説明

加熱装置、加熱方法、成形装置及びプラスチック成形品の成形方法

【課題】光源からの光を被照射面に均一に照射し、被照射面を均一に加熱することができる加熱装置及び加熱方法、並びに、転写率や生産性などを向上させることができる成形装置及びプラスチック成形品の成形方法の提供を目的とする。
【解決手段】加熱装置1は、断面形状が正方形のライトパイプ2と、このライトパイプ2と連結され、断面形状が正方形のライトボックス3と、このライトボックス3内に収容される光源4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、加熱方法、成形装置及びプラスチック成形品の成形方法に関し、特に、光源からの光を被照射面に均一に照射し、被照射面を均一に加熱することができる加熱装置及び加熱方法、並びに、転写率や生産性などを向上させることができる成形装置及びプラスチック成形品の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ化学チップ、マイクロ流体デバイス、導光板、フレネルレンズ、光ディスクや光学素子などにおいて、プラスチック成形品に微細なパターン(構造)を精度よく転写する技術の確立などが要望されている。また、上記のプラスチック成形品の製造においては、優れた生産性などを実現することも要望されており、加熱装置から照射された赤外線によって、スタンパを輻射加熱する技術の確立なども要望されている。これらの要望に応えるために、様々な技術が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、限定して画定した局所(光域)、特にガン性腫瘍その他の皮膚の病理的局所に照射するのに適した、光伝導手段と反射装置を含む光源をもった照射装置の技術が開示されている。この技術は、反射装置が、光源の光を透明の円筒状ロッドの一端面上に集光できる曲率の凹面ミラーを有するとともに、ロッドのもう一方の端面からレンズに向けられた光によってロッドの端面が照射予定の画定された局所に投影されることを特徴としている。
【0004】
また、特許文献2には、赤外線ランプを内蔵し、中空の円錐状反射ミラーと円筒状反射ミラーとを組合わせてなる複合型反射ミラーからなる赤外線加熱機構部と、真空チャンバーの蓋となる基板であって、その中央に形成した透孔窓に透明円柱付きの透明円板を固定してある上記基板とからなり、上記複合型反射ミラーを上記基板上に固定してあり、赤外線ランプから放射される赤外線が、直進光と、円錐状反射ミラーで反射される反射光と、円筒状反射ミラーで反射される斜反射光とを含み、加熱物を照射加熱する赤外線の照射域に均熱円板を配置し、赤外線ランプより直進放射された赤外線と水平方向に放射し円錐状反射ミラーで反射した赤外線の放射強度を均一化して加熱物を照射し、加熱物全体を略均一に加熱するようにしてある面加熱型赤外線放射加熱装置の技術が開示されている。この技術は、上記複合型反射ミラーからなる赤外線加熱機構部と上記基板とを予め一体化構成してあることを特徴としている。
【0005】
また、特許文献3には、転写面を具えてかつプラスチック材料からなる基材を用意し、転写面を露出した状態で基材を固定し、少なくとも一部が赤外線透過材料からなるスタンパの賦形面を基材の転写面と密着状態に保持し、スタンパに対して基材を指向する方向に赤外線を照射することを特徴とするプラスチック成形加工方法の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002−513315号公報
【特許文献2】特開2006−216237号公報
【特許文献3】特許4363727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の照射装置は、凹面ミラー、円筒状のロッド及びレンズなどを有しており、光源を出た光は凹面ミラーで集光され円筒状のロッドに導かれるが、ロッドが円筒状であるため放射照度はロッド軸中心に集中し、大面積の被照射面を均一に加熱することは出来なかった。また、特許文献2の面加熱型赤外線放射加熱装置(赤外線・均温熱処理装置)は、中空の円錐状反射ミラー、円筒状反射ミラー、均熱円板及び透明円柱などを有しており、光源を出た光は円錐状反射ミラー、円筒状反射ミラー、透明円柱などの照射軸に対して回転対称形の導光路を通して被照射面に導かれるため、放射照度は照射軸中心に集中し、大面積の被照射面を均一に加熱することは出来なかった。
すなわち、特許文献1、2の技術は、光源からの光を被照射面に均一に照射し、被照射面を均一に加熱することができないといった問題があった。
【0008】
また、特許文献3では大面積の転写面を均一に照射し、転写面を均一に加熱し、均一な転写率で転写する手段は明示されていない。
【0009】
本発明は、以上のような問題などを解決するために提案されたものであり、光源からの光を大面積の被照射面に均一に照射し、被照射面を均一に加熱することができる加熱装置及び加熱方法、並びに、大面積の転写面を均一な転写率で転写する成形装置及びプラスチック成形品の成形方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の加熱装置は、断面形状が多角形のライトパイプと、このライトパイプと連結され、断面形状が多角形のライトボックスと、このライトボックス内に収容される光源とを備えた構成としてある。
【0011】
また、本発明の加熱方法は、断面形状が多角形のライトボックス内に収容される光源が、光を照射し、照射された光が、ライトボックスと連結され、断面形状が多角形のライトパイプを通り、該ライトパイプの照射口から照射され、照射口から照射された光が、被照射面を加熱する方法としてある。
【0012】
また、本発明の成形装置は、上記の加熱装置と、この加熱装置から照射された赤外線を透過する赤外線透過部材及び該赤外線透過部材を透過した赤外線によって輻射加熱されるスタンパを有する金型と、固化又は硬化したプラスチックの転写面に、スタンパの賦形面を押圧するプレス手段とを備えた構成としてある。
【0013】
また、本発明のプラスチック成形品の成形方法は、固化又は硬化したプラスチックに対して、スタンパの賦形面をプラスチックの転写面に押圧した状態で、上記の加熱装置から照射された赤外線によってスタンパを輻射加熱し、賦形面の構造を転写面に転写する工程と、賦形面を転写面に押圧した状態で、プラスチックを固化又は硬化させる工程と、押圧した状態を解除することによって、プラスチック成形品を離型させる工程とを有する方法としてある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の加熱装置及び加熱方法によれば、光源からの光を大面積の被照射面に均一に照射し、被照射面を均一に加熱することができ、また、成形装置及びプラスチック成形品の成形方法によれば、大面積の転写面を均一な転写率で転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる加熱装置を説明する概略図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は下面図を示している。
