、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.1デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維((株)クラレ製、商品名:EP201、繊度2.4デシテックス、平均繊維長5mm、単一成分型)30部を用いて芯層の湿紙シートを作製し、ポリエステル系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、繊度1.7デシテックス、平均繊維長5mm、芯鞘型)30部を用いる代わりに、ポリエステル系バインダー繊維((株)クラレ製、商品名:EP201、繊度2.4デシテックス、平均繊維長5mm、単一成分型)30部を用いて表面層の湿紙シートを作製した以外は、実施例1と同一条件で比較例12の加熱膨張性不織布を作製した。
【0067】
表1の繊度比の欄に、芯層に含有するバインダー繊維の繊度に対する表面層に含有するバインダー繊維の繊度の比率を示した。数値の単位は%である。
【0068】
表1の表面層質量比の欄に、芯層に対する表面層1層あたりの質量比を示した。数値の単位は%である。
【0069】
試験1 膨張前の厚さ
実施例1〜9および比較例1〜12の加熱膨張性不織布の厚さを、JIS L 1086に準拠し、0.7kPa、10秒の加圧条件で5カ所測定し、平均値を小数点以下2桁目を四捨五入し、表1の試験1の欄に示した。数値の単位はmmである。
【0070】
試験2 加熱膨張性
実施例1〜9および比較例1〜12の加熱膨張性不織布を180℃のオーブンに入れ2分間加熱して不織布膨張体を得た。これらの不織布膨張体の厚さを、JIS L 1086に準拠し、0.7kPa、10秒の加圧条件で5カ所測定し、平均値を小数点以下四捨五入し、表1の試験2の欄に示した。数値の単位はmmである。
【0071】
試験3 樹脂繊維複合材料の強度
実施例1〜9および比較例1〜12の加熱膨張性不織布を用いて得られた樹脂繊維複合材料の曲げ強度を測定した。まず、試験2で得られた実施例1〜9および比較例1〜12の不織布膨張体に、下記配合のアクリルエマルジョン含浸液を1mあたり1700gになるように含浸した。これを、2枚の金属板で挟み、2枚の金属板の間隔を10mmに保持した状態で150℃のオーブンに入れて、水分を蒸発させて厚さ10mmの不織布膨張体の樹脂補強物を作製した。
【0072】
アクリルエマルジョン含浸液(固形分濃度12.4%)
アクリル系エマルジョン
(日本ゼオン(株)製、商品名:LX857X2、固形分濃度45%)13.1部
アニオン系界面活性剤
(日光ケミカルズ(株)製、
商品名:NIKKOL(登録商標)OTP−75、固形分濃度75%)
0.32部
水 36.6部
【0073】
このようにして得られた樹脂繊維複合材料を幅50mm、長さ200mmに切断し、JIS K 7171に準拠して、圧子が表面層側を押すようにして、支点間距離150mmで3点曲げ試験を行った。測定された最大荷重を表1の試験3の欄に示した。数値の単位はNである。
【0074】
【表1】

【0075】
表1の試験3の欄から明らかなように、芯層および表面層には異なるバインダー繊維を含有し、表面層に含有するバインダー繊維の繊度が、芯層に含有するバインダー繊維の繊度の150%以上300%以下の範囲である実施例1〜9と、前記範囲外の比較例1〜12の比較では、実施例1〜9の加熱膨張性不織布を用いて得られた樹脂繊維複合材料は、比較例1〜12の加熱膨張性不織布を用いて得られた樹脂繊維複合材料に比べて高い曲げ強度が得られた。
【0076】
また、バインダー繊維が芯鞘型の実施例1および2と、バインダー繊維が単一成分型の実施例4との比較では、バインダー繊維が芯鞘型の実施例1および2の方がより高い曲げ強度が得られた。
【0077】
芯層および表面層のバインダー繊維構成が同一で、芯層に対する表面層1層あたりの質量比が異なる実施例2および6〜9の比較では、芯層に対する表面層1層あたりの質量比が5%以上25%以下である実施例2、6および7は、実施例8および9に比べてより高い曲げ強度が得られた。
【0078】
以上の結果より、芯層および表面層には異なるバインダー繊維を含有し、表面層に含有するバインダー繊維の繊度が、芯層に含有するバインダー繊維の繊度の150%以上300%以下の範囲である加熱膨張性不織布により、高い曲げ強度の樹脂繊維複合材料が得られることがわかる。
【0079】
また、バインダー繊維が芯鞘型であると、より高い曲げ強度の樹脂繊維複合材料が得られ、芯層に対する表面層1層あたりの質量比が5%以上25%以下であると特に高い曲げ強度の樹脂繊維複合材料が得られことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の加熱膨張性不織布は、より軽量で、特に高い曲げ強度を有する樹脂繊維複合材料に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維および有機繊維を主成分として構成され、湿式法で抄造される加熱膨張性不織布において、該加熱膨張性不織布が、芯層および芯層の一方の面または両方の面に設けられた表面層から構成されており、表面層に含有するバインダー繊維の繊度が、芯層に含有するバインダー繊維の繊度の150%以上300%以下であり、さらに該芯層中に加熱膨張性マイクロカプセルを含有することを特徴とする加熱膨張性不織布。
【請求項2】
バインダー繊維が芯鞘複合型ポリエステル系バインダー繊維である請求項1記載の加熱膨張性不織布。
【請求項3】
芯層に対する表面層1層あたりの質量比が、5%以上25%以下である請求項1また2記載の加熱膨張性不織布。

【公開番号】特開2012−107350(P2012−107350A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255480(P2010−255480)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】