【図2】図2は、ライトパイプ(円柱の場合)の動作原理を説明する概略図を示している。
【図3】図3は、ライトパイプ(四角柱の場合)の動作原理を説明する概略図を示している。
【図4】図4は、ライトパイプ(正六角柱及び正五角柱の場合)の動作原理を説明する概略図を示している。
【図5】図5は、本発明の第一応用例にかかる加熱装置を説明する概略図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は下面図を示している。
【図6】図6は、本発明の第二応用例にかかる加熱装置を説明する概略図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は下面図を示している。
【図7】図7は、本発明の一実施形態にかかる成形装置を説明するための要部の概略断面図を示している。
【図8】図8は、本発明の一実施形態にかかるプラスチック成形品の成形方法を説明するための要部の概略断面図を示している。
【図9】図9は、ライトボックスの実施例及び比較例を説明するための概略斜視図を示している。
【図10】図10は、ライトボックスの実施例及び比較例の放射性能計算の結果を説明するためのグラフを示している。
【図11】図11は、加熱装置の実施例及び比較例を説明するための概略斜視図を示している。
【図12】図12は、加熱装置の実施例及び比較例の放射性能計算の結果を説明するためのグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[加熱装置及び加熱方法の一実施形態]
図1は、本発明の一実施形態にかかる加熱装置を説明する概略図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は下面図を示している。
図1において、本実施形態の加熱装置1は、断面形状が正方形のライトパイプ2、このライトパイプ2と連結され、断面形状が正方形のライトボックス3、及び、このライトボックス3内に収容される光源4を備えた構成としてある。
この加熱装置1は、光源4から照射される光(赤外線などを含む。)で、被照射体(図示せず)を加熱する。
【0017】
(光源)
光源4は、ハロゲンランプなどの赤外線光源としてあり、効果的に輻射加熱を行うことができる。
また、本実施形態では、光源4として、5本の棒状のハロゲンランプをほぼ等間隔でライトボックス3の内部に並設してある。すなわち、光源4が棒状のハロゲンランプであり、ライトパイプ2の照射口22から照射される光の照射軸が、棒状のハロゲンランプの長手方向と直交している。
なお、光源4は、ハロゲンランプに限定されるものではなく、たとえば、輻射加熱を行うことのできる光源であればよい。また、光源4の形状、本数、設置方向及び出力などは、特に限定されるものではなく、たとえば、被照射体や加熱温度などに応じて、適宜設定される。
【0018】
(ライトボックス)
ライトボックス3は、断面形状が正方形の箱状としてあり、内側に鏡面を有する板状部材(たとえば、内側となる面に銀メッキなどが施された鋼板)からなっている。なお、断面形状とは、照射軸と直交する断面の形状をいう。
このライトボックス3は、ほぼ直方体状の内部空間31を有しており、内部空間31は、底面が正方形(一辺の長さがWである。)であり、高さがLである。また、ライトボックス3は、一方の面(図1(a)においては、下面)の中央に、開口部32を有しており、開口部32は、正方形状(一辺の長さがWである。)である。
また、ライトボックス3は、開口部32を介してライトパイプ2と連通するように、ライトパイプ2と連結されている。
【0019】
なお、上述したように、ライトボックス3は、内部に光源4を収容している。すなわち、5本の棒状のハロゲンランプは、内部空間31の高さ方向のほぼ中段の位置に、ほぼ等間隔で並設してある。
また、上記の寸法W及びLは、光源4を収容できる寸法であればよく、適宜設定される。したがって、たとえば、L>Wであってもよい。また、光源4は、内部空間31の高さ方向の一方の側(図1(a)においては、上方側又は下方側)に設けられてもよい。
【0020】
ここで、ライトボックス3は、断面形状が正方形の箱状(有底の箱状)としてあるので、光源4から放射された赤外線は、一部が、鏡面により反射することなく、開口部32を通り、ライトパイプ2に進入する。
また、それ以外の赤外線は、鏡面による一回又は二回以上の反射を経た後、開口部32を通り、ライトパイプ2に進入する。この赤外線は、直方体状の鏡面(内部空間31に対応する鏡面)による反射により、均一化された状態(プレミックスされた状態と呼ばれる。)で、開口部32を通り、ライトパイプ2に進入する。これにより、加熱装置1は、均一化された状態(プレミックスされた状態と呼ばれる。)の赤外線を開口部32に照射することができる。
【0021】
また、本実施形態のライトボックス3の断面形状は、正方形であるが、これに限定されるものではなく、たとえば、多角形であればよい。このようにすると、断面形状を円形とした場合と比べると、開口部32の中央(あるいは、中央の近傍)に赤外線が集中するといった不具合を回避でき、均一化された状態の赤外線を開口部32に照射することができる。
さらに、ライトボックス3の断面形状は、ライトパイプの動作原理を好適に実現できる形状、すなわち、三角形、四角形、正六角形又は平行六辺形などであることが好ましい。このようにすると、断面形状が多角形(すなわち、三角形、四角形、正六角形又は平行六辺形などを除く多角形)である場合と比べて、より均一化された状態の赤外線を開口部32に照射することができる。
なお、ライトパイプの動作原理を好適に実現できる形状については、後述する。
【0022】
(ライトパイプ)
ライトパイプ2は、断面形状が正方形の筒状(両端が開口した筒状)としてあり、内側に鏡面を有する板状部材(たとえば、内側となる面に銀メッキなどが施された鋼板)からなっている。なお、ライトパイプ2は、通常、中空鏡面体であるが、これに限定されるものではなく、たとえば、中実透明体であってもよい。また、断面形状とは、照射軸と直交する断面の形状をいう。
このライトパイプ2は、ほぼ直方体状の内部空間21を有しており、内部空間21は、底面が正方形(一辺の長さがWである。)であり、高さがLである。また、ライトパイプ2は、一方の端部(図1(a)においては、上方の端部)が、開口部32と対応するように、ライトボックス3と連結されている。
なお、本実施形態では、W>Wとしてあるが、これに限定されるものではなくW≦Wでも良い。また、上記の寸法W及びLは、適宜設定される。したがって、たとえば、W>Lであってもよい。
【0023】
<ライトパイプの動作原理>
ここで、ライトパイプの動作原理を好適に実現できる形状などについて、図面を参照して説明する。
図2は、ライトパイプ(円柱の場合)の動作原理を説明する概略図を示している。
図2において、円柱状のライトパイプは、動作原理を好適に実現できない形状の例示である。このライトパイプは、中心軸に対して回転対称形であるので、光源から出た同じ入射角の光束は、ライトパイプで反射し、再び中心軸の同じ場所に集まる。そして、全ての入射角について、同様の現象が起こるので、中心軸上における光束の存在確率が高まり、放射照度分布は、中心軸上が最も高くなり、均一化された状態で光束を照射することはできない。
【0024】
図3は、ライトパイプ(四角柱の場合)の動作原理を説明する概略図を示している。
図3において、四角柱状のライトパイプは、動作原理を好適に実現できる形状の例示である。このライトパイプは、図3(a)の正面図及び(b)の側面図に示すように、内部の光源から出た光束が、たとえば、二回反射して出口に到達する。この光束は、図3(c)、(d)の展開図で表すこともできる。すなわち、反射がなければ、図3(d)に示す一番上の側面(端面)に到達する光束が、反射によって一番下の側面(端面)に折り畳まれていると考えることができる。そして、光源から出る全ての入射角の光束に対して、同じことが言えるので、一番下の側面(端面)では、均一化された放射照度分布となる。
【0025】
図4は、ライトパイプ(正六角柱及び正五角柱の場合)の動作原理を説明する概略図を示している。
図4(a)の展開された側面(端面)おいて、正六角柱状のライトパイプは、動作原理を好適に実現できる形状の例示である。このライトパイプは、図3に示す四角柱状のライトパイプと同様に、光源から出た全ての光束が、反射によって中央の側面(端面)に折り畳まれることが分かる。すなわち、正六角柱状のライトパイプの側面(端面)では、均一化された放射照度分布となる。
また、図4(b)の展開された側面(端面)おいて、正五角柱状のライトパイプは、動作原理を好適に実現できない形状の例示である。このライトパイプは、展開された側面(端面)おいて、隙間が発生しているので、光源から出た全ての光束が、反射によって中央の側面(端面)に折り畳まれる際、隙間の分だけ疎密が発生する。すなわち、正五角柱状のライトパイプの側面(端面)では、隙間の分だけ疎密が発生し、不均一な放射照度分布となる。
【0026】
上記の説明から、展開された側面(端面)おいて、隙間が発生しないライトパイプの断面形状として、三角形(正三角形を含む。)、四角形(正方形、長方形、平行四辺形を含む。)、平行六辺形について、中心を通る直線で分割した際にできる合同な五角形、正六角形、及び、平行六辺形が挙げられる。これらのライトパイプは、非常に高いレベルで均一化された放射照度分布を実現することができる。
なお、断面形状が、三角形、四角形、正六角形、平行六辺形であるライトパイプは、簡易な構造を有しているので、容易に製造でき、製造原価のコストダウンを図ることができる。
【0027】
本実施形態のライトパイプ2は、断面形状が正方形であるので、上述したように、非常に高いレベルで均一化された放射照度分布を実現することができる。
なお、本実施形態のライトパイプ2の断面形状は、正方形であるが、これに限定されるものではなく、たとえば、多角形であればよい。このようにすると、断面形状を円形とした場合と比べると、照射口22の中央(あるいは、中央の近傍)に赤外線が集中するといった不具合を回避でき、均一化された状態の赤外線を照射口22から照射することができる。
また、ライトパイプ2及びライトボックス3の断面形状は、ライトパイプの動作原理を好適に実現できる上記の形状であることが好ましい。このようにすると、非常に高いレベルで均一化された放射照度分布を実現することができる。
【0028】
ここで、好ましくは、ライトパイプ2の照射口22から照射される赤外線が、後述するように、スタンパ52を加熱する構成とするとよい。このようにすると、非常に高いレベルで均一化された放射照度分布の赤外線によって、大面積のスタンパ52の隅々に渡るまで均一に輻射加熱することができる。したがって、大面積のスタンパ52が、微細なパターンの賦形面521を有する場合であっても、同じく大面積の転写面61に対して隅々まで微細なパターンを精度よく転写できる。
【0029】
また、好ましくは、加熱装置1は、後述するように、ライトパイプ2の照射口22から照射される赤外線を遮るシャッタ23を有するとよい。このようにすると、シャッタ23のオンオフにより照射時間を制御でき、被照射面の温度制御を容易に行うことができる。
【0030】
次に、本実施形態の加熱方法、及び、上記構成の加熱装置1の動作などについて説明する。
本実施形態の加熱方法は、加熱装置1を使用する方法としてあり、ライトボックス3の内部に収容される光源4が、光(赤外線を含む。)を照射し、照射された光が、ライトボックス3と連結されたライトパイプ2を通り、該ライトパイプ2の照射口22から照射され、照射口22から照射された光が、被照射面を加熱する方法としてある。
なお、上述したように、ライトパイプ2及びライトボックス3の断面形状は、正方形に限定されるものではなく、たとえば、多角形であってもよい。
【0031】
加熱装置1は、ライトボックス3の内部に収容された光源4が、赤外線を放射する。
光源4から放射された赤外線は、一部が、ライトボックス3の鏡面により反射することなく、開口部32を通り、ライトパイプ2に進入する。また、それ以外の赤外線は、鏡面による一回又は二回以上の反射を経た後、開口部32を通り、ライトパイプ2に進入する。この赤外線は、直方体状の鏡面(内部空間31に対応する鏡面)による反射により、均一化された状態(プレミックスされた状態と呼ばれる。)で、開口部32を通り、ライトパイプ2に進入する。これにより、加熱装置1は、均一化された状態(プレミックスされた状態と呼ばれる。)の赤外線を開口部32に照射することができる。
なお、加熱装置1は、ライトボックス3の断面形状を正方形としてあるので、非常に高いレベルで均一化された赤外線を開口部32に照射することができる。
【0032】
開口部32に照射された赤外線は、ライトボックス3と連結されたライトパイプ2を通り、該ライトパイプ2の照射口22から照射される。この際、開口部32から進入した赤外線は、一部が、ライトパイプ2の鏡面により反射することなく、照射口22から照射される。また、それ以外の赤外線は、鏡面による一回又は二回以上の反射を経た後、照射口22から照射される。この赤外線は、直方体状の鏡面(内部空間21に対応する鏡面)による反射により、均一化された状態(さらにミックスされた状態と呼ばれる。)で、照射口22から照射される。
なお、加熱装置1は、ライトパイプ2の断面形状を正方形としてあるので、非常に高いレベルで均一化された赤外線を照射口22から照射することができる。
また、本発明においては、ライトパイプ2及びライトボックス3が、ライトパイプの動作原理を好適に実現できる形状としてあるので、さらに高いレベルで均一化された赤外線を照射口22から照射することができる。また、ライトボックス3を有することにより、光はプレミックスされているので、ライトパイプ2の長さ(L)を短くしても、高いレベルで均一化された赤外線を照射口22から照射することができ、加熱装置1の小型化を図ることができる。また、赤外線は、鏡面による反射によって、パワーロスが発生するが、ライトパイプ2の長さ(L)を短くすることにより、パワーロスを低減することができる。
【0033】
照射口22から照射された赤外線は、被照射面(図示せず)を高いレベルで均一に加熱することができる。すなわち、加熱装置1は、たとえば、大面積のスタンパ52を加熱する場合などにおいて、非常に高いレベルで均一化された放射照度分布の赤外線によって、大面積のスタンパ52を均一に輻射加熱することができる。したがって、スタンパ52が、微細なパターンの賦形面521を有する場合であっても、大面積の転写面に対して均一な転写率で転写することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の加熱装置1及び加熱方法によれば、光源4からの光を被照射面に均一に照射し、被照射面を均一に加熱することができる。また、ライトパイプ2及びライトボックス3を簡易な構造としてあるので、容易に製造でき、製造原価のコストダウンを図ることができる。
なお、本実施形態では、ライトパイプ2及びライトボックス3の断面形状を正方形としてあるが、これに限定されるものではなく、異なる多角形であってもよい。たとえば、ライトパイプ2の断面形状を正六角形とし、ライトボックス3の断面形状を正三角形としてもよい。このようにすると、光源4の形状などに応じて、ライトボックス3の断面形状を設定でき、また、被照射面の形状などに応じて、ライトパイプ2の断面形状を設定できるので、設計の自由度などを向上させることができる。
また、図1(b)に示すように、ライトボックス3の断面形状とライトパイプ2の断面形状の大きさは、異なっており、ライトボックス3の断面形状がライトパイプ2の断面形状より大きい(すなわち、ライトパイプ2の断面形状を中心の回りに回転させても、ライトボックス3の断面形状の内部に納まる。)。このようにすると、たとえば、ハロゲンランプの本数を増やすことにより、照射口22から照射される光のエネルギー密度を高くすることができ、設計の自由度などを向上させることができる。なお、各断面形状の大きさは、上記に限定されるものではない。
次に、ライトボックス3及びライトパイプ2の断面形状の大きさに関係する応用例について、図面を参照して説明する。
【0035】
<加熱装置の第一応用例>
図5は、本発明の第一応用例にかかる加熱装置を説明する概略図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は下面図を示している。
図5において、第一応用例の加熱装置1aは、上述した加熱装置1と比べると、ライトパイプ2の代わりに、ライトパイプ2aを備えた点などが相違する。なお、本応用例の他の構成は、加熱装置1とほぼ同様としてある。
したがって、図5において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0036】
ライトパイプ2aは、断面形状が正方形の筒状(両端が開口した筒状)としてあり、内側に鏡面を有する板状部材(たとえば、内側となる面に銀メッキなどが施された鋼板)からなっている。
このライトパイプ2aは、ほぼ直方体状の内部空間21aを有しており、内部空間21aは、底面が正方形(一辺の長さがW2aである。)であり、高さがL2aである。また、ライトパイプ2aは、一方の端部(図5(a)においては、上方の端部)が、開口部32aと対応するように、ライトボックス3と連結されている。
なお、本実施形態では、W≒W2a(すなわち、ライトボックス3及びライトパイプ2aの断面の大きさをほぼ同じにしてある。)としてあり、この条件を満足しつつ、上記の寸法W2a及びL2aは、適宜設定される。
【0037】
加熱装置1aは、ライトボックス3の内部に収容された光源4が、赤外線を放射する。この加熱装置1aは、上述したように、ライトボックス3の断面形状を正方形としてあるので、非常に高いレベルで均一化された状態(プレミックスされた状態と呼ばれる。)の赤外線を開口部32aに照射することができる。なお、開口部32aは、一辺の長さがW2aである正方形状としてある。
【0038】
開口部32aに照射された赤外線は、ライトボックス3と連結されたライトパイプ2aを通り、該ライトパイプ2aの照射口22aから照射される。この際、開口部32aから進入した赤外線は、一部が、ライトパイプ2aの鏡面により反射することなく、照射口22aから照射される。また、それ以外の赤外線は、鏡面による一回又は二回以上の反射を経た後、照射口22aから照射される。この赤外線は、直方体状の鏡面(内部空間21aに対応する鏡面)による反射により、均一化された状態(さらにミックスされた状態と呼ばれる。)で、照射口22aから照射される。
なお、加熱装置1aは、ライトパイプ2aの断面形状を正方形としてあるので、非常に高いレベルで均一化された赤外線を照射口22aから照射することができる。
【0039】
このように、本応用例の加熱装置1aによっても、上記実施形態とほぼ同様の効果を得ることができ、光源4からの光を被照射面に均一に照射し、被照射面を均一に加熱することができる。また、図示してないが、W=W2a(すなわち、ライトボックス3及びライトパイプ2の断面の大きさを同じにしてある。)としてもよく、これにより、ライトパイプ2a及びライトボックス3がさらに簡易な構造となり、容易に製造でき、製造原価のコストダウンをさらに図ることができる。
【0040】
<加熱装置の第二応用例>
図6は、本発明の第二応用例にかかる加熱装置を説明する概略図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は下面図を示している。
図6において、第二応用例の加熱装置1bは、上述した加熱装置1と比べると、ライトパイプ2の代わりに、ライトパイプ2bを備えた点などが相違する。なお、本応用例の他の構成は、加熱装置1とほぼ同様としてある。
したがって、図6において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0041】
ライトパイプ2bは、断面形状が正方形の筒状(両端が開口した筒状)としてあり、内側に鏡面を有する板状部材(たとえば、内側となる面に銀メッキなどが施された鋼板)からなっている。
このライトパイプ2bは、ほぼ直方体状の内部空間21bを有しており、内部空間21bは、底面が正方形(一辺の長さがW2bである。)であり、高さがL2bである。また、ライトパイプ2bは、一方の端部(図6(a)においては、上方の端部)が、開口部32b(一辺の長さがWの正方形状である。)と対応するように、ライトボックス3と連結されている。
なお、本実施形態では、W<W2b(すなわち、ライトパイプ2bの断面の大きさを、ライトボックス3の断面積より大きくしてある。)としてあり、この条件を満足しつつ、上記の寸法W2b及びL2bは、適宜設定される。
【0042】
加熱装置1bは、ライトボックス3の内部に収容された光源4が、赤外線を放射する。この加熱装置1bは、上述したように、ライトボックス3の断面形状を正方形としてあるので、非常に高いレベルで均一化された状態(プレミックスされた状態と呼ばれる。)の赤外線を開口部32bに照射することができる。
【0043】
開口部32bに照射された赤外線は、ライトボックス3と連結されたライトパイプ2bを通り、該ライトパイプ2bの照射口22bから照射される。この際、開口部32bから進入した赤外線は、一部が、ライトパイプ2bの鏡面により反射することなく、照射口22bから照射される。また、それ以外の赤外線は、鏡面による一回又は二回以上の反射を経た後、照射口22bから照射される。この赤外線は、直方体状の鏡面(内部空間21bに対応する鏡面)による反射により、均一化された状態(さらにミックスされた状態と呼ばれる。)で、照射口22bから照射される。
なお、加熱装置1bは、ライトパイプ2bの断面形状を正方形としてあるので、非常に高いレベルで均一化された赤外線を照射口22bから照射することができる。
【0044】
このように、本応用例の加熱装置1bによっても、上記実施形態とほぼ同様の効果を得ることができ、光源4からの光を被照射面に均一に照射し、被照射面を均一に加熱することができる。
また、図6(b)に示すように、ライトボックス3の断面形状とライトパイプ2bの断面形状の大きさは、異なっており、ライトボックス3の断面形状がライトパイプ2の断面形状より小さい(すなわち、ライトボックス3の断面形状を中心の回りに回転させても、ライトパイプ2bの断面形状の内部に納まる。)。このようにすると、たとえば、被照射面が大きい場合(たとえば、光源4より大きい場合)であっても、容易に対応することができ、設計の自由度などを向上させることができる。
【0045】
[成形装置及びプラスチック成形品の成形方法の一実施形態]
また、本発明は、成形装置及びプラスチック成形品の成形方法の発明としても有効である。
図7は、本発明の一実施形態にかかる成形装置を説明するための要部の概略断面図を示している。
図7において、本実施形態の成形装置10は、上述した加熱装置1と、この加熱装置1から照射された赤外線を透過する赤外線透過部材51及び該赤外線透過部材51を透過した赤外線によって輻射加熱されるスタンパ52を有する金型5と、固化したプラスチック基板6の転写面61に、スタンパ52の賦形面521を押圧するプレス手段(図示せず)とを備えている。
なお、本実施形態では、プラスチック基板6の材質をポリエチレンテレフタレートなどの結晶性樹脂としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、非晶性樹脂としてもよい。また、非晶性樹脂を使用する場合、後述する固化工程は、硬化工程と呼称される。
【0046】
(加熱装置)
図7に示す加熱装置1は、上述した実施形態と比べると、シャッタ23を備えた点などが相違する。なお、他の構成は、図1に示す加熱装置1とほぼ同様としてある。
したがって、図7において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
シャッタ23は、上面に鏡面を有するほぼ矩形状の板状部材(たとえば、上面に銀メッキなどが施された鋼板)としてあり、往復移動方向の長さがW+数mm〜数十mmであり、往復移動方向と直交する方向の長さがほぼWである。このシャッタ23は、ライトパイプ2の外側に位置する端部(図7においては、右側の端部)が、往復移動手段(図示せず)と連結されている。また、シャッタ23は、通常、ライトパイプ2の下側に設けられている。ただし、これに限定されるものではなく、たとえば、ライトパイプ2の中段や上側に設けられてもよい。
【0047】
なお、シャッタ23は、左側の側面を鏡面とし、右側に移動した際、この鏡面が、ライトパイプ2の鏡面と同一面を形成する構成としてもよい。これにより、シャッタ23を設けても、照射の均一化に悪影響を及ぼすといった不具合を回避することができる。
また、シャッタ23は、往復移動する構成としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、図示してないが、複数の開口部の形成された円板を回転させる構成としてもよい。
さらに、図示してないが、シャッタ23がオフ(閉じている)のとき、シャッタ23の下方の内部空間21に、たとえば、冷風を循環させ、赤外線透過部材51を冷却してもよい。これにより、スタンパ52が迅速に冷却され、成形装置10としての生産性を向上させることができる。
【0048】
(金型)
金型5は、上型50及び下型55を有している。この上型50及び下型55は、図示してないが、プレス手段(たとえば、低圧プレス機(プレス圧力:1.0MPa))に取り付けられている。
上型50は、上面側にほぼ板状の赤外線透過部材51が埋設され、下面側にほぼ板状のスタンパ52が埋設されている。
【0049】
また、赤外線透過部材51は、Si、Al(サファイア)、ZnSeなどの赤外線透過材料からなっており、照射口22から照射された赤外線を透過する。
【0050】
また、スタンパ52は、材質が、通常、NiやSiであり、また、厚さが、通常、数百μmである。このスタンパ52は、下面に賦形面521を有しており、賦形面521に凹部522及び凸部523が形成されている。また、上面に黒色膜524が形成されており、赤外線を効率よく吸収する。これにより、スタンパ52の賦形面521は、赤外線の輻射加熱によって均一かつ迅速に加熱される。なお、黒色膜524を形成する構成としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、スタンパ52が、有色膜及び/又はメッキ皮膜を有する構成としてもよい。なお、有色膜として、シリコーン系黒色塗料などが挙げられる。また、メッキ皮膜として、無電解Niメッキ、黒色Crメッキなどが挙げられる。
また、下型55は、上面に、プラスチック基板6に対応する形状の凹部が形成されており、この凹部にプラスチック基板6が位置決めされた状態で載置される。
【0051】
なお、赤外線透過部材51及びスタンパ52の形状、厚さ、個数などは、特に限定されるものではなく、たとえば、図示してないが、一つの上型50に複数の赤外線透過部材51及びスタンパ52を配設してもよい。
また、赤外線透過部材51は、赤外線照射OFFの後、ヒートシンクとして機能する。すなわち、加熱されたスタンパ52、被加熱部62の熱を素早く奪い取り、被加熱部62の温度を離型可能な温度まで素早く冷却するので、成形サイクルを短縮することができる。
【0052】
次に、本実施形態のプラスチック成形品の成形方法、及び、上記構成の成形装置10の動作などについて、図面を参照して説明する。
図8は、本発明の一実施形態にかかるプラスチック成形品の成形方法を説明するための要部の概略断面図を示している。
本実施形態のプラスチック成形品の成形方法は、成形装置10を使用する方法としてあり、固化したプラスチック基板6に対して、スタンパ52の賦形面521をプラスチック基板6の転写面61に押圧した状態で、加熱装置1から照射された赤外線によってスタンパ52を輻射加熱し、賦形面521の構造を転写面61に転写する工程と、賦形面521を転写面61に押圧した状態で、プラスチック基板6を固化させる工程と、押圧した状態を解除することによって、プラスチック成形品(成形されたプラスチック基板6)を離型させる工程とを有する方法としてある。
【0053】
上述したように、本実施形態のプラスチック成形品の成形方法は、プラスチック基板6に対して加熱装置1及び金型5などを用いてエンボス成形を行う成形方法であり、転写工程、固化工程及び離型工程を有している。
まず、成形装置10は、図7に示す待機状態にある。すなわち、成形装置10は、光源4が赤外線を照射しており、シャッタ23がオフ(閉じた状態)となっている。また、プレス手段により、上型50と下型55は、離れており、下型55にプラスチック基板6が載置されている。
【0054】
(転写工程)
転写工程は、固化したプラスチック基板6に対して、スタンパ52の賦形面521をプラスチック基板6の転写面61に押圧した状態で、加熱装置1から照射された赤外線によってスタンパ52を輻射加熱し、賦形面521の構造を転写面61に転写する。
すなわち、図8(a)に示すように、プレス手段により上型50及び/又は下型55を移動させ、賦形面521をプラスチック基板6の転写面61に押圧した状態で、赤外線を照射し(シャッタ23をオン(開いた状態)とし)、スタンパ52を輻射加熱する。この際、上述したように、加熱装置1は、均一化された状態の赤外線を照射口22から照射し、この赤外線は、赤外線透過部材51を透過し、均一化された状態を維持しつつ、あるいは、さらに均一化された状態で、スタンパ52に照射され、スタンパ52を均一に輻射加熱することができる。
【0055】
なお、押圧するタイミングと赤外線を照射するタイミングは、通常、ほぼ同時、あるいは、赤外線を照射するタイミングが押圧するタイミングより早いが、これに限定されるものではなく、たとえば、プラスチック基板6の材質、凹部522及び凸部523の形状、赤外線の出力などに応じて調整される。
また、赤外線は、赤外線透過部材51を透過するので、赤外線透過部材51は、ほぼ加熱されず、また、鋼製の上型50は、赤外線が照射されないので、加熱されない。
【0056】
また、スタンパ52が加熱されると、スタンパ52と接触しているプラスチック基板6の転写面61に熱が伝わり、転写面61は均一に加熱される。なお、上記の「転写面が加熱される」とは、「転写面及び該転写面から所定の深さ(通常、賦形面521の最も高い凸部523から最も深い凹部522までの距離の1.5倍以上5倍以下の深さ)までの領域のみが加熱される」といった意味である。
したがって、スタンパ52、転写面61及び転写面61から所定の深さまでの領域(被加熱部62)のみが局所的に、かつ、短時間で加熱される。また、加熱される領域が限定的であると、その熱容量も少なくなるため、赤外線の照射を停止すると、熱は熱伝導率の高い赤外線透過部材51及び上型50の順に移動し、被加熱領域は短時間で冷却される。すなわち、加熱及び冷却に要する時間を短縮でき、生産性を向上させることができる。また、部分的な加熱不良や冷却不良が発生しないので、大面積の転写面全域に渡り均一の転写率で転写することが可能になる。
続いて、図8(b)に示すように、被加熱部62が溶融して粘度が低下した樹脂が、賦形面521の凹部522に入り込み、転写が行われる。
【0057】
(固化工程)
次に、図8(c)に示すように、賦形面521を転写面61に押圧した状態で、赤外線の照射を停止し(シャッタ23をオフ(閉じた状態)とし)、プラスチック基板6(溶融した被加熱部62)を固化させる。
この際、上述したように、スタンパ52、転写面61及び転写面61から所定の深さまでの領域(被加熱部62)のみを加熱しており(図8(b)参照)、上型50及び赤外線透過部材51は、ほぼ昇温していないので、溶融した被加熱部62は、短時間で冷却され、固化する。すなわち、冷却時間が短縮でき、生産性を向上させることができる。
【0058】
(離型工程)
次に、図8(d)に示すように、プレス手段により上型50及び/又は下型55を移動させ、賦形面521を転写面61に押圧した状態を解除することによって、プラスチック成形品(凸部63及び凹部64の成形されたプラスチック基板6)を離型させる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の成形装置10及びプラスチック成形品の成形方法によれば、スタンパ52を均一に加熱することにより、賦形面521の微細なパターンを大面積の被照射面全域に渡り均一の転写率で転写できる。さらに、加熱及び冷却に要する時間を短縮でき、生産性を向上させることができる。
【0060】
「ライトボックスの実施例」
上述した実施形態(加熱装置1)のライトボックスの実施例として、ライトボックス出口(放射照度測定面)の放射性能計算(数値解析)を行った。
ライトボックスは、図9(a)に示す構造とした。すなわち、ライトボックスは、出口(放射照度測定面)が正方形(一辺の長さ(ライトボックス幅)がW)であり、長さが140mmの直方体状とした。また、光源は、5本の棒状のハロゲンヒータ(1本の出力は、1.5kW)を長さ方向と平行に配設した。また、ライトボックスの内面の全反射率を95%とした。
【0061】
上記のライトボックスに対して、解析ソフト(商品名:ZEMAX)を使用し、ライトボックス幅W(50〜130mm)に対する放射束(単位はW(ワット))を算出した。なお、放射束は、出口(放射照度測定面)から出力される値である。
算出した結果は、図10(a)に示すように、
W=50mmにおいて放射束=約4580W
W=70mmにおいて放射束=約5060W
W=100mmにおいて放射束=約5490W
W=130mmにおいて放射束=約5770W
であった。
【0062】
また、上記のライトボックスに対して、解析ソフト(商品名:ZEMAX)を使用し、ライトボックス幅W(50〜130mm)に対する照度分布を算出した。なお、照度分布は以下に定義したCV(単位は%)を用いて評価したが、出口(放射照度測定面)における放射照度分布が小さいほど(バラツキが少ないほど)CVは小さな値を取り、大きいほど(バラツキが大きいほど)CVは大きな値を取る。
【数1】

算出した結果は、図10(b)に示すように、
W=50mmにおいて照度分布CV=約3.6%
W=70mmにおいて照度分布CV=約3.9%
W=100mmにおいて照度分布CV=約7.0%
W=130mmにおいて照度分布CV=約11.8%
であった。
【0063】
「ライトボックスの比較例」
上述した実施形態(加熱装置1)のライトボックスの比較例として、ライトボックス出口(放射照度測定面)の放射性能計算(数値解析)を行った。
ライトボックスは、図9(b)に示す構造とした。すなわち、ライトボックスは、出口(放射照度測定面)が円形(直径が56.5mm)であり、長さが140mmの有底円筒状とした。また、光源は、5本の棒状のハロゲンヒータ(1本の出力は、1.5kW)を長さ方向と平行に配設した。また、ライトボックスの内面の全反射率を95%とした。
【0064】
上記のライトボックスに対して、解析ソフト(商品名:ZEMAX)を使用し、放射束(単位はW(ワット))を算出した。なお、放射束は、出口(放射照度測定面)から出力される値である。
算出した結果は、図10(a)に示すように、放射束=約4790Wであった。
また、上記のライトボックスに対して、解析ソフト(商品名:ZEMAX)を使用し、照度分布CV(単位は%)を算出した。
算出した結果は、図10(b)に示すように、照度分布CV=約17.6%であった。
【0065】
上記のライトボックスの実施例及び比較例から、ライトボックスの断面形状を正方形とすることにより、光のプレミックス効果が顕在化した。すなわち、実施例W=70mm以上の場合、比較例に対し、放射束は上回り、照度分布は大きく均一化しているので、ハイパワー且つ均一な照射が実現できるといった結果を得た。
【0066】
「加熱装置の実施例」
上述した実施形態(加熱装置1)の実施例として、ライトパイプ出口(放射照度測定面)の放射性能計算(数値解析)を行った。
加熱装置は、図11(a)に示す構造とした。すなわち、ライトボックスは、出口が正方形(一辺の長さ(ライトボックス幅)が70mm)であり、長さが140mmの直方体状とした。また、光源は、5本の棒状のハロゲンヒータ(1本の出力は、1.5kW)を長さ方向と平行に配設した。また、ライトボックスの内面の全反射率を95%とした。
また、ライトボックスと連結されるライトパイプは、出口(放射照度測定面)が正方形(一辺の長さ(ライトボックス幅)が70mm)であり、長さ(ライトパイプ長さ)がLmmの直方体状とした。また、ライトパイプの内面の全反射率を95%とした。
【0067】
上記の加熱装置に対して、解析ソフト(商品名:ZEMAX)を使用し、ライトパイプ長さL(0〜180mm)に対する放射束(単位はW(ワット))を算出した。なお、放射束は、出口(放射照度測定面)から出力される値である。
算出した結果は、図12(a)に示すように、
L=0mmにおいて放射束=約5050W
L=30mmにおいて放射束=約4700W
L=60mmにおいて放射束=約4430W
L=90mmにおいて放射束=約4190W
L=120mmにおいて放射束=約3970W
L=150mmにおいて放射束=約3770W
L=180mmにおいて放射束=約3590W
であった。
【0068】
また、上記の加熱装置に対して、解析ソフト(商品名:ZEMAX)を使用し、ライトパイプ長さL(0〜180mm)に対する照度分布CV(単位は%)を算出した。なお、照度分布CVは、小さいほど出口(放射照度測定面)における放射照度が均一であり、また、大きいほど出口(放射照度測定面)における放射照度が不均一である。
算出した結果は、図12(b)に示すように、
L=0mmにおいて照度分布CV=約4.0%
L=30mmにおいて照度分布CV=約3.2%
L=60mmにおいて照度分布CV=約3.3%
L=90mmにおいて照度分布CV=約3.3%
L=120mmにおいて照度分布CV=約3.4%
L=150mmにおいて照度分布CV=約3.3%
L=180mmにおいて照度分布CV=約3.4%
であった。
【0069】
「加熱装置の比較例」
上述した実施形態(加熱装置1)の比較例として、ライトパイプ出口(放射照度測定面)の放射性能計算(数値解析)を行った。
加熱装置は、図11(b)に示す構造とした。すなわち、ライトボックスは、出口が円形(直径が56.5mm)であり、長さが140mmの有底円筒状とした。また、光源は、5本の棒状のハロゲンヒータ(1本の出力は、1.5kW)を長さ方向と平行に配設した。また、ライトボックスの内面の全反射率を95%とした。
また、ライトボックスと連結されるライトパイプは、出口(放射照度測定面)が正方形(一辺の長さ(ライトボックス幅)が70mm)であり、長さ(ライトパイプ長さ)がLmmの直方体状とした。また、ライトパイプの内面の全反射率を95%とした。
【0070】
上記の加熱装置に対して、解析ソフト(商品名:ZEMAX)を使用し、ライトパイプ長さL(0〜180mm)に対する放射束(単位はW(ワット))を算出した。なお、放射束は、出口(放射照度測定面)から出力される値である。
算出した結果は、図12(a)に示すように、
L=0mmにおいて放射束=約4800W
L=30mmにおいて放射束=約4520W
L=60mmにおいて放射束=約4300W
L=90mmにおいて放射束=約4020W
L=120mmにおいて放射束=約3810W
L=150mmにおいて放射束=約3610W
L=180mmにおいて放射束=約3440W
であった。
【0071】
また、上記の加熱装置に対して、解析ソフト(商品名:ZEMAX)を使用し、ライトパイプ長さL(0〜180mm)に対する照度分布CV(単位は%)を算出した。
算出した結果は、図12(b)に示すように、
L=0mmにおいて照度分布CV=約17.6%
L=30mmにおいて照度分布CV=約9.6%
L=60mmにおいて照度分布CV=約5.0%
L=90mmにおいて照度分布CV=約4.6%
L=120mmにおいて照度分布CV=約4.4%
L=150mmにおいて照度分布CV=約4.2%
L=180mmにおいて照度分布CV=約3.9%
であった。
【0072】
上記の加熱装置の実施例及び比較例から、照度分布CV≦4%を達成するために必要なライトパイプ長さLは、実施例においては30mmであり、比較例においては180mmであった。
また、実施例においては、L=30mmにおいて放射束=約4700Wであり、比較例においては、L=180mmにおいて放射束=約3440Wであった。
すなわち、実施例の加熱装置は、断面形状が正方形のライトボックスを備えることにより、照度分布CV≦4%を達成するために必要なライトパイプ長さLは30mmであり、比較例の180mmと比べると、小型化を実現できるといった結果を得た。また、実施例の加熱装置は、L=30mmにおいて放射束=約4700Wであり、比較例(L=180mmにおいて放射束=約3440W)と比べると、パワーロス(光を均一に照射することに伴うパワーロス)を大幅に低減できるといった結果を得た。
【0073】
以上、本発明の加熱装置、加熱方法、成形装置及びプラスチック成形品の成形方法について、好ましい実施形態などを示して説明したが、本発明に係る加熱装置、加熱方法、成形装置及びプラスチック成形品の成形方法は、上述した実施形態などにのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、成形装置10は、プラスチック基板6に対して圧縮成形を行う構成としてあるが、プラスチック基板6は、ガスが含浸されたプラスチックであってもよい。このようにすると、離型工程において、プラスチックから放出されたガスを膨張させ、この膨張するガスを利用して、プラスチック成形品を円滑に離型させることができる。
【符号の説明】
【0074】
1、1a、1b 加熱装置
2、2a、2b ライトパイプ
3 ライトボックス
4 光源
5 金型
6 プラスチック基板
10 成形装置
21、21a、21b 内部空間
22、22a、22b 照射口
31 内部空間
32、32a、32b 開口部
50 上型
51 赤外線透過部材
52 スタンパ
55 下型
61 転写面
62 被加熱部
63 凸部
64 凹部
521 賦形面
522 凹部
523 凸部
524 黒色膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状が多角形のライトパイプと、
このライトパイプと連結され、断面形状が多角形のライトボックスと、
このライトボックス内に収容される光源と
を備えたことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記ライトパイプの照射口から照射される光が、スタンパを加熱することを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記ライトパイプの照射口から照射される光を遮るシャッタを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記光源が、赤外線光源であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記ライトパイプの断面形状が三角形、四角形、正六角形又は平行六辺形であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記ライトボックスの断面形状が三角形、四角形、正六角形又は平行六辺形であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項7】
断面形状が多角形のライトボックス内に収容される光源が、光を照射し、
前記照射された光が、前記ライトボックスと連結され、断面形状が多角形のライトパイプを通り、該ライトパイプの照射口から照射され、
前記照射口から照射された光が、被照射面を加熱することを特徴とする加熱方法。
【請求項8】
前記光源が、赤外線光源であることを特徴とする請求項7に記載の加熱方法。
【請求項9】
前記ライトパイプの断面形状が三角形、四角形、正六角形又は平行六辺形であることを特徴とする請求項7又は8に記載の加熱方法。
【請求項10】
前記ライトボックスの断面形状が三角形、四角形、正六角形又は平行六辺形であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の加熱方法。
【請求項11】
上述した請求項1〜6のいずれか一項に記載の加熱装置と、
この加熱装置から照射された赤外線を透過する赤外線透過部材及び該赤外線透過部材を透過した赤外線によって輻射加熱されるスタンパを有する金型と、
固化又は硬化したプラスチックの転写面に、前記スタンパの賦形面を押圧するプレス手段と
を備えたことを特徴とする成形装置。
【請求項12】
前記スタンパが、有色膜及び/又はメッキ皮膜を有することを特徴とする請求項11に記載の成形装置。
【請求項13】
固化又は硬化したプラスチックに対して、スタンパの賦形面を前記プラスチックの転写面に押圧した状態で、上述した請求項1〜6のいずれか一項に記載の加熱装置から照射された赤外線によって前記スタンパを輻射加熱し、前記賦形面の構造を前記転写面に転写する工程と、
前記賦形面を前記転写面に押圧した状態で、前記プラスチックを固化又は硬化させる工程と、
前記押圧した状態を解除することによって、プラスチック成形品を離型させる工程と
を有することを特徴とするプラスチック成形品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−20738(P2013−20738A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151395(P2011−151395)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】